2016年3月アーカイブ

Hanwha Chemical は3月22日、塩素化塩ビの開発に成功、蔚山石油化学産業団地に年産3万トン規模の生産ラインの建設に入ったと発表した。
年末に完成の予定としている。

塩素化塩ビはPVCを塩素化することにより、PVCの優れた性能を損なうことなく耐熱性を向上させたもので、耐熱性が必要とされる給湯用・工業用・スプリンクラー用の配管材などの原料として用いられている。

塩素化塩ビの世界の需要は昨年25万トンに達し、年10%で伸びている。生産しているのは、米国のLubizol や日本のカネカ、積水化学などに限られており、韓国は昨年9千トンを輸入した。

Hanwhaは2012年に始めた研究開発がようやく実を結んだとしている。PVCに比べて価格が高いうえに需要先が一定しており、安定した収益を期待できるとみている。

PVCについては、Hanwhaは蔚山に292千トン、麗川に310千トンのプラントを有している。

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Hanwha Chemical announced on March 22 that it succeeded in developing high value-added chlorinated polyvinyl chloride (CPVC), which has the improved heat and corrosion resistance, with its domestic technology. Since CPVC has a high technology entry barrier, it has been entirely imported until now. Accordingly, Hanwha Chemical has become the first company in the nation that succeeds in domestically producing CPVC. The company recently completed the detailed design and started construction of the production lines with annual capacity of 30,000 tons at the second plant located in Ulsan Petrochemical Industrial Complex, and it will complete the construction by the end of this year.

CPVC has 10 percent more chlorine than existing polyvinyl chloride (PVC) and is very resistant to heat, pressure and corrosion. It is used in producing pipes for fire sprinkler systems, hot water and special pipes for industrial use.

The CPVC market reached 250,000 tons as of last year and is growing 10 percent every year. Only a few companies, such as Lubrizol in the U.S. and Sekisui and Kaneka in Japan, currently produce CPVC and about 9,000 tons of CPVC was imported to Korea last year. The profitability of PVC, which is for general purpose, is worsening as China, the largest market in the world, has raised the self-sufficiency rates, the global economy is showing a downturn and low-priced products have appeared in the market. In a bid to secure the competitiveness in the global market, a strategy to increase the added value of universal products is needed.

Starting with CPVC, Hanwha Chemical is now developing technologies to improve functions and added value of various universal products, including polyethylene (PE) and plasticizer. In addition, the company is planning to lower the dependence on ethylene and diversify its business portfolio by developing products made of variou

- See more at: http://businesskorea.co.kr/english/news/industry/14175-import-replacement-hanwha-chemical-succeeds-localizing-cpvc#sthash.A3IjZHry.dpuf

塩素化塩ビのメーカーの状況は次のとおり。

1) Lubizol

Lubizolは米国の独立系の添加剤専業メーカーで、1959年に塩素化塩ビを最初に事業化した。

ケンタッキー州LouisvilleとベルギーのOevel にプラントを持つが、能力は明らかにしていない。
2011年にLouisville を拡張している。

2013年3月にPhase-1で 85千トン、Phase-2で85千トンの増設 計画を発表した。

同社の現状は下記の通り。

既存 PhaseⅠ Phase II (検討中)
Louisville, Ky 能力非公開
2011年増設
Oevel, Belgy 能力非公開
Deer Park, TX Resin 55 千トン
Compound 65千トン
 2014年末 稼動
Resin 55 千トン
Compound 65千トン
Dahej, India Compound 55千トン
 2016/1稼動
Compound 35千トン
Rayong, Thailand
(下記)
Resin 30千トン
 2015/6稼動
Resin 30千トン

タイの工場は、積水化学とのJV
 社名:
Map Ta Phut Specialty Chemicals
 出資:積水化学 51%、Lubrizol 49%

 両社がJVからレジンを同量引き取り、各自で新設するアジアの製造拠点でコンパウンドの生産と販売を行う。

2) カネカ

カネカは、日本に26千トン、米国子会社Kaneka North Americaで30千トンの能力を持っていたが、2013年7月に米国で20千トンの増強を行い、合計の能力を76千トンとした。

2011年12月にインドにTrience Speciality Chemicals (カネカ 41%、三井物産 20%、Meghmani Organic 39%)を設立し、グジャラート州での年産20千トンの生産計画を進めたが、最終的に合意に達せず、中止となった。


3) 積水化学

積水化学は2003年3月31日、日本カーバイドから塩素化塩ビの商権の譲渡を受け、子会社の徳山積水に33千トンのプラントを建設した。
2013年に40千トンに増設した。

上記の通り、タイにLubrizol とのJVを持ち、年15千トンの引取権を持つ。



ロックフェラー家関連のRockefeller Family Fundは3月23日、化石燃料関連投資を出来るだけ早く解消すると発表した。

世界が化石燃料の使用を止めようとしているときに、 企業がハイドロカーボンの新しいソースを開発し続けるのには健全な論理的根拠はないとし、それらの企業の株を持ち続けることは、経済的にも倫理的にも意味がないとし た。

ExxonMobilについて、1980年代以降、気候変動について隠して大衆を惑わせる一方、多額の投資をして自社のインフラを強化し、新しい開発を行ってきたと述べ、違反行為がなかったか調査すべき とした。そして、ガバナンスの観点から、公共の利益を明らかに無視するような企業とは関係を持つことは出来ないとし、ExxonMobil 及び全ての石炭企業タールサンド企業の株を直ちに処分するよう指示したとしている。

Rockefeller Family Fund の化石燃料への投資は、遺産のほんの一部の130百万ドルに過ぎない。

「Rockfeller 一族はExxonMobil を含む石油産業に長い間投資し、利益を得ていたため、この決定は軽いものではない。しかし、歴史は動く、動かねばならない」と述べている。

ロックフェラー家関係者は2008年、ExxonMobilに企業統治の在り方を変え、代替燃料への支出を増やすよう、すでに呼び掛けていた。
2014
年には、ロックフェラー家関連の別ファンド、Rockfeller Brothers Fundなど複数の慈善団体、非政府組織が、化石燃料関連の投資をやめる方針を示している。

ExxonMobilの広報担当者は、「同ファンドは当社への陰謀に既に資金提供しているため、当社から投資を引き揚げつつあることに驚きはない」とコメントした。

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Rockefeller Family Fundは1967年にJohn D. Rochfeller Jr の2番目の妻のMartha とJr.の息子のJohn、Laurance、Nelson、David によって設立された。

設立以来、環境保護、女性の経済的権利の推進、市民活動の支援などを行ってきた。

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アメリカの石油王 John Rockefellerは、ニューヨーク州の生まれで農民出身だが、クリーブランドで石油精製事業に成功する。
1870年1月10日にStandard Oil of Ohioを創設、アメリカ全製油量の10%を握った。その後、次々と合併を行って1879年にはアメリカの全石油精製の90%を独占した。その過程で弱小企業を倒産に追いこむなど世論批判を受けた。

1890年にアメリカ合衆国下院議会がシャーマン反トラスト法を可決、これがアメリカの全ての独占禁止法の源である。

1911年、Standard Oil は分割された。

Standard Oil の後継会社と、その後の姿は下記の通りである。

分割会社 その後 現在
Standard Oil of Ohio (Sohio)  BPが買収  BP Amoco BP
Standard Oil of Indiana(Stanolind) Amoco
Atlantic & Richfield Atlantic Richfield(ARCO)
Standard Oil of New York(Socony Vacuum Oil と合併→Mobil ExxonMobil
Standard Oil of New Jersey (Esso) Exxon
Standard Oil of Kentucky (Kyso) Socal が買収 Chevron
Standard Oil of California(Socal) Gulf Oil と合併→Chevron →
Texacoを買収→ChevronTexaco
Continental Oil (Conoco) Phillips と統合 ConocoPhillips

国際石油開発帝石(INPEX) がインドネシアで進めてきた大型海底ガス田Abadi LNG の開発計画が大幅な変更を迫られることになった。

INPEX はシェルと共同で、洋上にLNGプラントを浮かべるフローティングLNG(FLNG)方式で政府に認可を申請していたが、ジョコ大統領は3月23日、陸上に建設すべきだとする政府方針を決定した。INPEXは正式な通知を受けた上で今後の対応を検討すると発表した。

付記 INPEXは4月1日にインドネシア政府より陸上LNGによる開発計画の検討を求める内容の通知を受領した。

   今後、通知内容を精査し、早期開発を目指して当局と協議するとしている。

陸上案は、大半の設備を国外で組み立てることが想定される洋上案より、地元経済の刺激効果があるためと見られる。

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国際石油開発帝石(INPEX) は1998年11月にインドネシア政府の公開入札により Masela鉱区の100%権益を取得した。


その後、オペレーターとして探鉱作業を推進し、2000年に掘削した試掘第1号井によりAbadi ガス田を発見した。その後、6坑の評価井掘削を含むガス田評価作業を実施し、同ガス田にはLNG開発に十分な天然ガス埋蔵量を確認した。

参加権益比率はINPEXが90%(オペレーター)で、 インドネシアの有力エネルギー企業PT Energi Mega Persada社の子会社PT EMP Energi Indonesia(EMPI)が10%となった。

2010年12月に第一次として LNG年産250万トンをFLNG方式で開発する開発計画がインドネシア政府より承認され、その後、海底生産施設およびFLNGの基本設計作業を実施した。

2013年6月にEMPIの権益を買収し、INPEXが65%(オペレーター)、Shell 35% の体制となった。

2013年から2014年にかけて追加評価井3坑を掘削した結果、天然ガス埋蔵量の増大が確認され、インドネシア当局から認証を取得した。これを踏まえ、2014年にLNG能力を3倍の750万トンに拡大した「改定開発計画」の承認を申請した。

申請を受けたインドネシア政府の内部で意見が分かれた。

2015年9月に海洋担当調整省(Co-ordinating Ministry of Maritime Affairs)は陸上に建設すれば160億ドルで、洋上の場合の220億ドルにくらべ、60億ドルの節約になると主張した。

He added that the onshore LNG plant on Aru island - which will be linked by a 373-mile pipeline from the Abadi gas field - would result in savings on development spending compared to the FLNG scheme and produce economic spinoffs for the development of the surrounding region. - See more at: http://www.rigzone.com/news/oil_gas/a/143197/Indonesia_Not_Decided_on_Abadi_Dev_Scheme_Despite_Ministers_Claim#sthash.zjNi8Ljp.dpuf
He added that the onshore LNG plant on Aru island - which will be linked by a 373-mile pipeline from the Abadi gas field - would result in savings on development spending compared to the FLNG scheme and produce economic spinoffs for the development of the surrounding region. - See more at: http://www.rigzone.com/news/oil_gas/a/143197/Indonesia_Not_Decided_on_Abadi_Dev_Scheme_Despite_Ministers_Claim#sthash.zjNi8Ljp.dpuf

Abadiガス田から373マイルのパイプラインでAru 島に運び、陸上でLNGにすれば、コストダウンになるだけでなく、近辺の地域の経済発展にも役立つと主張した。

これに対し、エネルギー鉱物資源省と石油·ガス上流レギュレータ(SKK Migas)は、洋上なら148億ドルで、陸上より45億ドル安いと主張し、INPEXとShellも、計画が遅れることとコスト高を理由に、陸上案に反対している。

"We need to make a prudent decision for such a big project ... However, it will be decided soon," Johan said Tuesday. - See more at: http://www.rigzone.com/news/oil_gas/a/143197/Indonesia_Not_Decided_on_Abadi_Dev_Scheme_Despite_Ministers_Claim#sthash.zjNi8Ljp.dpuf

本年2月に、陸上案に賛成する海洋担当調整大臣(Co-ordinating Miniser of Maritime Affairs)が大統領が陸上案に決めたと発言したが、大統領報道官は、大統領はなお検討中であると述べた。地方経済への影響などを含め、両案を検討中であるとし、「このような大規模の事業は慎重に検討する必要がある。しかし、間もなく決定されるだろう」と述べた。

INPEXとShell は決定が遅れているため、現地の従業員を減らすと通告した。SKK Migasは、計画は少なくとも2年は遅れるだろうと述べた。

三井物産は3月23日、三菱商事は3月24日、それぞれ2016年3月期の連結最終損益予想を大幅に引き下げた。
両社とも、初の連結赤字決算となる。

損益予想の引き下げ理由は下記の通りだが、減損損失のうちの大口のもの(チリ銅事業と豪州LNG事業)は両社の共同事業である。

三井物産
事業分野 内容 主な理由 当期損益
税引き後 
  億円
金属 チリ銅事業 Anglo American Sur 銅価格見直し等 -900
カセロネス銅事業 -250
ブラジル資源事業 Vale 減損 -350
豪州石炭事業 長期石炭価格 -250
エネルギー 豪州Browse LNG事業の減損 開発計画遅延 -400
その他原油・ガス資産の減損 長期原油・ガス価格 -150
機械・インフラ 海外発電事業の減損 長期電力価格 -300
合計 -2,600

三菱商事
事業分野 内容 主な理由 当期損益
税引き後 
  億円
金属 チリ銅事業 Anglo American Sur 銅価格見直し等  -2,800
豪州鉄鉱石 鉄鉱石価格下落 -300
南ア フェロクロム フェロクロム価格下落 -200
エネルギー 豪州Browse LNG事業の減損 開発計画遅延 -400
上流部門 アジア 原油・ガス価格 -120
  同   北米   -60
  同   北海 廃坑費見直し -70
シェールガス 遊休資産再評価 -30
その他 -120
その他 海外発電事業 、船舶関連ほか -200
減損損失 合計 -4,300
市況下落による持分損益の悪化等 -200
損益見直し 合計 -4,500

註) いずれも税引き後の損益であり、実際の減損損失計上額とは異なる可能性がある。
    (三菱商事のLNGの減損損失計上額は600億円となっている)

(1) チリ銅事業における減損損失

Anglo American Surは、チリ国内にLos Bronces銅鉱山、El Soldado銅鉱山、Chagres銅製錬所、並びに大型の未開発鉱区などの優良資産を保有する。

同社については、2011年11月に三菱商事が24.5%の出資を発表したが、それまでに、世界最大の銅製錬企業であるCorporación Nacional del Cobre de Chile(コデルコ)と三井物産のJVのAcrux(Inversiones Mineras Acrux SpA)が最大49%の出資を約束していたことで、取り合いとなった。

本件は2012年8月に和解で解決し、次のとおりとなった。(三井物産は2012年11月にAcruxの出資を増加)

2012/8/27 チリ銅鉱山・製錬所運営会社の紛争で和解

両社は今回、昨今の市況及び今後の需給の動向を踏まえ、長期銅価格の見直しを行った結果、減損損失を計上する。

三菱商事は、銅市況の低迷に加え、新規鉱山プロジェクトの開発期間の長期化等を踏まえて総合的に見直したとしている。

同社では、取得時に1ポンド4ドル(8,800$/ton)程度だった銅価格が2ドル(4,400$/ton)程度に下落、 急回復は見込めないとして、中長期の価格見通しを3ドル(6,600$/ton)に引き下げた。

銅市況の推移は下記の通り。

両社の参加時の価格は8000$/tonを超えていたが、最近は4500$程度まで下がっている。

しかし、2005年までを見ると、4000$以下である。2010年頃から2014年頃までが中国の需要増により異常に上昇していたといえる。

三井物産はこれに加え、Minera Lumina Copper Chileのカセロネス銅事業について、足元の操業状況を勘案し、約250億円の減損損失を計上する。

三井物産が25%、Pan Pacific copper (JX日鉱日石金属 66%、三井金属鉱業 34%)が75%出資する。

なお、Pan Pacific copperは、これに隣接するFrontera 地域における銅・金資源の探鉱権益の40%を石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)から譲り受けている。

Pan Pacific copper株主のJXホールディングスは800億円、三井金属鉱業は193億円の減損損失を計上している。

2012/9/13 JX日鉱日石金属と三井金属鉱業、チリ・アルゼンチンの銅・金の探鉱権益を取得 



(2) 豪州LNG事業

豪Browse LNGの当初計画は、西豪州沖合で採掘したガスをパイプラインで圧送し、James Price Pointに建設する施設で精製、液化、出荷するものであった。

両社は折半出資する豪Japan Australia LNG (MIMI) Pty Ltdを通じて、2012年4月に参加した。

しかし、計画を主導するWoodside は
2013年4月にJames Price PointでのLNG建設は投資基準に合致しないと判断したと発表した。
Shell社のFloating LNG技術及びWoodsideが有する上流開発における知見を活用した開発を検討中で、
最終投資決断は2016年後半を予定

両社は、開発実行が当面見送ることとなるため、減損損失を計上した。

なお、当初は東西地区で別のJVをつくっていたが、統合することで合意した。

従来出資比率 新出資比率
East JV West JV
Woodside 34% 17% 30.60%
三井物産・三菱商事 16% 8% 14.40%
Shell 25% 35% 27.00%
PetroChina 8.33% 20% 10.67%
BP 16.67% 20% 17.33%
合計 100% 100% 100%


2013/4/16 三菱商事・三井物産出資の豪Browse LNG計画、採算合わず計画見直し

(3) 三井物産のブラジル資源事業会社Valeの損失取込 (約350億円)

三井物産は2003年に、ブラジル資源事業会社Valeの持株会社であるValepar の株式15%を取得し、役員差入れなどを通じてVale社の経営に参画している。

Valeが2015年12月期の第4四半期決算に減損損失を計上したことにより、取込損失約350億円を計上する。

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その他の商社の決算予想は下記の通り。

住友商事

2014/10/1 住友商事、米国のタイトオイル開発などで大幅な損失計上 

本年1月にマダガスカルのニッケル事業で770億円の減損損失を計上すると発表した。

2016/1/19 住友商事、マダガスカルのAmbatovy ニッケルプロジェクトで約770億円の減損損失を計上

新たにチリの銅開発で140億円、南アの鉄鉱石関連投資で183億円の損失が発生した。1~3月期にも、豪州の鉄鉱石などで追加損失が出る見込みと説明している。

丸紅

丸紅は前期比70.4%増の1800億円とする予想を据え置く。

北海やメキシコ湾での原油開発にからみ減損損失を計上するが、電力や環境インフラなどの増益でカバーする。

伊藤忠

伊藤忠は前期比9.8%増の3300億円という期初予想を据え置いており、このままいけば過去最高益を更新し、業界トップとなる。

生活資材や繊維などが好調で、資本提携した中国最大の国有複合企業CITICグループの利益が寄与する。





米国連邦最高裁は3月21日、Samsung が同社とAppleとの間で争われている知的財産侵害訴訟の判決を見直すよう求めて上訴した件について、Samsungの上訴を認める決定を下した。
連邦最高裁は10月から9カ月にわたり、口頭弁論を開くとみられる。

連邦最高裁が上訴を認める確率は1%にも満たない。連邦最高裁がデザイン特許事件を審理するのは約120年ぶりとなる。

本件経緯は下記の通り。

2011/4  Apple が提訴
    Samsung がスマートフォン「Galaxy S」やタブレット端末「Galaxy Tab」などでAppleの知的財産権を侵害

2012/8/24 陪審団は、SamsungがAppleの一部特許を侵害したとして、1,050百万ドルのAppleの損害を認定

技術特許 
Bounce back ('381):ページの端をスクロールしたとき跳ね返る機能
Single Scroll, Pinch to Zoom ('915):1本指でスロール、2本指でピンチ、ズーム
Tap to Zoom ('163) :画面タップにより文書を拡大
デザイン特許
iPhone Front (D'677) 、② iPhone Back (D'087)、③iPhone Home Screen (D'305)

2013/3/1

Lucy Koh判事は、陪審員による賠償金額の算定方法に2つの法的な誤りが見つかったとし、1次評決で陪審員団が算定した1,050百万ドルの賠償金のうち43%に当たる450.5 百万ドルを削減する」と判決し、
この部分について、
新たな陪審員団に知的財産侵害の損害を再算出するよう命じた。

その後、削減したうち、Galaxy SII AT&T に関する賠償金 40百万ドルを承認した。

2013/11/21  

削減した分についての算出を担当する新しい陪審員は、Samsungに290 百万ドルの支払いを命じた。
この結果、当初の1,050百万ドルの賠償金は、929百万ドルとなった。 (1,050ー451+40+290)

2015/5/18 米連邦巡回区控訴裁判所、 賠償の一部は無効と判断した。

一般に認識されているiPhoneの特徴的な外観やデザインをSamsung がまねたとする「Trade dress」については、米商標法の保護対象にならないiPhoneの機能的要素に基づくものだと判断、損害賠償額を見直すように、下級審に差し戻した。

Trade dress 分は382百万ドルで、これを除くと548百万ドルとなる。

2015/12/14 Samusung が Appleに548百万ドルの損害賠償金支払

2015/12/14 Samsung、米最高裁判所に上告

2015/12/30 iPhone と iPad の特許をめぐるApple、Samsungとの特許係争、続く 


高裁はSamsung が Apple のデザイン特許を侵害しており、特許デザインを使用したSamsungのスマートフォンによる利益の一部を受け取る法的権利がAppleにあると判断したが、Samsung はこれに異議を唱えた。

連邦最高裁が意匠に関する訴訟を取り扱ったのは1800年代までで、その後は扱っていない。

最初の訴訟は1871年のGorham v. Whiteで、Gorham and Co.がスプーンやフォークの取っ手のデザイン("cottage pattern")で特許を取り、評判が良かったが、Whiteが類似品を出した件。


最高裁は、一般人はデザインの違いを認識できないとして、特許侵害と認めた。

1885年のDobson v. Hartford Carpet Co. ではカーペットのデザインが問題となった。


Samsungは申し立てで「スプーンやじゅうたんでは、特許を取得したデザインが本質的な特徴であるかもしれない。しかし、デザインとは全く無関係である顕著な機能性など他に多くの特徴を含むスマートフォンに同じことは当てはまらない」と主張し 、最高裁に対し、「意匠に関する権利がどの範囲まで適用されるのか」、また「どのような賠償を請求できるのか」について指針を示すことを求めた。

これに対し、Appleは、この訴訟を「法的に例外的な事例ではない」と述べた上で、Samsung との法的闘争を「長引かせる」ことがないよう最高裁に求めていた。
Appleはまた、この件は米国の最高裁による解決を必要とするほどの重要な案件ではないとも主張した。

Samsung は、「この判例が効力を持った場合に影響を受けかねない大小すべての米国企業のために、米最高裁判所に上訴することが重要であると考えている」と述べている が、多くの企業、団体がSamsung を支持する法廷助言書(amicus curiae)を提出した

Google、Facebook、eBay、Hewlett-Packard、Dell、Vizioなどの各社に加え、スタンフォード大学やジョージタウン大学などの法律専門家、Public Knowledgeや電子フロンティア財団といったNPO、Computer & Communications Industry AssociationやHispanic Leadership Fundなどの権利擁護団体がそれぞれ提出した。

いずれもSamsung の要求を支持するもので、 「最近の判決は一部装飾的な特許を違反したとの理由で (スマートフォンのような)複雑な革新製品の全体を侵害したと見なしており、憲法的価値と合わない」と述べ、最高裁に対して、デザイン特許に関する定義を明確にすることや、この特許の侵害に関する賠償金の額を制限することなどを求めている 。

これはSamsungに好意をもってのことでなく、情報技術業界の利益がかかる問題であるためだと見られている。

最高裁の決定を受け、Samsung は3月21日の声明で、「われわれの上訴を受理した最高裁の決定を歓迎する。最高裁によるこの判決の見直しは、創造的な活動を支え、革新的な成果に報いるという特許法の公正な解釈を導き出す可能性があるものだ」と述べ た。

ShellとSaudi Aramco は3月16日、両社のJVのMotiva Enterprises LLCの資産を分離する覚書を締結したと発表した。

Motiva は1998年に設立された石油精製・販売会社で、2002年以降、両社の50/50JVとして運営されてきた。

Shell は分離取得する事業と、自社の他の事業(精製、下流)と一体化して運営する。Saudi Aramco も、Shell とのJVを通じて米国の事業を拡大してきたが、それぞれが独自の下流事業の目的に向け動くときだとしている。
AramcoはMotivaの分離後、米国で更に事業を買収する考えを明らかにしている。

Motivaは合計日量100万バレル以上の精製能力の3つの精油所を持つが、次のとおり分割される。

Aramco Shell
社名(Motiva)
製油所 Port Arthur, TX
(元 Texaco )
米国最大の精油所(60万バレル)
単一工場で米国最大の潤滑油プラントを持つ。
Norco, LA
(元 Shell)
能力 23.5万バレル
隣接してShellの石化コンプレックス
 エチレン 2系列 計 150万トン
 ブタジエン 26万トン

 Shell は1995年にPPプラントをUnion Carbide (Dow) に売却
 2000年にResinプラントを現在のMomentiveに売却
Convent, LA
(元 Texaco )
1967年にTexacoが建設
1979年に増設し、能力23万バレル
ガソリンターミナル 26 9


Aramcoは製品のガソリンとディーゼルについて、テキサス、ミシシッピー川流域、大西洋岸中部及び南東部で「Shell ブランド」の独占使用権を受け取る。
これに対し、Shellは、フロリダ、ルイジアナ、北東部で「Shell ブランド」で販売する。

Motivaの歴史は次のとおり。

1988年にTexaco とAramco子会社のSaudi Refining が50/50JVのStar Enterprise を設立し、米国の東部及びメキシコ湾岸のTexacoの石油精製・販売事業を引き継いだ。

1998年にShell とTexacoは2つのJVを設立し、両社の石油精製・販売事業を統合した。
米国西部と中西部の事業のJVを Equilon とした。(Shell 56% / Texaco 44%)

米国東部と東南部の事業(TexacoはSaudi とのJVのStar)のJVをMotivaとした。(Shell 35% / Texaco 32.5% / Saudi 32.5%)

2001年にTexacoとChevronの統合後、Shell とSaudi はChevron持分を買収した。
EquilonはShell 100% となり、Motivaは50/50JVとした。

SKグループの崔泰源会長が2年ぶりに、グループ持株会社であるSK㈱の代表取締役に復帰した。

SK㈱は3月18日、定期株主総会を開き、崔会長の取締役選任などの主要案件を全て可決した。
崔会長は、株主総会直後に開かれた取締役会で代表取締役に選任された後、取締役会議長に就任した。

ーーー

崔会長は2003年、不正な株取引によってグループ会社に損失を与えたとして,背任容疑で逮捕された。前年3月に、グループ支配強化のため,ウォーカーヒル・ホテル株(非上場)とSK㈱の株式交換をした際,ウォーカーヒル・ホテルの株価を不当に高く評価して約700億ウォンの不当利益を得たというもの。

崔会長は一審で懲役3年の実刑判決を受け、7か月程服役したが、2審で執行猶予で釈放された。最終的に2008年に大法院で懲役3年・執行猶予5年を宣告されたが、直後に建国60年での特別赦免となった。

ソウル中央地裁は2013年1月31日、株式投資によって生じた損失を補填するため、グループ会社の資金を横領した特定経済犯罪加重処罰法違反の罪に問われたSKグループ会長の崔泰源被告に対し、懲役4年の実刑判決を言い渡し、身柄を拘束した。再犯 であることも考慮された。

韓国政府は2015年8月14日、光復節(独立記念日)65年を迎えて、2493人を特別恩赦、減刑、復権した。
崔泰源会長も再度恩赦となり、同日出所した。

2013/2/8 韓国SKグループ会長に懲役4年の実刑判決 

これに先立ち2015年4月20日に、SKグループはグループの事実上の持株会社のSK C&Cと持株会社のSKが合併すると発表した。

これまで、崔一族が大株主で、情報システム開発を手掛ける事業会社であるSK C&C が、持株会社のSKに3割超を出資するという形となっており、株式市場からは支配構造が分かりにくいとの指摘が出ていた。

両社は6月29日の株主総会で合併を承認し、8月1日に合併が完了した。

SK C&Cが新株を発行してSKの株式と交換する吸収合併方式をとるが、SKブランドの象徴性やグループアイデンティティ維持のため、合併会社はSK㈱になった。

合併後、崔泰源一家は合併持株会社の持分を30%以上保有する。

崔泰源会長の経営復帰を控え、グループ内の屋上屋構造を解消することにより支配構造を強化する一方で、財務構造の改善によって、新たな成長事業を積極的に推進できる足場を構築することになった。

崔会長は8月14日の出所直後にグループ経営陣に会い、グループの危機克服の現状や国家経済活性化への貢献策、創造経済革新センターの現状などについて報告を受け、事実上業務を開始した。

統合持株会社は、ITサービス、ICT融合、バイオ・製薬、半導体素材・モジュール、LNGバリューチェーンの5大新成長分野を集中的に育成して、2020年までに売上げ200兆ウォン、税引前利益10兆ウォンを達成するという経営目標を提示している。

崔会長はグループ強化に向け、急速に動き出した。

SKは2015年11月、半導体製造プロセスに不可欠な三フッ化窒素(NF3)世界1位のOCIマテリアルズの持分49.1%を買収し、半導体素材事業に本格的に進出できる基盤を作った。
また、国内カーシェアリング1位の「SOCAR」の株式20%を取得した。

SKテレコムはCJハロービジョンを買収し、ITサービス分野の強化に乗り出した。
LNG分野では
崔会長チェ会長が直接中国を訪問し、中国内で最大のLNG発電容量を保有している中國國電集團との合弁案を議論している。

またバイオ・製薬分野では、SKバイオテックを孫会社(SKバイオファーム子会社)から子会社に格上げし、増設計画を打ち出した。

ーーー

崔泰源会長(55歳)は昨年末に不倫を告白、隠し子もいることを明らかにし、妻との離婚意思を明かした。
妻は盧泰愚元大統領の次女で、離婚に応じない考えを示している。

ブルームバーグの世界の富豪リストによると、崔会長は世界367位、韓国5位の富豪で、資産総額は42億ドルとなっている。

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SKの起源は、1939年に日本資本の満綢緞(ジュウタン)が日本の都織物との合弁で作った「鮮京織物」で、1953年に崔鍾建が工場設備一切の払い下げを受け、1956年に法人化した。

1973年に鮮京油化を設立し石油精製に進出、その後、重化学工業部門や建設、ホテル・カジノ運営に進出し、1976年に本体の繊維部門が総合商社となって鮮京と改称した。
(1998年に社名をSKに変更)

1980年に韓国政府の民営化方針を受け、鮮京が大韓石油の政府とGulf Oil 持株を買い取り、100%子会社とした。一時、油公と改称、1997年にSKとした。

韓国では、政府が1962年に大韓石油を設立、1970年にGulf Oil が50%出資した。
子会社大韓油化は1972年に蔚山に韓国最初の石化コンプレックスをつくった。

油公は1987年にARCOとのJVのYukong ARCOを設立し、PO/SM併産プラントを建設した。1992年にARCOが撤退、Yukong ARCOはYukong Oxichemicalと改称、その後、SK Oxichemical 、SK Evertec を経て SKC となった。 

1994年には同じく国営の韓国移動通信の払い下げを受けて「SKテレコム」に改称、同社を韓国の携帯電話業界の最大手にまで成長させ、石油部門と並ぶグループの事業の柱を形成した。

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崔泰源会長が2年ぶりに SK㈱の代表取締役に復帰する一方で、CJグループのCJ とCJ 第一精糖の株主総会では、李在賢会長の取締役選任案件が上程されなかった。
李会長がグループ内の系列会社の取締役の肩書を一つも持たなくなったのは、1994年の就任以来初めて。

CJグループは第一精糖グループが1993年に三星グループから分離したもので、李在賢会長は三星グループ創始者の李秉喆の長男の息子。

ソウル中央地裁は2014年2月、横領、背任、脱税で起訴された李在賢会長に懲役4年、罰金260億ウォン(約25億円)の判決を言い渡した。

李会長は数千億ウォン台の不正資金を運用しながら546億ウォンを脱税し、グループの資産963億ウォンを横領したほか、会社に569億ウォンの損害を与えた背任の罪で2013年7月に在宅のまま起訴された。

李会長は現在、健康問題のため拘束執行停止の状態となっている。

 

BASFは3月16日、韓国でのポリアセタール(POM)の製造に向け、Kolon Plastics との折半出資の合弁会社「Kolon BASF innoPOM, Inc.」を設立する契約を締結したと発表した。

BASFはLudwigshafen に50,000トンのPOMプラントを持ち、Ultraform®の製品名で販売している。
一方、Kolon は金泉に65,000トンのPOMプラントを持っており(後記)、Kocetal® の製品名で販売している。

JVは金泉に70,000トンの設備を新設する。新設備が2018年下半期に稼動すると、金泉の合計能力135,000トンとなり、世界最大のPOM製造コンプレックスとなる。

新設備稼働後は、BASFはLudwigshafenでのPOMの製造を中止する予定。

BASFとKolonは、JVの製品を両社それぞれの製品名とフォーミュレーションで世界中で販売する。

Kolon側は、世界をリードするKolon Plasticsの技術と効率性の高い既存のインフラ基盤が大きな相乗効果を生み出すとしている。

BASF側は、「POM市場は世界中で拡大しており、合弁事業により、高性能で革新的なスペシャリティ製品で需要家をサポートする能力が、特にアジアで強化されることになる」としている。

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Kolonの金泉のPOMプラントは元は東レ技術である。

Kolon Industries と東レは1996年、金泉市にポリアセタールの製造販売のJVの KTP Industries (Kolon Toray Plastics) を設立した。
当初は東レが30%、
Kolon が70% 出資した。

東レ独自開発の簡略化された重合プロセスを採用し、ポリマーベースで20,000トンのプラントを建設した。

その後、1998年東レが増資を全額引受け東レ68.9%、Kolon 31.1%とした。

しかし、2008年6月、東レはKTPへの出資を解消したと発表した。経営資源の集中による樹脂事業のコアABS樹脂、ナイロン樹脂、PBT樹脂、PPS樹脂等)での競争力強化および事業拡大戦略に鑑み、出資を解消することとした

東レ撤退を受け、KTP IndustriesKolon Plastics と改称した。

Kolonは2012年1月に生産能力を20,000トンから65,000トンに引き上げた。

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Kolon グループは韓国の財閥の一つで、1954年に李源万、李源千兄弟により設立された繊維貿易商・開明商事が基である。

1957年にKorea Nylon を設立し、日本から輸入したナイロン糸の布地加工からスタートし、ナイロン原糸の製造を始めた。1969年にKorean Polyester を設立した。

その後、両社をKolon (Nylon) Industries、Kolon (Polyester) Industries と改称し、1981年に両社を合併して Kolon Industries とした。

別途、Kolon グループは1976年にKolon Chemical を設立し、石油樹脂からスタートし、SAP、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂に拡大したが、2007年6月にKolon Industries と合併した。

現在、Kolon Industries 、Chemical Material 部門で繊維、産業資材、フィルム、エレクトロニック資材、エンプラを、Performance Material 部門で石油樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂を扱っている。

なお、SAPについては、1985年に韓国科学技術院と共同で製造技術を開発し、1987年に仁川で商業生産を行なったが、2008年6月にLuckyにSAP事業を87百万ドルで売却した。

2008/6/30 韓国LG Chem、高吸水性樹脂に進出



英国のOsborne 財務相は、3月16日に議会に提出した2016 / 17 年度 (2016年4月〜17年3月 ) 予算案で、北海沖で石油生産を行うエネルギー会社向けの減税措置を明らかにした。

石油収入税(Petroleum Revenue Tax)を事実上、廃止するとしたほか、石油・ガス生産業者に対する追加費用税(Supplementary Charge Tax)を20%から10%に半減する。本年1月1日に遡って適用する。

減税効果は2016 / 17 年度から2020 / 21年度の5年間で約10億ポンド(14億ドル)に上る見込み。

原油相場の急落により、とりわけ北海沖での石油生産が盛んなスコットランド北東部の雇用が大きな打撃を受けているほか、同地方の財政も圧迫していた。

オズボーン財務相は「スコットランドの主要産業と雇用を支援する」と表明した。

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Petroleum Revenue Tax、北海での石油操業の利益に対して英国が油田単位で課している特別税。

第一次石油危機を契機とする原油価格の高騰を受け、政府の税収増加と北海での石油操業における石油会社の過剰利益吸い上げを目的として、1975 年に導入した。

所得税課税前の収入に課せられ、所得税計算上は公租公課として経費処理される。

税率は当初 45 %であったが、1978 年に 60 %、1979 年に 70 %、1983 年以降は 75 %になった。
その後、50%になっていたが、2016年から35%に引き下げられた。今回、これを事実上廃止する。

Supplementary Charge Tax は、石油生産業者に対する法人税の追加税で、2015年1月からは20%となっているが、今回、これを10%に引き下げる。

なお、英国(UK and on the UK Continental Shelf) の石油・ガスの開発及び生産事業から得られた収益に対する法人税は、通称 Ring Fence Corporation tax と呼ばれる。

同一企業で石油事業以外の収益がある場合、石油事業の利益(ring fence profit)で他の事業の損失を消すことは認められない。
石油事業の損失を他の事業の利益で消すことは認められる。

一般の法人税率は、2015年4月以降、課税所得に関わらず20%となった。
2017年4月以降 19%に、2020年4月以降18%に引き下げられる予定。

これに対し、Ring Fence Corporation taxの税率は30%である。

石油事業の税率は下記の通り。

一般事業

石油事業

従来

現状 改正後

表面

net 表面 net 表面 net
Corporation tax 20% 30% 15% 30% 19.5% 30% 30% Petroleum Revenue Taxを控除した所得に課税される。
Supplementary Charge Tax 20% 10% 20% 13.0% 10% 10%
Petroleum Revenue Tax 50% 50% 35% 35.0%  0% 0%
合計 20% 75% 67.5% 40%



ブラジルの国営石油会社Petrobras SAは2016年1月に Braskem の持株 36.1% を売却することを決めた。

Petrobrasを巡っては国を揺るがす騒動が起こった。

同社の元幹部が、同社との契約を希望する建設会社らに賄賂を要求し、契約額の数%相当、総額6千億円規模が与党政治家らに不正献金として渡っていた疑いで、捜査対象は政財界の有力者に広がっており、これまで元官房長官や、建設大手でBraskemの大株主のOdebrechtの経営幹部などが逮捕されている。

2008年から最近までOdebrechtの経営に当たっていた Marcelo Bahia Odebrechtは19年の懲役刑を受けた。

Petrobrasは1300億ドルに上る負債を圧縮し、資金繰りを確保するため、本年に140億ドルの資産売却を検討している。

Petrobras は2月26日、中国国家開発銀行から100億ドルの融資を受けることで合意したと表明した。
2009年には、中国開発銀から100億ドルの融資を受ける代わり、Sinopecに対して10年間にわたり日量20万バレルの石油を提供することで合意しているが、今回も同様に中国企業に対して燃料を供給する。

これまでに3社がBraskem株購入に関心を示しているとされる。
カナダのBrookfield Asset Management とSaudi Aramcoで、もう一社は中国の石油化学事業会社とされる。

中国企業については名前を挙げられていないが、別途、CNOOCが少数持分の購入に関心を示していると報じられている。

問題は、Braskemの主株主のOdebrecht とPetrobrasが意思決定を共同で行 っており、Petrobrasの持分売却の条件に、Odebrechtが売却先をパートナーとして受け入れることが含まれており、Odebrechtが決定を保留していることで売却交渉が止まったままになっている。

Braskemの株主 (過去の経緯は後記の通り)

議決権 全体
Odebrecht 50.1% 38.3% 共同意思決定
Petrobras 36.1% 36.1%
その他 2.9% 25.6%

「その他」に議決権 0.96%をもつ双日が含まれる。

日商岩井と三菱化成は1974年にHDPE製造のため地元企業との合弁でPolialden を設立、1975年にPVC事業のためCPC(その後Trikemに改称)を設立した。
2003年にBraskemは三菱化学、日商岩井から両社の持株を買収したが、日商岩井はBraskem株式と交換した。

現地紙によると、Odebrecht もBraskemの持株を売却することを検討しているとされる。
しかし、今のところ、Odebrechtは売却を否定している。

現地紙によると、Odebrechtの関連会社のOdebrecht 農業法人が背負っている債務100億レアル(約3200億円)の返済計画見直しにあたって、貸付銀行団は追加担保として、Braskemの持分を狙っているとされる。

仮にOdebrecht と Petrobras が売却するとすると、持分総額は時価で111億レアル(3500億円)になるという。

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Petrobras(ブラジル国営石油会社)とOdebrecht(Braskemの主株主)2010年1月24日、Petrobras 40% / UNIPAR 60%出資のQuattor Petrochemical のUNIPAR持株を買収し、同社をBraskemに統合すると発表した。買収額は478百万ドル。

また、PetrobrasBraskemへの出資を増加する。

Odebrechtは議決権の50.1%を保持するが、 Petrobras OdebrechtBraskemでの意思決定を共同で行う。
このため、両社は持株会社
BRK Investimentos Petroquimicosを設立する。

2010/1/25 BraskemとPetrobrasの石油化学事業統合

                          


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Braskemの能力は下記の通り。(千トン)

シャープは3月17日、蚊の習性と空気清浄機の吸引力を利用し、薬剤を使わずに蚊を捕獲するプラズマクラスター空気清浄機『蚊取空清』を発売すると発表した。

蚊が媒介する伝染病に悩むマレーシアの保健省医療研究所の協力を得て、6年がかりで開発、2015年秋から東南アジア6か国で発売し、半年間で3万台近く売れた。
シャープの実験では、6畳の部屋で22時間動かしたところ、9割前後の蚊を捕獲できたという。

空気清浄機としても高性能で、花粉の季節に役立つ「花粉運転」や睡眠に適した「おやすみ運転」を搭載しているほか、「スピード循環気流」と3つのフィルターで集塵・脱臭 する。

「スピード循環気流」
プラスとマイナス両方の静電気を除去できるプラズマクラスターイオンで、微小な粒子が壁などに付着するのを防ぎながら遠くのホコリも引き寄せる。

3つのフィルター
 ・大きなホコリを入り口でブロックする「プレフィルター」
 ・空中に漂うタバコ臭やペット臭、料理臭を脱臭する「脱臭フィルター」
 ・0.3μmの微小な粒子を99.97%以上集塵する「静電HEPAフィルター」

発売日は4月23日で、想定価格は税抜き5万円。

蚊取り機能の仕組みは次の通り。

「誘う」 蚊の習性の利用 360nmの紫外線に近寄る 360nmを含む紫外線を発光するUVライトで誘う
黒色など蚊自身が目立たない色を好む ブラックボディに近付かせる
暗がりなど狭い所に隠れる習性 小窓で誘惑
「吸い込む」 吸引力 近寄ってきた蚊を空気清浄する吸引の気流で吸い込む
「捕まえる」 粘着式 粘着式「蚊取りシート」で蚊を捕獲


蚊を捕獲した粘着式「蚊取りシート」は、2つに折り畳んで簡単に捨てられる。
薬剤を一切使わないので、小さな子供や年寄り、ペットのいる家庭などで幅広く使用できる。

キヤノンは3月17日、東芝の医療機器子会社、東芝メディカルシステムズを買収する契約を結んだと発表した。

3月9日に東芝から独占交渉権を得て協議を続け、合意したもの。買収額は6655億円で3月17日に決済した。
これとは別に、東芝アメリカが保有する東芝アメリカメディカルシステムズ等の株式を東芝メディカルシステムズに約225億円で譲渡した。


東芝は2015年12月21日、画像診断装置などを手掛ける全額出資子会社の東芝メディカルシステムズを売却する方針を明らかにした。「少なくとも50%以上、場合によっては100%の株式売却も考える」としている。

2016/1/5 東芝メディカルシステムズの争奪戦?

3月4日に実施した第2次入札にはキヤノン、富士フイルム、コニカミノルタと英投資会社Permiraの企業連合の3陣営が応札していた。

東芝は3月9日の取締役会で東芝メディカルシステムズの売却先としてキヤノンを選び、独占交渉権を付与した。
キヤノン側が示した7000億円規模の買収額や、事業の重複が少なく、独占禁止法の審査が容易で売却手続きが円滑に進むとみられる点を重視した。

一方、富士フイルムホールディングスは3月16日、東芝メディカルシステムズの売却に関し、東芝宛に質問状を送付した。
売却手続きに疑問があると訴え、キヤノンと最終合意を結ぶ前に回答するよう求めた。

東芝が2月4日に発表した2016年3月期の損益予想は、売却益を含まない前提で、7100億円の赤字となっている。東芝が3月末までに東芝メディカルの売却益を計上できれば、債務超過に陥るリスクが遠のくが、質問状では、「キヤノンによる東芝メディカルの株式取得手続きが本年3月までに完了し、2016年3月期決算で売却益計上が可能とは考え難い」と指摘している。

独禁法第10条では、(株式取得で)一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合には、取得してはならないとしている。

独禁法第10条2項で、会社が他の会社の株式取得する際、一定の基準に当たる場合には、公正取引委員会に事前に届出しなければならないとされている。

これによれば、独禁法による承認を得るまでは株式を取得できないこととなる。

3月中に承認を得るのは極めて難しい。日本以外でも、米国や中国の承認を得る必要がある。

この問題に対処するため、キヤノンは異例な手法をとった。

東芝は発表で次のとおり述べている。

当社は、本日東芝メディカルシステムズの売却を決定し、キヤノンと株式等譲渡契約書を締結いたしました。決済は本日完了しており、東芝メディカルは確定的に当社の子会社ではなくなりますが、キヤノンが主要各国の競争法規制当局からのクリアランスを得られた時点で子会社とするために、それまでの間は独立した第三者であるMSホールディングが東芝メディカルの議決権を保有することになります。

株式の譲渡先は明確にキヤノンであるが、当面の東芝メディカルの議決権は購入したキヤノンではなく、MSホールディングが保有する。

MSホールディングは株式の保有及び運用を目的として設立された特別目的会社で、株主は東芝とキヤノンのいずれからも独立した第三者の3人。

宮原賢次(住友商事名誉顧問) 33.3%
吉戒修一(弁護士・元東京高裁長官) 33.3%
横瀬元治(公認会計士・元あずさ監査法人専務理事) 33.3%

独禁法第10条2項の規定は、具体的には、取得後の議決権の数の割合が新たに20%又は50%を超えることとなる場合となっている。キヤノンが株式を取得するが、議決権は第三者のMSホールディングが保有するため、条文の上からは公取委の承認前の株式取得は認められることになる 。

キヤノンは公取委と海外の当局の承認を得た時点で、議決権を取得し、正式に子会社とすることになる。

東芝は、この会計処理が認められた場合、2016年3月期に売却益 5900億円を計上する考えで、「慎重に検討している」としている。

しかし、独禁法の条文は、普通株式の取得=議決権の取得を前提にしており、これが認められるかどうか、疑問である。
公取委の承認を得るまでの間の東芝メディカルの運営にキヤノンの意向が反映されないとの担保が取れるだろうか。

富士フィルムは3月17日、「これが認められるなら、独禁法が形骸化するのではないか」と批判した。

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東芝は3月18日、家庭電器事業の売却も発表した。

テレビ、生活家電などの開発、製造、販売を行う東芝ライフスタイルについて、映像事業を東芝グループに移管したうえで、株式の大半を美的集団に売却する基本合意書を締結した。
売上規模は2014年度連結で2,254億円となる。

今後、2016年3月末までの最終合意に向け協議する。

対象事業は売却完了後も、「東芝ブランド」の冷蔵庫、洗濯機、掃除機やその他の小型家電などの白物家電をグローバルに開発・製造・販売を継続する。

東芝と美的集団は、コンプレッサー、小型家電およびインバーター等の分野で20年以上にわたり強固な協力関係を構築している。

映像事業(パソコン・タブレット:Dynabook、液晶テレビ:REGZA、その他)は東芝グループ内で事業を継続する。

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東芝メディカルと家電事業売却の発表と同時に、東芝は半導体製造棟の建設について発表した。

3次元フラッシュメモリの生産拡大を目的に、四日市工場に隣接する土地に新製造棟を建設し生産設備に投資する計画を取締役会で承認した。

この計画に3年間をめどに約3600億円を投資する。

日立化成は3月15日、再生医療等製品の開発を行っているCaladrius Biosciences, Inc.の子会社であり、再生医療用細胞の受託製造の分野で米国最大手の一社であるPCT, LLC, a Caladrius Company へ出資するとともに技術提携契約を締結し、再生医療用細胞等日本国内向けの受託製造事業に参入すると発表した。

PCTは再生医療用細胞の受託製造で17年間の実績を持つ。需要家のニーズに応じ、開発・製造のどの段階でも支援を行う。



日立化成はPCTの株式 19.9% を1,940万ドルで購入する。Caladrius Biosciencesは残り80.1%を保有する。

日立化成は、PCT が行う米国における受託製造事業の経営に参画するほか、PCT から本事業に関する技術およびノウハウの供与を受け(日本を含むアジア地域がテリトリー)、再生医療用細胞等日本国内向けの受託製造事業に2018 年度をめどに参入する。
2030
年度に売上高 100億円を目指す。 

PCT からの技術およびノウハウの取得に加え、日立グループの技術支援を受け、自動化設備等を備えた生産管理システムを開発することで、高品質・低コストの再生医療用細胞等の受託製造が可能となる。

日立はPCTに一時金として560万円を支払うとともに、事業収入に応じ、サービスフィとロイヤリティを支払う。
日本とアジアにおける事業の投資資金と運営費用は日立が負担する。

日立とPCTは更に、欧州でのJV設立について検討することで合意した。

ーーー

再生医療は、けがや病気で損傷した臓器および免疫の機能を回復させるため、細胞を体外で培養するなどして体に移植する治療法であり、がん免疫療法や、体性幹細胞・iPS 細胞等を用いた治療法がある。

近年、特にがん免疫療法、体性幹細胞を用いた治療法の臨床応用例が急増している。

さらに日本での法規制緩和およびiPS 細胞の実用化等により、再生医療の急速な立ち上がりが期待され、周辺産業市場は2025 年頃から急拡大し、2030 年には5 兆円、2050 年には15 兆円の世界市場が見込まれている。
(経済産業省「再生医療の実用化・産業化に関する報告書」2013 年)

日本では、2014 年11 月、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」の施行により、細胞培養加工について、医療機関から企業への外部委託が可能となり、さらに「医薬品、医療機器等の品質、有効性および安全性の確保等に関する法律(略称: 医薬品医療機器等法)」の施行により、再生医療等製品の特性に応じた早期承認が可能となった。

これらにより、国内再生医療市場の急速な拡大が期待されている。

ーーー

日立化成は、1981 年から診断薬を中心とした医療関連製品を手掛けている。

 扱い製品

・臨床化学自動分析装置:特定健診に必要な血液検査項目がこれ1台で測定可能
・同時多項目アレルゲン特異的IgE 測定試薬:血清を用いてアレルギーの原因となる物質の特異的IgEを測定
・アレルギー性結膜疾患迅速測定試薬
・抗クラミジア トラコマチス IgA、IgG、IgM抗体測定試薬:
性感染症の一種であるクラミジア トラコマチス感染症を診断する検査試薬

医薬品医療機器等法の下での医薬品の臨床試験、薬事承認取得および製造販売で蓄積してきたノウハウを生かし、高品質と低コスト化を両立した、がん免疫療法用をはじめとする細胞の自動培養システムの確立および本事業の早期立ち上げを目指す。

さらに、容器や試薬などの消耗材についても取り組む。



DSMの変身

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DSM は2015年3月、ポリマー中間体(カプロラクタムおよびアクリロニトリル)事業およびコンポジットレジン事業を拠出し、英国の投資顧問会社であるCVC Capital Partners とともに新会社ChemicaInvest を設立すると発表した。

新会社にはCVCが65%、DSMが35%を出資する。

DSMが拠出する事業と能力は下記の通り。(千トン)

場所 カプロラクタム アクリロニトリル Composite Resins
オランダ Sittard-Geleen 工場 270 Sittard-Geleen 工場  280 Schllnebeek 工場
フランス         Compiegne 工場
イタリア         Filago 工場
中国 DSM Nanjing Chemical 
(Sinopec 40%出資)
400     Jinling DSM Resins
(Sinopec 25%出資)
米国 DSM North America
(Shaw 引取権 45)
250      
合計   920   280  
全社 Licensing    


カプロラクタムについては、DSMは自社のナイロン原料用の少なくとも80%分の引取権を15年分確保する。

2015年7月31日、この取引が完了し、新会社 ChemicaInvest がスタートした。

このうちDSM Acrylonitrileについては、2015年12月1日に AnQore と改称した。
acrylonitrile (AN) を基盤("core") にするという意味。

DSM Caprolactamは2016年1月18日に Fibrant と改称した。

DSM Composite Resins はAliancys と改称した。

ーーー

DSMは2007年に新しい戦略 Vision 2010 Building on Strengths strategy を発表した。

Life Sciences Materials Sciences へのシフトを進める。

2007/10/3 DSMの経営方針


DSM
20101221日、米国のMartek Biosciences10.87億ドルで買収する契約を締結したと発表した。

この買収はDSMLife Sciences Materials Sciences会社に変身して最初の買収で、Nutritionを強化するという同社の方針に沿うものである。

2011/1/5 DSMMartek Biosciencesを買収 再構築をほぼ完成 

中国国有化学大手の中国中化集団(Sinochem Group)は2010年1217日、DSM の抗感染症薬事業(DSM Anti-Infectives)50%を買収すると発表した。
社名は DSM Sinochem Pharmaとなった。

2010/12/23  中国シノケム、DSMの抗感染症薬事業の50%を買収

DSMと未公開株式投資会社のJLL Partners は2013年11月、DSM Pharmaceutical Productsと(JLL が大株主の)Patheon Inc. を統合し、医薬品メーカーに対する製剤開発・受託製造機関(CDMO)の世界的リーダーをつくると発表した。
新会社はDPxで、JLLが51%、DSMが49%出資する。

これにより、DSMの医薬品部門は、Sinochemとの50/50JVのDSM Sinochem Pharma とDSMが49%出資のDPx の、いずれも持分法会社のみとなった。

今回のポリマー中間体およびコンポジットレジン事業の拠出で同社の変身はほぼ完了した。


現在の主力製品は以下の通り。

Performance Materials
Engineering Plastics ナイロン、高機能プラスチック
Dyneema 超高分子ポリエチレン繊維
Resins & Functional   Materials コーティングレジン、機能材料
---
Nutrition   ビタミンの世界市場ではトップシェア、世界で唯一ビタミン全13種類を扱う。
Animal Nutrition &    Health 動物用飼料
Human Nutrition &    Health 食品、製薬向け
Personal Care 化粧品向け(スキンケアの有効成分やUVフィルター、乳化剤等)
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Emergin Business Areas
Biomedical バイオメディカル素材と、医療機器や、ドラッグデリバリーシステムに用いるコーティング剤
Bio-based Products トウモロコシの非可食部分を使ったバイオエタノールを世界で初めて商業生産
バイオコハク酸などを世界に先駆けて開発
Advanced Surfaces 高品質のコーティング剤


三井物産は3月10日、下記の2つのJVを通じてミャンマーでの肥料事業に参画すると発表した。

1) シンガポールに投資会社BMM Venture (S) Pte. Ltd を設立

東南アジアの化学品販売大手で175年の歴史を持つ Behn Meyer が51%、三井物産が49%を出資

2) ミャンマーに肥料の製造・販売及び輸入肥料販売を行う事業会社 Agri First Co.,Ltd.(AFC)を設立

BMM Venture (S) が60%、ミャンマーのMyanmar Agribusiness Public Corporation(MAPCO)が40%を出資

三井物産はBehn Meyer とは肥料・農薬分野で長年の取引関係がある。

MAPCOは2012年に設立された企業で、ミャンマー農業の発展に寄与する中核的な存在と目されている。
三井物産は、2013年2月にミャンマーでコメ事業への参入を発表、MAPCOとコメ事業で幅広く提携した。

三井物産とMAPCOは2013年9月に 、ミャンマーでコメとコメ製品を生産するため、Myanmar Japan Rice Industry を設立した。
三井物産が49%、MAPCOが51%出資した。

トゥワンテ、ネピドー、チャイクレ、ラトパタンの4箇所に精米工場を建設、インドネシアなどのアジアやモザンビークをはじめとするアフリカ東部にコメを輸出する。
精米以外に、くず米を原料とする麺や米ぬかを使った食用油、油かすを利用した飼料も生産する

今回設立するAgri First は、ミャンマーのティラワ工業団地内に約12億円を投じて年間10万トン規模の粒状配合肥料の製造設備と倉庫等を建設する。

2017年5月の操業開始を目指しており、Behn Meyerが有する粒状配合肥料の製造・販売に関する知見と経験、MAPCOの国内農業従事者とのネットワーク、さらに肥料の原料開発、物流、販売事業に長年取り組んで来た三井物産のファイナンス・物流・調達・マーケティング機能を融合し、ミャンマーの農業の発展に貢献してい くとしている。

.. ミャンマーには3つの経済特区計画がある。

北部のチャウピュー(Kyaukpyu)で中国が開発しており、既に中国向けの原油とガスのパイプラインが完成している。

2013/5/24 パイプライン万里長城が完成

ヤンゴン南部のティラワ(Thilawa SEZ)は日本が担当する。
2015年9月23日に開業式が行われた。

2013/5/29 ミャンマーの経済特区

南部のDawei SEZはタイが担当する。

2015/8/18 ミャンマーのDawei 経済特区、ようやく前進 


ミャンマーは日本の約1.8倍の国土、約2.8倍の農用地面積を有しており、二期作や二毛作に適した気候と水資源にも恵まれ、農業分野において高い成長が期待されてい る。

現在のミャンマーの肥料需要は100万トン超の水準で推移しており、農地面積や農作物の種類が似通っているベトナムやタイなどと比較すると、その規模は約5分の1程度にとどまっているため、今後の高い伸びが予想されてい る。

日本とミャンマーの国土と農用地面積

ミャンマー日本
面積(万ha)比率(%)面積(万ha)比率(%)
国土全体 6,766 100.0 3,780 100.0
農用地 1,259 18.6 455 12.0

出所:農林水産省ホームページ

三井物産は新中期経営計画で掲げた7つの攻め筋における事業展開に取り組んでいる。

ハイドロカーボンチェーン エネルギーの上流~下流、関連事業の展開
資源(地下 + 地上)・素材 資源採掘から素材加工、循環型社会構築への取組
食糧と農業 食糧増産と食の安定供給に貢献するソリューション提供
インフラ 国造りへの貢献とインフラを起点とするビジネスの広がり
モビリティ 輸送機械等の製造・販売・金融・関連サービス
メディカル・ヘルスケア 病院を中核とした事業展開と医薬バリューチェーン
衣食住と高付加価値サービス 次世代機能(IT/金融/物流)活用による消費者連動型ビジネス

本件は農業資材事業の基盤拡大を通じ、「食糧と農業」の攻め筋を強化するもの。

三井物産はこれを機に、これまでの日本、欧米、南米といった地域に加え、今後ミャンマーをはじめとする東南アジアにおける肥料・農業資材関連ビジネスへの取り組みを強化してい く。



Rio Tintoは3月1日、豪州NSW州Hunter ValleyのBengalla 炭鉱の権利の40%を豪州のNew Hope Corporation に616.7百万米ドルで売却完了したと発表した。

Rio Tinto は三菱商事の子会社 Mitsubishi DevelopmentとのJVのCoal & Allied(Rio 80%、Mitsubishi 20%) で豪州で石炭事業を行っていた。
Bengalla事業は、Coal & Alliedが40%、豪州のWesfarmersが40%、台湾電力が10%、三井物産が10%の出資をしていた。

Rio Tintoは2015年9月にNew Hope との契約を締結したが、それには2つの付帯条件がついている。

 1) Coal & Allied を改組し、Rio Tinto 100% とすること

 2) 他の株主のWesfarmers、台湾電力、三井物産がJVの先買権を放棄すること。

先ず、1) については、Mitsubishi Development はCoal & Allied の持分20%をRio Tintoに譲ってRio Tinto 100%とし、代わりにHunter Valley炭鉱の持分32.4%を受け取った。
(従来Coal & Allied を通して間接的にHunter Valleyの20%を所有していたが、直接32.4%を出資する。)

2) については三社とも先買権を放棄した。New Hopeの買値が高過ぎ、対抗できない。

これにより、条件が満たされ、売却が完了した。

Rio Tintoは2013年1月から売却を進めており、これで売却額は47億ドルとなった。

豪州の炭鉱関連では、2013年10月にクイーンズランド州Clermont 炭鉱の権益 50.1% を、住友商事とGlencoreの50/50JVのGS Coal に1,015百万米ドルで売却した。

本年1月には、Rio Tinto はCoal & AlliedのMount Pleasant鉱山をMACH Energy Australia に224 百万米ドル プラス ロイヤリティで売却する契約を締結している。

Rio Tinto がCoal & Allied の100%株主となった結果、Bengalla炭鉱の権利40%の売却収入は全額 Rio Tintoに入る。

Rio Tinto と Coal & Alliedの関連事業は下記の通りとなる。(青字は昨年来の変更)

Coal & Allied
(Rio Tinto 100%)
Mitsubishi
Development
Others
Coal & Allied 0% (←20%)
Bengalla 0% (←40%) Wesfarmers 40%
台湾電力 10%
三井物産 10%
New Hope 40%
Hunter Valley 67.6%(←100%) 32.4% (←間接20%)
Mount Thorley 80% POSCO Australia 20%
Warkworth Rio 55.57%
(子会社 26.82%)
( --------- 28.75%)
28.9% 新日鉄住金 9.53%
三菱マテリアル 6%
Mount Pleasant 0% (←100%) MACH Energy Australia 100%
Clermont Rio 0% (←50.1%) 31.4% GS Coal 50.1% (←0%)
〈住商 50% / Glencore 50%〉
電源開発  15.0%
石炭資源開発 3.5%
Kestrel

Rio 80% 三井物産 20%
Hail Creek Rio 82%
(子会社Queensland Coal)
新日鉄住金 8%
丸紅     6.67%
住友商事  3.33%


日本化学会は平成21年度から化学関連の学術あるいは化学技術遺産の中で特に歴史的に高い価値を有する貴重な史料を認定する『化学遺産認定制度』を開始し、これまでの6回で33件をそれぞれ認定・顕彰している。

このほど5件を第7回化学遺産に認定した。これで化学遺産認定は38件となった。

3月26日に日本化学会第96春季年会に合わせ、第10回化学遺産市民公開講座を開催し、内容を紹介する。

実施日 3月26日(土) 9:30-12: 30
会 場 同志社大学京田辺キャンパス 恵道館2階203教室(京都府京田辺市多々羅都谷1-3)

新たに化学遺産に認定されたのは次の5件。

◇「日本の写真化学の始祖<上野彦馬>関連資料」 

上野彦馬は、幕末期から明治時代にかけて活躍した日本初の写真家として知られる。
長崎でオランダ語を学び、化学をポンペに師事するなど積極的に知識の蓄積を図る過程で湿板写真の研究に没頭する。
1862年には『舎密局必携』を発表、化学の教科書として明治6,7年頃まで使用された。

銀板写真から湿板写真、乾板写真へと写真技術が進展する中で、常に最先端の技術を習得し日本の写真化学・撮影術の基礎を築いた。

◇「明治期日本の化学の先駆者・化学会初代会長 久原躬弦関係資料」 

1877年に東京大学理学部化学科を最初に卒業生した3人のうちの1人。
化学会(現在の日本化学会)初代会長となる。
東京大学教授・第一高等中学校校長などを経て京都帝国大学教授となり、総長にも就任。日本の理論有機化学の草分けとなり、国際学会で活躍した。

◇「野副鐵男の化学遺産 / 非ベンゼン系芳香族化合物資料と化学者サイン帳」 

野副鐵男は、台北帝国大学でタイワンヒノキの精油からヒノキチオールと名付けた物質を単離し、1948年帰国後これが不飽和七員環構造を含み、芳香族を示すことを明らかにした。その後、非ベンゼン系芳香族化学という新しい分野を創始し確立した。

野副博士はその発見と構造研究により文化勲章を受章した。

◇「日本の高圧法ポリエチレン工業の発祥を示す資料」

第二次大戦中、海軍は連合国から捕獲した電波兵器の同軸ケーブルの蝋状のポリエチレンをテストした結果、化学薬品に対して非常に安定していると同時に電気的特性が抜群で、なかでも高周波絶縁性が特に優れていることが分かった。そこで海軍は、電気通信試験所、阪大の谷久也・呉祐吉両研究所、京大の児玉信次郎研究室に緊急研究開発を委託した。電気通信試験所はこれの研究員が野口研究所に移ったため、野口研究所に任せた。
栂野棟彦 「昭和を彩った日本の石油化学工業」)

戦時中のポリスチレンの研究については 2011/4/16  塩野香料とポリスチレン

1943年から海軍の委託を受けて野口研究所―日本窒素肥料、京都大学―住友化学工業、大阪大学―三井化学工業の3グループで研究され、1945年1月に日本窒素肥料水俣工場で小規模に工業化された。しかし、同年5月に空爆を受けて設備が完全に破壊された。

戦後、京都大学で研究が再開され、連続中間試験が行われた。その設計図、研究ノート、研究報告書が化学遺産に認定された。

◇「日本の近代的陶磁器産業の発展に貢献したG・ワグネル関係資料」 

ドイツ出身のGottfried Wagenerは1881年に東京大学理学部化学科教授となり、渋沢栄一と共同で日本の近代的陶磁器産業の礎となる吾妻焼の窯を築いた。
吾妻焼は「旭焼」と名が改められた。旭焼は、日本画の持つ筆の運びと多彩な色彩における濃淡表現をそのまま損なうことなく、絵付けされた陶器として知られる。

http://www.shibusawa.or.jp/museum/newsletter/338.html

過去の化学遺産

2010/3/18
化学遺産認定
第1号  杏雨書屋蔵 宇田川榕菴化学関係資料
第2号  上中啓三 アドレナリン実験ノート
第3号  具留多味酸(グルタミン酸) 試料
第4号  ルブラン法炭酸ソーダ製造装置塩酸吸収塔
第5号  ビスコース法レーヨン工業の発祥を示す資料
第6号  カザレー式アンモニア合成装置および関連資料
2011/3/17
化学遺産、第二回認定
第7号 日本最初の化学講義録 朋百舎密書(ポンペせいみしょ)
第8号 「化学新書」など日本学士院蔵 川本幸民化学関係資料
第9号 「日本のセルロイド工業の発祥を示す建物および資料」
第10号 日本の板硝子(ガラス)工業の発祥を示す資料
2012/3/17
化学遺産、第三回認定
第11号 眞島利行ウルシオール研究関連資料
第12号 田丸節郎資料(写真および書簡類)
第13号 鈴木梅太郎ビタミンB1発見関係資料
第14号 日本の合成染料工業発祥に関するベンゼン精製装置
第15号 日本初期の塩化ビニル樹脂成形加工品
第16号 日本のビニロン工業の発祥を示す資料
第17号 日本のセメント産業の発祥を示す資料
2013/3/21
化学遺産、第四回認定
第18号 小川正孝のニッポニウム発見:明治日本の化学の曙
第19号 女性化学者のさきがけ、黒田チカの天然色素研究関連資料
第20号 フィッシャー・トロプシュ法による人造石油に関わる資料
第21号 国産技術によるアンモニア合成(東工試法)の開発とその企業化に関する資料
第22号 日本における塩素酸カリウム電解工業の発祥を示す資料
2014/3/20  
第5回化学遺産認定
第23号 日本の近代化学の礎を築いた櫻井錠二に関する資料
第24号 エフェドリンの発見および女子教育に貢献のあった長井長義関連資料
第25号 旧第五高等学校化学実験場および旧第四高等学校物理化学教室
第26号 化学技術者の先駆け 宇都宮三郎資料
第27号 日本のプラスチック産業の発展を支えたIsoma射出成形機及び金型
第28号 日本初のアルミニウム生産の工業化に関わる資料
2015/3/19
第6回化学遺産
第29号 早稲田大学蔵 宇田川榕菴化学関係資料 
第30号 工業用高圧油脂分解器(オートクレーブ)
第31号 日本の工業用アルコール産業の発祥を示す資料
第32号 日本の塗料工業の発祥を示す資料
第33号 日本のナイロン工業の発祥を示す資料

子会社の買収を巡る東京国税局の追徴課税を不服として、ヤフーが国に約178億円の課税処分取り消しを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷は2月29日、ヤフーの上告を棄却した。課税を適法とした一、二審判決が確定した。

第1小法廷は、合併など企業の組織再編において、税負担を不当に減少させる租税回避に当たる要件について初めて判断し、通常は想定されない方法や、実態とかけ離れた形をつくり出すなど不自然なものかどうか、合理的な理由があるか―という基準を示した。

その上で、ヤフーが行った一連の組織再編は「明らかに不自然で、税制を乱用した」と指摘し、請求を棄却した東京高裁の判断は正当とした。

事態は以下の通り。

当初の状況

IDCソルージョンズ(IDCS)は2007年3月期以後利益を上げるようになったが、繰越損失の繰越期限切れが予想された。

2008年12月26日、ヤフーの代表取締役がIDCSの取締役副社長("非常勤で無報酬")に就任した。

合併による損失引継ぎの条件として、「合併法人と被合併法人との間に支配関係が生じる前から被合併法人の社長、副社長等の経営者クラスの役員となっている者が、合併後の合併法人でも、同じく特定役員として残ると見込まれること」(特定役員引継要件)がある。

なお、ヤフーによるIDCS買収時にはIDCSの他の役員はすべて退任している。

そのわずか2か月後の2009年2月、IDCSが会社分割により営業部門を切り出し、100%子会社のIDCフロンティア(IDCF)を新設した。

IDCSが有していた繰越欠損金の一部はIDCF株式譲渡益によって消滅したが、IDCFにおいて「のれん」(5年間にわたって損金算入可能な資産調整勘定)が計上された。(これにより、繰越損失の繰越期限が延長される)

2009年2月、ソフトバンクがIDCS株式100%をヤフーに約450億円で譲渡した。

その後、2009年3月29日にIDCSがIDCF株式100%をヤフーに譲渡、翌日の3月30日にヤフーがIDCSを吸収合併した。

IDCFの資産調整勘定(5年間の損金算入)を先ずヤフーに移してしまってから、その後にIDCSを合併した。

ヤフーはIDCSの欠損金約540億円を自社の利益と相殺して税務処理しようとしたが、税務当局が認めず約178億円を追徴課税した。

ーーー

本件は①ヤフー事件、②IDCF(IDCフロンティア)事件の2つに分かれる。

 ①ヤフーとIDCSの合併においてIDCSの青色欠損金の引継ぎが認められるか。

直前に IDCS取締役副社長に就任させた行為を含めてヤフーの一連の行為が、IDCSの未処理繰越欠損金額をヤフーの欠損金額とみなして損金算入することを目的とした異常ないし変則的なものであるのかどうか。

 ②IDCFの会社分割は適格分割かどうか、資産調整勘定が認められるか。

「のれん」(資産調整勘定)を計上し、その損金算入を目的とした異常ないし変則的なものかどうか。

東京地裁は、ヤフー社長のIDCS取締役副社長就任を以下の理由で税法上否認し、その結果、IDCSの繰越欠損金のヤフーへの承継も否認した。

IDCSの取締役副社長に就任してからIDCS買収までの期間が約2か月程度しかなく極めて短いこと
IDCS取締役副社長としてIDCSのデータセンター事業に固有の経営に関与していたと評価することはできないこと
IDCSの経営を担ってきた役員はいずれもヤフーとの合併後に役員に就任しなかったこと

IDCFの分割についても、租税回避行為と認め、国税局による「のれん」の損金否認を認めた。
ここでは、営業部門のみIDCFをさきにヤフーに譲渡する事業上の必要性等が認められなかった。

大津地方裁判所は3月9日、高浜原子力発電所3号機と4号機について、「福島の原発事故を踏まえた事故対策や緊急時の対応方法に危惧すべき点があるのに、関西電力は十分に説明していない」として、運転の停止を命じる仮処分の決定を出した。

滋賀県内の高浜原発から約30~70キロ圏内に居住する住民29人が、地震災害に伴う重大事故が原発で起きた場合、放射性物質で琵琶湖が汚染されて水が飲めなくなり、生命や健康を脅かされるとして、運転の停止を求める仮処分を申し立てていた。

裁判長は、「福島の原発事故を踏まえた事故対策や緊急時の対応方法、基準となる地震の揺れの策定についても危惧する点がある」、「津波対策や避難計画についても疑問が残り、住民の権利が損なわれるおそれが高いにもかかわらず、安全性について電力会社は十分な説明を尽くしたとは言えない」とした。

関西電力は、稼働中の3号機の原子炉を止める手続きに入る一方で、決定の取り消しを求める異議の申し立てと、仮処分の執行の停止を求める申し立てをすることにしている。

住民らは2011年8月にも高浜原発などの再稼働禁止を求める仮処分を申し立てたが、大津地裁が2014年11月、避難計画が未整備な点などを挙げて「原子力規制委が早急に再稼働を容認するとは考えがたい」と却下した。その後、規制委で再稼働に向けた審査が進み、2015年1月に再び仮処分を申し立てた。

3、4号機をめぐっては福井地裁が再稼働前の2015年4月、運転を禁じる仮処分を決定。同12月、別の裁判長がこれを取り消し、住民側が抗告している。

2015/4/15 高浜原発、再稼働認めず 福井地裁が仮処分決定

高浜3、4号機はいずれもプルサーマルで、2015年2月12日に安全審査に合格、3号機は本年1月29日に再稼動した。4号機は2月26日に再稼動したが、直後にトラブルで停止している。

なお、高浜1、2号機は40年超であるが、原子力規制委員会は本年2月24日、事実上の審査合格とした。
今後は老朽化対策に特化した運転延長審査に焦点が移るが、7月7日の期限までに延長審査や、設備の詳細設計をまとめた工事計画の認可など、残りの手続きを終えなければ廃炉になる可能性が高い。

ーーー

判決全文

判決では、以下の記述が注目される。

原子力規制委員会が設置変更許可を与えた事実のみによって、十分な検討をしたとはいえない。

福島第一事故の原因究明は、建屋内での調査が進んでおらず、今なお道半ばの状況であり、津波を主たる原因として特定し得たとしてよいのかも不明である。
その災禍の甚大さに真摯に向き合い、二度と同様の事故発生を防ぐとの見地から安全確保対策を講じるには、原因究明を徹底的に行うことが不可欠である。

この点に意を払わないのであれば、そしてこのような姿勢が、関電ひいては原子力規制委員会の姿勢であるとすれば、そもそも新規制基準策定に向かう姿勢に非常に不安を覚えるものといわざるを得ない。

地球温暖化に伴い、地球全体の気象に経験したことのない変動が多発するようになってきた現状を踏まえ、
また、有史以来の人類の記憶や記録にある事項は、人類が生存し得る温暖で平穏なわずかな時間の限られた経験にすぎないことを考えるとき、
災害が起こる度に「想定を超える」災害であったと繰り返されてきた過ちに真摯に向き合うならば、
十二分の余裕をもった基準とすることを念頭に置き、
常に、他に考慮しなければならない要素ないし危険性を見落としている可能性があるとの立場に立ち、
対策の見落としにより過酷事故が生じたとしても、致命的な状態に陥らないようにすることができるとの思想に立って、
新規制基準を策定すべきものと考える。

避難計画について

福島第一事故を経験した我が国民は、事故発生時に影響の及ぶ範囲の圧倒的な広さとその避難に大きな混乱が生じたことを知悉している。
安全確保対策としてその不安に応えるためにも、地方公共団体個々によるよりは、国家主導での具体的で可視的な避難計画が早急に策定されることが必要であり、
この避難計画をも視野に入れた幅広い規制基準が望まれるばかりか、それ以上に、
過酷事故を経た現時点においては、そのような基準を策定すべき信義則上の義務が国家には発生しているといってもよいのではなかろうか。

大津地裁は2014年11月に再稼働禁止を求める仮処分申し立てを却下したが、この際の裁判長は今回と同じ裁判長である。却下理由として以下の通り述べている。

「原発事故に対応する組織や地元自治体との連携・役割分担、住民の避難計画等についても現段階においては何ら策定されておらず、これらの作業が進まなければ再稼働はあり得ないことに照らしても、このような段階にあって、同委員会がいたずらに早急に、新規制基準に適合すると判断して再稼働を容認するとは到底考えがたく、上記特段の事情が存するとはいえない。」

ーーー

菅官房長官は3月10日、以下のように述べた。

「世界最高水準の規制基準に適合すると、原子力規制委員会が専門的見地から判断したものであり、政府としてはこの判断を尊重し、再稼働を進めていくことに変わりはない」

「避難計画の作成段階から国が関与し、総理大臣を議長とする原子力防災会議で了承する仕組みであり、国が前面に立って支援はしっかり行っている」

3月7日に韓国巨済市の大宇造船海洋の玉浦造船所で世界初のFLNG(Floating LNG) の命名式が行われ、"PFLNG Satu" (Petronas FLNG No.1) と命名された。

Petronasが2012年6月に、Technipと大宇のJVのTechnip Daewoo Consortiumに、9098億ウォン(約850億円)で発注した。

設計はTechnipで資材購入はPetronasが担当した。

4月にはPetronasに引き渡され、サラワクの180km沖合いのKanowitガス田でLNG製造にあたる。

当初の引渡し予定は2015年6月であったが、工事の遅れで2015年9月に延期され、更に延期された。

船体の長さは300m、幅は60mで、フレアタワーは海面から130m 。
最大で180人を収容でき、スクリーンゴルフ場や映画館、プールまで備えている。

LNGの年産能力は120万トンで、船体部分には177千m3のLNGを貯蔵できる。

Kanowitは小規模ガス田で、まずKanowitガス田開発から始めて、順次、近隣の小規模ガス田へと開発対象を移していくと見られる。

ーーー

Petronas はPFLNG 2 を建設中で、2018年に完成する予定。日揮が設計、購買を担当、三星重工業が建造する。

PFLNG 2 は マレーシアのSabahの沖合いの深海ブロックHのRotanガス田に係留し、年150万トンのLNGを生産する。

世界的に温暖化対策が喫緊の課題となっている中、輸送機器のエネルギー消費削減に向けた解決策の一つとして、部材の軽量化が挙げられており、炭素繊維等の軽量化素材の市場が急速に拡大すると見込まれている。

三井物産は、炭素繊維関連事業に相次いで投資を行った。

三井物産は3月1日、ノルウェーの Hexagon Composites ASA に25%出資出資総額は約110億円を予定することで合意するとともに、 Hexagon と業務提携契約を締結した。

Hexagon Compositesは世界最大の樹脂ライナー製炭素繊維強化圧力タンクメーカーで、拡大する天然ガスなどの輸送・貯蔵需要に対応して、軽量かつ耐久性、安全性の高いコンポジットタンクを供給している。最近では燃料電池自動車向けに高圧水素タンクを開発している。

 主な事業分野:LPG事業、高圧天然ガス輸送事業、高圧天然ガスタンク事業、高圧水素タンク事業

三井物産とHexagonは、コンポジットタンクの販売を軸として、約20年にわたり強固なパートナー関係を構築してきた。
今回の出資参画と業務提携を機に、事業資産及びグローバルネットワークを活用して Hexagonの事業拡大に取り組むと共に、輸送機器分野における温暖化ガス排出削減の課題解決に貢献していくとしている。

ーーー

三井物産は3月3日、韓国の Hankuk Carbon Co., Ltd. (韓国カーボン)と炭素繊維などの複合材料加工事業分野で包括的な業務提携契約を締結した。
また、韓国カーボンへ306億韓国ウォン(約28億円)を出資し、株式10%(議決権ベース)を取得する。

韓国カーボンは1984年の設立以来、炭素繊維をはじめ多様な複合材料を組み合わせた部品・材料加工事業を拡大させてきた。 

 主な事業分野炭素繊維プリプレグ、LNG船断熱パネル、ハニカムペネル材

今後成長が期待される航空機・自動車などの輸送機器向けに複合材料加工事業の展開を加速する。

韓国カーボンの趙文秀代表は「自動車、航空機の軽量化に合わせ、炭素繊維複合素材を利用した素材・部品の開発で協力していく。30年間取引を続けてきた三井物産との戦略的パートナーシップがさらに強化された」と述べた。

ーーー

三井物産は2015年4月には、金沢工業大学の革新複合材料研究開発センター(「ICC」)と、炭素繊維複合材料による自動車部品等製造の新製法に関する実証研究を行うことで合意し、複合材料研究に関する協力協定書及び機械貸借契約を締結している。

ICCは2013年7月、金工大により設立され、異業種・異分野の技術融合による炭素繊維複合材料の可能性を開拓することを目的とする国内最大級の複合材料研究センター 、全国の産学官研究者を集結し、中間加工分野における国際競争力を向上させるべく、革新的技術の開発を目標としている。

三井物産はこれまで、経済産業省のコーディネートの下、ICC及び炭素繊維複合材料ユーザー企業との取り組みの検討を行ってきたが、実証用設備一式 (3億円)を購入し、ICCを中心とするユーザー企業を含む関連企業コンソーシアムに同設備を提供し、共同で炭素繊維複合材料による自動車部品を始めとした幅広い部材等製造の新製法開発及び実用化を目指 す。

(欧州では自動車メーカー主導で、材料供給から加工までの体制が確立され、炭素繊維複合材料が自動車の主要骨格部材等の部品として採用されている事例があ る。)

ICCでの取り組みの模式図

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三井物産は新中期経営計画で掲げた7つの攻め筋における事業展開に取り組んでいる。

ハイドロカーボンチェーン エネルギーの上流~下流、関連事業の展開
資源(地下 + 地上)・素材 資源採掘から素材加工、循環型社会構築への取組
食糧と農業 食糧増産と食の安定供給に貢献するソリューション提供
インフラ 国造りへの貢献とインフラを起点とするビジネスの広がり
モビリティ 輸送機械等の製造・販売・金融・関連サービス
メディカル・ヘルスケア 病院を中核とした事業展開と医薬バリューチェーン
衣食住と高付加価値サービス 次世代機能(IT/金融/物流)活用による消費者連動型ビジネス

炭素繊維関連事業は、「資源・素材」・「モビリティ」の2つの攻め筋に跨 る。

三井物産では、グローバルに炭素繊維関連事業の拡大に取り組んでいく。

Facebookは3月4日、英国での法人税納付を拡大する方針を明らかにした。


これまで、英国の広告主に対する広告費などの請求は海外事業の本社機能を置くアイルランド法人Facebook Ireland Limited から送り、アイルランド法人の収入として扱ってきたが、4月以降は、スーパーのTescoなど大口の広告主に対しては、請求を英国法人から送付し、英国法人の収入として会計処理する。
小規模の広告主に対する請求は従来どおり、アイルランド法人の収益とする。

British-Irish 租税協定では、Facebook Irelandが英国の広告主と取引をしても、英国の課税対象とはならない。
多国籍企業が租税回避策を工夫するなか、この協定は実態に合わないとの批判が強まっている。

Facebook Ireland Limitedは多額のロイヤリティをFacebook Ireland Holdingsに送金する。これは Cayman Islands法人であるため、オランダでもCaymanでも課税されない。
この手法は "Double Irish" と呼ばれる。 詳細は 
2014/6/13 
欧州委員会、Apple等の法人税を調査

Facebookの2014年の英国での法人税の納付額は4,327ポンド(約70万円)と極めて少額にとどまる。
年収33,000ポンド以上の年収の英国の労働者は、Facebookが自分より少ない税金しか払っていないことに怒っている。

英国法人のFacebook UK Limitedは、グループ企業への支援料として若干の利益を計上しているだけ。

前日に、英国国税庁が国民に納税を求める広告をFacebookに出し、27,000ポンドを払っていたこと、これが Facebookの英国での納税額の6倍であることが報道され、問題が明らかになった。


1月にGoogleが英国での納税方針を変更したのに続くもので、実際に事業を営む地域で納税することを求める国際的な課税強化の動きに対応するのが狙い。

Googleは1月22日、英国の税務当局(歳入関税庁)との間で、過去の税金の滞納分を追加で納税することで合意した。
2005年以降の追加分として130百万英ポンド(約220億円)を納税、今年以降も従来よりも高い税率で法人税を納める。

但し、英 Financial Times は、どのような基準で課税したのかが不明であり、新たに設けた税率の根拠も示しておらず、従来より公正かどうか分からないと述べ、不透明な合意と批判している。

英国政府は最近、Googleの納税が他国が受け入れるより少ないものであれば、再交渉すると述べた。

2016/1/26 Google、追加納税で英税務当局と合意 

同社が英国でいくら利益を上げているかは明らかにされていないが、2015年の欧州全体の売上高は44.6億ポンドに上がっており、このうちかなりの分が英国と見られている。
英国の法人税は現在20%で、今年度以降の納税額は数百万ポンド増える見通し。

Facebook Ireland Limited (Cayman Islands法人)への多額のロイヤリティ支払があるため、課税所得は多額にはならない。

Dow Chemical と DuPont は12月11日、対等で経営統合すると発表した。 それぞれの取締役会が満場一致で賛成した。

2015/12/14 Dow と DuPont、経営統合を発表


しかし、BASFが数週間にわたりDowに対抗してDuPontの買収を検討していることが判明した。
Deutsche Bank とCitigroupを使って検討しており、正式なオファーはしていないが、DuPontに打診を行っている。

Bloomberg が3月4日に初めて報じ、Financial Times がこれに次いだ。


BASF は除草剤、殺虫剤、その他農薬ではSyngenta とBayer に次ぐ世界第三位で、DuPontを買収すれば、Bayer に並ぶ。

ソース http://www.sumitomo-chem.co.jp/ir/library/presentations/docs/20140919.pdf


DuPontは1999年に種子会社のPioneer Hi-Bredを買収した。
BASFは種子事業を持っておらず、もしDuPontを買収できれば、農業科学分野でのギャップを埋めることが出来るとともに、Monsantoに次ぐ世界第二位のメーカーとなる。

ソース http://mitsui.mgssi.com/issues/report/r1207i_matsuura.pdf

BASF はSyngentaの買収を真剣に検討したが、ChemChinaに取られた。

 2016/2/5 中国化工集団(ChemChina)、スイス農薬のSyngentaを買収


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BASFは、DuPont とDowの統合が発表される前に、DuPontに買収を提案していた。

DuPontは、Dowとの合併の是非を株主に問う目論見書で、"Company 2" との交渉について述べている。
これが、実はBASFであったことが判明した。

2015年11月にCompany 2 の会長がDuPont のCEOを訪問した。
会長はDuPontの事業について、一般的な、好意的な印象を述べたが、具体的な提案はしなかった。
その後、Company 2 はDuPontのアドバイザーのEvercore社に対し、DuPontの農業科学事業を現金で購入したいというおおまかな、予備的な提案を行うとともに、DuPontの他の事業についても話をする用意があると述べた。

2015年12月1日のDuPontの取締役会では、Company 2 との交渉は、「金銭上、戦略上、タイミングなどいろいろの理由で、問題がある」とし、Dowとの交渉を進めることとした。

その後12月10日にDuPont のCEOはCompany 2 の会長から、統合に関する予備的な話し合いをしたいとのレターを受け取ったが、12月11日にDow とDuPontの統合が発表された。

もし DuPontがDowとの契約を破棄する場合は、違約金19億ドルの支払が必要となる。


BASFのアドバイザーは、DuPont全体の買収は独禁法上で大きな問題があり、無理ではないかと見ている。

BASFのKurt Bock CEOは2月末の2015年決算発表の際に、大々的な買収の可能性を否定している。

「大きな買収の期待があるが、BASFでは買収については極めて冷静に見ており、むしろ、非コア資産の売却に焦点を当てたい」

しかしCEOは農業科学関連の分野で買収を検討していることは否定していない。


 

香港の華潤ビール(China Resources Beer)は3月2日、SABMiller とのJVの華潤雪花ビール(China Resources Snow Breweriesを100%子会社化すると発表した。
SABMillerの持分49%を総額16億ドルで買収する。

SABMillerの買収を決めたAnheuser-Busch InBev (AB InBev) との間で合意したもので、中国当局の認可と、AB InBevによるSABMiller買収の完了が条件となる。

華潤雪花ビールは、遼寧省瀋陽市の国有ビール工場が生産していた「雪花ビール」のブランドが前身で、1994年に華潤創業が51%、SABMillerが49%の合弁会社となった。

華潤創業は中国中央政府系コングロマリット華潤集団の子会社で、スーパーやコンビニエンスストアなど中国全土に約4800店の小売店を展開してきた。
しかし、英小売大手のTescoから引き継いだ店舗の採算が改善せず、2014年 12月期には上場以来初の赤字に転落した。

このため、2015年9月1日付けでビール以外の事業を親会社の華潤集団に譲渡し、華潤ビールに改称した。

中国では、華潤雪花、青島ビール、AB InBevが3強で、AB InBevSABMillerを傘下に収めると中国でのシェアは40%近くになる。

中国のビール市場の2014年のシェア(華潤ビール発表)は、華潤雪花が23.2%、青島ビールが 18.4%、AB InBev(バドワイザーHarbinビールなど) が14.0%、燕京ビールが10.7%、Carlsbergが4.6%となっている。

華潤雪花ビールは中国国内で90カ所を超える醸造所を運営している。

これだけでもAB InBevによるSABMiller買収承認の障害となるが、2008年11月の InBev によるAnheuser Busch 買収の際に、中国商務部は、「華潤雪花ビールの株式保有を求めてはならない」との条件を付けて承認している。

このため、AB InBev はSABMiller買収の承認を得るため、華潤雪花ビールを手放すこととしたもの。

InBev によるAnheuser Busch 買収の際に中国商務部が付けた条件は下記の通り。

(1)青島ビールに対するAnheuserの株式保有率27%を増加してはならない。
(2)
InBev の主要株主もしくは主要株主の株主に変化が発生した場合には、ただちに商務部に通告すること。
(3)珠江ビールに対する
InBevの株式保有率28.56%を増加してはならない。
(4)華潤雪花ビールと北京燕京ビールの株式保有を求めてはならない。

上記のうち、青島ビールについては、AB InBevは2009年4月に、所有する株式27%のうち、19.99%を6億6700億ドルでアサヒビールに売却した。
アサヒビールは2009年8月に青島ビールとの間で「戦略的協力合意」を締結した。

別途、サントリーが2012年6月に、 青島ビールとの間で、上海および江蘇省におけるビールの事業会社と販売会社を50/50の合弁で上海に設立した。

2008/12/1 中国の独禁法、初の海外での合併ケース

華潤ビールは「中国のトップメーカーの一つである華潤雪花ビールを完全に所有し、世界最大のビール市場である中国での発展戦略を有効に実施できるようになる」と述べた。

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ビール世界最大手のAnheuser-Busch InBev (AB InBev)は2015年11月11日、英のSAB Miller を697億8000万英ポンド(約13兆円)で買収することに正式合意したと発表した。

両社の合併については、各国の独禁法当局が問題視するのは必至だが、AB InBev は対策に "best efforts" を約束、承認を得られない場合には30億米ドルのReverse Break-Up Fee(買主からの解約金)を支払うことも約束した。

AB InBevは、米当局からSABMiller 買収の承認を得るため、SAB Miller所有のMillerCoorsの持株 58%を合弁相手の米 Molson Coors Brewing に120億ドルで売却した。

2015/10/14 ビール世界最大手のAnheuser-Busch InBev、2位のSAB Millerを買収へ

更に欧州での承認を得るため、SABMillerの欧州事業の一部をアサヒビールに売却する。

2016/2/16 アサヒビール、英SABMillerの欧州事業の一部を買収 



アルゼンチン政府は2月28日夜、債務再編を拒否していたElliott Management など複数のファンドに対し、世界各国の訴訟で和解するため46億5300万ドルを支払うことで合意した。これは、ヘッジファンドが主張していた債務全額の約75%に相当する。

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アルゼンチンは2001年に債務危機が発生し、政府は 2002年1月、イタリア・リラ建て国債(2,800万ドル相当)の利払い停止を発表、国債のデフォルトとなった。3月には、円建て国債の利払いも不履行となった。

その後、IMFや他の国際機関とも債務返済について合意、民間債務について2004年12月に債務再編案を提示した。

対象となる民間保有の国債の元本総額は約810億ドルで、この75%をカットするというものであったが、2005年と2010年の合意でデフォルトに陥った国債全体の92.4%が受け入れた。

これに応じなかった"holdout"債権者のデフォルト状態の債権の残高は未払いの利息も含めてざっと150億ドルになっている。

米国の富豪Paul Singerが支配するヘッジファンド、 Elliott Managementの子会社NML Capital Fund とAurelius Capital Management が約15億ドルの支払いを求め、米国で訴訟を起こした。

これらは当初からの債権者でなく、"holdout"債権者から安く(再編案よりは高い)買い取って債権者になったもの。
アルゼンチン政府は「ハゲタカ」と呼んだ。

2012年にニューヨーク連邦地裁のThomas Griesa判事が判決を下した。

アルゼンチンが債務再編に応じた新債券保有者に支払いを続けるのであれば、"holdout"債権者の保有債券についても、全額支払わねばならない。
もし"holdout"債権者に支払わない場合は、米国の金融機関はアルゼンチン政府から新債権保有者への支払い手続きをしてはならない。
(複数の債権者に対し返済の優先劣後を設けないとするPari Passu 条項:債権者平等条項を適用)

これに対し、アルゼンチン政府は米国の最高裁判所に対し、アルゼンチンの債務再編に応じていない債権者への支払いを命じた下級審の判決を見直すよう求めていたが、最高裁は2014年6月16日、これを却下した。

この結果、アルゼンチン政府は新債券保有者に対し、利息を払う意思もあり、資金もあるにもかかわらず、利息を払えなくなり、デフォルトとなった。

米連邦地方裁判所のThomas Griesa判事は2015年6月5日、2001年のアルゼンチンのデフォルトの際に債務再編に応じなかった "holdout" (不服)債権者に対して新たに54億ドルを支払うようアルゼンチン政府に命じた。

その後、いろいろの動きがあったが、これまで解決に至らなかった。

2015/6/10 アルゼンチンの債務危機、更に深まる 

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今回の合意は、Elliott Management と、これと組むヘッジファンドのAurelius Capital Management、Davidson Kempner、Bracebridge Capital に対し、46億53百万ドルを支払うというもの。

この額は、原告側のニューヨークでの要求額(元本+金利)59億ドルの75%に相当する約44億ドルに、ニューヨークの裁判外で和解する手数料、弁護士費用など235百万ドルを加えたもの。

2004年12月の債務再編では75%がカットされており、これを拒否した債権者から債権を安く買い取ったヘッジファンドにとっては有利なもので、ヘッジファンドは「われわれは合意に達して満足している」としている。

2015年12月に就任したマクリ大統領は経済再建のために外資の流入が不可欠だと考えており、債務問題の解決を重要視した。
2016年1月からニューヨークで交渉を再開し、すでに複数の欧米のファンドとは合意に達していた。

アルゼンチンの経済財務相は「15年間で初めて、アルゼンチンはデフォルトからの脱却を開始した」と述べた。

アルゼンチン政府は、この支払のため、海外債券市場で借り入れる必要がある。

地元報道によると、引き続き合意していない小規模な投資家は残っている。さらに最終的な合意はアルゼンチン議会の承認が必要となるが、与党は議会で過半数を占めておらず、承認には曲折も予想される。




タイのIndorama Venturesは2月29日、インドのDhunseri Petrochem Ltd. との間で、両社がインドに持つPET事業をそれぞれ、両社の50/50のJVとすることで合意した。

Indoramaは2015年12月にインド北部の唯一のPETメーカーのMicroPet (能力216千トン)を買収したが、この持分の50%をDhunseriに譲渡する。

Dhunseri はWest Bengal州のHaldiaで年産480千トンのPET工場を持つが、これを分離した上で、その持分の50%をIndoramaに譲渡する。

これにより、合計能力は696千トンとなり、Indoramaの持分は348千トンとなる。

インドのPETメーカーは両社とRIL (Reliance Industries Limited )、JBF Industries の4社で、両社のシェアは38%となる。


JBF Industries Ltd.

インドのPET使用量は1人当たり 0.6kgであり、中国の2.6kg、米国の10.9kgと比較し、まだ少ない。
Indoramaでは、今後ペットボトル入りの清涼飲料の需要が急激に伸びると見ており、統合により、大きなシナジー効果が出ると見ている。

・北インドと東インドで唯一のメーカーである。
・それぞれが原料ソースと繋がっている。
  Dhunseri はPTAは近隣の三菱化学から購入、MEGは港からパイプラインで受け入れ
  MicroPetはIndian Oil Corporation (IOCL) のコンプレックスにあり、PTAとMEGをIOCLから供給を受けている。
・統合により、販売費・一般管理費と購買でコストダウン
・Indoramaのグローバルな活動に組み込まれる。

Dhunseri PetrochemはDhunseri Petrochem & Tea Ltdの子会社で、お茶を専業とする Dhunseri Tea & Industries がSouth Asian Petrochem Ltd を買収・統合したもの。

PET専業メーカーで、2003年に輸出用に140千トンの生産を開始、その後増設した。
エジプトに進出、420千トンのプラントを持つ。

Indorama Venturesについては下記参照。
   2016/1/12 タイのIndorama Ventures、BPのアラバマのPX、PTA、NDCコンプレックスを買収 

塩野義製薬は2月29日、自社創製のインフルエンザ感染症治療薬S-033188の提携に関するライセンス契約をF. Hoffmann-La Roche との間で締結したと発表した。

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塩野義製薬は2015年10月30日の投資家向けの経営説明会で、インフルエンザを1回の投与で治療できる新薬(S-033188)を 2018年にも発売する計画を公表した。

従来のインフルエンザ治療薬とは全く異なる仕組みの薬で、売上高が年間500億円以上の大型薬になるとみられ、抗エイズウイルス(HIV)薬や、複数の薬に耐性ができた菌の治療薬とともに事業の柱に育てる。

現在、治療に用いられている抗ウイルス剤はノイラミニダーゼ阻害剤(Neuraminidase inhibitors)で、増殖されたウイルスの放出を阻害して感染の拡大を防ぐもの。

オセルタミビル(oseltamivir)  Roche 商品名 タミフル
ラニナミビル(Laninamivir) 第一三共 商品名 イナビル
ペラミビル (Peramivir)    米国 BioCryst Pharmaceuticals

発症後48時間以内に服用しなければ効果が得られず、タミフルの場合は5日間程度服用を続ける必要がある。

エボラ出血熱の治療に使われた富士フィルムのファビピラビル(favipiravir)(商品名アビガン)は元々インフルエンザ用治験薬で、ウイルスの細胞内での遺伝子複製を阻害することで増殖を防ぐRNAポリメラーゼ阻害剤である。

これに対し、塩野義が開発中の新薬(S-033188)はウイルスが細胞に進入後、最初の反応となるmRNA合成の開始を特異的に阻害するCapエンドヌクレアーゼ阻害剤である。ウイルスの増殖に必要なタンパク質が合成できなくなり、ウイルス粒子が形成されなくなる。
タミフルが5日間の服用が必要なのに対し、
1回の服用で治療できる。

2015/11/6 塩野義製薬、インフルエンザ新薬を開発、1回投与で治療

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日本では、 2015年10月には厚生労働省より先駆け審査制度対象品目に指定され、現在、国内における第Ⅱ相臨床試験の段階にあり、最速で2017年度内の国内申請を予定している。

塩野義製薬は今後、日本と台湾を除く全世界におけるS-033188の開発をRocheとの提携下で進め る。

Rocheは、インフルエンザ治療薬タミフル®のグローバルにおける開発及び販売による豊富な経験と実績、高い専門性をもっており、Rocheと組むことで、欧米をはじめとする世界各地での早期実用化を目指す。

Rocheのタミフルはノイラミニダーゼ阻害剤で、同じ仕組みの薬の登場でシェアは年々低下している。
Rocheは、
タミフルに続く感染症領域の新たな収益の柱として、塩野義の新薬に着目した。

日本では、Roche が61.62%出資する中外製薬がタミフルを販売している。

塩野義は今回の契約で、一時金と、今後の開発進展や承認取得などに応じたマイルストン、製品上市後の販売額に応じたロイヤリティーをRocheから受け取る。


米国連邦巡回控訴裁判所は2月26日、AppleとSamsungが互いに特許違反で訴え、2014年5月2日付で地裁で陪審が両社に賠償金支払を命じた事件に関し、実質的にApple側の勝訴に終わった法廷闘争の結果を覆し、Samsungに対する119.6百万ドルの支払い命令を取り消した。

Samsungの控訴を受けて再審議された結果、「Samsung は主張される特許を侵害してはいない」との判決が正式に下された。
Samsungは損害賠償を払う必要がなくなり、またデザイン変更も不要となる。

Appleは、スマートフォンの画面上をスライドしてロック解除する方法、一連の数字が入力された際に検知して発信する方法、テキストの自動修正に関する特許を侵害したと主張していた。
3人の判事は、そのうち最初の2件の特許は"invalid" と裁定し、3つ目についてはSamsungは侵害していないとした。
2件の特許は、同じような技術が既に出回っていたため、"obvious"であるとした。
Appleの特許のうち、陪審が特許侵害はなかったと認定した2つについては、同様の判断を行った。

逆に、Samsungの動画圧縮特許を侵害したとしてAppleが支払うべき賠償金は158.4千ドルとする陪審判断を支持した。

Appleはコメントしていないが、仮に最高裁に上告しても、取り上げられないだろうと見られている。

また、巡回控訴審2015年9月17日、Appleの販売差し止め命令を判事が却下した一審判決を破棄し、連邦裁判所に再審理を求めて差し戻したが、侵害がないことが確定すると販売差し止めは当然、あり得ない

今回のケースは両社が争う2つのケースの一つである。

今回のケース もう一つのケース
発端 時期 2014年3月 2011年4月
原告 Apple & Samsung Apple
内容 Appleは別の5つの特許侵害で、
Samsungは自社の2つの特許侵害で、相互を訴え
Samsung がスマートフォン「Galaxy S」やタブレット端末「Galaxy Tab」などでAppleの知的財産権を侵害
判決 2014年5月2日 連邦地裁の陪審
 Samsungに119.6百万ドルの賠償金支払命令
 (Appleの22億ドルの請求に対し)
 Appleに158.4千ドルの賠償金支払命令
 (Samsungによる620万ドルの請求に対し)
2015/5/18 連邦控訴裁判所の判決

2015/12/14
Samusung が Appleに548百万ドルの損害賠償金支払
2015年末の
状況
Samsung 控訴

Appleの販売差し止め命令を判事は2014年8月、却下
  

巡回控訴審2015年9月17日、一審判決を破棄し、連邦裁判所に再審理を求めて差し戻し

Samsung  2015/12/14、米最高裁判所に上告
Apple 2015/12/23、付随的賠償および利子請求訴訟
最新ブログ 2016/1/23 
Samsung 製品に特許侵害で販売差し止め命令 
2015/12/30 
iPhone と iPad の特許をめぐるApple、Samsungとの特許係争、続く 
今回判決 Samsungに119.6百万ドルの賠償金支払命令 取り消し
Appleに158.4千ドルの賠償金支払命令 支持

もう一つのケースでは、Samsungは連邦控訴裁判所の判決に基づき548百万ドルの損害賠償金をとりあえずApple に支払ってはいるが、同時に最高裁に上告している。

最高裁が意匠に関する訴訟を取り扱ったのは1800年代までで、 その後は扱っていない。
(その当時の訴訟は、スプーンの取っ手、カーペット、鞍、ラグなどに関するものだった。)

Samsungは最高裁に対し、意匠に関する権利がどの範囲まで適用されるのか、またどのような賠償を請求できるのかについて指針を示すことを求めており、最高裁が上訴を受理した場合、最高裁の最終判断がハイテク業界や消費者の購入できるすべてのガジェット類に波及的な影響を及ぼす可能性がある。

Samsungは、「この判例が効力を持った場合に影響を受けかねない大小すべての米国企業のために、米最高裁判所に上訴することが重要であると考えている」と述べている。

Appleは2016年2月4日、これに関する回答書を提出した。

Appleは、この訴訟が「法的に例外的な事例ではない」と主張し、法廷闘争を「長引かせる」ことがないよう最高裁に求めた。
さらに、この件には米国の最高裁による解決を必要とするほどの重要な案件ではないとも述べている。



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