厚生労働省の薬食審・医薬品第二部会は8月29日、英国のAstraZenecaの新型コロナ抗体薬・エバシェルド(Evusheld) 筋注セット(一般名:tixagevimabと cilgavimabの同梱製剤)を特例承認することを了承した。適応症は「SARS-CoV-2による感染症及びその発症抑制」。 厚労省は8月30日に特例承認した。
米国FDAは2021年12月8日、COVID-19の曝露前予防を適応として、AstraZenecaにEvusheldの緊急使用許可を与えた。
対象となるのは、病状あるいは免疫抑制剤により中等度から重度の免疫不全があり、COVID-19ワクチンに対して十分な免疫応答が得られない可能性がある、およびCOVID-19ワクチンの接種が推奨されていない成人および青年(12歳以上かつ40kg以上)で、現在感染している人、あるいはSARS-CoV-2の感染者と直近で接触があった人は投与を受けられない。
EUは2022年3月28日、これを承認した。
英国ではMHRA(医薬品・医療品庁)が2022年3月22日に承認している。
新型コロナ発症後の治療目的のほか、濃厚接触者ではない者(感染源への曝露前)に対する発症抑制の目的でも使える。
曝露前の発症抑制に用いる際の投与対象者は、▽ワクチン接種が推奨されない者▽ワクチン接種で十分な免疫応答が得られない可能性がある者――となるが、より具体的な投与対象者は日本感染症学会のガイドラインで示される予定。
同剤は曝露前の発症抑制に係る治療選択肢を提供する初めての薬剤となる。
海外の研究では、オミクロン株の「BA.5」系統にも効果が確認されている。
全世界で供給量が限られていることから国が必要量を購入・確保する方針で、同省はこの日、15万人分を確保していることを明らかにした。流通方法は「調整中」。
Evusheld(開発コード AZD7442)は、新型コロナに感染して回復した患者により提供されたB細胞に由来する2種類の長時間作用型抗体(LAAB)であるtixagevimab(遺伝子組換え)とcilgavima(遺伝子組換え)を併用するもので、同社が独自に有する半減期延長技術を適用し、1回の投与後少なくとも6カ月間、ウイルスからの保護が持続される。
この2つのヒトモノクローナル抗体はSARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質の固有の部位に結合する。
米ヴァンダービルト大学メディカルセンターにより発見され、2020年6月にアストラゼネカにライセンス供与された。
発症後の主な投与対象者は、「重症化リスク因子を有する軽症~中等症Iの患者」となる。
曝露前の発症抑制の主な投与対象者は今後、日本感染症学会ガイドラインで示されるが、厚労省によると、免疫不全症の患者、抗がん剤の投与を受けた患者、臓器移植を受けた患者などで、より詳細に示される。また、厚労省は、「感染症の予防の基本はワクチンによる予防であり、本剤はワクチンに置き換わるものではない。この点は十分に留意いただきたい」と述べ、あくまでワクチン接種が推奨されない者やワクチンでは十分な免疫応答が得られない可能性がある者に限られると強調した。
Evusheldの用法・用量は、新型コロナ発症後(治療目的)と曝露前の発症抑制で異なる。
発症後はtixagevimabと cilgavimabをそれぞれ300mgを筋肉内注射する。
オミクロン株BA.5系統に対しては、同剤の有効性が減弱する可能性があることから、「他の治療薬が使用できない場合」の治療選択肢と位置付ける。
(既承認の新型コロナ抗体薬・ロナプリーブ注射液などと同じ。)
曝露前の発症抑制では、tixagevimabと cilgavimabをそれぞれ150mgを筋肉内注射する。
変異株の流行状況等に応じて、それぞれ300mgを筋肉内注射することもできる。
オミクロン株BA.5系統に対しては、「同様の対象者に使用可能な他の治療薬がないことから、慎重に投与を検討することとし、その際の用量は、それぞれ300mgとすることを基本とする。
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