2014年3月アーカイブ

INEOSは3月21日、同社の技術の根幹の一つであるアクリロニトリル技術について、Sinopec Ningbo Engineering Company (中石化寧波工程)が昔からの契約に違反し、INEOSの同意なしに一連のワールドスケールのアクリロニトリルプラントを建設したとして、Sinopec Ningbo Engineeringと建設したSinopec各子会社を北京高級法院(Beijing High Court)に訴えるとともに、 スウェーデンで調停を申請したと発表した。

Jim Ratcliffe会長は次のとおり述べている。

・INEOSはベストの技術を中国に持ち込みたいが、同時にそれは保護されねばならない。
・アクリロニトリル事業は重要な石化事業であり、INEOSの事業は世界一で、30億ドルを売り上げ、5000人を雇用している。
・中国で多くのコピープラントを作られれば、INEOSの事業は破綻する。
・INEOSの価値は技術にある。なにがあっても守らざるを得ない。

INEOSのアクリロニトリル技術は元はStandard Oil of Ohio (Sohio) の技術で、1987年に BPがSohioを買収した。
INEOSは2005年にこれを含むBPの石化子会社 Innovane を買収した。

Sinopecとの提携はBPが行ったもので、BP は1970年代初めから中国に進出しており、現在も石油化学では上海SECCO石油化工(Sinopec とのJV)と酢酸、PTA事業を継続している。
   2008/1/28 BP、中国事業を更に拡大

BPは1984年にSinopec Ningbo Engineering にアクリロニトリル技術を供与し、安徽省安慶に5万トン設備、黒竜江省大慶に5万トン設備、吉林に66千トン設備などをつくってきた。

しかし、最近になってSinopec各社はSinopec Ningbo Engineeringの技術でINEOSの了承なしで大規模プラントを順次建設している。

INEOSはこれを死活問題として訴えたもの。

これに対し、Sinopec側は、「Sinopec Ningbo Engineeringは50年の研究開発の後にコア技術を開発した。Sinopecはそれら技術に完全な知的財産権を有しており、INEOSが主張する技術侵害の根拠は無い」と反論している。

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なおINEOSは中国の石油化学の今後の長期的な発展を確信しており、中国各社と提携して事業を行っていきたいとしている。
同社は最近、自社技術を持ち込み、2つのJVを設立することで合意した。

1)天津渤海 とのアクリロニトリル

INEOSと天津渤海(Tianjin Bohai Chemical Industry Group)は2013年5月、50/50JVを設立して天津に年産26万トンのアクリロニトリルプラントを建設するとの覚書を締結した。

INEOSの最新プロセス・触媒を使用するもので、2016年待つの完成を見込んでいる。
需要の増加に応じ、将来増設することも検討している。

天津渤海はプロピレンやSM、ABSなどを製造しており、子会社の天津大沽はPVCを生産するとともにLGとのPVCのJVも持っている。

2007/8/23 天津大沽化工、天津でSM 500千トンプラント建設

丸紅が戦略的パートナーシップ契約を結んでいる。

2010/6/24 丸紅、天津渤海化工集団との戦略的パートナーシップ契約締結 
 

2)SinopecとのフェノールJV

INEOS とSinopec 揚子石化は2014年2月20日、南京市に50/50JVを設立する契約を締結した。

JV名は INEOS YPC Phenol (Nanjing) Companyで、Sinopecのキュメン技術とINEOSのフェノール技術を使用し、フェノール、アセトンを製造するもので、投資額は5億ドル、2016年末の完成を見込んでいる。

能力は中間製品のキュメンが55万トン、製品のフェノールが40万トン、アセトンが25万トン。

ベンゼン+プロピレン キュメン → フェノール+アセトン


 



石化協は昨年12月、近年の石油化学業界の様々な新しい取り組みを踏まえ、「石油化学」に代わる"新しい化学"にふさわしいネーミングを募集した。

変わり行く石油化学 "新しい化学"へ

原料多様化がすすみ、石油以外のものも原料として利用する取り組みが始まっている。
 ・シェールガス
 ・バイオマスによる原料・燃料
 ・微細藻類がつくるオイル
 ・人工光合成による化学品原料も検討されている。

人類が抱える多くの課題:資源・エネルギー枯渇、地球温暖化・環境問題、爆発的な人口増加、・・・を化学の持つ様々な先進技術で解決
 ・持続的・安定的エネルギーの供給
 ・地球環境への貢献
 ・安全・安心、健康長寿の実現

 

石化協は3月28日、審査結果を発表した。最優秀賞は「循環炭素化学」となった。

このほか、以下が入賞した。

カラフルケミストリー
くらし化学
生活創造ケミストリー
つながる化学
みらい資源化学

 

 

日本、米国、EUが中国のレアアース、タングステン、モリブデンの関連商品の輸出管理措置を巡り共同提訴した件で、世界貿易機関(WTO)は3月26日、中国の輸出管理措置が規定に反すると認定した紛争処理小委員会の報告書を発表した。

中国商務部は本報告について遺憾の意を表し、WTOの紛争解決手続きに基づき今後の後続作業を行うとしている。

WTOは2012年にも、中国のレアメタル輸出規制に対してWTOのルールに違反しているとの報告書を出している。
中国による上級委員会への上訴は却下され、中国は貿易制限を廃止した。

対象は、ボーキサイト、亜鉛、黄燐、コークス、蛍石、マグネシウム、マンガン、炭化ケイ素、シリコン金属の9種の鉱物資源で、中国は輸出関税、輸出割当、最低輸出価格、輸出許可制などの輸出制限 を行っていた。

2012/2/6   中国のレアメタル輸出規制、WTOが規則違反認定 

ーーー

中国は1997年にレアアース製品の輸出許可制度を開始した。

2006年に輸出枠を減らすとともに、11月からレアアース鉱石・酸化物の輸出に10%の課税を開始、2007年6月からはレアアース金属にも10%課税した。
2008年にレアアース製品の輸出税を15~25%に引き上げた。

中国の輸出枠の推移は以下の通り。(トン)

2005 2006 2007 2008
65,580 61,070 59,643 49,990

2009年に中国のレアアースの過度な開発問題について、全国人民代表大会(全人代)代表の周洪宇氏が「レアアース生産・輸出の厳格な規制を求める建議」を全人代に提出した。中国のレアアース生産量は2005年に世界の96%を占め、輸出量で世界一となったが、乱開発されており、無秩序な開発で採掘現場での回収率も低効率の状態にあるとした。

国家発展改革委員会は乱開発がこのまま続けば、20~30年で中国のレアアースは枯渇すると した。

2009/4/22 中国がレアアースの輸出を制限? 

中国政府は2010年下期に輸出枠を激減させ、年間輸出枠を前年の50千トンから30千トンへと4割減らし、その後もその水準を維持している。

      2009 2010 2011 2012 2013 2014
輸出枠 上期 軽希土       18,585トン 13,563トン 13,314トン
中重希土 2,641トン 1,938トン 1,796トン
合計 21,728トン 22,282トン 14,446トン 21,226トン 15,501トン 15,110トン
下期 軽希土       8,537トン 13,821トン  
中重希土 1,233トン  1,679トン  
合計 28,417トン 7,976トン 15,738トン 9,770トン 15,500トン  
年間 軽希土       27,122トン    
中重希土 3,874トン 3,617トン   
合計 50,145トン 30,258トン 30,184トン 30,996トン 31,001トン   
輸出実績   39,813トン 18,600トン 16,265トン 22,493トン   


更に2010年12月に、2011年からのレアアースの輸出税を更に引き上げた。

  現状   2011年
ネオジム 15% 25%
ジスプロシウム  25% 25%
テルビウム 25% 25%
ランタン 0% 25%
セリウム 0% 25%
他のレアアース・スカンジウム・イットリウムとの混合物 25% 25%


2010/12/18 中国、レアアース輸出税を引き上げ


輸出枠の急な削減で、レアアースの価格は急騰した。


 

更に、2010年9月の尖閣諸島中国漁船衝突事件の後、日本向け輸出の審査が停滞し、大混乱となった。

レアアースの輸出実績は以下の通りで2003年をピークに減少している。
輸出枠が急減した2010年下期は輸出量を集計している間に枠を超え、年間輸出量は枠を超える40千トン弱となったが、その後は激減した。

輸出枠の急減と価格の高騰に対し、日本企業を中心に、中国以外のソースの権益取得、新技術・代替材料採用によるレアアースの使用減、レアアース製品のリサイクル等の対策を取った結果、2011年には中国の輸出量は輸出枠を下回るに至った。

中国工業情報化部では以下の通り述べている。

2011年のレアアース輸出割当は、余りが出るだろう。
中国はレアアースの輸出を制限していない。レアアース業界に対して行った規制強化も市場供給に影響しなかった。

輸出割当分の輸出が行われなかったのは、需要が減少したためである。
この主な理由はレアアース価格の高騰による需要の減少だ。これまでレアアース価格が低く見積もられていたが、現在はそれが是正された。

(2012年には中国は輸出枠未達の理由を密輸によるものとしている)


          http://www.fas.org/sgp/crs/row/R42510.pdf

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2012年3月、日本、米国、EUは、中国のレアアース、タングステン、モリブデンの輸出制限をWTOに提訴した。

問題となったのは次の点:

 対象品目:レアアース、タングステン、モリブデン

 輸出制限行為:
   1)輸出税
   2)輸出割当
   3)輸出企業に課せられた制限

今回の報告内容は以下の通り。

1)輸出税

 提訴側:

WTO加盟議定書で中国は付属書記載以外の輸出税を撤廃するとしている。
タングステン鉱石とその濃縮物以外は付属書に記載されておらず、輸出税は課すことが出来ない。

 中国側:

GATTのArticle XXには "General Exceptions" の規定があり、人・動物・植物の生命・健康の保護に必要な場合は対策が認められている。
これら製品の採掘による公害から生命・健康を保護するために輸出関税は必要である。

 パネル:

General Exceptions規定は中国の加盟議定書での輸出税撤廃義務違反の正当化には使用できない。(多数意見)
(例外意見:General Exceptions規定は適用できないと明示された場合以外は適用できる。輸出税撤廃は不適用と明示されていない)

仮にGeneral Exceptions規定が適用されたとしても、輸出税は人・動物・植物の生命・健康の保護に必要ではない。(全員意見)

2)輸出割当

 中国側:

この制限はGATT 1994に違反だが、枯渇する天然資源の保護のためであり、Article XX(g) にある例外規定で正当化される。

 パネル:

中国の輸出割当は資源保護のためよりも産業政策目標の達成のためである。

Article XX(g)の "conservation"は単なる天然資源の "preservation"よりも大きな意味を持つもので、各国は持続可能な開発のニーズを考慮に入れることが出来る。しかし、"conservation"を天然資源の国際市場をコントロールする手段に使うのは許されない。

更に、Article XX(g)の要件に国内市場の制限策が求められているが、これが行われていない。

中国側の主張する国内での諸策を検討した結果の結論は、全体としての効果は、国内の採掘を推進し、中国の製造者がこれを優先的に使用するのを確保するためということになる。

Article XX(g)のもとで求められる公平性("even-handedness")が見られず、輸出割当はこの規定では正当化できない。


3)輸出企業に課せられた制限

 パネル:

    中国は Article XX の例外規定を主張するが、貿易の権利の制限がこの規定で正当化できるかを十分に説明していない。


ーーー

これを受け、商務部条約法律司の楊国華副司長は「中国は今、WTOルールに合致した規範・制度を構築して、レアアースなどの戦略的資源を保護することを考えている。たとえば採掘総量の制限や資源税といった方法により資源類製品の輸出を管理する道を模索している」と述べた。(人民網)

 



 

原材料のシリコンから太陽光発電システム・ファイナンスをはじめとする発電事業に至るまで一貫したサービスを提供する SunEdison は、シリコンウエハー事業をSunEdison Semiconductorとして分離独立させることを決めたが、このたび、三星ファインケミカル及び三星電子との間で一連の契約を行い、この事業の強化を行った。

三星ファインケミカルとSunEdisonは韓国で太陽電池用ポリシリコンを生産するため、2011年 に折半出資でSMP(Samsung-MEMC Polysilicon)を設立している。

また、三星電子は韓国天安市に、SunEdison 80%、三星電子 20%出資のシリコンウエハー製造のJV、MEMC Korea Companyを持つ。
三星電子はシリコンウエハーの需要家である。

SunEdison は旧称MEMC Electronic Materials で、2013年5月30日に社名を変更した。

米国でシリコンを製造するため、Monsanto Chemical が1959年にMonsanto Electronic Materials Company (MEMC) を設立した。

1989年にドイツのVEBAの子会社 Huls がMonsanto から同社を買収、別途1987年に買収したイタリアのDynamit Nobel Silicon と合併させ、MEMC Electronic Materials, Inc とした。

1995年にNew York で上場、その後もHuls は72%の株を持っていたが、Huls の親会社 VEBA が VIAG と統合して E. On になり、E. On は2001年にTexas Pacific Group (現在名はTPG) に全持株を売却した。

Texas Pacific はその後、大部分を売却した。

MEMCは1991年に韓国で シリコンウエハー製造のため、三星電子、Pohang Iron & Steel (POSCO)とのJVのPosco Huls を設立した。
2000年に MEMC は
POSCO の持株を買収して80%の株主となり、社名をMEMC Korea Companyと改称した。

また、1994年には台湾で China Steel その他とのJV、Taisil Electronic Materials, Inc.を設立した。2005年には台湾初の300mm ウェーハをスタートさせた。(現在MEMC 100%)

1995年にはTexas Instruments とのJV、MEMC Southwest, Inc.を設立し、現在は100%子会社としている。

同社は半導体部門と太陽光発電部門を持つ。部門別売上高は下記の通り(百万ドル)

  2012 2011 2010
Semiconductor Materials 917.5 1,023.1 992.6
Solar Energy 1,612.4 1,692.4 1,246.6
Total Net Sales 2,529.9 2,715.5  2,239.2

SunEdison は2013年9月、シリコンウエハーを生産するセミコンダクター部門を分離、250百万ドルのIPOで SunEdison Semiconductorとして独立させることを決めた。

太陽光パネルの価格の下落で、SunPower Corp(Totalが66%保有)やFirst Solar Inc などは太陽光発電所(solar farms)事業に重点を移しているが、SunEdisonもその方向に向かっており、SunEdison SemiconductorのIPOによる収入をsolar farms の建設に充てる。


今回、三星ファインケミカル、三星電子との間で下記の契約を締結した。

・三星ファインケミカルはSunEdison Semiconductor のIPOに応じ、100百万ドルを出資する。

・SunEdison は三星ファインケミカルとのJVのSMPの三星の持株50%のうち35%を買い取り、自社持分と合わせ、SunEdison Semiconductorに現物出資する。

SMPはSunEdison Semiconductorが85%株主となり、SunEdison Semiconductorに新たに出資する三星が15%を保有する。

SMPは低コストの流動床リアクターベースのポリシリコン工場(年産1万トン)を三星ファインの蔚山工場内に建設中で、2014年下期に完成の予定。
当初は太陽光発電用ポリシリコンをSunEdison に供給、将来は半導体用グレードをSunEdison Semiconductorに供給する。

・合わせて、SunEdison は三星電子との間で、三星電子が持つMEMC Koreaの20%持分を購入する交渉を始めた。
  代償としてSunEdison Semiconductorの株を渡す。

・三星電子はSunEdison Semiconductorとの間で半導体用ウエハーの長期購入契約を締結した。
  これにより、今後3年間、三星電子との取引は毎年増加する。

これがまとまると、SunEdison Semiconductorは、原料のシリコンを製造する三星ファインケミカルと、製品のウエハーを購入する三星電子を株主とすることとなる。


 

 

米エネルギー省は3月24日、Jordan Cove Energy Project, L.P. に対し、オレゴン州Coos Bay のJordan Cove LNG Terminal からの非FTA締結国向けのLNG輸出を承認した。承認数量は日量0.8Bcf (年間600万トン)で期間は20年間となっている。


カナダと米国の天然ガスを液化し輸出する計画で、顧客と既に非拘束の契約を締結しており、年末までに全量について契約を締結するとしている。

Jordan Cove Energy Project, L.P.はカナダのCalgaryに本拠を置くエネルギー関連インフラ投資会社のVeresen Inc. (旧称 Fort Chicago Energy L.P.)が経営する。

オレゴン州Coos Bay の北方に16万m3のLNG貯蔵タンク2基と年産600万トン(将来900万トンへの拡大予定)の液化設備を建設する。

合わせて、カナダ及びRocky Mountain地区の天然ガスのハブであるオレゴン州Malin とJordan Cove LNG との間にPacific Connector Gas Pipelineを新設し、カナダからのWillimas Northwest Pipeline、TransCanada Pipeline、Rocky Mountain地区からのRuby Pipelineと接続する。

操業時はカナダ産天然ガスが70%、米国産天然ガスが30%で、最終的には比率を 65/35 とする。

同社では、アジア太平洋市場のLNG需要は2025年までに年3億トンを超えると見ており、Jordan Coveはアジア太平洋及び南米市場のほとんどに最短で、運賃が最も安いと自負している。

日本向けLNG運賃は以下の通りで、Jordan Cove とKitimat は近接している。

  Kitimat(カナダ西海岸)   1.24 $/百万BTU 
  US Gulf Coast        2.96  
  Cove Point(東海岸)   3.07  
         
  Gordon(豪)   1.17  
  Gladstone(豪)   1.21  
  Ichthys(豪)   1.23  
    資料:Platts LNG Forum, Tokyo 2012/9/25  

付記 同資料によると米国東海岸から欧州への運賃は 1.05$

参考 LNG日本着価格は、天然ガス価格+液化費用(3ドル程度)+運賃となる。
    天然ガス価格は現在は4ドル程度だが、6ドル程度までアップすると見られている。
    仮に天然ガスを6ドルとすると、
US Gulf Coastからでは12ドル、西海岸からでは10.3ドルとなる。
    現在の日本の輸入価格は16ドル程度。
(百万BTU当たり)


これまでの非FTA締結国向けの輸出承認は下記の通りで6ヶ所7件(Freeport 追加を含む)となっている。

会社名 立地 概要
Cheniere Energy

本事業のため
Blackstoneが出資

Sabine Pass LNG Terminal
(Cameron Parish, LA)
承認:2011/5(FTA締結国向けは 2010/9)
数量:2.2 Bcf/d(年間1600万トン)
期間:20年間
輸出契約:
   BG Group   550万トン
   Gas Natural (スペイン)   350万トン
   Gail(インド)   350万トン
   Kogas(韓国)   350万トン
   合計    1600万トン

  注. 承認時は韓国はFTA未発効

2012/2/24 米国からのLNG輸入問題
Freeport LNG

株主:
Michael Smith
Zachry
Dow(輸出には不参加)
大阪ガス

Freeport LNG Terminal
(Quintana Island, TX)
承認:2013/5(FTA締結国向けは 2011/2)
数量:1.4 Bcf/d(年間900万トン)
   
1.8 Bcf/d (年間1200万トン)(2013/11増量承認)
期間:20年間
液化開始:2018年(追加分2019年)
輸出契約:
   大阪ガス   220万トン
   中部電力   220万トン
   BP Energy   440万トン
   合計     880万トン
    東芝    220万トン
     再計   1100万トン
2013/5/20  米エネルギー省、日本へのLNG輸出を許可
Lake Charles Exports

株主:
Southern Union Company
BG Group
Lake Charles Terminal
(Lake Charles, LA)
承認:2013/8(FTA締結国向けは 2011/7)
数量:2.0 Bcf/d(年間1500万トン)
期間:20年間
輸出契約:
    BG Groupがパートナーのため、当然BGは対象
2013/8/12 米エネルギー省、非FTA締結国向けLNG輸出で3件目の承認
Dominion Energy Dominion Cove Point
  LNG Terminal
(Chesapeake Bay
 in Lusby, Md.)
承認:2013/9(FTA締結国向けは 2011/10)
数量:
0.77Bcf/d 年間525万トン
期間:20年間
液化開始:2017年
輸出契約:
    住友商事  

230万トン

 
     (東京ガス)  

(140万トン)

 
          (関西電力)   ( 80万トン)  
   Gail(インド)   230万トン  
   合計    460万トン  
2013/9/13   米、日本向けLNG輸出 2件目を承認
Cameron LNG

株主:
Sempra Energy 50.2%
三井物産 16.6%
Japan LNG 16.6%
(三菱商事
/日本郵船)
GDF Suez  16.6%

 

Cameron Parish, LA 承認:2014/2/11(FTA締結国向けは2012/1)
数量:1.7 Bcf/d(年間1200万トン)
期間:
20年間
輸出開始:2017年
輸出契約:
   三井物産  

400万トン

 
   三菱商事  

 400万トン

 
   GDF Suez   400万トン  
   合計    1200万トン  
 2014/2/13    米、日本向けLNG輸出 3件目を承認
Jordan Cove
Energy LNG

株主:
Veresen Inc

 

Coos Bay, Oregon 承認:2014/3/24


   (FTA締結国向けは2011に900万トンで承認)        
数量:0.8 Bcf/d (年間 600万トン)
期間:20年
輸出開始:2017年
輸出契約:2014年中
本件


なお、次に承認を受けるのは、同じオレゴン州の WarrentonのSkipanon Peninsula に建設予定のOregon LNGと見られている。(上のパイプライン地図に表示)

 

ーーー

米議会は3月25日、ウクライナ情勢を受け、米同盟国がロシアの天然ガスに依存しなくても済むよう、WTO加盟国に政府の許可なしでLNG輸出を認める法案の審議を開始した。但し、仮にこの法案が通っても、実際の輸出には5~6年かかる。

この案に対する反対も多く、公共の利益に合うかどうか考えずに無制限に輸出を認めると予期しない 重大な悪影響を生むかも知れないとの意見が出ている。

当初から天然ガス価格の値上がりを懸念している Dow Chemical などは当然、反対している。




3月22日からの習近平国家主席の欧州訪問を前に、中国は欧州産ワインに対するダンピング調査をめぐり、EUと和解することで合意した。


中国の高虎城商務相は3月
21日、欧州産ワインのダンピング問題を巡って双方の業界が紛争解決で合意したと発表し、調査を打ち切る方針を示した。

中国商務部は3月24日、公告19号で調査打ち切りを発表した。

EUは同日、声明を発表、欧州ワイン企業委員会CEEV:European Committee of Wine Companies) と国酒業協会(CADA:Chinese Alcohol Drinks Association)が合意に達し、2013年7月に開始された欧州原産ワインの反ダンピング調査、反補助金調査が終了することを歓迎した。


中国と欧州の間で太陽光パネルの貿易紛争が激化していた2013年7月に商務部が事実上の報復措置としてワインのダンピング調査を開始した。
中国ワイン協会が国内ワイン産業を代表して調査を要請した。

実際は、EUの反ダンピング課税を強く支持したフランスを標的にした報復である。
2012年の中国のEUからのワイン輸入量は25万7千キロリットルと2009年比で4倍に膨らみ、約70%がフランスからとなっている。

2013/7/5   中国、EU原産の輸入ワインで反ダンピング&反補助金調査を開始

EUは2013年7月23日、中国の太陽光パネルのダンピング問題で中国側と和解に達したと発表した。
欧州委員会
は8月2日、これを承認した。

2013/7/28 EUと中国、太陽光パネルダンピング問題で和解


中国政府によるダンピング調査と並行し、
2013年11月に欧州ワイン企業委員会 (CEEV)と中国酒業協会(CADA)による
"Business to Business" 協議が北京で開始された。

今回合意された覚書によると、中国業界は反ダンピング、反補助金調査の申請を取り消し、両者間で当初2年間、技術支援・協力活動を実施する。

中国政府のダンピング調査の終了を待ち、EUのワイン業界は中国側にぶどう栽培(果樹試験場と機械化技術)、ワイン醸造と品質管理、マーケティング、ワインテースティング、原産地保護制度などの分野での一連の技術支援を行う。

中国側はEU側が中国でEUのワインのテースティングを行うのを支援し、中国の消費者にワインの知識を植え付け、ワインとワイン文化の認識を深める。
両者は更に関係を強化する。

中国のワインの伸びは大きく、EUからの輸出は2012年に764百万ユーロに達し、全輸出の8.6%を占める。
このうち、フランスが71%、スペインが11.7%、イタリアが10.1%となっている。




ロシアの国営石油会社OAO Rosneft は3月17日、間接的にイタリアのタイヤメーカーPirelli の筆頭株主になる契約を締結した。
Pirelliに出資する最大の持株会社の権益を5億ユーロ(695百万ドル)で取得する。

現在のPirelliの株主構成は以下の通りとなっている。

最大株主はPirelliの会長のMarco Tronchetti Proveraと投資会社のClessidra 及び2つの銀行が出資する持株会社Cam Finanziaria (Camfin) だが、交渉の結果、Camfinを解散し、新しい持株会社をつくり、Rosneftが50%を出資する。Clessidra は離脱し、会長と2つの銀行は新比率で出資することとなった。

最終的にRosneft のPirelliへの出資比率は13.1%となり、Marco Tronchetti Provera会長の10.5%を上回り、最大株主となる。

Cam Finanziaria
(Camfin)
Nuove Partecipazioni
(Marco Tronchetti Provera)
39.09% 新持株会社 Rosneft 50% Pirelliの13.1%
Clessidra SGR
(private equity company)
24.06% 新会社 Nuove Partecipazioni 80% 50% Pinelliの10.5%
Intesa Sanpaolo
(bank)
18.43% Intesa Sanpaolo 10% Pinelliの1.3%
Unicredit
(bank)
18.43% Unicredit 10% Pinelliの1.3%

この数年、Pirelliの株主の間で会長の力を弱めようとの動きがあり、それに対抗して会長が昨年、Clessidra と2銀行に出資を依頼し、Camfinを設立したという経緯がある。Clessidra は2017年までの出資としていた。

Rosneftが安定株主として入ることで、株主関係が安定化する。

RosneftとPirelliは2012年12月に契約を結び、RosneftのガソリンスタンドでPirelliのタイヤを販売しており、原料の供給も行っているが、関係を更に強化する。

Pirelliは住友ゴムと並び世界5位のタイヤメーカー(シェア4.1%)だが、イタリアでの販売は全体の6%で、ロシア、中国、ラテンアメリカでの事業が大きい。

Rosneft は合成ゴム事業に関心を有しており、Pirelliとの提携はこれを推進することとなる。

2013年12月にRosneftとPirelliはアルメニアのOil Technoとの間で、アルメニアでの合成ゴム、特にSBRの生産をすることに関し、共同でR&Dを実施する覚書を締結している。

主体はRosneftで、PirelliはRosneftに協力し、実現した場合には長期的に購入する意向を示した。

 


ドイツの大手エネルギー会社RWE AG は3月17日、石油・ガス事業子会社のRWE Dea AG を51億ユーロ(約6億ユーロの負債込み)でLetterOne Groupに売却する契約を締結したと発表した。

Dea は英国、ドイツ、ノルウェーなどで石油とガスの採掘を行っている。

RWE Dea は現在開発中では最大のガス田の一つの北海南部のBreaghガス田のオペレーターを務めている。

脱原発政策が進むドイツでは電力大手が危機的状況に陥っている。再生可能エネルギーの普及で電力市価が下落し、火力発電所の収益が悪化しているためで、RWEは2013年決算で1949年以来の赤字(2,757百万ユーロ)に転落し、307億ユーロの負債に苦しんでいる。

このため、RWEは資産の売却を進めており、2013年に石油・ガス事業の売却を決定した。
報道によると、LetterOneのほかに、BASF子会社のWintershallやハンガリーの石油・ガス会社MOLなどもRWE Dea 買収を狙っていたとされる。

RWEのライバルの EON SE も200億ユーロの資産売却を行った。

E.ONとRWEは欧州のウラン濃縮企業URENCOの株主だが、ともに持ち株の売却の検討を始めている。

ーーー

売却先のLetterOne Groupは、ロシアの新興財閥のAlfa Groupがグローバルに石油・ガス事業を展開するために2013年に設立、200億ドル以上を投資するとしている。当面100億ドル以上を投資するとしており、多数のエネルギー企業の経営者を顧問として雇っている。

Alfa GroupはTNK-BPの株主であったAlfa-Access-Renova(AAR)の株主。

AARはTNK-BPの50%持分を280億ドルでRosneftに売却したが、Alfa Groupは入手した140億ドルの一部をLetterOne 設立に充てた。

 

AAR Alfa Group ロシアの新興財閥で、ロシア最大の金融産業コングロマリットのひとつ。
Mikhail Fridman と German Khan が50%ずつ保有。
Access Industries ロシア生まれの Len Blavatnik が設立し所有する米国の投資会社で、Basellを買収した。
Renova Holding ロシアの長者番付では第5位のViktor Feliksovich Vekselberg (SUALの大株主)のベンチャーキャピタル。

EUの欧州委員会は3月19日、自動車向けのベアリングで、日本企業4社と欧州企業2社の計6社が2004年から7年以上にわたって欧州内でカルテル行為を実施したとして、うち5社に9億5300万ユーロの制裁金を科したと発表した。

日本のジェイテクトはカルテルの存在を通知したため、制裁金 86,037,000ユーロを免除された。

 

Leniency

示談制度割引

制裁金 (€)

ジェイテクト 100% 10% 0
日本精工 40% 10% 62,406,000
不二越  30% 10% 3,956,000

SKF (Sweden)

20%

10%

315,109,000

Schaeffler (Germany)

20%

10%

370,481,000

NTN

 

10%

201,354,000

Total

   

953,306,000

ジェイテクトは2006年1月に光洋精工と豊田工機が合併
NTNは旧東洋ベアリング


本件は、米国などで摘発が続いている自動車部品カルテルの一部。

欧州委員会は既にワイヤーハーネスとマットレス・カーシートの2件を摘発しているが、他にも調査を進めている。

1)ワイヤーハーネス (2013/7/10発表)

  
  制裁金(€)
矢崎総業 125,341,000
古河電気工業 4,015,000
住友電気工業 0
S-Y Systems Technologies
(矢崎総業)
11,057,000
Leoni (ドイツ) 1,378,000
合計 141,791,000
住友電工はカルテルの存在を通知し、制裁金 291,638,000ユーロを免除された。
古河、矢崎、SYS、Leoni は協力割合に応じ、20~50%の減免を受けた。
また各社は示談にすることで10%の減免を受けた。


2)自動車用マットレス、シート(2014/1/29発表)

 

Leniency

示談制度割引

制裁金 (€)

Vita

100%

10%

0

Carpenter

 

10%

75,009,000

Recticel (自社分)

50%

10%

7,442,000

Eurofoam(Recital/Greiner JV)
- Eurofoam, Recticel and Greiner
- Greiner and Recticel
- Recticel

50%

10%


14,819,000
9,364,000
7,443,000

Total

   

114,077,000

  Vita は制裁金61.7百万ユーロを免除された。

欧州委員会では他に、エアバッグ、安全ベルト、ハンドル、エアコン、エンジン冷却製品、照明システムなどで調査を進めている。

ーーー

日本ではベアリングカルテルについて3社を告発、うち2社については罰金判決が出た。(NTNは無罪を主張している)
公取委は2013年3月29日、排除措置命令及び課徴金納付命令を行った。

  排除命令 課徴金
(千円)
減免 罰金判決
(千円)
NTN 7,231,070    裁判中
日本精工 5,625,410 30%  380,000
不二越 509,390 30%  180,000
ジェイテクト 100%
合計   13,365,870    

罰金の刑に処せられ、同裁判が確定している事業者については、独占禁止法第7条の2第19項の規定に基づき、当該罰金額の2分の1に相当する金額を控除した額を課徴金額としている。


ワイヤーハーネスについては、公取委は2010年2月、米国司法省、欧州委員会などとほぼ同時期に調査を開始し、2012年1月に課徴金納付命令を行った。

2012/1/28  公取委、自動車用ワイヤーハーネスのカルテルで課徴金 

ーーー

米国では多数の日本企業および個人が自動車部品カルテルで摘発されている。(現在も続いている。)

ベアリングではジェイテクト、日本精工が、ワイヤーハーネスでは古川電工、矢崎総業、フジクラが司法取引を行っている。

  現状の明細は 2013/10/1 米司法省、自動車部品カルテルで更に9社、2名と司法取引に付記している。



公取委は3月18日、自動車運送業務を行う船舶運航事業者に対し、独禁法違反行為を行っていたとして、排除措置命令及び課徴金納付命令を行った。

各社は遅くとも2008年1月以降、日本から北米、欧州などに新車を運ぶ4航路で、値上げ幅などを事前に話し合い、航路ごとに同じ会社が継続受注できるようにし、価格維持を図ったという。

日本と海外を結ぶ航路では、運賃表を国土交通省に届け出るなどすれば独禁法適用を例外的に除外すると定められている。
適用除外カルテルではベースレートが全ての荷主に対して一律に適用されるが、今回は荷主ごとに相対の交渉により運賃を取り決めており、当てはまらないと判断した。

商船三井は違反を事前に自主申告したため、課徴金減免制度の適用を受けた。

  北米航路 欧州航路 中近東 大洋州 課徴金
(千円)
日本郵船
《30%》

《30%》

《30%》

《30%》
13,101,070
川崎汽船
《30%》

《30%》

《30%》

《30%》
5,698,390
Wallenius Wilhelmsen Logistics
(
ノルウェー)
    3,495,710
日産専用船  
《30%》
    423,310
商船三井
《100%

《100%

《100%

《100%
合計 22,718,480
《 》は減免率
日産専用船は商船三井、日産自動車、ノルウェーのHoegh AutolinersのJV

このカルテルを巡っては米司法当局や欧州連合も調査している。

課徴金の総額は227億1848万円で、これまでで第二位、日本郵船の131億107万円は1社として過去最高となる。

ーーー

(合計額 過去最高)

公取委は2010年11月、全国の自治体が発注するごみ焼却炉工事を巡る入札談合で、総額269億9789万円の課徴金納付を命じる審決を出した。
各社が2007年3月の公取委による同命令を不服として、審判で争っていた。

東京高裁は請求を棄却、最高裁第3小法廷は2009年10月6日、5社の上告を退ける決定をした。

 

課徴金(千円)

三菱重工業 6,496,130
JFEエンジニアリング 5,732,510
川崎重工業 5,165,580
日立造船 4,901,020
タクマ 4,702,650
合計 26,997,890

ーーー 

(1社での過去最高)

公取委は1月19日、トヨタ自動車等の自動車メーカーが発注する自動車用ワイヤーハーネス及び同関連製品の見積り合わせの参加業者らに対し、排除措置命令と課徴金納付命令を行った。

  排除
命令
課徴金額 (千円)   《 》は減免率
トヨタ
    向け
ダイハツ
     向け
ホンダ
    向け
日産
   向け
富士重工
    向け
合計
矢崎総業 5 4,979,950
《30
%
872,150
《30
%
2,763,500
《30
%
440,030
《30
%
551,500
《30
%
9,607,130
 
住友電気工業 738,610
《50
%
482,950
《50
%
880,660
《50
%
0
《100
%
2,102,220
 
フジクラ 1件 1,182,320
《30
%
1,182,320
 
古河電気工業 0
《100
%
0
《100
%
0
《100
%
0
《100
%
0
 
合計 12,891,670


2012/1/28  公取委、自動車用ワイヤーハーネスのカルテルで課徴金 

 

 

 

 

LG化学は、米国の逆浸透(RO)膜メーカーのNanoH2Oを2億ドルで買収することを決めた。4月末までに契約完了を目指す。

NanoH2Oは2005年設立の海水淡水化に特化したRO膜メーカーで、University of California, Los Angeles (UCLA) からTFN(Thin Film Nanocomposite)膜技術の独占実施権を受けてテストを続け、2009年12月に工場を建設した。

投資家には、
Khosla Ventures、Oak Investment Partners、BASF Venture Capital GmbH、Total Energy Ventures International、中国向けファンドのKeytone Venturesなどが含まれる。

カリフォルニア州El Segundoに本社、工場、R&Dセンターを持つ。

同社のTFN膜QuantumFlux は34カ国100箇所で、日量25万m3の水を生産している。

同社は2013年10月に上海の西方250kmの揚子江デルタにある栗陽市に第二工場を建設すると発表した。45百万ドルの投資で2014年末稼動を目指す。


2013年11月に、同社はサウジで海水淡水化事業を 2件受注した。
一つは
Al Fatah Water and Power International からの受注で、Jubail の海水淡水化工場の第二期で日量13千m3の水を生産するもの。
第二はAES Arabia の設計によるKing Abdullah University of Science and Technology ("KAUST") Research Parkの淡水化設備で、日量15千m3の水を生産するもの。

ーーー

LG電子は2012年2月、日立プラントテクノロジーとの水事業に関するJVのLG-Hitachi Water Solutions を設立した。

出資比率はLG電子が51%、日立プラントテクノロジーが49%で、主に韓国における各種工場の排水処理設備や上水・下水処理施設向けの機器の製造・販売をはじめ、システムの設計・調達・建設、施設の運転・維持管理、および水処理技術の研究開発を行う。

将来的には、第三国における水事業に参画していくことも検討するとしている。

 

 

 

 

日本化学会は、平成21年度から化学関連の学術あるいは化学技術遺産の中で特に歴史的に高い価値を有する貴重な史料を認定する『化学遺産認定制度』を開始し、これまでの 4回で 22件を認定・顕彰している.

今回、第5回化学遺産認定として次の6件を認定した。

(1)「日本の近代化学の礎を築いた櫻井錠二に関する資料(石川県立歴史博物館など)」

ロンドン大学に留学、1881年に日本に帰国し、東京大学理学部講師になり、翌年には教授に昇進した。
日本の化学研究、学術研究体制の基盤を築き上げた。
理化学研究所(初代の副所長)や日本学術振興会の創設にかかわる。

(2)「エフェドリンの発見および女子教育に貢献のあった長井長義関連資料(大日本住友製薬など)」

ベルリン大学に留学、帰国後、政府の要請で大日本製薬会社の製薬長に就任、機械の設置から薬の製造までを担当し、国産の製薬事業をスタートさせた。

併せて、東京大学教授として化学・薬学を指導し、麻黄の薬効成分を単離・構造決定し、エフェドリンと命名した。 (ぜんそく治療薬)

当時、輸入薬品が主流で、製薬の国産化事業は進展しなかった。

このため政府の援助を得て1883年に半官半民の大日本製薬会社が
設立され、長井長義が製薬長に就任した。

他方、大阪では大阪薬種卸仲買商組合の有力者を発起人として1888年に大阪薬品試験会社が設立された。

1897年には大阪に近代的な製薬所を設立し、純良医薬品を提供するため、
武田、塩野義、田辺の道修町御三家などが出資して、大阪製薬株式会社が設立された。

大阪製薬は1899年に、経営難に陥っていた大日本製薬を吸収合併して「大日本製薬」となった。
1908年には大阪薬品試験を吸収合併した。

2005年10月1日、大日本製薬と住友製薬が合併し、大日本住友製薬となった。 


長井は「日本においても女子教育が必須である」という信念で妻のテレーゼ(ドイツ人)とともに、女子教育に力を入れた。

 

付記 

大日本住友製薬は大阪本社ビル内に、くすりの町・道修町と大日本住友製薬のあゆみに関する資料展示スペースを開設した。
海老江製薬所の再現模型や、医薬品製造に使用していた蒸留缶・濾過器
(化学遺産認定) などを展示している。

(3)「旧第五高等学校化学実験場および旧第四高等学校物理化学教室(熊本大学など)」

熊本の旧第五高等学校の化学実験場は1889年に建設され、戦後、熊本大学に継承された。
金沢の第四高等学校物理化学教室は1890年に建設され、戦後、金沢大学に継承された。

(4)「化学技術者の先駆け宇都宮三郎資料(早稲田大学)」

幕末に舎密開宗を独習するなどして化学の腕を磨き、蕃所調所精錬方で技術の向上と後進の指導に努めた。
第二回認定
(第8号)の川本幸民が初めて使った「化学」という語を導入し、蕃所調所精錬方を化学所と改称した。

(5)「日本のプラスチック産業の発展を支えたIsoma射出成形機および金型(旭化成ケミカルズなど)」

1933年にドイツのFranz Braun社が開発した画期的な機械駆動式横型射出成形機。
日本には1937年に旧式射出成形機が初めて輸入され、翌年にはそれをモデルにした手動式機会が初めて国産化された。

川崎市川崎区が戦前・戦中の産業文化財として展示している。

付記
積水化学工業は、同社が保有する日本現存最古の射出成形金型「Isoma金型」が、旭化成ケミカルズが保有する「Isoma射出成形機」とともに「化学遺産」に認定されたと発表した。

「クシ」と「ウイスキーコップ」成形用の2つの金型でドイツ製。
積水化学の前身である日本窒素肥料が1943年に射出成形機とともに現地企業から購入し、ドイツの潜水艦で運ばれた。
2つの金型は1947年、積水化学がプラスチック加工メーカーとして創業した際、日本窒素から提供された。
 

(6)「日本初のアルミニウム生産の工業化に関わる資料(昭和電工)」

昭和電工創設者の森矗昶は、長野県大町の水力発電による電気を使って、電解精錬によるアルミニウムの生産に挑戦し、1934年に日本初の国産アルミニウムの工業的生産に成功した。

なお、原料のアルミナは1933年に横浜(現 昭電横浜事業所)で明礬石を原料として生産を開始した。

付記
認定対象は同社の「国産アルミニウム一号塊」、「明礬石」、「アルミニウム製花瓶」、「大町工場建設日誌」、「常盤発電所配電盤」および「積算電力計」。

  国産アルミニウム一号塊


ーーー

過去に認定された化学遺産は下記の通り。

2010/3/18
 
  化学遺産認定
第1号  杏雨書屋蔵 宇田川榕菴化学関係資料
第2号  上中啓三 アドレナリン実験ノート
第3号  具留多味酸(グルタミン酸) 試料
第4号  ルブラン法炭酸ソーダ製造装置塩酸吸収塔
第5号  ビスコース法レーヨン工業の発祥を示す資料
第6号  カザレー式アンモニア合成装置および関連資料
2011/3/17 
   
化学遺産、第二回認定
第7号   日本最初の化学講義録 朋百舎密書(ポンペせいみしょ)
第8号   「化学新書」など日本学士院蔵 川本幸民化学関係資料
第9号   「日本のセルロイド工業の発祥を示す建物および資料」
第10号  日本の板硝子(ガラス)工業の発祥を示す資料
2012/3/17 
    化学遺産、第三回認定
第11号  眞島利行ウルシオール研究関連資料
第12号  田丸節郎資料(写真および書簡類)
第13号  鈴木梅太郎ビタミンB1発見関係資料
第14号  日本の合成染料工業発祥に関するベンゼン精製装置
第15号  日本初期の塩化ビニル樹脂成形加工品
第16号  日本のビニロン工業の発祥を示す資料
第17号  日本のセメント産業の発祥を示す資料
2013/3/21 
    化学遺産、第四回認定
第18号  小川正孝のニッポニウム発見:明治日本の化学の曙
第19号  女性化学者のさきがけ、黒田チカの天然色素研究関連資料
第20号  フィッシャー・トロプシュ法による人造石油に関わる資料
第21号  国産技術によるアンモニア合成(東工試法)の開発とその企業化に関する資料
第22号  日本における塩素酸カリウム電解工業の発祥を示す資料


ーーー


日本化学会は認定内容を、第8回 化学遺産市民公開講座~日本の化学教育・産業の基盤作り~ で具体的に紹介する。

日時 3月29日 (土) 13時 30分 ~ 17時15分 
会場 名古屋大学 東山キャンパス 法経本館共用館1階第2講義室

  (3月27日から30日まで、同キャンパスで日本化学会第94春季年会が開催されている。)

http://www.chemistry.or.jp/event/calendar/2014/02/8-52.html

 





日本軽金属は3月14日、静岡市清水区の蒲原製造所におけるアルミニウム電解事業を、本年3月31日をもって終了すると発表した。

同社のアルミは平均純度99.95%と、一般の地金(純度99.7%程度)よりも純度が高く、主に電機・電子分野向け高純度製品の材料として使用されているが、老朽化が著しく、事業継続には多額の投資が必要なため、停止する。
同工場は稼動後50年以上が経過しており、更新には30億円超が必要とされる。

蒲原工場は1940年に年産 9千トンでスタートした。

日本のアルミ精錬は1978年時点では164万体制で、日軽金も新潟、苫小牧を加えて合計能力377千トンであったが、石油危機による電力料の急騰で苦境に陥り、110万体制、70万体制、35万体制と順次縮小し、その後の円高 (安価な輸入品の流入)、関税引き下げを受け、他社は1987年を最後に全て停止した。

日軽金も1980年12月に新潟、1985年4月に苫小牧を停止したが、水力発電所をもつ蒲原工場のみ35千トンに規模を縮小し、生産を続けた。
その後、1995年に20千トン、1999年に11千トンに能力を落とし、現在能力は7,000トンとなっている。

2012年度の生産実績は4,141トンで、2013年度は2,600トンの予想。

日軽金蒲原工場は富士川の中・下流域にわたって6ヶ所、合計142,500KWの自家用水力発電所を持つ。


アルミ精錬には1トン当たり13,000~14,000kWhの電力が必要なため、「電気の缶詰」と呼ばれる。

参考 日本メーカーは赤泥処理の問題から国内でのアルミナ生産からも撤退した。
       
2008/3/8 アルミナメーカー、ボーキサイトの国内精製から撤退へ
    
    日軽金は現在も清水工場で
水酸化アルミニウムとアルミナを生産している。
    (同社はベトナムの新工場に水酸化アルミニウムの生産拠点を移転することを計画したが、取り止めた。)

ーーー

日本のアルミニウム製錬各社の設備能力推移(単位:t)     

 

164万t体制
 1978/4

110万t体制
 1979/4

70万t体制
 1982/4

35万t体制
 1986/4

 
 1988/4


 現状

全面停
止時期

住友
アルミニウム
製錬

磯浦

78,980

78,980

1982/3

名古屋

52,796

1979/3

富山

177,681

118,454

82,917

82,917

1986/10

東予

98,712

98,712

98,712

1984/12

408,169

296,146

181,629

82,917

 

日本軽金属

蒲原

94,960

63,854

63,854

63,854

  34,691

  7,000

2014/3

新潟

147,663

20,717

1980/12

苫小牧

134,413

134,413

72,365

1985/4

377,036

218,984

136,219

63,854

34,691

7,000

 

昭和軽金属

千葉

170,290

127,508

57,945

31,690

1986/3

喜多方

28,716

16,922

16,922

1982/9

大町

42,803

17,931

1982/6

241,809

162,361

74,867

31,690

 

三菱軽金属

直江津

160,164

160,164

1981/10

坂出

192,481

76,427

76,427

50,952

1987/2

352,645

236,591

76,427

50,952

 

三井
アルミニウム

三池

163,827

144,366

144,366

124,906

1987/3

住軽
アルミニウム

酒田

98,712

98,712

98,712

1982/5

合計

1,642,198

1,157,160

712,220

354,319

34,691

7,000

 


石油危機により深刻の度を深めるアルミニウム産業について、1977年と78年に産構審が答申を行った。

①最小の国民経済的コスト ②供給ソースとしての必要かつ十分性 ③国際競争力の回復の可能性の基準に基づき、中長期的、総合的に判断した製錬設備の「適正規模」の考え方が取り入れられ、それを超える設備の処理が提言されるようになった。

  1977年11月中間答申で125万トン体制、1978年10月答申で110万トン体制とした。 

1982年3月に特定不況産業安定臨時措置法(特安法)による第二次安定基本計画が告示され、処理対象設備能力を53万トンから93万トン(当初能力の57%)に拡大した。また、電力源の石炭転換への推進、新製錬法の技術開発などが基本計画に追加された。
これにより製錬業界は年産能力70万トン体制に入ることになった。
(1983年の産構法の制定で構造改善基本計画としてほぼ追認、告示された。)

1984年12月、産構審非鉄金属部会は、今後のアルミニウム産業およびその施策のあり方について答申を行った。

答申では、世界の生産能力は適正水準で推移し、中長期的には世界の製錬コストからみて適正な水準に回復するとしており、1988年までに高コスト設備の処理により、国内製錬能カを今後存続可能な年35万トン程度に削減するというものである。

これに基づき、1985年2月に「構造改善基本計画」が告示され、年産能力35万トン体制に入った。
政府は国内精錬設備の円滑な処理を図るため、産構法に基づく処理量を限度に、精錬業者の輸入する地金の関税を軽減する制度を導入した。

しかし、世界的なアルミニウム地金の構造的な供給過剰傾向、1985年秋以来の円高の一層の進行により、国内地金市況は低下し、長期的低迷から回復のめどが立たない状況となった。
さらに日米通商交渉の結果、地金の輸入関税(9%)が1988年から米国並みの1%と決定され、各社は撤退を決定した。



 

韓国とカナダは3月11日、ソウルで通商閣僚会談を行い、両国間の自由貿易協定(FTA)交渉を妥結させた。
両国での手続きが順調に進めば、来年中に発効する。

アジア諸国でカナダとFTAを妥結したのは韓国が初めてで、韓国がFTAを締結したのは、これで12カ国・地域となる。

両国は2005年7月からFTA交渉を進めてきたが、2003年にカナダでBSEが発生すると韓国はカナダ産牛肉の輸入を全面禁止した。
このため、2009年にカナダが牛肉市場の開放を求めて韓国をWTOに提訴し、交渉が約5年間中断していた。
韓国は2012年1月に、9年間にわたる牛肉禁輸措置を解除した。

カナダ国際貿易省によると、韓国向け輸出は2012年に37億カナダドル(34億米ドル)で、韓国からの輸入は64億カナダドルだった。
カナダは、FTA締結によって輸出が年間32%増加すると見込んでおり、韓国は輸出が20%増加するとしている。

韓国側は、FTA締結は安定的な資源確保にも寄与するとの見通しを示した。

両国は協定発効後、10年以内に大多数の品目の関税を段階的に撤廃することにした。

このFTAで主に恩恵を受けるのは韓国の自動車メーカーカナダの肉牛農家である。

カナダは乗用車の輸入関税(現行 6.1%)を協定発効から引き下げ、2年後には完全撤廃する。
乗用車は昨年の韓国の対カナダ輸出で最も多い42.8%(22億3千万ドル)を占めている。

自動車部品(関税率6%)、冷蔵庫・洗濯機(6~8%)などの家電製品は発効と同時か、または3年以内に関税を撤廃する。

カナダに進出している日本の自動車メーカーは当初、韓国とのFTAに反対を表明していたが、その後、カナダと日本のFTAにつながる可能性もあるとして態度を軟化させたと報じられている。

韓国はコメや粉ミルク、チーズなど211品目を関税撤廃の対象から除外するが、牛肉(40%)は15年以内、豚肉(22.5~25%)は5~13年以内に関税を撤廃する。

2013年12月に交渉が妥結した韓豪FTA交渉でも、韓国はコメ、粉乳、果実(リンゴ、梨、柿など)、大豆、ばれいしょ、水産物(カキ、明太子など)など171品目 (1.4%分)は関税免除から除外したが、牛肉などの492品目は10年以上かけて撤廃する。
 

両国は、北朝鮮の開城工業団地で韓国企業が生産する製品を韓国産として認めるかどうかを話し合う委員会も設置することにした。

ーーー

日本もカナダとの間で日加経済連携協定(EPA)交渉を行っている。

2012年3月の日加首脳会談で交渉開始で一致し、同年11月から2013年11月まで4回の交渉を行っている。

対加貿易(2012年、財務省貿易統計):

    貿易額 主要品目
日本による輸出     8189億円 輸送用機器、一般機械、電気機器
日本による輸入  1兆 125億円 鉱物性燃料、農産品、林産品

ーーー

韓国は米国、EU、欧州自由貿易連合(EFTA=スイス、ノルウェー、リヒテンシュタイン、アイスランド)、ASEAN10ヵ国、インド、チリ、ペルー、コロンビアなどの国・地域との間でFTAを締結しており、欧州―東アジア―米国をつなぐ「東アジアのFTAハブ」と自称している。

日本はFTA締結国の数では韓国より多いが、米国、カナダ、EU、豪州と締結できていない。

  韓国 (12) 日本 (13) TPP参加国
ASEAN 物品貿易 2007年6月1日発効
サービス貿易 2009年5月1日発効
投資分野2009年9月1日発効
2008年12月から順次発効  
  シンガポール 2006年3月2日発効 2002年11月発効
マレーシア 個別には発効していないが、ASEANとして既に発効済み 2006年7月発効
タイ 2007年11月発効  
インドネシア 2008年7月発効  
ブルネイ 2008年7月発効
フィリッピン 2008年12月発効  
ベトナム 2009年10月発効
インド  2010年1月1日発効 2011年8月発効  
オーストラリア 2013/12 実質合意  ---
ニュージーランド  ---  ---
トルコ 2013年5月1日発効  ---  
米国 2012年3月15日発効  ---
カナダ 2014年3月11日妥結  ---
メキシコ  --- 2005年4月発効
チリ 2004年4月1日発効 2007年9月発効
ペルー 2011年8月1日発効 2012年3月発効
コロンビア 2013年2月21日 正式署名  ---  
EFTA 2006年9月1日発効  ---  
  スイス (EFTAとして締結) 2009年9月発効  
EU 2011年7月1日暫定発効  ---  
 

ーーー

韓米自由貿易協定が2012年3月15日に発効し、2年経った。

韓国貿易協会と産業通商資源部によると、韓国の輸出全体は2012年が1.3%減、2013年が2.1%増にとどまったのに対し、FTAが発効した2012年の対米輸出は585億3000万ドルと前年比4.1%増加、2013年は620億5000万ドルと6.0%拡大した。

このうち自動車部品をはじめとする輸送機械は年平均17.0%増、化学製品は13.1%増、石油製品は10.4%増であった。

米国からの輸入は、関税が8%から4%に引き下げられた米国製自動車の輸入は年平均49.9%増加した 。自動車輸入増では日本メーカーが韓国向け輸出の一部を日本製から米国工場からの供給に切り替えた影響 (日本のFTAへの対応の遅れの表れ)が出ている。

また、チェリーやアーモンド、ワインなどの農産物や加工食品も3~4割増となったが、全体では2012年が2.8%減、2013年が4.2%減であった。
 

FTA発効後の2年間、米国の対韓投資は80億4000万ドルで、発効前の2年間に比べ82.5%増加した。





2013年の貿易赤字(速報、通関ベース)は過去最大の11兆円となった。

  輸出 輸入 差引
2010 67兆3996億円 60兆7650億円 6兆6347億円
2011 65兆5465億円 68兆1112億円 -2兆5647億円
2012 63兆7476億円 70兆6886億円 -6兆9411億円
2013 69兆7877億円 81兆2622億円 -11兆4745億円

2014/1/28   2013年の貿易赤字、過去最大11兆円 


円安の影響が大きいが、全ての輸出入に円安が響く訳ではない。

税関ホームページでは半年ごとに「貿易取引通貨別比率」を発表している。
   http://www.customs.go.jp/toukei/shinbun/trade-st/tuuka.htm

これによると、2013年下期の日本の輸出入の通貨別比率は下記の通りである。

  米ドル ユーロ 豪ドル その他
輸出 53.4% 35.6% 6.1% 1.2% 0.6% 3.1%
輸入 74.1% 20.6% 3.5% 0.4% 0.3% 1.0%


輸出については全体の35.6%が円建てだが、輸入は20.6%しかない。

仮に、輸出と輸入が同額であっても、輸入の方が外貨建てが多いため、円安の場合は貿易赤字となる。
輸出停滞・輸入増であればこの影響は更に拡大する。

日本の輸出入の円建・外貨建別の推移は下記の通りとなる。(半年ごとの通貨別比率で計算)


平均レートは2012年が79.55円/ドルで、2013年が96.91円/ドルである。

2013年の外貨建分を2012年のレートに置きなおすと、下記の通りとなる。
(ドル建以外のものも、ドル建と比例するとみなして計算した。)

                                      単位:兆円
  2012 2013 実増減 レート差
以外
レート差
実額 '12レート
輸出  63.7 69.8 61.7 6.0 -2.0 8.0
輸入  70.7 81.3 69.7 10.5 -1.0 11.5
差引収支 -6.9 -11.5 -7.9 -4.5 -1.0 -3.5

2012年レートで計算すると、2013年の輸出は前年比で2兆円の減、輸入は1兆円の減となった。

為替レート差は、輸出は外貨建ては64.4%のため8兆円に過ぎないが、輸入は外貨建てが79.4%あるため11.5兆円に上り、差引3.5兆円となる。

即ち、円安になったが、実輸出は増えず、レート差を除くと輸出は輸入の倍額の減少となっており、レート差は輸入の方に大きく響くため、貿易収支は4.5兆円もの赤字増となった。
2013年だけ取ると、円安の効果は全く出ていない。

2014年1月の経常収支統計では前月比で貿易収支赤字は倍増している。



輸出のうち円建が35%もあるため、今後も、輸出がかなり大幅に増えないと、円安のメリットを享受できず、逆に、貿易収支の赤字が拡大し、経常収支が赤字化する恐れが強い。



 


石油資源開発(JAPEX)は2013年3月、マレーシアの国営石油会社 Petronasとの間で、Petronasが推進するカナダBritish Columbia 州でのシェールガス開発・生産プロジェクトおよび同州西海岸で検討中のLNGプロジェクトに参画することで基本合意したと発表した。

North Montney地域のAltares、Lily、Kahta鉱区でシェールガスを開発し、パイプラインでPrince Rupert 市のLelu島に運び、年1,200万トンのLNGプラントでLNGにして輸出する計画。

この計画は、カナダのProgress Energy Resources Corporationが行っていたものだが、Petronasは2011年6月にシェール鉱区の権益の50%を取得し、その後2012年6月に、PetronasはProgressを55億カナダドルで買収することで合意し 、年末に取得した。

JAPEXはシェールガス鉱区の10%権益を取得するとともに、同州西海岸におけるPacific Northwest LNG Projectの10%権益と同権益比率相当のLNG(120万トン/年)を引き取る権利を併せて取得した。

LNG計画は2014年末までに最終決定を行い、2018年末には最初の出荷を行う予定。
能力は年産600万トンの2系列、計1200万トンで、あと1系列追加のオプションがある。

2013/3/7   石油資源開発、カナダのシェールガス開発計画及びLNG計画に参画 

Petronasはその後も参加者を募った。

2013年12月、Petroleum Brunei がこの計画に3%の出資を行った。

インド最大の石油会社 Indian Oil Corporation Limited (IOCL) は2014年3月7日、Petronasとの間で、シェールガス開発とLNG計画に10%参加し、生産するLNG年間1,200万トンの10% 120万トンを20年間引き取る契約に調印した。

本計画の主体の構成推移は下記の通り。

Progress Energy Resources
 
   →
参加
Progress Energy Resources 50%
Petronas 50%
  →
買収


Petronas

 
 →
参加
Petronas 77%
Japex                 2013/3 10%
PetroBRUNEI  2013/12 3%
IOCL                 2014/3 10%

IOCLはインド東南部のチェンナイの北方のEnnoreに年500万トン能力の再ガス化ターミナルの建設を決めている。

付記 その後、Sinopecが15%の出資の交渉を行っていると報じられた。


ーーー

IOCL はOil India Limited (OIL) と共同で、米国のシェールガス計画にも参加している。

両社は2012年10月、米国のCarrizoが Niobrara shaleにもつ権益の30%を取得する契約に調印した。


 


経済産業省は2010年7月5日、通称「エネルギー供給構造高度化法」に基づき、告示を出した。

日本の重質油分解装置の装備率を2013年度までに10%から13%程度まで引き上げることを目標に基準を定め、引き上げを義務化した。

重質油分解装置の装備率 改善率
10%未満の企業  45%以上
10%以上13%未満の企業  30%以上
13%以上の企業  15%以上
重質油分解装置の装備率=重質油分解装置の処理能力÷常圧蒸留装置(トッパー)の処理能力

重質油分解装置の新設には500億円以上かかるとされ、内需が縮小する中で新増設は非現実的で、実質的にはトッパー能力削減しかないとされた。

2010/7/7 エネルギー供給構造高度化法で重質油利用促す新基準、石油業界の再編圧力に

本ブログでは、以下の理由で「官製の設備カルテル」ではないかとして批判してきた。

どういう原料を使って、どういう製品をつくるかは、企業の判断であり、重質油分解能力の向上を各社に義務付けるのはおかしい。
「重質油分解能力の向上」を
「重質油分解装置の装備率」にすり替えており、単なる告示で、違法に設備処理を強制している。

各社ともこれに対応していることから、「官民の設備カルテル」とみられる。

2010/7/21 エネルギー供給構造高度化法は第二の産構法か?

処理期限は2014年3月末である。

後記のとおり、各社の対策がほぼまとまった。

東燃ゼネラル川崎が分解能力を増加した以外はすべてトッパー能力の削減による対応で、METIの狙いは達成されたといえる。

2つの特別ケースがある。(以下 日量能力)

1) コスモ石油

坂出の140千バレルを停止したが、これだけでは未達である。

同社は2014年3月11日、暫定的措置として、四日市の155千バレルのうち43千バレルの生産削減をMETIに届出し、受理された。
METIは3月末までの新たな設備削減は難しいと判断し、暫定措置を認めた模様。
 

2) 昭和シェル

昭和シェル扇町の120千バレルを停止したが、枠からは過剰停止となる。

同社は本年に入り、四日市の原油処理能力 210千バレルを260 千バレルに引き上げることを決め、METIに書類を提出した。
新たな設備投資ではなく、2001年から閉めていた一部バルブを開けて原油投入量を増やす。

精製した軽油、航空機用燃料、ガソリンなど石油製品は需要が旺盛なアジアを軸に海外販売する。

ーーー

各社の対応は以下の通り。

1)昭和シェル:扇町の120千バレルを停止したため、四日市増強後も枠達成

社名 製油所 トッパー
処理能力
(万bbl/d)
重質油分解装置 処理
分解能力
(万bbl/d)
現状
装備率
(%) a
改善
目標率
(%) b
改善後
装備率(%)
 a x b
昭和シェル石油グループ
  昭和四日市石油 四日市 21   29.0    

+50

西部石油 山口 12        
東亜石油 京浜 6.5   14.6      
昭和シェル 扇町 12         -12
合計   51.5 8.8 17.1 15 19.665  
処理   -12          
処理後   39.5 8.8        
増産計画   +50          
再計   44.5 8.8     19.775  

 

2)JXグループ:大阪製油所115千バレルをPetroChinaとのJVとした分を含め、580千バレル削減を達成。

社名 製油所 トッパー
処理能力
(万bbl/d)
重質油分解装置 処理
分解能力
(万bbl/d)
現状
装備率
(%) a
改善
目標率
(%) b
改善後
装備率(%)
 a x b
JXグループ
  ジャパンエナジー 水島 B 20.52   14.6      
鹿島石油 鹿島 21         -2.1
日本海石油 富山 6         -6
新日本石油精製 室蘭 18         -18
仙台 14.5   29.7      
根岸 34   11.8     -7
大阪 11.5         -11.5
水島 A 25   18.4     -11
麻里布 12.7   17.3     -2.4
大分 16   16.3      
合計 179.22 20.6 11.5 30 14.95 -58
処理  詳細 -58          
処理後 121.22 20.6     16.99  


3)出光興産:徳山の120千バレルを停止し、達成

社名 製油所 トッパー
処理能力
(万bbl/d)
重質油分解装置 処理
分解能力
(万bbl/d)
現状
装備率
(%) a
改善
目標率
(%) b
改善後
装備率(%)
 a x b
出光興産 北海道 14   23.6      
千葉 22          
愛知 16   31.3      
徳山 12         -12
合計 64 8.3 13.0 15 14.95 -12
処理 -12          
処理後 52 8.3     15.96  


4)コスモ石油:上記のとおり、坂出の140千バレル停止でも未達、暫定措置として四日市を43千バレル減産で対応。
          計算上はこれでも未達となる。

社名 製油所 トッパー
処理能力
(万bbl/d)
重質油分解装置 処理
分解能力
(万bbl/d)
現状
装備率
(%) a
改善
目標率
(%) b
改善後
装備率(%)
 a x b
コスモ石油 千葉 24          
四日市 15.5        

-4.3

10   31.3      
坂出 14         -14
合計 63.5 2.5 3.9 45 5.66 -18.3
処理 詳細 -18.3          
処理後 49.5 2.5     5.05  


5)東燃ゼネラル:川崎と和歌山の小規模トッパー各1基を廃棄するとともに、川崎の残油水素化分解装置を増強し対応。

社名 製油所 トッパー
処理能力
(万bbl/d)
重質油分解装置 処理
分解能力
(万bbl/d)
現状
装備率
(%) a
改善
目標率
(%) b
改善後
装備率(%)
 a x b
東燃ゼネラル石油 川崎 33.5   8.4    

-6.7
(分解能力増 +3.45)

15.6          
和歌山 17         -3.8
合計 66.1 2.8 4.2 45 6.09 -10.5
処理 詳細 -10.5 +3.45        
処理後 55.6 6.25     11.24  


なお、東燃ゼネラル石油は2013年12月18日、三井物産が保有する三井石油の全株式(発行済株式の89.93%)を249億円で取得することについて合意した。他株主との間でも株式取得について協議を進めており、2014年3月末を目途に発行済株式の約95%を取得する意向。
井石油および極東石油工業合同会社は東燃ゼネラル石油の子会社となる。

2013/9/23     東燃ゼネラル、三井石油を買収へ

これまで極東石油は対応策を発表していないが、東燃ゼネラルと合算すると、枠を達成していることとなる。

製油所 トッパー
処理能力
(万bbl/d)
重質油分解装置
分解能力
(万bbl/d)
現状
装備率
(%) a
改善
目標率
(%) b
改善後
装備率(%)
 a x b
東燃ゼネラル 66.1 2.8 (4.2) (45) (6.09)
極東石油 千葉 17.5 3.4 (19.4) (15) (22.31)
合計 83.6 6.2 7.4 45 10.73
処理 -10.5 3.45      
処理後 73.1 9.65     13.2

 

6)富士石油:2010年に 第1常圧蒸留装置(52千バレル)を廃棄 しており、達成。

社名 製油所 トッパー
処理能力
(万bbl/d)
重質油分解装置 処理
分解能力
(万bbl/d)
現状
装備率
(%) a
改善
目標率
(%) b
改善後
装備率(%)
 a x b
富士石油 袖ヶ浦 19.2 2.4 12.5 30 16.25

-5.2

処理 -5.2          
処理後 14 2.4     17.14  

 


7)太陽石油:

太陽石油の残油流動接触分解設備 (日量 25千バレル)は告示発表時点では既に建設中で、同年11月に完成し、稼動した。

装備率20.8%は改善後の各社よりも高い。
METIの目標は、日本全体の
装備率を2013年度までに「現状の10%から13%程度まで引き上げる 」ことである。

社名 製油所 トッパー
処理能力
(万bbl/d)
重質油分解装置 処理
分解能力
(万bbl/d)
現状
装備率
(%) a
改善
目標率
(%) b
改善後
装備率(%)
 a x b
太陽石油 四国 12 2.5 20.8      


 



 
 

兵庫県尼崎市にあったクボタの工場周辺で生活し、アスベスト特有のがんで死亡した住民(男女 2名)の遺族が、国やクボタに賠償を求めた裁判で、大阪高裁は3月6日、 男性については、一審(神戸地裁:2012年8月7日)と同じくクボタの責任を認めて、約3190万円の支払いを命じたが、女性については却下した。

工場従業員ではなく、工場周辺の石綿健康被害を巡り、高裁レベルで企業の責任を認めたのは初めて。

国が被害防止の立法や規制をしなかったことについては、一審と同様、違法性はないと判断した。

ーーー

旧神崎工場は1954〜1995年に石綿を含むパイプなどを製造していた。

男性は1939~75年に、同工場の約200メートル先の工場に勤務、自宅は約600メートル離れていた。

一審では「中皮腫発症は旧神崎工場から飛散した石綿粉じんに暴露したのが原因」として、約3190万円の賠償を認めた。

今回の高裁判決では、「当時20年にわたり工場から300メートルの範囲内で1年以上住んだ人は、中皮腫を発症する危険性が高い」 とし、一審と同じ賠償を認めた。
遅延損害金についても、一審判決は訴状送達の翌日からとしたが、今回は男性が死亡した日までさかのぼり、1800万円余りの支払い を命じた。

女性は1960年から1995年まで、1.1〜1.5キロ離れた家に住んでいた。

一審では石綿と発症との因果関係ありとは認めたが、以前の居住地域にも石綿関連工場があったことなどから、「原因が旧神崎工場と特定できない」として請求を退けた。

控訴審では原告側は「疫学調査の結果から、工場から1.5キロまでは危険だった」と主張したが、高裁は、「旧神崎工場から飛散した石綿で中皮腫が発症したとはいえない」として請求を退けた。


国の賠償責任については、一審では「1975年以前に周辺住民の発症リスクが高いとの医学的知見はなく、健康被害を防止する立法をしなかったことが違法とはいえない 」とした。

控訴審で原告側は、国際がん研究機関が1972年に石綿工場周辺の危険性を指摘していたとして、国がその時点で公害として規制すれば2人は死亡しなかったと主張したが、高裁は、「1975年以前に周辺住民の発症リスクが高いとの医学的知見はなかった」と指摘、国が被害防止の立法や規制をしなかったことに違法性はないと判断した。

原告側は判決を不服として上告する方針。

「クボタ」は「主張が認められず残念です。判決の内容をよく見て、上告を含めて今後の対応を検討します」とコメントしている。

2005年に工場周辺住民に中皮腫の発症が多発していたことが分かり、クボタは2006年に救済金制度を設け、2013年9月末時点で計255人に1人最高4600万円を支払った。ただ、工場の石綿との因果関係は認めていない。

原告らは救済対象だったが、裁判で責任を問いたいと提訴した。

ーーー

アスベスト被害での国の責任についての国側の主張は下記の通り。

最高裁の判例(筑豊じん肺訴訟最高裁判決等)上、規制権限の不行使が国家賠償法上違法となるのは、その権限を定めた法令の趣旨、目的や、その権限の性質等に照らし、当時の具体的事情の下において、その不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるときに限られる。

国は、戦前から、石綿についても粉じんの一つとしてその衛生上の有害性を認識し、その時々の医学的知見、工学的知見に応じ、使用者に一定の義務を課すなどの措置を講じ、適時、措置を強化してきたものであり、国の規制権限の不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くとは認められず、国家賠償法上の違法は認められない。

これまでの判決は以下の通りで、高裁レベルでは大阪アスベスト訴訟第一陣が原告敗訴、第二陣では国側が敗訴と分かれている。
今後、最高裁で判断が出る。

他に、屋外型訴訟では地裁レベルで判断が分かれている。

  一審 二審 現状
大阪アスベスト
訴訟(第1陣)
大阪地裁(2010/5) 賠償支払い

綿対策を省令で義務づけなかったのは違法」
大阪高裁(2011/8) 一審判決取消

「国が1947年以降、健康被害の危険性を踏まえて行った法整備や行政指導は著しく合理性を欠いたとは認められない」
原告上告

2011/8/30 アスベスト被害訴訟、高裁で逆転判決 

大阪アスベスト
訴訟(第2陣)
大阪地裁(2012/3/28)

「1959年までには石綿肺の医学的知見が集積され、国は粉じんによる被害が深刻だと認識していた」
「旧じん肺法が制定された60年までに対策を取るべきだった」

60~71年の期間外に勤務していた従業員や、勤務先から十分な賠償を受けたと認められる原告の請求は棄却

原料搬入の運送業者の元従業員1人の遺族の請求も認定

ーーー

50人に総額約1億8千万円賠償命令

従業員の健康被害について最終的責任を負うのは使用者→被害額に対する国の責任の割合 1/3

大阪高裁(2013/12/25)

1971年までに石綿粉じんを除去する排気装置の設置を罰則付きで義務づけなかったのは著しく合理性を欠き、違法

工場内の石綿粉じんの濃度規制については、1988年まで学会の勧告値に従わなかった点は「遅きに失した」

 

 


ーーー

170名に対し総額10億6394万円賠償命令

 損害賠償額を増額
 喫煙による減額を否定
 被害額に対する国の責任の割合 1/2

原告・被告双方が上告
屋外型の横浜
建設アスベスト訴訟
横浜地裁(2012/5/25)

原告の請求を全て棄却

「1972年時点で、石綿粉じん曝露により肺がん及び中皮腫を発症するとの医学的知見が確立した」

それ以前はもちろん2006年に至るまでアスベスト建材の使用を全面禁止しなかったこと等について、「著しく合理性を欠く」と言うことまではできない。

   原告控訴
屋外型の東京
建設アスベスト訴訟
東京地裁(2012/12/5)

国に対する請求を一部認容
170人に総額10億6394万円の賠償命令

 双方が控訴
2012/12/10  建設労働者アスベスト訴訟、国に初の賠償命令

 


 

財務省が3月10日に発表した1月の経常収支は1兆5890億円の赤字となった。
比較可能な1985年以降で最大の赤字で、4ヶ月連続赤字も初めて。

財務省は同日の財政制度等審議会の財政制度分科会で、貿易赤字の拡大を背景に経常収支が年間を通じて赤字に転落する可能性があり、財政赤字との「双子の赤字」に陥ることへの懸念を表明した。

貿易収支の赤字幅の急増が原因で、輸出は前月比減に対し、輸入は増加した。
輸入増については、消費税増税前の駆け込み需要によるとの見方が強い。

                                                          単位:億円
  2014/1 2013/12 増減
輸出 55,167 59,501 -4,334
輸入 78,620 69,974 8,646
差引 貿易収支 -23,454 -10,474 -12,980
サービス収支 -4,674 -3,977 -697
第一次所得収支 13,374 8,843 4,531
第二次所得収支 -1,136 -779 -357
差引 経常収支 -15,890 -6,386 -9,504


財務省は2014年1月分から国際収支の項目を見直し、従来の所得収支を「第一次所得収支」に、経常移転収支(対外経済援助など)を「第二次所得収支」に名称変更した。



   参考  2014/1/28   2013年の貿易赤字、過去最大11兆円

         2014/2/11   2013暦年 国際収支状況

            2013/3/9 LNG輸入金額分析--- 原発停止の影響

日銀は3月11日の金融政策決定会合での景気判断で、輸出は、これまでの「持ち直し傾向にある」から「横ばい圏内の動き」に下方修正した。
一方、設備
投資は「持ち直している」から「持ち直しが明確」に、生産は「緩やかに増加している」から「伸びがいく分高まっている」とそれぞれ上方修正した。

黒田東彦総裁は会見で、輸出が弱い理由について「製造業の海外生産シフトなど構造的要因があるものの、ASEANなど新興国経済がもたついている影響が大きい」とした。「米国の寒波、中国の旧正月(春節)、駆け込み需要で国内出荷を優先する動きなど一時的な要因も作用」と指摘。輸出が弱い主たる理由は一時的なものとした。

日銀のシナリオは、金融緩和→円安→輸出増企業業績回復→賃上げ→消費増大であるが、現在は円安で輸入は増大するが輸出は増えておらず、今後の動きが注目される。

ーーー

内閣府は同日、2月17日発表の2013年第4四半期のGDP速報値の改定値を発表した。

速報値では季節調整の年率換算で実質1.0%、名目1.6%増としていたが、これを実質で0.7%増、名目で1.2%に下方修正した。

民間調査機関では、本年初めまで4Qの実質成長率を3%台半ばと見ており、円安でも輸出が伸びないことから、内閣府幹部は公表前に2%台半ばと見ていたというが、はるかに下回った

  実質GDP
(年率)
名目GDP
(年率)
     年間換算 実質ベース増減 
個人消費 設備投資 住宅投資 公共投資 輸出 輸入
13/1Q 4.8 3.0 4.2 -3.5 7.2 13.3 17.8 4.5
2Q 3.9 4.1 2.6 4.4 3.6 30.3 12.3 7.2
3Q 1.1 0.7 0.9 0.8 13.9 31.9 -2.7 10.1
4Q 1.0 1.6 2.0 5.3 17.8 9.3 1.7 14.9
3/10改定 0.7 1.2 1.6 3.0 17.6 8.7 1.7 14.7

設備投資と個人消費の伸び率が大きく減少した。

注)季節調整は直近値までを対象に毎回かけ直すため、季節調整系列はその都度、名目、実質ともに遡及して改定される。
  2013/3Qまでの数値も今回改定されているが、ここでは前回発表時のままとした。



 

世界の四大ウラン濃縮企業の1社の米国のUSEC Inc.は3月5日連邦破産法11条(Chapter 11) の適用を裁判所に申請した。

USECは米国を中心とした原子力発電用濃縮ウランの供給等を行っており、新技術を採用した新型遠心分離機(American Centrifuge Plant)の開発を進めている。

この資金需要に対応するため、同社は2010年5月に、東芝及び米国の原子力発電所向け大型機器メーカーのBabcock & Wilcoxとの間で、2社が各1億ドルを出資して優先株を得る契約を締結、両社は2010年9月に第1回分として各3750万ドルを出資している。

その後の 東京電力福島第一原発の事故のあと、日本やドイツで多くの原発が運転を停止したことなどから燃料の濃縮ウランが供給過剰となって価格が3割以上下落したことなどが影響し、 同社は経営に行き詰まった。

このため、USECでは先ず、債権の60%を占める債権者との間で2013年12月に、2014年10月満期の転換社債を新たな債権と資本金に交換することで合意に達し、優先株を持つ東芝とBabcock & Wilcoxと同様の処理を行う交渉を行ってきた。

今回、リストラ案がまとまったことから、Chapter11を申請し、裁判所の許可を得てリストラを実行する。
同社では
3ヶ月~4ヶ月で処理が完了し、Chapter 11 から離脱できるとみている。

子会社のUnited States Enrichment Corporation がDIP(Debtor In Possession:占有継続債務者)ファイナンスを行うため、外部からの支援は必要としない。

Chapter 11 申請で、日常業務や新型遠心分離機開発に影響を受けない。

リストラの概要は以下の通りで、減資増資を行い、既存株主には新株式を5%与え、債権者には旧債権の放棄の代わりに新債権と残り株式を与える。

転換社債は2014年10月に満期となるもので、交換する新債権は期間5年だが、条件付で更に5年延長できる。

  債権(百万ドル) 資本金
既存債権の放棄 新債権 減資 増資割当
債権者(債権の60%) 転換社債  530.0 200.00   79%
Toshiba 優先株  37.5 20.19   8%
Babcock & Wilcox 優先株  37.5 20.19   8%
既存株主       -100% 5%
total   605.0 240.38 -100% 100%

ーーー

USEC Inc.は世界の四大ウラン濃縮企業の1社。2011年のシェアは以下の通り。

USEC:
エネルギー省が所管していたウラン濃縮事業が1993年7月に公社化され、合衆国濃縮公社(US Enrichment Corporation:USEC)が発足した。
1994年7月に米国政府が民営化を承認し、1998年7月28日までに株式を公開し完全に民営化されたUSEC Inc.が発足した。
ケンタッキー州Paducahにガス拡散法プラントを持つ。

URENCO:
英国、オランダ、ドイツが1/3ずつ出資する国際共同企業体で、英国とオランダは政府、ドイツはRWEとE.ON が出資する。
英国の
Capenhurst、オランダのAlmelo、ドイツのGronauで遠心分離法による濃縮工場の操業を行っている。

ROSATOM:
ロシア政府の原子力関連企業で、Novouralsk、Zelenogorsk、Seversk、Angarskに工場を持つ。

EURODIF:
フランス、イタリア、スペイン、ベルギー、およびイランの合弁会社で、フランスのArevaが約60%を出資する。

各社の詳細は:http://www.jaea.go.jp/03/senryaku/topics/t13-1.pdf

ーーー

原子力産業の民営化政策に沿って原子力国営企業の民営化を進めてきた英国政府は2013年4月22日、保有するウラン濃縮会社 URENCOの持ち株(1/3)の全て、または一部を売却する方針を明らかにした。

ドイツ側の株主E.ONとRWEも、ドイツの原子力発電所の停止対策と再生可能エネルギーや天然ガス火力発電などの代替エネルギーへの投資のための資金確保のためにURENCOの株の売却の検討を始めている。

英国政府とドイツ政府がURENCO株の売却を望んでいるのに対し、オランダ政府は現状維持を望んでいると伝えられている。

英国政府は、英国の安全保障や核技術の不拡散が担保され、かつ売却額が妥当と判断された場合にのみ売却する方針。

URENCO創設時の取り決めにより、株式取得者は3カ国の承認を得る必要がある。

フランスの原子力関連企業Areva、カナダのウラン鉱会社Cameco Corp や東芝などが株式取得を目指しているとされている。

核拡散につながる機微情報管理の問題を抱えており、売却先企業については多くの制約と関係国間の新たな条約が必要となるため、今後、紆余曲折が予想される。

 


IneosのJim Ratcliffe会長は3月7日付けでBarroso欧州委員会委員長宛に欧州化学産業についてのオープンレターを送った。
 http://www.ineos.com/en/News/INEOS-Group/Letter-to-Mr-Barroso/

内容は以下の通りで、真意はカーボンタックス課税への牽制である。


欧州化学産業の将来について、深刻な懸念を伝えたい。悲しいことだが、欧州の化学産業の多くが10年以内に閉鎖の運命にある。
1980年代に欧州の繊維産業が壊滅したのをこの目で見た。化学も同じ運命(もう一つの恐竜)だ。

しかし、化学産業はもっと大きく、欧州経済にとりもっと重要だ。直接従事が100万人、他に間接従事が500万人の職がかかっている。

化学セクターの売上高は全世界で 4兆3千億ドルあり、ドイツのGDPより多く、自動車セクターの売上高2兆6千億ドルよりもかなり多い。

欧州では化学と自動車はそれぞれ1兆ドルでトップである。経済的には化学は欧州のjewels in the crownの一つである。

化学製品は生活のどこででも使われる。金属を作るのにも、繊維を作るのにも、陶器を作るのにも使われ、時計にも、消臭剤にも、iPhoneにも、車にも、衣服やNikeのシューズにも使われている。化学産業なしでは、欧州のこれらの産業はやっていけなくなる。

戦略的にも経済的にも、化学産業を捨てるわけにはいかない。

しかし、欧州は欧州の化学の運命について分かっていないようだ。
欧州繊維産業はアジアの低労賃に競争できず抹消された。Courtaulds社の100の繊維工場がすべて赤字を出し、閉鎖されていった。

化学製品はエネルギーコストと原料コストの競争力に依存している。技術が重要であり、欧州のこれまでの成功も技術によっているが、技術だけでは救えない。

欧州のエネルギー(ガス)は米国の3倍もする。電力料は50%高い。欧州には安い原料はなく、米国や中東の原料コストはまるで別世界だ。

米国のシェールガスは米国の競争力と自信を変えてしまった。シェールガスで710億ドルもの石油化学新増設が行われている。 

これに対し、欧州では閉鎖に次ぐ閉鎖である。

中東では、Abu Dhabi、Qatar、Saudiで建設が続き、イランでも600万トンのエチレンが新設される。

英国では2009年以降、22の化学プラントが閉鎖され、新設はゼロだ。

更に中国がある。英国の大学で技術を学ぶのは中国人だ。昨年息子が経済学部を卒業したが、先進工学の卒業生で優等は全て中国人で、英国人はいなかった。

中国は絶え間なくプラントを建設しており、これまで世界の余剰化学品を全て吸収したが、まもなく完全自給する。その後は流れを変え、輸出するだろう。2020年までに世界最大の経済になるのだ。

このなかで、EU本部や欧州各国は対案を持つのか? どんな防衛策を持つのか?

欧州では、環境税が導入される。シェールガスはない。原発は閉鎖される。製造業は追いやられる。独禁当局は輸入品がツナミのように押し寄せるのに気がつかず、企業がまともなリストラをしようとしているのを邪魔している。

INEOSの欧州の利益はこの3年で半分になった。米国での利益は3倍になった。
世界最大のBASFは、市場低迷、高いエネルギーコスト、高い労賃を理由に、これまでで初めて、欧州での投資を戦略的にカットすると発表した。

欧州にとってよくないことだ。我々は激しい恐怖に襲われている。

欧州の化学産業を守るため、緊急対策を取ってほしい。

これについて Ratcliffe 会長は、INEOSが工場を閉鎖するとか、Grangemouth石化コンビナートの再建を取り止めるとかを言っているのではないとし、EUに直ちに何かをしろといっているのでもないとも述べた。

「しかし、政治家は化学産業がなくなった場合のことを考える必要がある。遅いと思った時はもう遅い。世界で最も高率のGreen Tax を課すのは結構なことだが、その結果、欧州の製造業がなくなってしまうなら、よくないことだ」としている。


European Chemical Industry Council のHubert Mandery会長も最近、欧州の温暖化対策が、競争相手が安いエネルギーの恩恵を受けているのに対し、欧州産業に高コストを負わせると警告した。「エネルギーと温暖化対策は負担可能なものでないといけない。欧州の競争力を削ぐと産業空洞化(de-industrialisation)に直結する」と述べた。

ーーー

EUは2014年1月に 気候変動・エネルギー政策目標を発表した。

・温室効果ガスを2030年に90年比で40%削減する。
・再生可能エネルギーを2030年にエネルギー消費量の27%まで引き上げる。
・エネルギー効率向上に向け、政策を本年中に見直す。
・排出量取引制度を改正する。

現在の目標は2020年にトリプル20(排出量20%削減、再生可能エネルギー割合20%、エネルギー消費効率20%改善)で、これを更に強化する。

BASF、INEOS、Solvay、Totalなど欧州の主要化学企業14社のCEOは1月15日、Barroso欧州委員会委員長にオープンレターを出した。
http://www.solvay.com/en/binaries/Letter to Barroso January 2014-155252.pdf

オープンレターのタイトルは、エネルギー価格についての警告(Chemical Industry Warns Europe Over Energy Prices)で、「我々エネルギー多消費型製造業14社のCEOは欧州の将来(短期及び長期)に懸念を持つ」とし、EUのエネルギー・温暖化対策と、産業の競争力の復活・欧州への投資の再開という目標との調和を要請している。

温室効果ガス削減目標と産業の成長目標とを調和させ、厳密にモニターし、問題あれば再調整することを求め、カーボンタックスを製造業に課さないことなどを求めている。



 

2013年の貿易統計(速報、通関ベース)によるLNGの輸入金額の推移は以下の通り で、原発停止前の2010年と比較すると、2013年のLNGの輸入金額は3兆6080億円増加している。前年比では1兆0545億円の増加である。

これについて、原発停止の影響がいくらかが問題となっている。

  2010 2011 2012 2013  

増加分

2010年比 2012年比
輸入金額(兆円) 3.4480 4.7730 6.0015 7.0560 3.6080 1.0545
数量(百万トン) 70.008 78.532 87.314 87.491 17.483 0.177
為替レート(円/ドル) 88.09 79.97 79.55 96.91 8.82 17.36
以下は上記から計算    
輸入価格(円/kg) 49.25 60.78 68.73 80.65 31.40 11.91
輸入価格(セント/kg) 55.91 76.00 86.40 83.22 27.31 -3.19
同上 原油価格スライド 55.91     68.77 12.86  
             
WTI原油価格平均($/bbl) 79.59 94.81 94.19 98.05    

上の数値をもとに分析すると以下の通りとなる。

  2010年比 2012年比
数量差 8611億円 121億円
ドル建て価格差
(原油価格スライドの場合)
(原油価格アップを超える分)
2兆3155億円
(1兆0903億円)
1兆2252億円
-2700億円
円レート差 4314億円 1兆3123億円
合計 3兆6080億円 1兆0545億円
うち原発停止の影響 2兆0863億円  


ドル建て価格差と円レート差は下記により計算。

3.11による原発停止前の2010年と比較すると、2013年のLNGの輸入金額は3兆6080億円増加している。

輸入数量は17.5百万トン増加しているが、この影響は8611億円で、ドル建ての価格アップ分が2兆3155億円、円安の影響が4314億円である。

ドル建て価格は55.91セント/kgから83.22セント/kgと、149% 高騰している。
日本のLNGの購入契約はほとんどが原油価格スライドとされる。この間、WTI原油価格は年平均で79.59ドル/バレルから98.05ドル/バレルに123%アップ であり、LNG価格はこれ以上にアップしている。これはスポット買いで足元を見られたものが主と思われる。

原油価格アップ以上にLNG価格がアップしている分(1兆2252億円)と数量増によるもの(8611億円)の合計2兆0863億円が原発停止による影響といえる。

2010年平均の円レートは88.09円/ドルと、かなり高い水準であった(2013年平均は96.91円/ドル) ため、2010年比でのレート差の影響は小さい。

2012年と2013年では1兆0545億円の増加となっているが、数量はほとんど変わらず、ドル価格は下がっており、増加のほとんどは円安によるものである。

 


 

"讃岐のこんぴら酒"で有名な琴平の西野金陵は3月5日、三菱化学のゼオライト膜を使った三菱化学エンジニアリングの脱水装置を使用し、同社の純米大吟醸「大瀬戸の花嫁」の旨みとアルコール成分を濃縮して製造した新ジャンルの酒「琥珀露」を4月1日に発売すると発表した。

三菱化学は新しい分離精製技術としてゼオライト膜に関する知見を多く保有しており、2010年から三菱化学エンジニアリングと共同でエタノールやイソプロパノールの脱水用途に展開しているが、西野金陵がこの技術を日本酒に応用した。

  純米大吟醸
 「大瀬戸の花嫁」
琥珀露」
アルコール度数 14度以上15度未満 30度以上31度未満


アルコール分のほか、
有機酸、アミノ酸、芳香成分、糖類などの成分濃度が高くなる。

酒税法における品目 清酒
(アルコール分22度未満)
雑酒②
(いかなる分類にも属さないもの)

 ちなみに、清酒の酒税はアルコール度数に関係なく、1kl当たり12万円。
 雑酒は21度未満は22万円で、1度ごとに11,000円加算(30度なら33万円)


エタノールの脱水の仕組みは以下の通り。

ゼオライト膜の応用例としては、他に、食品の旨み成分濃縮や、天然ガスからの二酸化炭素の分離などがある。


三菱化学エンジニアリングは三菱化学のMSM-1膜を使用し、有機溶剤中の水分を選択的に除去する有機溶剤脱水回収システムを販売している。

ゼオライト浸透気化膜を使用し、従来のゼオライト膜で対応不可能だった酸性有機溶剤や、含水率の高い有機溶剤も安定的に処理することができるようになった。また、同社が開発したイオン交換器や蒸発缶を付加することにより、金属イオンなど水以外の不純物を除去することも可能。

 

 


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アイスランドの国家エネルギー機関(Orkustofnun)は1月22日、中国海洋石油(CNOOC)に対し、北極圏での石油開発の認可を与えた。同社が最近発表した。

アイスランドは同国の東北の北極圏にある Jan Mayen海嶺の一部 Dreki Area の権益を持つ。(残り地域はノルウェー )

「北極圏」は北緯66度33分以北の地域

今回、Dreki Area での3番目の認可で、権益者は以下の通り。

CNOOC 60%
アイスランドのEykon Energy 15%
アイスランド国営石油 Petoro Iceland 25%

Petoro Icelandは全ての鉱区で25%の権益を取得することとなっている。


アイスランドは2013年1月に2つのライセンスを与えている。

下図 赤色地区 Faroe Petroleum(Norway)  
Iceland Petroleum   
Petoro
 Iceland
67.5%
7.5%
25.0%
 
下図 青色地区 Valiant Petroleum  
Icelandic Kolvetni
Petoro
 Iceland
 56.25%
 18.75%
25.0%
2013年にカナダの Ithaca Energyが買収

 

それぞれの区域は下記の通り。

中国企業にとって、最初の北極圏での採掘となる。

中国は2013年に280百万トンの原油を輸入している。国内生産は208百万トンにとどまっており、輸入比率は58.1%に達する。

中国の石油会社はグローバルに展開しているが、北極海域の油田開発についてもチャンスを窺っており、ロシアのRosneftの社長が2013年上半期に中国を訪問、CNOOCその他の石油会社とロシア北極海域に眠る油田開発について 議論したと報道されている。

ーーー

中国とアイスランドは2013年4月15日、自由貿易協定(FTA)を締結した。
中国にとって欧州の国との最初のFTAとなる。

中国は、地熱探査やグリーンエネルギーなどの分野での協力強化、氷河や火山、地震などの共同研究と技術協力、海洋と極地共同研究センターの構築に力を入れていきたいとしている。

中国にとっては、北極圏進出の象徴としての意味合いもあると報じられている。

また、SinopecはアイスランドのOka Energy Holdings と提携し、地熱開発に取り組んでいる。

アイスランドにとっては、水産物などの中国向け輸出は約6100万ドルとなっており、FTAにより更に恩恵を受けるとみられている。

ーーー

北極圏開発のルールづくりを各国が話し合う北極評議会は2013年5月、中国と日本、韓国、インド、イタリア、シンガポールの6カ国を評議会の「オブザーバー」に加えることを決めた。


北極評議会の構成は下記の通り。

 




 

中国の浙江恒逸産業は2月25日、ブルネイのPulau Muara Besarでの石油精製・芳香族プロジェクトのため、ブルネイ政府の Strategic Development Capital Fundの子会社Damai Holdings とJVを設立したと発表した。

JVは恒逸実業(文莱)有限公司:Hengyi Industries (Brunei)で、浙江恒逸石化の香港子会社が70%、Damai Holdingsが30%を出資する。

ーーー

ブルネイ湾に位置するPulau Muara Besarでは、ブルネイ経済開発委員会が総合開発事業を行っている。
 
 

島を経済水域、生活文化と観光事業区域、地域共同体の3つの主要な区域に発展させる。


初期段階では、①島発展のための浚渫及び開拓並びに新しい東回り水路、②道路、本土への連絡橋のような基本的インフラ、③コンテナーターミナルのための660メートルの埠頭を建設し、産業施設としては、コンテナーターミナル、製油所、船舶用品基地を建設する。

ブルネイ政府は、1990年代から本格的な製油所建設を検討してきたが、いろいろの計画が頓挫した。

2011年7月になり、中国の浙江恒逸石化 の製油所プロジェクトを、サルタンが承認した。
2013 年3月には、中国の国家発展・改革委員会(NDRC)が、浙江恒逸の石油精製・石油化学プラント建設プロジェクトを認可した。

全体計画は、2期に分け、1期では製油所および合繊原料を生産する芳香族プラント、2期でエチレンコンプレックスを建設する。

承認されているのは、第1期の石油精製・芳香族プロジェクトで、年間800万トンの原油を処理してガソリン、ジェット燃料、軽油などを生産する精製ユニットとベンゼン(50万トン)やパラキシレン (150万トン)を生産するプラントから構成される。

ほかに原油や石油製品埠頭、発電プラント、海水淡水化プラントなどを建設する。

概要は以下の通り。

原油およびコンデンセートは、ブルネイ、カタール、そのほかの原油をそれぞれ3分の1ずつ処理する方針で、2011年11月の温家宝首相のブルネイ訪問を機に、Brunei Shellとの間で15年間にわたり年間275万トンの原油を供給するという協定に調印している。

生産した石油製品のかなりの部分は中国に輸出される可能性が高い。

浙江恒逸は高純度テレフタル酸(PTA)からポリエステル繊維まで一貫生産しており、本プロジェクトによってPTA およびカプロラクタムの原料が確保する。

資料:JPEC レポート ブルネイの石油・ガス産業

ーーー

Brunei では三菱ガス化学と伊藤忠がBrunei石油と共同で2010年4月からメタノールの生産を行っている。

合弁会 Brunei Methanol Company
出資比率 三菱ガス化学      50%
伊藤忠            25%
PB Petrochemical  25% (PetroleumBRUNEIの関連会社)
生産能力 年産 850,000トン
立地 スンガイ・リアング工業地区


2007/4/23 三菱ガス化学、ブルネイのメタノール事業決定

 



 



  

SolvayとINEOSは2013年5月7日、欧州の塩ビ事業を統合し、50/50のJVとする覚書に調印した。
両社の塩ビ事業を統合するJV設立から4年から6年の間に、INEOSがSolvayの持株を全て買取り、100%子会社とするものである。

2013/5/15 Solvay、欧州塩ビ事業をINEOSと統合、将来塩ビ事業から撤退 

この計画は欧州委員会の独禁法審査で難航した。

EUは、特に漂白剤と塩ビ・窓枠用のサスペンジョンPVCで競合者が無くなるとし、2013年11月に徹底調査を開始した。

2014年1月22日、両社はEU当局から本件について問題ありとの通知(the statement of objections)を受け取ったと発表した。

これを受け、両社は2月27日、問題解決のための改正案を当局に提出した。

内容は、以下のプラント(いずれもINEOSの設備)をJVから除くというもので、第三者が購入するまでの間、単独で事業をやっていけるとしている。


PVC Schkopau (Germany)
 
旧 EVC
EVCがBSLのPVCプラントを買収し、新設備を増設
Beek, Geleen (The Netherlands)
Mazingarbe (France)
Tessenderlo Groupから買収
電解、EDC、VCM Tessenderlo (Belgium)

 


欧州委員会はこれを勘案し、最終決定を行うこととなる。




Bayerは2月27日、雲南省昆明市の市販薬 (OTC)と漢方薬(herbal traditional Chinese medicine:TCM) のメーカーの滇虹集団(Dihon Pharmaceutical Group)を買収すると発表した。

買収額等は明らかにしていない。今後、詳細を詰め、独禁法等の手続きを終えて、2014年下期に買収完了の予定。

滇虹集団は、1997年に米国の Great Eastern Enterprises Inc.と雲南滇虹集団のJVとして設立された。
マジョリティを持つ
雲南滇虹集団は1993年に雲南滇虹天然藥物として設立され

1993年に一つの製品で出発した小さな製薬メーカーが、従業員2400名の大企業となり、皮膚炎、にきび、口内炎、骨過成長、子宮内膜症の5分野で市販薬と漢方薬を製造販売している。

代表的な製品は、OTCではふけ用等の"康王"Kang Wang®、抗菌クリームの"皮康王"Pi Kang Wang®)等と、漢方薬では女性疾患治療の"丹莪婦康煎膏"(Dan E Fu Kang®)など。

2013年の売上高は123百万ユーロで、中国国内のほか、ナイジェリア、ベトナム、ミャンマー、カンボジア等でも販売している。

Bayerでは、グローバルに戦略的買収を行ってLife Sciences事業を強化しようとしており、実績のある市販薬メーカーの取得により、中国のOTC事業で多国籍企業のなかで主導的ポジションを得ることになるとし、更に、中国のOTC部門で半分を占める漢方薬に参入できることも重要であるとしている。


Bayer は2013年5月にドイツのハーブ薬メーカーSteigerwald Arzneimittelwerk を買収する契約を締結した。
同社の製品には、機能性胃腸疾患治療用のIberogast®や、軽度~中軽度のうつ病用の Laif®がある。


Bayerはこの時も今回も、消費者により幅広いself-care options を与えられるものとしている。

 



アルゼンチン政府は2012年4月16日にスペインの石油会社 Repsol-YPF のアルゼンチン子会社 YPF を国有化する方針を示し、アルゼンチン下院は5月3日、国有化法案を可決した。

YPFはもともとアルゼンチンの国有石油会社だったが、1999 年の民営化に伴う政府放出株式をRepsol が購入した。
アルゼンチン政府は0.2%の"golden-share"を持ち、買収拒否権などの重要事項についての権利を持つ。

Repsol はYPF の買収後、2008年にアルゼンチンの億万長者Eskenazi 一族に15%を売却、2011年には更に10%をEskenazi に売却した。

アルゼンチン政府はRepsolの持ち株57.4%のうち、51%分を接収した。
時価による買収ではなく、資産没収で、補償額は国家評価裁判所(National Appraisal Tribunal)が決定するとするだけで詳細は明らかにされなかった。

Repsolは2012年5月にニューヨークの裁判所に105億米ドルの損害賠償を求めて民事訴訟を起こし、2012年12月3日にアルゼンチン政府を相手取り、世界銀行傘下の投資紛争解決国際センターに仲裁を提訴した。

2012/4/19  アルゼンチン大統領、スペイン石油大手傘下を国有化へ、スペインは反発

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Repsolは2014年2月25日、アルゼンチン政府との間の合意書を取締役会が承認したと発表した。
Repsolの株主総会による承認と、アルゼンチン議会の承認を得て発効する。

合意書は、YPF の51%持分の接収の補償として50億米ドルを支払うとしている。

支払いは米ドル建てのアルゼンチン政府の長期債で行われるが、アルゼンチン政府債は2002年のデフォルト以降、大幅な割引率で取引されているため、複雑な仕組みとなった。

1)基本パッケージ 額面合計50億米ドル

Bonar X債 5.0億米ドル 年利7%、2017年償還
Discount 33債 12.5億米ドル 年利8.28%、2033年償還
Bonar 2024債 32.5億米ドル 年利 8.75%、2024年償還
合計 50.0億米ドル  

2)補完パッケージ 額面合計10億米ドル

Boden 2015 4.0億米ドル 2015年償還
Bonar X債 3.0億米ドル 年利7%、2017年償還
Bonar 2024債 3.0億米ドル 年利 8.75%、2024年償還
合計 10.0億米ドル  


政府債の市価が下がった場合、補完パッケージの政府債で調整する。

Repsolは満期まで保持しても、売却してもよいが、利息とコストを除いて50億米ドルを超えた分は政府に返却する。

この債券がデフォルト(債務不履行)に陥ってもRepsol が50億ドルを受け取るまではこの債務は返済されたことにならない。

もし政府債が支払われない等の場合、Repsolは未払い分を国連国際商取引法委員会を通して期限前支払いを求める権利を有する。

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アルゼンチンはYPFの持つVaca Muerta油田の開発に外資を必要とするが、Repsol からの訴訟を恐れ、外資は参入をためらっていた。

今回の解決には、両国の政治家のほか、メキシコ政府も関与した。
メキシコ国営石油のPemexはRepsol の第3位(9.4%)の株主であり、メキシコはアルゼンチンと密接な関係を持つ。PemexはVaca Muerta油田の開発参入に関心を示している。

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なお、RepsolからYPFの株を2回にわたり買収(15%+10%)したアルゼンチンの億万長者Eskenazi 一族のPetersen Groupは、2回目の買収資金の借入金でデフォルトを起こし、グループの持ち株は金融機関等が担保として取り上げた。

債権者の一社であるRepsolはこれにより、接収後の持ち株 6.4%を12%に増やした。

Repsol では、YPFの持ち株売却やスペインのGas Natural Fenosaの持ち株(30%)の売却を行い、それらの資金と今回の補償金で北米で石油資産を購入し、YPFで失った分を補填する構想を持っている。


 



人民元が急落している。

2014年1月14日には終値 6.0412人民元/$で最高値を更新したが、その後、下落に転じた。


最近の動向は下記の通り。

まず、人民銀行は1月14日に基準値を過去最高値の6.0930人民元に設定した後、低目の設定をしていたが、2月中旬以降、基準値を急に下げた。

人民銀行が基準値を元安方向に設定して、下落を誘導しており、大手国有銀行も人民銀行の要請で元を売っているとされる。

この結果、旧正月の連休直前に下落に転じ、2月20日頃からは急落、この数日の終値は基準値を下回るに至った。

2月28日の終値は6.1450人民元で、半年前の水準である。
一時、6.1808人民元と、下限ぎりぎりまで下がった。

2月26日付ウォール・ストリート・ジャーナルは、市場の力やトレーダーによる売買でなく、中国人民銀行による通貨切り下げだと報じた。


人民銀行の唐突な元安誘導の理由については意見が分かれているが、単なる誘導だけでは効果は一時的だとの見方が強い。

 ・輸出企業支援

 ・一方的な元高をけん制

これ以上一方的な元高が進まないことを市場に理解させる。

 ・元の変動幅拡大に備えた動き

中国は2012年4月16日に基準値からの変動幅をそれまでの0.5%から1.0%に拡大したが、これを更に拡大する意向で、基準値の上下2%まで拡大するのではと予想されている。

中国人民銀行は2月19日の声明で、「徐々に人民元の変動メカニズムを完成させ、為替の変動幅を秩序だった方法で拡大する」と述べた。国境を越えた人民元の利用を着実に拡大する方針も示した。

付記

中国人民銀行は3月15日、対ドル相場の変動幅を17日から上下それぞれ2%に広げると発表した。変動幅の拡大は2012年4月以来。

 ・元安によって米国に圧力をかける狙い(量的緩和の縮小において慎重な方法をとるよう求める)

 ・元安誘導を行うことで、利ザヤ狙いのホットマネーの流入に打撃を与える。

 

中国の国家外貨管理局は2月26日、最近の人民元相場の下落は市場原理の結果だと説明し、大規模な資金流出が将来発生する公算は小さいとの考えを示した。


市場では、このところの元急落にもかかわらず、今年も2-3%のペースで元高が進むとの見方が根強い。

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ロイターは、人民元の下落で、オフショアのデリバティブ(金融派生商品)の損失リスクが高まっており、このまま元が下げ続ければ、投資家は数十億ドルもの損失を抱える可能性があると報じた。

問題のデリバティブは、Target Redemption Forwardと呼ばれる投資商品で、元が急落しなければ、安定的なリターンが得られる投資商品として人気化した。
発行額は3500億ドルで、ドイツ銀行の試算では、主にドル債権を持つ中国企業に今年だけで1000億ドル販売されたという。




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