2014年11月アーカイブ


ロシア産の石炭を北朝鮮の羅津港に鉄道で運び、羅津港から貨物船で韓国の浦項港に運ぶテスト輸送が実施される。

シベリアの鉱山で採掘された石炭45千トン、400万ドル相当をまずロシア極東沿海地方のハサン(Khasan)から鉄道で北朝鮮北東部の羅先経済特区の羅津港(Najin) に運び、羅津港で中国船籍の貨物船に載せて韓国・浦項港に運ぶ。11月29日に浦項港に到着する。

石炭は韓国鉄鋼最大手のポスコが製鉄の燃料として使用する。

事業に参加するポスコ、現代商船、KORAIL(韓国鉄道公社)のコンソーシアムの関係者は空路でロシア極東のウラジオストクに移動し、鉄道で北朝鮮の羅津港に入り、ロシア側と合同で、石炭の荷役と船積み、船舶の出入港、鉄道・港湾連結線など、陸・海運複合物流プロセス全般について技術的な点検を行った。

ハサン―羅津間の全長約54キロの鉄道の線路の補修工事については、2008年に、ロシア鉄道社長と北朝鮮の鉄道相によって調印され、合弁企業「羅先・コン・トランス(RasonconTrans、出資率はロシア側70%、北朝鮮側30%)を設立した。鉄道補修のほか、羅津港第3号埠頭の近代化、複合物流事業などを進める。

鉄道補修は完了、2013年9月に直通列車の運行が始まったが、2013年11月に韓ロ首脳会談で、この補修工事を実施し、羅先地域の開発事業を手掛ける「羅先コントランス」に、韓国のポスコ、KORAIL、現代商船の3社で作るコンソーシアムが出資することに合意した。

韓国側コンソーシアムは、ロシア側持分の70%のうちの34.3%を2000億ウォン(約185億円)台の価格で取得する覚書を交わした

朴政権は「ユーラシア・イニシアチブ」(ユーラシア大陸の物流・エネルギー協力を促進する政策)を掲げており、その初の具体的な成果になるとみて、対北朝鮮制裁措置の例外と規定し、積極的に支援している。

将来、韓国と北朝鮮の南北縦断鉄道が接続されてシベリア横断鉄道につながれば、釜山からモスクワ間まで10日以内に到着できる。

韓国国土交通部はロシア運輸省と鉄道・交通に関する覚書を交わした。

 


この事業が本格的に稼動すれば、ポスコなどの韓国企業がロシアの石炭を以前よりも安く輸入できるようになると期待されるが、政治面での不安定性がネックになる。

北朝鮮との経済協力事業には大きなリスクが伴うため、コンソーシアムの3社は本契約の締結に先立ち、韓国政府が投資金を融資し、事実上の政府保証を付けることを求めている。

北朝鮮とロシア側の事情で全般的に事業が遅れており、年内の本契約は難しいとされる。

ーーー

羅先経済特区は北朝鮮が1991年に、中国の経済特区をモデルに咸境北道の羅津(ナジン)と先鋒(ソンボン)を合わせて指定した「羅津-先鋒自由経済貿易地帯」で、北朝鮮は2010年1月、羅先市を特別市に昇格させ、海外からの投資が円滑に進むよう羅先特区法を改正した。

201012月、北京の国有企業の商地冠群投資有限公司が北朝鮮朝鮮投資開発連合体と10項目の投資意向書を締結した。
2-3年で羅先経済特区の建設に必要なインフラを建設し、5-10年かけて北東アジア最大の核心工業特区を建設するという。

計20億ドルを投資し、火力発電所、道路、タンカー専用埠頭、石油精製工場、製鉄所を建設する計画であった。

しかし、羅先貿易区は北朝鮮の張成沢国防委員会副委員長が推進していたもので、その失脚後は中国による開発は"開店休業"状態となっている。

2013年12月12日、北朝鮮の金正恩政権は張成沢を死刑に処した。
特別軍事裁判では張の罪状の一つとして「羅先経済貿易地帯の土地を50年の期限で外国に売ってしまう売国行為」を挙げ、羅先特別市の租借は張の意向であり、なおかつ「売国」であるとの認識を示した。
 

中国と北朝鮮の協力事業については、 2011/6/11 中国・北朝鮮国境で「経済地帯」着工式 参照

 

米国立衛生研究所(NIH)と英製薬大手Glax0SmithKline (GSK) は11月26日、共同開発中のエボラ出血熱のワクチンについて、第1段階の臨床試験(治験)で安全性を確認したと発表した。ウイルスの増殖を抑える抗体ができていることも確かめた。

エボラ熱ワクチンのヒトでの治験結果が出たのは初めて。

このワクチンcAd3-EBOは、NIHのアメリカ国立アレルギー・感染症研究所 (NIAID)と、2013年にGSKが250百万ユーロで買収したスイスのバイオ企業 Okairos AGが共同開発したもので、チンパンジーの風邪のウイルス(chimpanzee adenovirus type 3)を使用して、エボラタンパク質を人間の体に運び込むもの。
(ワクチンは、エボラウイルスに対する抗体を作り出すように促すもので、ワクチンの接種によって、チンパンジーの風邪もエボラ出血熱も誘発されることはない。)

治験は米東部メリーランド州のNIHで実施した。20人の健康な成人にワクチンを投与し、全員に抗体ができていることを確認。2人が発熱したが翌日までに回復し、重大な副作用はなかったという。

11月26日付けのNew England Journal of Medicineに Preliminary report が発表された。

NIHは、多くの被験者で体内でエボラウイルスが増えるのを抑える働きがあるとも指摘されている「T細胞」も増えたとしている。

来年初めにリベリアとシエラレオネ、恐らくギニアでも、医療従事者ら数千人を対象に、効果を確かめる次の段階の治験を始める。

ーーー

WHOは9月5日、2種類のエボラ出血熱のワクチンが、早ければ11月から利用可能になると発表した。

一つは上記のGSKのもの。
もう一つはカナダのPublic Health Agency が最初に開発したもので、NewLink Geneticsの100%子会社のBioProtection Systemsが独占実施権を得ている。

WHOは9月にジュネーブで開いた専門家会合で、エボラ出血熱の治療や予防の方法を検討し、この2種類が利用可能になるとの見解に至った。

 

米国のMerckは11月24日、NewLink Geneticsとの間でNewLinkのエボラワクチン rVSV-EBOV について研究、開発、製造、販売のグローバルの独占実施権を受けるライセンス契約を締結したと発表した。

2015年初めの第1段階の臨床試験で好結果が出れば、大規模な試験が行われる。

 

参考 2014/10/29  エボラ出血熱ワクチンの開発進む 

 

 

  

伊藤忠は11月25日、同社が出資するブラジルの鉄鉱石生産・販売会社Nacional Minerios S.A.(NAMISA) とブラジル鉄鋼大手Companhia Siderurgica Nacional (CSN) が保有する鉄鉱石事業関連資産 Casa de Pedra 鉱山及びロジスティクス (鉄道株式及び港湾) の資産統合に関して合意した と発表した。

CSNも同様の発表をしたが、発表はこの事実だけで、双方とも詳細については一切述べていない。

この取引は12月のCSNの取締役の承認と、当局の同意(手続きに1年程度かかる)が必要となる。

ーーー

NAMISAは伊藤忠が国内製鉄会社と共に設立した日伯鉄鉱石㈱ と韓国、台湾の大手製鉄会社で形成する日韓台コンソーシアムが40%を保有し、CSNが60%を保有する。

NAMISAは2006年にCSNの100%子会社として設立され、ブラジル南東部ミナスジェイラス州の大鉄鉱床地帯である「鉄四角地帯」にEngenho 鉱山とFernandinho 鉱山を保有する。両鉱山は今回統合する Casa de Pedra鉱山に隣接する。

NAMISAの鉱石はイタグアイ港まで鉄道で約440km運搬され、輸出される。

鉄道会社は MRS Logística で、CSNは20%を出資している。
他に、Vale が39.26%、Ujiminas が19.92%出資する。


2008年4月にCSNがNAMISAの拡張計画推進のため、株式の一部を売却することとなり、伊藤忠と日本の高炉メーカーがコンソーシアムを結成し、国際入札に参加、韓国のPOSCOもこれに加わり、NAMISAの40%を取得した。日本の鉄鋼各社はNAMISAとの間で2009年から15年間の長期引取契約を締結している。

2011年6月に新日鉄と住友金属工業が離脱した。
同社の持分は伊藤忠とJFEが肩代わりするとともに、2011年10月に台湾のCSC (China Steel Corp.) が参加した。

新日鉄は「NAMISAの能力拡張が当初計画に対し3年遅れており、将来の能力拡張に確信が持てなくなったため」とし、住友金属も「拡張計画が遅れており、出資継続について総合的に判断して撤退を決めた」としている。

これに対し、伊藤忠は「収益拡大に寄与する優良なプロジェクトと位置付けている」とし、JFEスチールも「環境問題などでNAMISAの生産能力の拡張に遅れは生じているものの、販売量については2009年の1500万トンから2014年に3900万トン体制まで拡張する計画で、優良な案件との見方は変えていない」とした。

NAMISA株主推移

  日伯鉄鉱石 日韓(台)コンソーシアム NAMISA
当初 2011/6 2011/10 当初 2011/6 2011/10 当初 2011/6 2011/10
伊藤忠 47.74 66.97 67.49 40.00 56.12 54.87 16.00 22.45 21.95
JFEスチール 19.33 25.78 26.57 16.20 21.60 21.60 6.48 8.64 8.64
神戸製鋼 3.67 3.67 3.78 3.08 3.08 3.08 1.23 1.23 1.23
日新製鋼 2.09 2.09 2.16 1.75 1.75 1.75 0.70 0.70 0.70
新日鉄 19.33 - - 16.20 - - 6.48 - -
住友金属 7.84 1.49 - 6.57 1.25 - 2.63 0.50 -
日伯鉄鉱石 合計 100.00 100.00 100.00 83.80 83.80 81.30 33.52 33.52 32.52
POSCO   16.20 16.20 16.20 6.48 6.48 6.48
台湾CSC   - - 2.50 - - 1.00
日韓(台) 合計   100.00 100.00 100.00 40.00 40.00 40.00
CSN   60.00 60.00 60.00
NAMISA 合計   100.00 100.00 100.00


ーーー

2013年5月にブラジル紙が、コンソーシアム側がNAMISAの株をCSNに売却する可能性があると報じた。
当初の契約で、コンソーシアムは買収額の30.8億米ドルで売り戻すput-option をもっている。

背景には、CSNが株主間協定に含まれていた事業拡張や物流プロジェクトを長年延期してきたことがあり、コンソーシアム側は鉄鉱石の生産量を年内に1300万トンまで増やしたい意向だったがCSNが前向きな姿勢を示さなかったとされる。

当初は、NAMISAは2013年に 3800万トンを生産する予定であった。
しかし、生産量は2011年が640万トンで、2012年には460万トンに減っている。

この報道に対し、伊藤忠は売却は検討していないとしたが、その後、解散を避けるため話し合いを続け、今回の結論に達したとみられる。

Casa de Pedra 鉱山は能力2100万トン。CSNではNAMISAの生産能力を現在の680万トンから2016年には3300万トンに拡張するとしている。

今回の統合でコンソーシアム側の出資比率は低下するが、日系各社は大幅な追加出資をする予定はないとみられる。

 


 

欧州委員会は2014年6月11日、Apple、Starbucks、Fiat Finance and Trade 3社の法人税に関して、それぞれアイルランド、オランダ、ルクセンブルクの各国税務当局が下した判断について、本格的な調査を開始したことを明らかにした。

欧州委員会は9月30日、2014年6月11日付けのアイルランド向けのレターを公表した。Appleに対する課税の疑惑を詳細に述べ、今後調査を続けることを伝え、資料の提出を要求している。

また、10月7日 にはルクセンブルグのAmazon への優遇策についても正式に調査を始めたと発表した。

2014/6/13 欧州委員会、Apple等の法人税を調査 


欧州委員会は11月14日、2014年6月11日付けのオランダ政府宛のレターを公表した。
  http://ec.europa.eu/competition/state_aid/cases/253201/253201_1596706_60_2.pdf

EUは今回、オランダ子会社のStarbucks Manufacturing を問題視した。
(Starbucks Coffee EMEA BV については未調査であるとしている。)

同社は、
 Starbucksのスイス子会社からコーヒー豆を仕入れ、
 英国子会社から商標と焙煎方法等のライセンスを受けて焙煎し、
 欧州各国の販売店に製品を販売している。

今回、EUはスイス子会社との間のコーヒー豆の取引価格と、英国子会社との間のロイヤリティを問題にした。


1) コーヒー豆の取引価格

関係会社間の取引価格は任意に決められるため、各国の税務当局は一般的に市価(arm's length price)に置き直して課税する。(移転価格税制)

このため、Starbucks Manufacturing は事前にオランダの税務当局との間で取引価格についての協定(Advance Pricing Arrangement :APA) を結び、同業他社の利益率を適用した取引価格で取引し、税務上、認めてもらっている。

それによると、2001年~2005年の同業20社のmark-up (コストへの上乗せ分、調整後)は、下位25%が6.6%、上位25%が20.9%で、中央値は9-12%となっており、これを適用した。

問題は、上記の同業20社のmark-up は豆代を含めたコストに対するものであるが、Starbucksは同社はコーヒー豆の焙煎を受託加工しているだけであるとして、豆代を除いたコストに対しこのmark-upを適用した。

しかし、Starbucksの取引を調べると、受託加工ではないことが分かった。

スイスの会社は単にコーヒー豆を売るだけであり、Starbucks Manufacturing はバランスシートに豆の在庫を計上しており、また在庫の値下がりに備えての引当もし、在庫のリスクを負っており、自ら販売活動を行っている。受託加工ではない。

このように、適用している mark-up は受託加工のものではないうえ、事業自体が受託加工ではないため、豆代を含めたコストに対してこのmark-up を適用すべきである。
その場合、mark-up の金額ははるかに大きくなる。

欧州委員会の試算では、2010/2011年度の税引前損益(1,431千ユーロ)は、トータルコストに対し7.8%のマージンとすると13百万ユーロと 9倍に膨らむ。

現状はStarbucks Manufacturing の利益を著しく少なくし、その分を豆代を膨らませて、税率の低いスイスの会社の利益を膨らませていることになる。

2)ロイヤリティ

Starbucks Manufacturingは英国のAlki LP にロイヤリティを支払っている。

ロイヤリティは通常は売上高などをベースに決められるが、同社の場合、異常な形になっている。

同社の損益計算書は下記の通り。(千ユーロ)

  2009/2010年度 2010/2011年度 2011/2012年度
売上高 142,627 184,159 286,217
売上原価 120,021 153,276 252,501
粗利益 22,606 30,883 33,717
販売管理費 16,835 14,303 17,470
為替差損 2,266 2,089 8,163
営業損益 3,505 14,491 8,084
その他費用 1,080 12,353 5,786
金利(ネット) 772 707 716
税引前損益 1,653 1,431 1,581
法人税 429 338 395
純損益 1,225 1,093 1,186

脚注に、「その他費用」はロイヤリティであると明記されている。

ここに見られるように、ロイヤリティの額は、2009/2010年度が1,080千ユーロだが、翌年は売上高は29%増に過ぎないのにロイヤリティは12,353千ユーロと10倍以上になっている。

欧州委員会は、このロイヤリティの計算方法は arm's length pricing に合致したものではないとし、税引き前利益が当局と合意した水準に収まるようロイヤりティをを毎年調整していた可能性を示唆している。

なお、英国法人のAlki LPは、米本社がオランダに持つ2つのパートナーシップの子会社となっているが、オランダの税務当局の説明の中で、この仕組みは米国の課税を避けるためと明言している。

 

欧州委員会はこれらにより、オランダ当局の税優遇措置が、違法な国家補助に当たる可能性があるとの見解を示した。

今後も調査は続くが、最終的に違法と判断されれば、Starbucksは多額の追加納税を求められる可能性がある。

レターでは、オランダに対して以下の規定があることに注意を喚起している。

1) 「EUの機能に関する条約」の108(3)条

欧州委員会が,当該補助について域内市場と両立しないおそれがあるとして審査を開始した場合には、当該審査の結論が欧州委員会決定によって示されるまで、加盟国は当該措置を実施してはならない。

2) Council Regulation No.659/1999  第4条 "Recovery of aid"

違法な支援であると決定された場合、各国はその支援額をその企業から取り戻す全ゆる必要な手段を取らねばならない。


Starbucks は以下の通り述べている。

欧州委員会の調査に引き続き協力する。
同社は関連する租税ルール、税法、国際的なガイドラインに従っている。
オランダでの税計算方法は、専門家が検討し、オランダの税務当局が承認したものである。
同社の全世界の実効税率は34%であり、アンフェアな優遇措置を求めたことはない。

ーーー

国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)は11月5日、Pepsi、IKEA、FedEx など、国際企業340社超が、税負担を軽減する目的でルクセンブルク政府と秘密協定を結んでいたとする報告を発表した。日系企業も複数含まれている。

これらの企業はルクセンブルクに拠点を置き、他国から利益を移し、低税率の適用を受けていた可能性が高い。
ICIJによると、一部の場合では企業がルクセンブルクに集めた利益の1%未満しか税金を支払っていないという。

http://www.icij.org/project/luxembourg-leaks/leaked-documents-expose-global-companies-secret-tax-deals-luxembourg

これに対し、欧州委はルクセンブルク政府に問い合わせ中で、追加的な調査を開始する可能性があるとしている。

欧州委のJean-Claude Juncker 委員長は11月15日、G20首脳会議前に記者会見し、「我々は企業の課税逃れに対して戦う」と強調した。

しかし、ICIJの発表で、この時期にルクセンブルグの首相であったJuncker 委員長が弁明に追われる事態となっており、欧州議会の一部からは問責動議を出す動きも出ている。

 

付記 欧州議会は11月27日、Juncker委員長が率いる欧州委員会に対する不信任決議案を反対多数で否決した。



 


LG Chemは11月19日、Siemensとの間でエネルギー貯蔵システム(ESS:Energy Storage Systems) 事業の協力のためのMOUを締結した。

ESS事業で、Siemensはコンバーターとコントローラーを供給し、プロジェクトの計画と実行を担当、LG Chemは電池と電池管理システムを提供する。

来年から50MW規模のESS構築事業も共同で推進する。

両社は2012年から合計3MW程度のリチウムイオン電池ベースのESS事業を進めているが、これを戦略的提携に広げる。

Siemensは例えば、ドイツのエネルギー会社VEOの停電時のバックアップ用ガスタービンのBlack start (外部から動力を受けないで起動)のために "Siestorage" バッテリーを供給している。
これにはLG Chemのリチウムイオン電池が使われている。


ーーー

Daimlerは11月18日、100%子会社のLi-Tec Battery GmbH が12月にリチウムイオン電池の製造を停止すると発表した。
これは電気自動車用に電池を製造するドイツ唯一の工場で、2012年から生産している。

「自社の電池の品質はよいが、コストが高過ぎる。自動車メーカーが自分で電池を製造する必要がないと分かった」としている。

Renault 日産グループもこの方向で動いている。

Renault 日産グループには、バッテリーを製造するAESC(日産自動車 51%、日本電気 42%、NECエナジーデバイス 7%のJV)があり、Renault と日産自動車は当初、AESCの技術をベースにしたEV用電池工場を、2012年半ばまでにRenault のフラン工場に建設する計画を発表していたが、この計画は延期された。

Renault が2012年末に発売した小型電気自動車Zoe にLG Chem製の電池が採用された。

Renault は2014年5月、Renault とLG Chemが次世代のゼロエミッションの自動車用のバッテリーを共同開発する契約に調印したと発表した。

2014/5/28   ルノー、韓国LG Chem と将来の電気自動車のバッテリーを共同開発、GMはバッテリーをLGに統一


DaimlerはLi-Tecでリチウムイオン電池を製造するほか、もう一つの100%子会社 Deutsche ACCUmotive でバッテリーパックを製造している。

ACCUmotiveはスマートEDや他のDaimlerのプラグイン用にパックの製造能力を拡大する。
Li-Tecの従業員はここに移す。
バッテリーパックにはLG Chem のリチウムイオン電池を入れる。


ーーー

Li-Tec は当初は Evonik の100%子会社であった。
Li-Tec のリチウムイオン電池は、EvonikのSEPARION 高機能セパレーターとLITARION 電極を使用している。

2008年12月にDaimler と Evonik は自動車用リチウムイオン電池で戦略的提携を行った。

・Evonik 子会社のLi-Tecを両社のJV(Evonik 50.1%、Daimler 49.9%)とする。
・Deutsche ACCUmotive の設立(Daimler 90%、Evonik 10%)

2014年4月、両社はこの分野での提携を再編し、Daimlerが両JVのEvonik持株を全て買収し、両社を100%子会社とした。

取引条件を全く明らかにしていないが、もしかすると、この時点でLi-Tec の生産停止を折り込んでいたのかもしれない。

Evonikは離脱理由として、スペシャルティケミカルに重点を置く戦略に沿い、リチウムイオン電池事業の再検討を行っていたとしている。

なお、EbonikはSEPARION 高機能セパレーターとLITARION 電極はEvonikが引き続き扱っている。

 


Bloombergは11月14日、Dow Chemical のAndrew Liveris 会長が株主への説明会の席上、Corning Inc. がDow Corningの持株の売却を希望しており、Dowが購入することになるだろうと述べたと報じた。

CorningはSamsung Electronics とのJVであったSamsung Corning Precision Materialsを100%子会社にしており、Dow Corning よりもこちらに重点を置きたい意向であるとしている。

これに対し、CorningはDow Corning の株主であることに満足していると述べ、Dowの報道担当も、Liveris会長は相手持分を買うことについて何も確定的なことは言っていないとしているが、Dowが購入するのは間違いないと見られている。

ーーー

Dow Corning は1943年にDow Chemical とCorning の50/50JVとして設立された。

当時の航空機は、エンジンの水分による電気系統からのコロナ放電のため高高度での飛行が不可能であったが、1942年にShailer Bassが開発したシリコーングリースにより解決を見た。シリコーンの可能性を追求すべく1943年にDow Corningが設立された。

シリコーン製充填材、接着剤、潤滑剤、離型剤、吸音材、半導体やソーラーパネルに使用されるシリコンウェハーなど約7000品目を製造する。

シリコーン(Silicone)は、ケイ素と酸素からなるシロキサン結合(≡Si-O-Si≡)を骨格とし、そのケイ素(Si)にメチル(-CH3)を主体とする有機基が結合したポリマーで、天然には存在しない。

無機質のシロキサン結合と有機基との結び付きにより、有機化合物やポリマーと比較し、耐熱・耐寒性、耐候性、電気絶縁性、化学的安定性、撥水性、消泡性、離型性など数多くの優れた特性をもっている。

形状はオイル、エマルジョン、レジン、ワニス、ゴムおよびパウダーなどと極めて多様で、用途も多岐にわたり、いろいろな分野で利用されている。

これに対し、シリコン(Silicon)はケイ素(Si)のことで半導体材料、太陽電池材料などに使われる。

1980年代から1990年代にかけ、豊胸手術に使用されたDow Corning製シリコーンバッグにより乳癌や関節リウマチ、全身性エリテマトーデスなどの健康被害が生じたとして集団訴訟が提起された。訴訟は1984年に始まり、1995年に20億ドルの損害賠償訴訟を受け同社は連邦破産法 Chapter 11を申請した。

2000年に被害者に30億ドルを払うことで和解が成立し、2004年6月に Chapter 11 から離脱した。


日本では1966年に東レとの共同出資でトーレ・シリコーン(現 東レ・ダウコーニング)を設立している。

1966/12   トーレ・シリコーン設立
1967/4   Dow Corning製品の輸入販売開始
1989/12   東レ・ダウコーニング・シリコーンに改称
2004/9   日本ユニカーのシリコーン事業(1967年に生産開始)を買収
2005/4   ダウコーニングアジアと統合、東レ・ダウコーニングに改称

ダウコーニング・ホールディング・ジャパンが 65 %、東レが 35 %出資する。 

Dow CorningはHemlock Semiconductor Corporationのマジョリティ株主である。

Hemlock は 1960年に設立され、半導体や太陽電池に使われる様々な純度の多結晶シリコンを製造している。

ーーー

Corning は特殊ガラス及びセラミックの世界的リーダーで、160年以上に亘り培われてきた材料化学やプロセス工学の知識により、コンシューマーエレクトロニクス、自動車排ガス制御製品、テレコミュニケーション及び、ライフサイエンス向けに高度な製品を開発、製造している。

同社は5つの重要な市場分野で世界をリードしている。

 Display Technologies:液晶テレビ、コンピュータモニタ、ノートパソコン、その他家電製品向けガラス基板
 Environmental Technologies:排ガス浄化システム用のセラミック担体およびディーゼル微粒子フィルタ
 Optical Communications:光ファイバ、ケーブル、ハードウェアおよび電話・インターネット通信ネットワーク向け機器
 Life Sciences:ガラス・プラスチック製実験器具、細胞培養・ゲノム研究・バイオプロセス用ラベルフリー技術、培養基および試薬
 Specialty Materials:家電用カバーガラス、先進光学、各種産業向け特殊ガラスソリューション


2014年1月15日、CorningはSamsung Display と
戦略的契約を締結し、Corningが50%、Samsung Display が42.64%出資する液晶パネル向けガラス素材の合弁会社 Samsung Corning Precision Materials のSamsung持株を買い取った。

このJVは営業利益率が50%を超え、利益のほとんどを配当に回しており、2013年10月にSamusungが売却を発表した際には産業界では驚きの声が上がった。

Samsung は売却により Corning から額面約19億ドルの新規転換権付優先株を受け取るとともに、さらに4億ドルの新規転換権付優先株を購入した。
7年間は普通株への転換はできない条件がついているが、転換すれば、SamsungはCorningへの出資が7.4%となり、筆頭株主となる。
また、今後 Corningの新たな技術や製品に早い段階からアクセスできるようになるとされる。

Corning の会長兼CEOは、「この非常に素晴らしい機会を活かして、私たちは歩みを進め、特殊ガラス分野におけるリーダーシップを拡大し、収益の伸長に弾みをつけるとともに、今後も世界有数の家電メーカーであるSamsungとの協力強化を図っていくことを強く願っている」と述べた。

付記

サムスン電子は12月2日、光ファイバーや光ケーブルなどを生産する亀尾(クミ)素材工場など韓国内の光素材事業分野と中国海南省にある生産法人(SEHF)などを米 Corningに売却すると明らかにした。

米Corningは2014年3月、スマートフォンなどで主に用いられている「Corning Gorilla Glass」の生産を、静岡工場からSamsung Corning Precision Materials の韓国の牙山工場に移管することを決定したと発表した。
牙山工場がフルに活用されていないことを受けて、より低コストな生産が可能な同工場へ移管する。


Gorilla Glassはアルカリアルミノケイ酸塩の素材を使用しており、高い透明度と強度を誇っており、特に強度はプラスチックの数十倍と言われ、衝撃や傷に耐えることが可能である。
スマートフォンやタブレットに採用されており、2010年には世界の携帯電話のうち約20%、約2億台に採用されている。

Corning にとってはDow Corning の事業は今や戦略的事業ではなくなったとみられる。





EUの加盟国大使級会合は11月21日、レジ袋の使用削減策を加盟国に義務付けるEU法改正案を承認することで 満場一致で合意した。
欧州議会も原則合意しており、承認手続きは2015年春に完了する見通し。

地上のゴミや、世界の海に広がっている "plastic soup" を減らすのが目的。

http://plasticsoupfoundation.org/en/


各国は、①レジ袋の有料化か、②一人当たり年間使用量を2019年末までに90枚以下、2025年12月までに40枚以下にする削減目標設定のいずれかを求められる。
有料化は2018年末までに実施する。

EU平均では2010年に1人当たり176枚のレジ袋を使用、その殆どはリサイクルされていない。

有料化により既に90%も削減した国もあり、デンマークは1人当たり年間4枚しか使用していない。しかし、ポーランドやポルトガルはその100倍も使っている。

しかし、EU当局は削減目標設定の場合は実際の実行に困難が生じるとして批判的である。
レジ袋使用削減の努力は支持するが、各政府は法律の実施が可能でなければならないとしている。
実施できなければ、EUは裁判所に訴え、罰金を課すことにもなりかねないと示唆した。

プラスチック業界団体も、有料化には賛成だが、国によりルールが異なると、EU内の取引に支障を生じるとしている。

 


これまでのEUでのレジ袋削減の動き

  2007/3/3 ニュースのその後 - レジ袋税  アイルランド、スコットランド
  2009/9/28 アイルランド、レジ袋税を2倍に
  2011/1/8 イタリア、レジ袋禁止
  2011/5/28 EU、レジ袋禁止を検討
  2013/11/9 EU、レジ袋を2年以内に8割減


 

 

川崎重工は11月19日、産業用では初となる純国産独自技術の水素液化システムを開発し、水素液化試験を開始すると発表した。

水素液化システムは、播磨工場内の水素技術実証センターに設置され、1日あたり燃料電池車約1千台分にあたる約5トンの水素を液化する能力を有している。

本システムは、同社が独自技術で開発したもので、圧縮した水素ガスを冷凍サイクルで冷やされた水素と液化機内で熱交換しながら冷却することで液化水素を製造する。

開発後の試運転において液化水素の製造が確認され、本格的な性能評価試験へと移行する。

 



日本では岩谷産業が2006年に関西電力グループと共同で設立したハイドロエッジ に、また2009年に岩谷瓦斯・千葉工場内に、液化水素製造プラントを稼動させている。同社は液化窒素の冷熱を利用して、水素を液化している。


水素の供給地と需要地に一定の距離がある場合には、水素を高圧ガスの形で運搬する方法が広く活用されているが、
水素はマイナス 253で液化し(天然ガスはマイナス162℃)体積もガスに比べて約800分の1となり、利用の際は蒸発させるだけで高純度の水素ガスが得られることから、液化水素の形で輸送・貯蔵すると、通常のガスや圧縮ガスに比べて効率が高くなる。

川崎重工では、水素の大量導入を支える水素の製造、輸送・貯蔵および利用までの一貫したサプライチェーン構築に向けて、必要となるインフラ技術の開発・製品化に取り組んでい る。

具体的には、水素液化システムのほか、液化水素運搬船や液化水素貯蔵タンク、さらには水素燃料に対応したガスタービンなどの開発および製品化を推進してい る。


ーーー

2014年4月に「エネルギー基本計画」が閣議決定され、将来は電気、熱に加え、水素を二次エネルギーの中心的役割を担う存在と位置づけ、"水素社会" 実現に向けた取り組みを加速させるとしている。

2014年6月には経産省が「水素・燃料電池戦略ロードマップ」を公表し、水素の製造・輸送・貯蔵や利用の各段階で、目指すべき目標とそのための産学官の取り組みを提示している。

http://www.meti.go.jp/press/2014/06/20140624004/20140624004-2.pdf

 

トヨタは11月18日、セダンタイプの新型燃料電池自動車(FCV)「MIRAI(ミライ)」を12月15日より発売すると発表した。

水素を高圧で3分で充填でき、1回の充填で700kmの走行が可能。
大容量外部電源供給システムを備えており、停電や災害などの非常時に家庭での電源として使用できる。

ーーー

川崎重工は豪州で産出する低品位石炭「褐炭」から液化水素を作り、タンカーで日本へ運ぶプロジェクトを進めている。

豪州のLatrobe Valleyは世界最大規模の褐炭 の産地で、石炭のエネルギー量は日本の一次エネルギーの40 年分に相当する。
採掘地に隣接する石炭火力発電所で燃料として使っているが、褐炭は水分の含有量が多く、 発電効率は約28%にとどまる。(日本の石炭火力発電所の平均が40%を超える。)

また積み上げておくと自然発火するため、採掘してから18時間以内にコンベヤーで発電所に運び込んで燃やしている。CO2排出量も非常に多い。

 

CO2排出量を減らしたい豪州政府と、液化水素を志向する川崎重工と思惑が一致し、褐炭から液化水素を生成し、日本へ運ぶプロジェクトが動き出した。

Latrobe Valleyで褐炭をガス化する。

その工程で発生する水素とCO2のうち、CO2 はCCS(Carbon Capture and Storage)で海底の空洞へ押し込む。

この空洞は、かつて天然ガスを採掘し枯渇した跡地で、既に豪州政府は2012年2月に約80億円を投じて、CCSの検証も開始している。
この近海は数あるCCS候補地の中でも最も実用化しやすい適地といわれている。

日本では日揮が苫小牧に日本初のCCS トータルシステムの実証設備を建設中。
  2013/8/27   日揮、日本初の二酸化炭素の分離回収・貯留実証試験事業にBASFのガス精製技術を導入

・水素は、超低温に冷やして液化し、タンカーで日本へ運ぶ。

現地の安い電力を利用して水の電気分解を行い、その水素も利用する構想もある。


ーーー

水素輸送には液化によるほか、有機ハイドライドによる水素輸送もある。

千代田化工の「大規模水素貯蔵・輸送システム」で、 海外の油田等で出る水素をトルエンに反応させてメチルシクロヘキサンとし、常温で日本に輸送し、日本でこれから水素を取り出すもの。これまでメチルシクロヘキサンから水素を取り出すのは不可能とされていたが、同社が開発した触媒がこれを可能にした。

同社は2013年5月31日、子安オフィス・リサーチパークにて実施していた有機ケミカルハイドライド法による「大規模水素貯蔵・輸送システム」の実証試験で所期の性能を確認することができた と発表した。

トルエンに水素を固定(水素化反応)させ、メチルシクロヘキサン(常温常圧の液体)に変換して貯蔵・輸送し、同社が開発した脱水素触媒を用いて、このメチルシクロヘキサンから再び水素として取り出し(脱水素反応)、供給するシステムを対象としたもの。

 (海外油田等) 3H2+C6H5CH3→ C6H11CH3
   
↓ (常温輸送)

 
(川崎)     C6H11CH33H2+C6H5CH3  

メチルシクロヘキサンの場合、LNGや液化水素などのような極低温技術を必要とせず、通常の石油タンクやタンカーを利用できる 。

一連の工程を「大規模水素貯蔵・輸送システム」として確立することで、これまで困難とされてきた水素の大量輸送や長期貯蔵が、商業ベースで可能であることを実証できた。

同社は「SPERA水素」(ラテン語で「希望せよ」という意味)の愛称で水素供給事業実現を目指す。

2013/10/29    水素エネルギーフロンティア国家戦略特区





11月19日付け 人民日報日本語版ホームページが7ページにわたり、高倉健 特集を掲載

    

<企画>中国と縁の深かった高倉健さんが死去 各界から悲しみの声










 

中国人民銀行(中央銀行)は11月21日、予想外の利下げを発表した。22日から実施する。

主要政策金利の引き下げは2年4ヶ月ぶりで、借り入れコストを押し下げ、減速する経済を支援する。
人民銀行は利下げの目標を中小零細企業の資金調達難の解決としている。

1年物貸出金利は40 basis points 引き下げて 5.60%に、1年物預金金利は25 basis points 引き下げて 2.75%とする。

預金金利は上限を基準の1.1倍から1.2倍に引き上げたため、上限はこれまでの3.30%のままとなる。

貸出金利については、2013年7月に撤廃した。銀行の裁量で貸出金利を決められるようにし、自由化へ向け一歩を踏み出している
但し、住宅ローンについては下限制限があり、1軒目の場合、基準金利の0.7倍となっている。基準金利を下げれば、住宅ローン金利の低下につながる。

 

貸出金利

 

預金金利

  基準金利

下限

基準金利

上限

2012/7 6.00%

基準 x 0.7

4.20% 3.00%

基準 x 1.1

3.30%
2013/7 6.00%

撤廃

     
2014/11 5.60%   2.75% 基準 x 1.2 3.30%


インドの国営ガス公社 GAILは11月13日、 トルクメニスタン、アフガニスタン、パキスタンの国営ガス会社と共同で、トルクメニスタンからインドまでの1800kmの天然ガスパイプラインを建設・運営する会社 TAPI Pipeline Company Limited を設立したと発表した。

4カ国の頭文字をとった TAPI Pipeline Companyは英王室属領のマン島で特別目的事業体(Special Purpose Vehicle)として設立された。
トルクメニスタンの
Turkmengas、アフガニスタンのAfghan Gas Enterprise、パキスタンのInter State Gas Systems (Private) Limited とインドのGAIL が均等出資する。

インド側ではIndian Oil Corp が参加を希望し、GAILとの折半出資を求めている。

当初はバングラデシュも参加の意向であったが、距離が遠いことから経済性がないとして断った。
しかし最近は今後のガス供給不足予想から、参加を検討しているとされる。

TAPI pipeline はトルクメニスタンの南東部の Galkynysh (旧称Yolotan Osman )ガス田の年間330億m3(日量90百万m3)の天然ガスを30年間にわたり、トルクメニスタンからアフガニスタン、パキスタン、インドに輸出する。

Galkynyshガス田は、埋蔵量が13.1~21.2兆m3あるといわれ、イランのサウスパース・ガス田/カタール・ノースフィールド・ガス田の合計51兆m3に次ぎ、世界第2位である。

第1ガス処理設備は中国のCNPCが建設を請け負うとともに、生産量全量(年間100億m3)を購入し、中国に輸送する。
中国では
「復活」ガス田と称している。
2013年9月に
習近平主席が竣工・生産開始式典に参列した。

韓国の現代エンジニアリングとLG International も2013年10月にガス処理設備を完成させている。

パキスタンとの国境のインドのFazilka でインド国内のパイプラインに接続する。

インドとパキスタンが日量各38百万m3、アフガニスタンが14百万m3を購入する。当面はアフガニスタンの引取は1.5~4百万m3で、残りはインドとパキスタンが均等に引き取る。

トルクメニスタンは天然ガスの確認埋蔵量世界4位で、輸出市場を南東部に拡大する。輸入3国にとっては燃料の新しいソースとなる。

当初はTAPパイプライン計画(Turkmenistan-Afghanistan-Pakistan Pipeline)と称されていたが、インド政府が2006年5月に正式に参加することを閣議決定、それ以降はTAPIと改称した。

パキスタンとインドは国境問題で争っており、紛争国の間を通るこのパイプラインは 'Peace Pipeline' とも呼ばれる。

アジア開発銀行が当初からバックアップしており、2013年11月にTransaction advisorに指名されている。

アジア開銀はこの計画の技術のFeasibility Study のため、英国のエンジニアリング会社 Penspen を選んだ。
6ヶ月かけて、ルートのレビュー、コンプレッサーステーションの場所と大きさ、コスト予想、開発戦略とスケデュール作成などを行う。

 

ーーー

インドには他に、イランからパキスタン経由で天然ガスを輸入する IPI (Iran-Pakistan-India) Pipeline 計画があるが、パキスタン側の工事が全く進んでいない。

米国はIPI計画には反対しており、代替案としてのTAPI を支持している。

2013/3/16 イランーパキスタン 天然ガスパイプライン起工式


このほか、
今回ロシアから中国への第二のパイプラインとして建設されるAltai Pipelineを拡張して、ロシアからインドへガスを送るパイプライン建設の交渉も行われているとされる。




 

既報のとおり、韓国と中国は11月10日にAPEC首脳会議の開かれていた北京でFTA交渉が実質的に妥結したと発表した。

2014/11/11 中韓FTA、首脳会談で妥結 

その韓国と中国がG20首脳会議参加のための訪豪中に新たなFTA交渉を妥結させた。

韓国の朴大統領は11月15日、ニュージーランドのJohn Key首相と記者会見を行ない、両国間のFTA交渉妥結を宣言した。
韓国は豪州、カナダに続き、11月の中国とニュージーランドとのFTA締結で、GDP基準で世界の73.45%に拡大した。

また、中国の習近平国家主席は11月17日、オーストラリアのTony Abbott 首相と会談し、両国の自由貿易協定(FTA)の妥結に合意したと発表、同日午後に署名した。

豪州とニュージーランドの日中韓とのFTA締結は下記の通りで、2013年9月に就任した豪州の Abbott 首相は1年ちょっとの間に韓国、日本、中国のアジア3強とのFTAを決めたこととなる。

  NZ
日本 2014年7月8日調印  
中国 2014/11/17調印 2008/10/1 発効
韓国 2013/12 実質合意 2014/11/15妥結

豪州の貿易・投資相は11月19日、「日中韓でバランスをとった」と説明した。「豪州の酪農業者は韓国では多くの成果を得られないが中国には大きな機会があると分かっていた」とし、3カ国との交渉をほぼ同時に進めることで、国内生産者の利益を調整できたと強調した。
 

お、豪州訪問中のインドのModi首相は11月18日、Abbott 首相と会談し、EPA交渉を加速させることで一致した。

ーーー

韓国・ニュージーランドFTA

両国のFTA交渉は2009年に開始されたが、韓国側がニュージーランドの農産物の国内事業者への影響を懸念し、慎重だった。

中国とニュージーランドのFTAは2008年10月に発効したが、最近の統計では、ニュージーランドの酪農品の中国向け輸出は2008年以降10倍以上増えている。

朴大統領がFTAを重視するのは通商政策だけでなく安保外交に活用しようとする意図も込められているといわれる。

今回妥結した内容は以下の通り。

関税については、下記の通り。

NZ 7年以内にニュージーランドの関税100%撤廃
輸入額基準で92%に当たる2013品目に対し関税を即時撤廃


タイヤ(関税5~12.5%)、洗濯機(5%)などの関税はすぐに撤廃
自動車部品(5%)など488品目と冷蔵庫(5%)、建設重装備(5%)は3年以内に撤廃

韓国 20年以内にニュージーランド製品 96.5%に対する韓国の関税撤廃

アルミニウム、羊皮、ワインなど7160品目、輸入額基準で48.3%に対し即時関税を撤廃

基礎化粧品、製材木、ポンプ部品、フォークリフト、鋳鋼、焼酎、衣類など960品目は3年以内に関税撤廃

敏感品目のコメ、天然蜜、リンゴ・ナシなどの果実類、トウガラシ・ニンニクなど農産物199品目はFTA適用対象から除外

乳製品については、チーズは7年or12年、バターは10年、育児用粉ミルクは13年かけて撤廃、粉乳は削減対象外。
肉製品については、牛肉は15年、羊肉は10年かけて撤廃で、牛肉は15年間特別セーフガードを適用。

NZの生産者団体であるNZ農業者連盟は、「韓国とのFTAは、何もないよりまし」という冷ややかな声明を発表している。

両国はFTA発効後、関税縮小により輸入国の産業に深刻な影響が現れたりその恐れがある場合には関税引き下げを中止したり関税を引き上げたりできるセーフガードを発動できる。

開城工業団地生産製品を韓国製と認定するかどうかは域外加工地域委員会を設立し別途協議する。
 

投資については、ニュージーランドは韓国の投資家に対する事前投資審査基準金額を、既存のFTAではに設定してきた2000万NZドル以下から5000万NZドルに引き上げた。

また、WTOの政府調達協定で開放していないBOT(
Build - Operate - Transfer:民間投資家が社会基盤施設を建設、一定期間運営して政府に寄付する収益型民間資本事業)を韓国に開放することにした。

 ワーキングホリデーの年間定員をこれまでの1800人から3000人に拡大し、年間200人の一時雇用入国割当、年間50人の農畜産業訓練ビザを確保した。

 ーーー

中国・豪州FTA

中・豪両国は2005年に交渉入りした。

豪州の農産物や鉱物資源を中国に、中国の工業製品を豪州に輸出する際の関税を下げることや、中国企業が豪州へ投資しやすくなることへの効果が期待された。
一方で、中国の安い労働力が豪州に流入することや、中国の農業が打撃を受けることへの国内の警戒などで、交渉が長引いていた。

ニュージーランドも中国とFTA を締結しているが、最近の統計では、ニュージーランドの酪農品の中国向け輸出は2008年以降10倍以上増えていることが豪州に影響を与えた。
 

豪州の対中輸出はGDPの5.3%を占め、先進国で最も中国への依存度の高い国となっている。両国間の貿易額は2013年に1510億豪ドルに達した。

アボット豪首相は会談後の声明で、「歴史的協定だ」と強調。国家主席も連邦議会で演説し、「両国関係を強化できた」と成果を誇示した。


今回妥結した内容は
以下の通り。

豪州 輸入品の85%以上が直ちに関税撤廃、4年で93%を撤廃
 
中国 最終的に95%が関税撤廃

乳製品:4~11年で撤廃(乳幼児用粉ミルクは4年内に撤廃)
牛肉:9年内に撤廃、羊肉:8年で撤廃
ワイン:4年内に撤廃
園芸作物:4年内に撤廃
海産物(アワビ、ロブスター、マグロなど):4年内撤廃
原料炭:直ちに撤廃、燃料炭:2年内撤廃
鉱物資源(銅、アルミナ、ニッケル、亜鉛、アルミ、等):直ちに撤廃


豪州のサービス分野の中国向け輸出は2013年に70億豪ドルとなっているが、中国はこれまでに他国に与えた待遇のうちの最恵の待遇を認めた。

法務、金融、教育、通信、旅行、設計建設、健康・高齢者ケア、採掘、製造サービス、建設・都市設計、等々の事業の中国での事業での進出が著しく改善される。

以上の詳細:http://www.dfat.gov.au/fta/chafta/fact-sheets/key-outcomes.html

中豪FTAの特長として、3年内のレビューなどにより、更に自由化を進め、市場アクセスを拡大するメカニズムが折り込まれている。

相互の投資を拡大、多様化する投資条項が含まれており、中国政府は10年間で合計1兆2500億米ドルの投資を予想している。

豪州政府が自国への外国投資について国益にかなうかどうかを審査する手続き(Foreign Investment Review)の緩和でも合意、中国民間企業が無審査で投資できる基準額を現在の2億4800万豪ドルから、日米企業対象と同等の10億7800万豪ドルに引き上げる。
(中国が求めていた国有企業の対豪投資にかかる審査基準の緩和は盛り込まなかった。)

なお、ISDS(Investor State Dispute Settlement:投資家対国家紛争仲裁制度)条項が入っている。
これは、投資家が相手国政府の政策により被害を受けた際、当該政府を国際投資紛争センターに提訴できる制度。



人民日報は中国の一般市民への影響を以下の通り報じている。

粉ミルク:豪州からの輸入関税が4年以内に撤廃されるため、粉ミルクを買うためにわざわざ香港に行く必要はなくなる。

観光:渡航ビザの手続きがより簡略化され便利になる。

ショッピング:10億元の関税が免除されることになり、バッグや靴もよりお手ごろな値段で手に入れられるようになる。

飲食:オージービーフやオーストラリアの魚介類が手軽に食べられる。
   乳製品、肉製品、アルコール類、鉱物製品、農産物も中国市場に入りやすくなる。

投資:豪州の鉱物投資家が中国で投資したり、中国の投資家がオーストラリアで農場主になることができる。
   豪州の大草原での暮らしが待っている。

生活、シルバーサービス:豪州の病院や老人ホーム、ホテル、保険会社などが中国で支店を開設する。
   中国人はより低価格で高品質のオーストラリア式サービスを受けられるようになる。

ーーー

中国がこれまでに締結し、発効済みのFTAの相手国は以下の通り。

 1 シンガポール   2004/11 発効
 2 チリ   2006/10/1 発効
 3 パキスタン   2007/7 発効
 ニュージーランド   2008/10/1 発効
5  ASEAN   2010/1/20 発効
 ペルー   2010/3 発効
 コスタリカ   2011/8/1 発効
8 アイスランド   2014/7/1 発効
9 スイス   2014/7/1発効
    2014/7/10   中国、アイスランド、スイスとのFTAが発効


今月に入り、韓国、豪州とのFTAをまとめた。 

 
 


東レは11月17日、The Boeing Companyとの間で、新型機「777X」向けに炭素繊維"トレカ®"プリプレグを供給することに基本合意したと発表した。

「777X」は、現行「777」の後継機として2020年に初号機を納入する計画で開発を進める大型双発旅客機。
ボーイングはワシントン州のエバレット工場敷地内に炭素繊維複合材料製主翼を製造する専用工場を建設中で、その主翼材料に"トレカ®"プリプレグの採用が決定した。

年内合意を目指し、2005年11月締結の「787」を対象とした包括供給契約の延長交渉を行うが、下記を折り込む。
 ・「777X」を供給対象に含める。
 ・契約期間をさらに10年以上延長する。
 ・設計、材料、部品生産に跨がる広範な領域で両社が共同開発を進める。

東レは2006年4月にBoeing のB787向け炭素繊維複合材料について、2021年までの16年間(5年間のオプションを含む)に亘る長期供給に関する包括的正式契約を締結した。

東レの高強度炭素繊維"トレカ"は、1970年代半ばに初めてボーイング社の二次構造材用として採用され、1992年からは高靭性樹脂を組み合わせた"トレカ"プリプレグが、B777の尾翼やフロアビームなど重要な一次構造材として独占的に採用されてきた。

東レは2004年5月に、B787の主翼と尾翼を対象として、炭素繊維UD (一方向) プリプレグの長期供給基本契約を締結したが、それに加え、胴体向けに炭素繊維クロス(織物)プリプレグの追加受注を獲得するとともに、供給条件の詳細を含めた包括的な正式契約を両社間で締結した。

東レは本契約期間内のプリプレグ受注額を、B787が月産10機生産されるという前提で、総額60億ドルに達すると見通しており、今後さらに、これを上回る追加受注も期待されるとしていた。

今後の「787」、「777X」両プログラム向けの契約期間における東レグループの供給総額は、1兆円を超える見込み。

「787」については、生産機数を現行の月産10機から、2016年に月産12機、更に2019年末までには月産14機まで引き上げることが計画されており、また今後は「787」ファミリーの派生型(モデルミックス)の導入により複合材料需要増も見込まれる。 

東レでは、"トレカ®"プリプレグを、日本の愛媛工場と石川工場、ワシントン州タコマ市のToray Composites (America), Inc.で生産している。

Toray Composites (America), Inc.では現在、「787」月産12機への増産に対応するため、2016年1月稼働開始予定で"トレカ®"プリプレグ生産系列の増設工事を進めている。

また、今回の受注拡大を受け、2014年2月に米国サウスカロライナ州スパータンバーク郡に取得した事業用地での原糸(プリカーサ)から炭素繊維"トレカ®"および"トレカ®"プリプレグまでの一貫生産設備の新設計画を近く具体化する。

石川工場では、2009年7月に稼働したプリプレグの第1系列生産設備で、ボーイング787型機向け及びスポーツ、産業用途向けに "トレカ®"プリプレグを生産しているが、第2系列生産設備が11月10日より稼働開始した。

今回の第2系列は、IT機器の筐体や自動車の外板(ボンネットやルーフ等)など、品質の均一さや外観の良さが求められる産業用途高付加価値プリプレグの需要増に対応するための能力増強であり、あわせて増産効果によるコスト競争力強化も狙いとしてい る。
787型機向けのプリプレグ生産にも対応できる仕様となっており、今後の需要動向にあわせた柔軟な用途対応を可能にしている。

ーーー

東レは炭素繊維そのものは、日本・米国・フランス・韓国の世界4極で生産しているが、2012年3月に、4拠点に総額約450億円を投じて合計年産能力6,000トンの生産設備を導入し、2014年から2015年にかけて順次生産を開始すると発表した。

全体の生産能力は2015年3月に年産27,100トンまで拡大し、世界各地の需要家に高品質・高品位の当社炭素繊維を安定的に供給する体制が拡充される。

  2012/3 2013/1 2015/3

日本

東レ(愛媛工場) 7,300 +1,000 +6,000

フランス

SOFICAR 5,200

アメリカ

Toray Carbon Fibers (America) 5.400
韓国 Toray Advanced Materials Korea (亀尾第3工場)   2,200

グループ計

17,900 21,100 27,100

これとは別に、東レは2013年9月、米国のラージトウ炭素繊維メーカーZoltek Companies, Inc.を総額約584百万$で買収することに合意したと発表した。

風力発電関連用途や自動車構造体用途等のより汎用性の高い産業分野での事業展開が可能となり、新たな成長の機会を得る。

2013/10/2 東レ、米国炭素繊維メーカーを買収 

ーーー

東レは11月19日、トヨタ自動車の燃料電池車「ミライ」に同社の炭素繊維が採用されたと発表した。

1分で成形できる炭素繊維樹脂シートをトヨタ自動車と共同開発し、ミライのフロア部品に採用された。

ーーー

東レは2014年2月17日に、中期経営課題 "プロジェクトAP-G 2016" を発表した。

課題・改革の一環として、「先端材料事業の拡大」、「世界ナンバーOne事業の拡大・強化」、および「海外事業の戦略的拡大」を推進しており、炭素繊維複合材料事業は、その中核となる戦略的拡大事業と位置づけている。

航空宇宙分野での飛躍的な事業拡大を計画しており、今回のボーイング社との契約延長はその計画に沿ったもので、今後とも、ボーイング社の増産計画に合わせて材料安定供給体制を拡充し、事業構造の高度化と収益拡大を進める。

2013年度(2014/3月期)の売上高の内訳は下記の通り。

  売上高 比率 前年比伸び率
航空宇宙 572億円 50% 88%
スポーツ 142億円 13% 16%
一般産業 419億円 37% 20%
合計 1,133億円 100% 46%

 



 

米司法省は11月14日、ベアリングの価格調整に関与したとして連邦大陪審が日本精工とジェイテクトの幹部社員を1人ずつ起訴した、と発表した。
一連の事件で、米国で刑事責任を問われたのは日本人45人を含む46人になった。

アイシン精機は11月14日、米国での自動車用エンジン部品販売で米独占禁止法に違反したことを認め、米司法省との間で罰金3580万ドルを支払う司法取引に合意したと発表した。

ーーー

古河電工は2011年9月29日、米国司法省との間で、自動車用ワイヤーハーネス係るカルテルに関して司法取引に合意した。

起訴事実を認め罰金200 百万米ドルを支払うとともに、社員3名が有罪を認め、禁固刑に服した。

FBIは2010年にデンソー、矢崎総業、東海理化にも立ち入り検査をしており、今後、決定がなされると想定された。

実際にはこれら各社に加え、次から次に多くの企業が司法取引に合意して罰金を払うとともに、社員が起訴されたり、司法取引で禁固刑・罰金刑に服した。

2014年に入っても摘発は止まらず、下記の各社が罰金を支払った。

・ 1月16日、小糸製作所が自動車用ランプ及び自動車HID ランプ用バラストの価格カルテルで有罪を認め、罰金5660万ドルの支払いに同意。

・ 2月3日、愛三工業が電子スロットルボディーの価格カルテルで有罪を認め、罰金686万ドルの支払いに同意 。

・ 2月13日、ブリヂストンが自動車の防振ゴム部品の価格カルテルで有罪を認め、罰金425百万ドルの支払いに同意 。

同社はマリーンホース事件で有罪となったが、本件について開示しなかったため、高額の罰金となった。

・ 4月23日、ショーワが パワーステアリング部品の価格カルテルで有罪を認め、罰金19.9百万ドルの支払いに同意。

8月19日、日本特殊陶業はスパークプラグやセンサーのカルテルでの有罪を認め、52.1百万ドルの罰金に同意。

・ 9月29日、豊田合成はホース、エアバッグ、ハンドルでのカルテルを認め、26百万ドルの罰金支払いに同意 。

・ 10月31日、日立金属は自動車用ブレーキホースでのカルテルを認め、125万ドルの罰金支払いに同意。

・ 11月13日、アイシン精機は可変バルブタイミング機構でのカルテルを認め、35.8百万ドルの罰金支払いに同意。

これらにより、自動車部品のカルテルで摘発された企業は31社に及び、罰金額は2,434百万ドルに達した。
このうち、外資系は3社のみで、残りは全て日本の企業である。

また、刑事責任を問われた個人は46名(うち外人は1名のみ)で、このうち、26名(うち外人1名)が禁固刑と罰金刑(殆ど全てが1人2万ドル)を受けている。

残りの20名は起訴された状態で、司法取引の最中か、若しくは日本に居たままで米国の処罰を避けているかのどちらかかと思われる。

ーーー

自動車部品カルテルが摘発される以前は、カルテルで刑事罰を受けた日本人は2人だけであった。

社名 事件 社員 禁固刑 罰金
ダイセル ソルビン酸価格カルテル H. H. 3ヶ月 2万ドル
ブリヂストン マリンホース国際カルテル M. H. 2年 8万ドル

ダイセルの場合、チッソの提出した詳細情報のために役員とともに若い担当者が起訴されることとなった。
役員は日本から出ず、時効中断のままとなっているが、担当者の場合は今後海外に行けないのでは仕事にならないため、自ら渡米し、服役を選んだ。

米国司法省は、独禁法を有効に施行するという司法省の能力を示すものとして、「日本人で最初に服役」と誇らしげにこれを発表している。
自ら服役を選んだことを評価し、刑期や扱いについて特別の扱いをしている。

http://www.usdoj.gov/opa/pr/2004/August/04_at_543.htm

ブリヂストンのマリンホース事件の場合は、本人が談合現場で逮捕されたため、刑事罰を避けられなかった。

2008/12/12 マリンホース国際カルテル事件で日本人に有罪判決

これ以外にも、これまで多くの日本人が訴追されているが、これまでは、日本在住であれば米国から見ると国外逃亡で時効中断となり、刑事罰を避けてきた。

米国はもちろん、他の国(の多く)に入国しても、犯罪人引渡し条約で米国に引き渡される。
 
   
2014/5/8  マリーンホース国際カルテルでのイタリア人被告の米国への引渡し

但し日本の場合は1980年の条約で、両国でいずれも処罰の対象となり両国の法律で死刑、無期懲役、1年以上の拘禁刑に当たる罪の場合は引渡しが可能となっているが、独禁法違反の場合には日本政府は該当せずとし、引渡しは行われなかった。

2009年改正により、独禁法の最高が懲役5年となったため、執行猶予の対象外となり、条約上の引渡し対象となる。

条約第5条では、「被請求国は、自国民を引渡す義務を負わない。ただし、被請求国は、その裁量により自国民を引き渡すことができる」となっており、日本政府の判断で引渡しを行うかどうかを決めることとなる。

今回、自動車部品カルテルで今までに25名の日本人が禁固刑を受け、合計27名となった。上記の前例があるにも係わらず、自動車部品カルテルで急に多数の日本人が禁固刑を受けたのは驚きである。

米司法当局が強硬で、企業としての司法取引で個人の処罰を条件にしているのかも分からない。

 

自動車部品カルテルの米国での摘発状況は下記の通り。

  百万$  決定日   個人 禁固刑 決定日
古河電工 200 2011/9   I.F. 1年+1日 2011/10/24
H.N. 15か月 2011/10/13
T.U. 18か月 2011/11/10
矢崎総業 470 2012/1   T. H. 2年 2012/1/30
R. K. 2年 2012/3/26
S. O. 15か月
H. T. 15か月
T. S. 14か月 2012/8/16
K. K. 14か月 2012/9/26
デンソー 78 2012/1   N. I. 1年+1日 2012/3/26
M. H. 14か月 2012/4/26
Y. S. 16か月 2013/5/21
H. W. 15か月
S. H. 1年+1日 2014/6/30
K.F. 1年+1日 2014/2/20
ジーエスエレテック 2.75 2012/4   S.O. 13ヶ月 2014/7/31
フジクラ 20 2012/4   R.F. 起訴段階 2013/9/19
T.N.
Autoliv Inc
(Stockholm)
14.5 2012/6   T.M.
日本人
1年+1日 2013/7/16
TRW Deutschland
(米社独子会社)
5.1 2012/7        
日本精機 1 2012/8        
東海理化 17.7 2012/10   H.H. 起訴段階 2014/5/22
ダイヤモンド電機 19 2013/7   S.I. 16ヶ月 2014/1/31
T.I. 13ヶ月
パナソニック 45.8 2013/7   S.K. 起訴段階 2013/9/24
日立オートモティブシステムズ 195 2013/9/26   T.T. 起訴段階 2014/9/18
K.F.
K.T
T.I.
ジェイテクト 103.27 M.I. 起訴段階 2014/11/13
ミツバ 135      
三菱電機 190 A.U. 起訴段階 2014/9/18
M.K. 
H.S.
三菱重工 14.5      
日本精工(NSK) 68.2 H.H. 起訴段階 2014/11/13
ティラド(T.RAD) 13.75      
ヴァレオジャパン
(仏Valeoの子会社)
13.6      
山下ゴム 11 H. Y. 1年+1日 2012/11/16 
タカタ 71.3  2013/10/9   G.W.
米国人
14か月 2013/9/26
Y.U. 19 ヶ月 2013/11/21
S.I. 16ヶ月
Y.F.   14ヶ月
G.N. 起訴段階 2014/6/5
東洋ゴム 120.0  2013/11/26   T.K. 1年+1日 2013/9/26
M. H. 起訴段階 2013/1121
K. N.
スタンレー電気 1.44  2013/11/27        
小糸製作所 56.6  2014/1/16        
愛三工業 6.86  2014/2/2        
ブリヂストン 425.0  2014/2/13   Y.T. 起訴段階 2014/4/15
Y.R.
I.Y.
Y.S. 18ヶ月 2014/4/16
ショーワ 19.9  2014/4/23   A.W. 起訴段階 2014/10/15
日本特殊陶業 52.1  2014/8/19        
豊田合成 26  2014/9/29        
日立金属 1.25  2014/10/31        
アイシン精機 35.8  2014/11/13        
累計(31社)  2434.42     46名 罰金
各2万ドル
 


韓国公正取引委員会は11月16日、1998年から2012年にかけてベアリング製品の販売をめぐり価格カルテルを結んでいたとして、日本やドイツ系メーカーに計778億ウォン(約82億円)の課徴金を科し、検察に告発する方針を固めたと発表した。

韓国公取委によると、日本精工などはアジアの国別にベアリング価格を談合する「アジア研究会」と称するカルテル組織をつくり、2011年7月まで東京や大阪で57回の会合を開き、国別の価格つり上げ目標額を決めていた。

韓国についても代理店経由で販売するベアリングの値上げ率を談合し、そうして決められた値上げ率は韓国子会社が韓国での販売価格に反映した。その過程でドイツのShaefflerの韓国子会社やHanwhaも談合に加担した。

これら企業からベアリングの納品を受けた企業は、サムスン、LG、ポスコ、現代製鉄など大企業から中小企業に及び、いずれも談合による被害を受けた。公取委関係者は「今回談合が摘発された企業の韓国ベアリング市場でのシェアは80%を占める」と指摘した。

報道では、今回摘発されたベアリング国際談合は、2011年にある日本メーカーによる自主申告で明らかになったとされている。

韓国公取委の発表は以下の通り。

1)市販用ベアリングのカルテルについては5社に課徴金624億ウォンが課される。

日本精工、ジェイテクト、不二越の日本メーカー3社は韓国で1998年から14年間、市販用ベアリングの価格カルテルを行った。
カルテルにはドイツ大手Shaefflerの韓国法人や、韓国のHanwhaも加わった。
5社によるカルテルで14年間に市販用ベアリング価格が80~100%上昇した。

2)鉄鋼設備用ベアリングのカルテルを結んだ日本精工とジェイテクトの2社には課徴金68億ウォン が課される。

3)小型直接納入用ベアリングのカルテルでは日本精工とミネベアの2社に86億ウォンの課徴金が課される。


これをまとめると、下記の通りで、課徴金合計は
778億ウォン(約82億円)となるが、各社別の課徴金の額は記載されていない。

  日本精工 ジェイテクト 不二越 ミネベア Shaeffler Hanwha 合計
市販用   624億ウォン
鉄鋼設備用         68億ウォン
小型直接納入用         86億ウォン


これに対し、日本の各社は以下の通り発表した。

ジェイテクト:課徴金109.1億ウォンを賦課されたが、調査への協力等により、減額され、刑事告発は一部免除される見込み。

不二越:課徴金 36.51億ウォンを課すとの発表があったが、正式な通知を受け取っていない。

ミネベア:課徴金49.12億ウォンを課すとの発表があった。

韓国紙は、日本精工は最大の330億ウォンの課徴金を課せられ、Shaefflerの韓国子会社は16.48 億ウォンを課せられたとしている。

しかし日本精工は11月17日、下記の内容の声明を発表した。

11月14日、過去の韓国での軸受の取引の一部に関して、韓国公正取引委員会から法律に違反する行為があったとする決定を受けた。

当社及び当社グループは、社内調査により判明した事実を受け、同委員会に対して、調査への全面的な協力を行った結果、是正命令、課徴金及び刑事告発を免除された。

日本精工、ジェイテクトの発表から判断すると、今回の韓国公正取引委員会の発表は最終のものではなく、減免措置の前のものであると思われる。

また、「ベアリング国際談合は、2011年にある日本メーカーによる自主申告で明らかになった」という報道の通りなら、日本精工による自主申告と思われる。

ーーー

ベアリングについては、本日の別記事の通り、米国で自動車部品カルテルの一部としてジェイテクトと日本精工が罰金を払 い、両社の役員が起訴されているほか、日本とEUでも摘発されている。

日本とEUではジェイテクトが課徴金の100%減免を受けている。

2012/4/23 東京地検、ベアリング大手4社をカルテル容疑で家宅捜索

2014/3/22 EU、ベアリングカルテルで制裁金

ーーー

韓国では2013年12月に自動車部品カルテルで3社に総額1146億6800万ウォン(約112億円)の罰金が課されている。

デンソー  630億6000万ウォン(約62億円)
Continental Automotive Electronics  459億9200万ウォン(約45億円)
Bosch     56億2800万ウォン(約6億円)




富士フイルムは11月4日、脳疾患や心臓疾患、腫瘍などの各種疾病の機能診断に役立つPET(陽電子放射断層撮影)検査用の放射性医薬品市場に参入すると発表した。


富士フイルムRI ファーマが約60億円を投資し、川崎と茨木に研究開発拠点を新設する。

  京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区 関西イノベーション国際戦略総合特区
研究開発拠点 神奈川県川崎市 大阪府茨木市
延床面積 約2,000m2 約2,000m2


富士フイルムRI ファーマは治療用放射性医薬品メーカーで、旧称 第一ラジオアイソトープ研究所。
1968年に第一製薬とMallinckrodt とのJVで設立、1988年に第一製薬の100%子会社となり、2006年10月に富士フィルムが買収した。

事業内容は、放射性・非放射性医薬品、および、放射性標識化合物の研究、開発、製造、販売、輸出、輸入。

PET検査は、18F(フッ素)などポジトロ ン(陽電子)を放出する核種を化合物に標識した放射性医薬品をヒトに投与して断層撮影する検査で、各種疾病の機能診断に役立つ。

アルツハイマー型認知症の診断精度向上には、放射性医薬品を用いたPET検査でアミロイドβを検出する手法が有効であると期待されている。

アルツハイマー型認知症の原因の一つとして、アミロイドβ というタンパク質の脳内への異常な蓄積が考えられており、この蓄積はアルツハイマー型認知症が発症する15~20年前から始まっていると解明されつつあ る。

これまで、富士フイルムRI ファーマでは、放射性医薬品分野ではSPECT検査領域で事業を展開してきたが、今後、アミロイドβ検出用薬剤の研究開発に取り組み、PET検査領域にも事業拡大を図 る。

SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)検査は、単一光子を放出する核種を化合物に標識した放射性医薬品をヒトに投与して断層撮影する検査で、PET検査同様、各種疾病の機能診断に役立 つ。

富士フイルムRI ファーマは10月14日、大手製薬企業のEli Lilly and Companyとの間で、同社のPET検査用放射性医薬品「florbetapir(18F)注射液)」の日本国内における共同開発契約を締結した。

「florbetapir」は脳内アミロイドβプラークを可視化できる放射性医薬品で 、すでに、米国、EU諸国およびスイスにて承認され、アルツハイマー型認知症が疑われる認知機能障害を有する患者に対して、診断的評価を補助する目的で使用されてい る。

今後、「florbetapir」の国内承認取得を目指し、また「florbetapir」を用いたPET検査による認知障害の診断精度向上に取り組んでい く。

なお、この共同開発契約とは別に、日本イーライリリーは、サイクロトロンを有する医療機関内にて「florbetapir(18F)注射液」の合成を目的に使用する放射性医薬品合成設備「NEPTIS® plug-01」の医療機器製造販売承認を2014年7月に取得している。

現在、富士フイルムグループでは、アルツハイマー型認知症の治療薬「T- 817MA」の開発を行っており、これは、アルツハイマー型認知症に対して高い治療効果が見込める革新的な薬と期待されている。

今後、治療薬「T-817MA」と診断薬「florbetapir」の開発を進め、アルツハイマー型認知症の診断、治療に貢献 するとともに、アルツハイマー型認知症の予防手法の開発にもつなげ、アルツハイマー型認知症の予防から診断・治療まで幅広くカバーすることを目指す。

ーーー

富士フイルムは、アンメットメディカルニーズが高い「がん」「アルツハイマー」および「感染症」を重点領域ととらえ、研究開発を積極的に推進して事業展開を図るとともに、革新的な医薬品の提供を通じて世界の医療の発展に貢献してい くとしている。

同社は11月11日、2014~2016年度の中期経営計画「VISION2016」を発表した。

6つの重点事業分野(ヘルスケア、高機能材料、ドキュメント、グラフィックシステム、光学デバイス、デジタルイメージング)の中でも、高い成長が期待できる、ヘルスケア、高機能材料、ドキュメントに経営資源の集中投入を行い、市場ニーズにあった良質でコストパフォーマンスの高い製品を提供し、市場を拡大していく。

ヘルスケア分野では大幅な成長を実現するとしており、2016年度売上目標を 4,400億円とした。

・メディカルシステム
  成長領域である、医療IT、内視鏡、超音波診断装置で、年率10%の成長を実現。
  X線画像診断装置やX線フィルムは、コストダウンを図るとともに、新興国での売上増を図る。
  事業全体で、営業利益率10%を達成する。

・医薬品
  バイオ医薬品受託製造事業が牽引し、売上を拡大。
  新薬開発を加速。

・ライフサイエンス
  同社の技術を生かし、差別化した機能性製品のラインアップを充実させ、売上増加。

 

参考:

  2006/11/2 富士フイルム、超音波画像診断分野に参入  
  2008/2/19 富士フイルム、富山化学を買収、総合ヘルスケア企業を目指す  
  2010/2/22 富士フイルム 医薬品開発・販売に本格参入  
  2010/9/3 富士フイルム、ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングと資本提携
    2014年10月、新株予約権の全てを年内に行使することを決定、
    持株比率は50.33%になり、連結子会社となる。
 
  2011/2/28 富士フイルム、米メルクからバイオ医薬事業買収  
  2011/8/2 富士フィルム、ジェネリック医薬品のDr. Reddy's Laboratories と業務提携
  2011/12/21 富士フイルム 超音波診断装置の大手 SonoSite, Inc.の買収合意
  2014/8/11 富士フイルムのインフル エンザ治験薬、エボラ出血熱治療に有望か
  2014/8/13 WHO、エボラ出血熱治療で未承認薬の使用容認
  2014/9/27 富士フィルム、エボラ出血熱患者に「アビガン」提供
  2014/10/31 富士フィルム、ワクチン受託製造市場へ参入




Dow Chemical は11月12日、これまで進めてきた非戦略事業の売却目標を70億ドル~85億ドルに増やすと発表した。2016年央までに実施する。

Dow Chemical はこれまで、2015年までに45億ドル~60億ドルの非戦略事業、資産の売却を計画していた。

10月2日の売却計画の進行状況発表時に、3事業の売却を進めているとしていたが、今回、この一つの子会社Angus Chemical Companyを12.15億ドルでGolden Gate Capital に売却すると発表した。

ANGUS はニトロアルカン関連製品専従の世界唯一の企業で、1936年に最初の特許申請をして以来、ニトロアルカン関連製品を開発、製造している。
現在、ニトロメタン、ニトロエタン、1-ニトロプロパン、2-ニトロプロパンの4つのニトロアルカン製品を製造している。

残り2件は、水素化ほう素ナトリウム事業と、Dow AgroSciences部門に属する子会社のAgroFresh。

2014/10/6  Dow Chemical、非戦略事業の売却を進める 

今後も、株主価値を高めるため製品群の評価を続け、合弁会社についても出資比率の検討を行うとともに、事業戦略に合わない事業を売却するとしている。


この一環として、同社はKuwaitの
Petrochemical Industries Company (PIC) とのJVを再編し、出資比率を下げると発表した。2015年央にも完了させる。

対象となるのは、エチレングリコールのワールドリーダーである
MEGlobal と、Kuwaitの石化コンビナートのGreater EQUATEである。
 出資分のどれだけをどこに売るのかは明らかにしていない。


Dowは、売却により戦略的目的に資金を使えるとし、出資は減らすがJVには残留するため、低コスト製品を狙う戦略の一部であり続けるとしている。

1.MEGlobal

Dow Chemical PICは2004年にDowのMEG、PTA、PET事業をJV化した。ダウの "asset light" 戦略の適用第1号である。

両社は2つの50/50JVを設立した。

 (1) MEGlobal 

 MEG、DEGの製造販売で、ダウのカナダの2工場 (合計能力100万トン)を移管した。

Fort Saskatchewan EO/EG plant  340千トン
PrentissEO/EG plant  2基計     660千トン

他社製品の販売も行っており、現在は年間250万トンのEGを世界中で販売している。

 (2) Equipolymers (現在はMEGlobal の100%子会社となっている)

工場 PTA PET  
Schkopau, Germany   335千トン
 
No.1:160千トン
No.2:175千トン
Ottana, Italy (190千トン) (160千トン) 売却


イタリアの工場は2010年7
月、同地で発電所と用役工場を運営しているOttana Energia とタイのIndoramaのJVに売却した。

2.Greater EQUATE

1995年にダウ(当時のUCC)が45%、PICが45%出資のJV、Equate Petrochemical Company を設立した。
その後、出資比率は若
干変更されている。(下記参照)

立地はKuwaitのShuaiba Industrial Areaで、当初の製品及び能力は下記の通り。

エチレン 65万トン   
LL/HDPE 45万トン  
EG 30万トン  
PP 10 万トン  PIC単独の事業、但しEquateが操業を受託
     

その後、両社は第2期計画Equate IIを実施した。これは3つの会社に分かれる。

社名 出資 製品
Kuwait Olefins Company Equateと同じ エチレン、PE、EG
Kuwait Aromatics Company PIC 80%
Qurain Petrochemicals 20%
ベンゼン、パラキシレン
The Kuwaiti Styrene Company Dow 42.5%
Kuwait Aromatics Company 57.5
%
EB、SM

実際にはEquate Petrochemical が全体を一体として運営している。

各社の出資関係と製品は下記の通り。

以上の通り、Dowが出資しているのは、Equate Petrochemical Company (42.5%)Kuwait Olefins (42.5%)、Kuwaiti Styrene(42.5%)である。

ーーー

DowとPetrochemical Industries Company (PIC) の間には大きな抗争があった。

Dowは2007年12月13日、Kuwait国営石化会社 PIC との間で50/50のグローバルな石化JV K-Dow Petrochemical を設立すると発表した。

DowのPE、PP、PC、エチレンアミン、エタノールアミンなどの事業を移管するもので、Dowは事業売却額マイナス出資で75億ドル、配当15億ドルで、合計90億ドル(税引後では70億ドル)を受け取ることとなっていた。

しかし、2009年1月1日のスタートを目前にして、2008年12月28日、クウェートの最高石油評議会がK-Dow Petrochemicals 設立承認を取り消し、破談となった。

この問題は最終的に仲裁裁判所はPIC側に責めがあると認定し、PICに対しDowへの21.6億ドルの損害賠償支払いを命じた。

2012/5/25     Dow、石化JV中止問題での調停で勝利、21.6億ドルを獲得

今回の判断はこれとは直接関係はないと思われる。

Dowとしては、国内のシェールを利用した石化事業を中心としつつも、中東の安価な原料による事業も捨てていない。

Dowは今後、Saudi AramcoとのJVのSadara Chemical Companyに全力投球すると思われる。

2011/7/26  DowとSaudi Aramco、石油化学JV設立を最終決定



なお、同社は11月12日、第4四半期の増配を発表した。




ロシアのプーチン大統領は11月9日、APEC首脳会議に先立ち中国の習近平国家主席と会談した。
中露は両首脳立ち会いのもと、ロシアのシベリア産天然ガスを西シベリアの国境経由で中国に送るパイプライン計画の覚書など17の合意文書に署名した。

ーーー

ロシアと中国は5月21日、Gazpromによる中国石油天然ガス集団(CNPC)への天然ガス供給で合意し、契約に調印した。
ロシア側は2018年から30年間にわたり毎年380億m3の天然ガスを供給する。

ガスは西シベリアのガス田からウラジオストックまでをつなぐ計画のEastern Pipeline ("Power of Siberia")で輸送する。

9月1日にヤクーツク近郊で
"Power of Siberia"のロシア側の起工式が行われた。

ガスプロムの社長は10月13日、ウラジオストク郊外のLNGプラント建設計画を「撤回する可能性がある」と述べた。
もしそうなら、Power of Siberiaは中国までということになる。

しかし、地元の行政府は11月5日、ガスプロム側と協議を行った結果、「計画は予定どおり進んでいる」として、当初の計画が撤回されることはないとの見通しを示した。

この時点でプーチン大統領は、「ロシアと中国は西ルートでもガスを供給することを協議する」と述べ、西シベリアからモンゴルの西側を通り中国につなげる2本目も敷設することを明らかにしていた。

2006年3月のプーチン・胡錦涛会談で 西シベリアからアルタイ共和国経由で「西気東輸」(中国の東西ガスパイプライン)につなぐAltai Pipelineの建設で合意したが、価格交渉が難航したこともあり、これまで実現していない。

2014/5/26     ロシアのGazprom 、中国への天然ガス供給契約に調印

今回、このAltai Pipelineの建設で合意した。
計画によるとガス供給は30年間で、東ルートは年間380億立方メートル、西ルートは同300億立方メートルを見込んでいる。

Putin大統領は9月にシベリアのVankor油田の権益の中国への売却を提案したが、現在、CNPCとの間で権益の10%の売却の交渉が行われているとされる。

2014/9/11 Putin大統領、シベリアのVankor油田の権益の中国への売却を提案 
 

 

なお、Altai Pipelineを拡張して、ロシアからインドへガスを送るパイプライン建設の交渉も行われているとされる。




帝人はシンガポールのポリカーボネート子会社を撤収、松山のDMTを生産停止するなどの構造改革を行い、
2014年9月中間決算で、減損損失305億円、事業構造改善費用111億円の合計416億円(年間では440億円)の特別損失を計上した。

同社の損益推移は下記の通りで、過去も多額の当期損失を計上している。

 

同社は過去にも毎年、多額の減損損失・事業構造改善費用を計上している。

2002年3月期 -191億円  
2003年3月期 -158億円  
2004年3月期 -82億円  
2005年3月期 -404億円 北米ファイバー、欧州的スタイル整理損 -375
2006年3月期 -81億円  
2007年3月期 -42億円  
2008年3月期 -322億円 米国PETフィルム -244、日本PET樹脂設備 -47
2009年3月期 -149億円  
2010年3月期 -250億円 インドネシア繊維子会社譲渡ほか -206
2011年3月期 -28億円  
2012年3月期 -26億円  
2013年3月期 -294億円 炭素繊維のれん -173、同米独の設備 -50、米国ヘルスケアのれん等 -54
2014年3月期 -112億円 樹脂シンガポール工場2系列休止、フィルム茨城事業所休止、パラキシレン生産中止等減損損失 -88
2015年3月期予 -440億円  



本年度の440億円の内訳は下記の通り。

1. 電子材料・化成品事業に係る損失  -310億円
 
  ポリカーボネート樹脂事業で、高付加価値品へのシフトを図ることで競争優位性を再構築すべく、エネルギーコスト競争力で劣り、汎用品ビジネス主体のシンガポール子会社について2015年12月末をもって事業撤収する。為替調整勘定の引当損失も計上する。
2014年3月期決算で、4系列のうちの2系列を休止すると言うことで減損損失を計上していた。

今後の生産は、競争力を有する中国子会社と、高機能品開発に適した松山事業所の2拠点体制に移行する。

社名 Teijin Polycarbonate Singapore 帝人化成 帝人化成(中国)
場所 シンガポール・ジュロン島 松山 浙江省嘉興市
株主 帝人 45%
帝人化成 45%
EDB 10%
  帝人化成 100%
能力 225千トン 120千トン 1系列 50千トン
2系列 100千トン
第3系列 60千トン
備考 原料ビスフェノールAは
Mitusi Bisphenol Singapore
   
     
  ポリエステルフィルム事業においても、アジアの後発メーカー台頭による競争激化で収益が悪化しており、岐阜事業所設備等について減損処理を行う。
     
2.原料・重合部門に係る損失 -60億円

    ポリエステル製品に関し、コスト競争力の観点から原料からの生産モデルを見直し、DMTの生産を停止、同時に松山地区でのポリマー重合工場の再編を実施する。

帝人は松山のパラキシレン(290千トン)を2014年3月で停止している。

帝人はボトル用のPETを生産停止して、三井化学と事業統合し、パラキシレンを三井化学に供給していた。

2010/8/10 三井化学と帝人、国内のボトル用PET樹脂事業を統合

     
3.  ヘルスケア事業に係る損失  -42億円
 
    米国で在宅医療事業を営む連結子会社Braden Partners L.P.においては、米国での医療制度改革に伴い、保険価格の大幅な引き下げが継続していること等の環境変化により、収益状況が悪化しているため、2008年に買収した際に生じたのれん等の未償却残高の一部約42億円を減損処理する。
     
4. 高機能繊維・複合材料 -28億円
 
   

高機能繊維事業の競争力強化に向け、高成長が見込まれるASEAN地域へのシフトを加速し、同時にポリエステル繊維の国内拠点の再編を図る。

同素材の生産についてはタイ子会社と松山事業所に集中するため、徳山・岩国・三原地区より生産機能を移管し、徳山事業所は閉鎖する。

加えて、研究・開発機能の再編・強化を図るため、大阪研究センターの機能を松山事業所に統合し、同センターは閉鎖する。

     
     

帝人は11月5日、修正中期計画(抜本的構造改革と将来に向けた発展戦略)を発表した。

赤字体質事業に対して抜本的な対策を講じるとともに、将来の発展に向けた基盤整備のため、踏み込んだ事業構造改革、および発展戦略の実行体制の再整備を行う。

 

 



 

 

 


中国の習近平主席は11月4日、中央財経指導グループの第8回会議を招集し、「シルクロード経済ベルト」 と「21世紀の海のシルクロード」計画 (一帯一路構想)、アジアインフラ投資銀行(AIIB)およびシルクロード基金の設立という「中国版マーシャルプラン戦略」(中国メディア)について検討を行った。

主席は2013年9月7日、訪問先のカザフスタンの大学での講演会で、「シルクロード経済ベルト」と呼ぶ中央アジア諸国などとの経済協力の構想を明らかにした。

「人口30億人のシルクロード経済ベルトの市場規模と潜在力は他に例がない」と述べ、太平洋からバルト海に至る物流の大動脈の整備や、人民元と各国通貨の直接交換取引の拡大を挙げた。
中国と中央アジアのほか、ロシアやインド、パキスタンなども含めた広範な地域を想定しているとみられる。

2013/9/18  中国の習近平主席、「シルクロード経済ベルト」を提唱 

習主席は11月9日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)の関連会議で基調講演し、「各国と協力して二つのシルクロード経済圏の建設を進める」と述べた。
アジアインフラ投資銀行(AIIB)などを通じ、中国自らの資金で地域経済の一体化を主導する意欲を示した。

APEC閣僚会議が開かれた11月8日にバングラデシュ、タジキスタン、ラオス、モンゴル、ミャンマー、カンボジア、パキスタンの首脳と「相互接続パートナーシップ強化対話会議」を開催した。

習主席は「『シルクロード経済圏』と『21世紀の海のシルクロード』を建設しよう」と呼びかけ、中国が400億ドルの「シルクロード基金」を創設すると表明した。

なお、中国を中心としたアジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立が10月24日に 決まった。

AIIB、BRICS開発銀行、シルクロード基金がシルクロード経済圏構想を資金面でサポートする。

ーーー

習主席は10月11~19日の日程で、タジキスタン、モルジブ、スリランカ、インドの4ヵ国を歴訪した。
中国はこれを、「一帯一路構想を実現する旅」と位置づけている。

「一帯一路構想」は、中国から中央アジアを経て欧州に至る「シルクロード経済帯」と、中国沿岸部からアラビア半島までを結ぶ海上交通路の「21世紀海上シルクロード」を中国が中心になって開発していくという構想である。

人民元の流通、政策の共通、道路の開通、貿易の盛通、民心の相通という「五通」を目指している。

習主席はこう述べている。

シルクロード経済ベルトと21世紀の海のシルクロードというイニシアティブは時代の要請と発展加速という各国の願望に順応しており、包括性の高い発展プラットフォームを提供し、しっかりした歴史的淵源と人的・文化的基礎を備え、急速に発展する中国経済と沿線国の利益を結びつけることができる。

力を結集してこの重大事をうまく運び、『親、誠、恵、容』の周辺外交理念を堅持し、近睦遠交、沿線国がわれわれに対してさらに賛同し、親しくし、支持するようにする必要がある。

この地域は、世界総人口の63%を占める44億人の人口を有し、GDP規模も世界全体の29%を占める21兆ドルに達する。
沿線には多くの新興市場と途上国があり、発展の伸びしろは大きい。
中国はこの地域と緊密な経済貿易協力を展開しており、その貿易額は中国の対外貿易総額で4分の1以上を占めている。

既に、Eurasian Land Bridges 計画(江蘇省の連雲港を出発点として、西安、ウルムチ、中央アジア、ロシアを経由して、アムステルダムまで鉄道を建設する計画)を筆頭に、中国・シンガポール経済回廊、 バングラデシュ・中国・インド・ミャンマー経済回廊など、「一帯一路」の基幹通路案の検討が進んでいる。

広西チワン族自治区は向こう5年で、南寧からベトナムを通過しシンガポールを結ぶ高速鉄道建設計画を進める。

バングラデシュ・中国・インド・ミャンマー経済回廊は2013年5月の李克強総理のインドを訪問時に提案したもので、既に合同作業部会が開かれている。

ーーー

中国を中心としたアジアインフラ投資銀行(AIIB)の創設準備の了解覚書が10月24日に 調印された。

アジア各国のインフラ整備を支援するAIIB設立構想は2013年10月、習主席が東南アジアを歴訪した際に表明した。日本主導のアジア開発銀行(ADB)に対抗するためとみられ た。

当初は、ASEAN 10カ国のほか、韓国などの計16カ国が参加するとされた。南シナ海の領有権をめぐり中国と対立するフィリピンも参加する。 中国との国境紛争を抱えるインドなどは交渉に加わっていない。カナダや豪州なども参加を示したとされる。日本には参加の打診もないという。

10月24日に了解覚書に署名したのは、中国、ASEAN10カ国と、インド・バングラデシュ、モンゴル、パキスタン、スリランカ、ネパール 、カザフスタン、ウズベキスタンと、アラブ圏のクウェート・オマーン・カタールの計22カ国。当初、バングラとインドネシアは参加をためらっていた。

韓国は現時点では入らず、逆にインドが参加を決めた。

中国は韓国に対し、参加を要請していた。訪韓した唐家セン元国務委員も朴大統領を表敬訪問した席で、韓国のAIIB参加を繰り返し要請したと伝えられた。

韓国政府は来年前半には参加するかどうかについて決定するとされている。

最大の懸念は中国の出資比率で、中国が圧倒的多数の出資比率を掌握し、韓国がアジアインフラ投資銀行の決定に参与できない可能性も あるとみている。
また、米国はアジアインフラ投資銀行は国際金融秩序に適合しないと批判、参加を検討する韓国に慎重に検討するよう呼び掛けているとされる。

当初中国の出資比率50%に不満を表したインドは、加盟国間の対話で支配構造を調整することができるという中国の意思を確認し、参加を決めた。

豪財務相は、「AIIB参加を前向きに検討中で、創設準備の了解覚書に署名するだろう」としていたが、署名していない。米国の立場を考慮して観望していると見られている。

当初の資本金は500億ドル規模で、ADB (1650億ドル)のADBの1/3となる。

当初は中国が50%超を負担する方向だったが、中国色が強まるのを嫌う参加国に配慮し、中国は出資比率を抑えることを検討している。

 

 


中国の国土資源部はこのたび、Sinopecに対し、2011年の最初のシェールガス鉱区の入札で約束した投資をしなかったとして約130万ドルの罰金を課した。
政府筋は石油・ガス権益の管理の強化の一環であるとし、投資をしないなら他にやらせるので権益を返却するべきだとしている。

Sinopecは2011年7月に貴州の南川(Nanchuanシェールガス鉱区の権益を取得したが、山岳地域での開発作業は予想より厳しく、約束した額の73%しか投資できていない。

河南省煤層気開発利用有限公司Henan Coalbed Methane Development and Utilization Co.) も近くの秀山(Xiushan)  シェールガス鉱区で約束の半額しか投資しなかったとして約 98万ドルの罰金を課せられた。

両社とも、鉱区の一部を政府に返却した。

中国は世界最大の技術的に回収可能シェールガス資源を持つとされ、米国をLNG輸入国から輸出国に変えたブームの再現を目指している。

米エネルギー省エネルギー情報局(EIA)は2011年4月に「世界のシェールガス資源量評価」を発表、中国の技術的に回収可能なシェールガス資源量は 1,275Tcf(36兆m3)で米国を上回る世界最大のシェールガス資源国であると評価した。

しかし、開発は遅れており、中国政府はいらだっている。

中国政府は本年8月、2020年のシェールガス産出目標を当初の600億~800億m3 から300億m3に下方修正した。
2013年のすべてのガス田でのシェール産出量は2億m3だった。

中国では、PetroChinaとSinopecが良好なシェール鉱区の大部分の権益を握っており、業界ではこれが開発の遅れの一因であるとしている。

これまでの4年間で成功したのはSinopecの重慶涪陵(Fuling)シェールガス田だけである。

中国国土資源部は重慶涪陵(Fuling)シェールガス田の新規確認原始埋蔵量について審査を行い、1,067.5億m3と認定した。
6月末時点
で、29の試験井の日量生産量は320万m3で、生産量累計は611百万m3となった。

四川省ではPetroChinaがShellとのJVで開発を行っているが、Shellは地形の問題や水の確保が難しいことから事業を縮小する可能性を示している。
PetroChinaでは事業棚上げとの報道を否定したが、Shellはテスト井の結果(良好なものとそうでないものが混在している)を検討
中で、次にどうするかは来年早々に決めるとしている。

ーーー

中国PetroChina、Sinopec、中国海洋石油(CNOOC)は競って 北米のシェールオイルやオイルサンド事業に参加 している。         

これには、事業参加によって技術を取得し、中国のシェール開発に役立てるという目的もある。

しかし、技術を勉強しても、それだけでは中国でのシェール開発は目論見どおりにはいかないと思われる。

石油・ガス掘削の歴史、シェール掘削の周辺技術、機器の供給・修理体制、パイプラインや処理施設、輸送態勢、水資源、土地の利用の権利関係、資金ソース、法律体制、税制など、全てが揃って初めて、事業としてやっていける。
また、石油や
天然ガスと異なり、一つの井戸で長期間継続しての掘削は出来ない。

埋蔵量があるというだけで、ゼロから掘削を行っても、成果を得るのは難しいと思われる。

 

 

 

中国の習近平国家主席と、APEC首脳会議のため訪中している韓国の朴槿恵大統領は11月10日、北京の人民大会堂で首脳会談を行い、両国は中韓自由貿易協定(FTA)交渉が「実質的に妥結した」と発表した。

重要な争点の交渉は終わり、後は協定に書き込む表現など技術的な問題が残っているだけで、年内の仮署名、年明けの正式署名を経て、来年中の発効を目指す。

商品、サービス、投資、金融、通信など両国経済全般を包括する計22分野でFTAが締結された。
中国は初めて金融、通信、電子商取引をFTAの対象に含めた。

青瓦台は、過去最大規模となる年間54億4000万ドルの関税節減効果が生じるとし、中国消費財市場への進出が加速するとの見通しを示した。


概要は以下の通り。

商品では、両国は品目数ベースで90%以上を開放することで合意した。

中国は品目数91%、輸入額85%(1371億ドル)、韓国は品目数92%、輸入額91%(736億ドル)について20年以内に関税を撤廃する。
協定発効後直ちに関税撤廃に応じる割合は、中国が輸入額44%、韓国が52%で、韓国がやや高い。

自動車は両国が共に市場開放対象から除外した。
液晶パネルは10年以内に関税を撤廃する。

農水産物は品目数ベース70%、輸入額ベース40%で合意し、FTA史上最低水準となった。
超敏感品目(輸入額ベース60%)は開放除外30%、関税割当制度適用16%、関税削減14%で調整が行われた。

コメはFTAから完全に除外することで合意した。トウガラシ、ニンニク、タマネギなど韓国で消費量が多い野菜類と牛肉、豚肉、リンゴ、ナシなど610品目余りは開放除外対象となった。

サービス分野では、FTA発効後2年以内に相互開放しないことで合意した分野を除き、全て自由化する「ネガティブリスト方式」の後続交渉を始めることで一致した。中国の韓国企業に対する差別法執行防止にも合意した。


2012年の日中韓サミットで三首脳は日中韓FTAの年内の交渉開始につき一致、その後、事務レベル会合を重ねた。
9月1日から5日まで、北京で第5回会合が開催されているが、政治問題もからみ余り進展せず、韓国は中国とのFTA交渉を優先した。

しかし、中韓交渉も難航した。

衛生と検疫、技術障壁、競争、環境、電子商取引など8項目に対しては合意、通信と投資・知的財産権など8項目に対しては比較的進展したが、韓国の農水産物市場開放を求める中国と、工業製品・サービス市場の開放を要求する韓国の利害関係がぶつかり、首脳会談の行われた10日の早朝まで交渉が行われた。

ーーー

韓国にとっては中国は最大の貿易相手国で、昨年は全輸出額の約26%、全輸入額の約16%を占めた。
韓国は今後、中国の巨大市場で低い関税の恩恵を受けられることになる。

韓国は米国やEUともFTAを締結済みで、FTA締結国との貿易額が全体に占める割合は中国を加えると6割近くとなり、2割前後の日本を大きく上回る。 

欧州―東アジア―米国をつなぐ「アジアのFTAハブ」が実現する。

  韓国 (12)  中国は13番目
日本 (14) TPP参加国
(日本含め12)
ASEAN 物品貿易 2007年6月1日発効
サービス貿易 2009年5月1日発効
投資分野2009年9月1日発効
2008年12月から順次発効  
  シンガポール 2006年3月2日発効 2002年11月発効
マレーシア 個別には発効していないが、ASEANとして既に発効済み 2006年7月発効
タイ 2007年11月発効  
インドネシア 2008年7月発効  
ブルネイ 2008年7月発効
フィリッピン 2008年12月発効  
ベトナム 2009年10月発効
インド  2010年1月1日発効 2011年8月発効  
オーストラリア 2013/12 実質合意 2014年7月8日調印
ニュージーランド  ---  ---
トルコ 2013年5月1日発効  ---  
米国 2012年3月15日発効  ---
カナダ 2014年3月11日妥結  ---
メキシコ  --- 2005年4月発効
チリ 2004年4月1日発効 2007年9月発効
ペルー 2011年8月1日発効 2012年3月発効
コロンビア 2013年2月21日 正式署名  ---  
EFTA 2006年9月1日発効  ---  
  スイス (EFTAとして締結) 2009年9月発効  
EU 2011年7月1日暫定発効  ---  

 

なお、中国と豪州とのFTA交渉も進行しており、11月15-16日にブリスベンで開かれるG20首脳会議に合わせ、農産物輸出の拡大を盛り込んだ正式な合意を発表するとの見方が強まっている。




コスモ石油は11月6日、コスモ子会社のコスモエネルギー開発が保有するアブダビ石油の株式を新設分割により設立する会社に承継させ、新設会社の一部持分をスペインの総合石油会社のCEPSAに譲渡すると発表した。

新設JVに直接アブダビ石油の株式を譲渡すると、評価額と簿価との差額が課税されるため、アブダビ石油株式を持つ部分を分割して子会社を新設し、その子会社の株式の一部をCEPSAに売却する形をとる。

コスモ石油とCEPSAは共にアブダビ国営の投資会社 International Petroleum Investment Company(IPIC)グループの一員同士である。

IPICは2007年にコスモ石油に20%出資し、筆頭株主となった。
IPICはCEPSAの株式を順次取得し、2009年8月にTotal から48.83% を買収、最終的に100%をおさえた。

IPICについては、2009/2/24 アブダビのIPIC、カナダのNOVA Chemicals を買収

コスモ石油とCEPSAは2014年1月21日、IPICグループの一員同士として、相互の事業機会の発掘と事業化に向けた検討を実施するために提携し、中でも石油ガス開発事業において共同で新鉱区獲得や事業拡大に注力していくことで合意し、石油関連事業に関する戦略的包括提携合意契約を締結した。

両社は以下の作業部会を発足させ、それぞれのテーマに沿った検討を実施し、事業化を目指す。

(1)石油ガス開発作業部会   石油ガス開発事業分野での共同事業検討、技術ノウハウ共有
(2)戦略作業部会  石油ガス開発事業を除く石油関連事業分野での共同事業検討
             (石油化学、石油精製、マーケティング、その他)

このような戦略的提携関係の中、今回の決定に至った。

コスモ石油はコスモエネルギー開発を通じて、アブダビ石油、カタール石油開発、合同石油開発、コスモアシュモア石油の4社の株式を保有し、前3社では中東地域で石油開発事業に従事している。

中でもアブダビ石油における事業は最大規模であり、1969年に試掘1号井で出油に成功し、1973年から商業生産を開始した。
現在、ムバラス油田、ウム・アル・アンバー油田、ニーワット・アル・ギャラン油田の3油田から生産される原油をブレンドし、ムバラスブレンド原油として、全量をコスモ石油とJX日鉱日石エネルギーが引き取っている。

アブダビ石油は2012年に45年間の期限を迎えたが、2011年2月に30年更新の新利権協定を締結した。
既存のムバラスなど3油田の24千バレルに加え、同程度の生産量が見込めるヘイル油田の権益も取得した。

2009/1/23 アブダビ石油の油田権益 20年延長へ

新しく権益を取得したヘイル油田は、既存3油田と同程度の生産量を見込む大規模プロジェクトで、2016年度の生産開始を目指す。
このプロジェクトを成功裡に完了させ、アブダビでのビジネスを一層拡大させるため、CEPSAを資本面でもパートナーとして迎え入れることを決めた。

 
新設されるコスモエネルギー開発子会社の価値は、原油埋蔵量、生産計画及び利益計画等を元に両社がそれぞれDCF分析を実施し、1,086百万米ドルとした。

この結果、CEPSAへの20%持分の譲渡価格は217百万ドルとなる。

コスモ石油では関係会社株式売却益として現段階で 約140億円の特別利益を計上する見込み。




経済産業省は11月7日、産業競争力強化法第50条に基づく「石油化学産業の市場構造に関する調査報告」を公表した。

http://www.meti.go.jp/press/2014/11/20141107001/20141107001a.pdf

「産業競争力強化法」 は2014年1月20日に施行された。
アベノミクスの第三の矢である「日本再興戦略」に盛り込まれた施策を確実に実行し、日本経済を再生し、産業競争力を強化することを目的とし、「創業期」、「成長期」及び「成熟期」の発展段階に合わせたいろいろな支援策により産業競争力を強化しようというもの。

産業競争力強化のためには、日本経済の3つの歪み、すなわち「過剰規制」、「過小投資」、「過当競争」を是正していくことが重要で、この法律は、そのキードライバーとしての役割を果たすものであるとしている。

同法第50条(調査等)は以下の通り。

政府は、事業者による事業再編の実施の円滑化のために必要があると認めるときは、商品若しくは役務の需給の動向又は各事業分野が過剰供給構造にあるか否かその他の市場構造に関する調査を行い、その結果を公表するものとする。

ーーー

経産省は6月30日、産業競争力強化法第50条に基づく調査報告「 石油精製業の市場構造に関する調査報告」を発表した。

経産省はこれに合わせ、総合資源エネルギー調査会の資源・燃料分科会がまとめた「平成26年度以降の3年間についての原油等の有効な利用に関する石油精製業者の判断基準(告示)案」を公表した。

「残油処理装置装備率」の向上を目標とし、実質的に常圧蒸留装置の処理能力の削減を強制するものである。

2014/7/4 経済産業省、2年続きで石油精製能力削減を強制 

これを受け、各社は具体的な能力削減策を検討していると報道されている。

経済産業省は11月末を期限に、設備最適化と事業再編の方針の提出を求めている。
経産相は、「各社の方針の提出を待って、補助金や産業競争力強化法に基づく税制も総動員して後押ししていきたい」と述べた。

ーーー

今回の石油化学産業についての報告概要は下記の通り。

経済産業省が経営コンサルタントのA.T.カーニー㈱に委託した「石油化学産業の市場構造に関する調査」の報告を参考にしている。

1.国内石油化学産業の現状

ナフサクラッカー 14基、生産能力 年 720万トンに対し、2012年国内生産量  610万トン
  住友化学(千葉 38万トン)、旭化成(水島 44万トン)の停止で、能力は640万トンに減少。

 


輸出が生産量の3~4割を占める。

石油化学産業の収益は大きく変動しやすく、総じて利益率は低い。
過去10年の売上高経常利益率は2.5%(製造業平均は4.1%)



  

2. 国際的な需給構造の変化

   日本からの輸出減のリスク

   ① 北米の安価なシェールガス由来化学製品のアジア市場への流入

   ② 中国の安価な石炭を原料とした化学製品増産

   ③ 中東の化学産業への投資拡大による安価な化学製品のアジア市場への流入

随伴ガスの生産量には限りがあるため、2011年以降、エチレン設備能力の伸びは年平均3%程度まで低下すると見込まれる。

但し、若年層の高い失業率への対策などから、国家政策として石化事業拡大を図る可能性がある。

   ④ 最大の輸出先の中国の経済成長減速、需要減


 以上のまとめ

3. 上記リスクの影響

エチレン生産量
 2020年までで 470万トンまで減少
 2030年までで 310万トンまで減少

4. 対応策

① 生産設備集約、再編による生産効率の向上
② 石油精製との連携による生産体制の最適
③ 隣接企業とのエネルギー相互融通、発電設備等の共有化、共通部門の集約統合によるコスト削減
④ 海外展開の促進

ーーー

上記の報告は正しく、誰もが分かっていることである。

石油産業の場合は、常圧蒸留装置(トッパー)の削減であり、比較的簡単だが、それでも前回の場合、数社で難航した。

エチレンの場合はエチレン停止はその工場全体を止めてしまうことにもなりかねない。

もともと、多くの誘導品は競争力がないが、 エチレンを止めないために動かしていた。エチレンを止めた場合に、他社のエチレンを買ってまで動かす意味はないものが多い。

誘導品に強い三菱化学、住友化学、旭化成でも、エチレン停止に関連し、多くのプラントを止めている。

  三菱化学:塩ビ事業撤退、スチレン事業撤退、ナイロン事業売却、テレフタル酸事業の国内撤退、その他

  住友化学:日本オキシランのSM/PO、PGの停止、その他
  旭化成   :ANM、SM、ABS等

これは従業員の雇用をどうするかという大きな問題を生む。

これまで、三菱化学の鹿島(第一)が停止し、住友化学の千葉、旭化成の水島が停止を決めたが、これら各社は石化以外の事業を展開しており、なんとか、他の事業への配転で対処できるため、可能となった。

それ以外の多くの企業にとっては従業員対策は難しく、経済産業省が法律で強制しようとしても、実施できないのではなかろうか。

日本をダメにした10の裁判の一つとされる東京高裁判決で、従業員解雇に非常に厳しい条件を付けたのが影響している。)

 

新聞報道では、三井化学や丸善石油化学などの5工場が集中する千葉県内での統廃合が進むかが焦点となるとしている。

しかし、千葉地区では既に統廃合が実施されている。

   ・三井化学と出光興産がエチレンの運営を統合、三井は京葉エチレンから離脱を決定
   ・住友化学がエチレン停止、京葉エチレンから過半を引き取ることを決定

 

 

三井の京葉からの引き取りが無くなるため、三井(or 出光)のエチレン停止の可能性は少なく、残る丸善石化はエチレン停止は会社の解散につながりかねない。

報道では、京葉エチレンの停止を条件に千葉地区のエチレンの統合を三井が提案し、それへの対案として住化のエチレン停止、京葉エチレンからの三井離脱、 住化引き取り増が決まったとされており、これ以上の統廃合は可能性が少ないと思われる。

これ以外の可能性は川崎の東燃化学とJX日鉱日石のみである。


エチレン能力削減は必須だが、実現が難しいというのが実態である。
対策を打てないところがどんどん損益が悪化し、行き詰って撤退するのを待つしかないのだろうか。


 

 

 

住友金属鉱山は11月5日、二次電池用正極材料であるニッケル酸リチウムの生産拠点を、福島県双葉郡楢葉町に設置すると発表した。

同社は現在、ニッケル酸リチウムの生産を新居浜市の磯浦工場で行っているが、増強の余地が十分でないこと、複数拠点での生産により供給リスクの分散を図れることなどから、新たに福島県双葉郡楢葉町にある日本化学産業福島第二工場を借用し、生産設備を設置することとした。

進出に当たり、100%の子会社の住鉱エナジーマテリアルを設立した。
また、日本化学産業は二次電池用正極材料の生産技術を有することから、今回のニッケル酸リチウムの増産に当たり、同社の福島第一工場にニッケル酸リチウムの製造工程の一部を委託する。

住友金属鉱山は、パナソニックと共同で二次電池用正極材料の一つである高性能のニッケル酸リチウムの開発に成功し、パナソニックに提供してきた。

このニッケル酸リチウムを使用したパナソニック製の円筒型リチウムイオン二次電池は、現行では世界最高水準のエネルギー密度を有しており、米国の電気自動車メーカーのTesla Mortorsが製造・販売している Model S に採用されている。

パナソニックは10月1日、リチウムイオン電池セルを生産する新会社 Panasonic Energy Corporation of North America をネバダ州スパークスに設立した。
新会社は、同社とTesla Mortorsが連携して設置を検討してきた大規模電池工場ギガファクトリー内で、リチウムイオン電池の生産を行う。


2014/10/8  パナソニック、リチウムイオン電池の生産会社を米国に設立 


住友金属鉱山は、今後のニッケル酸リチウムの需要拡大に対応するために、2013年9月に新居浜市の磯浦工場でニッケル酸リチウムの生産設備の増強を行うと発表した。

設備投資額は、約48億円で、生産能力を月産 300 トンから850 トンに増やすもので、2014年6月に完成させた。

同社は本年10月20日、総額約150億円を投じ、能力を月産850トンから1,850トンに増やすと発表した。2015年12月完成を予定している。
福島県双葉郡楢葉町の新工場はこの一部で、総額150億円のうち、約40億円を投じる。

住友金属鉱山は、ニッケル原料鉱石の製錬から加工までを一貫して手掛けている強みを活かし、二次電池用正極材料のさらなる高性能化と安定供給に取り組むとしている。

ーーー

ニッケル酸リチウムの生産には、大きく分けて3つの工程がある。

第1は硫酸ニッケルの溶液とコバルトなどを調合し中和して直径十数ミクロンの水酸化物の粒子に変える工程。
第2はその水酸化物をリチウムと混ぜて焼成する工程。
第3は表面処理を施して製品に仕上げる工程である。
 

住友金属鉱山は ニッケル原料鉱石の製錬から加工までを一貫して手掛けている。

立地

フィリピン 新居浜 新居浜
播磨
新居浜
楢葉町
会社 Nickel Asia Coral Bay Nickel

住友金属鉱山

Taganito HPAL Nickel Corp.
製品 ニッケル鉱石 ニッケル・コバルト混合硫化物 電気ニッケル 硫酸ニッケル ニッケル酸リチウム
電気コバルト  


同社は世界有数のニッケル資源国フィリピンの最大規模のニッケル鉱山会社 Nickel Asia に出資するとともに、同社が54%、Nickel Asia が10% 出資するCoral Bay Nickel では2005年4月から、これまで回収が難しいとされてきた低品位鉱石(Ni=1.26%)を原料としてHPAL法(高圧硫酸浸出法)によりニッケル・コバルト混合硫化物 (Ni=52.7%,Co=3.9%)を生産している。
第一期プラントではニッケル量で年約10,000トン、コバルト量で約700トンのニッケル・コバルト混合硫化物 を生産し、第2工場完成後はニッケル量で22,000トンとなった。

さらに、Taganito HPAL Nickel Corp.(住友金属鉱山 62.5%、Nickel Asia 22.5%、三井物産 15.0%)を設立し、HPAL法でニッケル・コバルト混合硫化物(ニッケル品位約57%)を年間3万トン(ニッケル量換算)を生産している。

HPAL法では大量の硫酸を消費するが、住友金属鉱山東予工場での銅の生産で副生する硫酸を供給する。

2009/8/22 住友金属鉱山、比最大手ニッケル鉱山会社の株式を取得


住友金属鉱山は、この
ニッケル・コバルト混合硫化物を新居浜製錬所に送り、電気ニッケル、コバルトを生産、更に硫酸ニッケルとしている。

同社の高純度硫酸ニッケル「ファインエメラルド」は、電気めっきや無電解めっきをはじめ、すべてのニッケルめっき用に最適であり、めっき以外にもアルミ発色用、触媒用、電池材料用等幅広い用途に使用されている。

同社は新居浜のニッケル工場で硫酸ニッケルを年25,000トンを生産しているが、2014年1月からは更に播磨事業所で年 20,000トンの生産を開始した。

今回のニッケル酸リチウムの増産に伴い、播磨事業所の増産を決定した。
2016年1月完成を目途に能力を45,000トンとする。新居浜と合わせた能力は70,000トンとなる。

ーーー

二次電池用正極材料には、マンガン酸リチウム(LMO)、ニッケル酸リチウム系(LNCA)、ニッケル・コバルト・マンガン酸リチウム系(三元系:LNCM)、リン酸鉄リチウム(LFP)などがあるが、既報のとおり、三元系の三菱化学、LFPの三井造船・戸田工業が撤退を決めた。

2014/11/1 BASFと戸田工業、日本でリチウムイオン電池用正極材の合弁会社設立について基本合意


撤退企業は、安価な競合製品が増え、エコカーの普及も進まなかったことを理由としている。

住友金属鉱山の場合、コスト競争力の面でも、販売面でも大きな強みを持つ。

これまで利用価値のなかった低品位鉱石を使い、また副生硫酸を使用するなどして、原料をすべて 元から自社で生産しており、コスト競争力は大きいと思われる。

販売面でも共同開発の相手のパナソニックに供給、そのパナソニックは今後電気自動車で大きく成長すると見られているTesla Mortorsと提携し、電池を供給している。

 

 


Chesapeake Energy は10月16日、西バージニア州のUtica Shaleの一部と Southern Marcellus Shaleの資産をSouthwestern Energy Companyに53億75百万ドルで売却する契約を締結したと発表した。

西バージニア州北部とペンシルバニア州南部の約413千エーカーと1500の井戸(うち435はMarcellus、Uticaシェール層)及び関連施設を売却する。
これらの資産の生産量は原油換算で日量56千バレルで、ガスが184,000Mcf、NGLが2万バレル、コンデンセート 5千バレルとなっている。
2013年末現在の確認埋蔵量は原油換算 221百万バレル。

ーーー

Chesapeak Energy は、ExxonMobilに次ぐ米天然ガス2位で、"America's Champion of Natural Gas"、"the biggest frackers in the world"と自称し、2012年までの5年で900万エーカーを超える土地(全てを掘削するのに30年かかる)をリースし、新しいシェール層が見 つかると、権利の獲得を続けた。

同社は算出ガスの一定量を提供するという金融取引で資金を調達していたが、2012年に同社の借入金は162億ドルに達し、株主は経営トップのリスク志向や支出への意欲について懸念するようになった。

Chesapeake Energy は2012年5月1日、創業者で会長兼CEOの Aubrey K. McClendonが会長職を辞すると発表した。

Chesapeakeには創業者参加計画(FWPP:Founder Well Participation Program)という名の計画があり、McClendonが同社の数千にも及ぶ井戸の全てについて2.5%の持分を購入することを認めているが、McClendon CEOがChesapeakeの石油・ガス井に対する個人持分を担保に過去3年間で11億ドルを借り入れていることをReutersが報じた。
借り入れた資金はこの個人持分の購入に使われていた。

更に、McClendon が2004年から2008年までの間にヘッジファンドを通じChesapeakeの扱う製品と同じ石油や天然ガスなどに2億ドルを投じていたと Reutersが報道した。

ある上院議員は司法省に対し、詐欺、価格操作、利益相反、その他の違法行為がないか、Chesapeakeを捜査するよう求めた。

2012/5/9   Chesapeake Energyの混乱

Carl Icahnが会長の行動を抑えるため同社株7.6%を取得、会長を辞めさせるとともに取締役の半数を入れ替えた。
McClendonは2013年4月1日付けでCEOも辞した。

その後、同社は資産売却を続けた。

2012年9月に、Permian Basinの資産を69億ドルで売却するいくつかの契約を締結した。年内に期限が来る40億ドルの借入金を返済した。

Permian Basinの 南 Delaware Basin portion の資産をShell 子会社に、北 Delaware Basin portion の資産をChevronに売却した。
また、Midland Basin portion を EnerVest, Ltd.に売却した。(以上3社で33億ドル)

更にEagle Ford、Utica、Haynesville、Powder River Basin Niobrara shale play などの集荷、処理施設をGlobal Infrastructure Partnersに27億ドルで売却。
他の2社にMid-Continentの中流資産を3億ドルで売却した。
2012年6月にもAccess Midstream Partners, L.P. の持分の売却(20億ドル)を加えると、中流資産の売却は50億ドルに達する。

また、Utica Shaleや他の地区の非コアのリース資産を6億ドルで売却した。

2012年12月には、Marcellus、Utica、Eagle Ford、Haynesville、Niobrara shale などの集荷、処理施設のほとんどをAccess Midstream Partners, L.P.に21.6億ドルで売却した。
また、OklahomaとTexasの集荷、処理施設を1.75億ドルで売却した。

2013年5月に、AnadarkoのSenior Vice PresidentのDoug LawlerがCEOに就任した。

Chesapeake Energyは2013年7月、Northern Eagle Ford Shale とHaynesville Shale を EXCO Resources, Inc. に10億ドルで売却した。

2014年1月には、Chaparral Energy, Inc.の権益100%を2.15億ドルで売却した。

2月には、 Access Midstream Partners, L.P.とExterran Partners, L.P. に子会社 MidCon Compression, L.L.C.の持つ圧縮機 437基を5.2億ドルで売却した。

同社の借入金は115億ドルに減っているが、今回の売却収入はこの借入金の返済に使われる。

同社の損益状況は下記の通り。

ーーー

既報の通り、Chevronは10月6日、カナダAlberta 州のDuvernay シェール層の30%の権益をKuwait Petroleum の100%子会社 Kuwait Foreign Petroleum Exploration Company(KUFPEC)に15億米ドルで売却する契約を締結したと発表した。

Apache Corp.は、物言う株主の Jana Partners LLC(ヘッジファンド)からリストラ実施の圧力を受け、本年7月にカナダのKitmat LNG 計画と豪州のWheatstone LNG 計画からの離脱の意向を明らかにした。

2014/10/9  Chevron、カナダのシェール権益の30%をクウェート石油子会社に売却、JV運営


住友商事は9月29日、米国のタイトオイル開発などで2700億円の大幅な損失を計上すると発表した。

2014/10/1  住友商事、米国のタイトオイル開発などで大幅な損失計上


Shellは8月14日、ドライガス(シェールガス)中心のLouisiana州のHaynesville シェールとWyoming州のPinedaleシェールを売却し、コンデンセートやLPG などのウェットガス を多く含むMarcellusとUticaシェールを取得すると発表した。

Ultra Petroleumを相手に、Pinedal の鉱区を売却、MarcellusとUticaの鉱区を購入し、ネットで925百万ドルを取得する。
Vine Oil & Gas LP とそのパートナーのBlackstoneにHaynesvilleの鉱区を12億ドルで売却する。

シェールガスは100万BTU当たり4~5ドル程度で、採算が取れていない。
     2013/4/5  米国のシェールガス開発会社が破産法申請 

これに対し、コンデンセートは原油価格相当であり、これまではバレル当たり100ドル程度の収入があった。
(但し、今後原油価格が更に下がると、これも儲からなくなる。)


米国のシェールガス、シェールオイルも決してバラ色ではないようだ。

 

 

   

原油価格の下落が続いている。

11月4日の米ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)の原油先物相場は、前日に続き大幅安となり、終値は77.19ドルとなった。
(11月5日は78.68円に戻った。)

OPECが生産枠を引き下げる可能性が薄いこと、米国を中心とした供給量の増加と需要の鈍さが重しとなり、下落が続き、6月20日の107.26ドルから28%の下落となっている。

欧州産原油の指標である北海ブレント原油も2.6%安の82.56ドルと、4年ぶりの安値を更新した。

欧州委員会は11月4日発表の秋季経済見通しで、ユーロ圏の今年の経済成長率予測を 1.2%から0.8%へ、来年についても1.7%から1.1%へとそれぞれ引き下げた。欧州の原油需要の弱さも原油安進行の主な要因の一つとなっている。

OPECのバドリ事務局長は9月16日、来年の需要見通し悪化を受けて、11月のOPEC総会で生産枠を日量50万バレル引き下げる可能性があると語った。

2012年以降は、国別の「生産枠」は撤廃され、新たにイラクを含む12ヶ国全体の「生産目標」として3,000万バレル/日が設定され、以降、据え置かれている。

OPEC生産枠の推移(千バレル/日)
  2007/2 2007/11 2008/1 2008/9 2008/11 2009/1 2012/1
Algeria 794 1,357 1,357 1,357    1,286






Iraq
 含まず

 

 

Iraq含む
Iran 3,788 3,817 3,817 3,817    3,618
Kuwait 2,065 2,531 2,531 2,531    2,399
Libya 1,371 1,712 1,712 1,712    1,623
Nigeria 2,123 2,163 2,163 2,163    2,050
Qatar 663 828 828 828     785
Saudi 8,399 8,943 8,943 8,943    8,477
UAE 2,257 2,567 2,567 2,567    2,433
Venezuela 2,970 2,470 2,470 2,470    2,341
Angola     ー     ー 1,900 1,900    1,801
Equador     ー     ー 520 520     493
Iraq (ー) (ー) (ー) (ー) (ー) (ー)
Indonesia 1,370 865 865

離  脱

Total 25,800 27,253 29,673 28,808   27,300 24,845 30,000
(増減) (-500) (1,450) 2,420 〔-865〕   (-1,500)    

しかし、複数の加盟国代表によると、大半は減産に消極的で、むしろ市場シェアを維持するため、生産量をこれまで以上としたい考えを示している。ナイジェリア、イラク、クウェート、リビアはいずれも生産を増やしている。

生産縮小の可能性があるのはサウジアラビアだけとされた。

そのサウジは、10月1日に11月分の輸出原油全てを値下げし、アジア向けについては2008年12月以来の安値に引き下げた。
供給過剰の解消に向けた減産で市場シェアを譲り渡すのではなく、OPECの他の加盟国との「価格戦争」に臨む用意があることを示唆した。

Saudi Aramcoは各地向け原油価格をベンチマーク価格からの調整金の額で発表している。

ベンチマーク価格は以下の通り。

米国向けは、2010年1月から以前のWTI crudeからArgus Sour Crude Index (ASCI:
米国メキシコ湾岸地域の中質サワー原油現物価格の指数)に変更した。
   
2009/10/31 Saudi Aramco、米国向け輸出の原油価格決定で英Argus Mediaの指標を利用へ

アジア向けは、ドバイ原油とオマーン原油のスポット価格の月間平均値を足し、2で割ったもの。
欧州向けは、ロンドンのInternational Petroleum ExchangeでのBrent原油加重平均。

11月の調整金は米国向けはバレル当たり 2.45ドルから2.05ドルに0.40ドル下げ、アジア向けは-0.05ドルから-1.05ドルへと 1.00ドルの大幅下げ、欧州向けも -3.20ドルから-3.95ドルへと0.70ドル下げた。


サウジは11月3日、12月のアジア向け調整金を0.95ドル引き上げ、10月分に近い -0.10ドルまで戻し、欧州向けについても0.60ドル引き上げた。
このため、OPEC加盟国間で価格戦争が起きるとの観測は一時的に後退した。



しかし、米国向け12月積み原油の販売価格を値下げし、市場に衝撃が走った。調整金を2.05ドルから2013年以来最低の1.60ドルに下げた。

米国向けのみを値下げしてきたことは、米市場におけるシェア維持の強い意志の表明に加え、価格をシェールオイルの採算分岐点以下にして、シェールオイルの増産トレンドにブレーキをかけようとしているのではないかとの推測も出ている。

一般にシェールオイルの生産コストは80ドル程度ではないかとの推定がされている。

付記 

ある報道では、サウジの米国向け値下げのきっかけは、8月の米国向け輸出が日量90万バレル以下となったことで、これは1988年以来の最低で、過去10年の平均の130万バレルと70%である。
サウジの油質とシェールの油質は異なり、サウジの競合相手はイラク、ベネズエラ、ブラジル、カナダで、これらとの競争で値下げを行ったとしている。

次回のOPEC総会は11月27日に予定されているが、現在では減産の可能性は見られておらず、在庫は増加する一方で、在庫の増加は必然的に価格下落をもたらす 。

ーーー

第二次石油ショック時の1982年3月にOPECは生産枠を決め、真のカルテルに移行し、高値を維持しようとしたが、その後、アラスカや北海油田のほか、原子力、天然ガスなどの新しいエネルギーソースが増え、また各国で省エネを進めたため、価格が下がり始めた。

しかし、OPEC諸国は一度増えた収入を維持しようとして、生産枠を破って増産、サウジ一国がスイング国として価格維持のため減産した。

1985年に入り、サウジのシェアは大幅にダウンしたため、スイング国をやめると宣言、値下げ販売を行ったため、各国が追随し、大幅な価格下落となった。


今回もサウジが値下げによるシェア維持に踏み切ると、原油価格の大幅な下落も起こり得る。

その場合、ロシア、イラン、イラクなど経済を石油に頼る各国の経済に大きな打撃を与えるとともに、米国のシェールブームにも影響を与え、世界経済が混乱に陥る恐れもある。

 

 

 

トクヤマは10月31日、塩化ビニル事業の抜本的な収益構造の改革を行うため、2015年9月末を目処にグループ会社の新第一塩ビの千葉工場の生産を停止すると発表した。

競争力のある徳山工場へ生産を集約することによる製造出荷体制の再構築を実施する。

千葉工場(汎用塩ビ 年産80,000トン)の生産停止に伴い、新第一塩ビの生産体制は、汎用塩ビ生産の徳山工場(145,000トン)、ペースト塩ビ生産の愛媛工場(30,000トン)、合計 175,000トンとなる。

新第一塩ビの業績は下記の通り。(決算公告から)

 


1994年12月に共販会社の第一塩ビ販売に属する日本ゼオン、住友化学、サン・アロー化学(及び親会社 徳山曹達)は3社の塩ビ事業を統合することを発表した。第一塩ビ販売の他の1社、呉羽化学は新会社への不参加を発表した。

1995年7月に新第一塩ビがスタートした。

出資比率: 日本ゼオン 40%、住友化学 30%、サン・アロ- 20%、トクヤマ 10%

工場:
  汎用品:ゼオン(水島 120)、住化(千葉 35)、サン・アロー(徳山 125)、第一塩ビ製造(千葉 60)、
       合計340千トン
  ペースト・特殊品:ゼオン(高岡 65)、住化(愛媛 25)、合計 90千トン
  総合計 430千トン

共販会社の第一塩ビ販売は、相互に技術を開示するとともに、次世代製法(内部ジャケット方式)の共同研究を行ったが、その成果を利用し、共同で大型設備を建設することを決め、1990年7月に第一塩ビ製造を設立し、住友化学の千葉工場内に80千トンの設備を建設した。
なお、新第一塩ビは1995年にインドネシアのSiam Maspion (その後 TPC Indo Plastic & Chemicals)にこの技術を供与している。
 

新第一塩ビ設立後は、このうち60千トンを新第一塩ビが、残り20千トンを呉羽化学が引き取ったが、1998年に呉羽が撤退、新第一塩ビが吸収合併した。

新第一塩ビは業績悪化を受け、1999年に改組した。

日本ゼオン、住友化学は各14.5%の出資として実質的に撤退し、クロルアルカリ~VCMをコア事業の一つとするトクヤマ(1999年にサン・アローを吸収)が71%を出資し、新第一塩ビの運営に責任をもつこととなった。

老朽化の進んでいた水島工場を停止した。
日本ゼオンは合わせて水島の山陽モノマー(
日本ゼオン 55%、旭化成 25%、チッソ 20%)のVCM工場(230千トン)も停止した。

住友化学は既に1998年に千葉塩ビモノマー(住化42%、電気化学 33%、旭硝子 25%)のVCM 230千トンを停止している。(千葉電解、千葉EDCも)

現在は千葉工場
のVCMは、トクヤマと旭硝子の提携の一環として、千葉の京葉モノマーから供給を受けている。
住友化学は千葉塩ビモノマーの停止以降、VCM原料のエチレンは供給していない。

現在は、日本ゼオンはなんら関与しておらず、住友化学も千葉と愛媛の工場内にある新第一塩ビのプラントの生産を受託しているだけである。

 

工場の変遷は下記の通り。

  当初
(千トン)
  現状
(千トン)
  2015/10~
(千トン)
汎用 水島(ゼオン) 120 2000/3 停止  
千葉(住化) 35 下記を受け、1998年 停止  
千葉(第一塩ビ製造) 60/80 1998年 呉羽枠買収、吸収合併 80 2015/9 停止
徳山(サン・アロー) 125 増強 145   145
ペースト 高岡(ゼオン) 65 2008/3 停止  
愛媛(住化) 25 手直し増強、特殊品停止 30   30
合計 430   255   175



 

番外編

| コメント(0) | トラックバック(0)


データベースに化学会社決算を追加しました。

クリックしてください。データベースのトップページからも入れます。

 

各社の決算概況(売上高、営業損益、経常損益、当期損益、配当の推移)をまとめています。

売上高と営業損益については、セグメント別も記載しています。

事業統合会社も含めています。(決算公告から)

現在、9月中間決算を発表の都度、追加中です。




 

ロシアのウクライナ向け天然ガス問題で、両国と仲介役のEUは10月30日、ガス供給を再開することで合意した。

ロシアはウクライナがガス代金を支払っていないとして本年6月にガス供給を停止した。
ウクライナはこれまで、EUからのガス融通で対応してきたが、冬季にはこれでは対応できず、ロシアからの供給が必須であった。

今回、ブリュッセルでのロシア、ウクライナ、EUの閣僚級交渉で、①ウクライナが仮価格により未払代金を支払うこと、②今後のガス代金を前払いすることを条件に、ロシアはフォーミュラ価格で3月末までウクライナに天然ガスを供給することが決まった。

未払代金の最終価格は仲裁裁判所の決定を待つ。来年3月以降の供給については何も決まっていない。

バローゾ欧州委員長は10月30日、「欧州の市民が今冬に凍える理由はなくなった」とし、「合意がウクライナとロシアの信頼醸成につながることを望む」とも述べた。

ーーー

本件の経緯は下記の通り。

ロシアとウクライナは天然ガスを巡り、何度も争っており、ウクライナを経由するパイプラインでロシアから天然ガスを受けている欧州も巻き込まれてきた。
(EUは輸入するガスの3分の1をロシア産に頼っており、その多くがウクライナのパイプライン経由で輸送されている。)

2009/1/2   ロシア、ウクライナ向け天然ガス供給停止

2013/2/19   ロシアとウクライナ、天然ガスで再び抗争

2013年のウクライナ向け天然ガス価格は401ドル/1,000m3であった。

ウクライナは2013年にEUとの政治・貿易協定の仮調印を済ませたが、ロシア寄りの姿勢を見せるヤヌコビッチ大統領は2013年11月、EUとの関係を強化する「連合協定」の締結を見送り、ロシアとの協力関係を密にする方針に転換した。

ヤヌコビッチ大統領は2013年12月17日にモスクワでプーチン大統領と会談、ロシアはウクライナに対し150億ドルの金融支援を実施し、天然ガスの価格を2014年1月から約3分の1 引き下げ、268.5ドルとすることで合意した。

しかし、2014年に入り、反政府デモの結果、2月22日にヤヌコビッチ大統領が首都キエフを脱出、政権は崩壊、新政権は欧州寄りとなった。

参考  2014/4/7 ウクライナ問題の背景

この結果、ロシアは4月から大幅値上げを行った。

Gazpromは本年4月、ウクライナ向けのガス価格を3月までの1000m3当たり268.5ドルから485ドルに引き上げた。
ウクライナはこれに反発、代金を滞納している。

ロシアは6月のEUを交えた3者協議では、天然ガスの輸出価格を100ドル下げ、385ドルにすると提示した。

ロシア側は、385ドルはフェアな価格であり、欧州諸国向け価格と同じであるとし、ベストで最終の提案であり、これ以下での契約を結ぶ積もりはなく、欧州がロシア提案価格より安い価格でウクライナに供給すればよいとした。

2014/6/14 ウクライナとロシアの天然ガス供給での対立続く 


今回の合意内容は下記の通り。

1) 未払代金の支払い

ウクライナは11月8日までに14.5億ドルを支払う。
ロシアは入金後48時間以内にガス供給を開始する。

ウクライナは総額31億ドルの残り(16.5億ドル)を年末までに支払うことを約束した。

未払額についてはウクライナは31億ドルを主張、ロシアは53億ドルを主張している。
ウクライナの主張は3月までの価格、1000m3当たり268.5ドルに基づいており、ロシアの主張は385ドルに基づく。

今後、両国はストックホルムの仲裁裁判所で争う見通し。

2) 代金前払い

ウクライナは来年3月までの代金を前払いする。

3) 供給価格

価格は385ドル以下とし、現行契約に入っているフォーミュラに基づくとともに、ロシアの輸出関税の引き下げを折り込んだものとする。
これに基づき、11-12月の価格は378ドルとなった。
来年1-3月については、365ドルとの報道がある。

引取保証(Take or Pay) 条項はなく、ウクライナは必要に応じ発注する。

4) 来年4月以降については今後協議する。

ロシアはウクライナの資金力に懸念を示していたが、EUが支援すると約束した。
具体的には、EUのウクライナ経済支援資金からの支払いを認めた。IMFも支援資金からの支払いを認めている。



 

トクヤマは10月31日、マレーシアの子会社 Tokuyama Malaysia Sdn. Bhd. の多結晶シリコン工場・第一期プラント(年産:6,200トン)の製造設備に関して、860億27百万円の特別損失を計上したと発表した。

設備に問題があり、出荷が事実上不可能とし、減損損失 748億20百万円と事業計画の見直しに伴う関連費用 112億7百万円の合計 860億27百万円を計上した。

同社は2013年3月期にも、市況が急激に悪化し、将来のキャッシュフローが見込めないとして、徳山製造所の多結晶シリコンと併産品の乾式シリカ設備を全額減損処理(275億円)し、合わせて、多結晶シリコン用原材料について20億円の評価損を計上している。

ーーー

トクヤマは徳山製造所に半導体用途を中心に年産 8,200トンの多結晶シリコン設備を持っていたが、2009年8月に太陽電池用途の増産対応とリスク分担の面から、マレーシアのサラワク州のサマラジュ工業団地に総工費約800億円をかけてに太陽電池向け多結晶シリコンの年産 6,000トンの大型プラント建設を決めた。

2011年初めに着工し、2013年9月の営業運転開始を目指した。

2008/12/5 トクヤマ、マレーシアに多結晶シリコン第二製造拠点

同社は2012年11月に、これを主として半導体向けグレードを生産・販売する計画に変更、2013年2月に一部設備を除き建設が完了、その後試運転を開始した。

更に、2011年には第二期として太陽電池向けに年産13,800トンの建設を決めた。(投資額 1,000億円、累計 1,800億円)
合わせて徳山製造所の能力を11,000トンとした。

全て完成後は、日本11,000トン、マレーシア20,000トンで合計31,000トンとなるが、同社はこれにより、半導体用途は世界シェア20%を維持し、太陽電池用途では5%程度のシェアを10%程度に引き上げるとしていた。
 

しかし、多結晶シリコンは2012年3月期以降、市況が急激に悪化した。

同社によると、半導体用も含めたシリコンの需給は下記の通りで、主要メーカーの供給能力が需要を上回っている上に、その他メーカーの大きな供給能力が上乗せされ、合計能力は需要の2倍にも及ぶ状況である。

このため、上記の通り、2013年3月期で295億円の特別損失を計上した。

但し、同社では、中長期的には需要拡大と競争力のないメーカーの生産停止等で、需給ギャップは徐々に縮小し、2015年頃には需要と主要メーカー供給能力はバランスすると予測し、マレーシアの第一期(半導体向け主体)は2013年6月に営業運転開始とし、第二期(太陽電池向け)については2015年4月に営業運転を開始して、早期にフル生産を目指すとした。(徳山製造所は生産量を徐々に縮小するとした。)

2013/3/6    太陽電池素材事業、苦境に

ーーー

マレーシアの多結晶シリコン工場・第一期プラントについては、2013年2月に一部設備を除き建設が完了し、その後、主として半導体向けグレードを生産・販売することを目指し、試運転を行ってきた。

半導体向けグレードは、非常に高い純度をはじめとする高品質が求められるが、当初想定していた品質・生産安定性が達成出来ず、技術的な課題解決を図ってきた。

しかしながら、今般、析出装置に関する問題が存在し、様々な技術的な課題解決を図ったとしても、当面顧客認定用サンプルの出荷が事実上不可能であると判断した。

今後も、当プラントでの半導体向けグレードの生産に向けた活動(析出工程における品質及び生産性に関する技術開発)を継続していく。
(特別損失計上後の当プラントの簿価は33億円)

析出装置メーカーに対しては、損害賠償の請求を検討している。

半導体向けグレードについては、これまで通り、徳山製造所にて生産・販売を行う。

なお、第二期の太陽電池向けグレード生産設備(生産能力:13,800トン、総投資額:1,300億円)については、
2014年10月より生産・販売を開始、2016年3月期にフル稼働とする計画。

中国をはじめとする複数の大手ウエハーメーカーと既に契約を締結済みで、2017年3月期における販売計画を約13,000トンとしている。

 


BASFと戸田工業は10月30日、日本を拠点にリチウムイオン電池用正極材を展開する合弁会社の設立について、基本合意に達したと発表した。

合弁会社名は、BASF戸田バッテリーマテリアルズ合同会社で、BASFが66%、戸田工業が34%を出資する。

両社は、それぞれの正極材(CAM)ビジネス、知的財産権、日本における製造設備・拠点などを結集し、NCA(ニッケル系正極材)、LMO(マンガン系正極材)、NCM(三元系正極材)といったさまざまな正極材料の研究開発、製造、マーケティング、販売に注力する。

山口県山陽小野田市と福岡県北九州市に年間製造能力 約18,000トンの正極材および前駆体の製造拠点を構え、2015年2月末に活動開始の予定。

 

両社は本年4月3日、日本を拠点にリチウムイオン電池用正極材を展開する合弁事業に向けた独占交渉を開始したと発表、交渉を続けていた。

戸田工業は金属酸化物の湿式合成技術を基盤とし、リチウムイオン電池正極材、顔料・トナーなどの各種着色材料、磁性体粉末材料・フェライト材料などの磁性体の多様な商品を製造しているが、電池材料事業では、リチウムと金属の化合物であるリチウムイオン二次電池正極材料の研究開発と製造を行っている。

両社の電池材料事業の内容は下記を参照。

2012/7/20    BASFの電池材料事業
2014/4/9   BASF と戸田工業、日本でリチウムイオン電池用正極材の合弁事業に向けた協議を開始 

なお、下記の通り、戸田工業は三井造船と組んでリン酸鉄リチウム(LFP)での正極材事業を行っていた。

ーーー

エコカーや太陽電池などの新エネルギー市場の拡大を受け、リチウムイオン2次電池(LiB)向け材料分野には各社が進出している。

しかし、競争は激化しており、今回BASFと戸田工業が事業を開始するリチウムイオン電池用正極材分野では、三菱化学と三井造船が相次いで撤退を決めている。


三菱化学は2014年8月1日、リチウムイオン電池部材の正極材事業から9月に撤退すると発表した。

付記

同社は三元系正極材を採用している。
三元系は通常、「ニッケル:マンガン:コバルト=1:1:1」(コバルト含有比率約33%)だが、同社は独自の粒子構造制御や改質処理により、正極材の性能を維持しつつ、高価なコバルトの含有比率を10%にまで大幅に低減させる技術を確立した。


電気自動車(EV)用電池向けへの販売が苦戦していた。将来の売り上げ見通しが立たないため、水島事業所(岡山県倉敷市)にある正極材の生産設備を減損処理し、特別損失約10億円を計上した。

三菱化学はリチウムイオン二次電池の主要4材料(電解液・負極材・正極材・セパレータ)すべてを取扱う世界唯一の企業で、各事業部に分散していた電解液、負極、正極、セパレータの事業と研究開発を一括運営する社長直轄プロジェクトを立ち上げ、1999年に電池機材部を新設し、2003年には電池機材事業部に昇格させて、プロジェクトを推進している。

今回、正極材から撤退する。

2010/9/13 三菱化学、リチウムイオン二次電池用負極材の製造能力増強 

ーーー

三井造船は10月23日、正極材事業からの撤退を発表した。戸田工業とのJVのM&Tオリビンを解散する。

「現状では中長期的にも大幅な市場拡大は見込めないことから、経営資源を有効に活用するために製造事業から撤退する」としている。
中国メーカーの台頭で値崩れが進み、顧客開拓も思うように進まなかった。


三井造船と戸田工業は2011年6月、中大型リチウムイオン電池正極材のリン酸鉄リチウム(LiFePO4:LFP) 製造の事業化検討のため、M&Tオリビン(三井造船51%、戸田工業49%)を設立、12月に増資し、三井造船 90%とし、千葉県市原市の三井造船千葉事業所内に年間2,100トンの 製造設備を建設した。

製造するLFPは、リチウムイオン電池の正極材の中でも、安全性が高く、急速充放電が可能、レアメタルを使わない、電池寿命が長いなどの特長を持つ強固な結晶構造の正極材で、プラグインハイブリッド車(PHEV)や電気自動車(EV)、集合住宅やオフィス、学校などに向けての電源システム、業務用の電源装置、スマートグリッド及び電力平準化定置型蓄電池向けに大幅な需要拡大が見込まれるとしていた。

三井造船は、パイロットプラントでの研究を経て、2009年に年産36トンのセミコマーシャルプラントを建設し、品質の改良に取り組んできた。
また、2011年7月にLFP などのリチウムイオン電池正極材料をワールドワイドに製造・販売できる特許実施権をLiFePO4+C Licensing AG(スイス)から取得した。

注)
BASFもLiFePO4+C Licensing AGからLFPバッテリー材料技術のグローバルな製造・販売権の取得を目的とした長期的なライセンス契約を締結している。

戸田工業は、マンガン酸リチウム(LMO)、ニッケル酸リチウム系(LNCA)、ニッケル・コバルト・マンガン酸リチウム系(三元系:LNCM)を事業化しているが、新たに、LFPの事業にも参入する。

工場は2013年5月に完成したが、安価な競合製品が増え、エコカーの普及も進まなかったことから撤退を決めた。

当初は戸田工業が持つ正極材料の技術力や営業力、品質管理の強みを活用し、顧客開拓を進める計画だったが、その後、戸田工業はLFPの事業から実質的に手を引き、BASFとの協業による3元系事業拡大に軸足を移した。

ーーー

LFPの製法には固相法(焼成法)と水熱法がある。

三井造船は固相法で、セラミックス粉末を作る方法として最も一般的に用いられているが 、粉体同士の接触点におけるイオンの熱拡散が唯一の反応推進力であるため、高温・長時間を要し、均一な組成の生成物を得ることが難しく、また、生成物は一般に焼結塊状物となるために粉砕工程が必要であり 、粉砕装置や粉砕媒体からの不純物の混入が避けられない。

一方、水熱法を用いれば 、低温・短時間の反応で組成が均一な単結晶性の微粒子を容易に得ることができるとされる。

住友大阪セメントは、水熱法の開発を進め、2012年にベトナムに年産2000トン能力の新工場を建設した。1万トンレベルまでの設備拡張が可能。

名称:SOC Vietnam
所在地:ベトナム フンイエン省イエンミー地区タンロンⅡ工業団地
出資:住友大阪セメント 100%


 

最近のコメント

月別 アーカイブ