2009年9月アーカイブ

2007年2月15日に中国のPTAと原料パラキシレンの状況を報告した。

2006年末の中国のPXの能力は3,830千トン、それに対し需要は4,360千トンだが、PTAの伸びで2007年には需要は6,150千トンに増大する。

PTA/PET業界の急成長に伴う原料PX不足に対応するため、中国政府は6つの大規模PXプラントの新設と、4つの増設計画を承認している。ウルムチ石油化学は増設で一気に100万トン体制となる。

PX新増設計画(単位:千トン)
  社名 立地 能力
新設 福建聯合石油化工(ExxonMobil/Aramco/Sinopec) 福建省泉州    700
金陵石油化学  江蘇省南京   600
茂名石油化学 広東省茂名   600
大連福佳大化石油化工 遼寧省大連   450
中国海洋石油(CNOOC)/Kings Group (60/40JV) 広東省恵州   800
騰龍アロマティックス(Dragon Aromatics) 福建省厦門   800
合計    3,950
増設 ウルムチ石油化学     930
天津石油化学、揚子石油化学、上海石油化学     900
合計    1,830
総合計    5,780

シノペック上海石油化学は915日、上海市金山地区でパラキシレン起業の試運転を開始した。

30億人民元を投じたもので、能力はパラキシレンが60万トンにベンゼンが28万トン。20082月に建設を開始したもので、技術はUOPからライセンスを受けた。原料ナフサは自給、製品は主に市場に販売する。
同社は既に
25万トンのパラキシレン、40万トンのPTA28万トンのベンゼンをもっており、パラキシレン能力は85万トンとなる。

本年2月に中国政府は経済危機に対応して石油化学部門の景気振興策を発表したが、本計画はそれに含まれている。

このほか、上記の計画のうち、福建聯合石油化工(70万トン)、金陵石油化学(60万トン)、大連福佳・大化石油化工( 45万トン→70万トン)、CNOOC/Kings Group(80万トン)が既に完成している。

福建聯合石油化工(Fujian Refining & Petrochemical
 
 出資:ExxonMobi 25%
   
  Saudi Aramco 25% 
      
Fujian Petrochemical  50%(Sinopec 50/Fujian Government 50)

金陵石油化学:Sinopec Jinling Petrochemical

大連福佳・大化石油化工:大連福佳企業集団(Fujia)と大化集団(Dahua)JV (PTAも)

CNOOC/Kings Group
  中国海洋石油(CNOOC)60%/Kings Group 40%
  PX 80万トン、ベンゼン 105千トン(2009年6月スタート) 

騰龍アロマティックスは公害問題で福建省厦門から古雷半島に移転することとなり、2年遅れで本年に建設を開始した。
   
2007/6/11 中国のインターネット反対運動が石化計画を止める

ウルムチ石油化学は既存能力6万トンを100万トンにする工事を行っている。

なお、茂名石油化学は環境面の承認待ちとなっている。

この結果、2007年1月に総能力は383万トンであったが、本年9月末現在では723万トンに拡大し、ウルムチが完成すれば800万トンを超えることとなる。

2008年のパラキシレンの輸入は3,404千トン、輸出は448千トンでネットで2,956千トンの輸入となっている。
生産量は370万トン程度とみられており、消費量は合計670万トン程度となっている。

このため、現時点で既に供給能力が需要を超えている。今後は輸入は大幅に減少すると思われる。

ウルムチ石油化学は既存能力6万トンを100万トンにする工事を行っており、年末にスタートする予定だが、経営陣は操業開始を出来るだけ遅らせることを主張し、地元の景気刺激と雇用のため早期操業開始を主張する地元政府と争っている。

当初、ウルムチ石油化学はNDRCPTAプラント建設の申請を行った。しかし建設費が40億人民元以上かかることが判明した。
工場から最も近い
PTAプラントは河南省洛陽で、1900kmも離れている。
PetroChinaではPXを生産しても、どうしたらよいのか分からない状況だという。

中国のパラキシレンの能力は以下の通り。(単位:千トン)

Producer Location 2007/1
能力
2009/9
能力
Sinopec 上海石油化学 上海  250  850
Sinopec 揚子石油化学 江蘇省南京  800  800
CNOOC/Kings Group (60/40JV) 広東省惠州    800
青島麗東石油化学 山東省青島  700  700
PetroChina 遼陽石化化繊 遼寧省遼陽  700  700
大連福佳・大化石油化工 遼寧省大連    700
福建聯合石油化工 福建省泉州市    700
Sinopec鎮海煉油化工 浙江省寧波  650  650
Sinopec金陵石油化学 江蘇省南京    600
Sinopec 天津石油化学 天津  390  390
Sinopec 洛陽石油化学 河南省洛陽  215  215
Sinopec 斉魯石油化工 山東省Zibo  65  65
PetroChinaウルムチ石油化学  新疆ウイグル自治区ウルムチ  60  60
Total  3,830  7,230

 青島麗東石油化学は韓国のGS Aromatics 60%、オマーン石油 30%Red Star Chemical Group 10%のJV。
   
2006/11/3 韓国GSグループの山東省パラキシレン工場、近く商業生産開始


* 総合目次、項目別目次
 http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


LGグループは9月23日、京畿道坡州(Paju)市の月籠産業団地で「LG坡州先端素材団地」の起工式を開いた。
2018年までに4兆ウォン(約2950億円)を投資し、面積84万平方メートル規模の素材専門産業団地を建設する。

坡州市は軍事境界線を隔てて北朝鮮と接する最前線で、市域に非武装地帯がある唯一の市で、板門店は同市にある。

坡州市月篭地域にはLG Display (旧称 LG Philips LCD)の産業団地がある。
173万平方メートルの敷地で、8000人を雇用し、地域経済活性化に寄与している。

LG Displayは本年3月、Pajuの第8世代(2200×2500mm)LCD工場が量産を開始したと発表した。
6月には、同地に500億ウォンを投じ、
2009年後半に太陽電池研究開発用のパイロットラインを建設する他,屋外にテスト用の発電施設を建設すると発表した。

LCDプラントから6km離れた新しい先端素材産業団地では、LG化学とLG Innotekが2018年までに総額4兆ウォンを投資する。

LG化学は2018年までに3兆ウォン(約2210億円)を投資し、液晶パネル用ガラス基板の生産ライン7本を建設し、年5000万平方メートルのガラス基板生産を見込む。LG化学はガラス基板事業を偏光板、二次電池に続く成長源として育成していく方針を立てている。
同社の当初の計画では4300億ウォンを投資するというものであったが、大幅に拡大した。

LG化学の金磐石副会長は、今回の投資について、「未来の成長産業分野で市場支配力を高めることが狙いだ」と話した。
液晶パネル用ガラス基板は、液晶パネルの生産原価の20%以上を占める重要部品。

LG Innotekも2012年までに1兆ウォン(約740億円)以上を投資し、発光ダイオード(LED)によるバックライトユニット、照明用LEDパッケージの生産ラインを建設し、来年5月から本格生産に入る。
同社は2012年に1兆5000億円の売り上げを達成し、世界のLEDパッケージ市場で10%以上のシェアを獲得したいとしている。

LG Innotek 1970年にGoldstar-Alps Electronics として設立され、1995年に LG Electro-Componentsと改称、1999年にLG Precisionと合併し、20005月に LG Innotekと改称した。

現在、次の8つのコア事業をもっている。
  
TunersMotorsPower modulesLCD modulesCamera modules
  
LEDsMCMs(Multi Chip Modules)Car Electronic Components

 


* 総合目次、項目別目次
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


アイルランド環境省は9月24日、買物袋を持たないでくる客の抑止効果(“sufficient deterrent”) を狙い、レジ袋税を倍増して0.44ユーロにすると発表した。来月に提出する環境法に含まれる。

 

アイルランドは世界で初めてレジ袋税を導入した国である。
200234、0.15ユーロのレジ袋税 Plastic Bag Levy が課せられた。

効果は絶大で、一人当たり328枚(合計12億枚)のプラスチック袋が21にまで減少した。.

しかし、2006年には一人当たり31に上昇した。

このため、市民団体の要求を受け入れ、2007年7月1日に0.15ユーロから0.22ユーロに引き上げた。

2007/3/3 ニュースのその後 - レジ袋税 

この結果、2007年には一人当たり28、2008年には27枚に減少した。
プラスチック袋によるゴミも、制度施行前の
5.00%から、2008年8月には0.32%に減っている。

参考 アイルランド環境省資料 

7年にわたる制度は120百万ユーロ以上の税収をもたらしている。この一部は環境保護サービスに使われている。

ーーー

アイルランドのレジ袋税はゴミ減少を狙ったもので、生分解性プラスチック袋も一般のプラスチック袋と同様の扱いとされている。
分解には時間がかかるため、ゴミとして捨てられた場合、一般のものと変わらない。

再利用可能なプラスチック袋は、0.70ユーロ/袋以上の値段を付けた場合には税を免除される。(無償配布は免除されない)

 


* 総合目次、項目別目次
 http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


経産省化学課は2009年2月、高吸水性樹脂(SAP)の2008年出荷実績を発表した。

他の樹脂が大幅減収となるなかで、国内向け出荷は前年比105.3%の137,577トン、輸出106.2%の299,154トンで、ともに過去最高を更新した。

国内の2008年末の能力は480千トンとなっている。
国内メーカーは、日本触媒、サンダイヤポリマー、住友精化、荒川化学、花王の5社。
(サンダイヤは三洋化成60%/三菱化学40%のJV)

このうち、日本触媒が260千トン、サンダイヤが125千トン、住友精化85千トンとなっている。

ーーー

住友精化は9月17日、堅調な需要の伸びに対応するため、姫路工場で高吸水性樹脂製造設備(設備能力24千トン/年)を新設すると発表した。新設備の稼動は2010年秋を予定している。

これにより同社グループの供給能力は190千トン/年となる。

姫路工場   86千トン(公称85千トン)→110千トン
シンガポール   60千トン(公称55千トン)
フランス    20千トン
合計   →190千トン

シンガポール:Sumitomo Seika Singapore (Sakra島)
         住友精化 80%、住化シンガポール 20%

         当初
35千トン

フランス:20083月、Arkema から高吸水性樹脂事業を買収
       Arkema社 Carling工場の製造設備を活用、Arkemaに製造委託
       当初生産能力は年産15千トン→
20千トンに増強

ーーー

日本触媒は8月31日、米国の子会社NA Industries の高吸水性樹脂生産拠点の移設を発表した。

NA Industries は当初 Alco社とのJVであったが、同社が買収されたため日本触媒100%となっている。
テネシ-州チャタヌ-ガのSAP 生産設備(60 千トン/年)は旧式プラントで、老朽化に加え、次世代向けSAP の品質並びに生産において顧客の要求に十分対応できなくなっている。

このため、NA Industries 同社の関係会社のAmerican Acrylテキサス州ヒュストンのアクリル酸工場の横に、最新鋭のSAP プラントを建設し、アクリル酸からSAP の一貫生産を行う。

生産能力は現在と同じ60 千トンとし、2012 年6 月から商業運転を開始する。

American Acryl NA Industries Atofina Chemicals 50/50JVで、アクリル酸能力は120千トン/年。

なお、NA Industriesは現工場の他の製品、コンクリト混和剤用ポリマ(15トン)、アクリル酸系ポリマ30千トン)、アクリル系エマルション(7 千トン)等は生産を続ける。

日本触媒グループの高吸水性樹脂の生産能力合計は470千トンで変わらない。

姫路  320千トン
米国   60千トン NA Industries
ベルギー   60千トン Nippon Shokubai Europe
中国   30千トン 日触化工(張家港)有限公司
合計  470千トン

従来、欧州ではBASFと提携し、年産24千トンの高吸水性樹脂を生産委託していたが、提携を解消した。
これに伴い1999年にBASFとの折半出資の販売子会社ULTRASORB Chemikalien を100%子会社化した。
その後、2001年にアントワープに自社工場を稼動させた。

ーーー

サンダイヤポリマーは三洋化成工業 60%/三菱化学 40%のJVで、20014月に営業を開始した。

それまでは、三洋化成は名古屋に年産85トンのプラントを有し、三菱化学は日本合成化学工業との合弁のダイヤポリアクリレート(三菱化学 51%/日本合成化学 49%)大垣工場に年産10千トンのプラントを有していた。

現在の能力は以下の通り。

名古屋  105千トン
大垣   20千トン
中国   20千トン  三大雅精細化学品(南通)有限公司
合計  145千トン

参考 2007/8/31 日本触媒 アクリル酸工場再編 (アクリル酸、高吸水性樹脂の状況)


* 総合目次、項目別目次
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


染毛剤最大手のホーユーは9月24日、アドバンテッジパートナーズ、MKS パートナーズ、ユニゾン・キャピタルの3ファンドの共同出資会社から、クラシエホールディングス、クラシエホームプロダクツ、クラシエ製薬、クラシエフーズの発行済普通株式のうち60%を取得する株式譲渡契約を締結したと発表した。
残りの40%についても3年以内に取得することを基本方針としている。

株式取得額は100億円程度とみられ、約150億円の有利子負債も引き継ぐ。

ホーユーは一般消費者用ヘアカラーで国内シェア約40%を占めるトップメーカーだが、一般消費者用及び業務用ヘアカラー市場は成熟期に入っており、製品ラインナップの拡充等による更なる事業成長の機会を模索していた。
新たな成長機会を獲得するためにも、技術面、生産面、営業面それぞれに高い実力を備えたクラシエグループと共に事業を展開することが、必要不可欠であると考えたとしている。

クラシエグループの事業とホーユーの技術・研究開発力とが組み合わさることにより、以下のシナジー効果の創出を期待する。
①バリューチェーンの共同利用によるシナジー
  ホーユー海外拠点・代理店の活用によるクラシエグループ製品の販売拡大
  最適な物流・調達・生産体制の構築

②マーケティング活動の協働による成長機会の拡大
  製品ラインナップの拡充
  新規事業の開発

③薬品・食品事業におけるシナジー
  製薬技術の化粧品及びヘアカラーへの応用
  健康食品等への展開

3ファンドは、2回目の株式取得までの間、引続き事業運営ノウハウの提供、効率化施策の浸透、ガバナンスの強化等でクラシエグループの成長をサポートする。

ーーー

<p>HTML clipboard</p>

カネボウは2004年に経営危機に陥り、産業再生機構の支援で再建に取り組んだが、過去の巨額の粉飾決算が表面化し、上場廃止に追い込まれた。

産業再生機構はカネボウの非中核の多くの事業を整理・売却した後、カネボウ化粧品を花王に、ホームプロダクツ、製薬、フーズ事業を3社連合に譲渡した。

「カネボウ」の商号は花王が独占使用権を取得したため、残り事業は2007年7月に「クラシエ」に改称した。

2007/3/6 カネボウ・トリニティ、社名をカネボウからクラシエに変更

2007/7/1 ニュースのその後 カネボウ解散

 

今回ホーユーが株式の60%を取得する事業は以下の通り。

 クラシエホールディングス:グループ経営戦略の策定・推進、経営管理・監督

 クラシエホームプロダクツ:
    トイレタリー商品(石鹸、洗剤、シャンプー、リンス等)関連商品、その他日用雑貨の製造、加工、輸出入

 クラシエ製薬:漢方薬を中心とした医療用医薬品と一般用医薬品の製造・販売

中国にJV 青島華鐘製薬有限公司を設立し、生薬の産地指定から製剤原料(エキス粉末)生産までを行っている。
また、保健食品、医薬品、漢方エキス粉末等の販売会社 華鐘高科医薬(北京)有限公司(同社65%)を持っている。

 クラシエフーズ:菓子、新規食品、アイスクリーム等の製造・販売

菓子部門:「甘栗むいちゃいました」や機能性ガム、おもしろお菓子「ねるねるねるね」など
海外商品部門: ミント系錠菓「フリスク」など
新規食品部門:カロリーゼロの健康機能食品「プルジュレ」など
冷菓部門:焼き菓子とアイスの複合や、生のフルーツとの加工、ヘルシーな豆乳を使用したアイスクリームなど

ーーー

ホーユーは1905年に家庭薬製造販売業「水野甘苦堂」として創業、1921年にはしらが染め「元禄」を発売、以来73年間のロングセラーとなった。

1923年に「株式会社朋友商会」を設立、1964年に「ホーユー株式会社」に改称した。

1957年に粉末しらが染め「ビゲン」、1971年に「ビゲンヘアカラー」を発売した。

現在の事業内容はヘアカラー・頭髪化粧品・家庭薬の製造、販売で、2008年(10/31決算)の売上高は409億円、経常利益は38億円となっている。

 


* 総合目次、項目別目次
 http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


カナダの石油会社Verenex Energy はリビアのGhadames Basin に利権を持つが、2009224日に、中国石油天然気集団CNPC)に対し、会社を499百万カナダドルで売却する契約を締結した。
これより有利な提案があった場合には15百万カナダドルの解約料で解約できる条件がついている。

Verenex Energy はカナダの石油会社Vermilion Energy Trust がフランスの石油開発のため2004年に設立した。
その後、フランスの利権は
Vermilion Energy Trust が買い取っている。
Vermilionは現在、Verenexの株式の45%を所有する最大株主である。

その後、この取引は難航した。

リビヤとのExploration and Production Sharing Agreementでは、石油利権の移譲についてはLibyan National Oil の承諾が必要となっており、Verenex Libyan National Oil に対し、これを要請した。承諾は不当に拒否できないこととなっている。

しかしLibyan National Oilは承諾せず、CNPCと同じ条件での買収など、代替案を検討していると述べた。
また、移譲の承諾の場合には
approval bonus の支払いが必要ともした。

Verenex ではこのbonus 46.7百万カナダドルと推定しており、これをCNPCが支払うこととなっている。

Libyan National Oil 5月に、CNPCと同じ条件での買収の権利行使を検討していると伝えた。

カナダ政府はリビヤ政府に対し、決定がなされないことに対し懸念を表明した。

Verenex CNPCに対し、同社との契約期限を824日まで延長すると伝えた。

611日にLibyan National Oil Verenex に対し、20051月にVerenex がリビヤで利権を取得した入札で不正があった疑いで捜査が行われていると伝えた。(Verenex は全面否定)

Verenex CNPCとの契約期限を延長した824日が過ぎたが、両社は解約しないことで合意した。

Libyan National Oil は売却同意をせず、リビヤ政府はVerenex に対し、もっと安い価格での購入を求めることを明らかにした。

これに対し、Verenex は仲裁手続きの準備をしつつ、友好的な解決のためリビヤ政府と交渉を続けた。

98日、CNPCVerenex に対し、買収の契約を取り止めると通知した。

918日、Verenex Energy Libyan Investment AuthorityLIA)は共同で、Verenex の全株式をLIA314.1 百万カナダドルで買収することで合意したと発表した。

LIA2006年にリビヤの石油収入の余剰分を運営するために設立された政府投資ファンド(Sovereign Wealth Fund)で、現在650億米ドル以上の資産を有している。

Verenex の取締役会は、本取引が最善のものであるとしている。

ーーー

国連と米国がリビヤに対する制裁を解除して以来、石油資源の豊富なリビヤには海外からの投資が殺到している。

1988年12月にスコットランド南部ロッカビー上空で米パンアメリカン航空機が爆破され、270人が死亡した事件の犯人とされるリビアのアブデル・バセト・アルメグラヒ元情報将校が本年8月20日に末期がんで余命3カ月であるという理由で終身刑で服役中のスコットランドの刑務所から釈放されたのも、リビヤの石油のためとされている。

リビヤ政府は事業に関してはOpen であると伝えたきた。

しかし今回、Verenex CNPCの契約に承認を与えず、当初は同条件での買収を匂わせながら、途中で過去の不正疑惑に触れたりして、最終的にCNPCよりもはるかに安い金額での買収を行った。

本件はリビヤでの今後の事業に不安を与える事件である。

 


* 総合目次、項目別目次
 http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


中国国家発展改革委員会(NDRC)は最近、自動車メーカーが国内需要の増加を受けて生産能力を増やしているが、今後過剰能力になるのは必至で、放置すれば2013年までに工場の操業度は70%以下になると警告した。

政府の支援策の効果の減少と環境問題の圧力の増大により、国内市場の成長ペースはスローダウンし、新能力は今後遊ぶことになろうとしている。

中国の自動車の生産能力は来年には16百万台を超える。

中国自動車製造業者協会によれば、国産自動車の販売は2009年の8ヶ月で年率29.18%伸び、833万台に達した。中国は世界最大の自動車市場となった。本年の販売台数は2008年の938万台から1200万台に増える見込み。
現在の操業度はほぼ
80%となっている。

本年1月に中国は需要促進のため、1600CC未満の自動車のSales taxを従来の10%から5%に引き下げた。
政府はまた、
「汽車下郷」(農村部に自動車を)制度で合計50億人民元の補助金支払いを決めた。

 

Volkswagen は先週、南京と成都の工場の能力をそれぞれ30万台から35万台に増やすため、40億ユーロの投資を行うと発表した。

先月にはGeneral Motors と中国第一汽車(FAW)は50/50JVの「一汽GM軽型商用汽車」を設立し、20億人民元を投じて年産20万台の小型商用車を生産することを決めた。

Fiat Auto SpA 7月に長沙市に広州汽車集団とのJVを設立、2011年の完成当初に乗用車14万台、エンジン22万基を生産する。

 

NDRCでは自動車メーカーは冷静に判断し、盲目的に通常の車の生産能力を増やさないよう警告した。
自動車メーカーがするべきことは、研究開発と、省エネで環境に優しい新エネルギー車の生産にもっと投資することであるとしている。

また、政府は国内自動車メーカーの統合、合併、買収を奨励するとしている。

ーーー

中国の合成樹脂の現在の好調も「家電下郷」などの政府支援策の効果が大きい。

都市部と農村部の所得格差は拡大している。輸出も依然、前年比マイナスを続けている。

政府の支援策の効果が切れた時が心配である。

2009/6/29 中国の現状

欧州ではスペイン政府の太陽光発電の補助金削減などで「太陽電池バブル」が崩壊した。

2009/9/16 欧州で「太陽電池バブル」崩壊


* 総合目次、項目別目次
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


大正製薬は9月16日、Bristol-Myers Squibb との間で、同社がアジア地域に保有するOTC医薬品の商標権等のブランド資産とインドネシア子会社の株式を買収することで合意したと発表した。

買収するのはアジア太平洋29カ国における「Tempra」(解熱鎮痛薬)、「Counterpain」(外用消炎鎮痛薬)その他製品の商標権、製品登録と、インドネシアの OTC医薬品及び医療用医薬品の製造販売会社 PT Bristol-Myers Squibb Indonesia Tbk BMSI)の株式の97.97%。

製品登録は8カ国:インドネシア、フィリピン、タイ、マレーシア、シンガポール、香港、台湾及びマカオ。

これに加え、アフガニスタン、オーストラリア、バングラデシュ、ブータン、ブルネイ、カンボジア、フィジー、インド、ラオス、モルディブ、マーシャル諸島、ミクロネシア、ネパール、ニュージーランド、パキスタン、パプア・ニューギニア、ソロモン諸島、韓国、スリランカ、東ティモール及びベトナム の合計29カ国

日本にはブリストル・マイヤーズスクイブ株式会社があるが、今回の買収には含まれない。

Tempraは、インドネシア、フィリピンの解熱鎮痛薬市場において、Counterpainは、インドネシア、タイの外用消炎鎮痛薬市場において、トップクラスのシェアを誇っている。

1970年設立のBMSIは、ジャカルタの郊外に25,440㎡の敷地を持つ工場を有しており、大正製薬の将来のアジア事業の拡大戦略の中での生産拠点としての役割を果たすことが期待される。

取得金額はブランド資産が160百万米ドル、株式が 150百万米ドルの合計310百万ドル。

買収の狙いは以下の通り。
   
アジア地域で高いブランド力を有する製品群を取得することによるアジア地域OTC医薬品事業へ本格的参入。
   
同社の医薬品の知識・技術及び販売ノウハウと、BMSIの知名度や 強力な販売網を融合させることにより、アジア地域における同社の事業をさらに発展・拡大。
   
BMSI社の生産設備を、将来のアジアにおける同社の生産拠点として活用。
   

同社は今後、アジア事業全体を統括する会社をシンガポール、クアラルンプール等を候補として新設し、成長市場であるアジア地域における事業拡大を更に進めることを目指す。

<p><p>HTML clipboard</p></p>

同社は1962年に日本で初めてとなるドリンク剤「リポビタンD」を発売し、翌1963年には海外進出を開始、以来、香港、台湾、マレーシア、フィリピン、インドネシア、タイ、ベトナム、中国、米国、英国に現地法人を設立し、「エナジードリンク」という新しい市場を形成し、ドリ ンク剤市場の国際的リーダーとしての地位を確立した。
台湾、マレーシア、フィリピン、インドネシア、ベトナム、上海では、現地に生産拠点も構えている。

医療用医薬品の分野では、主力製品であるマクロライド系抗生物質「クラリス」を米国アボット社を通じて世界約130カ国以上で販売している。

今後は成長が見込まれるアジア地域でのセルフメディケーション事業の戦略的強化、ブランドの構築に取り組む。

 


* 総合目次、項目別目次
 http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


Clariant はこの1年半で中国で1億ドルの投資を行っている。

同社は9月15日、広州の南の大亜湾にエトキシレート工場を建設すると発表した。2011年初めに稼動の予定で、年産50千トン。
同社にとってエトキシル化は主要技術で、50年以上の歴史があり、欧州、北米、ラテンアメリカに生産拠点を持つが、大亜湾はアジアで初めての工場となる。
隣接する中海シェル石油化学(
CNOOC/Shell)との間で原料のエチレンオキサイドの長期購入契約を締結した。

917日、同社は江蘇省鎮江市で界面活性剤工場をスタートさせた。
最新の
5m2の工場は年22千トン以上の能力をもち、既存工場を補完する。 

本年3月、Clariant 杭州百合化工とのJVの杭州百合科莱恩顔料Hangzhou Baihe Clariant Pigments)が浙江省杭州市で赤色高級有機顔料のキナクリドンの生産に乗り出すと発表した

JV20066月に赤色、黄色の高機能有機顔料を生産する6ラインの稼働を始めた。

同じく3月、五酸化リンの製造のため、雲南省昆明にJV Lufeng Clariant Chemicals を設立した。
JV相手は原料の黄燐の輸出業者のKunming GaoHeng Huagong Chemical Industry
と、長年 Clariantの物流を担当しているPanchem International Trading and Industrial 2社である。2010年初めに稼動の予定。

5月には広州で新しいマスターバッチ(着色及び添加剤)の生産を開始した。
Clariant Guangzhou Masterbatch Ltd, 1995年に設立された。

ーーー

Clariant 1995年夏にSandoz の化学品部門がスピンオフして設立された。

Sandoz はその後19971月にCiba-Geigy と合併し、Novartis となった。
Novartisは同年3月にはCiba-Geigy の化学部門を分離し、Ciba Specialty としている。

Clariant1997年にHoechstからHoechst Specialty Chemicals を買収。
1998年にはCiba Specialty との合併の合意をしたが、破断した。

2000年には英国のファインケミカルのメーカー、BTP Plc.2006年にはCiba Masterbatchesをそれぞれ買収した。
2008年7月に米国を基盤とした
Rite Systems 社とRicon Colors 社を買収・統合したことにより、マスターバッチビジネスにおける世界リーダーとしてのポジションを強化した。

2008年の同社の売上高は8,071百万スイスフラン(7,150億円)。売上高構成は以下の通り。

部門   内訳
Textile, Leather & Paper Chemicals  25% Textile  14%
Leather  5%
Paper  6%
Pigments & Additives  24% Coating business  7%
Plastics business  4%
Special inks, flame retardants, etc  10%
Publication inks, polymer additives, etc  3%
Masterbatches  16%    
Functional Chemicals  35% Oik services, mining services  8%
Personal care, industrial applications,
industrial & home care, etc
 17%
Detergents & intermediates  10%

中国については前身のSandozが1995年に天津第5染料化学工場との間で2つのJVを設立した。

第一はSandoz Chemicals (Tianjin) で、現在はClariant Pigments (Tianjin) となっている。
Clariant 60.0%の出資。

第二は天津華士化工(Tianjin Hua Shi Chemicals)で、Clariant25%出資している。

現在、Clariant は台湾、香港を含むGreater China 13箇所の施設(製造、研究、販売)を持ち、1300人以上のスタッフを雇用している。

 


* 総合目次、項目別目次
 http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


花王は916「エコナクッキングオイル」をはじめとするエコナ関連製品の一時販売自粛・出荷停止を行うと発表した。

欧州を中心に、油脂中に含まれるグリシドール脂肪酸エステルglycidol fatty acid esters )の安全性について議論がなされていることを受け、2009年6月中旬に分析を行った結果、「エコナクッキングオイル」に、グリシドール脂肪酸エステルが含まれていることを確認した。
油脂の製造工程における一般的な脱臭の過程で副生されるもので、パーム油等の精製植物油にも含まれている。
(エコナクッキングオイルには、グリシドール脂肪酸エステルが一般の油よりも10~182倍 多く含まれると報道されている。)

同社としては、現時点までの情報、調査からは、安全性への懸念を明確に示す報告はないが、製品中に含まれるグリシドール脂肪酸エステルを一般食用油と同等レベルに低減できるまで、当該製品の一時販売自粛・出荷停止を行うもの。

また、エコナクッキングオイルを使用した缶詰(シーチキンLほか)を販売する「はごろもフーズ」も販売自粛・出荷停止を行う。

ーーー

一般の食用油の主成分はグリセリンに3分子の脂肪酸がエステル結合したトリアシルグリセロール (TAG:triacylglycerol) で、中性脂肪の1つ。

これに対して、エコナにはグリセリンに2分子の脂肪酸がエステル結合したジアシルグリセロール (DAG:Diacylglycerol) が約80%含まれている。
TAGと比べて小腸で吸収されたのちに油として再合成されにくく、食後の血中中性脂肪が上昇しにくく、体に脂肪が付きにくいとされている。

「健康エコナクッキングオイル」は厚生省より食用油として初めて特定保健用食品の許可を受けた。

特定保健用食品:
からだの生理学的機能などに影響を与える保健機能成分を含む食品で、血圧、血中のコレステロールなどを正常に保つことを助けたり、おなかの調子を整えるのに役立つなどの特定の保健の用途に資する旨を表示するものをいう。

エコナの売上高は年間200億円で、食用油市場のシェア首位。

ーーー

ドイツのChemical and Veterinary Test Agency (CVUA) Stuttgart はパーム油ベースの精製植物性油脂にグリシドール脂肪酸エステルglycidol fatty acid esters)が含まれていることを見つけた。現在の分析では正確な量は測定できない。

グリシドール脂肪酸エステルは体内でグリシドール(Glycidol:2,3-Epoxy-1-Propanol)に変わる可能性がある。
これは遺伝毒性を持つ発がん物質である(IARC 分類 2A 群)。

Federal Institute for Risk Assessment (連邦リスクアセスメント研究所:BfR)は、発癌性の可能性と、精製油脂がマーガリンや乳児用粉乳のような製品に使用されるため、グリシドール脂肪酸エステルについて初期評価を行った。

その結果、1kgの油脂が1mgのグリシドールを含み(実際にどれだけ含まれているのか不明のため、架空のケース)、粉乳だけを与えられるという最悪ケースの場合で、乳児に影響があることが分かった。

このため、メーカーに対し、グリシドール脂肪酸エステルの量を出来る限り減らすよう要請した。

また、グリシドール脂肪酸エステルの測定方法の確立、体内でのグリシドール脂肪酸エステルからグリシドールへの転換についての研究が必要としている。

BfR Opinion No. 007/2009, 10 March 2009

ーーー

日本の食品安全委員会の専門調査会は8月24日、グリシドール脂肪酸エステルの安全性を検討することを決めた。

付記

韓国CJ第一製糖は9月22日、グリシドール脂肪酸エステルを含む食用油「ライトラ」の販売を一時中断し、自主回収を実施すると発表した。「有害性の有無の真偽とは関係なく、消費者の不安を解消するため、先手を打ったものだ。安全性が確実になるまで販売を中止する」と説明している。

付記

安井至先生の「市民のための環境学ガイド」(2009/9/27)に「エコナと発がん物質グリシドール」が出た。

   http://www.yasuienv.net/Glycidol.htm

松永和紀blog (2009/9/28)にも「エコナ問題で思うこと」が出ている。

   http://blog.goo.ne.jp/wakilab/e/58a8165f9b3f9144f36f08a3c053b7b0


 総合目次、項目別目次
   
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


Chevron 9月13日、豪州のGorgon Natural Gas Project 実施の最終決定を行ったと発表した。申請が西オーストラリア州首相により同日承認され、生産ライセンスが与えられた。

豪州北西部沖合にあるバロー島で直ちに年間生産能力1500万トンのLNG工場の建設に着手する。LNG輸出は2014年に開始の予定。

投資額は豪資源関連事業では過去最大となる約430億豪ドルで、大阪ガス、東京ガスなど日本勢が年間生産量の3割弱を受け取る見通し。

豪州北西部沖のGorgon計画は埋蔵量がLNG換算で約8億3千万トン(約40兆立方フィート)と世界最大規模で、最低40年の経済的耐用年数を持つ。

Chevronが50%、エクソンモービルとロイヤル・ダッチ・シェルがそれぞれ25%の権益を持つ。

本計画では発生するCO2の回収・貯留(CCS)技術の事業化に取り組む。
LNG設備の建設地の地下に40年間で約1億2千万トンのCO2を封じ込める計画で、豪政府も資金面などで支援する。

Chevronは本事業で2014年からの25年間、大阪ガスに年間約137.5万トン、東京ガスに110万トンのLNGを供給する。
加えて、大阪ガスはChevronから1.25%の権益を、東京ガスは1%の権益を取得した。両社は権益に応じた投資を行う。

また、中部電力もChevron との間で、年間150万トンの供給で基本合意している。

PetroChinaExxonMobil Shell との間でここからのLNGの購入契約を締結している。
ExxonMobil からは20年間にわたり年間225万トン、Shellからは同じく20年間にわたり年間200万トンを購入する。

ーーー

日揮の参加するKellogg Joint Venture - Gorgon 年産1,500万トン500万トンX3系列のLNGプラント、および豪州国内向けガス出荷設備年産約23億立方メートルに係る設計、機材調達管理、建設工事管理および試運転管理役務を受注した。

JVメンバーは日揮 30%、KBRKellogg, Brown Root) 30%、Clough 20%、カナダ Hatch 20%で、受注額は約27億豪ドル(約2,300億円)を見込んでいる。

ーーー

周辺には多くのガス田がある。

1)North West Shelf

1970年代初頭に西豪州北西部沖合い約130kmにある鉱区で発見された。LNGの他、原油・コンデンセート・LPG等を生産・販売する豪州最大の総合エネルギープロジェクト。

日本勢を含めた6社が1/6ずつ参加する。
  
Japan Australia LNG (MIMI) Pty., Ltd(通称MIMIー三井物産・三菱商事の折半出資)
  
BHP Billiton Petroleum
  
BP Developments Australia
  ChevronTexaco Australia
  Shell Development
  Woodside Energy

1984年にコンデンセート販売を開始、1989年からは日本の電力・ガス会社向けにLNG供給を開始、1989年にはWanaea油田、Cossack油田が発見され同油田からの原油及びLPG生産が1995年から開始された。

2004年9月、それまでの計3トレインに加え、第4トレインが運転を開始、その後の増強で総生産量は1,190万トン/年へと拡大した。
2008年の第五系列完成により生産能力は年間
1,590万トンとなる。

2)Pluto

豪州のWoodside20077月、Pluto LNG事業への投資を最終決定した。
東京ガス、関西電力は、同日、
Pluto からのLNG購入に関して最終合意し、またそれぞれ5%の権益を取得して同事業に参加することを明らかにした。

Pluto液化設備能力は480万トン/年であるが、Woodsideはこれを1,200万トン/年までの設備拡張が可能として、液化事業を拡張するPlutoハブ計画を進めようとしている。

液化設備建設場所: Burrup半島のBurrup LNG ParkNWS液化基地に隣接
液化設備能力:
480万トン/年 (1,200万トンまで拡張可能)
ガス田:
PlutoXena
ガス埋蔵量: 5 Tcf Pluto 4.4 Tcf Xena 0.6 Tcf
生産開始時期:
2010年末

年間生産量430万トンのうち、東ガス、関電に合計375万トンを供給する計画。

Woodsideは北西部沖のBrowseと北部沖Greater Sunriseの両事業で、年内にもLNG設備の建設地を選定する。投資額は合わせて600億豪ドルを超えると見られている。

3)Browse

TorosaBrecknockCallianceガス田。
埋蔵量は合わせて
14兆立方フィートのドライガスと370百万バレルのコンデンセート。

Woodside Energyがオペレーターとなり、BHP BillitonBP Developments AustraliaChevron AustraliaShell Development Australia JVに参加している。

4)Greater Sunrise、Bayu-Undan

豪州と東チモールの間にあり、権利関係が問題となっていたが、両政府は2005 年11 月末、両国間の境界問題の解決を50 年間先送りした上で、チモール海における石油ガス収入の分配方法に関して基本合意した。

チモール海共同石油開発海域(Joint Petroleum Development AreaJPDA)のBayu-Undan油・ガス田石油等の生産収入の配分比率(東チモール=90%、豪州=10%)、およびGreater Sunrise ガス田のユニタイゼーション比率(JPDA=20.1%、豪州=79.9%)を従来の合意どおりとした上で、Greater Sunrise ガス田から両国政府が得る収入の配分比率を50%ずつとするというもの。

Bayu-Undan

埋蔵量 石油分約4億バレル(コンデンセート・LPG)と天然ガス約3.4兆立方フィート(LNG換算約8,000万t)

  Conoco Phillips  56.72%
  Eni  12.04%
  Santos (豪)  10.64%
  国際石油開発(日)  10.53%
  Tokyo Timor Sea Resources  10.08%
  (東京電力 2 /東京ガス 1  

Greater Sunrise計画は埋蔵量1億6千万トンで、Woodside がオペレーターとなり、大阪ガスを含む次の各社がJVをつくっている。

  Woodside   33.44
  Conoco Phillips   30.00
  Shell   26.56
  Osaka Gas   10.00

5)Ichthys

国際石油開発帝石は北西部沖「イクシス」事業(埋蔵量約26千万トン)で、仏トタルと組み総額2兆円を投じる計画の詰めを急いでいる。約850キロメートルのパイプラインを敷設。北部ダーウィンに建設する設備で15年から年間800万トンを生産、日本への搬出を始める。

プロジェクト参加権益比率(WA-285-P 鉱区参加権益比率)
  インペックス西豪州ブラウズ石油:
76%(オペレーター)
  
Total E&P Australia24

可採埋蔵量:
  天然ガス
12.8 兆立方フィート(含LPG)、コンデンセート5 2,700 万バレル
  (原油換算合計約
30 億バレル)
生産開始(予定):
  
2014 年内乃至2015 年のできるだけ早い時期
生産量(予定):
  
LNG 年間800 万トン超、LPG 年間160 万トンおよびコンデンセート日量10 万バレル(ピーク時)。
    

付記

東京電力は12月5日、Wheatstone LNG プロジェクトの11.25%をChevronから取得したと発表した。
Chevronが中心となって開発中で、同国北西部沖合の海底ガス田で天然ガスを産出、同国内で精製・液化する。2016年度以降操業を開始、年間最大860万トンを生産する計画。

東電がこのプロジェクトで調達を見込む年間LNG量は、権益による確保分と購入分を合わせ、東電が火力発電で年間に消費するLNGの約2割に相当する最大410万トン。 


* 総合目次、項目別目次
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


本年に入り、中国メーカーによる海外資源会社への出資が相次いでいる。

2009/2/21 中国五鉱集団、豪州OZ Minerals を買収
2009/3/4   中国鉄鋼大手、豪鉄鉱石大手フォーテスキューに16%出資
2009/5/16   中国、レアアースでも豪州に進出
2009/7/11   中国企業、海外の鉄鉱石にも進出
2009/7/14   中国政府系ファンドCIC、カナダの資源大手に出資
2009/9/10   PetroChina、カナダのオイルサンド事業に参加

その後も、出資が続いている。

1.ケニアのチタン鉱

金川集団有限公司は831、カナダのTiomin Resources Inc. との間で、ケニアのKwale Mineral Sands チタン鉱山の再開発のため、Tiomin子会社のTiomin Kenya Limited の株の70%を取得することで合意した。

金川集団は非鉄金属会社で、ニッケル、銅、コバルト、レアメタルなどを生産、合わせて硫酸、苛性ソーダ、液塩等を生産する。
中国最大のニッケル生産者で、
4位の銅メーカー。

金川集団は計画推進のため直ちに25百万ドルをTiomin Kenyaに出資する。

ケニア政府は2004年に計画推進に10年の期間を認めていたが、更に5年の延長を求める。

チタン鉱山はケニヤの南東、モンバサから約50Kmに位置する。埋蔵鉱量は2.5億tで、Tiomin Kenya社は100%の権益を保有している。

両社は共同で年間33万トンのチタン鉄鉱、77千トンのルチル、37千トンのジルコンを生産する計画。

Tiomin Kenya は単独でこの計画を進めていたが、2007年2月に、計画の遅れとコストアップを理由に155百万ドルの融資が引き揚げられる可能性が出たため、中断した。

その後、2008年7月に、Tiomin Resouces  18.52% の出資をしている金川集団が同鉱山に25百万ドルを投資することと、70%の出資の権利を受け取るとの覚書を締結している。

Tiomin Resources はこのほかに、ペルーのPukaqaqa 銅・金鉱山の49%の権利(残りは Pukaqaqa, Compañia Minera Milpo S.A. が保有)を有している。

ーーー

2.豪州のウラン鉱

中国の原子力発電大手、中国広東核電集団は9月10日、オーストラリアのウラン探鉱企業Energy Metals Limited の発行済み株式の70%を約8500万豪ドルで取得することで合意した。
Energy Metals 経営陣は株主に、認可取得後に中国広東核電が実施する
TOBに応じるよう呼びかけた。
同社の40%を所有するJindalee Resources Limited はこれに賛同している。

買収価格は最近3ヶ月の株価平均に60%のプレミアムを乗せたものとなっている。

広東核電はこのほかに11.7百万ドル相当の新株を引受け合計の出資比率は73%となる。.

Energy Metalsは豪北中部や西部の8カ所でウラン鉱山の探鉱を進めている。北中部のBigrlyi 鉱区(持分53.7%)には酸化ウラン換算で13千トンの埋蔵量があり、開発を本格化している。

 


* 総合目次、項目別目次
 http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


BayerのSupervisory Board は9月15日、新しい体制を発表した。

現在のCEOのWerner Wenning (62) は2010年9月30日付けで退任し、後任には米国の試験機器メーカーThermo Fisher Scientific の社長兼CEOのDr. Marijn E. Dekkers (51) が就任する。同氏は2010年1月1日に役員会メンバーとなるとともに、
当面 Bayer HealthCareのCEOに就任する。

Werner Wenning は2002年4月にDr. Manfred Schneide の後任でCEOに就任した。

Dr. Marijn E. Dekkersはオランダ生まれで、オランダと米国の市民権を有している。

オランダでPh.Dを取得後、1985年にアメリカにわたり、General ElectricのR&D center に就職した。1988年にGE Plastics のpolymer materials researchのヘッドとなった。GEプラスチックで30の特許を取っている。

1955年にAlliedSignal (1998年にHoneywellと合併、現在はHoneywell International)に移り、Specialty
 Films and Fluorine Chemicals グループ、Electronic Materials グループなどのトップとなった。

2000年に試験機器メーカーThermo Electron のCOOとなり、その後CEOとなった。2006年にFisher Scientificを合併してThermo Fisher Scientific とし、従業員35千人、売上高105億ドルの大企業に育てた。

2年前にBiogen Idecの社外取締役になっている。


    


* 総合目次、項目別目次
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


太陽電池の世界首位のドイツのQ-Cells 8月13日、大幅な赤字となった上半期決算と、対応策を発表した。

2008年の年間生産量は
 1位:Q-Cells 574.2MW
 2位:米 First Solar,Inc. 503.6MW
 3位:中国 Suntech Power Holdings Co.,Ltd. 497.5MW

上半期決算は以下の通り(単位:百万ユーロ)

  2006 2007 2008   2008/
1-6
2009/
1-6
増減   備考
Sales  539.5  858.9  1251.3    579.5   366.2 -213.3  
(Export ratio)  53.3%  60.7%   70.1%    70.3%  48.9%    
Operating Income
(EBIT)
129.4 197.0 205.1   119.1 -47.6 -166.7 1Q  14.7
2Q
 -62.3
関係会社評価損益         4.1 -418.4 -422.5 うちREC -387.0
株式売却損         0 -211.2 -211.2 REC -211.2
税引前  138.0  209.8   225.2    107.1  -706.2 -813.3  
Net income   97.1  148.4   190.6     82.1  -696.9 -779.0  
                 
生産能力(MWp) 336 616 760   630 760    
実績(MWp) 253.1 389.2 574.2   263.5 272.2    

EBIT の前期比 -166.7 のうち、数量差 -77、価格差 -30、固定費差 -26 となっている。

需要拡大を目指して能力を急拡大したが、上期実績操業度は75%に止まっている。
輸出比率が前年通年が70.1%であったのに対し、本年上期は48.9%に急落した。

能力のWpはWatt Peakで、太陽電池モジュール(パネル)の最大出力を基準状態に換算したもの。
基準状態は、①日射強度
1,000W/m2、②太陽電池モジュール温度25℃(温度が上がると発電電圧が低下)③AM(Air Mass)1.5 と規定される。
AM1.0
とは光の入射角が90 度(真上)から入射した光を意味し、AM1.5 はその通過量が1.5 倍(入射角41.8 度)での到達光を表している。

同社は上半期の状況を以下の通り述べている。

3つの問題で2009年に入り状況が激変した。

スペイン政府が2009年以降、太陽光発電の補助金を年間500MWに制限した。
スペインは世界最大の市場で、2GW以上の需要があったため、1.5GWが他に需要を求め、競争が激化した。
   
金融危機による銀行融資の激減
   
厳しい冬のため、3月末まで需要が極めて少なかった。
  スペインが上記理由で需要激減となったが、ドイツや中欧ではほとんど設置されなかった。
   
この結果、製品チェーン全体で売り手市場から買い手市場に変わった。高純度シリコンのスポット価格は昨年の400$/kgから2009年には100$以下に下がった。 wafer cell の価格も同様である。
   

Q-Cellsは,Si原料メーカーであるノルウェーのREC(Renewable Energy Corporation ASに出資(17.18%)することで,Si原料を安定調達して成長につなげてきた。

Q-Cellsは第1四半期にREC株式の評価減(387.0 百万ユーロ)を行ったが、5月12日に全株を売却し、売却損(211.2百万ユーロ)を計上した。合計で6億ユーロの赤字となる。

「在庫整理にあと3年は必要」との見方もある。政府の補助金頼みの危うさが浮き彫りになった。

Q-Cellsはドイツが2000年に家庭の太陽光発電で生まれた電力を通常の電気料金の3倍で買い取る助成制度を導入したのに乗り、2007年にシャープを抜き、世界首位に躍り出た。

Q-Cellsは同時に、経営改善策を発表した。

(1)生産能力調整と製造コスト低減
  独Thalheimの旧式ライン閉鎖と約500名の人員削減
(2)技術開発の強化
  
2011年末までに単結晶セルで変換効率20%(研究開発レベル)を達成
  子会社Solibro(CIGS太陽電池)、Calyxo(CdTe太陽電池)など,薄膜系企業への注力を進める。
(3)中期的な現金準備の確保
  
2010年における投資計画を全面的に見直し,最大3億ユーロの支出削減

カネカは太陽電池の売上高の9割以上が欧州市場だが、8月3日の第1四半期決算発表で、「太陽電池は、欧州での需要が景気低迷の影響により落ち込んだことに加え、競争の激化から販売価格が低下し、減収減益となりました」としている。

ーーー

これに対し、世界第2位の米First Solar は好調である。(単位:百万ドル)

  2009/2Q 2008/2Q 増減
Sales 525.9 267.0  258.9
Operating Income 204.0 88.7 115.3
Net Income 180.6 69.7 110.9

同社は薄膜CdTe(カドミウムテルル化物)太陽電池を生産している。
太陽電池の主流である「結晶シリコン型」よりも製造コストが安いのが武器で、米政府の支援策も追い風となり、事業規模を広げている。

同社の生産は、2006 年の60MWpから、2007 年に206.3MWp2008 年には502.6MWp に達した。
また、
2004 年~2008 年の間に生産コストを$3/Wp から$1/Wp 以下に、2/3 削減することに成功した。

市場調査会社の米DisplaySearchは2009年にFirst Solarが首位になるとみている。

First Solarは2009年9月8日、公式訪米中の中国全国人民代表大会常委会委員長の呉邦国氏との間で、内モンゴル自治区のオルドスに2000MW(2GW)の太陽光発電所を建設することで合意したと発表した。

計画は4段階に分かれる。
・2010年6月1日までに最大出力30MWの実証発電施設の建設を開始
・100MW、870MWの施設をそれぞれ 2014年までに完成
・1000MWの発電施設を2019年までに完成

完成すれば総面積は25平方マイルとなる。

2000MWの太陽光発電を米国で建設すれば50~60億ドルがかかるとされるが、中国ではかなり安くできるとみている。

この計画では固定価格買い取り制度(Feed-in-tariff)により長期間にわたり電力料が保証される。

 

参考 シャープと関西電力の「堺市臨海部におけるメガソーラー発電計画」は28MWである。

  堺第7-3区太陽光発電所 堺コンビナート太陽光発電施設
事業者 関西電力 シャープおよび関西電力グループ
場 所 堺第7-3区産業廃棄物埋立処分場
(大阪府から借用)
堺区築港八幡町
シャープ堺コンビナート
発電出力 約10MW 最大 約18MW
当初 約9MW

2008/7/2 シャープと関西電力、「堺市臨海部におけるメガソーラー発電計画」を推進


* 総合目次、項目別目次
 http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


オバマ米大統領は911日、米国への輸入が急増していた中国製タイヤに対して、セーフガード(緊急輸入制限)を発動する方針を公表した。

米大統領報道官は、「事実と法例にもとづき、大統領は米国のタイヤ産業の明白な混乱を是正する旨を決断した」と発表した。
対象産品は、乗用車、軽トラック用の中国製タイヤで、現行
4%の輸入関税に1年目35%、2年目30%、3年目25%が上乗せされる。

米国の国際貿易委員会(ITC)は中国製タイヤの輸入急増により米国内の雇用が圧迫されているとする全米鉄鋼労組(USW)の訴えを受け、629日に42の賛成で、1年目55%、2年目45%、3年目35%の追加関税を柱とするセーフガードの発動を大統領に勧告していた。

オバマ大統領としては苦渋の決断である。
健康保険制度の全面改正を前に労働組合の支持を失うことが出来なかった。
一方、9月24日からピッツバーグで開く20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)での中国首脳との会談直前であり、ドルの価値の維持で中国に依存せざるを得ない米国にとり、タイミングは最悪である。

前任の Bush大統領は任期中にITCからsteel pipe など4件の同様の勧告を受けたが、全て拒否した。

オバマ大統領は、「既存の協定を利用したものであり、保護主義を促すものではない。自由貿易体制を維持していく協定を強化するためのものだ」としている。

中国商務部は12日、本件に関して保護主義に強く反対すると述べた。WTOのルールに違反しており、G20サミットでの約束にも反するとし、中国企業の利益の保護のため対抗する権利を留保するとした。

中国商務部は14日、WTOに提訴すると発表した。米国の措置はWTOルールに違反しているとし、WTO紛争手続きに基づく二国間協議を求めた。これが決裂した場合は、WTOが紛争処理小委員会(パネル)を設置する。

また、中国商務部は13日、米国製の輸入自動車、鶏肉製品について、WTOの規則などに基づき、反ダンピング・反補助金調査の手続きに入ると発表した。自動車や鶏肉製品の国内業界から「ダンピングなど不公平な貿易方法で、国内産業が打撃を受けている」として、同省に調査申し立てが出ていたとしている。

中国商務部は6月1日、米国の電磁鋼板に対して相殺関税制度(輸出国の補助金を受けた輸入貨物に対し、国内産業保護のために補助金額の範囲内で割増関税を課す制度)による調査を開始した。

これは米国による中国製油井パイプ製品に対する反ダンピング、反補助金及び相殺措置に関する合同調査に対する報復である。

2009/6/3 米中 貿易戦争勃発? 

ーーー

セーフガードは、ある輸入品が急増し、自国の競合産業に重大な被害を及ぼすか、あるいはその恐れのある場合、国内市場の攪乱を防止するために、当該輸入品に対して輸入制限、あるいは禁止を行うことのできる緊急措置のことを言う。

WTOは、GATT第19条及びWTO協定の「セーフガードに関する協定」により、一定条件下において、例外的に輸入制限を認めている。

第19条 特定の産品の輸入に対する緊急措置
産品が、自国の領域内における同種の産品又は直接的競争産品の国内生産者に重大な損害を与え又は与えるおそれがあるような増加」した場合に適用できる。

「ダンピング」の場合と異なり、自国での価格より安く売っているということなどの立証は不要である。

ITCによると、中国製タイヤは17億ドルの米市場を撹乱している。
中国製タイヤの輸入は2004年から2008年で3倍になり、米市場でのシェアは4.7%から16.7%にアップした。2006年と2007年に4工場が閉鎖し、本年も数社が閉鎖の予定となっている。

しかし、中国ゴム工業協会では「特別セーフガード発動でまず被害を受けるのは、米国の消費者の利益だ。中国が輸出しているのはローエンドのタイヤ製品であり、米国が生産しているハイエンドの製品とは市場のカテゴリーが異なる。そのため米国の労働者に損害がおよぶこともない」と述べた。

中国製タイヤを扱うDel-Nat Tireの社長は、「米国メーカーは高利益の高品質品を狙い、中古車など向けの3級品を作らない。追加関税がかかると、打撃を受けるのは150ドルの米国品を買えずに50ドルの中国品を買っている米国の消費者である」としている。低所得消費者はタイヤを耐用年数を超えて使用している状況であるという。

全米タイヤ産業協会も7月にオバマ大統領にあてて公開の手紙を送り、「米国のタイヤ消費者の選択肢を狭め、高価な製品を押し付けることになる」と主張した。

アトランタ州に工場を持つ東洋ゴム工業も反対を表明、追加関税が導入されれば、米国で製造している上位品を補うために中国で生産している低コスト品の輸入が阻害されると主張している。

ーーー

2002年3月、アメリカは鉄鋼製品14品目に対して、適用期間3年間のセーフガードを発動した。

米国の輸入制限(セーフガード)措置の概要

これに対し、日本、EU、韓国、中国などがWTOに提訴し、大規模通商紛争に発展した。

2003年5月、WTO紛争処理小委員会(パネル)は、①セーフガード措置の発動要件である輸入増加の事実認定が不十分であること、②輸入増加と国内産業が被る損害の因果関係が十分に立証されていないこと等、日本やEUなどの主張をほぼ全面的に認めた最終報告を提示し、これにより、アメリカの鉄鋼輸入制限は「違法」であることが1審のパネル段階で確定した。

2003年12月4日、米国政府は、前年3月に発動した米国鉄鋼セーフガード措置を全面的に撤廃する旨の発表を行った。

大統領声明によれば、措置撤廃はあくまでも「セーフガード措置が所与の目的を達し、経済状況の変化の結果として」決定されたものであり、公式にはWTOによる協定違反の判断の結果とはなっていない。


* 総合目次、項目別目次
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


ダウは910日、Freeport, Texas 工場のSMとエチルベンゼンプラントを年末までに停止すると発表した。
同地の小規模プラントは昨年末に停止している。ダウは能力を発表していないが、業界では合計で
46万トンとみている。

ダウは6月30日の取締役会で下記の設備を停止する石化事業のリストラ計画を承認した。

  立地 能力
エチレン Hahnville, Louisiana  409千トン
EO/EG Hahnville, Louisiana  385/330千トン
EDC/VCM Plaquemine, Louisiana  970/590千トン

2009/7/3 ダウ、石化事業のリストラを継続、藻からのバイオ燃料計画に投資

これにはU.S. Gulf Coast におけるエチレンの自給自足体制(縮小均衡)の確立という狙いがある。
エチレン需要を約
30%減らし、他社から購入しているエチレン(年間約135万トン)をカットし、コストポジションを改善する。

今回のSM停止はこの一環となる。
ダウの
SM供給を米国の需要に合わせるという狙いに加え、エチレン需要減を図る。

Freeport, Texas 工場ではSMStyrofoamlatexABS の原料となっているが、長期契約によるSMの外部購入により原料を確保する。

DowとChevron Phillips Chemical は北南米のSM/PSの50/50JV Americas Styrenics を設立している。
2009年5月1日営業開始)

ダウは北南米のPSとブラジルのSM(2008/1/1に休止)を出したが、米国の3つのSMプラントはJVに出していない。
 ・Midland Michigan):本拠地、事業上の理由で同社で保有
 ・
Pevley (Missouri):同社事業とするStyrofoam の原料
 ・
Freeport (Texas)StyrofoamlatexABS の原料

2007/4/11 Dow、Chevron PhillipsSM/PSのJV設立

JVの米国のSMソースはChevron Phillips 拠出のSt. James, Louisiana 工場だけで、能力が限られており、長期購入契約の相手先は恐らく Lyondell だろうといわれている。

ダウはBasic chemicals"Asset light" 戦略(JV化と縮小均衡)とSpecialty chemicals の推進を急いでいる。

ーーー

ダウは910日、同社の中空球プラスチック顔料事業をOMNOVA Solutions Inc.に譲渡する契約を締結した。

Rohm and Haas買収の条件としてFTCから売却を求められていた。FTCの承認が必要となる。


* 総合目次、項目別目次
 http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


DuPont はこのたび、同社の有機ELに関する企業秘密を盗んで母校の北京大学に持ち帰ろうとした中国生まれの研究員Hong Meng を解雇するとともに、企業秘密が使われたり、他に開示されないよう、Delaware 裁判所に訴えた。刑事訴追をするかどうかは不明。

Hong Meng は中国国籍で、米国の永住権を持っている。北京大学で有機化学で修士号を受け、カリフォルニア大学で博士号を受けた。2002年に同社に入社した。その後、Senior research chemist に昇格、2007年には有機ELに関する本を共同で編集している。

訴えによると、Meng は本年初めにDuPont の承認を得ず、雇用契約に違反して密かに北京大学に職を得た。

同時期にデラウエアからDuPontの中国の拠点への異動が予定された。

この手続きの一環でMengのパソコンがチェックされ、北京大学との違法な関係が明らかにされた。更に、有機ELに関する秘密情報をダウンロードしていることが分かった。

調査の結果、DuPontと完全に競合して有機ELを産業用途に利用する北京大学の計画に参加していることが分かった。

DuPontの調査は継続しているが、Mengが雇用条件を守り、DuPont のデータを他に開示しないという命令を出すよう裁判所に求めている。

ーーー

本件は2年前に同社の企業秘密を盗んだとして刑事訴追されたGary Minの事件に似ている。

同社の最も有名な製品(複数)についての推定4億ドルの価値のある情報をデータベースから盗み、懲役18ヶ月の判決を受けた。民事訴訟から始まり、刑事訴追された。

Min は中国生まれで、後に米国の市民権を取得、1995年にDuPontに就職した。
2004年にDuPont の台湾の施設の管理職に昇格したが、家族の反対でこれを断り、降格された。

このため、Min は他社への就職活動を始め、同時にDuPont のデータベースから大量のデータのダウンロードを始めた。16,700のデータをダウンロードした。

2006年初めにVictrexICIから分離したエンプラPEEKの製造販売会社)に移ることを明らかにした。

しかし、DuPontの依頼でスイスでVictrexが詰問、パソコンを没収して、彼を米国に送り帰した。

裁判で検事はMinが何故秘密を盗んだのか、それをどうする積もりだったのかは不明だが、データが第三者に渡った形跡はほとんどないとしている。

Min は単なる判断ミスで、データをどうにかするとの計画はなかったと主張した。

判決は18ヶ月の懲役、30,000ドルの罰金、会社への14,500ドルの支払いを命じた。

業界筋は盗んだ情報は恐らく中国に渡す積もりだったのだろうとみている。


* 総合目次、項目別目次
 http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


LANXESS インドと中国の企業買収手続きが91日に完了したと発表した。

インドではベンジル製品のインド最大メーカーで塩化硫黄のメーカーのGwalior Chemical Industries 82.4百万ユーロで買収した。
Madhya Pradesh Nagdaに工場を持つ。

中国では江蘇省のLiyang市でトリメチロールプロパンを生産するJiangsu Polyolsを買収した。 

LANXESSでは、これらの買収は同社のBRICsでの長期成長戦略の更なる一歩となるとしている。

ーーー

Bayerは2004年7月にBayer Chemicalsの大半とBayer Polymersの一部を新会社 Lanxess として分離し、2005年に上場した。

2006/9/6 Bayer と Lanxess

その後、ABS事業をIneos主導のJVに拠出、スパンデックスを旭化成に、繊維加工薬品をEgariaに、紙用化学品をKemira oyj にそれぞれ売却し、Specialty chemicals会社となった。

2007/7/4 Ineos、Lanxess のABS事業を買収へ

2007/9/27 LANXESS の経営方針

同社はBRICs での成長を戦略としており、ブラジルでは2008年10月に合成ゴムメーカーのPetroflex を完全買収した。

アジアではLANXESS goes Asiaを合言葉に、特に中国とインドで、Bayer から引き継いだ事業をベースに活動を強めている。

2005 2 江蘇省無錫市 皮革化学品の増設 (1998年生産開始)
  2 安徽省銅陵市 Tong Feng 及びXinda とゴム薬品(酸化防止剤)のJV設立〈2007/8稼動〉
  3 山東省イ坊市 ヒドラジン水和物工場起工(Baytown, USAから設備移設)〈2006/7稼動〉
  7 上海市 技術センター開設
2006 3 山東省青島市 Rhein Chemie)ゴム薬品工場完成 (1999添加剤生産開始)
  4 江蘇省無錫市 ポリアミド、ポリエステルのコンパウンド工場稼動(能力2万トン/年)
  4 インド ABS増設発表 2万トン→10万トン
2007 1 韓国 子会社設立(それまでは Bayer Korea に委託)
  1 インド Madurai ゴム薬品製造開始
  3 山東省青島市 Rhein Chemie)潤滑油添加剤工場着工〈2008/3生産開始〉
  3 パキスタン 皮革化学品ラボ開設
  4 上海市 顔料原料工場開設(1996年に無機顔料生産開始)
  5 江蘇省無錫市 ポリアミド、ポリエステル等のハイテク樹脂のグレード開発センター開設
  8 インド Gujarat 州 イオン交換樹脂工場建設決定(2008年建設開始、2010年生産開始)
2008 2 シンガポール ブチルゴム工場建設決定〈10万トン、2014年スタートに延期)
  6 上海市 Jinzhuo Chemicalsから酸化鉄顔料工場を買収
  7 山東省青島市 ゴム研究センター開設(青島科学技術大学と提携)
  7 上海市 中国本部開設
2009 1 インド Gujarat 州 イオン交換樹脂新工場建設で州政府と覚書締結
(ゴム薬のMaharashtra州からの移転も)
  2 山東省青島市 青島科学技術大学とR&D、製品開発、要員教育で提携
  5 山東省青島市 High Performance Rubber R&D Center 増強
  6 インド Gwalior Chemical Industries 買収
  6 江蘇省Liyang 市 Jiangsu Polyols Chemical 買収

 


* 総合目次、項目別目次
 http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


カナダのAthabasca Oil Sands Corp. 831日、PetroChina との間で、PetroChina Athabasca MacKay River 及び Dover オイルサンド計画の60%の権益を取得する契約を締結したと発表した。対価は19億カナダドル。

両地域はAlberta州北東部のAthabasca 地域にあり、それぞれビチューメン埋蔵量50億バレルと想定されている。

流動性のない高粘度のタール状原油を含む砂岩層を、オイルサンドという。
採取された原油は、粘性に応じてビチューメン、あるいは超重質油と呼ばれる。
(世界石油会議の定義では、
API 比重が 10 度以下で、粘性が10,000 Cp 以上のものを天然ビチューメンと呼んでいる)

2009年末にもMacKay Riverで最初の日量35千バレルの商業計画の申請を行う。

Athabasca Oil Sandsでは「オイルサンド事業は資本集約の長期投資で、通常のファイナンスは難しく、このためJV方式を選んだ」としている。世界最大のエネルギー会社の一つであるPetroChina をパートナーに選ぶことで、タイムリーに開発が進むと期待している。

更に、PetroChinaの中国北東部の石油施設でPetroChinaが重質油開発技術(SAGDや火攻法など)をもっていることも、同社を選んだ理由の一つとしている。

SAGDsteam assisted gravity drainage スチーム補助重力排油法

オイルサンド油層内に上下平行な水平坑井 2坑(水平区間は 500 ~1,000m 、上下の水平井の距離は 5m 程度)を掘削し、上位の井戸で水蒸気を圧入する。
圧入された水蒸気は井戸周辺に広がり熱伝導によって周囲のビチューメンが加熱され流動化する。
流動化したビチューメンは水より高比重のため重力により下方へ移動し、下位の井戸内へ排出され回収される。

他にCyclic Steam Stimulation(CSS)法がある。

  詳細は 2008/2/4 Dow Canada、オイルサンドからのエタン、エチレン購入契約

火攻法(Fire-flood

油層に熱エネルギーを与えることにより、原油の粘度を下げて採収率を増加させる方法で、油層内において原油の一部を燃焼させることにより熱エネルギーを発生させる方法。

他に、地上で発生させた熱エネルギーを水蒸気の形で油層に圧入する水蒸気圧入法(
steam injection)がある。

ーーー

中国勢は既にカナダのオイルサンド事業に参加している。

中国海洋石油は2005年4月に、カナダのオイルサンド開発企業・MEGエナジーの株式の16.69%を1億5千万カナダドルで買収した。

SINOPECは同年6月、カナダのアルバータ州ノーザンライツにおけるオイルサンド事業の権益の40%を1億5千万カナダドル(約130億円)で買収した。


* 総合目次、項目別目次
 http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


民主党鳩山代表は9月7日開かれた朝日新聞社主催「朝日地球環境フォーラム2009」で、日本の2020年までの温室効果ガス排出削減の「1990年比25%減」を実現する考えを明言した。「あらゆる政策を総動員して実現」するとした。

具体策は明らかにしていないが、25%削減には「排出権取引」などを含むとみられている。

気候変動問題への積極的な取り組みは日本経済に「新しいフロンティアと新しい雇用」を提供するとし、経済や国民生活が良くなると信じるとしている。

同時に、「世界のすべての主要国による、公平かつ実効性のある国際枠組みの構築」もめざすとした。すべての主要国の参加による意欲的な目標の合意が、我が国の国際社会への約束の「前提」となるとしている。

また、気候変動の問題は地球規模の対応が必須であることから、途上国においても、「共通だが差異のある責任」の下、温室効果ガスの削減に努める必要があるし、意欲的に温室効果ガスの削減に努める途上国に対して、「先進国は資金的、技術的な支援」を行うべきであるとしている。
このような支援の具体策についても、「鳩山イニシアティブ」として国際社会に問うべく、新内閣発足後直ちに、検討を開始したいした。

今月22日に開かれる国連気候変動首脳級会合に出席し、より具体的に国際社会に問うていきたいとした。

 

直後に登壇したデブア国連気候変動枠組み条約事務局長は「民主党の目標は称賛すべきものだ」と高く評価。、「すべての先進国は野心的な削減目標を掲げなければならない」と主張した。そのうえで、「野心的な目標こそ、日本が方向転換して困難に立ち向かうという姿勢を示すものだ」と述べ、COP15の合意に向け、交渉を加速させる材料となるとの見方を示した。

パチャウリ国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)議長も「これまで世界各国の首脳に会ったが、鳩山氏のメッセージは素晴らしい」と同調した。

ーーー

首相直轄の地球温暖化問題に関する懇談会の中期目標検討委員会では、努力継続(90年比+4%)から先進国・国別ともの25%削減までの6ケースを検討していた。

麻生首相は6月10日、日本の2020年時点の温暖化ガスの中期目標を海外から購入する排出枠などを除いて05年比15%削減(1990年比8%減)にすると表明した。
同時に目標実現に必要な政策や家計負担も提示。太陽光発電を現状の20倍導入するほか、1世帯あたり年間約7万円超の負担増が必要だと試算した。

2009/4/2 温暖化ガス削減中期目標

ーーー

デンマークのヘデゴー気候変動・エネルギー相は「野心的な目標だ」と高く評価。「日本の次期政権の力強い指導力」によって今後の国際交渉に弾みがつくとみている。

新華社通信は、「削減義務のない発展途上国を削減義務国の範囲に入れようとしている」と批判する識者のコメントを紹介した。

 

二階経済産業相は麻生首相が示した8%減でも各家庭の負担は年間77千円程度になり、25%減だとその数倍に及ぶと指摘し、「実現は極めて難しい」と述べた。

経済産業省次官は「日本経済にとっては非常に厳しい道を選ぶことになる。国民全員がこれに耐えていくんだという覚悟が必要だ」と述べた。

一方、斉藤環境相は「積極的な取り組み姿勢で、高く評価したい。野心的な目標を掲げることで世界の議論をリードしてもらいたい」と評価。ただ、民主党のガソリン税暫定税率廃止や高速道路無料化は「25%削減と両立しない」として見直しを求め、目標実現には原発推進も必要と指摘して「原子力発電に否定的な社民党と連立を組むなら、この点も明らかにしておかねばならない」と注文もつけた。

産業界には「国民生活、経済界にとって大事な案件。しっかり議論して結論を出してもらいたい」、「荒唐無稽もいいところだ。国益に反するのは間違いなく、国内では生産活動ができなくなる」との意見が出た。
一方、日本鉄鋼連盟会長は、「米国や中国などすべての主要国参加による意欲的な目標の合意を『前提』とした点は、鉄鋼業界と共通している。国際交渉ではその姿勢を堅持し、公平かつ実効性ある枠組みづくりに全力を尽くしてほしい」としている。

河野太郎代議士は9月7日付けのブログで以下の通り述べている。

民主党の主張する高い温暖化ガスの削減目標は決して間違っていない。対策を講じなかったときの破壊的な影響によるコストと比較して、対策のコストを論じるべきなのに、経済界は何もしなかったときのコストを意図的に議論に入れることを避けている。
ただ、削減目標を高くするならば、高速道路の無料化との整合性がとれなくなってくる。これは思い切って見直すべきだ。

ーーー

鳩山代表のスピーチは以下の通り。

 イボ・デブア国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)事務局長、ラジェンドラ・パチャウリ気候変動に関する政府間パネル(IPCC)議長、ビョルン・スティグソン持続可能な発展のための世界経済人会議(WBCSD)事務総長をはじめとする、内外のオピニオンリーダーが多く参加され、今日、明日と2日間にわたって、焦眉の地球環境問題、とりわけ気候変動問題について議論をされるということに、非常に期待しております。

 さて、先の衆議院総選挙におきまして、多くの国民の皆様の勇気ある選択の結果、我々民主党に多くの議席を与えていただき、政権交代が実現することになりました。

 政権交代は、政策変化をもたらすためのスタートであり、我々にはマニフェストでお約束した政策をしっかり実行していくことが求められていると認識しております。気候変動対策についても、これまでの政府の政策を我々のマニフェストに基づいて見直し、低炭素社会の早期実現に向けて、あらゆる政策手法の総動員を図っていきたいと考えております。

 私は2000年に『「成長の限界」に学ぶ』という小著の中で、以下のようなことを申し上げました。

私たちは産業革命以来、技術の進歩の中で豊かで便利な暮らしを追い求め、実際にそれを実現してきました。しかし一方で、人口増加や化石燃料の過 度の消費による産業活動などにより、気候変動はすでに始まっており、その影響が拡大しています。では、具体的に何をするべきかという話になると、理論と現実のギャップの大きさの前に、多くの人が躊躇し、行動が伴わなくなりがちです。

しかし、それではいけないのです。長期的でグローバルな視点を持ち、「このままの事態が進めば、こんな日本になってしまう、こういう世界になって しまう。だから今こういう部分を大きく動かし、改革しなければいけない」ということを理論立て、説得力のあるメッセージとして打ち出すことが本来、我々政治家のつとめです。

私はよく「友愛」という言葉を使います。それは、違いを認めつつ、お互いに信頼して、より豊かで幸せな社会を作るためには、どういう協力がありうるかを探っていく。そこに「友愛精神」の真髄があると思っています。

 9年前にこのように語った気持ちは現在も変わってはおりません。気候変動の問題は、その影響が世界全体にわたり、長期間の国際的な取り組みを必要とするものです。すべての国々が、「共通だが差異ある責任」のもと対処していくことが肝要です。

 ましてや、政権交代が実現することとなった今、私は、世界の、そして未来の気候変動に対処するため、友愛精神に基づき国際的なリーダーシップを発揮していきたいと考えています。

 まず、温室効果ガスの削減目標について申し上げます。

 本日ご出席されている、パチャウリ議長の下でのIPCCの結論を踏まえ、先進国は、率先して中期的、長期的な排出削減に努める必要があると考えています。わが国も長期の削減目標を定めることに積極的にコミットしていくべきであると考えています。また、中期目標についても、温暖化を止めるために科学が要請する水準に基づくものとして、2020年までに1990年比25%削減をめざします。

 これは、我々のマニフェストに掲げた政権公約であり、政治の意思として、あらゆる政策を総動員して実現をめざしていく決意です。

 しかしながら、もちろん、我が国のみが削減目標を掲げても、気候変動を止めることはできません。世界のすべての主要国による、公平かつ実効性のある国際枠組みの構築もめざします。すべての主要国の参加による意欲的な目標の合意が、我が国の国際社会への約束の「前提」となります。

 今、国際交渉で必要なのは、気候変動を確実に防止し、地球規模の安定と平和を守るため、世界の政治家がその責任を果たすことにあると考えております。我々は、世界のすべての主要国に対して、意欲的な目標の設定を強く呼びかけて参ります。

 次に、途上国においても、気候変動の問題は地球規模の対応が必須であることから、持続可能な発展と貧困の撲滅を目指す過程で、「共通だが差異のある責任」の下、温室効果ガスの削減に努める必要があると考えています。

 さらに、国別削減行動(NAMA : Nationally Appropriate Mitigation Action)の計画を定めるなど、意欲的に温室効果ガスの削減に努める途上国に対して、先進国は資金的、技術的な支援を行うべきであると考えます。また、とりわけ脆弱な途上国の適応措置に対しても、同様な支援を行うべきです。

 このような支援の具体策についても、「鳩山イニシアティブ」として国際社会に問うべく、新内閣発足後直ちに、検討を開始したいと考えております。

 炭素に依存しない社会の構築は、日本にとって大きなチャンスです。

 オバマ大統領のグリーン・ニュー・ディール構想を持ち出すまでもなく、気候変動問題への積極的な取り組みは、電気自動車、太陽光発電を含むクリーン・エネルギー技術など、日本経済に新しいフロンティアと新しい雇用を提供します。慎重論を唱える方たちが言われているような、経済や国民生活が悪くなるのではなく、良くなるのだと私は信じています。

 今から一世代ほど前、日本は石油ショックに対応するために能動的に省エネの技術革新に取り組み、それが後の日本企業の国際的競争力を支えることになりました。21世紀の今を生きる私たちも、新たな挑戦に挑むべきです。

 わが国の企業、国民の能力の高さを私は信頼しています。企業も国民も、そして、当然ながら私たち政治においても、産業革命以来続いてきた社会構造を転換し、持続可能な社会をつくるということは、次の世代に対する責務であると考えています。

 国会において私が首班指名を受けることになりましたなら、今月22日に開かれる国連気候変動首脳級会合にぜひ出席させていただき、本日申し上げたことを、より具体的に国際社会に問うていきたいと思います。

 日本の政権交代が気候変動対策について大きな変化をもたらし、人類社会の未来に向けて国際交渉上、非常に貢献したといわれるようなスタートとしていきたいと考えております。

 その際には、今回のフォーラムにおける議論も参考にさせていただきたいと思います。フォーラムの成功とみなさまの益々のご活躍を祈念いたします。 


* 総合目次、項目別目次
 http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


既報の通り、経済産業省は825日、エチレン系・プロピレン系誘導品及び芳香族製品等の石油化学製品についての、西暦2013年までの世界の需給(需要、生産能力、生産量)の動向をとりまとめ、発表した。

既報 2009/8/26 世界の石油化学製品の今後の需給動向
    2009/9/1   <p><p><p>HTML clipboard</p></p></p>世界のエチレン系誘導品の需給予想

既報で資料が未発表としたのは誤りで、下記が発表されている。

経産省発表

世界の石油化学製品の今後の需給動向

(別紙)世界の石油化学製品の今後の需給動向

2008年の需要が世界的景気減速の影響により激減したが、その後は世界全体で経済の回復が達成されることを前提に昨年度版より需要の伸び率が縮小するものの、緩やかに回復していくと見ている。

昨年度版では、2006~2012年のエチレン系誘導品の世界全体の需要量の伸び率を年平均約4.8%と推計していたが、今回は同期間で年平均約1.7%と伸び率が減少する見込み。プロピレン系誘導品の需要量の見通しにも同様。


エチレン系製品の需要の伸びは地域別に傾向が異なり、アジア地域が年平均+3.9%程度。中国の需要増が大きく、中国1ヶ国のみで、2007年から2013年までの間に780万トンの需要増。
一方、北中南米は年平均+1.3%、西欧は年平均 -1.1%で推移する見通し。

なお、2009年から2013年のアジア全体の伸びは、年平均で5.7%でエチレン換算で1,037万トンの増となっている。

世界のエチレン系誘導品の生産能力(エチレン換算)は、2007年末時点で130.7百万トンだが、現時点において2013年までに稼働する可能性の高い生産能力新増設計画に基づくと、2013年末の生産能力は159.6百万トンと2007年比で29百万トンの増とみている。

2013年の需要量は127.6百万トンの予想で、32百万トンもの過剰能力となっている。(実際には上記に加え、多くの新設があると思われる。)
2013年の需要水準では現在の能力でも十分という状況である。
 

ーーー

中国の需給予想は以下の通り。

中国については2008年も需要減はなく、2007年以降平均6.5%で伸びるとしている。

中国政府は早くも昨年11月に、2010年末までに総額4兆元(約57兆円)規模の投資を実施するとの緊急経済対策を発表した。
(地方政府の経済対策を入れると150兆円になるとの説もある)

さらに、中国国務院は本年に入り、国内の10産業について景気刺激策を順次発表した。

中国政府は2007年末に農村市場の消費刺激策として「家電下郷」(農村部に家電を)制度を策定し、2008年1月に導入したが、今回これを全国に適用し、対象製品を増やした。

また本年に入り、「汽車下郷」(農村部に自動車を)制度をスタートさせた。

中国の耐久財の生産は好調を続けているが、耐久財の需要増はこれらによるところが大きい。

他方、これまで中国経済の牽引車であった輸出は上期が前年比で21.8%減、7月も23.0%の減となっている。

中国の農村部と都市部の収入格差が実質 4-6倍前後になり、2000年当時(収入差は2.79倍)より経済の格差は大幅に拡大している。

2009/6/29 中国の現状

緊急対策資金が切れた後、需要がこの予想のとおりとなるのかどうかが大問題である。

ーーー

各国(地域)の需給は以下の通り。

ーーー

主要製品の需給予想は以下の通り。

ーーー

参考

昨年の記事  2008/5/29  世界の石油化学製品の今後の需給動向 


* 総合目次、項目別目次
 http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


Nomura Holdings Inc.はこのたび、BASF株式の格付けを“neutral”から“reduce”に引き下げた。同社の利益が来年減少すると予想した。

同社の格付けは次の3段階
 Buy
 Neutral
 Reduce

工場の操業度が低いままで、利益水準が落ちると予想、2010年は「失望」とした。

ーーー

同社の上半期の業績は前年同期を大幅に下回っている。部門別でも農業部門以外はいずれも前年よりも悪い。

ただし、Performance Products とOil & Gas を除き、第2四半期実績は第1四半期を上回っている。

                                                単位:百万ユーロ
       2Q      1Q         上期
2009 2008 差異 2009 2008 差異   2009 2008 差異 同 %
Sales 12,502 16,305 -3,803 12,219 15,921 -3,702   24,721 32,226 -7,505 -23.3
EBIT(特損除く)   1,140   2,408  -1,268    985   2,354   -1,369     2,125   4,762  -2,637   -55.4
EBIT 772 2,359 -1,587 928 2,303 -1,375   1,700 4,662 -2,962 -63.5
Net income 343 1,297 -954 375 1,170 -795   718 2,467 -1,749 -70.9
 
EBIT(特損除く)内訳
       2Q      1Q         上期
2009 2008 差異 2009 2008/ 差異   2009 2008 差異 同 %
Chemicals   258   377   -119   84   532   -448     342   909   -567   -62.4
Plastics 138 285 -147 -29 352 -381   109 637 -528 -82.9
Performance Products 80 221 -141 123 209 -86   203 430 -227 -52.8
Functional Solutions 48 111 -63 -46 140 -186   2 251 -249 -99.2
Agricultural Solutions 367 363 4 344 259 85   711 622 89 14.3
Oil & Gas 506 1,026 -520 725 984 -259   1,231 2,010 -779 -38.8
Others -257 25 -282 -216 -122 -94   -473 -97 -376   -
Total 1,140 2,408 -1,268 985 2,354 -1,369   2,125 4,762 -2,637 -55.4

* 総合目次、項目別目次
 http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


Huntsman831日、世界第三位の酸化チタンメーカーで再生法(Chapter 11)適用中のTronox Incorporated の主要資産の買収の"stalking horse" 契約を締結したと発表した。

Chapter 11は通常は企業再生のためのものだが、優良事業だけを原則として売却し、数年かけて清算する手段としても使用される。

Stalking horse (直訳すれば「当て馬」)方式では、非公式に資産の買い手候補を探し、最もよい条件を提示した買い手候補(Stalking horse)を選択し、それよりも良い条件の買い手が出れば入札で買い手を決め、なければその買い手候補が当初の条件で購入する。

Huntsmanよりもよい条件の買い手が現れなければ、Huntsmanが買収できる。

買収対象はTronox の次の事業

・オランダと米国(Savannah, Georgia を除く)の酸化チタン製造設備

・南アの
Exxaro Resources との豪州での酸化チタンの50/50JVの持分

・米国の電解製品製造設備(2工場)
 (電解二酸化マンガン、塩素酸ソーダ、三塩化ホウ素、エレメンタルホウ素、酸化リチウムマンガン)

Tronoxは他にオランダに酸化チタン製造設備を持っている。

豪州JVの相手のExxaro Resources Huntsmanによる肩代わりに条件を付けるとしている。

買収金額は運転資金込みで415百万ドルとなる。Huntsmanはこのうちの半分を借入金で賄う。

同社はPigments 部門で酸化チタンを扱っており、CEOは「これら資産を既存のPigments 部門に加えることにより、効率を高めることが出来る」とし、収益性と資金繰りの改善に役立つとしている。

同社の事業 2007/2/20 ハンツマン、米国の汎用品事業を売却

Huntsman はHexionと合併契約を締結したが、Hexionが解約しようとしたため、裁判になり、最終的にHuntsmanが10億ドルの解約金を受け取り、合併契約を破棄した。更に銀行からも1,732百万ドルの和解金を受け取っている。

2009/6/24 Huntsman、銀行と和解

ーーー

Tronox は本年112日にChapter 11 を申請した。

同社は2006年に米国の独立系石油企業であるKerr-McGee からスピンオフした。

その直後にKerr-McGee は Western Gas Resoucesとともに、独立系石油企業のAnadarkoに買収された。

Chapter 11 申請は主にKerr-McGeeから引き継いだ負債(legacy liabilities)によるもので、環境汚染の復旧費用と訴訟費用が中心である。

銀行から125百万ドルのDIPファイナンス(一時的な運転資金)を受けている。

 


* 総合目次、項目別目次
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


米司法省は9月2日、医薬品大手Pfizer が、医薬品の違法な販売促進があったことを認め、罰金と和解金を合わせ計23億ドルを政府側に支払うことで合意したと発表した。

同社は抗炎症薬Bextra の不正表示で食品医薬品化粧品法違反を認めた。

食品医薬品化粧品法では
FDAへの医薬品申請に当たり、対象とする効能を特定しなければならない。
承認されれば、目的外
off-label 用途で販売したり、販売促進をしてはならない。
同社は
FDAが安全性の問題で承認しなかった用途でBextraの販売促進を行っていた。

罰金としてPfizer が11.95億ドル、子会社Pharmacia & Upjohnが1.05億ドルを支払う。合計額は13億ドルで、米国で過去最高の罰金となる。(PfizerBextra2003年のPharmacia 買収を通じて取得した。)

加えて、Pfizerは4つの医薬品(Bextra、抗精神病薬Geodon、抗生物質Zyvox抗てんかん薬 Lyrica)を違法に販売促進したこと、本来は公的医療保険が適用されないのに保険申請したことで、虚偽請求取締法に基づき、10億ドルの和解金を支払う。

司法省によると、Pfizerの営業部はFDAが承認していない用途に関する情報を医師らにメールで提供した。同社はこのほか、医師らをリゾート地で接待して同社製品を処方するよう勧めたり、「バイアグラ」などを処方した医療機関に奨励金を支払う制度を設けていた。

製薬会社の詐欺行為では罰金も和解金も過去最高額になる。

これまではEli Lilly が統合失調症治療薬のZyprexaを、当局から認可を受けていない用途向けに販売した問題で本年1月に合意したものが過去最大だった。
罰金が515百万ドルと100百万ドルの資産没収、和解金が800百万ドルの合計1,415百万ドルであった。 

ニューヨーク州のクオモ司法長官は「Pfizerは自社の利益を出すために、米国中の納税者を騙した」と批判している。

ーーー

Pfizer はBextraCelebrex の副作用で健康被害を受けたとして、患者などから訴えられ、昨年10月に総額894百万ドル和解金で原告側の大半と和解している。

同社
Bextra については2005年に自発的に撤退した。

2008/10/21  米ファイザー、消炎鎮痛剤の健康被害訴訟で和解


* 総合目次、項目別目次
 http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


「REACH規則」には「高懸念物質(SVHCSubstances of Very High Concern )の通知義務」の項目がある。

製品中に「高懸念物質」が重量比で0.1%以上含まれている場合、企業は直ちにその旨を公表する義務があり、消費者からの情報の要求があれば45日以内に答えなければならない。

高懸念物質(SVHC)の対象は以下のとおりとされており、行政庁において具体的な物質リストが作成される予定となっている。
 ①一定程度以上の発ガン性・変異原性・生殖毒性物質(CMR物質)
 ②残留性、蓄積性、毒性を有する物質(PBT物質)
 ③残留性及び蓄積性が極めて高い物質(vPvB物質)
 ④上記以外の化学物質で、内分泌かく乱特性を有しており人の健康や環境に深刻な影響がありそうなもの(個別に特定)

SVHCリストに掲載される化学物質は約1,500種と言われているが、一度に全てのSVHCが公開されるわけではなく、順次発表される。

欧州化学品庁 (ECHA) 91日、15の新しい高懸念物質(SVHC)候補を発表した。45日以内のコメントを求めている。

品目 理由
Anthracene oil Persistent, bioaccumulative and toxic
Anthracene oil, anthracene paste,
Light fractions from distillation
Persistent, bioaccumulative and toxic
Anthracene oil, anthracene paste,
anthracene fraction
Persistent, bioaccumulative and toxic
Anthracene oil, anthracene-low Persistent, bioaccumulative and toxic
Anthracene oil, anthracene paste Persistent, bioaccumulative and toxic
Coal tar pitch, high temperature bioaccumulative and toxic;
carcinogen, category 2
Acrylamide (アクリルアマイド) Carcinogen, category 2;
mutagen, category 2
Aluminiosilicate, Refractory Ceramic Fibres Carcinogen, category 2
Zirconia Aluminosilicate,
Refractory Ceramic Fibres
Carcinogen, category 2
2,4-Dinitrotoluene (2,4-DNT) Carcinogen, category 2
Diisobutyl phthalate Toxic for reproduction, category 2
Lead chromate Carcinogen, category 2;
toxic for reproduction, category 1
Lead chromate molybdate sulphate red
(Pigment Red 104)
Carcinogen, category 2;
toxic for reproduction, category 1
Lead sulfochromate yellow
(Pigment Yellow 34)
Carcinogen, category 2;
toxic for reproduction, category 1
Tris(2-chloroethyl)phosphate Toxic for reproduction, category 2

ーーー

ECHAは2008年11月4日に、第一回目のSVHC候補 15品目(下記)を発表した。

ECHAは本年5月26日にそのうちの7物質(下記のうちの色がけ分)を認可対象物質リスト(Authorisation List)に入れることに同意している。

2009/6/16 REACH 認可対象物質 

品目 理由
Anthracene Persistent, bioaccumulative and toxic
4,4'- Diaminodiphenylmethane (MDA) Carcinogen, cat. 2
Dibutyl phthalate (DBP) Toxic for reproduction, cat. 2
Cobalt dichloride (二塩化コバルト) Carcinogen, cat. 2
Diarsenic pentaoxide (五酸化ニ砒素) Carcinogen, cat.1
Diarsenic trioxide(三酸化ニ砒素) Carcinogen,
cat.1
Sodium dichromate Carcinogen, cat. 2;
Mutagen, cat. 2 Toxic for reproduction, cat. 2
5-tert-butyl-2,4,6-trinitro-m-xylene (musk xylene) Very persistent and very bioaccumulative
Bis (2-ethyl(hexyl)phthalate) (DEHP) Toxic for reproduction, cat.2
Hexabromocyclododecane (HBCDD) and
all major diastereoisomers identified
(
α-HBCDD, β-HBCDD, γ-HBCDD)
Persistent, bioaccumulative and toxic
Alkanes, C10-13, chloro (Short Chain Chlorinated Paraffins)
(短鎖塩素化パラフィン)
Persistent, bioaccumulative and toxic
Very persistent and very bioaccumulative
Bis(tributyltin)oxide (TBTO) Persistent, bioaccumulative and toxic
Lead hydrogen arsenate (ヒ酸鉛) Carcinogen, cat. 1
Toxic for reproduction cat. 1
Benzyl butyl phthalate (BBP) Toxic for reproduction, cat. 2
Triethyl arsenate Carcinogen, cat. 1

* 総合目次、項目別目次
 http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


シャープは8月31日、国務院国有資産監督管理委員会が直轄する中国最大級の電子・情報通信企業集団「中国電子信息産業集団(CEC)」と液晶パネル事業で提携することを発表した。

CECと江蘇省、南京市とのJVの南京中電熊猫信息産業集団(CECパンダ)の液晶事業会社「南京中電熊猫液晶顕示科技」に対し、液晶の生産技術およびノウハウを提供するとともに、亀山第1工場の最先端生産技術を盛り込んだ第6世代(1500mmx1800mm)生産設備を売却し、新会社が南京市において進める第6世代液晶パネル工場の建設と生産に協力する。
2011年3月までの稼動をに予定している。

また、南京市、CECと第8世代(2,160mm×2,460mm)の液晶パネル生産の合弁事業について協議を進めていくことを確認した。

中国電子信息
産業集団(CEC)
70% 南京中電熊猫信息
産業集団(CECパンダ)
南京中電熊猫
液晶顕示科技
江蘇省 15%
南京市 15%

さらに、シャープは液晶パネルから液晶テレビに至る設計開発を行う「液晶設計開発センター」を2010年4月に南京市に設立する。

同社は既に南京市で液晶モジュールから液晶テレビまでの一貫生産を行っており、今回の開発センター設立及び液晶パネルと液晶モジュール生産決定で、設計開発、液晶パネルおよびモジュールの生産、そして液晶テレビの組み立てまでを行う垂直統合体制を構築する。

同社では関連企業の進出が進み、「南京市クリスタルバレー」が構築されることを期待している。

クリスタルバレー構想は、液晶ディスプレイなどフラットパネルディスプレイの組み立て工場およびその要素技術を持つ企業や研究機関を誘致することを核とするもの。

青森県の「むつ・小川原工業団地」の再建策の議論の中から、青森クリスタルバレー構想が生まれた。但し、進出企業は1社のみ。

三重県では、2000年当時の北川正恭知事がシャープ本社を訪問し、シャープ経営陣に三重県への液晶産業集積を要請を主としたトップセールスを行った。
2004年1月、シャープ亀山工場が稼動を開始、日東電工、凸版印刷など20社を超える液晶関連企業が三重県に進出を決めた。さらに2006年8月にはシャープ亀山第二工場が稼動を開始した。

山形県では「有機ELバレー構想」を進めている。

ーーー

シャープが堺市に建設中の液晶パネル新工場は10月に稼動する。

最先端の液晶パネル工場と、薄膜太陽電池を量産する太陽電池工場を併設する「21世紀型コンビナート」である。

ここでは最新の第10世代(2,880mmx3,130mm)を月72千枚(当初は36千枚)生産する。

2007/12/5  シャープの「21世紀型コンビナート」

ーーー

シャープは従来の国内一貫生産の方針を転換した。

本年4月8日の経営戦略説明会では、「新しいビジネスモデルによる事業展開」として、
・消費地生産でのValue Chain の確立(前半工程の現地化)
・現地有力企業とのアライアンス
により、投資額の最小化による投資効率の最大化、Cashflow 改善を狙うとしている。

 http://www.sharp.co.jp/corporate/ir/event/policy_meeting/pdf/shar090424_1.pdf

 


* 総合目次、項目別目次
 http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


シノペックの親会社である中国石油化工集団は818日、スイスに本拠を置き、ロンドンとカナダで上場している石油開発大手のAddax Petroleum の買収を完了したと発表した。金額は約75.6億米ドルで、中国企業による外国企業買収としては2009年で最大規模になった。

6月24日にAddax Sinopecの買収提案を受け入れると発表、8月10日にシノペックが中国政府から承認を得た

2009/6/26  Sinopec、Addax Petroleum を買収

Addax はナイジェリア、ガポンなどとイラクのクルド自治区で権益を有している。

イラクのクルド自治区ではTaq Taq 油田についてトルコのGenel Enerji が組んで2005年7月に自治区政府と生産物分与契約を結んだ。2006年11月に生産を開始した。

イラク政府はこの契約を承認していないが、本年6月、例外的措置としてイラク政府はこの油田からの原油輸出を承認した。

2009/6/9 イラクのクルド自治区の原油輸出開始 

 

イラク石油省の副大臣は8月24日、シノペックのAddax買収が確認できれば、イラクの石油の入札からシノペックを除外することを検討していると述べた。シノペックはCNOOCCNPCSinochem とともに入札資格社として選ばれている。

中央政府はクルド政府が外国企業と結んだ契約は違法として認めておらず、中央政府の承認なしにクルド政府と石油契約を締結した企業とは取引しないとしている。

しかし、China Business News 26日、イラク政府がシノペックのAddax買収を通じてのクルド地区での石油権益取得を承認したとのシノペックの発言(発言者は明らかにせず)を報道した。

ーーー

中央政府はクルド政府が外国企業と結んだ契約は違法として認めていない。

イラク政府は37年ぶりに油田権益を外資企業に開放し、増産体制を整備して、2013年に原油生産能力を現状の日量250万バレルから460万バレルに引き上げることとした。

イラクは6月30日、第一次開放対象の国際入札を実施し、Rumaila油田のみが落札された。BP 66%/CNPC33% 連合が落札した。

11月に行われる第二次開放対象の入札資格社が既に選ばれている。

第一次、第二次の入札資格社から韓国の韓国石油公社とSKエナジーが除外された。

韓国石油公社などが参加する韓国コンソーシアムは2008年2月14日、イラクの北部クルド自治区内の油田4つの鉱区の開発とインフラ建設を並行して進める内容の覚書をクルド自治政府と締結した。

イラクのシャハリスタニ石油相は4月2日、イラク駐在の河泰允 (ハ・テユン)大使に会い、「韓国石油公社やSKエナジーなどの韓国企業がクルド自治政府と締結した油田開発事業は、中央政府との協議を経ずに行われた違法なものだ。そのため両社は今後、イラクでの油田開発に関する入札に参加できない」と通知した。

2009/4/7 イラクの油田開放、クルド人自治政府と契約の韓国企業を除外

本年2月にイラクのタラバニ大統領が韓国を訪問した際、イラク南部バスラの油田開発と現地でのインフラ整備を行うために必要な35億5000万ドルを韓国側が投資するという覚書を交わしたことで、一旦はこの問題は解消するかのように思われたが、石油省は両社を除外したままである。

イラク政府が本当にシノペックの入札参加を認めたのかどうか、発表されてはいないが、もしそうなら、イラク政府が中国との関係を考慮したものであろう。

なお、別枠でNasiriyah油田(Samawahの南東)の交渉が続いている。
将来、日量数十万バレルの生産が見込まれる有望油田で、日本連合(新日本石油/国際石油開発帝石/日揮)とイタリアのEniが争っている。


* 総合目次、項目別目次
 http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


既報の通り、経済産業省は825日、エチレン系・プロピレン系誘導品及び芳香族製品等の石油化学製品についての、西暦2013年までの世界の需給(需要、生産能力、生産量)の動向をとりまとめ、発表した。

2009/8/26 世界の石油化学製品の今後の需給動向

これによると、世界のエチレン系誘導品の需給予想は以下の通り。

詳細データの発表はまだないため、昨年発表分(2006年までの実績、2012年までの予想)を元に、今回発表の2007年実績を置き換え、2013年予想を加えた。

経済情勢の変化を折り込み、2013年予想では昨年の2012年予想と比べ、それぞれ減少している。

2007年と2013年のエチレン系誘導品の需給は以下の通り。

2013年の需要と能力・生産は前年の2012年予想より減ってはいるが、余剰能力(能力ー生産)と需給バランス(生産ー需要)は増大している。

2007年実績
 能力 130.7百万トン
 生産 115.9百万トン  余剰能力 14.8百万トン
 需要 111.3百万トン  バランス  4.6百万トン(余剰合計 19.4百万トン)

2013年予想
 能力 159.6百万トン
 生産 137.2百万トン  余剰能力 22.4百万トン
 需要 127.6百万トン  バランス  9.6百万トン(余剰合計 32.0百万トン) 

地域別予想は以下の通り。

世界のエチレン換算生産能力及び需要 (単位:千トン)

アジアと中東のポリエチレンの需給は以下の通り。

 


* 総合目次、項目別目次
 http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


 

最近のコメント

月別 アーカイブ