2023年4月アーカイブ

日本の将来推計人口

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国立社会保障・人口問題研究所は4月26日、長期的な日本の人口を予測した「将来推計人口」を公表した。2056年に人口(外国人を含む)が1億人を下回り、2070年には8700万人となる。

平均寿命は、2020 年の男性 81.58 年、女性 87.72 年が、2070 年には男性 85.89 年、女性 91.94 年に伸びる

2070年には65歳以上の割合が40%近くまでアップする一方、生産年齢人口は2020年の59.5%が52.1%に下がる(3000万人の減)。14歳以下は1割以下が続く。

単位:万人 2020年 2045年 2065年 2070年 合計特殊
出生率
中位仮定 65歳以上 3,603 28.6% 3,945 36.3% 3,513 38.4% 3,367 38.7% 1.36
15~64歳 7,509 59.5% 5,832 53.6% 4,809 52.5% 4,535 52.1%
0~14歳 1,503 11.9% 1,103 10.1% 836 9.1% 797 9.2%

合計

12,615 10,880 9,158 8,700
高位仮定 12,615 11,203 9,885 9,549 1.64
低位仮定 12,615 10,600 8,570 8,024 1.13


合計特殊出生率は
一人の女性が一生に産む子供の平均数

欧米では低迷していた出生率がプラスに転じているが、韓国、中国、日本のアジア3国が下降を続けている。人口の減少は経済停滞につながる。

2023/2/23 韓国の2022年の合計特殊出生率、過去最低の0.78 

今回、2070年の出生率が現状の1.30から1.36へと若干増えているが、日本人女性に限ると上がらず、微増は外国人女性の出産による影響とされる。

出生実数は2021年の831千人が2070年には500千人に減る。

日本人の出生数は
1973年の209万人から2020年の81万人まで減少した。その結果、0~14 歳人口も1980年代初めの2,700万人規模から2020年国勢調査の1,503万人まで減少した。

http://www.mhlw.go.jp/english/database/db-hw/dl/81-1a2en.pdf

Samsung SDI とGMは2023年4月25日、EV用電池の製造JVを米国に設立することで合意したと発表した。尹錫悦大統領の米韓首脳会談のための訪米に合わせて発表した。

年産能力は30GWh以上で、30億ドルを投資し、2026年に大量生産を開始する。立地は米国内で選定中。

GMは、これにより北米でのEV能力を年間100万台以上にできるとしている。

Samsung SDI にとって米国で2番目の電池工場となる。

Stellantis N.V.は2021年10月18日にLG Energy Solutionと合弁会社を設立し、北米で電動車用の電池を生産すると発表したが、10月22日にSamsung SDIとも米国で合弁会社を設立し、電気自動車用の電池工場を建設する覚書を締結したと発表した。

Stellantisは両社との同時契約で、Samsung SDIの得意な、安定性が高いとされる「角形電池」と、LGの軽量で高出力な「パウチ型電池」の2種類を安定調達する狙いがあるとみられる。

Stellantis はこれまでもSamsungから「Fiat 500e」や「Jeep Wrangler 4xe」向けに電池供給を受けてきた。今回のJV設立で、両社の協力関係はさらに堅固になる。

Samsung SDIは現在、韓国と中国、ハンガリーで電池工場を持つが、米市場のEVシフトの潮流に乗り遅れないように米国進出を検討してきた経緯がある。(同社はミシガン州にバッテリーパックの組み立て工場は持っている。)

Samsung SDIは2017年5月にハンガリーのグドゥ(Goed)市に、蔚山と中国西安に次ぐ3つ目の工場を新設した。

  稼働
韓国(蔚山 5万台
中国(西安 4万台
ハンガリー(Goed 5万台
合計 14万台


2021/10/25 Stellantis、米国でSamsung SDI とも合弁でEV電池生産

GMは韓国LG Energy Solutionと米国内で3カ所の電池工場を稼働・建設中で、Samsung が2社目の合弁相手。両社とも調達・供給先を多角化してリスクを抑える狙いがある。

GMは2020年5月1日、LG ChemとのJVの"Ultium Cells LLC"が当局の承認を受け、23億ドルを投資するオハイオ州Lordstown の近辺のEV用バッテリー工場がスタートしたと発表した。

Ultium Cells LLCは2021年4月16日、テネシー州スプリングヒルに約23億ドルを投資し、新型電池Ultiumッテリーの工場を建設すると発表した。

GMは2022年1月25日、EVの生産能力の強化に向けて、米国で3つ目となる新たな電池工場の建設を発表した。Ultium Cells LLCが26億ドルを投じ、ミシガン州 Lansing に第3工場を建設する。電池生産の開始は2024年後半となる。

2022/1/28 GM、米国で3つ目の電池工場を建設、電気自動車生産投資も

LG Energy Solutionはこれ以外に、米フォード・モーターやステランティスとも電池合弁を組んでいる。

LG Energy Solutionは2023年3月24日、アリゾナ州Queen Creek の電池工場建設について、投資規模を7兆2000億ウォン(55億ドル、約7200億円)と大幅に増やし、計画を進めると発表した。

LG Energy Solutionの北米での電池工場は下記のとおりとなる。

単独:Michigan、Arizona(Queen Creek )
GMとのJV:Tennessee、Ohio、Michigan
StellantisとのJV:カナダOntario   2021/10/21 Stellantis N.V.、米国でLGと合弁で電池生産
ホンダとのJV:Ohio   2023/3/7 ホンダとLGの米バッテリー工場 起工式 

2023/3/28 LG Energy Solution、米国に大型電池工場 

(Ford の状況 )

Fordは米国では韓国のSK om (SK Innovation)とのJV Blue Oval SKを持つ。

2021/10/1 Ford Motor、114億ドルを投じ、電動ピックアップトラックと3つの電池工場を建設

LG Energy Solutionは2023年2月22日、Ford Motorと合弁でトルコに電池工場を建設すると発表した。Fordは当初、SK On とのJVを検討していた。

2023/2/24 Ford、トルコでの電池JVの相手をSKからLGに変更

Ford は2023年2月13日、ミシガン州Marshall近郊に35億ドルを投じて電気自動車(EV)用のリン酸鉄リチウムイオン(LFP) 電池製造工場 BlueOval Battery Park Michigan を建設する計画を発表した。

韓国のSK InnovationとのJVではなく、Fordの単独事業で、中国の大手電池メーカー、寧徳時代新能源科技(CATL)から技術のライセンス供与や技術支援を受ける。CATLは出資はしない。

フォード、ミシガンにEV用電池工場建設 中国CATLが技術支援

なお、SK On は現代自動車グループと米ジョージア州Bartow Countyに電気自動車用バッテリーの生産設備を建設する。詳細が4月25日に発表された。

http://www.knak.jp/blog/2022-12-2.htm#hyundai-sk

次世代半導体の国産化をめざす共同出資会社「Rapidus」が北海道に建設する新工場に対し、政府は新たに2600億円を補助する 。千歳市に建設を予定している工場の試作ラインの基礎工事や、米研究所への職員派遣などに拠出する。

政府は2022年11月に次世代半導体の将来の製造基盤の確立に向けた研究開発プロジェクト(ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業)の採択先をRapidus とすることに決定し 、研究開発拠点の整備費用などに700億円を補助することを決めており、合計3300億円の国費を投じることになる。

経済産業相は「(3300億円とは別に)今後も何年間かにわたりかなりの投資になると思う。必要な支援を行っていきたい」と述べた。

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経産省は2022年11月11日に2020年代後半の次世代半導体の設計・製造基盤確立に向けた取組について公表した。

次世代半導体は量子・AIなど大きなイノベーションをもたらす中核技術で、海外の研究機関や産業界とも連携しながら、国内のアカデミアと産業界が一体となって取り組むことで、我が国全体の半導体関連産業の競争力強化を目指す とした。

トヨタなど国内8社は同日、先端半導体の国産化に向けた新会社Rapidusを共同で設立したことを発表した。

資本金73億4,600万円で、トヨタ自動車、デンソー、ソニーグループ、NTT、NEC、ソフトバンク、キオクシア(半導体大手) が各10億円、三菱UFJ銀行が3億円を出資する。

自動運転やAI、スマートシティーなど大量のデータを瞬時に処理する分野に欠かせない先端半導体の技術開発を行い、5年後の2027年をめどに回路幅が2ナノメートル以下の先端半導体の量産化を目指す。

2022/11/14 次世代半導体の設計・製造基盤確立に向けた取組、先端半導体の国産化へ新会社   

(IBMとの提携)

新会社Rapidusと米国のIBMは2022年12月13日、日本が半導体の研究開発・製造におけるグローバルリーダーを目指す取り組みの一環として、ロジック・スケーリング技術の発展に向けた共同開発パートナーシップを締結したことを発表した。

IBMは2021年に世界初の2nmノードのチップ開発技術を発表した。このチップは、現在最も先進的な7nmチップに比べて45%の性能向上、または75%のエネルギー効率向上の達成が見込まれる。

2023/4/24  米半導体メーカー、ラピダスへの技術共有でIBMを提訴

米国IBM社他と連携して2nm世代のロジック半導体の技術開発を行い、国内短TAT(Turn Around Time:製品を完全に仕上げるまでに要する時間パイロットラインの構築と、テストチップによる実証を行っていく 」としている。 本パートナーシップの一環として、RapidusとIBMは、IBMの画期的な2ナノメートル(nm)ノード技術の開発を推進し、Rapidusの日本国内の製造拠点に導入する。

(工場建設)

Rapidusの小池淳義社長は2023年2月28日、北海道庁を訪問し、千歳市に工場を建設することを伝えた。

半導体の生産に欠かせない水が豊富であることを説明。「北海道大学などを中心に先端技術、世界中の技術者を集められる環境もある」と述べた。再生可能エネルギーや産業用地が豊富であることも挙げた。

工場は鹿島が受注、9月に着工し、2025年に試作ラインを建設する。2020年代後半に量産ラインを立ち上げることを目標としている。

小池社長は「パイロットラインで2兆円、量産ラインで3兆円かかるとみる」としており、今後の資金調達が問題となる。

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Rapidusの計画には問題が多い。

ロジック半導体については、台湾のTSMC、韓国のサムスン、米国のIntel、中国のSMICが争っているが、TSMCとサムスンは2022年に3ナノを立ち上げた。IntelとSMICは7ナノの段階である。

各社は技術の積み重ねで順次、微細化を進めてきた。TSMCは微細化のため、極端紫外線(EUV)を使ったオランダASML社製のEUV露光装置を使うが、1年間に約100万回の練習の結果、量産に成功したとされる。

それに対し、日本は現状では40ナノの段階でとどまっており、Intelさえ躓いている微細化がたった5年でできるとは思えない。必要な人員が集まるかという問題もある。

湯之上隆著の「半導体有事」(文春新書)では、ラピダスは「ミッション・インポシブル」としている。


資金計画がまったくできていないのが大問題である。メーカー7社が出資するが、各10億円の横並びで、どこかが責任を持ってやるという体制ではない。

他社は既存の製品で稼ぎながら微細化のための投資を行っているが、Rapidusの場合はすくなくとも5年間は無収入である。それまでにはTSMCやサムスンが2ナノを完成させ、市場を握っている可能性が強い。
銀行が融資するとは思えず、どこから5兆円(でやれるとは思えないが)を調達するのだろうか。

経済産業相は「今後も何年間かにわたりかなりの投資になると思う。必要な支援を行っていきたい」と述べているが、結局、政府が資金を出す(そして失敗する)ということにならないだろうか。


付記

5月3日の共同通信によると、「ラピダス」の東会長が共同通信のインタビューに応じ、技術開発関連に2兆円規模の資金が必要との試算を示し、国に中長期的な支援を要請する考えを明らかにした。
量産化に向け工場建設などに3兆円ほどが別途かかるとし、株式上場による資金調達も検討。将来は技術者を中心に千人程度を採用する計画という。

東会長は2兆円規模の資金について、民間からの追加調達は容易でなく「国の支援を中心に考えないといけない」と語った。具体的には毎年度、3千億円規模の国費支援に期待を示す。

当初から、この予定であったと思われる。

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欧州連合(EU)は4月18日、域内での半導体生産の拡大に向けた新法案で合意した。官民で430億ユーロ(約6.3兆円)を投じ、有力メーカーの欧州への誘致をめざす。 (EU予算からの支出は33億ユーロ)

EUは原則として民間企業への補助金を禁じてきたが、例外的に半導体分野では認める。EUだけでなく、加盟国も補助金を出せるようにする。


米国では、
バイデン大統領は2022年8月9日、国内半導体産業支援法「CHIPSプラス法」案に署名し、同法が成立した。

CHIPSに関する527億ドルの予算の内訳は次のとおり。

  1. 商務省製造インセンティブ(390億ドル):半導体の設計、組み立て、試験、先端パッケージング、研究開発のための国内施設・装置の建設、拡張または現代化に対する資金援助。
                      うち、60億ドルは直接融資または融資保証に使用可能。
  2. 商務省研究開発(110億ドル):商務省管轄の半導体関連の研究開発プログラムへの予算充当。
  3. その他(27億ドル):労働力開発や国際的な半導体サプライチェーン強化の取り組みへの予算充当。

また、上記のほか、半導体製造に関する投資に対して25%の税額控除を導入するとしている。

2023/3/13 米商務省、CHIPSプラス法による第1弾の資金援助申請の受け付け開始


韓国産業通商資源部と国土交通部は2023年3月15日、尹錫悦大統領主宰で開かれた非常経済民生会議で、国家先端産業育成戦略、国家先端産業ベルト造成計画などを発表した。

最先端設備を備えた「韓国型 IMEC」を構築し先端技術開発空間に世界の人材を誘致することにした。半導体IMEC を先に作り、二次電池・バイオなどに拡張する。

これを通じて半導体、未来自動車、二次電池、ディスプレー、バイオ、ロボットの6大産業で2026年までに民間主導で550兆ウォンの投資を引き出す。

半導体 340兆ウォン 約34.6兆円 電力・車両など次世代半導体技術を育て、優秀人材を育成  
うち、サムスン電池の投資は300兆ウォン


2023/3/20 韓国の国家先端産業育成戦略、サムスンが30兆円の大投資



チリのボリッチ大統領は4月20日、国内のリチウム産業を国有化すると表明した。チリのリチウム生産量はアルゼンチンに次ぐ世界2位で、シェアは30%にのぼる。 埋蔵量は世界一である。

大統領が主導するチリ左派政権は、クリーンエネルギー移行で重要なリチウムの生産で政府の役割拡大を目指しており、新たな枠組みは民間資本をさらに呼び込む狙いもある。

リチウムはEV向け電池の製造に不可欠で、メキシコも2022年に国有化した。

メキシコで2022年4月19日、国内にあるリチウム資源を国有化するための鉱業法の改正が成立した。今後は原則、民間企業の採掘を認めず、国営企業が独占する見通し。リチウムの需要が高まるなか、重要資源として権益を囲い込む。

資源保有国の保護主義がEV供給網のリスクになってきた。

テスラ幹部は本年2月20日にチリを訪問し、同国のリチウム産業発展への貢献に関心を示し、チリのリチウム政策や、国内でリチウムを生産している米国アルベマールとテスラとの協力機会の可能性、再生可能エネルギーとゼロエミッション輸送への移行を加速するための展望などについて話し合った。

チリ政府はリチウム生産を担う国有企業を設立する。2023年後半に国有企業を設立するための法案を議会に提出する。今後は国有企業がリチウム生産を主導するが、大統領は民間企業の投資も部分的に認める方針を示した。その場合も政府が支配権を握り、過半数の権益を取得する。

現在のメーカーは、チリの特殊植物栄養素・化学製品メーカーのSQM(Sociedad Química y Minera de Chile)と、米国のAlbemarleの2社のみである。SQMとAlbemarleが操業するアタカマ塩湖が現在、チリで採掘されている唯一の塩湖である。

SQMには中国の天斉リチウム(Tianqi Lithium Corporationが出資している。

2018年12月に中国の天斉リチウム(Tianqi Lithium Corporationがカナダの カリウム大手Potash Corporationが所有するSQMの発行済み株式の23.77%を40億6,600万ドルで取得完了した。現在は25.86%を所有し、第二位の株主である。

カリウム大手Potash Corporation社とAgrium社が2017年末に合併してNutrien Ltd.となったが、この合併の承認の条件としてインド競争当局と中国商務部がPotashCorp所有のSQM株式の売却を求めたもの。その結果、中国企業が取得できた。

Albemarle Corporation は、ノースカロライナ州に本拠を置くアメリカの特殊化学品製造会社で、リチウム、臭素、触媒の 3 つの部門で運営されている。
Albemarleは
オーストラリアにある世界最大級のグリーンブッシュ鉱山で天斉リチウムと提携している。

1980年に産業開発公社(CORFO)が45%、米国のFoote Minerals Co.が55%出資で Chilean lithium society Ltdaが設立された。1989年にCORFOが持株をFoote Minerals Co.に売却し、完全民営化した。このFoote Minerals の持株が現在、Albemarle Corporation に移っている。

ロイター通信によると、SQMは2030年まで、Albemarleは2043年までチリでのリチウム生産が認められている。

大統領は「チリ政府は既存の契約を尊重する」と説明して おり、 両社は契約が切れるまでは従来通りリチウム生産を続けられる見通しだが、契約切れを待たずに企業側が権益譲渡を選択する可能性も想定する。 

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チリ は法律でリチウムを戦略的資源と指定し、その生産には国家による非常に厳格な統制が敷かれている。基本法制はピノチェット軍政時代(1973~90年)に出来上がったものである。

・1979年大統領令2886号はリチウムを「戦略的資源」と位置づけ、コンセッションの設定を不可(non-concessible)とした。

在チリでリチウムの生産を行っているSQMと米Albemarleの2社は1979年の法令施行前に産業開発公社(CORFO)と特別操業契約を締結しており、既得権を認められている。

・1980年憲法は、すべての鉱物に関して、地表の土地所有権とは独立に、国家の絶対的・排他的所有権を定める 。探鉱・採掘に関して(操業年数、総生産量の上限設定など厳しい条件付で)、民間に行わせる余地も残した。

・1982年の鉱業権に関する憲法基本法(法18.097)は、炭化水素(ガス・石油など)とリチウムを鉱業権(コンセッション)の対象から外し、その開発は①国家ないし国営企業(CODELCOなど)によって直接、または②行政上のコンセッションもしくは政府との特別操業契約によってのみ行えることとした。リチウムについては将来あり得べき軍事および核融合炉への利用を念頭に置いたものといわれる。

この結果、既得権を認められたSQMと、Albemarleの2社のみが操業している。

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米国地質研究所(USGS)が2023年1月に発表した資料「Mineral Commodity Summaries 2023」によると、チリの現在のリチウム可採埋蔵量は世界シェア35.8%の930万トンで、世界1位を誇る。
2022年の生産量は米国を除く世界シェア30%の3万9,000トンで、オーストラリアの6万1,000トン(同46.9%)に次ぐ第2位となっている。


 米国の生産量のWは、
非公開(Withheld)

https://pubs.usgs.gov/periodicals/mcs2023/mcs2023.pdf


南米ではチリ北部、ボリビア南西部、アルゼンチン
北西部で形成するアンデス山脈沿いの高地(標高4000m級)に「リチウム三角地帯(LithiumTriangle」と呼ばれる塩湖地帯が広がっている。ボリビアは世界最大のウユニ塩湖、チリは世界第2位のアタカマ塩湖 を擁し、アルゼンチンはオンブレ・ムエルト塩湖をはじめとしていくつもの塩湖が点在する。

埋蔵量はチリが930万トンと圧倒的に多い。

米半導体受託製造大手のGlobalFoundries は4月19日、知的財産と企業秘密を不正に利用したとしてIBMを提訴したと発表した。

GlobalFoundriesは米国の半導体製造企業で、ファウンドリとしてはTSMC、Samsungに次いで世界第3位グループ。

半導体受託製造シェア(2022/10~12、台湾トレンドフォース情報)

TSMC 台湾 58.5%
サムスン電子 韓国 15.8%
UMC (聯華電子) 台湾 6.3%
GlobalFoundries 米国 6.2%
その他 13.2%

2008年にAdvanced Micro Devices(AMD)が半導体製造部門を分社化し、The Foundry Companyが発足した。

2009年3月にアブダビ政府傘下の投資会社 Advanced Technology Investment Co. (ATIC)が65.8%、AMDが34.2%出資して、これをGlobalFoundries とした。

直後に半導体製造を手がけるシンガポールのChartered Semiconductorを39億米ドルで買収した。

訴状によると、今回の訴訟内容は下記の通り。

GlobalFoundries(及びその前身)とIBMはニューヨーク州で数十年にわたり共同で技術を開発してきたが、2015年にその技術のライセンスと開示の独占権がGlobalFoundriesに売却された。

しかしIBMは今回、トヨタ自動車やソニーグループなど日本企業8社が出資して設立した半導体メーカー のRapidusと知的所有権および営業秘密を不法に共有した。 IBMとRapidusは2022年12月に提携を発表し、2ナノメートルの半導体製造で協力している。

2022/11/14 次世代半導体の設計・製造基盤確立に向けた取組、先端半導体の国産化へ新会社

また、IBMが2021年にIntelと次世代半導体技術で協業すると発表し、Intelに知的所有権を不法に開示し悪用した。「IBMは、潜在的に数億ドルのライセンス収入やその他の利益を不当に受け取っている」とした。

GlobalFoundriesはIBMに対し、補償的損害賠償および懲罰的損害賠償のほか、営業秘密の使用を禁止する差し止め命令を求めている。またIBMがGlobalFoundriesのエンジニアを採用する動きがRapidusとの提携発表から加速しているとし、こうしたリクルート活動の停止を命じるよう裁判所に求めた。

IBMは「申し立てには全く根拠がない」と反論している。

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過去の報道などから、事態は下記のとおりではないかと推測される。

GlobalFoundriesとIBMは数十年にわたり共同で技術を開発してきた。

2014年10月にIBMはGlobalFoundriesに半導体製造工場(NY州East Fishkill工場とバーモント州Burlington工場)を譲渡すると発表した。しかも売り手のIBMが買い手に15億ドルを支払うというものである。

  • IBMは今後、3年間にわたりGlobalFoundriesに15億米ドルの現金を支払う 。
  • IBMは、半導体製造工場の譲渡費用として、上記現金の支払いを含め、税引き前費用として2014年第3四半期に47億米ドルを計上する。
  • 譲渡される2工場は、過去1年間で7億米ドルの損失を出している 。
  • GlobalFoundriesは、5000人以上に上るIBMの工場の従業員およびASIC設計者に、雇用のオファーを出す予定
  • GlobalFoundriesは、IBMの半導体関連の特許も数千件取得する 。
  • 両社とも、従業員の解雇は行わない方針である。
  • GlobalFoundriesは今後10年間、IBMに対し、22nm/14nm/10nmプロセスのサーバ用プロセッサを独占的に提供する 。

すなわち、IBMはGlobalFoundriesと共同で半導体の開発を進めてきたが、うまくいかず、大赤字 となった。世代遅れの老朽化した製造施設の買い手を探していたが、条件の合う相手が見つからなかった。このため、特許と2工場を、人員整理しないという条件で、GlobalFoundriesに15億ドルをつけて引き渡した。

East Fishkill工場は、45nm/32nmプロセスのSOI(Silicon on Insulator)を中心に、1万5000ウエハー/月を生産していた。
Burlington工場は、4万5000枚(200mmウエハー換算)/月を生産していた。同工場では、携帯電話機向けRFフロントエンドやスイッチ用の130nm/180nm SOIプロセスや、電源IC向けの90nmシリコンゲルマニウムプロセスなど、さまざまなプロセスを導入している。

条件としてGlobalFoundriesはIBMに22nm/14nm/10nm半導体を10年間、独占的に供給するとした。

IBMは、「半導体製造の肝となるプロセス技術は保有しておきたい」としたのに対し、GlobalFoundriesが14nmプロセスノードの製品を製造提供し、その後の10nmも視野に入れたプロセス技術開発を進めると約束した。

GlobalFoundriesは2014年4月に、14nm FinFETプロセスの開発でSamsung Electronicsと提携すると発表した。

IBMは、半導体の微細化加工技術などの研究開発は継続する。

しかし、2018年ころにはプロセス技術開発ではTSMCやSamsungが大きく躍進し、時代は7nmプロセスノードに驀進していた。AMDがZenコアの次世代CPUのファウンドリをGlobalFoundriesからTSMCに切り替えた 。

GlobalFoundriesは2019年8月、7nm FinFETプロセスの開発を無期限に停止すると発表した。量産の微細化レースに残るのは、台湾TSMC、韓国Samsung Electronics、米Intelの3社になった。

GlobalFoundriesは、IBMがそれまで開発に取り組んでいた14nmの製造プロセスを完了させることで合意したが、14nmでは、IBM由来のプロセスではなく、Samsungのプロセスを使って生産し、IBMに供給した。

「次のノード」には10nmが想定されていたが、半導体製造事業での競争状況を踏まえ、GlobalFoundriesは10nmを飛び越えてすぐに7nmに進んだ。GlobalFoundriesは、IBMがこの決定にも賛同したと主張している。 しかし、GlobalFoundriesは2019年8月にこれをギブアップした。

10nm以前のプロセス世代によるロジックデバイスの製造にフォーカスを当てて、周辺チップの供給にリソースを集中させるGlobalFoundriesの決断は正しかった 。GlobalFoundriesは念願の黒字化を果たした。

GlobalFoundriesに15億米ドルの現金付きで技術と工場を渡し、最先端のプロセス技術開発を期待したIBMにとっては「契約不履行」という判断になった。結局IBMは7nmプロセス製品をSamsungに生産委託することになった。

IBMはGlobalFoundriesに対し、契約不履行で訴え、25億米ドルの損害賠償を求めた。

NY州最高裁判事は2021年9月、GlobalFoundriesの詐欺行為については却下したが、契約違反については認め、GlobalFoundriesからの反訴については却下した。IBMにとっては有利な判決である。

2022年7月、この裁判の控訴審でGlobalFoundriesの詐欺行為が認められた。 最終決着はまだと思われる。

もしかすると、今回の提訴はIBMからの訴訟の解決のための交渉材料であるかも分からない。

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IBMがRapidusやIntel と共同開発しているのはこの技術である。10nmまでの半導体製造の技術とは全く異なる。

IBMは当時、10nmまでの半導体の供給を求め、GlobalFoundriesに工場と特許、ノーハウなどを渡した。その時点でも半導体の微細化加工技術などの研究開発は継続するとしていた。

22nm/14nm/10nm半導体の供給を受けるために技術を出したもので、今後の研究開発に支障が出るようなものではなく、恐らく、技術範囲を絞った供与であったと思われる。

今回のGlobalFoundriesの訴訟は、知的財産に関しては無理筋ではないかと思われる。

しかし、IBMがGlobalFoundriesのエンジニアを採用する動きがRapidusとの提携発表から加速しているとし、こうしたリクルート活動の停止を命じるよう裁判所に求め ている点については、問題になるかも分からない。

Rapidusの研究者と技術者は、世界最先端の半導体研究拠点の1つであるニューヨーク州のAlbany NanoTech Complexで、IBMおよび日本IBMの研究者と協働する。Rapidusは、IBM、Applied Materials、サムスン電子、東京エレクトロン、SCREEN、JSR、ニューヨーク州立大学(SUNY)を含むAlbany NanoTech Complexのエコシステムに参画する最新企業とな る。

IBM側もRapidusとの共同開発に備えて人材確保に奔走しており、技術者採用にブレーキがかかれば、共同開発に遅れが生じる可能性がある。

バングラデシュがロシアの支援を得て建設している原子力発電所について、人民元で代金を支払うことで両国政府が合意した。

バングラデシュでは126億5000万ドルを投じて2基の原発を建設する計画で、現在はロシア国営原子力企業ロスアトムと共同で1基目を建設中。

建設費の90%はロシアからの融資で、10年の猶予期間が設けられ28年以内に返済する。

今回は、原発建設の準備作業のためにロシアが払い込んだ融資5億ドルの返済に関係するものである。

バングラデシュ政府高官は「ロシアは当初ルーブルでの支払いを要求してきたが、われわれには不可能だ。従って人民元で支払うことで合意した」と説明した。

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バングラデシュでは1961年に原子力発電計画が浮上、1963年にRooppur(ルプール)を建設地に選定した。

2010年にロシアと原子力協力協定を締結、ルプール発電所計画を国会承認した。

2015年にロシア国営原子力企業ロスアトムと建設契約に調印、総額126.5億ドルで、ロシアが90%を融資する。

2017年11月に1号機着工、2018年7月に2号機が着工した。いずれもVVER-1200 (AES-2006)で各120万kW。

フル稼働すれば、2400メガワットの電力を発電でき、電力不足に苦しむ国内の1500万世帯に十分な電力を供給できる計算となる。


建設費用の90%をロシアからの融資でまかなっており、借入期間は28年、猶予期間は10年となっている。この返済は2027年まで始まらない。

しかし、原発建設の準備作業のためにロシアが払い込んだ融資5億ドルの返済は既に始まっているが、2022年2月にロシアがウクライナに侵攻して以来、バングラデシュは合わせて1億1000万ドルに上る3回の債務返済を履行できなかった。 これを含め、318百万ドルが未払いとなっている。

トラブルは2022年3月にロシアの大手銀行数行が国際的な資金決済の大半を扱う「国際銀行間通信協会(SWIFT)」から締め出されたことで発生した。ルプール原発プロジェクト向けの手続きを扱うロシア政府系金融機関、国営開発対外経済銀行(VEB)も追放された銀行である。

ロシアはバングラデシュ銀行に対し、国内の市中銀行にSWIFTのロシア版といえる「SPFS」への参加を促すよう求めていた。だが、バングラデシュの金融機関は米国の制裁を恐れてSPFSの利用に興味を示さなかった。

2022/3/4 EU、ロシア7銀行をSWIFTから排除

貸付金をルーブルで返済する案に対しても、バングラデシュ政府は複雑な手続きや為替リスクを理由に難色を示していた。

今回、人民元での支払いで合意したもの。

フィンランド南西部のオルキルオト(Olkiluoto)原子力発電所で4月16日、欧州最大級となる3号機(出力160万キロワット)が本格稼働した。

Olkiluoto 

No.1 1979/10  890 MW 沸騰水型(BWR)
No.2 1982/7 890 MW 沸騰水型(BWR)
No.3 2023/4 1,600 MW 欧州加圧水型炉(EPR)
Loviisa   No.1 1977 488 MW ソ連型加圧水型原子炉VVER-440/213e
No.2 1981 488 MW


フィンランドで新たに原発が本格稼働するのは40年以上ぶり。約18年前に着工。当初予定から14年遅れての通常運転開始となった。

フィンランド産業電力はユニット3の許可申請を2000年12月にフィンランド政府に行い、建設は2005年に始まったが、技術に関する問題が遅延を引き起こした。原子炉の基礎コンクリートの凹凸の発生、下請け工場が規格の水準に達していなかった重い鍛造品を提供などがあり、EPRの特徴である二重封じ込め構造の構築にも時間を要した。

独立した4つの緊急冷却装置や溶け落ちた核燃料を冷却する「コアキャッチャー」と呼ばれる設備など、最新の安全対策を備えている。

ウクライナ侵攻後、ロシアは昨年5月にフィンランドへの電力供給を停止した。フィンランドはスウェーデンやノルウェーから電力を輸入している。3号機はフィンランドの電力需要の約14%を担う見通し。


オルキルオト島では世界で唯一の高レベル放射性廃棄物の最終処分場「オンカロ」が建設中である。

地下およそ520メートルの深さまでトンネルを掘り、そこから横穴を広げ放射性廃棄物を処分する。 2024年下半期には運用を開始、その後2120年頃までの100年間にわたり埋設処分に利用、100年後に施設が満杯になった後は、道を埋めて完全に封鎖する。

プルトニウムの半減期は2万4000年で、生物にとって安全なレベルまで放射能が下がるにはおよそ10万年の月日を要するため、10万年にわたって封鎖され続ける。

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数時間前には、ドイツ最後の原発3基が稼働を停止したばかりだった。

4月15日にドイツで稼働中の最後の原子力発電所3基が停止した。

  2022/8/3 ドイツ政府、年末までに停止予定の最後の3基の原発の稼働延長を検討 付記

米政府は4月17日、Inflation Reduction Actにより、消費者が電気自動車(EV)を購入する際に税優遇の対象となる車種の新たなリストを明らかにした。

米政府は自国市場のEVについて、消費者が最大7500ドルの税額控除を得られる販売支援策を採っている。4月18日からInflation Reduction Actに含まれた電池材料についての新たな要件を適用するのにあわせ、対象車種を更新した。

低・中所得者がエコカーなどの新車を購入する際に、下記の条件を満たした場合、1台当たり3,750ドルか、7,500ドルの いずれかの税控除を受けられる。

主な要件(控除額は個人の場合)
税額控除額
価格が5.5万ドル(バンやSUV、ピックアップトラックは8万ドル)未満であること 必須 -
車両の最終組み立てが北米(米国、カナダ、メキシコ)で行われていること 必須 -
電池材料の重要鉱物のうち、調達価格の40%(2027年から80%)が自由貿易協定を結ぶ国で採掘あるいは精製されるか、北米でリサイクルされていること どちらか
必須
3,750ドル
電池用部品の50%(2029年から100%) が北米で製造されていること 3,750ドル


2023年3月28日に「重要鉱物のサプライチェーンの強化に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定」(日米重要鉱物サプライチェーン強化協定:日米CMA)が署名され、即日発効となった。米国は、同協定をインフレ抑制法(IRA)上のFTAとみなす。


発表された対象車種は下記の通り。全て米国メーカーのものである。(Stellantisは多国籍企業だが、対象は元々米国車である。)

最大の控除額7500ドルが適用されるEVとPlug-in Hybridは合計でわずか10車種にとどまる。バッテリーの構成部品や重要鉱物の調達先に関する要件が厳格化され、Plug-in Hybridの車種は大半が対象外となった。

Stellantis、Ford、Teslaが生産する別の計7車種には、最大額の半分となる3750ドルの控除が適用される。

Maker Model

Tax Credit

Stellantis North America
(PSA/ Fiat Chrysler
Chrysler Pacifica $7,500 Plug-in Hybrid
Jeep Wrangler PHEV 4xe $3,750 Plug-in Hybrid
Jeep Grand Cherokee PHEV 4xe $3,750 Plug-in Hybrid
Ford Ford F-150 Lightning $7,500 EV
Ford e-Transit $3,750 EV
Ford Mustang Mach-E $3,750 EV
Ford Escape Plug-in Hybrid $3,750 Plug-in Hybrid
Lincoln Corsair Grand Touring $3,750 Plug-in Hybrid
Lincoln Aviator Grand Touring $7,500 Plug-in Hybrid
GM Chevrolet Bolt $7,500 EV
Cadillac LYRIQ $7,500 EV
Chevrolet Silverado $7,500 EV
Chevrolet Blazer $7,500 EV
Chevrolet Equinox $7,500 EV
Tesla Tesla Model 3 Performance $7,500 EV
Standard Range $3,750
Tesla Model Y $7,500 EV


日欧韓メーカーの車はすべて対象外となった。

各社はそれぞれ、今年初めの時点では少なくとも税額控除の一部が適用される車種を有していたが、18日からは適用外となる。

現代自動車がアラバマ工場でことし3月から生産している「GV70」モデルは、北アメリカでの生産という条件は満たすが、バッテリーが中国製だという理由で除外された。

日産リーフも米国で生産されているが、車載電池に関する二つの要件をどちらも満たせなかった。日産は声明で「サプライヤーと緊密に連携し、将来的には、少なくとも一部の優遇策が適用されると期待している」と強調した。

BMW BMW 330e
BMW X5 xDrive45e
現代自動車 Genesis Electrified GV70
日産自動車 Nissan Leaf
Rivian (USA) Rivian R1S
Rivian R1T
Volkswagen ID.4
Audi Q5 TFSI e Quattro(plug-in hybrid)
Volvo S60(plug-in hybrid)

  * Volvoは資本金の82%を中国の浙江吉利が出資

米国では4万〜5万ドルがEVの売れ筋になって おり、最大7500ドルの税控除は価格競争力を維持するうえで無視できない。各社は税優遇を受けるため、北米生産を加速したり、調達網を見直したり体制整備を急ぐことにな る。

米製薬大手Merckは4月16日、潰瘍性大腸炎やクローン病(炎症性腸疾患)向けの治療薬を開発している米バイオ企業Prometheus Biosciencesを買収すると発表した。買収総額は108億ドル(約1兆4400億円)。1株当たりの買収提示額は200ドルで、14日終値に75%のプレミアムを乗せた水準 である。

ドイツのMerckとは元は同じだが、現在は別で、これと区別するため、米加以外での社名はMSD(Merck Sharp and Dohme)である。

Prometheus Biosciencesは旧社名Precision IBD, Inc.で、2019年10月に社名変更した。

Prometheusの主力製品であるヒト化IgG1モノクローナル抗体(mAb)PRA023は潰瘍性大腸炎、クローン病、全身性硬化症に伴う間質性肺疾患の治療薬として第IIa相臨床試験段階にあり 、最近、期待の持てる結果が公表された。

Prometheusはまた、炎症性腸疾患の抗腫瘍壊死因子mAbであるPR600、Gタンパク質共役受容体モジュレーター低分子であるPR300、 炎症性腸疾患およびその他の免疫介在性疾患の抗サイトカイン受容体mAbであるPR1100、炎症性腸疾患の抗ケモカインmAbであるPR1800、炎症性腸疾患の抗炎症サイトカインmAbであるPR2100の開発も行ってい る。

MerckのCEOは「これによってわれわれは免疫治療事業に力強く足を踏み入れることができ、特許期間の長さを踏まえれば、2030年代のかなりの期間まで持続的な成長が可能になると思う」と語った。

Merckにとって大きな課題の1つが、2030年の前にも特許切れによって減収が予想される主力製品、がん免疫治療薬「キイトルーダ」の穴埋めを見つけること である。CEOは、Prometheus買収に伴う増収効果が、キイトルーダの特許切れのタイミングにちょうど表れる可能性があるとの見方を示した。


世界の医薬品メーカーは、新規製品の自社開発が困難なため、有望な候補を持つ企業の買収を図っており、買収価格は高騰している。資金のある大企業しか対応できない。

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キイトルーダ®(一般名:ペムブロリズマブ、MK-3475)は「抗PD-1抗体」とよばれる免疫チェックポイント阻害薬で、T細胞のPD-1に結合することにより、がん細胞からT細胞に送られているブレーキをかける信号を遮断する。その結果、T細胞が活性化され、抗がん作用が発揮されると考えられている。

癌細胞には、免疫細胞攻撃を防止する「免疫チェックポイント」という仕組みがある。

癌細胞は、免疫細胞からの攻撃を逃れるために、PD-L1 というタンパク質を出し、これが免疫細胞のPD-1 に結合すると、免疫細胞の働きが抑制される。

抗PD-1抗体免疫細胞のPD-1に結合し、PD-1と癌細胞のPD-L1の結合を防止 、免疫細胞ががん細胞を攻撃する。

                             

本庶佑博士はPD-1(プログラム細胞死1)を発見し、PD-1阻害が癌治療に寄与することを実証した。これを受けて小野薬品工業とBristol Myers Squibbが販売しているのがオプジーボで、キイトルーダはこれと同じである。

小野薬品とBristol Myers Squibbは、小野薬品と本庶博士の共有に係る抗PD-1抗体の用途特許および小野薬品工業とBristol Myers Squibbの共有の抗PD-1抗体の物質特許を保有しており、Merckの「キイトルーダ®」の販売等の特許侵害に対し、日本、米国、欧州等において特許侵害訴訟を提起するなど係争していたが、2017年1月にMerckと和解した。Merckは技術料を支払った。

2016/11/30 オプジーボと競合する米メルクの癌免疫薬承認へ                            

韓国最高裁は4月13日、米国半導体大手のQualcommが韓国公取委を相手取って起こした是正命令などの取消請求訴訟で上告を棄却し、公取委の処分が正当だという判決を確定した。
独占禁止法違反での課徴金1兆311億ウォン(約1050億円)が最終確定した。

韓国での同法違反の課徴金としては過去最大額となる。

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問題となったのは、第3世代(3G)の携帯電話ネットワークが使うCDMA(Code Division Multiple Access:符号分割多元接続)技術に関するものである。

QualcommのCDMAライセンスは高額で一方的な条件だと評判が悪い。

QualcommはCDMA技術で半導体と携帯電話の両方にロイヤリティを要求している。QualcommはCDMAに関する広範な特許を抑えており、半導体の回路設計の特許も取得している。

その結果、携帯電話メーカーはCDMA技術に対するロイヤリティを部品と完成品で2度支払う羽目になる。

QualcommのCDMAライセンス契約ではライセンシーが圧倒的に不利なクロスライセンス契約を強要されている。

  • ライセンシーが保有する特許をQualcommに無償で供与する
  • 無償供与した特許をQualcommが他の顧客にライセンスできる
  • Qualcommの顧客にロイヤリティを請求しないこと


    https://obakasanyo.net/qualcomm-license-agreement/



ChatGPTに「QualcommのCDMAライセンスの問題点」を質問すると、下記の回答があった。

QualcommのCDMAライセンスに関する問題点の1つは、競争の欠如です。Qualcommは、CDMA技術に関する特許を保有しており、ライセンス料を取ることができます。この状況により、競合他社が市場に参入することが困難になり、消費者にとっても選択肢が制限されることになります。


さらに、Qualcommは、CDMA技術を使用する携帯電話やスマートフォンの製造業者に対して、高額なライセンス料を要求することがあります。これにより、製造業者のコストが上がり、製品価格が高くなる可能性があります。この問題は、競争がないためにQualcommがライセンス料を自由に設定できることに起因しています。

また、Qualcommは、自社製品に対する競合他社の技術のアクセスを制限することで、市場の競争を阻害しているとの批判があります。このような行動は、消費者にとっても不利益をもたらす可能性があります。

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2009年12月30日、韓国公取委は、Qualcommによる韓国内での違反行為の調査 (第1調査)の結果として、Qualcommに対し課徴金 2,732億ウォンを課し、是正命令を発した。

是正命令は、①差別的なロイヤルティ条件、②モデムチップに対する条件付きリベート(販売奨励金)の提供、③Radio Frequencyチップに対する条件付きリベート(販売奨励金)の提供、④特許権消滅後のロイヤルティの支払の禁止である。

20102月、Qualcommは、課徴金に対する取消しと是正命令に対する停止を求めて、ソウル 高裁提訴した。

20136月、 高裁は、公取委の判断の大部分を維持する判決を下した。

20137月、Qualcommは、判決を不服として 最高裁へ上訴した

最高裁は2019年1月、高裁の下した公取委の第1調査結果による判断の大部分を維持する判決について、課徴金を2,600億ウォン(約230億円)と判断し、是正命令を発した。

韓国では、公正取引関連の訴訟は公取委の処分が適法かどうかを迅速に判断するため、ソウル高裁が1審、最高裁が2審をする二審制で行われる。


韓国公取委は
20152月、Qualcommによる国際的な違反行為があったかについての調査(第2調査)を開始した。

①チップセットメーカーへのライセンス拒絶・制限、②Qualcomm のライセンシーのみにチップセットを供給、③無償のクロスライセンス、などの拘束条件付きライセンス契約に焦点を当てて違法性を調査した。

20161221日、公取委は2調査によって 、モデムチップセット(携帯電話のグラフィックカードなどを制御する装置)のオリジナル技術を保有しているQualcommが、該当技術を必要とするチップセットメーカーに対し特許提供を断ったり制限したりして市場支配的地位を乱用したと判断した。また、チップセットを買おうとする携帯電話メーカーに対し、不要な特許使用権を載せて販売し、損害を与えたと判断した。

公取委は、Qualcommによる国際的な違反行為があったと判断し、Qualcommに対し課徴金1300億ウォンを課し、是正命令を発した。

是正命令1  下記の禁止

①競合チップセットメーカーに対して標準必須特許(SEP)に関するライセンス契約の締結を拒絶すること、
②携帯電話メーカーに対してモデムチップ供給をうけるには事前にライセンス契約の締結を要求 すること(ノーライセンス・ノ
ーチップポリシー)
③携帯電話メーカーとのライセンス契約の締結の際に不当な条件の提示(無償
のグラントバック) をすること

是正命令2.  チップセットメーカーのライセンス要望から60日以内に、チップセットメーカーに特許ライセンス契約案を送付すること。
同契約案には、ライセンス対象特許のリスト、請求項、主要請求項の分析資料及び標準規格との関連性、実施料の算定方法などが具体的に記載されなければならない。


是正命令3.  特許ライセンス契約条件について合意に至ることができなかった場合にはチップセットメーカーが同意する国際商業会議所(ICC)、世界知的所有権機関(WIPO)、裁判所などの独立した第三者機関に判断を求めること

Qualcomm20172月、公取委の2調査結果によって課された課徴金に対する取消し・是正命令に対する停止を求めて、高裁へ提訴した

ソウル高裁は2019年12月、公取委の是正命令10件のうち8件は適法で課徴金も正当だという判断を出した。

高裁は、Qualcommが「市場支配的地位を濫用した」とし、また、チップセット市場内で競争を制限する不当な取引をしたと認定した。

高裁は、公取委による是正命令は10件のうち8件は適法あり、公取委が算定した課徴金は適法であると判断し、Qualcomm からの請求を棄却した。

携帯電話メーカーに対する包括的ライセンス契約と携帯電話の価格を基準として算定した実施料及びクロスグラント(特許保有企業が無償で特許を共有する慣行)に関しては「不利益な取引や不当な取引行為とはみられない」として、それらに関する公取委の是正命令は違法と判断した。


Qualcommは判決に不服して上告したが、最高裁も今回、原審の判断に誤りがないとした。

携帯電話メーカーに不当な契約を強要したとして公取委が科した課徴金は妥当だとする判決を言い渡し、これにより、2016年に公取委が科した過去最大規模となる約1兆311億ウォンの課徴金が確定した。

最高裁の関係者は今回の判決について、公正取引法において妥当性のない条件提示や不利益の強制行為などが市場支配的な地位の乱用行為に当たるかに関する判断基準を再確認し、具体化したものだと説明した。

公取委は、同日の判決に対して、「市場支配的事業者が、独占的地位を維持、拡張するために反競争的事業構造を構築し、競争を制限するのは違法だという点を明確にしたという点で重要な意味がある」という立場を明らかにした。

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Qualcomm の一連の行為について、各国の法的判断は必ずしも一様ではない。

日本の公取委審決(2019/3/15)  排除措置命令を取り消す。公正競争阻害性を有すると認めるに足りる証拠なし。

   https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2019/mar/190315.html

競争政策研究センター 異業種間の標準必須特許ライセンスに関する独占禁止法上の考察  P.25~ Qualcomm 事件の検討

上記ペーパーでは欧州委は997439000 ユーロ(約 1308 億円)の制裁金を課したとあるが、その後、EU司法裁判所は2022年8月に支払い命令を無効とした。

Saudi Aramco の韓国の子会社で石油精製、石油化学事業を行うS-Oil は 3月9日、蔚山市の蔚山工場で大型石油化学事業「Shaheen Project」の着工式を行った。

尹大統領をはじめ、産業通商資源相、蔚山市長、S-OilのCEO、親会社AramcoのCEOなど300人余りが参加した。

Shaheen Project (アラビア語で鷹計画)は、70億ドルを投じて蔚山温山国家産業団地内にスチームクラッカーをはじめとする大規模石油化学生産設備を建設する もので、最大規模の外国人投資であるだけでなく、韓国石油化学分野でも最大規模の投資プロジェクトである。

S-Oil はSaudi Aramcoと双竜グループとの共同経営であったが、Aramcoが双竜の持株を買収 した。現在は韓国取引所に上場され、Aramcoが63.46%を出資し、最大株主である。(第二位株主は韓国年金基金の6.91%)

S-Oilの精油所は蔚山広域市に立地し、日量669,000バレルの精製能力を誇る。

化学製品の現状能力は次の通り。 単位:千ton/year

BTX Facility Benzene 150
Toluene 350
Xylene 450
Xylene Center Para-Xylene 800
Benzene 150
No.2 Aromatics Para-Xylene 1,050
Benzene 300
RFCC Propylene   200
RUC/ODC Complex Ethylene 187
Propylene 710
Propylene Oxide 300
Polypropylene 405
MTBE 370
Benzene 72


サウジアラビアのサルマン皇太子は2022年11月17日に韓国を訪問、韓国企業とサウジの政府や機関、企業がさまざまな超大型協力プロジェクトを始動させた。

韓国産業通商資源部とサウジ投資省は同日、ソウルで「韓国・サウジアラビア投資フォーラム」を開催した。両国政府や企業の関係者300人あまりが出席し、26件の契約や覚書が締結された。

サウジの国営石油会社Aramco の韓国子会社「SーOil」は、韓国で大型石油化学事業「Shaheen Project」を実施することを決めており、フォーラムでは、S-Oilと韓国の建設会社3社との間で、設計・調達・施工契約が結ばれた。

2022/11/21 サウジのムハンマド皇太子、韓国訪問、来日は中止

S-Oilは2022年11月17日にShaheen Project計画を発表した。 

9兆2580億ウォン(70億ドル)を投資して「原油→TC2C(Thermal Crude to Chemical)→スチームクラッカー→石油化学製品」につながる精油 ・石油化学統合設備を建設する。

TC2C (Thermal Crude to Chemical) はLummusの技術で ある。

Lummus Technologyは2022年12月21日、TC2CTM crude-to-chemicals technology の第1号がShaheen Projectに採用されたと発表した。

概要は下図の通り。原油を効率よく分離する熱処理技術や副生物の有効活用などを組み合わせ、原油の約7割を石化製品の主原料に転換できる。常圧蒸留装置なども不要である。

従来に比べ原油からの石油化学製品の生産量が増加するほか、生産コストを低減する効果があるとされる。


最終 製品の生産能力は 次の通り。

エチレン 58万トン、プロピレン 77万トン、ブタジエン 20万トン、ベンゼン 28万トン

LLDPE 88万トン、HDPE 44万トン

 
2026年6月にメカニカルコンプリーション、2026年末から本格的な稼動を開始する予定。

ジャパンディスプレイ(JDI)は4月10日、世界第3位の生産出荷規模を誇る広東省深圳市のディスプレイメーカー のHKC:惠科股份有限公司との間で、グローバル戦略パートナーとして次世代OLED ディスプレイ技術の推進と工場建設 などに関する戦略提携覚書を4月7日付で締結したと発表した。

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JDIは2022年5月に、世界で初めてマスクレス蒸着とフォトリソを組み合わせた方式で画素を形成し、輝度・寿命を大幅に高める次世代OLED「eLEAP」の量産技術を確立した。

また2022年3月には、世界で初めて第6世代量産ラインにおいて、従来の酸化物半導体薄膜トランジスタと比較して電界効果移動度が 2~4 倍以上となるバックプレーン技術「HMO」の開発に成功しており、早期の量産化を目指している。

そのほかを加え、6つの「世界初、世界一」独自技術を持つ。

eLEAP
(次世代OLED)
environment positive(環境ポジティブ)
Lithography with maskless deposition
マスクレス蒸着+フォトリソ方式
Extreme long life, low power, and high luminance
(超長寿命・省電力・高輝度)
Any shape Patterning
(フリーシェイプ・パターニング)

広発光領域でピーク輝度2倍または寿命3倍、フリーシェイプで明るく鮮明な画像を実現
OLED蒸着用マスクを使用せず、洗浄不要

HMO
(High Mobility Oxide)
電界効果移動度従来 OS-TFT 技術と比較し 2倍以上となる高移動度酸化物半導HMOHigh Mobility Oxide技術
及び 4倍以上となる超高移動度酸化物半導体UHMOUltra High Mobility Oxide技術
メタバース
(超高精細ディスプレイ)
圧倒的なリアリティと没入感
高い歩留りと安定した品質
AutoTech EVに対応した統合コックピットの実現
HUDの進化による安全性の向上
Rælclear
(透明ディスプレイ)
高い技術開発力により実現したバックライト無しで表示が可能な液晶ディスプレイで、電源や駆動回路、HDMIと組み合わせて作られた透過率84%を誇るモニターセット。
映し出された映像は、表と裏の両面からクリアに見ることが可能。
新技術・新商品・新事業 独自技術の用途拡大
課題解決型の新規事業

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ジャパンディスプレイは、日立・ソニー・東芝の液晶事業を統合して2012年に発足し、スマホの上位モデルをターゲットに液晶を供給してきた。

しかし、最大顧客の米アップルが iPhone の新モデルで初めて有機ELを採用、有機ELに強い韓国メーカーを前に競争力を失った。

2019年4-6月期の決算で、顧客の在庫調整や米中貿易摩擦の影響を受けた需要減により売上高が減少したほか、白山工場の減損を含む517億円の事業構造改善費用を特別損失として計上し、債務超過となった。

2019/8/14 JDIが債務超過に

経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)は2020年1月31日、独立系投資顧問のいちごアセットマネジメントから最大1008億円の出資を受け入れる方向で最終契約を結んだと発表した。

2020/7/24 JDI、いちごアセットと追加出資受け入れの最終契約締結

現在、親会社「いちご」のScott Callon氏がCEOである。

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今回、中国のパネル大手、恵科電子(HKC)と有機ELパネルの量産化での提携を決めた。

有機ELは韓中勢が席巻する。JDIは上記の多くの技術を持つが、赤字経営が続き、資金力で劣る。

他方、HKC は、近年、大型ディスプレイ分野において急速な成長を遂げているエレクトロニクスメーカーで、2017年以降、中国の重慶、滁州、綿陽、長沙にて次々と第8.6世代ディスプレイ工場での量産を開始して売上を急拡大しており、強力なコスト競争力、販売力、機動力、更には資金力も有している。

JDIとHKC は、JDIの「世界初、世界一」独自技術及び生産技術力、HKC のコスト競争力及び販売力、並びに両社の人材力の融合が、両社の企業価値の飛躍的向上に資するとの考えで一致した。

下記で合意した。

1)グローバル戦略パートナーとして、次世代 OLEDeLEAP」、共同開発センター、ハイエンド車載ディスプレイ事業などについて、長期的・全面的・深い協力

2)
世界最先端の eLEAP 工場を共同で計画・建設し、2025 年内の量産開始を目指す。


JDIが虎の子の技術を供与してHKCが2025年の量産を目指す。

新工場の投資額は数千億円規模になる。

JDIの有機EL技術を使い、HKCが中国国内で工場を建設する。JDI側は工場建設への直接的な投資は行わなず、技術者を送るなどして対価を得る。

新工場にはテレビ向けパネルの生産にも対応できる8.6世代と呼ばれる大型設備を導入する。

日本国内には共同の開発センターを新設する。

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有機ELの権威 城戸淳二博士のブログ  大学教授のぶっちゃけ話(2023/4/12)

そんなに画期的な技術を開発したのであれば、

自社で設備投資してサムスンやLGよりも高性能で低価格な有機ELパネルを量産すれば、

売れまくって、一気に黒字化すると思うのですが、

その辺りが私のような一般ピープルには理解し難いところです。    

国策会社よ、

がんばってくれよ!

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ジャパンディスプレイは産業革新機構の下で液晶メーカーとして再出発した。しかし、最大顧客のアップルの有機EL採用があり、アップルの要請で同社向けに建設した白山工場が契約ミス(Take or Pay条項なし)で売却を余儀なくされた。

同社は2016年末に産業革新機構から750億円を調達、調達資金を有機ELに振り向けることで、競争力を強化した。

同社は一時、ソニーとパナソニックの有機EL事業を統合したJOLEDに51%出資する計画であったが、とりやめた。

そのJOLEDは2023年3月27日、東京地方裁判所に民事再生手続き開始の申し立てを行ったと発表した。JOLEDが培った有機発光ダイオード(OLED)ディスプレーの技術や知的財産権を継承することなどで、ジャパンディスプレイと基本合意した。

2023/3/29 有機EL事業のJOLED、民事再生手続き

ジャパンディスプレイ のeLEAPは、JOLEDが開発していた技術ではなく、液晶に頼ってきたJDIが事業建て直しの核として開発してきたもの。

今後、JOLEDの資産と技術者はJDIに移り、両社の技術が統合される。

但し、折角の優れた技術が、資金難のため自ら事業化できず、技術料で稼ぐだけというのは残念である。

いちごアセットは1108億円を投じてJDIを救済したが、採算が取れるのだろうか。


日本経済新聞によると、米国の天然ガス会社Tellurian Inc.は同社のDriftwood LNG計画について日本やインドの企業と出資交渉をしている。資金調達にメドをつけて2027年の生産開始を目指す。

Tellurian Inc.は 第一期として年産約1100万トンのLNGプラントを南部ルイジアナ州で計画している。

Driftwood LNG計画は年間約2,760万トンのLNG輸出施設で、フェーズ1ではLNGプラント2基(年間最大1,100万トン)を建設する。建設および操業に必要な全ての主要認可を取得し、詳細設計を約30%まで進めており、約1,200エーカーの不動産の購入およびリースを完了している。

同社は2022年4月、Driftwood LNG ターミナルの第1期工事を開始するため、米国建設会社Bechtel Energyと締結したEPC(設計・調達・建設)契約に基づき、プロジェクトを進めていくと発表した。

Bechtelは、解体工事、土木工事、重要な基礎工事を請け負う。設計はすでに約8割を終えた。米国石油サービス大手 Baker Hughesが、2つの天然ガスタービンの製造を請け負う。

2023年2月末までに計10億ドル(約1300億円)を投じている。

Tellurian Inc.は、同社が過半を維持する格好で2〜3社の出資企業を募っており、「日本企業やインド企業も関心を持っている」という。石油メジャーや米国の上流企業とも接触している。

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米国では多くのLNG計画が進展している。

Venture Global LNG は3月13日、Louisiana 州のPlaquemines LNG export plantの第二期計画を決定したと発表した。2025年ごろまでに計約2000万トンを生産する。

Venture Global LNGはルイジアナ州の2カ所にLNG施設を持ち、それぞれで増設を検討していた。

  立地 能力  
Venture Global Plaquemines LNG Plaquemines, Louisiana 年間2000万トン  
Venture Global Calcasieu Pass LNG Cameron, Louisiana 年間1000万トン  
Venture Global CP2 LNG Cameron, Louisiana 年間2000万トン
最高2400万トン
計画段階
Venture Global Delta LNG Plaquemines, Louisiana. 年間2000万トン


2021/11/11 Sinopec、米企業と20年間のLNG売買契約に調印 

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米国のエネルギー企業Sempraの子会社Sempra Infrastructure Partners, LPは3月20日、同社が開発を手掛けるポートアーサーLNG(液化天然ガス)のフェーズ1プロジェクトの開発、建設、運営に関する130億ドル規模の最終投資決定を行ったと発表した。

Port Arthur LNGの第1期は全ての手続きを完了しており、液化設備2系列、LNGタンク3基その他からなり、年間11百万トンのLNG輸出を目指していた。その後、能力を1350万トンに変更した。将来的には4つの液化トレインで最大年間2,700万トンのLNG生産を計画している。

Saudi Aramco と米国のSempra Energyは2020年1月6日、Aramco Services Company が Sempra LNG がテキサス州で開発中のPort Arthur LNG export projectに参加する Interim Project Participation Agreement に調印したと発表した。

AramcoがPort Arthur LNG の第1期分 年間1100万トン(その後、1350万トン)のうち500万トンのLNGを20年間引き取るとともに、第1期計画に25%出資する。今後、最終確定し、正式契約を結ぶ。

しかし、Sempraは2021年6月、この契約がキャンセルされたと発表した。Aramcoの方針見直しによるとされている。

2020/1/14 Saudi Aramco、米国でPort Arthur LNG計画に参加

中国国営新華社通信はTeslaが上海臨港新片区に大型蓄電システム「メガパック」の生産工場を設けると報じた。

4月9日に地元政府との調印式を行った。

同社は2019年から同市内の巨大工場でEVを生産しており、対中投資を一段と強化する。

Gigafactory Shanghai  Model 3、Model Y 生産

2018/7/14 Teslaが上海にEV工場建設へ   2019/10/25 Tesla、中国工場の試運転開始

工場は本年第3四半期に建設開始、来年第2四半期に生産を開始する。当初、年間1万台のメガパック、約40GWh相当の蓄電分を製造する予定で、世界中で販売される。

TeslaはEVのほかにも、再生可能エネルギーに不可欠となる蓄電システムを主力事業に位置づけ、Gigafactory New Yorkを持つ。2022年10月にカリフォルニア州Lathropに新しいバッテリーエネルギー貯蔵システムMegapackを開設した。

米国以外にメガパックの生産拠点を設けるのは初めて。

Elon Musk CEO は上海の工場はカリフォリニアで昨年稼働したMegapackを補完するものだとしている。

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 ・ Gigafactory New York 

パナソニックとテスラは2016年12月に同工場での共同生産を発表し、2017年夏からバッファロー工場での太陽電池セルとモジュールの生産を 開始した。テスラは2016年8月にSolarCityを買収し太陽光発電事業に参入しており、米国ネバダ州の「ギガファクトリー」における電気自動車用電池の生産と同様、太陽電池でも両社による共同展開を狙いとしていた。

しかし、パナソニックは2020年2月26日、Teslaと共同で運営していた米国バッファロー工場での太陽電池セルおよびモジュールの生産を2020年5月までに停止し、2020年9月に撤退すると発表した。

2017/1/11 Tesla Motors とパナソニック、「Gigafactory」でバッテリーの生産開始

 ・ Megapack Lathrop

能力40GWhで、年間13,000台以上のメガパックの生産が可能。


参考  Tesla 工場一覧 2023/3/6 テスラ、メキシコに新工場

米国で経口中絶薬の認可を差し止める判決と、認可変更を禁止する相反する判決が出た。

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米連邦最高裁は2022年6月24日、1973年の「Roe v. Wade判決」を覆す判断を下した。

「中絶は深い道徳上の問題だ。中絶の権利は憲法に明記されておらず、歴史や伝統に根ざしているわけでもない。憲法は州が中絶を規制したり、禁止したりすることを禁じていない」と結論づけた。

保守派判事5人が支持、リベラル派判事3人が反対し、ロバーツ長官も中絶が妊娠中期まで認められることに根拠がないとして州法の合憲性を認めた。(但し、中絶を選ぶ権利まで取り消すことには反対した。)

ミシシッピ州法については「胎児の生命を保護することなど州側の正当な利益があり、州法には合理的な根拠がある」と判断。州法を「違憲だ」とした連邦控訴裁(高裁)の判決を破棄し、審理を差し戻した。

中絶の権利に対する憲法の保障がなくなり、全米50州の26州で中絶が事実上禁止または大幅に制限される見込み。

2022/5/10 米最高裁の中絶権判例を覆す意見草案 付記

米食品医薬品局(FDA)は2023年1月、妊娠中絶に使用される経口薬「ミフェプリストン」の薬局での販売を許可すると発表した。

商品名:Mifeprex(一般名:mifepristone)は、妊娠を続けるために必要な黄体ホルモンのはたらきを抑える経口薬で、この薬をのんだ後、子宮を収縮させる働きがあるミソプロストールをのむことで中絶を起こすもので、世界で普及している。日本でも現在承認申請されて審議されている。

FDAが2000年に承認して以来、370万人以上が使用してきた。FDAは承認当初、妊娠7週までの使用を認め、2016年に妊娠10週まで延長した。

日本では、2021年12月に欧州のLinepharmaの日本子会社がミフェプリストン及びミソプロストールの製造販売承認の申請を行った。

本年3月中にも薬事分科会で審議予定だったが、募集したパブリック・コメントが多数寄せられたため、審議予定をいったん見送った。

付記

厚生労働省の薬事分科会は4月21日、人工妊娠中絶のための飲み薬「メフィーゴパック」について、製造販売の承認を了承した。厚労相が近く承認する見通し。 (4/28 承認) 国内では初の経口中絶薬。

妊娠9週までの初期中絶が対象。妊娠の継続に必要な黄体ホルモンの作用を抑える「ミフェプリストン」を1錠飲み、36~48時間後に子宮を収縮させる「ミソプロストール」4錠を服用する。

米国では以前はこの錠剤は専門の医院でのみ調剤され、女性は直接受け取る必要があった。今回、小売薬局を通じての販売を可能にし、薬局はこれまで患者が直接受け取る必要があった錠剤を郵送で送ることができるようになる 。

FDAの規則緩和を受け、米国での中絶処置の半数以上を占める経口中絶薬へのアクセスは中絶が合法とされている州では容易になる。

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米テキサス州連邦地裁は4月7日、FDAが2000年に承認した中絶薬mifepristoneについて、認可を差し止める判断を下した。

テキサス州では人工中絶に反対する市民団体が、mifepristoneの安全性確認が不十分だと主張して使用停止を連邦地裁に訴えた。

これについて、ドナルド・トランプ前大統領が在任中に指名したMatthew Kacsmaryk判事は訴えを認め、FDAによる認可は、特定の医薬品に関する迅速認可のルールに違反したとの判断を示した。さらに、mifepristoneの「心理的影響」をFDAが「十分に考慮しなかった」ことの「重大性は看過できない」と指摘し、「生殖機能が発達中の18歳未満の少女への影響」が確認されていなかったと述べた。

その上で、FDAに控訴する時間を与えるため、判事自身がこの決定を7日間 一時停止(stay)した。

米司法省は、テキサス州地裁の判断を不服として連邦高裁に控訴した。

バイデン大統領は声明で、テキサス州の地裁判断を「女性の基本的自由を奪い、健康を危険にさらす前例のない措置だ」と厳しく非難した。


mifepristoneが禁止されればもう一方の薬ミソプロストールだけで処置することになり、効果が低下する。

付記 司法省は最高裁に介入を求め、係争中は流通を全面的に認めることを求めた。

   最高裁は4月19日に判断する予定であったが、延期し、4月21日まで流通を認めると発表した。


この判決後1時間以内に、ワシントン州の判事がFDAにmifepristoneの使用に変更を加えることを禁止する真逆の判決を下した。

バラク・オバマ元大統領の在任中に指名されたThomas O. Rice連邦地裁判事は、人工中絶を州法などで認める民主党知事の17州と首都ワシントンにおいて、テキサス連邦地裁の判断の適用を差し止め、mifepristoneの使用を引き続き認めるとの判断を示した。

ワシントン州の知事(民主党)は4月4日、mifepristoneが全国的に入手できなくなった場合に備えて、3年分を州内で備蓄したと発表していた。


この問題の最終判断は連邦最高裁へと至る可能性が高まった。

日本原子力発電の敦賀原発2号機の再稼働に向けた審査について、原子力規制委員会は4月5日、日本原電が審査資料の誤記を繰り返し 、改善がみられなかったとして、審査を一時中断することを決めた。

2020年2月にデータの無断書き換えが発覚、審査が約2年中断したが、2022年12月に再発防止の社内態勢が整ったとして審査を再開した。 しかし、審査が再開した後も、昨年12月に157件、3月には更に8件の誤りを報告した。資料の誤りは累計で約1300件に上り、実質的な審査ができていない。

今後の方針として、
①申請書をいったん取り下げさせ、内容を精査した上で再申請させる
②申請書のうち、誤りが多数見つかっている原子炉直下の断層に関する部分を修正し、8月末までに補正を提出させる――の2案が示された。  

規制委はこの日の議論で、②案を採用することを決定 した。

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同原発は原子炉建屋の直下の断層が活断層かどうかが焦点となっている。

原発敷地内の断層を調査した原子力規制委員会が2012年12月10日、外部の専門家4人を交えた評価会合で、原子炉建屋直下の断層を活断層の可能性が高いと判断した。

敦賀原発には、1、2号機の原子炉建屋直下を含め、敷地内に約160の断層がある。さらに、活断層の「浦底断層」が原子炉建屋の約200メートル東を通っている。このため、浦底断層が動くとき、原子炉建屋直下の断層が連動するかどうかが焦点になっていた。

現地調査では、2号機直下を通る断層「D-1」と浦底断層の合流地点付近を重点調査。D-1の近くに新たな断層 (K断層及びG断層)が確認され、K断層、G断層及びD-1破砕帯は、一連の構造である可能性が高い。断層ができた原因は浦底断層の活動とほぼ同じ力が加わったためとの見方で専門家らが一致した。力のかかり方は現在も変わらないとみられ、評価会合では、この断層は将来も動く可能性が否定できないと結論づけた。

これに対し日本原電側は、K断層は途中で消滅し、2号機原子炉建屋の方向に延びていないこと、また、G断層及びD-1破砕帯は一連の構造であるが、K断層は一連ではないと主張する。

日本原電は2015年11月に敦賀原発2号機の安全審査を規制委に申請した。規制委は2号機直下の破砕帯は活断層であるとの判断を下しているが、日本原電はこれに反発し適合性審査の場の論争の決着を狙う。

2012年9月に発足した規制委は旧原子力安全・保安院から検証作業を引き継ぎ、地質や地形、地震などの専門家からなる有識者会合を6つの原発ごとに設置、現場調査も含めた審査を開始した。
検証が始まった段階では、原子炉直下にある破砕帯が「活断層である」、あるいは「活断層であることを否定できない」と有識者会合が認定すれば、再稼働に向けた審査には入れず、事実上、廃炉が確定すると受け取られていた。

しかし規制委の姿勢は変わった。 委員会の設置法には有識者会合に関し法的な権限を定める記載がないため、有識者会合の結論を「重要な知見のひとつとして参考」とし、最終的な判断は適合性審査の場でを下す方向に転じた。

日本原電は申請に合わせて、地震など自然災害や電源喪失に備えた追加的安全対策を公表した。追加工事に約750億円を投じる計画で、すでに施した対策と合わせて約900億円を敦賀2号機の再稼働に投じる。


日本原電が提出した資料に関し、2019年に1000カ所以上の記載不備が見つかった。

2020年2月、同社が提出した「ボーリング柱状図」と呼ばれる断層岩の状態を観察記録したデータを無断で書き換えていたことが発覚し た。無断の書き換えは計80カ所に上った。

原電が、原子炉建屋直下に活断層があるかどうかの判断に必要な調査資料の記述を書き換えていた 。

書き換えられたのは、原電が2012年に敷地内で実施したボーリング調査の結果 の採取した地層の観察記録で、2018年の審査会合の資料では「未固結」などとしていた記述が、この日は「固結」に変わっていた。原電の説明はなく、規制委が計900ページに及ぶ資料の中から見つけた。

記述が変わった部分は少なくとも十数カ所あるという。観察記録は科学的な「生データ」で本来変えてはいけない。

原電によると、昨秋以降、同じ地層を顕微鏡などで詳しく調べたところ、肉眼で見るなどした元の観察記録と合わなかったため、記述を書き換えたという。規制委の石渡明委員は「基本的なデータについて、前の記述を残すのではなく、削って書き直すのは非常に問題がある。この資料をもとに審査はできない」と厳しく指摘した。

規制委は2021年8月、資料の信頼性が確保される必要があるとして審査を中断、原電本店に立ち入り検査するなどして業務の確認を進めてきた。

この結果、2022年10月26日の定例会合で「資料を作成するプロセスの改善が確認できた」として、1年以上中断していた再稼働に向けた審査を再開することを決めた。

規制委は社内規定が整備されたことなどを踏まえ「継続的に(審査資料の)品質を確保する取り組みがなされている」と評価した。

書き換えの背景として資料作成の体制が不十分だった点を指摘したが、「審査官を錯誤させる目的で意図的に審査資料の書き換えを行ったことは確認できなかった」とした。

規制委は2022年12月9日、再発防止の社内態勢が整ったとして審査を再開したが、新たに提出資料の誤りが157件見つかった。

本年3月17日の審査会合で、原電は再び審査資料の誤り8件を報告した。観察する地層の場所を間違えるという基本的なミスだった。しかも、規制委からの指示で資料の再精査をする中で見つかった。

原子力規制庁の審査担当者は「こちらから指摘しなければ、今回の誤りも見つからなかった。非常に遺憾」と憤った。

規制委の山中委員長は3月29日の会見で「審査の打ち切りも含め、最後の決断をする」と述べた。

米連邦取引委員会(FTC)は4月3日、遺伝子診断機器大手の米Illuminaに対し、同社のグループでがん診断を手がけるGRAILを切り離すよう命じた。両社の統合はがん診断技術の革新の遅れや患者の負担増を招きかねないと判断した。

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米国の遺伝子解析ツール開発会社Illumina, Inc.は2020年9月21日、がん検査技術の開発を手掛ける米新興企業GRAILを80億ドルで買収することで合意した。
Grailの株主は35億ドルの現金とIlluminaの普通株45億ドル相当を受け取る。両社の取締役会はすでに買収を承認している。

GRAILは元々、Illuminaが設立した。世界最大のDNAシーケンサー(塩基配列読み取り装置)メーカーであるIlluminaは2016年1月10日、簡単な血液検査からがんスクリーニングを可能にするため、新会社GRAILの設立を発表した。
Illumina のsequencing technologyを使用し、血中の循環核酸を直接測定する全がんのスクリーニング検査を開発する。

GRAILはIlluminaが過半数を所有する別会社として設立、シカゴ大学での革新的な技術事業化イニシアティブをスピンオフして1986年に設立されたベンチャーキャピタルのARCH Venture Partners、アマゾン創業者のBezos Expeditions、Microsoft創業者のBill Gates、ベンチャーキャピタルのSutter Hill Venturesの参加型投資を得ている。

今回の合併について、IlluminaとGRAILが協力すれば、GRAILの革新的な複数がん早期発見用の血液検査をより幅広くより早く普及させることができるとした。

米FTCは2021年3月30日、IlluminaによるGRAILの買収を差し止めを求める訴訟を首都ワシントンの連邦地裁に起こした。

2021/4/8 米FTC、Illumina によるGRAIL買収に異議  

Illuminaは2021年8月18日、GRAILの買収を完了したと発表した。ただし、米連邦取引委員会(FTC)や欧州委員会(EC)の独禁法審査が終わっておらず、それまでは、独立した別会社のままにするとした。

米国ではF.T.C. administrative judge(行政法判事)が審理中だが、FTC勝利はほぼ確実であるとみられた。

2022/7/26 米Illuminaの元子会社Grail 買収に関する欧米での独禁法問題 

EUは2022年9月6日、IlluminaによるGrail 買収はEU競争法違反の疑いがあると警告する「異議告知書」を両社に送付した。欧州委員会による独占禁止法の調査終了前に買収を完了し、市場競争がゆがめられたとの見解を示した。今後、異議告知書に対する反論の機会が与えられ、その上で欧州委が最終的に違反を認定すれば、両社に年間売上高の最大10%を罰金として科すことになる。

Illuminaは「われわれは欧州委にグレイルの取引を調査する権限があるとの見解にも、制裁金を科す根拠にも同意しない」としている。


他方、米国では行政法判事は2022年9月1日に買収は競争を阻害しないとし判断した。FTCのルールでは、この決定は FTCでレビュー可能で、スタッフは手続きを行った。

米連邦取引委員会(FTC)は4月3日、Illuminaに対しGRAILを切り離すよう命じた。両社の合併により競争が損なわれるとして、合併を支持した行政法判事の判断を覆した。

IlluminaはFTCの今回の判断を不服として米連邦裁判所に申し立てる構えを示しており、その間、FTCの命令は差し止められる。


なお、著名投資家のCarl Icahn が同社の取締役会に3人を推薦する予定だとWall Street Journalが報じた。規制当局の反対にもかかわらずGrailの買収に踏み切ったことで、株主に約500億ドルの損害を与えたと主張している。

韓国の国会は3月30日、半導体などへの投資を促進するために企業に税制優遇措置を与えることにより、同国の半導体産業をさらに後押しする法律案「租税特例制限法の一部改正法律案」を承認した。


「K-CHIPS法」とも呼ばれる同法は、国家戦略技術の投資税額控除率を引き上げる。

同法における国家戦略技術には半導体、二次電池、ワクチン、ディスプレイ、電気自動車など未来型移動手段が含まれた。

同分野の大企業と中堅企業は現行の8%から15%に、中小企業は16%から25%に税額控除率が拡大される。

更に、 直前3年間の年平均投資金に対する投資金の増加分に対しては、今年に限って10%の臨時投資税額控除の恩恵も提供する。

適用期間は、今のところ2024年12月末まで。

政府の企財部は、「半導体への投資に25%の税額控除の恩恵を与えることで、米国など半導体強国に対して世界最高レベルの税制支援が可能になった」と説明した。


米国商務省は2月28日、The CHIPS and Science Act(CHIPSプラス法)に基づく、半導体産業に対する第1弾の資金援助申請の受け付けを開始すると発表した。


韓国では申請内容に不満を持ち、各社は申請するかどうか、ためらっている。韓国政府も米政府に懸念を伝えている。


申請は3段階に分かれ、第1弾となる今回は商業用の半導体製造施設の建設、拡張、現代化が資金援助の対象となる。今春後半には素材や製造装置施設、今秋には研究開発施設に関する申請を受け付ける。

CHIPSに関する527億ドルの予算の内訳は次のとおり。

  1. 商務省製造インセンティブ(390億ドル):
    半導体の設計、組み立て、試験、先端パッケージング、研究開発のための国内施設・装置の建設、拡張または現代化に対する資金援助。
    うち、60億ドルは直接融資または融資保証に使用可能。
  2. 商務省研究開発(110億ドル):商務省管轄の半導体関連の研究開発プログラムへの予算充当。
  3. その他(27億ドル):労働力開発や国際的な半導体サプライチェーン強化の取り組みへの予算充当。

また、上記のほか、半導体製造に関する投資に対して25%の税額控除を導入するとしている。

米政府はCHIPS法に基づく補助金を申請する半導体企業に対し、ウェハの生産能力、製造歩留まり、ウェハの予定販売価格およびその推移予測、長期利益計画などの詳細な財務予測情報を国立標準技術研究所に提出するよう求めており、企業は、さまざまな営業秘密情報の開示要求やペーパーワークなどに翻弄されているという。

米商務省は3月27日、半導体補助金を申請する企業が予想キャッシュフローなど収益性指標を明らかにする際に単純に数字だけでなく算出方式を検証できるエクセルファイル形態で提出しなければならないと明らかにした。

商務省が提示した例示には半導体工場のウエハーの種類別生産能力、稼動率、予想歩留まり、生産初年度販売価格、その後の年度別生産量と販売価格増減などが含まれた。半導体を生産するのに使われる素材、消耗品、化学薬品と工場運営に必要な人件費と公共料金、研究開発費用も入力しなければならない。このほかにも従業員の類型別雇用人数と製造に使われる素材別費用まで生産に関連した詳細なデータをすべて公開するよう求めた。

公表されている半導体の歩留まりの大部分は推定値であり正確な歩留まりは核心営業秘密に属する。

「半導体は原価構造を公開すればどのような技術をどのように使い、どのような工程を導入したのか敏感な情報が推定できる。競合相手である米マイクロンにこうした機密が伝われば韓国企業の競争力に相当な打撃になりかねない」との声がある。

米国政府は又、補助金受給企業は10年間にわたり中国にある半導体工場への投資に制限を受けることとなる。

米韓政府の交渉で、先端プロセスで5%、旧式プロセスでは10%という設備拡張制限条項さえ守れば、ひとまず10年間は中国工場を安定して稼働できることになった。

また、当初合意した基準以上に利益を上げた場合にその一部を米政府と共有することが義務付けられている。

2023/3/13 米商務省、CHIPSプラス法による第1弾の資金援助申請の受け付け開始

SKグループは、最先端の半導体パッケージング工場の建設を含め、米国の半導体部門に150億ドルの投資を計画している。SK Hynixは、米国工場建設そのものは計画通り実行するが、米国のCHIPS法の補助金申請プロセスが厳しすぎると感じており、補助金を申請するかどうかまだ検討していると している。

Samsungも、米テキサス州に総工費250億ドル超の半導体工場を建設中だが、SK Hynix同様、補助金を申請するか否かの姿勢を示していない。

産業通商資源省は「半導体法で定められた条件が事業の不確実性を高め、企業の経営権や技術権を侵害し、投資先としての米国の魅力を損ねる可能性がある」と述べた。

尹大統領は3月30日、ソウルを訪問した米国通商代表部(USTR)のタイ代表と会談し、「過剰な情報提供」を巡る企業の懸念を考慮するよう米政府に求めた。韓国産業通商資源省の通商交渉本部長は、タイ代表との会談で、サムスン電子やSKハイニックスなど韓国半導体企業にとって、米国の新しい半導体補助金の受給条件は重荷となる可能性があると述べた。

西村経済産業相は3月31日、最先端の半導体製造装置23品目について輸出規制を強化すると発表した。改正省令を5月に公布、7月に施行する。

「高性能な先端半導体、これは軍事的な用途に使用された場合、国際的な平和および安全の維持を妨げる恐れがある」 西村大臣はこのように話し、高性能な半導体の製造装置について輸出管理を強化すると発表した。

最先端半導体をめぐっては米中の覇権争いが激しさを増しており、米国が日本やオランダに協力を呼びかけていた。  

バイデン米政権は2022年10月7日、中国への半導体先端技術(14〜16ナノメートル以下のロジック半導体の製造などに必要な装置や技術)の新しい輸出規制を実施すると発表した。軍事開発に欠かせないAIやスーパーコンピューターに使われる先端半導体の輸出を制限、さらに特定の先端半導体を扱う中国企業の工場に対し、米国製の製造装置を販売することも原則禁止する。

2022/10/10 米国、半導体の対中輸出制限を拡大

米国は日本とオランダにも協力を求めていたが、オランダは3月8日に先端半導体製造装置の輸出規制を強化すると表明していた。2023年の夏までに公表するが、半導体製造装置のメーカー ASMLが半導体メーカーに販売している深紫外線(DUV)露光装置に関する技術が影響を受ける。

JETROによると、中国向けの半導体製造装置全体の輸出は日本が31.5%を占め、最大である。今回の規制強化はそのうちの最先端の23品目だけでる。

今回、「国際的な安全保障環境が厳しさを増すなか、軍事転用防止目的としてWassenaar Arrangementを補完すもに半導体製造装置関する関係国の最新の輸出管理動向なども総合的に勘案し、特定の貨物及び技術輸出管理の対象に追加する 」こととした。

我が国をはじめとする主要国では、武器や軍事転用可能な貨物・技術が、我が国及び国際社会の安全性を脅かす国家やテロリスト等、懸念活動を行うおそれのある者に渡ることを防ぐため、先進国を中心とした国際的な枠組み(国際輸出管理レジーム)を作り、国際社会と協調して輸出等の管理を行っている。

国際輸出管理レジーム参加国一覧表

(WA参加国は42カ国で中国は含まれない。)


ワッセナー・アレンジメントとは、通常兵器及び関連汎用品・技術の輸出管理を実施することにより、地域の安定を損なう可能性のある通常兵器の過度の移転と蓄積を防止する目的で1996年7月に成立した国際的申し合わせに基づく国際的輸出管理体制である。

1 目的
  • (1)通常兵器及び機微な関連汎用品・技術の移転に関する透明性の増大及びより責任ある管理を実現し、それらの過度の蓄積を防止することにより、地域及び国際社会の安全と安定に寄与する。
  • (2)グローバルなテロとの闘いの一環として、テロリスト・グループ等による通常兵器及び機微な関連汎用品・技術の取得を防止する。
2 設立の経緯
1994年3月末に、ココムが解消されたことを踏まえ、1995年12月、新たな輸出管理体制の設立について関係国間で政治的な申合せが行われ、1996年7月の設立総会をもって正式に「ワッセナー・アレンジメント(WA)」が発足した。
なお、WAの名称は、設立のための協議が行われたオランダのワッセナー市にちなんで名付けられたものである。

3 基本的枠組み
 WAは、法的拘束力を有する国際約束に基づく枠組みではなく、通常兵器及び機微な関連汎用品・技術の供給能力を有し、かつ不拡散のために努力する意志を有する参加国による紳士的な申合せとして存在している。


参加国は、通常兵器及び関連汎用品・技術に関してWAで合意されたリストに掲載された品目について、国内法令(我が国においては、外国為替及び外国貿易法、輸出貿易管理令、外国為替管理令等)に基づき、輸出管理を実施している。

(a)汎用品・技術リスト:9カテゴリーに分類された「基本リスト」、基本リストの中でもより機微なものと位置づけられる汎用品・技術を抜粋した「機微品目リスト」及び「特に機微な品目リスト」の3種が存在する。

 【基本リストの9カテゴリー】
  (1)先端材料(超伝導材料、セラミック等)
  (2)材料加工(工作機械、ロボット等)
  (3)エレクトロニクス(集積回路、半導体等)
  (4)コンピュータ
  (5)通信関連(ケーブル、暗号装置等)
  (6)センサー・レーザー(ソナー、暗視センサー、レーダー等)
  (7)航法装置(ジャイロスコープ、GPS等)
  (8)海洋関連(潜水艇、水中用ロボット等)
  (9)推進装置(ロケット推進装置、無人航空機等)

(b)軍需品リスト:22項目にわたって武器(通常兵器)等を全般的に網羅したリスト。


今回、下記を含む23品目を輸出を制限する「リスト規制」の対象に加える。 軍事転用の防止が目的だとしている。

東京エレクトロンやニコン、SCREENホールディングス (京都市にある半導体・液晶製造装置・印刷関連機器などの産業用機器を製造する企業グループの持株会社)など10社程度が影響を受けるとみられる。

メーカー
真空状態で不純物を除去する洗浄装置 SCREENホールディングス、東京エレクトロンなど
極端紫外線(EUV)フォトマスク向けの成膜装置 東京エレクトロン、KOKUSAI ELECTRIC、アルバックなど
EUVフォトマスク向けの防護カバー ニコン、三井化学など
フッ化アルゴン(ArF)を使う液浸露光装置   ニコンなど
記憶素子を立体的に積み上げるエッチング装置 東京エレクトロン、日立ハイテクなど


詳細は省令改正案 参照


対象品目は輸出時に経産省の審査を受ける。

審査が簡略化されるのは、Wassenaar Arrangement加盟の米国や韓国、台湾など42カ国・地域(国際輸出管理レジーム参加国一覧表 参照)に限られ、中国は含まれていない。(ロシアは含まれている)

省令改正に向けて3月31日からパブリックコメントの募集を始め、省令改正は5月の公布、7月の施行を予定する。


付記   中国外交部の反応

「日本側はこれまで中国側との意思疎通で、両国の経済・貿易関係は緊密であり、日本側は対中協力の推進に尽力し、『脱中国化』の手段を取ることはないと繰り返し表明してきた。日本側が実際の行動によってこの姿勢表明を実行に移し、公正な立場と市場原則を堅持し、自らの長期的利益の観点に立ち、グローバルな産業・サプライチェーンの安定性と円滑性を維持し、自由で開かれた国際貿易秩序を維持し、中日両国及び双方の企業の共通利益を維持することを望む」

「中国は世界最大の半導体市場であり、中国の集積回路輸入額は年間6000億ドル近くに達する。日本にとって中国は最大の半導体輸出市場であり、日本の対中輸出額は年間100億ドルを超える。中国市場は日本の半導体機器輸出シェアの4分の1を占め、中日双方はこれまで互恵・ウィンウィンの協力を実施してきた。日本側の講じようとする対中輸出管理は、この地域、さらには世界の半導体産業のサプライチェーンに影響を与えるだけでなく、日本企業にも損害をもたらすだろう」

「中国は日本の規制の影響を評価し、日本側が人為的に中日の通常の半導体産業協力に制限を設け、中国側の利益を深刻に損なった場合、中国側は座視することはせず、断固として対処する」

OPECプラスは4月2日、5月から日量115万バレルの減産を実施すると発表した。市場の安定を維持するために供給を据え置くとこれまで約束していたため、協調減産は意表を突く格好となった。

ロシアが3月から単独で実施している減産を加えると、昨年末比で日量 165万バレルの減産となる。ロシアは6月までの減産としていたが、これを更に延長する。

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石油輸出国機構(OPEC)と非OPEC主要産油国で構成する「OPECプラス」は2022年10月5日にウィーンで久しぶりに対面形式により閣僚級会合を開き、11月の日量200万バレル減産で合意した。

これまでの経緯  2022/10/6 OPECプラス、11月は日量200万バレル減産

OPECプラスは12月4日、前回会合で決定した日量200万バレルの減産を維持することで合意した。

サウジアラビアのエネルギー相は2023年3月14日、OPECプラスが昨年10月に合意した減産方針を2023年末まで継続すると述べた。


OPECプラスとは別に、ロシアのノバク副首相は2023年2月10日、西側諸国がロシア産石油・石油製品に上限価格を設定したことを受け、3月に石油生産を約5%、日量50万バレル削減すると述べた。

「今日現在、生産した石油全量を全て販売しているが、すでに述べている通り、『価格上限』規則を順守する者には直接または間接的に販売しない。ロシアは3月に日量50万バレルの自主的な減産を行う。これは市場の関係回復に寄与するだろう」と述べた。当面、6月までの減産としていた。


今回、サウジアラビアは5月から日量50万バレルの供給削減を表明、クウェートやアラブ首長国連邦(UAE)、アルジェリアなども同様に減産を発表した。

ロシアは減産を当初6月までとしていたが、その後も延長する。

千バレル
サウジアラビア 500
イラク 211
UAE 144
クウェート 128
カザフスタン 78
アルジェリア 48
オマーン 40
小計 1,149
ロシア 500
合計 1,649

従来までの200万バレル減産に加え、合計で365万バレルの減産となる。

最近は価格の変動が見られるものの、市場では今年後半には供給が逼迫すると見込まれていたため、著しい供給減となる。

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