2024年5月アーカイブ


小林製薬の「紅麹」の成分を含むサプリメントを摂取した人が腎臓の病気などを発症した問題で、厚生労働省と国立医薬品食品衛生研究所は5月28日、「工場内の青カビが培養段階で混入して『プベルル酸』と他の2種類の化合物がつくられたと推定される」と公表した。

さらに、これらの化合物を投与する動物実験で、腎臓の組織への毒性が確認された。引き続き原因物質の特定を進める。

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小林製薬の紅麹原料を含む機能性表示食品による健康被害を巡り、厚生労働省は3月29日、腎疾患の原因と推定される成分が「プベルル酸」の可能性があると同社が報告したと発表した。

小林製薬は3月29日、紅麹原料の一部のロットで検出された不明の「成分X」について、分子量150~250の環状構造を有する化合物であり、これまでに、プべルル酸などいくつかの既知の化合物に絞り込んでいることを明らかにした。

プベルル酸puberulic acid)

1932年に Birkinshaw と Raistrick が糸状不完全菌類 Penicillium puberulum Bainier から産生されるC8H6O6の化学式を持つ化合物が存在することを報告し、これをプベルル酸と命名した。

  C8H6O6 (2,5-Dihydroxyterephthalic acid)

細菌の増殖を抑える抗生物質(抗菌薬)の特性を持つが、毒性が非常に高いという。 プベルル酸はマラリア原虫に対する効果も高く、関連物質は抗マラリア薬の候補として研究されている。

感染症の原因となるマラリア原虫に効果があることを突き止めていた北里大のチームは2017年、マウス5匹に注射した実験で4匹が死んだと報告。
しかし今回のサプリで問題となった腎臓への影響はわかっておらず、プベルル酸以外の物質が腎障害を引き起こした可能性も残る。

2024/3/30 紅麹関連情報

これまでに5人が死亡、281人が入院している。

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厚労省の発表によると、小林製薬の大阪工場(昨年12月に閉鎖)と和歌山県紀の川市にある子会社の工場の両方に青カビが存在していたことが確認され、採取して培養したところ、被害が報告された製品からも検出されている「プベルル酸」がつくられた。

健康被害の訴えが集中している昨年6~8月の製造分からは、プベルル酸以外に、二つの化合物も検出された。未知の2種類の化合物はいずれも小林製薬が「悪玉コレステロールの値を下げる効果がある」とうたった「モナコリンK」という成分に基本骨格が似ているという。

既知の天然化合物ではなく、うち一つは、紅こうじサプリの機能性成分「モナコリンK」が工場の青カビにより変化したものと推定されるという。もう一つの物質も、構造が類似していることから同様の仕組みで発生したとみられる。

2つの化合物の健康被害への影響はわかっておらず、今後、動物実験などを行う。


同社のサプリを巡っては摂取後に腎臓病になる人が相次いでいる。日本腎臓学会の調査では、腎臓にある尿細管の機能が低下する「ファンコーニ症候群」の患者も確認されている。

これまでプベルル酸び腎臓への影響はわかっていなかったが、健康被害の訴えがあったサプリと、プベルル酸のみをそれぞれラットに食べさせたところ、腎臓の一部に変性や壊死が見られた。

厚労省は「現時点で断定はできないが、プベルル酸が健康被害の原因の可能性がある」としている。

今回、確認された青カビについて、カビ毒に詳しい東京農業大学応用生物科学部の小西良子教授は次のように述べている。(NHK)

「工場などでよく見つかるものとは違う珍しいカビだ。厚生労働省などの発表内容を聞く限り、このカビが、紅麹が作る『モナコリンK』に対して働く酵素を持っていて、その働きでプベルル酸以外に2種類の化合物が生じたと考えられる。

2つの菌が一緒に培養されることで新しい化合物ができるのはカビの生産物にはよくあることで、それだけに菌を用いた製品を作る際には厳しい製造管理が求められる。

プベルル酸についてもほかの2種類の化合物についてもこれまで毒性に関する知見はなかったが、今後の研究で毒性が明らかになれば、カビ毒と認定されるかもしれない」


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小林製薬は2016年にグンゼから事業譲渡を受けて紅麴原料の製造を大阪工場で始めた。グンゼは主に食品会社に素材を販売してきたが、成長が難しいとみて撤退を決めた。

小林製薬はそれまで麴を扱った経験はなかった。引き継いだ製造設備を大阪工場に移設、グンゼの技術を手順書に落とし込み、グンゼの同事業の従業員6人を引き受けて、紅麹原料の製造を開始した。譲渡に際し、グンゼから健康被害を引き起こすリスクがあるとは聞いていなかったとしている。


米製薬大手Eli Lillyは5月24日、Lebanon, Indianaの新工場に53億ドルを追加投資すると発表した。欧米を中心に需要が高まる肥満症治療薬Zepbound® (tirzepatide) injection や、糖尿病薬Mounjaro® (tirzepatide) injectionの原薬を増産する。同拠点への投資総額は37億ドルから90億ドルに増える。

2023年に着工し、2026年末に医薬品製造を始める予定。

同社は2023年12月に米国で肥満症治療薬 Zepbound®を発売した。Zepbound®の有効成分tirzepatideは、2型糖尿病の成人患者の血糖値改善を助ける効能をもつMounjaro®としてすでに承認されており、肥満症治療薬として広く適応外処方されてきたが、FDAが新薬として2023年11月8日に承認した。

tirzepatideはグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)とグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)の二つの受容体に単一分子として作用する世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬で、本剤の構造は、天然GIPペプチド配列をベースとした単一分子だが、GLP-1受容体にも結合するように改変されており、選択的に長時間作用する。

Zepbound®の需要が拡大する一方で生産が追いつかず、Mounjaro®とともに品薄状態が続いている。


なお、日本では、日本イーライリリーと田辺三菱製薬が先日、肥満症に対するチルゼパチド(tirzepatide)について、日本イーライリリーが当局に承認申請済みであること、および両社で日本における販売提携を行うことを発表した。

両社の販売提携契約に基づき、同一化合物で2023年から両社にて販売提携を行っている「マンジャロ®皮下注」と同様に、本剤の製造販売承認は日本イーライリリーが取得し、承認取得後の流通・販売を田辺三菱製薬が行う。

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新タイプの肥満症治療薬の利用者が、米国を中心に世界で急増している。

先駆けとなったのが、デンマーク製薬大手Novo Nordisk Wegovy(ウゴービ )で、2021年に米国で承認された。もともと糖尿病(内臓脂肪の蓄積が主な原因)のために開発した薬(GLP-1受容体作動薬)を肥満症治療に応用したもので、食欲を抑制することでやせる効果があるとされる。日本では「セマグルチド(遺伝子組換え)」として2023年3月に承認された。

食事をとると小腸から分泌され、インスリンの分泌を促進する働きをもつホルモンをインクレチンといい、GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド )とGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)がある。
2型糖尿病に対する治療薬として注目されるのがGLP-1である。

GLP-1は、食事をとって血糖値が上がると、小腸にあるL細胞から分泌され、すい臓のβ 細胞表面にあるGLP-1の鍵穴 (受容体) にくっつき、β 細胞内からインスリンを分泌させる。GLP-1は、血糖値が高い場合にのみインスリンを分泌させる特徴がある。摂取した食物の胃からの排出を遅らせる作用や食欲を抑える作用などもある。

GIPも食欲を抑制するだけでなく、体内での糖分や脂肪の分解を改善する可能性がある。

Eli Lillyは昨年12月、同様の働きを持つ肥満症治療薬Zepboundを米市場に投入した。Amgen や Pfizerなど多くのメーカーが開発を急ぐ。

2024/4/15 新タイプの肥満症治療薬が急増

AstraZeneca は5月20日、シンガポールに15億ドル規模の抗体薬物複合体(ADC)製造施設を建設する計画を発表した。

AstraZenecaがシンガポールで医薬品を生産するのは初めて。

同社にとって初めてのADC製造の全プロセスをカバーする施設となる。抗体の生産、化学療法薬とリンカーの合成、薬・リンカーの抗体への結合、完成したADC物質の充填といった多段階の製造プロセスを完全に統合する。

2024年末までに製造施設の設計と建設を開始し、2029年までに運用開始を目指す。


同社は第一三共 及び中国系企業とADCの共同開発・商業化で戦略提携している。

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第一三共は2019年3月29日、抗がん剤でAstraZenecaと戦略的提携すると発表した。

同社が保有する抗体薬物複合体(antibody drug conjugate: ADC)のエンハーツ / トラスツズマブ デルクステカン(DS-8201)について、乳がん、胃がん、非小細胞肺がん及び大腸がんを含むHER2発現がんを対象としたグローバルな開発及び商業化契約を締結した。

抗体薬物複合体(ADC)は、抗体と薬物(低分子化合物)を適切なリンカーを介して結合させた薬剤で、がん細胞に発現している標的因子に結合する抗体を介して薬物をがん細胞へ直接届けることで、薬物の全身曝露を抑えつつがん細胞への攻撃力を高める。

本剤は、独自のリンカーを介して新規のトポイソメラーゼI 阻害剤(薬物)を抗HER2抗体に結合させた薬剤。抗HER2抗体とリンカー、ペイロード(トポイソメラーゼI 阻害剤)のすべてを自社技術で構築した。

トポイソメラーゼI 阻害剤は、癌細胞のDNAの2重らせん構造のうち1本を切断し、異常な細胞増殖を抑えることでがん細胞を殺す。

乳がんなどには、細胞の表面に、がん細胞に「増殖しろ」という指令を出す「HER2タンパク」をもっているものがあるが、トラスツズマブは、HER2タンパクの働きをブロックし,がん細胞の増殖を抑える。

2019/4/1 第一三共、抗がん剤でAstraZenecaと戦略的提携、最大で69億ドル受領  


第一三共は2020年7月27日、同社が保有するTROP2に対する抗体薬物複合体のDS-1062について、グローバルな開発及び商業化契約をAstraZenecaと締結したと発表した。

今回の提携で、第一三共とAstraZenecaは全世界(日本では第一三共が独占的権利)において、本剤の単剤療法及び併用療法を共同で開発し、商業化する。第一三共は本剤の製造及び供給を担う。

前回はエンハーツ/DS-8201、今回はDS-1062である。

2020/7/29 第一三共、抗体薬物複合体の開発・商業化で AstraZeneca と2件目の提携   

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なお、第一三共は2023年10月20日、開発中の3つのADCの開発・販売で米Merck と提携したと発表した。

提携の対象は▽抗HER3ADCパトリツマブ デルクステカン▽抗B7-H3ADC「DS-7300」▽抗CDH6ADC「DS-6000」。

日本を除く全世界でメルクと共同で開発・商業化し、製造と供給は第一三共が担う。

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KYM Biosciences(中国のKeymed Biosciences:康諾亞生物醫藥科技成都有限公司と 同じく中国のLepu Biopharma:樂普生物科技股份有限公司の関連会社によって設立されたJV)との間で胃がんの有望な治療ターゲットであるClaudin 18.2を標的とするファースト・イン・クラスの抗体薬物複合体(ADC)のCMG901について、独占的なグローバルライセンス契約を締結したことを発表した。

本ライセンス契約に基づき、AstraZenecaはグローバル規模でCMG901に関する研究、開発、製造および商業化を展開していく。

現在、胃がんを含むClaudin 18.2陽性固形がんの治療薬として、第I相臨床試験で評価を行っており、第I相試験の予備結果では、すべての用量で抗腫瘍活性の早期徴候が認められ、CMG901の有望な臨床プロファイルが示された。

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AstraZenecaは、様々な腫瘍タイプや病期における消化器がんの治療に対して、複数の医薬品による広範な開発プログラムを展開している。胃がん、肝がん、胆道がん、食道がん、膵がんおよび結腸直腸がんの転帰の改善にコミットしている。

イミフィンジ(一般名:デュルバルマブ)は、化学療法(ゲムシタビンおよびシスプラチン)との併用療法が進行胆道がんの治療薬として、イジュドとの併用療法が切除不能な肝細胞癌の治療薬として、米国で承認されている。

イミフィンジは、イジュドなどとの併用療法で、現在、早期から後期がんまでを対象とした広範な開発プログラムにおいて、肝がん、食道がんおよび胃がんの治療薬として評価が行われている。

第一三共との提携によるエンハーツ(一般名:トラスツズマブ デルクステカン)はHER2を標的とした抗体薬物複合体で、HER2陽性の進行胃がんの治療薬として承認されており、現在、結腸直腸がんで試験を実施している。

リムパーザ(一般名:オラパリブ)はファースト・イン・クラスのPARP阻害剤であり、BRCA遺伝子変異陽性転移性膵がんの治療薬として承認されています。リムパーザは、アストラゼネカとMSD(米国およびカナダではMerck&Co., Inc.)が共同開発と商業化を行っている。

公正取引委員会は5月27日、人件費や原材料費が高騰する中、中小企業などが価格転嫁しやすくするため、下請法の運用基準を改正した。

大企業などがコストが上がっていることを把握しながら取引価格を据え置く行為を「買いたたき」と明記し、違反行為には指導や勧告など強い姿勢で臨み、取引慣行の改善を目指す。

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公正取引委員会は、「下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準」を定めている。

公取委は2023年11月29日に「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を公表した。

労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針(概要)

発注者として採るべき行動/求められる行動
【行動①:本社(経営トップ)の関与】
【行動②:発注者側からの定期的な協議の実施】
【行動③:説明・資料を求める場合は公表資料とすること】
【行動④:サプライチェーン全体での適切な価格転嫁を行うこと】
【行動⑤:要請があれば協議のテーブルにつくこと】
【行動⑥:必要に応じ考え方を提案すること】

受注者として採るべき行動/求められる行動
【行動①:相談窓口の活用】
【行動②:根拠とする資料】最低賃金の上昇率、春季労使交渉の妥結額やその上昇率などの公表資料を用いること。
【行動③:値上げ要請のタイミング】
【行動④:発注者から価格を提示されるのを待たずに自ら希望する額を提示】

発注者・受注者の双方が採るべき行動/求められる行動
【行動①:定期的なコミュニケーション】
【行動②:交渉記録の作成、発注者と受注者の双方での保管】

公取委は、これを踏まえ、下請法上の買いたたきの解釈・考え方が更に明確になるよう、下請法運用基準の改正を行うこととし、原案を本年4月1日に公表し、広く意見を募集した。

今回、提出された意見等を慎重に検討した結果、原案を維持し、以下の通り下請法運用基準を改正することとした。

改正箇所は、「親事業者の禁止行為」の「買いたたき」についてである。

買いたたきとは、「下請事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い下請代金の額を不当に定めること」で、

現行指針では、「通常の対価を把握することができないか又は困難である給付については、例えば、当該給付が従前の給付と同種又は類似のものである場合には、従前の給付に係る単価で計算された対価を通常の対価として取り扱う」としている。

これによれば、価格据え置きは禁止されていない。

これについて、下記の通り改正した。

次の額を「通常支払われる対価に比し著しく低い下請代金の額」として取り扱う。

従前の給付に係る単価で計算された対価に比し著しく低い下請代金の額

イ 当該給付に係る主なコスト(労務費、原材料価格、エネルギーコスト等)の著しい上昇を、例えば、最低賃金の上昇率、春季労使交渉の妥結額やその上昇率などの経済の実態が反映されていると考えられる公表資料から把握することができる場合において、据え置かれた下請代金の額

すなわち、コスト上昇が明らかな場合には、価格据え置きは買いたたきとなる。




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なお、本ブログではさきに 日産自動車、下請法勧告後も違反行為継続か? を書いた。

日産の内田誠社長は5月23日、公取委から勧告を受けたあとも代金の引き下げを行っていた可能性があるとして外部の弁護士などによる調査を進めていることを明らかにした。

調査結果については1週間後をめどに公表するとしている。

一方、この問題を受けて日本自動車工業会は、法令順守の状況についてメーカー各社による緊急の自主点検を進めており、来月末までに結果をとりまとめるとしている。

<自工会方針>
  • 原材料費/エネルギー費の上昇分について、適切なコスト増加分の全額転嫁を目指す
    労務費について、仕入先と十分に協議のうえ適正に価格転嫁
<取り組み>
  • 上記の方針を織り込んで、「適正取引の推進と生産性・付加価値向上に向けた自主行動計画」および実効性を高める「徹底プラン」を今月改訂・公表

東京大学大学院医学系研究科の新美芳樹特任准教授、岩坪威教授らのグループは、アルツハイマー病(AD)の脳に生じる最も重要な変化である アミロイドβ(Aβ)の蓄積を診断する PET 画像検査の結果を、超早期の段階において、これまでにない高い効率で予測することに成功した。


血液検査で発症前から診断できるようになれば、早期治療につながる。(PET検査は施設が限られており、費用も高く、早期診断には向かない。)

アルツハイマー病では、神経細胞の外側ではアミロイドβ(Aβ)が蓄積して老人班を形成し、神経細胞の中では「タウタンパク」が蓄積してタンパク質が糸くず状に変化したようなもの(神経原繊維変化)が見られるようになる。

2023年9月25日にエーザイのアルツハイマー病治療薬「レカネマブ」が正式に承認された。進行を遅らせる効果を証明した国内初の薬となる。

既存の認知症薬は神経の働きを活発にして症状の緩和を図るが、レカネマブは病気の原因となるAβを除去し、進行を抑えることを狙う。

この薬の対象は、軽度認知症と、認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)の人で、壊れた神経細胞の再生は難しいため、症状が進んだ人は対象となっていない。

そのため、PET検査で対象かどうかを判断する必要があるが、PET検査の実施できる施設は限られており、費用も高い。他に脳脊髄液検査もあるが、一般的でない。

   なお、シスメックスは 微量の血液からAβの蓄積状態を調べる検査試薬について製造販売承認を取得

2023/8/23 厚労省の専門部会、エーザイのアルツハイマー治療薬「レカネマブ」の国内での製造販売承認を了承、近く承認へ

このため、より簡便な評価法への期待が高まっている。

過去30 年にわたり、血液を用いた AD 脳病理変化の推定は困難であったが、近年血液バイオマーカーの開発が加速し、AD 患者の血漿中に検出される Aβ やリン酸化タウなどの病因タンパク質の変化を測定することにより、PET 検査や脳脊髄液検査に匹敵する診断能力が得られる可能性が示されてきた。

しかし認知症期に先行する MCI 期や、さらに早い無症候期(プレクリニカル期)などの超早期段階における性能は十分に実証されておらず、さらに人種差の検討や、日本人における検討も十分に行われていなかった。

プレクリニカル(期)AD : 画像診断やバイオマーカーにより、脳にアミロイドβ蓄積などAD の病理学的変化の存在が推定されるが、認知機能は正常である状態をいう。

プロドローマル(期)=MCI 期AD : ADの病理学的変化があり、客観的にも物忘れなどの認知機能低下症状を認めるが、日常生活機能は保たれており、まだ認知症に至っていないと診断される時期。

研究グループは、Aβ の蓄積が始まっているが無症状であり、発症の前駆時期と考えられる「プレクリニカル期」や、認知機能の低下はあるが認知症に至っていないMCI 期の AD の人を診断・追跡し、予防・治療法の実現を目指す研究を 2019年から開始し、2024 年 4 月末の時点で、700 名の参加者に対してアミロイド PET スキャン、血液バイオマーカー測定等の検査を行ってきた。

今回、474 名の血液検体を対象に、測定結果や臨床データを組み合わせることにより、脳アミロイド検出の標準となる PET 画像の視覚的診断結果をどの程度正確に予測できるかを検討した。

その結果、Aβ と p-tau217(スレオニン 217 リン酸化タウ)血液バイオマーカーを組み合わせることにより、AD の超早期段階における脳 Aβ 蓄積の存在を高い精度で予測できることが分かった。

バイオマーカーで陽性の場合、PET検査で脳アミロイド蓄積がみつかり、陰性の場合は蓄積がなかった。


今後、簡便な臨床的評価と血液バイオマーカーの検査を組み合わせることによって、従来よりも効率的にプレクリニカル期 AD やプロドローマル AD の診断が可能となることを実証し、血液バイオマーカーの実用化と、抗 Aβ薬などを用いた AD の早期の予防・治療のさらなる実用に繋げてゆく。

千代田化工建設は、米国テキサス州にて Golden Pass LNG プロジェクトを共同遂行している米国 Zachry Industrial が5月21 日に「Chapter11」を申し立て、法的再建手続きに入ることになったと発表した。

Zachry Industrial の chief restructuring officerは、裁判所に提出された宣誓供述書で、「財政困難の結果」が、2019年にGolden Pass LNG Terminal から受注したLNGプロジェクトによるものであると述べた。

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千代田化工建設は2019年2月6日、米国のZachry Group 及びCB&I (Chicago Bridge & Iron Company) と共同で、Golden Pass Products LLCから米国テキサス州 Sabine Passで計画されているLNG輸出基地の設計、調達、建設(EPC)業務を受注したと発表した。

当初の発表では、共同受注はMcDermott International となっている。

McDermott International は2018年に米建設会社CB&I (Chicago Bridge & Iron Company) を35億ドルで買収したが、その際に発生した債務が経営を苦しくし、2020年にChapter 11を申請した。
McDermott
International とCB&I は同年5月に統合した。



Golden Pass Products LLCはQatar Petroleumが70%、ExxonMobilが30%を出資する。

計画は、既存のGolden Pass LNG 輸入基地に天然ガス液化設備等を建設し、同基地を市場の状況に応じてLNGの輸入と輸出を行えるようにするものである。

既存のGolden Pass LNG 輸入基地は、Qatar Petroleum (70%)、ExxonMobil (17.6%) に加え ConocoPhillips (12.4%) が加わるJVである。
年間1560万トンの輸入LNG(天然ガス換算 日量20億立方フィート)を2つのバースで輸入し、ガス化する。2010年に完成した。

今回の計画は、年産520万トンの液化設備3基(合計能力 1,560万トン)を建設する。用役設備の増設や既存の輸入設備との連結、安全設備の拡充なども含める。パイプラインも拡充する。
ConocoPhillipsはこの事業には参加しない。

投資額は100億ドルで、2024年に運転を開始する予定。

Golden Pass はエネルギー省から、FTA締結国向けには2012年に、非締結国向けには2017年に、20年間の輸出承認を受けている。

2019/2/9 千代田化工、米国 Golden Pass LNG輸出基地設計、調達、建設業務を受注 

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本プロジェクトは、2019 年に Zachry、CB&I (Chicago Bridge & Iron Company) 及び Chiyoda International が組成するジョイントベンチャーが Golden Pass LNG Terminal LLCから受注し、遂行してきた。

Golden Pass LNG、CB&I および Chiyoda International は、これまで本プロジェクトの遂行体制に関して協議を続けており、3社は協調して引き続き本プロジェクトの完工に向けて工事を遂行していくことを確認している。

Chiyoda International の主たる業務範囲である設計・調達業務は概ね完了しており、建設工事が進捗中で、プロジェクト全体の進捗率は、約75%まで達成している。

千代田化工は、米国Cameron LNGプロジェクトで大幅赤字を計上した。

2019/5/9 代田化工建設、大幅赤字に、三菱商事が支援へ

このため、今回の契約では、ZachryCB&I が労働者の生産性など現地建設関連のリスクの責任を負うスキームとし千代田の負うスコープは基本的に設計と調達に限定した

LINEヤフー問題

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LINEヤフーで昨年に情報漏洩があった件で、総務省が、通信の秘密の保護及びサイバーセキュリティの確保の徹底を図るとともに、再発防止策等の必要な措置を講じ、その実施状況を報告するよう、文書による行政指導を行った。

そのなかで、情報漏えい元がLINEヤフーの親会社の1社の韓国NAVERの関係先であったことから、総務省は「行政指導」で「今の資本関係も含めて経営体制の見直しを検討」することを求めた。

これが韓国側で大きな問題となっている。韓国の野党やメディアは「韓国企業が日本で投資をして育て上げたLINEを日本政府が奪おうとしている」と批判のトーンを強めている。韓国紙は「日本の総務省は法律ではない行政指導を通じて企業の経営権と関連した資本構造改善を要求するなど市場経済の原則を傷つける姿を見せた。日本政府がデータ主権確保に向け「ネイバー追い出し」に出たものとの疑いを自ら招いたと報じた。

日本国内でも、「外国企業の投資審査は、本来、その企業が新たに日本に進出を希望した際に行うべきもの。すでに投資をした外国企業に、あとから『株式を手放せ』『技術は残して日本から退場せよ』などと迫るのは中国がよくやるような話だ」との批判が出ている。

これが前例として認められると、世界各地で日本企業が犠牲になる可能性もありうる。

野党は尹錫悦政権批判を展開している。

韓国政府は5月10日、株式売却の圧迫に対して遺憾を表明し、「韓国企業に対する差別的で不当な措置に対しては断固として強力に対応していく」と明らかにした。 また、今回の行政指導は日韓両国が2003年に発効させた「日韓投資協定」に抵触するのではないかという主張も韓国側から提起されている。この協定は、日韓両政府とも、自国に投資をした相手国企業は自国企業と平等に扱うという「内国民待遇」を定めている。

林芳正官房長官が述べているように、「セキュリティーガバナンスの見直しにはさまざまな方策がありえる」「いずれにしても委託先管理が適切に機能する形となることが重要」だが、法律に基づかず、行政指導でJVの出資比率の変更まで求めたのは、明らかに行き過ぎである。

付記

尹錫悦大統領は5月26日に行われた日韓首脳会談で、LINEヤフー問題について取り上げ、「日本の総務省による行政指導は、ネイバーに持ち株を売却しろと要求したものではないと理解している」と話した。
その上で、外交問題ではないとの認識を示し、「懸案にならないように管理する必要がある」とも伝えた。

これに対し岸田総理は、行政指導について「重大な情報流出事故をうけ、ガバナンスの再検討を求めたものだ」と説明した。

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LINEヤフーは2023年11月27日、委託先企業への第三者による不正アクセスにより、ユーザー情報、取引先情報、従業員などに関する情報漏えいが判明したと発表した。該当情報は合計で最大約44万件に上る。

漏えいのうち最大30万2569件が「ユーザーに関する利用情報」。
そのうちLINE IDとは別に、内部でユーザーを識別する文字列にひも付く、サービス利用履歴などが4万9751件。
メッセージなど特定の人とのやり取りに関するような通信の秘密に該当する情報が2万2239件。

日本に限ると漏えいしたユーザー利用情報は最大12万9894件で、ユーザー識別子にひも付くサービス利用履歴が1万5454件、通信の秘密に該当する情報が8981件。

なお、口座情報やクレジットカード情報、LINEアプリにおけるトーク内容は含まれないとしている。

取引先に関する個人情報は最大8万6105件が該当。そのうち、取引先などの従業員の氏名、所属(会社・部署)、メールアドレスなどのセットは34件含まれており、他はメールアドレスのみだった。

LINEヤフーのグループや委託先などの従業員に関する個人情報(氏名、社員番号、メールアドレスなど)は最大5万1353件が該当。ドキュメント管理システム内の個人情報が6件、認証基盤システム内の従業員に関する個人情報が、LINEヤフーグループで3万409件、韓国NAVERグループで2万938件。

不正アクセスの経緯としては、LINEヤフーと韓国NAVER Cloudの両社から委託を受けている企業の従業員が所持するPCがマルウェアに感染。NAVER CloudとLINEヤフーの従業員情報を扱う共通の認証基盤で管理されている、旧LINEの社内システムネットワークへの接続を許可していたことから、NAVER Cloudのシステムを介して10月9日に不正アクセスが行われたという。

発覚は10月17日で、LINEヤフーのセキュリティ部門がシステムへの不審なアクセスを検知し調査を開始。27日に外部からの不正アクセスである可能性が高まったという。
同日中に不正アクセスに使用された可能性のある従業員のパスワードをリセットし、関係会社のシステムからLINEヤフーのサーバーに対するアクセスを順次遮断した。翌28日には従業員の社内システムへの再ログインを強制実施している。

今後LINEヤフーは、旧LINE環境の社内システムで共通化している認証基盤環境をNAVER Cloudと分離するとともに、ネットワークアクセス管理を一層強化。委託先の安全管理措置の是正に取り組むという。再発防止策として、計画の妥当性・有効性・客観性の担保を目的に、外部企業を交えた計画を策定するという。

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ソフトバンクと子会社のZホールディングス(2019/10/1 ヤフー㈱から改称)、及び韓国のNaverと日本の子会社LINEの4社は、ZホールディングスとLINEの対等の精神に基づく経営統合で合意し、2019年11月19日に法的拘束力のない基本合意書を締結したと発表した。

公取委は2020年8月4日、「当事会社グループが申し出た措置を講じることを前提とすれば,一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるとはいえないと認められたので,当事会社グループに対し,排除措置命令を行わない旨の通知を行い,本件審査を終了した」と発表した。

ソフトバンク傘下のZホールディングス(ZHD)は2020年3月1日、LINEと経営統合し、新体制がスタートした。

LINEの商号は2月28日にAホールディングス(AHD)に変更された。ソフトバンクと韓国のネイバーはAHDを戦略的持ち株会社として位置付け、株式を50%ずつ保有する。

ZHDとLINEの統合は、親会社同士のソフトバンクとネイバーが出資するAHDが持ち株会社であるZHDの65%の株式を保有し、ZHD傘下の事業会社としてヤフーやLINEがぶら下がる形を取る。


2019/11/20 ヤフーとLINEの統合

1997年11月4日に店頭市場に登録、2003年10月28日、東京証券取引所市場第一部に上場、2022年4月4日、プライム市場に移行した。

2023年10月1日にZホールディングスは新社名を「LINEヤフー」に決めた。 現在、ソフトバンクとNaverの50/50JVであるAホールディングスが64.5%を出資している。

ーーー

総務省において、LINEヤフーに対して、電気通信事業法の規定に基づく報告徴収を実施したところ、同社の安全管理措置・サイバーセキュリティ対策や業務委託先管理等に不備があったことが判明した。

総務省は2024年3月5日、LINEヤフーに対し、同社における上記の不正アクセスによる通信の秘密の漏えい事案に関し、通信の秘密の保護及びサイバーセキュリティの確保の徹底を図るとともに、再発防止策等の必要な措置を講じ、その実施状況を報告するよう、文書による行政指導を行った。

(1)本事案を踏まえた安全管理措置及び委託先管理の抜本的な見直し及び対策の強化
(2)親会社等を含むグループ全体でのセキュリティガバナンスの本質的な見直し及び強化
(3)利用者対応の徹底

そのうえで会社に対し、今の資本関係も含めて経営体制の見直しを検討し、ネイバーとともに50%出資する通信大手のソフトバンクに対しても、必要な働きかけをするよう求めた。総務省が行政指導で経営体制にまで踏み込む、異例の内容となっている(NHK報道)。

同年4月1日、同社から再発防止等に向けた取組に関する報告書の提出を受けたが、一定の応急的な対策については実施済みとのことであるものの、現時点で、安全管理措置及び委託先管理が十分なものとなったとは言い難く、また、親会社等を含むグループ全体でのセキュリティガバナンス体制の構築についても十分な見直しが行われる展望が必ずしも明らかとはいえない状況にあると考えられ、対策・検討を加速化する必要があるものと判断し、4月16日に以下の措置を講じるよう求めるとともに、措置の実施状況や実施計画について具体的かつ明確に報告するよう、行政指導を行った。

(1)本事案を踏まえた安全管理措置及び委託先管理の抜本的な見直し及び対策強化の加速化
(2)親会社等を含むグループ全体でのセキュリティガバナンスの本質的な見直しの検討の加速化
(3)取組内容に係る進捗状況の定期的な公表等を通じた利用者対応の徹底

総務省は資本関係の見直しを含めた対応策について、7月1日までの報告を求めている。

韓国のNaverは5月10日、LINEヤフーに出資する中間持ち株会社の株式を売却する可能性について初めて言及した。合弁相手であるソフトバンクと協議を進める考えを示した。

その後、5月8日に取締役の交代が発表され、退任予定取締役として、「LINEの父」と呼ばれる慎ジュンホChief Product Officerと、 桶谷拓Chief Strategy Officerが発表された。両名とも取締役退任後も、それぞれ CPO または CSO としての役割に専念する予定。

理由としては、「取締役会を独立社外取締役が過半数を占める構成へ変更するとともに、経営と執行の分離を進め、より一層ガバナンス強化を図るため」としているが、これで取締役全員が日本人となった。  

また、同日、LINEヤフーが、サービス・事業面も含めてネイバーとのほぼ全ての委託関係を終了すると発表した。

さらにソフトバンクがネイバーに対してLINEヤフー持分買収のための交渉を始めたことが伝えられると、韓国メディアは「日本政府による韓国民間企業の強奪」と大きく報じるようになった。

LINEヤフーが運営しているメッセンジャーアプリの「LINE」はネイバーの日本法人であるネイバージャパンが2011年に開発したもので、日本における月間利用者数は9600万人、タイでは5500万人、台湾では2200万人、インドネシアでは600万人の利用者が使っている。  

このようなLINEの経営からネイバーが手を引かざるを得ない状況に追い込まれかねない事態に、いま韓国社会全体が激怒していると報じられている。

中央日報は、日本の総務省は法律ではない行政指導を通じて企業の経営権と関連した資本構造改善を要求するなど市場経済の原則を傷つける姿を見せた。日本政府がデータ主権確保に向け「ネイバー追い出し」に出たものとの疑いを自ら招いたと報じた。

野党は尹錫悦政権批判を展開している。革新系最大野党「共に民主党」の鄭清来最高委員は5月13日の最高委員会議で、「尹政権の対日屈従外交はすでに知っていたが、日本政府の韓国企業侵奪についても政府が抗議するどころか環境を整えさせている」と非難した。

松本剛明総務相が初代韓国統監・伊藤博文(祖父母の祖父)の子孫だということも、韓国のナショナリズムを刺激する。

韓国政府は5月10日、株式売却の圧迫に対して遺憾を表明し、「韓国企業に対する差別的で不当な措置に対しては断固として強力に対応していく」と明らかにした。 また、今回の行政指導は日韓両国が2003年に発効させた「日韓投資協定」に抵触するのではないかという主張も韓国側から提起されている。この協定は、日韓両政府とも、自国に投資をした相手国企業は自国企業と平等に扱うという「内国民待遇」を定めている。

韓国大統領府高官は5月14日、LINEヤフーが7月1日までに同省へ行う報告には「(ネイバーの)保有株式の売却は盛り込まれない可能性がある」と明らかにした。 高官は「ネイバーと意思疎通を続けている」と語り、冷静な対応を求めた。

ーーー

松本総務大臣は5月10日の閣議後記者会見で、LINEヤフーがネイバーとの委託関係を終了する方針を決定したことに関し、行政指導の意図として「通信の秘密を含む情報の漏洩というセキュリティ上の重大な事案が発生したことを踏まえて、総務省において、再発防止策の徹底、利用者の利益の確実な保護を求めるもの」と説明した。  「安全管理措置等の強化、そして、資本的な支配を相当程度受ける関係の見直しや、親会社等を含むグループ全体でのセキュリティガバナンスの本質的な見直しの検討の加速化などの措置」を求めたとする。  

一方で、日本がNAVERからLINEヤフーの経営権を奪おうとしているなどの批判が韓国から出ていることに対し、「資本的な支配を受ける関係の見直しや、親会社等を含むグループ全体でのセキュリティガバナンスの本質的な見直し」をより加速させるように求めたもので、「経営権といった視点から資本の見直しを求めたものでなはい」として、韓国側の懸念について改めて否定した。

林芳正官房長官は5月15日の記者会見で、LINEヤフー資本関係見直し行政指導で、日本の経済安全保障が考慮されたものなのか、これが必要な理由が何かについての質問に「行政指導の内容は安全管理措置等の強化やセキュリティガバナンスの見直しなどの措置を講じるよう求めたもの」と答えた。「セキュリティーガバナンスの見直しにはさまざまな方策がありえる」とし「いずれにしても委託先管理が適切に機能する形となることが重要」と答えた。

林長官は「韓国政府には(日本政府の)考え方はすでに伝達している」とし「今後も韓国政府に対して丁寧に説明していく考え」と言及した。韓国社会の否定的な世論に対しては「コメントを差し控える」とした。


今回の情報流出の再発防止に出資比率の変更が役に立つとは考えられず、総務省の主張には無理がある。日本政府が
どう収めるのか、注目される。


テレビ東京の「ワールドビジネスサテライト」は翌10日の特集「The 追跡」で日産〝不当な減額要請〟継続かを報道した。日産の経営を揺るがすだけでなく、大企業と下請けの関係に一石を投ずる内容だった。

日産は中小の取引先企業36社に対し、違法な減額強要で公正取引委員会から再発防止の勧告を3月に受けていた。同番組がこの36社以外を独自取材すると、「減額の強要が変わらず続いている」実態が浮かび上がった。

公取委の3月の勧告は下記の通りで、36社だけでなく、すべての取引が下請法に違反しないことを求めている。

⑴ 日産自動車は、次の事項を取締役会の決議により確認すること。
 ア 前記2⑵の行為が下請法第4条第1項第3号の規定に違反するものであること
 イ 今後、下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、下請代金の額を減じないこと
⑵ 日産自動車は、今後、下請法に違反することがないよう、次の行為を行うなど経営責任者を中心とする社内遵法管理体制の整備のために必要な措置を講ずること。
 ア 法務担当者による下請法の遵守状況についての定期的な監査
 イ 役員及び発注担当者に対する下請法遵守のための定期的な研修
⑶ 日産自動車は、次の事項を自社の役員及び従業員に周知徹底すること。
 ア 減額した金額を下請事業者に支払ったこと
 イ 前記⑴及び⑵に基づいて採った措置
⑷ 日産自動車は、次の事項を取引先下請事業者に通知すること。
 ア 減額した金額を下請事業者に支払ったこと
 イ 前記⑴から⑶までに基づいて採った措置
⑸ 日産自動車は、前記⑴から⑷までに基づいて採った措置を速やかに公正取引委員会に報告すること。

番組は、日産の内田誠社長から違反行為は勧告後にやめたと言質をとっていた。

放送内容は下記の通り。いずれも公取委の勧告後の取材である。

1) 日産と約20年取引のある資本金3億円以下の中小企業A社社長のインタビュー

勧告後も「減額の強要が続いている」

減額要求はもう、毎回ある。半額というケースもあるし2割3割(引き)は当たり前に起きている。それに対してあらがえば切られてしまう。

勧告後の2024年4月の見積書に「原低率」が記載されている。
原価低減を何%するという意味合いで、「何%引きます」と自ら言うことは基本的にないので強要である。

しかも、「個別原低とは弊社より依頼したもの」と最初から書いてある。

われわれの意思で書いたという体で、「受け入れざるを得ない。いじめに遭っている人が手を挙げられないのと同じ。」

望まない原低率は数%から数十%に及ぶ。

2) 30年取引のあるB社営業担当のインタビュー

日産のメールに「この仕事が欲しいならこの金額以下でもう一回見積もりを出し直しなさい」とある。

「長い付き合いだからといっていつまでも仕事もらえると甘く見るなよ」と言われた。

どんどん価格を下げられていって見積もりを2回も3回も出して向こうが納得する金額まで強要されるというのが続いた。

つい先日の日産からのメール 「当社の目標は xxx円以下」

どれくらい低減させられる?の質問に、 
  ほぼ30%とか ひどいときは50%とかもある
  全然 適正でない。0か100なので、断ったら仕事が来なくなる。


番組は報道予定の番組内容を公取委の官房審議官にみてもらい、意見を聞いた。

1) A社のケース

こういうフォーマットで一方的に一律で「単価を引き下げなさい」という要請は、「買いたたき」に抵触する可能性がある。

買いたたきは下請法で禁止されている。

2) B社のケース

一般論だと、自分が思う価格の指し値なら交渉ができているのか、疑義が生じるのであまりよろしくない。


テレビ東京によると、日産に見解を尋ねると、「現在、報道された内容について、事実関係を確認しております」と述べるにとどまり、調査をいつどのように報告するのかについては言及を避けた。

「下請けに血の涙を流させてあげた利益」など放送直後からSNSに怒りの声が殺到した「(広告主ゆえ)勇気がいったと思う」「他の局は追随できるのか」

当日の放送では、特集中にホンダのCMが流れた。日産のCMも放送最後で流れた。

ーーー

これについて、斎藤経産相は5月17日の閣議後記者会見で日産を厳しく批判した。「今回の報道内容につきましては、至急事実関係を調査し、報告するように求めています」、「法令順守の観点のみならず、経済界を挙げて進めている価格転嫁に水を差すもの」としたうえで、「極めて遺憾」と厳しく批判した。

斎藤大臣は、日産からの報告内容をふまえて、今後の対応を検討するとしている。

経産省の幹部はテレビ東京の取材に対し、「ここで変わらなかったらいつ変わるのか、大きな山場だ」と述べ、経済界の賃上げ心理に水を差さないよう、日産に厳しい姿勢で臨むことを示唆した。


経済同友会の新浪剛史代表幹事は5月14日の会見で以下のように述べた。


目下、(多くの)企業、とりわけ大企業が多重(下請け)構造において、いわゆる価格転嫁をしっかりと進めようと取り組んでいる中で、このような問題が起こっていること自体が大変な問題であり、経営陣として「知らなかった」では済まされない。

多くの企業が一緒になり、デフレ脱却(に向けて)、下請け(企業)による適正な価格転嫁を認めようと取り組んでいる中、こういう問題が起きていることは大変遺憾であり、企業の責任をどう示していくのか。

同じ経済界(にいる者)として、いかに(責任を果た)されるのかを注目している。その点では、企業はそれぞれ個々で(経営を行っている)が、(各社の経営が)社会にどのような意味を持つかという観点から(経営)責任を明確にしていただきたい。

社会的にこれまでは当たり前のように行ってきたとしても、時代の転換点を迎えて、(現在は)そうではない(社会に変化している)ことを分かっていない企業が存在することが大変遺憾である。

(適正な価格転嫁も受け入れられない)下請け(企業)の方々が意欲を持って部品を作ることは難しいだろうし、(その結果として)製品の質も悪くなると、消費者は買わなくなってくる。そのため、このようなことを行っている限り、株価などに表れる通り会社の価値は高まらないというのが結論である。

経営責任をどう取るのか、または、このような状況からどう脱却するのかを早期に明確(に示す必要がある)。トヨタ自動車のように(下請け)各社に対して(納入価格の)値上げを行いながら(製品を)供給している(例もある)ため、社会的責任を果たせない企業がどうあるべきかという点については、自ら処すべきであり、大変厳しく見るべきだと思っている。


これは経済同友会の事後の発表で、いろいろ補足しているが、新聞報道では次のようになっている。

経済同友会の新浪剛史代表幹事は5月14日の会見で、「大企業が下請け企業の価格転嫁を認めようと努力している時であり、大変遺憾だ。経営陣は知らなかったでは済まされない」と強い口調で述べ、経営責任の明確化を求めた。

新浪氏は「(こういう会社の)下請けが意欲を持っていい製品をつくろうと思いますか? そういうクルマを買おうと思いますか? だから会社の価値は上がらないし、株価を見ても上がっていない。それが結論です」と痛烈に批判した。

付記

日産自動車は5月23日、公取委から勧告を受けたあとも代金の引き下げを行っていた可能性があり、調査を進めていると発表。調査結果については1週間後をめどに公表

世界最大級の鉱業会社BHPグループが、107年の歴史を持つ同業のAnglo Americanに買収の可能性を打診した。

Anglo Americanは4月24日遅く、BHPから一方的で拘束力のない株式交換による事業統合の申し出を受け取ったと明らかにした。310億ポンド(388億ドル)の買収提案とされる。Anglo Americanによると、BHPの申し出は、Anglo Americanが南アフリカの白金および鉄鉱石部門をまず分離することが条件になる。

付記

BHPグループは5月29日、英同業のAnglo Americanの買収を断念したと明らかにした。買収に関連して、BHPがアングロに求めた事業分離を巡り、両社の意見が平行線をたどったことが主な理由。

BHPは買収額を引き上げるなど、計3度、法的拘束力のない提案を提示したが、Anglo American はいずれも拒否した。

最後まで折り合えなかったのがAnglo American に求めた事業分離で、BHPの狙いはAngloの銅事業だが、南アの鉄鉱石事業などはAngloに対し分離を求めた。

同日にはBHPが正式提案を示す期限の延長を求めたが、Angloが拒否した。

非公開情報を理由に複数の関係者が匿名で語ったところでは、BHPはロンドン市場に上場するAnglo American買収の可能性について最近評価を行ってきた。検討は初期段階であり、BHPが買収を進めると決めるか確実ではないとしている。

Anglo Americanは南米の大規模な銅事業を傘下に置き、業界の多くが同事業の拡大を目指す中で、鉱業大手の中でも特に買収の標的と長らく考えられてきた。しかし、複雑な構造と商品ミックス、特に南アへのエクスポージャーの大きさが潜在的買い手を遠ざけていた。Anglo Americanは世界のダイヤモンド市場で支配的な地位を築いてきたDe Beers も傘下に置く。

同社は、歴史の古い銅山から産出する低純度鉱石の問題などに直面する。生産する一部主要商品の価格下落を受け、Anglo Americanは 2023年の利益が急減し、配当引き下げを余儀なくされた。

Anglo Americanの株価は過去1年で12%下落し、時価総額は270億ポンド(約5兆2200億円)となった。ロンドンおよびシドニー市場に上場するBHPの時価総額は約1490億ドル(約23兆円)。


両社の歴史、概要は下記の通り。

BHP Group Anglo American
歴史 2001年に豪州のBroken Hill Proprietary (BHP)と、南アで大規模に活動する英国のBilitonが合併し、BHP Billitonとして英、豪での二元上場会社となった。

2007年にRio Tinto買収を計画するが、2008年に断念
   
2008/11/27 BHP Billiton、Rio Tinto 買収を断念 

BHP Billitonは2015年にアルミ、石炭、マンガン、ニッケル、銀などの事業を分離し、South 32とした。      
   2014/12/10 BHP Billiton、分離会社の社名は "South32"

2018年11月にBHP Groupに改称(二元上場のまま)

BHPグループは2021年8月、石油・ガス事業を豪 Woodside Petroleumに売却すると発表した。
   
2021/8/19 BHPが石油・ガス事業から脱却

2022年1月 豪州上場のBHPが英国上場のBHP株を買収し、豪州上場に1本化 

主な鉱山資産には、ピルバラの鉄鉱石、エスコンディーダの銅が含まれる。

より多くのバッテリーグレードのニッケルを供給するためにニッケル事業を拡大中で、カナダのジャンセン鉱山の開発を通じてカリ市場にも参入している。

2023年度には銅鉱山会社Oz Mineralsも買収した。

1917年 南アフリカの金塊を採掘・販売するため、Anglo American Corporation of South Africaとして創業

1926年 ダイヤモンドの供給最大手のデビアス(De Beers)の株式を過半数取得。

1928年 現ザンビアのCopperbelt 地域で銅の採掘を開始、1971年終了

1942年 カナダのHudson Bay Mining and Smelting Co.を買収。

1995年 子会社Johannesburg Consolidated Investment Company をAmplats社(白金とダイヤモンド)、新JCI社(その他の鉱業)、Johnic社(工業部門)の3社に分割し、新JCI社とJohnic社の権益を黒人投資家へ譲渡

 白金とダイヤモンドの事業は、後に資本関係を結んでいるDe Beersへ移管

1998年 様々なグループの改編を機にロンドン証券取引所へ上場、社名をAngro American PLCとする。

両社の売上高と構成 

BHP Group
(2023/6)
Anglo American
(2023/12)
売上高 538億ドル 307億ドル
鉄鉱石 248億ドル 80億ドル
160億ドル 74億ドル
石炭 109億ドル
貴金属 67億ドル

ーーーーーー

Anglo Americanの取締役会は4月26日、BHPからの310億ポンド(388億ドル)の買収提案を拒否した。
「提案はAnglo Americanとその将来の見通しを著しく低く評価しているとの結論に至った。また、提案には、提案に固有の不確実性と複雑さ、および実行に伴う重大なリスクを考慮すれば、取締役会が高く魅力的でないと考えている構造が含まれている」としている。

Anglo American は「銅がポートフォリオの最大30%を占めており、銅や他の構造的に魅力的な製品のうまく進展し価値を増加させる成長オプションを有することで、Anglo Americanの株主がこれらのトレンドの全体的な影響が具体化されるにつれて著しい価値の向上に恩恵を受けると信じている」としている。

金属市場においては、ロンドン金属取引所での銅の3か月の終値は4月29日に1メトリックトン当たり10,135.50ドルの歴史的な高値を記録した。2月9日に見られた8,169ドルの安値からほぼ25%増加した。

Anglo Americanの拒否を受け、BHPは買収価額を340億ポンド(426.7億ドル)に引き上げたが、Anglo Americanは5月13日、これを再度拒否した。

Anglo American は5月14日、エネルギー転換の下で需要が高まっている銅事業に集中するため、収益性の低い石炭やニッケル、ダイヤモンド、プラチナなどの事業を売却するか切り離す大胆な合理化計画を発表した。鉄鉱石と銅、つまりエネルギー転換の鍵となる金属に特化したよりシンプルな企業構造を目指す。これらの再編を通じて17億ドルの経費節減が期待できるという。

BHPによる買収提案を拒否し、単独経営を維持するための方針とみられている。

三井物産と英Shell、仏のTotalEnergy が、アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ国営石油(ADNOC)が新たに進めるLNG輸出事業について、権益取得に向け協議していると 本年4月に報じられた。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。

関係者によれば、3社は増設設備の権益に加え、LNGをそこから購入する契約の獲得を目指している。 ただし、ADNOCはプロジェクトを進めるに当たり、これら企業からの投資を必要としておらず、権益を売却しない決定もあり得るという。


これについて三井物産は、これは同社が発表したものではなく、また、現時点で同社として具体的に決定した事実はないとしている。

既存の液化プラントを運営するADNOC LNGは1973年に設立された。ADNOCが70%、三井物産が15%、BPが10%、Totalが5%出資している。

液化プラントはAl Ruways沖合のDas Island にある。既存能力は年産600万トンで、1977年に出荷を開始した。



Das Island 現状

LNGの増設計画では、当初 Fujairahが候補地となったが、その後、キャンセルされた。

2023年5月に新立地としてAl Ruways Industrial Cityが選ばれた。

480万トンが2系列で合計960万トンとなり、第一期と合わせると年産 1560万トンとなる。

2027年スタートの予定。

2024年3月にプラント建設の準備作業となる限定的着工指示(LNTP)を発行し、進展が見られた本年中に同事業に関する最終投資決定(FID)が行われる予定である。



ADNOCは最近、新しいLNG供給契約を次々に締結している。日本の石油資源開発とも(三井物産ではなく)ADNOCが直接契約している。

2024年3月に中国のENN Natural Gasの子会社であるENN LNG (シンガポール) とLNG供給契約を締結した。15年間の合意覚書に基づき、年間最低100万トンのLNGを供給する。

2023年8月17日、石油資源開発(Japex)にLNGを供給する5年間の契約を締結したと述べた。取引額は4億5,000万ドルから5億5,000万ドルと述べたが、LNGの量や出荷開始時期については明らかにしなかった。

2024年3月18日にドイツ国営会社「Securing Energy for Europe(SEFE)」の子会社と、15年間の液化天然ガス(LNG)長期契約を締結した。年間100万トンのLNGが2028年よりドイツに供給される。

2024年5月8日には、ドイツのエネルギー大手EnBWと、年間60万トン、15年間の液化天然ガス(LNG)供給契約を結んだと発表した。


各紙の今回の報道は、第一期の出資比率を前提に、第二期も3社が出資すると想定したものと思われるが、資金面や営業面からみても、今回、3社の出資を必要とする理由はADNOC側にはないと見られる。

米国は5月14日、中国製EV関税などを大幅に引き上げると発表した。

同日発表したFact Sheetで次のように述べている。

バイデン大統領の経済計画は、アメリカの経済的将来と国家安全保障に不可欠な主要セクターで投資を支援し、良好な雇用を創出している。

一方、中国の技術移転、知的財産、革新に関する不公正な貿易慣行は、アメリカの企業と労働者を脅かしている。中国はまた、人工的に低価格の輸出品を世界市場に供給している。

中国の不公正な貿易慣行に対応し、それによって生じる損害を補償するために、バイデン大統領は本日、通商代表に対して、1974年の通商法のセクション301に基づいて中国からの180億ドル相当の輸入品に対する関税を引き上げるよう指示した。

「アメリカの労働者と企業は、公正な競争があれば誰にでも勝てる。しかし長い間、中国政府は公正でない、市場経済ではない手法を使ってきた。中国の強制技術移転と知的財産の窃盗は、技術、インフラ、エネルギー、医療に必要な重要な要素のグローバル生産の70、80、さらには90パーセントを支配しているアメリカの供給チェーンと経済安全保障にとって受け入れがたいリスクを生んでいる。さらに、これらの非市場政策と手法は、中国の過剰生産能力と輸出増加を招き、アメリカの労働者、企業、コミュニティに重大な害を与える恐れがある。

大統領はアメリカの労働者と企業を中国の不公正な貿易慣行から保護するための行動を取る。中国に技術移転、知的財産、革新に関する不公正な貿易慣行を廃止するよう促すため、大統領は鋼鉄、アルミニウム、半導体、電気自動車、バッテリー、重要鉱物、太陽電池、岸壁クレーン、医療製品などの戦略的セクター全般で関税を引き上げるよう指示した。」

これに対し、中国外務省の汪文斌報道官は14日の記者会見で「中国はWTOの協定に違反する一方的な関税の引き上げに一貫して反対しており、あらゆる必要な措置をとりみずからの正当な権益を守っていく」と述べ、対抗措置をとることを示唆した。

New Section 301による中国製品の輸入関税は下記の通り (主にChatGPTによる翻訳)

中国は現在、特に重要鉱物の採掘、加工、精製などの上流ノードにおいて、EVバッテリー供給チェーンの一部セグメントの80%以上を支配している。
重要鉱物の採掘および精製能力の中国集中は、供給チェーンを脆弱にし、国家安全保障とクリーンエネルギー目標を危険にさらす。

米国およびグローバルな耐久性を改善するために、大統領は、十分な国内産業基盤を築くために米国全体に投資してきた。バイパーソンインフラ法、国防生産法、インフレ削減法を通じて、政権は、先進バッテリーおよびバッテリー材料の国内生産能力を拡大するために、約200億ドルを助成金と融資に投資してきた。インフレ削減法には、米国でのバッテリーおよびバッテリー材料の生産への投資を促進するための製造税額控除も含まれている。大統領はまた、American Battery Materials Initiativeを設立した。これにより、バッテリーとその原料の信頼性の高い強固な供給チェーンを確保するために、政府全体のアプローチが動員される。

注)
米財務省は5月3日、消費者が電気自動車(EV)を購入する際の税優遇の要件を従来案から緩和すると発表した。中国産の鉱物を使ったEVは2025年から優遇の対象外とするとしてきたが、黒鉛など一部鉱物については2027年からとし、メーカーに2年間の猶予期間を設けた。中国産の黒鉛などを使わずEV電池をつくるのは現時点で難しいからで、黒鉛はリチウムイオン電池の負極の中核材料で、供給の7割を中国に依存している。加工や精製の中国依存度も高い。
それにもかかわらず、今回、2026年から黒鉛の関税を引き上げる。

  ブログ 米国、EV税優遇の「中国産で対象外」のルール緩和 

現行 改正 時期 問題点と米国の対応策
Semiconductors 25% 50% 2025 中国の政策は、市場主導の企業による投資排除のリスクを伴う市場シェアの拡大と急速な生産能力拡大につながっている。今後3〜5年で、中国は特定のレガシー半導体ウエハの製造のためにオンラインになるほぼすべての新しい生産能力の約半分を占めると予想される。パンデミック中、供給チェーンの混乱、レガシーチップを含む製品の幅広い価格上昇が、自動車、家電製品、医療機器を含む様々な製品で過度な依存のリスクを強調した。
CHIPS and Science法を通じて、バイデン大統領は、アメリカの半導体製造能力、研究、イノベーション、労働力に約530億ドルを投資している。これにより、アメリカの半導体製造能力が国内での製造能力を低下させた数十年にわたる非投資と海外移転に対抗するのに役立つ。
CHIPS and Science法には、半導体製造ファブリケーション施設の建設、近代化、拡張に直接的なインセンティブとして390億ドル、半導体企業に対する25%の投資税額控除が含まれている。
半導体に対する関税率引き上げは、これらの投資の持続可能性を促進するための重要な初期段階。
電気自動車 25% 100% 2024
中国の広範な補助金と市場原則に反する慣行が、過剰生産の重大なリスクをもたらしている。その結果、2022年から2023年にかけて、中国のEV輸出は70%増加し、他の地域での生産的な投資が危険にさらされている。EVに対する100%の関税率は、中国の不公正な貿易慣行からアメリカの製造業者を保護する。
政府は、電池製造や重要な鉱物の生産に対する事業税額控除、EVの採用に対する消費者税額控除、スマートスタンダード、連邦政府によるEV充電インフラの投資、EVおよび電池製造への供給を支援する助成金を通じて、強力なEV市場の開発を促進している。
電気自動車への関税率の引き上げは、これらの投資と雇用を、不当に価格設定された中国からの輸入から保護する。
バッテリー、バッテリー部品、および重要鉱物
中国は現在、特に重要鉱物の採掘、加工、精製などの上流ノードにおいて、EVバッテリー供給チェーンの一部セグメントの80%以上を支配している。
重要鉱物の採掘および精製能力の中国集中は、供給チェーンを脆弱にし、国家安全保障とクリーンエネルギー目標を危険にさらす。

米国およびグローバルな耐久性を改善するために、大統領は、十分な国内産業基盤を築くために米国全体に投資してきた。バイパーソンインフラ法、国防生産法、インフレ削減法を通じて、政権は、先進バッテリーおよびバッテリー材料の国内生産能力を拡大するために、約200億ドルを助成金と融資に投資してきた。インフレ削減法には、米国でのバッテリーおよびバッテリー材料の生産への投資を促進するための製造税額控除も含まれている。大統領はまた、American Battery Materials Initiativeを設立した。これにより、バッテリーとその原料の信頼性の高い強固な供給チェーンを確保するために、政府全体のアプローチが動員される。

注)
米財務省は5月3日、消費者が電気自動車(EV)を購入する際の税優遇の要件を従来案から緩和すると発表した。中国産の鉱物を使ったEVは2025年から優遇の対象外とするとしてきたが、黒鉛など一部鉱物については2027年からとし、メーカーに2年間の猶予期間を設けた。中国産の黒鉛などを使わずEV電池をつくるのは現時点で難しいからで、黒鉛はリチウムイオン電池の負極の中核材料で、供給の7割を中国に依存している。加工や精製の中国依存度も高い。
それにもかかわらず、今回、2026年から黒鉛の関税を引き上げる。
  ブログ 米国、EV税優遇の「中国産で対象外」のルール緩和 

リチウムイオンEVバッテリー 7.5% 25% 2024
同 非EVバッテリー 7.5% 25% 2026
バッテリー部品 7.5% 25% 2024
天然黒鉛と永久磁石 0% 25% 2026
太陽電池
(モジュールに組み立てられているかどうかにかかわらず)
25% 50% 2024
この関税増加は、中国の政策に基づく過剰生産能力に対抗し、価格を抑制し、中国以外のソーラー容量の開発を阻害していることを防ぐもの。中国は不公正な手法を使い、グローバルソーラー供給チェーンの一部分で80〜90%以上を支配しようとしており、その現状維持を図っている。中国の政策と市場原則に反する慣行は、人工的に安価なソーラーモジュールとパネルを世界市場に氾濫させ、中国以外のソーラー製造への投資を阻害している。

政権は、米国のソーラー供給チェーンに歴史的な投資を行っており、これはソーラーセル技術の開発を支援した初期の米国政府による研究開発に基づいている。インフレ削減法は、ポリシリコン、ウエハ、セル、モジュール、裏シート材料を含むソーラー部品に対する供給側税制のインセンティブを提供し、ユーティリティ規模および住宅用ソーラーエネルギープロジェクトの展開を支援する税額控除、補助金、融資プログラムを提供している。大統領の「アメリカへの投資」政策の結果、ソーラー製造業者は既に、2030年までに年間数百万の家庭用パネルを供給するための米国製造能力を8倍に増やすことを計画しており、その投資額はすでに約170億ドルに上ることが発表されている。

岸壁クレーン(船から岸壁) 0% 25% 2024
米国政府は、信頼できるパートナーと共に岸壁クレーンを生産するための米国の産業能力を再構築することで、米国市民に対して引き続き成果を提供している。岸壁クレーンにかかる25%の関税率は、中国の不公正な貿易慣行によって市場が過度に集中している状況から米国製造業者を保護するのに役立つ。岸壁クレーンは、米国内外の重要な商品の連続した移動と流れを可能にする基盤となる重要なインフラで、政府は、米国の供給チェーンに影響を与える可能性のあるリスクを緩和するための措置を講じている。この措置は、大統領の「アメリカへの投資」政策を通じて米国の港湾インフラへの投資を進める取り組みに基づいている。この港湾安全イニシアチブには、米国に岸壁クレーン製造能力を戻すことが含まれており、米国の供給チェーンの安全を支えることに加えて、米国および世界中の港湾がクレーンやその他の重機を調達する際に信頼できるベンダーを利用することを奨励している。
医療製品
これらの関税率の引き上げは、COVID-19パンデミック対応に不可欠であり、国内のすべての病院で毎日使用されている医療用品の強力な国内産業基盤を支え、維持するのに役立つ。連邦政府と民間セクターは、これらおよび他の医療製品の国内製造を構築するために大規模な投資を行っており、アメリカの医療従事者と患者が必要なときに重要な医療製品にアクセスできるようにしている。アメリカ企業は、市場に投入された安価な中国製品と競争するのに苦労しており、その品質が非常に低い場合もあり、医療従事者や患者の安全に懸念を引き起こす可能性がある。

今日の発表は、バイデン大統領が常にアメリカの労働者を支援するという決意を反映している。海外からの反競争的で不公正な慣行に直面した際には、大統領はアメリカの労働者と産業を保護するために必要なすべての手段を展開する。

注射器と針 0% 50% 2024
呼吸器およびフェイスマスクなど 0~7.5% 25% 2024
ラバー製医療用および手術用手袋 7.5% 25% 2026

韓国ハンファグループ傘下のHanwha Q Cellsは、2024年4月初めにジョージア州 Cartersville工場での太陽電池モジュールの生産を開始した。

すべて米国製のingots、wafers、cells、modulesを生産する"Solar Hub" で、2024年末にフル稼働すると、1日当たりのパネル生産量は4万6,700枚以上、年間8.4GWの生産能力を持つことになる。同社によると、これは130万世帯分の電力を賄う量のパネル生産能力に相当する。

原料であるシリコン(ケイ素)を加工したものが「Ingot」、これを薄く切ったものが「wafer」、太陽電池としての機能を持つ最小の単位を「Cell」と呼び、セルを複数組み合わせて屋外で利用できるように支持板(ガラス板など)、裏面材(バックシートなど)、アルミ枠などで保護・強化したものが「Module」 である。

Dalton工場は最終段階のModule組み立てだけであるが、Cartersvilleでは元のIngotから最終のModule組み立てまで、すべて米国製である。

Hanwha Global 部門は2022年3月、米国のポリシリコン生産会社 REC Silicon の12%を買収することを決めたと発表した。同日、Hanwha SolutionもREC Siliconの持分4.67%を追加購入したと明らかにした。これまでグループで16.67%を保有していたが、今回の取引で、筆頭株主となった。

RECシリコンはノルウェー・オスロ取引所に上場されるポリシリコン生産会社で、米国にだけ工場2つを保有している。ワシントン州のモーゼスレイク工場(年産 1万6000トン) は水力発電基盤のエコエネルギーを活用し、カーボン・フットプリントがほとんど残らない「クリーンポリシリコン」を生産する。モンタナ州ビュート工場では半導体向けポリシリコンを年間 2000t 生産する。

数年間休眠状態だったモーゼスレイク工場は、2022年4月に復活した。

RECシリコンが製造したポリシリコンは、ジョージア州カーターズビルのハンファQセルズ新工場で利用される。

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Hanwha Q Cellsは2023年1月、米国の太陽光発電史上最大といわれる25億ドル以上を投じるジョージア州Daltonの太陽電池モジュール製造施設拡大を発表した。

当初の能力1.7GWに対し、1.4GWと2GWの増設を行い、合計能力を5.1GWとした。1日当たり3万枚以上のパネルを生産している。

計画の一環として、アトランタ北西郊外のCartersvilleに新たな製造施設の建設を発表し、バイデン政権が進める気候変動対策に合致した投資として賞賛されていた。

同社の能力推移は下図の通り。

Hanwha Q Cellsは、米政府のインフレ抑制法(IRA)によって税額控除の恩恵も受ける。Cartersville工場だけで年内に1億4000万ドル (約1860億ウォン)の税額控除を受けることになる。来年、計画通り全ての製品を作り始めれば、税額控除規模は1兆ウォンに増える。

Q Cellsは2024年1月8日、マイクロソフトと戦略的提携を結び、8年間で12GWの太陽電池モジュールと設計・調達・建設(EPC)サービスを供給すると発表していた。マイクロソフト向け太陽電池モジュールは、今回生産が開始されたCartersville工場から供給する予定 。


Hanwha Q Cells はマイクロソフトとの8年間の戦略的アライアンスを発表した。この提携により、マイクロソフト社は世界最大級の再生可能エネルギーの購入企業となる。

Q Cells は、これまでで最大規模のモジュールおよび設計・調達・建設(EPC)サービスに関する協定を結び、8年間で12GWの太陽電池モジュールとEPCサービスをマイクロソフト社に供給する。この協定には、2023年1月に発表された2.5GWの太陽電池モジュールとEPCサービスに関する取り決めも含まれている。

両社は世界的なクリーンエネルギー経済の推進を目指している。マイクロソフトは、2025年までに電力消費量の100%を再生可能エネルギーで賄うことを宣言しており、ハンファQセルズは、完全な米国製の太陽光発電サプライチェーンとエネルギーのワンストップソリューションを提供することで、マイクロソフトの目標達成をサポートする。

また、Q Cellsは本年2月、太陽電池のリサイクル会社のSolar Cycleと提携、Q Cellsが米国で廃棄、所有、設置した太陽電池パネルをリサイクルすると発表している。

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ドイツの太陽電池メーカー大手のQ.Cellsは2012年4月2日、法的整理の手続きを申請すると発表した。

太陽電池ブームを追い風に2008年に世界シェア首位に立ったが、中国メーカーなどとの価格競争が激化し、赤字体質に陥っていた。

2012/4/6 太陽電池大手 Q-Cells 破綻

Q.Cellsは2012年8月26日、韓国のHanwha Groupから買収提案を受けたと発表した。

Q.Cells は8月29日、債権者集会で韓国のHanwha Groupへの事業売却が、参加者の過半数によって承認されたことを発表した。
従業員約1,550人のうち、1,250人を
Hanwha Groupが引き受け、また、Q-Cells の事業の大部分についてもHanwha Groupに移管される。

買収価格は、営業債務の引き受け部分(1〜5億ユーロ相当)と、キャッシュによって支払われる部分(数千万ユーロ)から成り、キャッシュ部分の金額は今後、Hanwha Groupが引き受ける追加債務の金額によって変動する。

新聞情報では、買収額は4千万ユーロで、2億74百万ユーロの負債も引き継ぐ。

2012年10月24日、買収が完了し、Hanwha Q.Cells GmbHが設立された。

2012/11/27 倒産したドイツの太陽光発電メーカーQ. Cells、韓国ハンファグループのHanwha Q.CELLSとして再生 

アルミ産業が集積する富山県高岡市で、太陽光発電の廃棄パネルで水素発電する事業が始まる。パネルからアルミを抽出する企業グループと、アルミを化学反応させて水素を取り出し火力発電する事業者が連携する。

高岡市は官民連携で地域内アルミリサイクル事業を進めており、2023年に環境省の「脱炭素先行地域」に指定された。

同事業の目玉は①リサイクル業のハリタ金属(高岡市)と三協立山による太陽光の廃棄パネルからアルミを抽出して再生する取り組みと、②アルハイテック(高岡市)が手掛けるアルミ水素発電の2つ。
先進的で効果の高い取り組みを実現することで上限50億円の交付金が得られ、双方の取り組みの相乗効果を訴求する。

2030年代に廃棄パネルの大量発生が見込まれるなか、再生可能エネルギーの利用比率を高めたい電力事業者に売り込む。


廃棄パネルの処理ではハリタ金属が保有する大型ラインが中核的な役割を担う。自動車スクラップ1台分をまるごと粉砕でき、1時間に1000枚(20トン)以上処理する能力がある。

アルハイテックは、アルミを有効活用した水素社会づくりを目指す「北陸アルミ水素将来ビジョン」を掲げ、工場や家庭からのアルミ廃材全般からアルミ水素発電を行う取り組みを進めており、今回、廃棄パネルの処理を行うハリタ金属/三協立山と提携する。



アルミ系廃棄物を処理して水素発電をするまでには大きく4つのステップがある。

①パルパー型分離機でアルミ系廃棄物をパルプとプラスチック付きアルミに分離する。

アルミ付き廃棄物から、水を用いて紙を分離する装置。
基本的には排水を必要としない構造で、水を循環させ且つ少ない電気エネルギーでの運転が可能
パルパー底面の特殊スクリーンを通過したパルプ繊維を回収するので、繊維を切ることがほとんどない良質な繊維が再利用できる。

②次に、乾留炉でプラスチック付きアルミを乾留してプラスチックを分解し、アルミを取り出す。

アルハイテックが開発した乾留炉はパルパー型分離機で回収された樹脂部分を熱処理により分解除去し、不純物の少ないアルミを回収する。
同社の特許技術により600℃前後の温度で付着するプラスチックを自燃させることよる運転で分離を可能にした。これにより、純度が高いアルミを回収することができる。

③続いて、水素製造装置で、繰り返し使える特殊なアルカリ系溶液とアルミを反応させて高純度の水素を発生させる。

アルハイテックが開発した水素製造装置は水素ではなく、アルミを輸送・貯蔵し、必要な時に水素を製造する。
また、アルハイテックの水素製造装置は小型化が容易なため、施設の規模感に合わせて柔軟に対応可能。
独自開発した特殊なアルカリ性反応液を用いて水素と水酸化アルミ(難燃剤として高価で売れる)を製造する。従来品よりも高効率・高反応速度で水素を得ることができる。
この反応液は約100回繰り返し使用することができる。

④最後に、その水素を燃料電池に送って発電に利用する。


水素製造装置は、アルミと反応液を混ぜることで常温、常圧で水素を生成し、同時に資源として使える水酸化アルミニウムを取り出すことができ
る。

通常、反応液に使われる水酸化ナトリウム水溶液は、使うたびに消耗して化学反応の速度・効率が落ちが、アルハイテックではバルセロナ自治大学の基礎研究を元に、アルカリ水溶液に触媒を加えた独自の反応液を開発し、常温で100回以上繰り返し使用できる画期的なものに改良し

また、この反応液は触媒の効果により、劇物である水酸化ナトリウムの含有量を最小限に抑えながらも効率的に水素を発生させることができる。そのため、劇物の対象外となり、取り扱いやすいという利点もある。

反応槽は二重部屋構造を採用して、水素発生中にアルミを連続的に投入できるようにし、供給を自動で制御することも可能で動作確認では、9kgのアルミから1kgの水素と26kgの水酸化アルミニウムを生成できた。

アルミ付き廃棄物を用いた水素発生における反応液の開発


2023年にアルハイテックが環境省の助成を受けて実施した事業化調査の結果では、320キロワット規模(一般家庭250軒分)では年間600トンのアルミ原料が必要になる。調達価格が1キロ100円未満で採算が取れる。
高岡市には年間100トン以上のアルミスクラップを排出する工場も多い。高純度のアルミの市況は同200円以上だが、切りくずなどでは100円以下もある。切りくずは溶融用の溶液になじみやすく発電効率も高まる。

一方で売電価格の動向が事業展開のカギを握る。同社では、アルミ水素発電の売電価格8〜30円(1キロワット時)程度で事業化を想定する。


アルハイテックは工場や家庭などから排出されるアルミを回収し、水素を作り出すことでエネルギーや資源に変える「アルミ水素エネルギー社会システム」の実現を目指している。

2018年8月には、システムを地域から北陸全体へと広げることを目指す「北陸アルミ水素将来ビジョン検討会議」が発足その後、参加を表明した北陸地域の約80機関による検討会議が行われ、3回目に座長の川口教授から、「アルミ水素エネルギー社会システム」の将来像や2040年頃までのロードマップをわかりやすく示した「北陸アルミ水素将来ビジョン」が発表され

参考資料 NEDO Web Magazine クリーンなエネルギーを地産地消する水素発電システムを開発

Shellは5月8日、シンガポールのEnergy and Chemicals Park をインドネシアのChandra Asri とスイスのGlencoreのJVのCAPGC Pte. Ltd.に売却する契約に合意に達したと発表した。

Chandra Asri はインドネシアの化学・インフラソリューション企業
Glencoreはスイス・バールに本社を置く 世界最大のグローバル多角的天然資源企業の1つ

Chandra AsriがJVのマジョリティを持つ。

これは、SHELLのChemicals and Products businessを高機能化し、排出を減らしつつ、より多くの価値を生み出すという同社のコミットメントを示すものとしている。

買収したChandra Asri とGlencoreのJVのCAPGC Pte. Ltd.によると、入札で買収したという。買収金額は発表されていない。2024年末迄に取引を完了させる予定。


発表内容は下記の通り。

1.売却対象のShell Energy and Chemicals Park Singapore はJurong島とBukom島の石油精製・石油化学資産である。

Jurong島は、元の7つの島(Ayer Chawan、Ayer Merbau、Merlimau、Pesek、Pesek Kecil、Sakra、Seraya)とWestern Islands を一つにしたもの

メルバウ島にはShellが出資するが、今回の売却対象外のPCS、TPCがある。
セラヤ島とサクラ島には売却対象のPO/SM設備が、またメルバウ島には同じく売却対象のEO、EGプラント(JV)がある。

Bukom島はJurong島の南東にある島で、Shell のSM/PO設備があるSeraya島から5kmのパイプラインで繋がっている。

Bukom島には、Shell が所有・運営する日量237千バレルの製油所と、年産110万トンのエチレンクラッカーがある。


2003年1月、住友化学 とShell はシンガポールでの新たなエチレンプラントの建設についてFSを開始する旨の契約を締結した。

シェルの日量50万バレル(当時)のリファイナリーがあるブコム島にエチレンプラントを建設、パイプラインで ジュロン島に送り、住友化学が誘導品を増設する計画であった。

2004年5月、住友化学はサウジ・ラービグ計画に参加する覚書を締結、これにより、ブコム島でのエチレン計画から撤退することとなった。

シェルは住友化学の離脱後もシンガポールの経済開発局とともに本計画を進めることとし、2010年3月に下記能力でスタートした。その後、増設。

エチレン 800 千トン
プロピレン 450
べンゼン 230
ブタジエン 155

2013/6/7 ExxonMobil のシンガポール石化2期計画完成 に記載


2.Jurong島にはShell 出資の下記のプラントがある。このうち、PSCとTPCは今回の売却対象外である。これらにはShell単独ではなく、Qatarとの50/50JVとして出資している。

社名 Petrochemical Corp. of Singapore (PCS)   今回売却の対象外
場所 Merbau島
株主 日本シンガポール石油化学(JSPC)   50%
QPI and Shell Petrochemicals (Singapore) 50% (Shell 50%/Qatar 50%)  
  
カタール石油、シンガポールのPCS、TPCに出資
能力 エチレン 1,080千トン(①400+②400+増強)

社名 The Polyolefin Company (Singapore) (TPC)  今回売却の対象外
場所 Merbau島
日本シンガポールポリオレフィン(NSPC) 70%
QPI and Shell Petrochemicals (Singapore) 30% (Shell 50%/Qatar 50%)
能力 LDPE  250千トン(145+②64+増強)
LLDPE 150千トン
②114+増強)
PP  
450千トン(①175+②114+増強)

LLDPE設備をPPに転換 (PP +200千トン→650千トン)
 原料
プロピレンはPCSで新設のメタセシス法プラントから供給

 以下は今回の売却対象。ただし、EO、EGは日本勢とのJVであり、その同意が必要と思われる。

社名 Seraya Chemicals Singapore     Ellba Eastern
場所 Seraya島 Sakra島
能力 SM 370千トン
PO 160千トン
Polyols 78千トン
PG 40千トン
SM 550千トン
PO 250千トン

SM/PO併産設備

社名 Ethylene Glycols (Singapore)  
場所 Merbau島
株主 日本シンガポールEG 30%  (*住友化学、三菱化学、日本触媒ほか)
シェルグループ  
 
70%
能力 EO    45千トン
EG   122千トン
誘導品 30千トン

社名 Ethoxylates Manufacturing Pte Ltd  
場所 Merbau島
株主 Ecogreen Oleochemicals (Singapore) 
原料のEO/EGを売却するため、Shellが買い取って、原料とともに売却すると思われる。 
能力 Ethoxylates 18千トン


3. 売却プラントの従業員の雇用は維持する。

4. ShellとCAPGCは合わせて原料供給契約、製品引取契約等を締結する。

EU加盟国は5月8日、凍結したロシア資産の利子をウクライナ支援に使うことで大筋合意した。武器の調達などを支援するため7月にも支払いを始める。

西側諸国は2022年2月のウクライナ侵略の開始直後にロシア中央銀行の資産を凍結していた。総額3000億ドル(約46兆円)の3分の2はEU域内にある。資産を保管するベルギーの 国際決済機関Euroclear が得る年30億ユーロ(約5000億円)の利子収入を活用する。

米欧カナダの6カ国とEUは2022年2月26日、ロシアに追加制裁する方針を表明した。ロシアの中央銀行に初めて制裁を科し、ロシアの外貨準備を使えなくして通貨ルーブルの防衛を困難にする狙い。岸田文雄首相は2月27日、米欧の制裁への参加を表明した。

米英独仏イタリア、カナダの6カ国と欧州委員会は同日、ロシアの大手銀行などを国際的な資金決済網 SWIFTから排除する追加の金融制裁を科すことで合意した。数日中に実行する。

ロシアはドルやユーロなどの外貨準備をおよそ6300億ドル、日本円でおよそ73兆円保有していて、ウクライナへの軍事侵攻や欧米の経済制裁を受けて急落する通貨ルーブルを外貨を使って買い支える姿勢を示してきた。

今回の追加制裁はこれを阻止する狙いで、日本やヨーロッパ各国などとも連携してロシア経済に打撃を与える。

ただ今回、エネルギー関連の取り引きは例外的に許可する制度を設けるとしていて、ロシアに対して実効性を伴う形で強い
圧力をかけられるかが焦点になる。

2022/2/28 ロシア追加制裁、国際決済網から排除 

ユーロクリアから半年ごとにEUの基金に入れ、9割をウクライナのための武器購入、1割を復興に回す想定。

ロシア中銀資産の活用は22年から主要7カ国(G7)やEUで議論してきた。EUの合意は具体的な活用の第一歩といえるが、活用するのは利子部分にとどめ、資産全体の没収などには踏み込まなかった。

ロシア国内には欧州企業の資産が多く残る。国際法への抵触に加え、ロシアによる報復を懸念したためとみられる。

国際法上、国家資産は原則没収できない。

今回、ロシア資産を例外とする論拠にしたのは国連の国際法委員会が2001年にまとめた文書で、国際法の権威が集まる同委は2001年に草案を採択し、違法行為によって特別に影響を受ける国は加害国の責任を追及できると記した。
米国はこれに基づき、予算の面などで影響を受けるG7も対抗措置が可能だと主張した。

英国は国際法に抵触する懸念から資産没収に慎重な立場だったが、2023年11月にキャメロン外相が就任してから推進派に転じた。

ウクライナのゼレンスキー大統領はロシアの凍結資産そのものの活用を求めている。資産没収には各国の国内手続きも必要になる。

独仏は没収できるとの米国の解釈に真っ向から反論、交戦状態にない第三国の資産を没収すれば国際法違反の悪しき前例になると訴える。

国営ロシア通信は2024年1月21日、西側諸国がロシアの資産を没収してウクライナ復興に充当し、ロシアが報復に動いた場合、西側が失う資産と投資の規模は少なくとも2880億ドルに上るとの試算結果を伝えた。EU加盟国の資産はこの8割の2233億ドルを占める。ロシアは、西側が強硬措置を進めれば、ロシア側にも没収できる米国と欧州諸国の資産のリストがあると警告している。


国営ロシア通信によると、西側諸国がロシア国内に保有する資産は次の通り。

EU  2233億ドル(キプロス 983、オランダ 501、ドイツ 173、フランス 166、イタリア 129、その他EU 281)
英国  189億ドル
米国  96億ドル
日本......46億ドル
その他 322億ドル

EUに没収を提起してきた米国では、サミットまでに合意できる折衷案として資産の将来の利子を担保にした債券発行や融資の構想が浮上している。


神戸大学は2024年4月30日、大学院工学研究科の森田健太助教・丸山達生教授と、藤田医科大学病院、名古屋市立大学、藤田医科大学、神戸大学大学院医学研究科の研究グループが、水中で「塊」状に凝集して働く酵素阻害剤を発見したと発表した。


近年、劇症型溶連菌感染症の症例が増えている。発症すると急激に症状が悪化して手足の壊死や多臓器不全を起こし、30%が死に至ることから、「人食いバクテリア感染症」とも呼ばれている。

溶連菌はDNA分解酵素(DNase)を分泌してヒトの白血球が持つ感染防御機構を破壊することで感染を有利に進める。

DNaseを阻害すれば劇症型溶連菌感染症の治療につながると思われるが、これまでに人体に投与可能なDNase阻害剤は見つかっていなかった。

今回発見した水中で「塊」状に凝集して働く酵素阻害剤は、溶連菌感染症治療に役立つ可能性があり、今後、この現象を詳細に解明することでこれまでとは全く異なる視点での酵素阻害剤開発および感染症治療への応用が期待される。

この研究成果は、4月16日に、米国化学会が発行する「JACS Au」に掲載された。 



研究グループではMannan 007 (Mn007)という分子がDNA分解酵素(DNase)を阻害することを発見した。調査したところ、Mn007は水中で凝集して初めてDNaseを阻害する 。

一方、DNase以外の酵素にMn007凝集体を作用させても、酵素の阻害は起こらない。つまり、Mn007凝集体はDNase特異的な阻害剤であることが分かった。これまで、酵素阻害剤は対象の酵素と1対1で反応することが一般的であり、特定の酵素だけを阻害する低分子の凝集体は世界初の発見。


溶連菌は、DNA分解酵素(DNase)を分泌し、ヒトの白血球が持つ感染防御機構を破壊し、感染させる。

 

今回発見した酵素阻害剤 Mn007は、
  
  単独ではDNA分解酵素を阻害しない。
  DNase以外の酵素は阻害しない。

  水中で凝集すると、初めて、DNA分解酵素を阻害する。(DNase以外の酵素は阻害しない)

次に研究グループは、Mn007が劇症型溶連菌感染症の治療薬になり得るかどうかを検討した。

白血球を含むヒトの血液にMn007と溶連菌を加え、しばらく溶連菌を培養した後、溶連菌の数を数えたところ、Mn007を加えた血液中では溶連菌は増殖しにくいということがわか った。
Mn007凝集体が溶連菌の分泌するDNaseを阻害し、白血球の持つ感染防御機構が正しく働いたためだと考えられる。

Mn007の濃度が上がるにしたがってMn007の凝集体が増え、それに伴いDNaseが阻害されていることがわかる。

研究グループは、今後の展開として、病気の原因となっている様々な酵素に対してMn007のような凝集性の酵素阻害剤を個別にデザインすることで治療薬開発ができるようになるかもしれ ないとしている。

米Intel と、半導体製造を中心にサプライチェーンを繋ぐ世界的な業界団体SEMI の日本支部、及びオムロンなど国内14社と三菱総合研究所は5月7日、半導体製造後工程であるパッケージング・アセンブリーテスト工程トランスフォーメーションおよび完全自動化目的とする半導体後工程自動化標準術研究組合SATASを、416設立したと発表した。

後工程自動化必要技術およびオープン業界標準仕様作成、装置開発実装統合されたイロットライン装置動作検証い、2028 実用目指す。事業れた知見技術既存および新規工場導入・実装していくこと実用化おける重要目標なる。

従来半導体製造トランスフォーメーションし、より効率的かつサスティナブル柔軟サプライチェーン実現目指す。

後工程は多様な部品や製品を手作業で組み立てることが多く、労働力が豊富な中国や東南アジアに工場が集中しているが、人件費の高い日米に拠点を構えるには、生産ラインを無人化する技術が必要だと判断した。

インテルが装置や素材メーカーに共同開発を呼びかけた。技術力を持つ日本の装置や素材メーカーと連携する狙いで、今後も参画企業を募る。

日米連携には日本や米国で半導体を一貫生産できるようにし、供給網が寸断するリスクを軽減させる狙いがある。

日本国内では半導体の技術者は不足感が強い。生産を自動化することで、後工程を担う人員確保の負担を減らす。後工程に関する技術の標準化を進め、複数の製造装置や検査装置、搬送装置をシステムで一括管理したり制御したりできるようにする。

経産省も最大数百億円の支援をする見通し。

参加メーカーと各社の専門分野は下図の通り。



参考

米アリゾナ州のKatie (Kathleen )Hobbs 知事(民主党)は2024年5月2日、人工妊娠中絶をほぼ全面的に禁じる1864年の州法を廃止する法案に署名、同法が成立した。7月までに州議会が閉会した後、90日後に発効する。

州最高裁が1864年の中絶禁止法の有効性を認め、早ければ6月下旬に施行される可能性があるため、 この州法を正式に廃止することにしたもの。

これまでの経緯は下記の通り。

アリゾナ州では、アリゾナ州が州になる前の1864年に人工妊娠中絶禁止法を制定した。(アリゾナ州は1912年に米国で48番目の州に昇格した。)

受精の時点から中絶を禁止するもので、レイプや近親姦の場合でも例外とならない。

母体の生命が危険な場合を除き、中絶に禁錮2~5年の罰を科せる。

1973年1月22日、Roe v. Wade事件に対する最高裁判決が出た。テキサス州の「妊娠中絶を原則禁止」とした中絶法を7対2で違憲とする判決を下した。これにより、アリゾナ州の人工妊娠中絶禁止法は無効とされた。

中絶は憲法に保障された権利との判断を示し、胎児が子宮の外で生きることができるようになるまでなら中絶は認められるとした。
現在は「妊娠22~24週ごろよりも前」がその基準と考えられている。

2022年6月24日、米連邦最高裁は1973年の「Roe v. Wade判決」を覆す判断を下した。

「中絶は深い道徳上の問題だ。中絶の権利は憲法に明記されておらず、歴史や伝統に根ざしているわけでもない。憲法は州が中絶を規制したり、禁止したりすることを禁じていない」と結論づけた。

保守派判事5人が支持、リベラル派判事3人が反対し、ロバーツ長官も中絶が妊娠中期まで認められることに根拠がないとして州法の合憲性を認めた。(但し、中絶を選ぶ権利まで取り消すことには反対した。)

問題となったミシシッピー州法については「胎児の生命を保護することなど州側の正当な利益があり、州法には合理的な根拠がある」と判断。州法を「違憲だ」とした連邦控訴裁(高裁)の判決を破棄し、審理を差し戻した。

中絶の権利に対する憲法の保障がなくなり、全米50州の26州で中絶が事実上禁止または大幅に制限される見込み。

米最高裁の中絶権判例を覆す意見草案 付記

この結果、州ごとに中絶権が決定できるようになった。

アリゾナ州では2022年、母体の生命が危険な場合を除き、妊娠15週以降の中絶を禁止する州法が成立した。ただしこの法律でも、レイプや近親姦の場合は例外とならない。

アリゾナ州最高裁判所は2024年4月9日、人工妊娠中絶をほぼ全面的に禁止する160年前の州法を有効とする判断を示した。

160年前の州法は1973年のRoe vs Wade 判決で死文化していたが、2022年に Roe vs Wade判決が覆されたことを受け、州最高裁は昔の禁止法が再び施行可能になったとの判断を下したもの。

今回の判決により、中絶が可能な州内のすべてのクリニックが閉鎖される可能性がある。影響は女性の健康と、今秋の大統領選挙にも及びうる。

そのため、人工妊娠中絶をほぼ全面的に禁じる同州の1864年の法律を廃止する法案が州議会に提出された。中絶禁止法は強姦や近親相姦による妊娠も含めて中絶を禁じており、バイデン大統領は生殖の自由を制限すると批判。トランプ前大統領も「行き過ぎだ」と指摘していた。

アリゾナ州下院は2024年4月24日、共和党議員3人が法案賛成に回り、賛成32、反対28でこの法案を可決した。

アリゾナ州上院は2024年5月1日、賛成16、反対14の賛成多数で可決された。

7月までに州議会が閉会した後、90日後に発効する。

アリゾナ州では2022年、母体の生命が危険な場合を除き、妊娠15週以降の中絶を禁止する州法が成立しており、今後はこの法律が有効となる。


同州では本年11月に、妊娠24週までの中絶について是非を問う住民投票が行われる予定で、その結果によってはさらに法律が変わる可能性がある。


2013年に豪州のOricaなどが設立したMCi ( Mineral Carbonation International )は4月10日、OricaのKooragang島(ニューサウスウェールズ州)のアンモニア製造工場の隣にCCU施設Myrtle(炭酸塩プラント)の建設を開始したと発表した。

CCU技術(Carbon dioxide Capture and Utilization)は二酸化炭素(CO2)を回収して製品開発などに生かす技術で、具体的には、製鉄工程で生じる副産物(スラグ)や火力発電所で生じる石炭灰、その他カルシウムやマグネシウムを含む様々な物質(廃コンクリートなど)にCO2を反応させることで、建設部門向けのさまざまな炭酸塩製品を製造する。



Myrtleは、Oricaのアンモニア工場から回収される年間1,000トン以上のCO2を利用し、約10,000トンの建材を生産 する。2025年初めまでに完成、就役、操業開始される予定としている。

MCiはMyrtle建設のためにオーストラリア政府のCCUS Development Fund から1,460万オーストラリアドル(約12億円)を確保している。

オーストラリア政府は2021年3月にCCUS開発ファンド(Carbon Capture, Use and Storage Development Fund)を設立し、最大5,000万豪ドル(約41億5,000万円、1豪ドル=83円換算)の公募型資金を公表した。

対象とするプロジェクトは、オーストラリア国内で実施されるパイロット規模以上のもので、将来的に地域のCCSハブに接続可能であるものとしており、2025年6月末までに完了することも要件となっている。

日本から伊藤忠商事とみずほ銀行に加え、三井住友信託銀行が同社に投資している。

伊藤忠商事は、2021年8月にMCiへの出資を実施した。

MCiの技術は半永久的にCO2を固定化し、且つ有用な成果物を創出できることから、世界的な脱炭素の流れを加速させる技術として産業界を中心に幅広く注目されている。また、MCi社は豪州政府から14.6百万豪ドル(約12億円)の本技術の更なる研究・開発に向けた基金交付を受けており、豪州国内で本技術への関心・期待が高まっていることが窺える。
伊藤忠商事はMCi社技術の日本国内での展開を図るべく、2021年3月に同社とMOUを締結した。その後早期に実用化できる可能性があること、対面業界である鉄鋼業界・電力業界などの顧客からの本技術への関心が非常に高いことなどを総合的に鑑み、同社への出資に至った。

本出資に伴い、本技術の日本向け展開・プロモーションについては伊藤忠商事が独占的に行うこととなる。

みずほ銀行は2023年3月31日にMCi Carbon との間で、みずほ銀行によるMCiへのUSD5Mの出資を目的に、株式引受契約を締結し、出資を行った。みずほ銀行は、環境・社会の持続性向上に資する領域(トランジション領域)における顧客の挑戦をサポートすべく、シード(技術の種)やアーリーステージ(初期段階)の段階から、トランジション領域にて顧客が関与するプロジェクト等に戦略的に出資することで、顧客と機会とリスクを共有し、広く環境・社会の持続性向上に資する社会的価値を共創していくことを目指している。

三井住友信託銀行は2024年3月12日、「社会課題解決に向けた挑戦や取り組みを資金面からサポートすることを目的とする」インパクトエクイティ投資として出資した。増資による資金は、当該量産化プラントの建設資金として活用される。

米財務省は5月3日、消費者が電気自動車(EV)を購入する際の税優遇の要件を従来案から緩和すると発表した。中国産の鉱物を使ったEVは2025年から優遇の対象外とするとしてきたが、黒鉛など一部鉱物については2027年からとし、メーカーに2年間の猶予期間を設けた。

ーーー

バイデン米大統領は2022年8月16日にインフレ対策法案:Inflation Reduction Act of 2022 に署名し、法案は成立した。大統領は「気候変動に関するこれまでで最大の前進だ」と強調した。

エネルギーコスト引き下げ、クリーンな生産、2030年までにカーボン排出の40%削減を狙い、3,690億ドルを投じる。

新法では、

低・中所得者がエコカーなどの新車を購入する際に1台当たり最大7500ドルの税控除を受けられる。

既存のEV減税は適用対象を自動車メーカーごとに20万台と定めていたが、台数の上限を撤廃する。  

ただ、EV減税の対象となる新車について、北米地域での最終組み立てを義務付けた。さらにEV用電池の原材料である重要鉱物の調達先を、米国か、米国と自由貿易協定(FTA)を結んでいる国に事実上制限する。世界シェアの高い中国製品をサプライチェーン(供給網)から排除する狙い。

主な要件(控除額は個人の場合)
税額控除額
価格が5.5万ドル(バンやSUV、ピックアップトラックは8万ドル)未満であること 必須 -
車両の最終組み立てが北米(米国、カナダ、メキシコ)で行われていること 必須 -
電池材料の重要鉱物のうち、調達価格の40%が自由貿易協定を結ぶ国で採掘あるいは精製されるか、北米でリサイクルされていること

2023年3月28日に「重要鉱物のサプライチェーンの強化に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定」(日米重要鉱物サプライチェーン強化協定:日米CMA)が署名され、即日発効となった。米国は、同協定をインフレ抑制法(IRA)上のFTAとみなす。

2023
2024
2025
2026
2027ー
40%
50%
60%
70%
80%

2025年からは、「懸念される海外企業」が抽出、加工、またはリサイクルした重要鉱物を含んではならない。→ 2027年から

どちらか
必須
3,750ドル
電池用部品の50%が北米で製造されていること
2024-25
2026
2027
2028
2029-
60%
70%
80%
90%
100%

2024年から、「懸念される海外企業」が製造または組み立てたバッテリー部品を含んではならない。

3,750ドル

「懸念される海外企業」の定義が明らかでなかったが、財務省は2023年12月1日、「懸念される海外企業」と見なされるエンティティを定義する提案ガイダンスを公表した。
 

それによると、「懸念される海外企業」は、懸念国(中国、ロシア、イラン、北朝鮮)の企業 及びその企業が25%以上所有、またはコントロールする企業とされる。

2023/12/4 米政府、EV税額控除で中国の影響排除

ルール通りであれば、2025年からは中国が抽出、加工、またはリサイクルした重要鉱物を含んではならないこととなる。

米財務省は5月3日、消費者が電気自動車(EV)を購入する際の税優遇の要件を従来案から緩和すると発表した。中国産の鉱物を使ったEVは2025年から優遇の対象外とするとしてきたが、黒鉛など一部鉱物については2027年からとし、メーカーに2年間の猶予期間を設けた。 (ルール上は「黒鉛など一部鉱物」との規定はない。)

中国産の黒鉛などを使わずEV電池をつくるのは現時点で難しいからで、黒鉛はリチウムイオン電池の負極の中核材料で、供給の7割を中国に依存している。加工や精製の中国依存度も高い。

米国でEV販売・生産を手がける自動車メーカーから、代替調達先の確保には時間が必要だとして猶予期間を求める声が相次いでいた。

中国政府は2023年12月、黒鉛の輸出を許可制とした。米財務省などは、近く自動車メーカーや電池メーカー、資源会社を集め、取引実態を把握したうえで中国に頼らない重要鉱物の調達方法を検討するとしている。

円相場の動き

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欧米各国が2022年には利上げに転じたのに対し、日本銀行は3月18日~19日の金融政策決定会合で、ようやく従来の「マイナス金利政策」を解除し、無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0~0.1%程度で推移するよう促すことをきめた。

日銀による利上げは2007年2月以来およそ17年ぶりである。

一方で米国は2022年以降、頻繁な利上げを行い、現状のFF金利は5.25~5.50%で、日米金利差は非常に大きい。欧州も同様である。

2024/3/20 日銀、マイナス金利政策を解除

この結果、円安が進行している。2024年4月29日(祭日)の外国為替市場で一時160円台と、1990年4月以来34年ぶりの円安ドル高水準となった。

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4月29日(日本は祭日)のアジアの外国為替市場で午前中、およそ34年ぶりに1ドル=160円台になった。

午後1時すぎに一転して円高方向に変動し、1ドル=155円台まで値を戻した。

政府は発表していないが政府による円買いドル売り介入があったとの観測が強まった。

その後、4月30日、5月1日と再び円安に動いていたが、日本時間の5月2日朝6時頃(米連邦公開市場委員会の終了後)、急な円高・ドル安が進み、円相場は一時1ドル=153円台まで上昇した。1時間程度で4円超の円高になった。

市場では日本政府・日銀が円買い介入に踏み切ったという見方が出ている。
午後は円買い再開で155円台前半に失速した。




3日のニューヨーク外国為替市場で円が対ドルで上昇、一時1㌦=151円台 4月の雇用統計で非農業部門の就業者数が前月比17万5000人増と市場予想(24万人程度)を大きく下回り、FRBが早期利下げに動く可能性を意識したドル売り。


日本経済新聞は、専門家の意見をまとめ、介入原資は3000億ドルと推定、最初の介入が5兆円規模と推定されたことから、円買い余力はあと8回と報じた。

円売り介入の場合は限度がないが、円買い介入の場合は円を買うための米ドルが必要である。

日本の外貨準備は3月時点で1兆2906億ドルあったが、当面使えるのは、このうちの満期1年未満の短期証券と預金の合計の約3000億ドル(約47兆円)と推定した。

最初の介入は5兆円規模と推定されたことから、余力はあと8回、約40兆円としたもの。

日銀が4月30日に公表した5月1日の当座預金残高の見通しによると、為替介入を反映する「財政等要因」による減少額が7兆5600億円だった。

為替介入を想定しない市場推計と5兆円強のずれが生じており、市場では4月29日に5兆円規模の円買い介入があったとの観測が強まっている。

同様に、5月2日のケースでは、「財政等要因」による当座預金残高減少額が4兆3600億円で、為替介入を想定していない市場予想と3兆円強のずれが生じた。3兆円規模の円買い介入があったと見られている。

ーーーーーー

直近では政府は2022年9-10月に合計9兆1880億円の円買いドル売り介入を行った。

政府・日銀は急速な円安を抑えようと9月22日に24年ぶりに円買い・ドル売り介入に踏み切った。円安が続いたため10月も追加で介入した。9月22日と合わせた9~10月の介入額は9兆1880億円だった。11~12月は介入がなかった。

10月21日は円相場が一時1ドル=151円90銭台と32年ぶりの安値を更新した。その後、政府・日銀の円買い介入を受けて一時1ドル=144円台まで円高が進んだ。

この時点でも日米金利差はあったが、差は今ほどはひろがっていなかった。2022年9月のフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は3.00~3.25%であった。

一時的ではあったが、9兆円の介入で円高はかなり進んだ。

今回は2回で8兆円の介入だが、これで円安が是正されると見る人はいないであろう。日経は1回目の介入のあと、余力はあと8回、約40兆円(しかない)とした。

小野薬品工業は4月30日、米国のバイオ医薬品企業 Deciphera Pharmaceuticals, Inc.との間で、本買収のために設立する完全子会社を通じて、一株当たり25.60米ドル、総額約24億米ドルの現金を対価として同社を買収することで合意し、4月29日(日本時間)に契約を締結したと発表した。Deciphera社を同社の100%子会社とすることを目指す。
名称 Deciphera Pharmaceuticals, Inc.
所在地 200 Smith Street Waltham, MA 02541, USA
事業内容 医薬品の研究開発、商業化
資本金 805千米ドル(2023年12月31日時点)
設立年月日 2017年(Deciphera Pharmaceuticals, LLCは2003年設立)

同社の2024年2月のPresentationで、同社のミッションを One Mission, Inspired by Patients: Defeat Cancer としている。

Deciphera社の最近の業績は下記の通り。(千米ドル)

2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期
連結売上高 96,148 134,036 163,356
連結営業損益 -300,077 -182,722 -210,958
親会社株主帰属当期純損益 -299,964 -178,931 -194,942

2023年12月期の営業損益は-210,958千ドルだが、R&D費用が234,123千ドルを占め、売上高を大幅に上まわる。それに対し、Costs of sales は僅か3,732千ドルである。
開発段階で売上高が一部計上されただけであり、正常時の損益ではない。

合意した取得価格は2024年4月26日の終値(@14.65米ドル)に対して74.7%、同日から過去30日間の売買高加重平均価格に対しては68.8%のプレミアムを加えた価格となる。

両社の取締役会は、全会一致で本買収へ賛同している。


小野薬品はグローバルスペシャリティファーマとして、独創的かつ革新的な新薬を世界に届けることを目指している。中長期成長戦略である「パイプライン強化とグローバル開発の加速」および「欧米自販の実現」を見据え、医療ニーズの高いがんや免疫疾患、中枢神経疾患、スペシャリティ領域を重点研究領域に定め、医療現場に革新をもたらす新薬の創出に取り組んでいる。

同社の業績拡大をけん引してきたがん免疫薬「オプジーボ」は2028年以降に段階的に特許切れを迎える。

オプジーボは、免疫細胞上のタンパク質(PD-1)を発見した京都大学の本庶佑名誉教授の研究を基に「ゴールの見えないまま始めた研究から成果が出るまで20年以上かかった」(小野薬品)。

2016/11/17 オプジーボ 50%値下げ


Deciphera社は、がんを対象とした革新的な医薬品の研究・開発・販売に注力しており、自社で創製した経口キナーゼ阻害剤からなる豊富なパイプライン(下記)を有している。

癌は無秩序な増殖を繰り返し、正常な細胞を障害し転移を行うことで本来、癌のかたまりがない組織でも増殖する。細胞増殖のシグナル(信号)を伝達する上で重要となるチロシンキナーゼという酵素がある。皮膚の表面の細胞では上皮成長因子受容体というチロシンキナーゼ活性を持つ受容体に上皮成長因子が結合し活性化され伝達により細胞増殖がおこる。

この増殖因子受容体に異常がおこることで、癌細胞の増殖がおこるとされる。

キナーゼ阻害薬はチロシンキナーゼ活性を選択的に阻害し、腫瘍細胞の増殖を抑えることで抗腫瘍作用をあらわす。癌細胞の増殖などに関わる特定の分子の情報伝達を阻害することで抗腫瘍効果をあらわす分子標的薬となる。

作用機序 適応症 開発段階
QINLOCK (Ripretinib) KIT阻害剤
(キナーゼ阻害剤)
4L GIST / 一部の2L GIST
消化管間質腫瘍(GIST)の4次治療の薬剤
上市済 / 効能追加P3
欧州及び中国を含む40ヶ国
以上で販売
Vimseltinib CSF-1R阻害剤 TGCT / cGVHD
腱滑膜巨細胞種(TGCT)を対象
欧米で2024年に申請準備中 /
P1/2準備中
DCC-3116 ULK阻害剤 KRAS変異がん、GIST P1b
DCC-3084 Pan-RAF阻害剤 がん P1準備中
DCC-3009 Pan-KIT阻害剤 GIST IND準備中


本買収により小野薬品は固形がん領域のパイプラインを拡充し、特にQINLOCK®とVimseltinibの獲得によって短中期的なグループの収益増加が期待できる。

QINLOCK®は、米国、欧州及び中国を含む各国で「イマチニブを含む3種類以上のキナーゼ阻害剤による治療を受けた消化管間質腫瘍 (GIST) 患者」への治療薬として承認されている経口投与可能なKIT阻害剤。

National Comprehensive Cancer Networkの腫瘍学臨床ガイドラインにて、GIST患者の4次治療としてカテゴリー1の推奨も受けている。

2023年のグローバル売上は163百万米ドルに達しており、GIST患者に広く使用されている。現在、KIT Exon 11 + 17/18に変異を有するGIST患者の2次治療への適応拡大を目指し、第Ⅲ相臨床試験が進行中。また、2019年にGIST患者の4次治療、2023年には上記一部変異を有するGIST患者の2次治療を対象として、米国食品医薬品局(FDA)よりブレイクスルーセラピー指定を受けている。

なお、2019年にDeciphera社は、主に中国本土と香港において、がん、自己免疫疾患、感染症、神経科学の治療薬の開発および商業化を行っているZai Lab Ltdとライセンス契約を締結しており、中国と台湾についてはZai Lab社が開発販売を実施している。

Vimseltinibについて:

腱滑膜巨細胞腫(TGCT)は、関節の内側又は近傍に生じる局所進行性の腫瘍で、主に第一選択として、手術による腫瘍の切除が行われているが、切除不能患者に対する治療選択肢が限定的であり、優れた有効性と安全性を有する新薬が求められている。TGCTの病態として、コロニー刺激因子1(CSF-1)遺伝子の転座とCSF-1の過剰発現が見出されている。

VimseltinibはFDAよりファストトラック指定を受けた経口投与可能なCSF-1受容体阻害剤であり、TGCTを対象とした第Ⅲ相臨床試験(MOTION study)にて主要評価項目及びその他副次的評価項目を統計学的有意に達成している。なお、慢性移植片対宿主病(cGVHD)を対象とした第Ⅱ相臨床試験を現在準備中。

Deciphera社は、米国および主要な欧州諸国において自社での販売網を構築しており、この販売網は申請準備中のVimseltinibにおいても活用される。小野薬品はDeciphera社の欧米での開発・販売能力を獲得し、欧米自販体制を強化できる。 さらに、Deciphera社の創薬能力を活用することで、小野薬品グループのオンコロジー領域において研究開発のさらなる加速が期待できる。

住友化学は4月30日、経営戦略説明会を開催し、2024年3月期の連結最終損益(国際会計基準)が3120億円の赤字になったと発表した。従来は2450億円の最終赤字を見込んでいたが、赤字幅が670億円広がった。連結子会社である住友ファーマの医薬品の特許権などで減損損失を計上するためで、過去最大の赤字幅となる。

単位:億円 売上高

営業損益

株主帰属
損益
コア 非コア 合計
2023/3実績 28,953 928 - 1,237 - 310 70
2024/3予算 29,000 400 -200 200 100
同 2024/2/2予想 24,800 -1,450 -1,400 -2,850 -2,450
同 今回予想 24,470 -1,490 -3,400 -4,890 -3,120


コア営業損益

医薬品における北米でのラツーダ(非定型抗精神病薬)の特許切れによる売上高の激減に加え、後継候補であるオルゴビクス(進行性前立腺がん治療剤)、マイフェンブリー(子宮筋腫治療剤)、ジェムテサ(過活動膀胱治療剤)等の売上が計画を下回る見込みであることに加え、
エッセンシャルケミカルズにおいては世界的な景気減退による需要減少や交易条件の悪化等により持分法適用会社であるPetroRabigh の業績悪化が見込まれること等から、コア営業損益は-1490億円と予想した。

2023/11/8 米国医薬業界、特許切れの恐怖:住友ファーマのケース

(億円)
23/3実績 24/3予算 2024/2予想 今回予想
エッセンシャルケミカルズ
(うちPetroRabigh)
-342

-70

-870
(-630)
-910
(-650)
エネルギー・機能材料 152 130 50 80
情報電子化学 476 380 380 440
健康・農業関連 573 620 400 310
医薬品 162 -610 -1,310 -1,330
その他 104 150 -100 -80
全社 -197 -200
コア営業損益 928 400 -1,450 -1,490


非コア損失(赤字

合計 うち減損 その他
住友ファーマ関連 2219億円 1809億円

(基幹3製品 特許権 1,335億円)
(      のレン  359億円)
(開発品目開発中止  106億円)

北米子会社再編 301億円

固定資産除却等 109億円

その他 1181億円 885億円(国内石化、シンガポールMMAほか) 固定資産除却等 296億円
総計 3400億円 2694億円 706億円

医薬品における特許権及びのれん等

基幹3製品(進行性前立腺がん治療剤「オルゴビクス」、子宮筋腫・子宮内膜症治療剤「マイフェンブリー」、過活動膀胱治療剤「ジェムテサ」)の売上収益の伸びが想定を下回っており、北米事業の事業予想を見直した結果、「マイフェンブリー」にかかる特許権の一部133,457百万円及びのれんの一部35,858百万円を減損することとなった。
また、rodatristat ethyl及びEPI-589(いずれもフェーズ2試験段階)等の開発品目の開発を中止したことにより、当該開発品に係る仕掛研究開発10,577百万円を減損するなど、総額180,857百万円の減損損失を計上した。

医薬品以外の主なもの

千葉工場エッセンシャルケミカルズ製造設備及び工場共用資産  減損損失25,381百万円
シンガポールにおけるメタアクリル製造設備  減損損失14,891百万円
愛媛工場における正極材焼成実証設備  減損損失11,566百万円

全体の非コア損失のうち、評価損が合計2694億円に達する。
 

4月30日の経営戦略説明会では2024年3月期の実績を上記のように説明したうえで、短期集中業績改善策と、抜本的構造改革を説明している。

最大の経営課題は、「2024年度業績V字回復の達成」(コア営業利益 1,000億円、純損益 200億円としたうえで、

短期集中業績改善策による2024年度キャッシュ創出目標を、従来の5,000億円から6,000億円に上積みするとした。

抜本的構造改革として下記を挙げた。

1) 再興戦略
  住友ファーマは、グループの総力を挙げて徹底した合理化を進め、一日でも早く完全に止血する。
  その間、基幹3製品の拡販とともに、再成長に向けたあらゆる選択肢を検討していく。

  PetroRabighは、当社とAramco両社で「共同タスクフォースチーム」を結成することで合意。
  収益力強化を含む緊急度の高い重要課題解決に向け、短期集中で取組む。 

2) 成長戦略
  「Innovative Solution Provider」を長期に目指す企業像とし、新しい成長戦略を策定。
  
  農業関連、ICT関連が成長ドライバー。経営資源を集中投入し、2030年に各々1,000億円のコア営業利益を目標とする。

  次世代成長領域として先端医療を拡充。

  石化関連は長期的視点で環境負荷低減技術による価値創造に舵を切る。

ーーー

日本経済新聞はこれを取り上げ、石化再建「肩すかし」で株安 という副題で下記のとおり報じた。

大規模な止血策と2025年3月期の黒字化を発表したにもかかわらず、市場は厳しい反応を示した。30日の終値は前日比17円安(4.8%安)の337円と、470円上げた日経平均株価とは対照的な動きとなった。「ラービグを巡る構造改革案が具体策に欠け、構造改革に期待を寄せていた投資家が肩すかしをくらったとの受け止めからか」(立花証券の福永幸彦アナリスト)との声が聞かれた。

ラービグとはサウジアラビアの国有石油会社サウジアラムコとの合弁で、住友化学にとって持ち分法適用会社の「ペトロ・ラービグ」のこと。石油精製での競争力が低く、24年3月期は650億円の赤字に落ち込んだ。今回の経営戦略発表会で収益改善に向けた具体的な施策が示される期待もあったが、新たにアラムコとタスクフォースを設置し「1年以内に将来像の方向性を示したい」(岩田社長)との内容にとどまった。

収益改善には石油精製の部分を高度化する装置への投資などが必要だが、住友化学はそこへの追加投資はしない姿勢を貫いており、アラムコとの交渉が難航している。ラービグはアジア向けの汎用品が多く、「日本の内需は悲観していないが、アジア市況は24年も23年に比べてそんなに改善は期待できない」(岩田社長)。ラービグを含む石化関連事業全体の25年3月期のコア営業損益は350億円の赤字を見込む。福永氏は「タスクフォース結成はプラス材料だが先送り感が残る」とみる。

経営戦略説明会でも、「当社としては、同社に対するエクスポージャーを増加させる資金支出は実施しない意向」としている。

JR九州、住友商事、住友商事九州が出資し設立したでんきの駅(福岡市)は3日21日、系統用蓄電池事業の第1号案件として熊本市で建設を進めてきた系統用蓄電所「でんきの駅川尻」を完工した。

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太陽光発電を中心に再エネ導入量の多い九州地区では、電力系統の需給バランスを調整する系統用蓄電池の役割が重要になる。


2023年度に大規模な出力制御が九州電力管内を中心に日本全国で17億kwh発生し、太陽光発電が停止された。

出力制御は電気の供給が電気の需要を大きく超えたときに、電力会社が様々な発電設備の出力を停止することで需要と供給をコントロールする制度。

全体としては不足する電力を無駄にしないための手段として、①蓄電池、②追加送電網による広域送電が重要である。

でんきの駅は、JR九州が管理する鉄道沿線地・遊休地を有効活用し、JR九州の保守管理ノウハウと住友商事グループの蓄電事業ノウハウを活用し、系統用蓄電池事業を行う。

JR九州、住友商事100%子会社で蓄電池設備のアセット保有・管理を手掛けるBSホールディングス、住友商事九州が出資し、2023年4月に設立した。

JR九州、住友商事、住友商事九州は、2024年2月に熊本市とカーボンニュートラルの実現に向けた連携協定を締結した。

今後、熊本市内で事業展開しながら、九州エリア全体へ事業拡大を進めていく。さらに、でんきの駅をプラットフォームとして、災害時に蓄電池の電力を開放するなど、地域に安全・安心を提供する地域エネルギーサービスを検討する。

でんきの駅(福岡市)は3日21日、系統用蓄電池事業の第1号案件として熊本市で建設を進めてきた系統用蓄電所「でんきの駅川尻」を完工した。鉄道沿線特有の土地形状に合わせた専用設計の「バッテリー・ステーション」システムを構築した。

蓄電池は、住友商事(49%) と日産自動車(51%) の合弁会社である4R Energy(横浜市)が提供するリユース(再使用=中古)品のEV(電気自動車)用バッテリーを定置用にシステム化した「EVバッテリー・ステーション」を採用した。蓄電事業としての運用は、でんきの駅が担当する。

定格出力は1.5MW、実効容量は6.0MWh。リユースEVバッテリーを約350台分収納し、電池交換が可能。また、スケールアップ(高出力・大容量化)のための制御技術を導入した。今後、設備の本格稼働に向け各種試験を行った後、需給調整市場および容量市場に参入する。事業開始は9月の予定。

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参考 4R Energy の狙い

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