2012年2月アーカイブ

感覚障害があるのに水俣病と認定せず、認定申請を21年後に棄却したのは違法として、熊本県水俣市の女性の遺族が県を相手に、棄却決定の取り消しと認定義務づけを求めた訴訟の控訴審判決が2月27日、福岡高裁であった。

裁判長は遺族側の請求を退けた一審・熊本地裁判決を取り消し、棄却決定を取り消して水俣病と認定するよう命じた。

女性は1974年に水俣病認定を申請したが、認定に必要な検診が完了しないまま1977年に死亡した。
県は20年後の1994年に生前のカルテなどを探す作業を始め、1995年に判断資料がないとして申請を棄却した。

遺族は2001年に棄却取り消しを求めて提訴、2005年には県に対し認定を命じるよう求める「義務付け訴訟」を追加提訴した。
女性の生前の診断書に「四肢末端に知覚鈍麻を認める」との記述があることなどから「2004年の水俣病関西訴訟最高裁判決に従えば水俣病」と主張したが、県側は「腎臓病による尿毒症が原因」と反論した。

一審の熊本地裁は2008年に、病状に関する客観的な資料が乏しいとして、請求を退けた。

控訴審では遺族は、「関西訴訟判決などから母が水俣病なのは明らか。処分が21年もかかり、手続きも違法だ」と主張。これに対し、県は「資料がなく、感覚障害は腎臓疾患の影響もある。処分は生存者を優先したため、遅れはやむを得ない」と反論していた。

県は申請者が亡くなっている場合には審査の棚上げを決めていたことが、今回、県の提出資料で判明した。


国の水俣病認定基準は感覚障害の他、運動失調や視野狭さくなど複数の症状の組み合わせを求めている。

判決内容は以下の通り。

現行の認定基準は唯一の基準とするには十分ではない。
この基準は汚染が直接的かつ濃厚な場合の典型的症状であり、基準を満たさない各症状についても水俣病と考えれる可能性の程度はさまざまで、メチル水銀に対する曝露状況などを総合考慮することで水俣病と認める余地がある。

認定基準を硬直的に適用した結果、軽症者を除外しており、運用は適切であったとは言い難い。
   
女性には四肢末端の知覚鈍麻と口の周辺の感覚障害が認められる。
メチル水銀の摂取歴や生活環境などを慎重に検討すれば、メチル水銀の曝露歴を有すると推認するのが相当で、水俣病と認定できる。
腎臓病による尿毒症との主張は、医学的知見から認められない。
   
熊本県の棄却処分は違法で、水俣病認定をすべきなのは明らか。
   

水俣病と認定するよう命じる判決は2010年に大阪地裁で出ているが、高裁段階では初めて。

これは、2004年の最高裁で水俣病と認められた大阪府豊中市の女性が、国と熊本県を相手に行政としても認定するよう求めた訴訟。

国は、「最高裁の判決は有機水銀中毒症の判断基準であり、水俣病と有機水銀中毒は別」とし、現行の水俣病認定基準の見直しは行わないとしていた。

判決は以下の理由を挙げ、女性の認定申請を退けた処分を取り消し、公害病訴訟では初めてとなる改正行政事件訴訟法に基づく行政認定を義務づけた。

1)  現行の認定基準の「感覚障害や運動失調など2つ以上の症状の組み合わせ」がない限り水俣病と認めないとの国の主張は医学的正当性を裏付ける根拠がない。
   
2) 四肢の感覚障害は水俣病の基礎的症候で、神経症状が感覚障害のみである水俣病も存在すると認められる。
   
3) 原告の症状は四肢の感覚障害のみだが、メチル水銀の摂取状況、他に原因になる疾患がないことなどを総合考慮すれば、原告は水俣病と認められる。


2010/7/19 大阪地裁、国の基準を否定し、水俣病認定を義務づけ

 

付記

熊本県は3月7日、二審福岡高裁判決を不服とし、一両日中に上告受理申し立てをすると発表した。
知事は「判決には認定基準の根幹に関わる問題が含まれており、行政の長として受け入れられない」と上告理由を説明した。
環境省事務次官は、「妥当と考えている。判決には法解釈上の問題があった。(現行の水俣病認定基準については)否定されたわけではなく、見直さない」と語った。
  

ーーー

政府はこれまで、認定基準の見直しを避け、水俣病被害者救済法に基づく救済策を最終解決としてきた。

国が1977年に設定した水俣病認定基準では、感覚障害と聴覚障害、視野狭窄、運動失調など複数の症状が組み合わさっていることが必要とされる。

国は1971年の旧環境庁発足に伴い、初めて認定基準を示し、「感覚障害など4症状のいずれかの症状があり、水銀の影響を否定しえない場合」としたが、1977年に上記の通り修正した。感覚障害は糖尿病など他の疾病や加齢でも起こるため、水俣病かどうか区別がつかないというのが理由であった。

この基準で認定を受けたのは新潟水俣病と合わせ約3000人で、公害健康被害補償法に基づき、1973年のチッソとの補償協定により1,600万円~1,800万円の補償が行われた。

この基準で認められなかった多くの人たちは、1980年から行政の責任を問い、水俣病と認定するよう求めて各地で提訴した。

このため、政府は2回にわたり救済策を取った。

①1995年 政治決着

1995年に村山首相が政府として初めて「結果として長期間を要したことについて率直に反省しなければならない」と首相談話で遺憾の意を表明し、自民・社会・さきがけ3党連立政権が訴訟や認定申請の取り下げなどを条件に政治決着を行なった。

四肢末端優位の感覚障害がある場合は「医療手帳」を交付
  チッソから一時金260万円、国・県から医療費自己負担分全額、月額約2万円の療養手当などを支給

感覚障害以外で一定の神経症状がある場合は「保健手帳」を交付
  医療費自己負担分などを上限付きで支給
  国の責任を認めた2004年10月の関西訴訟最高裁判決後に受け付けを再開、
   医療費自己負担分は全額支給に改めた。

これに対し一部患者はこの解決策を拒否し、政府の行政責任追及にこだわった。

2001年の高裁判決は、排水規制をしなかった国と県の過失を指摘、水俣病の認定基準も間違っているという判断を下した。
家族に認定患者がいるなど一
定の条件を満たせば、感覚障害だけでも有機水銀中毒と認めた。
2004年10月、最高裁もこれを支持し
県と国の法的責任が確定した。

しかし国は、「司法と行政は別」とし、基準の見直しを拒否した。

最高裁の判決を受け、認定申請者が急増したが、認定委員会は「認定基準が変わらない以上、認定を再開することが難しい」とし、認定を再開しなかった。過去10年間で認定患者は12人しか認められていない。

このため公明党が20064月に新救済案の提言をまとめ、それを基に与党PTを設置し、紆余曲折の結果、新救済策を決定した。

②水俣病救済法案

水俣病の未認定患者を救済するための特別措置法案が2009年7月8日、可決成立した。

2009/7/3 水俣病救済法案、衆院を通過、来週成立の見通し

これに基づき、鳩山内閣は2010年4月、水俣病の未認定患者を救済するための特別措置法の「救済措置の方針」を閣議決定した。
内容は下記参照。

2010/4/16 水俣病「救済措置の方針」を閣議決定

なお、水俣病特別措置法に基づく救済制度の申請期限について、細野豪志環境相は本年2月に、2012年7月末で申請を 打ち切ることを表明した。

 

2001年の高裁判決は、排水規制をしなかった国と県の過失を指摘、水俣病の認定基準も間違っているという判断を下した。
最高裁も2004年にこれを支持した。

しかし、救済法でも、政府は認定基準を見直さないまま、未認定患者の「救済措置」にとどまっていた。 

2010年の大阪地裁による水俣病と認定するよう命じる判決に加え、今回、高裁段階でも認定を命じる判決が出たことで、国の水俣病対策は抜本的な見直しを迫られることになる。

またチッソは、水俣病被害者救済法に基づく救済策を最終解決とすることを前提に、2010年12月に「事業再編計画」の認可を取得し、2011年1月に事業会社のJNCを設立した。
今後、事業会社を
全面譲渡し、譲渡益を熊本県に納付して補償業務を委ね、清算する構想を進めている。

2011/1/12 チッソ、「事業再編計画」に基づく、新会社「JNC株式会社」を設立

しかし、今後認定患者が続出し、補償額が増大した場合、このシナリオも狂う可能性がある。

 

 

Sinopec子会社のSinopec Sichuan Vinylon Works は2月22日、韓国のSK Global Chemical 及びBP Chemicals Investmentとの間で、重慶の長寿経済技術開発区に1,4-ブタンジオール、酢酸、アンモニアの石化コンプレックスを建設する契約に調印した。
投資額は合計で11億ドルで、年間440百万立方メートルの天然ガスを使用する。

既にFSを政府に提出済で、政府の承認を得て7月か8月にも着工し、2014年末~15年初めに完成する予定。

アンモニアは年産能力25万トンで、Sinopec が単独で建設する。

1,4-ブタンジオールは年産能力が20万トンで、Sichuan Vinylon WorksSK Global Chemicalの50/50JVが建設する。
投資額は588百万ドル。

酢酸は年産能力60万トンで、SinopecとBPのJVのYangtze River Acetyls Company (YARACO) が建設する。

YARACOはBP 51%、Sinopec Sichuan Vinylon Works 44%、地元のChongqing Energy Investment 5%のJVで、既に下記の生産を行っている。

  第一期 第二期
酢酸  40万トン  65万トン
エステル   8万トン  


2009/1/9  シノペック四川ビニロン、重慶で酢酸ビニル第二期計画スタート

1,4-ブタンジオールプラントからは酢酸プラントにアセチレンオフガスを供給、逆に酢酸プラントから水素の供給を受ける。

1,4-ブタンジオールはアセチレンをホルムアルデヒドと反応させて、これを水素化して生産する。

最近では、ブタンから生産する無水マレイン酸を原料に生産されている。
また、三菱化学はブタジエンを原料とする1,4-ブタンジオールとその誘導品(C4 ケミカル製品)事業を成長戦略のための集中事業の一つに位置付けている。

SKは蔚山に年産4万トンの1,4-ブタンジオールを2008年から生産している。

ーーー

SKにとってはこれは、中国でSinopecとの3つ目のプロジェクトとなる。

第一番目は2004年に上海に設立した50/50JVのShanghai Gaoqiao-SK Solvent、SKのSolplusプロセスで年産6万トンの溶剤を生産する。

二番目はSinopecの武漢のエチレン80万トン計画への35%の参加で、両社は2008年5月に基本契約に調印した。

2008/6/2  韓国SK Energy、シノペックの武漢エチレン計画に出資

その後、2009年4月に、中国SKのトップが中国メディアに対し、SKに十分な資金がないとして、この投資を延期することを明らかにしていた。

一方、Sinopecは2010年4月に、2013年上半期の生産開始を目指し、建設を軌道に乗せることを明らかにした。

2011年12月2日、両社は北京で戦略的協力の覚書を締結した。武漢エチレン計画について協議を続けるとともに、戦略的提携を行い、両社に有益なWin-winの関係を創るとしている。エチレンJVは年内にも中国政府の承認が得られると期待されている。

今回の提携はこの一環となる。


 

 

 

オバマ政権は2月22日、連邦法人税の最高税率を現行の35%から28%に引き下げることを柱とする税制改革案を発表した。
国際的に高い水準にある法人税率を引き下げて米企業の国際競争力の強化や雇用拡大を狙う。

特に国内雇用の増加に貢献する製造業などには優遇措置を講じ、法人税の実効税率を25%以下に抑えるとしている。
一方で、石油やガス、投資ファンドなど特定の産業に与えている優遇を縮小・廃止し、全体としての税収は維持する。

石油・ガス関連、保険、資産運用企業を対象とした税控除が撤廃される。
とりわけ、プライベートエクイティやその他ファンドマネジャーが受け取る成功報酬に対する優遇税制を廃止する。
また、雇用や研究・開発の海外移転に対する優遇税制を廃止する。

オバマ大統領は「雇用を海外に出す企業に報いるのをやめ、米国内で雇用を増やす企業に報いるべき時だ」と声明で訴えた。
改革方針を記した資料では「日本は今年4月に税率引き下げを予定しており、米国を下回る見通しだ」と、日本を引き合いに出して危機感を表した。

野党・共和党の大統領選の有力候補であるロムニー前マサチューセッツ州知事も、「法人税率を25%に引き下げる」との減税策を発表した。

但し、優遇廃止に反対する動きは強く、減税案が通る可能性は低いと見られている。

ーーー

日本の法人税率は2012年から、従来の30%から25.5%に引き下げられる。
    
2010/12/13 法人税率引き下げとナフサ課税
    2010/12/19 税制改正大綱

しかし、復興財源確保法が2011年11月30日に成立し、2012年4月から3年間、復興特別法人税(年税額の10%)が上乗せされる。

この結果、実効税率は以下の通りとなる。(%)

    従来    2012年度以降
基本 3年間
法人税     30.00   25.50   25.50
復興特別法人税 法人税率x10%     2.55
住民税 法人税率x20.7% 6.21 5.28 5.28
事業税 下記参照 7.56 7.56 7.56
合計   43.77 38.34 40.89
実効税率 合計/(1+事業税) 40.69 35.64 38.02


・実効税率は、事業税が翌期に損金に算入され、課税を減らす効果があるため、これを勘案した実質課税率。
・事業税率は、東京都の外形標準課税法人で、3以上の都道府県に事業所を持つ資本金 1千万円以上の法人のケース

ーーー

先進諸国では法人税率の引き下げが進んでいる。

カナダの法人税は2011年1月に11.5%減の16.5%となったが、2012年1月からは15%となる。
  基本税率38%-軽減率 10% - 2012年減税 13% (2011年はこれが11.5%) =15%
  このほかに州の法人所得税がかかる。(軽減率10%は州の法人税賦課の場合)

英国の法人税率はこれまで28%だったが、2011年4月から26%に引き下げられた。以降2014年4月まで毎年1%ずつ23%まで引き下げられる予定。 

INEOSは英国の税率が28%の時に、本社をスイスに移転した。
  2010/3/5  INEOS、節税のためスイスへの移転を検討 

日本の法人税の実効税率は米国と並んで高い。
これの是正のため、難航の末に5%の引き下げを達成したが、復興財源確保法で3年間は引き上げられる。

米国の減税が実行されると、日本は先進国では最高税率となる。

 

 

 

 

 

サムスングループの創業者、故李秉喆(イ・ビョンチョル)氏の長男、李孟熙氏(81)が弟の李健熙サムスン電子会長を相手取り、総額7100億ウォン(約494億円)の株式の分与を求める訴訟を起こした 。

李秉喆は1938年に大邱で三星商会を設立した。
1948年には三星物産を設立、続いて第一製糖と第一毛織を設立した。

サムスングループは現在、韓国最大手の総合家電・電子部品・電子製品メーカーのサムスン電子、総合電子部品企業のサムスン電機、薄型パネルや電池製造のサムスンSDI、デジタルカメラや製造装置、軍事機器のサムスンテックウィン、造船やプラント生産のサムスン重工業、商社事業と建設事業のサムスン物産、サムスンエンジニアリング、サムスン生命などを抱える。

李秉喆は1987年11月19日に逝去、現在の体制は以下の通りで、三男の李健熙がその地位を受け継いだ。

李孟熙の長男の李在賢が会長を務めるCJグループは旧第一精糖で、1993年にサムスングループから分離した。
また、長女の率いるハンソルグループは1991年にサムスングループから独立したチョンジュ製紙が起源で、製紙に加え、インテリア、精密化学品、建築・レジャー施設開発、物流、IT、そして環境へと事業分野を拡大している。 

付記 次女(LG系列の食品・レストラン業アワホームの具会長の夫人)の李淑姫も2月27日、同様の訴訟を起こした。

ソウル中央地裁によると、李孟熙氏は「父が生前に第三者の名義で信託した株式などの財産を、李健熙氏がほかの相続人に無断で単独名義に書き換えた」と主張し、相続分に相当する株式の分与を求めた。

今度の訴訟の争点は、故李秉喆が経営権保護などを理由に役職員の名義で管理していた三星生命と三星電子の借名株式。
故李秉喆は後継者として3男の李会長を選び、この過程で役職員の名義で管理していた三星生命の借名株式などが李会長の所有になった。

これに関しては2008年4月に特別検察官チームが、経営権継承疑惑、裏資金疑惑、不法ロビー疑惑で李健熙会長を背任と脱税など3つの容疑で起訴、三星幹部10人を書類送検した。

会長は執行猶予付きの刑が確定したが、韓国政府は、2018年冬季五輪招致に弾みをつけるため、2009年末に特別赦免した。

2010年3月24日、李健煕氏がグループ社長団会議の要請を受け、サムスン電子の会長に復帰した。

2008/4/26 揺れる韓国サムスングループ

「父が生前に第3者名義で信託した財産を李健煕会長が他の相続人に知らせず、単独名義に変更した」とし、「これは不当利益および不法行為に当たるため、民法上相続分189分の48に合わせて株式と今までの配当分を譲渡してほしい」と請求した。

また、 1998年12月にサムスンエバーランドが買収する形で名義変更されたサムスン生命の株式3447万株も法定相続分に従い返還されるべきだと主張している。

要求額は以下の通り。

李健煕会長に対し
  三星生命の株式824万余株、
  三星電子の株式20株(相続分 普通株57万株、優先株3100株の一部として)
  現金 1億ウォン(約696万円)
三星エバーランドに対し
  三星生命の株式100株(相続分 876万株の一部として:名義変更の経緯が不明確なため)
    現金 1億ウォン  

今後、訴訟の進行状況を見ながら、追加的な訴訟で財産分割を求める。

李孟熙氏が要求したサムスン生命の株式824万株を全て手にしたとしても、李健熙氏とサムスンエバーランなどの系列企業がサムスン生命の株式を40%以上保有しており、経営権に影響を及ぼすことはできない。

当時の民法によれば、相続回復請求権は「相続権侵害を知ってから3年が経過するか、あるいは相続開始(被相続人の死亡)から10年が経過した時点で消滅する」と規定されている。

李孟熙氏は「昨年6月に受け取った文書に、他人名義の信託財産に関する言及があるのを見て、相続権が侵害された事実を知った」と主張している。
但し、2008年4月の三星秘密資金疑惑と関連した特別検事の捜査結果の発表には借名株式の存在が含まれており、この時点からは相続財産を要求できる除斥期限(3年)が既に経過している。

付記

本件は、2011年6月に国税庁が長男の李孟熙ら相続人に送った公文書がきっかけだったことが分かった。

国税庁は「イ・ビョンチョル会長が他人名義で保有していた財産が、2008年12月に李健熙サムスン電子会長の名義に書き換えられたが、相続人は法定相続分を放棄し、李会長に贈与したのか」と照会する公文書を送った。

国税庁の照会を知った李健熙会長は、直後に李孟熙氏の息子の李在賢CJ会長に「先代会長の財産は、相続当時に分割が決定され、全ての相続人はほかの相続人の財産にいかなる異議もない」とする文書を送り「この文書に押印し、ソウル地方国税庁に送ってほしい」と要求した。

しかし、李在賢会長はそれに応じず、今回の訴訟となった。

 

故李秉喆氏の遺言状が存在しない状況で、李健熙氏は父が他人名義で管理していた株式を相続した根拠を明らかにすることも容易ではなく、財界関係者は「失う部分が多い李健熙氏が譲歩し、金銭で和解する可能性が高い」と指摘している。

 

 

日本のLNG輸入のニーズはたかまっており、輸入量が増大する一方、輸入価格は大幅に上昇している。

また、中部電力は6割がカタール産となっているが、仮にホルムズ湾が閉鎖されると、中部電力は発電量の約4割を失うという。

2011年の日本のLNG輸入7,853万トンのうち、カタールが15.1%、UAEが7.0%、オマーンが4.9%ほかで湾岸諸国が28.1%を占める。
他に、豪州17.8%、マレーシア19.1%、インドネシア11.9%など。

原油は官民で200日分の備蓄があるが、LNGには備蓄の義務がなく、電力各社には2~3週間分の在庫しかないとされる。

一方、米国の天然ガス価格は、原油価格が上昇しているのに対し、シェールガスの増大に伴い、逆に下落しつつある。

  以上については 2012/2/21  三菱商事がカナダのシェールガス開発に参加 参照 

しかし、米国からのLNG輸入は簡単ではない。

米国はLNGを戦略物質とみなし、輸出を個別の許可制にしている。

唯一の例外は本土48州に輸送不可能だったアラスカのKenai LNGの輸出だった。

日本の各社が米国のシェールガス開発に相次いで参加しているが、日本への輸出には米国政府の個別承認が必要となる。

米国は輸出承認で米国とFTAを締結している国とそれ以外で差をつけており、FTAを結んでいない日本はガス輸入のハードルが高い。

政府はLNGの新たな資源調達先として昨年秋から米国と交渉を始めた。経産省の牧野副大臣は2011年に米エネルギー省のチュー長官と会談し、ガス輸出事業を許可するように働きかけた。

読売新聞(2月22日)によると、政府が米国のLNGの対日輸出許可を求め、米政府と交渉に入ったことが明らかになった。
日本政府は、米ルイジアナ、メリーランド両州で進む民間のLNG生産プロジェクトからの輸出許可を求めており、野田首相訪米の際、オバマ大統領とLNG輸出で合意する方向で両政府が調整している。

ーーー

現時点での米国のLNG輸出計画は下記の通りだが、エネルギー省の認可は2件のみで、エネルギー規制委員会の認可はどこも取得していない。

プロジェクト 事業者 申請液化能力
万トン/年
       政府認可状況
エネルギー省 エネルギー規制委
Sabine Pass ルイジアナ Cheniere 1,600 認可済 審査中
Freeport テキサス Freeport LNG 900 審査中 審査中
Lake Charles ルイジアナ Southern Union 1,500 認可済 未申請
Cove Point メリーランド Dominion 800 未申請 未申請
Jordan Cove オレゴン Jordan Cove LNG 900 未申請 未申請
Cameron ルイジアナ Sempra 1,200 未申請 未申請
 米国計画 合計  6,900    

 

先行しているのはCheniere Energy が海外からのLNG受入基地に天然ガスのLNG化設備を建設してLNGを輸出する計画で、2010年9月に米国がFTAを締結している国(将来締結した国も含む)に限定して輸出許可が出された。

それまでアラスカ産を除けば、米国からの天然ガス輸出はほとんど前例がなく、認められないというのがおおかたの見方だったが、それを覆す意外な決定だった。

これに対し、同社は、多国間での自由貿易協定を目指すWTO加盟国へのガス輸出を禁止することが正当かどうかの判断を政府に求め、エネルギー省は2011年5月、同社に条件付きですべての貿易相手国への輸出を認めた。
CheniereのSabine Pass プロジェクトへの承認であり、個別に承認するが、FTA締結国とそれ以外で差が存在する)

Cheniereは2012年1月に建設着工、早くて2015年に稼働開始の予定で、既に売買契約を締結済である。

売買先は以下の通りで、既に米国とのFTAを締結し、間もなく発効予定の韓国の韓国ガス公社(Kogas)が含まれている。
(韓国以外の各国は米国とのFTAを締結していない)

輸出先 数量
万トン/年
供給開始 契約期間 定額固定費
$/百万BTU
BG Group (英) 350 2016 20年間 2.25
同上 追加 200 2016 同上 3.00
Gas Natural(スペイン) 350 2016 同上 2.59
Gail(インド) 350 2017 同上 3.00
Kogas(韓国) 350 2014 同上 3.00
合計 1,600      

FOB価格は、原料ガスコスト(Henry Hub 渡し市況 x 115%)+固定費(ガス化費用など)
 15%は天然ガスのトレーダーとしてのマージン。

ーーー

米国からのLNG輸入には他にも問題がある。

1)事業者

Chiniereやその他の事業者中小規模のガス・トレーダーで、大規模な資金負担に耐えられるか疑問視され、またLNG事業操業能力にも疑問が残るとされる。

大手石油企業・ガス生産者がLNG液化・輸出事業に参入する気配はない。

2)国内の反応

米国のエネルギー多消費型の産業界(発電業界、化学、アルミ、米国ガス協会等)から米国のLNG輸出に対する懸念が頻繁に提起されている。輸出により国内ガス価格が上昇するのを懸念し、一定の制限を設けるべきとの主張を展開している。 

付記

DowのAndrew Liveris CEOは3月8日、エネルギー関連の調査機関が主催する年次会合CERAweek でスピーチし、シェールガスからのLNGの輸出を制限するよう求めた。

アメリカのこの安く豊富なガスの産業での有利性は、首尾一貫した国のエネルギー政策をつくらなければ消えてしまう。天然ガスを輸出する代わりに、液体形態ではなく、これを加工した固体形態で輸出するべきだ と述べた。

3)米国政府の「エネルギー戦略物資」論

米政府は「LNG輸出の国内ガス需給への影響」に係る調査実施を2012年第1四半期に完了させる予定。
米市場への適切なエネルギー供給を維持するために、LNG輸出に対しては何らかの条件が加えられる可能性がある。 

中国向けの輸出を認めるかどうかは大問題である。米国はハイテク製品についても軍事転用が可能だとして制限している。

4)LNG輸出に対する米国政府の低い支援

米国投資銀行は、米国の政治的リスク、ガス市場価格の不安定性を理由として、液化設備建設への投資に慎重な姿勢を見せている。

5)米国の将来のガス供給力

今後のシェールガス掘削費用のアップ、環境対策費のアップなどから、将来も安い生産コストを維持できるかどうかは別問題。


付記

野田首相は4月30日のオバマ米大統領との首脳会談で、LNGの対日輸出拡大などエネルギー面での協力を求めた。

オバマ大統領は首相の輸出要請に対し、「日本のエネルギー安全保障は米国にとっても重要」と理解を示す一方、「(対日輸出は)政策決定プロセスにある」として、明言は避けた。日本政府内には「少なくとも11月の大統領選までは、オバマ大統領が輸出認可に動く可能性は低い」との見方が強い。

ーーー

資料 2012/2/1 JOGMEC 世界LNG: 実現に近づく次世代LNG供給地域・プロジェクト
  http://oilgas-info.jogmec.go.jp/pdf/4/4585/1201_out_c_green_lngs.pdf

 

 

旭化成とダイソーは今春をめどに、塩素や苛性ソーダを生産する岡山化成への共同出資関係を解消する。
旭化成は岡山化成の持株をダイソーに売却、ダイソーの100%子会社とする。2月21日付の日本経済新聞が報じた。

岡山化成は1968年設立で、旭化成ケミカルズとダイソーが50%ずつ出資している。
1970年に岡山県水島臨海工業地帯のC地区コンビナートで電解の稼働を開始した。
現在の生産能力は苛性ソーダが18万トン、塩素が16万トンとなっている。
 

ーーー

岡山化成の設立は、旭化成にとっては、日本ゼオンのエチレン法塩ビを水島コンビナートに誘致するための塩素の確保のためであり、ダイソーにとってはエピクロルヒドリンなどへの進出のための塩素の増設であった。

旭化成は山陽モノマーに30%出資、エチレンと塩素を供給し、VCMを延岡の塩化ビニリデンや溶剤用に一部引き取った。

2000年に山陽モノマーと新第一塩ビ(水島)が停止した。

このため、旭化成は隣接するヴイテック(三菱化学)に塩素を送り、VCMの委託加工を行った。
(当時、ヴイテックは電解能力が不足し、輸入EDCを購入してVCMにし、輸出していた。) 

 ッソは2002年に水島のPVCを停止、PVCから撤退した。
 (その前に2000年に五井と水俣のPVCを停止している)

チッソ向けのVCM供給が無くなったうえ、肝心のヴイテックが2011年に水島の電解とVCMを停止
(水島PVCは2008年に停止済み)、2011年9月末に解散した。

この結果、旭化成は大口の塩素供給先が無くなったため、撤退する。

ダイソーは主力のエポキシ樹脂原料の強化に向け、原料の塩素を安定確保する。

EUのユーロ圏17カ国は2月21日の財務相会合で、ギリシャへの総額1300億ユーロの第2次支援を決めた。
支援実行と引き換えに、同国をEUの監視下に置き、財政緊縮策を確実に履行させることで一致した。

第2次支援の実行が決まったことで、ギリシャは3月下旬の国債の償還資金を手当てし、債務不履行(デフォルト)を回避することになった。

ギリシャ支援を巡る合意内容の骨子は以下の通り。

 ・EUとIMFが1300億ユーロ(約13兆6500億円)を支援

 ・民間債権者が保有するギリシャ国債の元本削減率を50%から53.5%に引き上げ

ギリシャ国債を最長30年の新発国債などと交換する。

銀行等保有の国債
 2000億ユーロ
1070億ユーロ(53.5%) 削減
 930億ユーロ(46.5%) 31.5%  最長30年の複数の新規国債 利率2.0~4.3%
15.0% 短期の欧州金融安定化基金債

クーポンは最初の3年間がわずか2%で、30年間の平均では3.65%となる。 (実勢は10年満期で30%超)
金利減を含めると約7割の債務削減となる。

国債の交換は、民間側の代表である国際金融協会(IIF)と合意したが、債権者はこれから個別に文書にサインする必要があり、最終的な参加率がどの程度になるのか、まだ確定的はことは言えない。

ギリシャ政府は、一定以上の合意があれば全ての国債交換を進められるようにする集団行動条項(CAC:collective-action clauses)を盛り込んだ法案を議会に提出した。

 ・ECBとユーロ圏各国の中央銀行が支援に参加

ECBは債券買い入れプログラムに基づき購入した債券の利益を放棄
  購入した500億ユーロのギリシャ債からの利益 120-150億ユーロを放棄、
  ユーロ圏17カ国の中央銀行のギリシャ向け融資の損失を補てん

ECBと中央銀行は投資ポートフォリオで保有している債券の利益を放棄
   ギリシャが資金調達する必要のある金額は今後3年間に18億ユーロ圧縮される見通し。

ECBによる担保の受け入れ
  ギリシャ債がデフォルトと分類されても、オペの担保として銀行が保有するギリシャ債を受け入れる。

 ・ギリシャの対GDP債務比率を現状の160%から2020年に120.5%に

 ・ギリシャをEUの監視下に置き、財政緊縮策を確実に履行させる
    財政主権を事実上制限して、4月の総選挙後も同国が財政健全化の取り組みを緩めないようにするのが狙い

EUなどの代表がギリシャに常駐し、予算編成なども含めて同国が約束した財政緊縮策を確実に履行しているかどうかを監視。
第2次支援でギリシャに融資される資金は、通常の予算とは別の特別会計で管理し、債務返済を優先させる。


当面のデフォルト危機は回避できるが、EU・IMFの報告書は、ギリシャの景気が想定以上に悪化するなどの場合、第2次支援を実施しても2020年時点で債務の対GDP比率が160%程度に高止まりするリスクを指摘しており、ギリシャの財政再建の前途は厳しい。

これまでの経緯は以下の通り。

2009/10 ギリシャの財政赤字粉飾が表面化
2010/5 ギリシャに対する支援策(2010~2012年で1,100億ユーロの協調融資)
欧州金融安定化メカニズム(European Stabilization Mechanism)創設
 EFSF 最大4400億ユーロ
 IMF 2500億ユーロ
 欧州委員会が発行する債券 600億ユーロ
 最大合計 7500億ユーロ


2010/5/10  統一通貨ユーロの危機

2010/11 アイルランド支援(850億ユーロ)
2011/5 ポルトガル支援(780億ユーロ)
2011/6 EFSF拡充決定(2011/10 最後のスロバキアが一旦反対した後、賛成し、成立)
2011/7 ギリシャ向け第二次金融支援
 公的支援 1090億ユーロ、民間金融機関による支援 370億ユーロ(
21%の損失負担
2011/10 欧州債務危機克服に向けた「包括戦略」で合意。
ギリシャ問題については
民間銀行によるギリシャ債務の損失負担は7月時点の21%から50%に アップ
(新旧の国債交換、国債の再投資を通じギリシャ国債の元本を削減)
ギリシャ債務残高は2020年にGDP比120%に削減へ
(当初案なら150%で高止まり)
ギリシャの財務状況を常時監視
ギリシャに下記の改革を求める。
 ・女性年金支給開始 60歳→65歳
 ・一定額以上の受給者への支給額減額
 ・公務員3万人の削減、給与カットも
 ・民間企業の賃下げのための規制緩和
 ・保有不動産からの利益に対する課税の導入
 ・付加価値税 21%→23%(実施済み)
 ・ガス(DEPA)、通信(OTE)など国営企業の民営化
 ・公共事業の凍結、削減(2011年度は前年比3.3%減)
 ・軍事費の大幅削減
2011/11 ギリシャ首相は、国民の反対を受け、一度は国民投票実施の意向。
EUとの協議の後、首相は11月3日、緊急閣議を開き、国民投票を撤回

G20首脳会議は11月4日、首脳宣言を採択。
EUが合意したギリシャの債務削減などの包括対策の速やかな実施を要請

2011/11/7   EU 金融危機

その後 EU・IMFの試算では、当初予定していた第2次支援を実施しても、2020年時点でギリシャの政府債務の対GDP比率は129%までしか低下せず、目標の120%を実現するための追加策が残された大きな論点となった。

ギリシャ政府の追加緊縮策が整わないことなどを理由に正式決定が先延ばしされてきた。

EUは第二次支援を1300億ユーロとするとともに、民間銀行のギリシャ国債元本削減幅を従来の50%から更に拡大することとし、ギリシャにそのための条件を科した。

2月15日、3条件をようやく達成
1)「財政緊縮関連法案の議会承認」
   2012年で33億ユーロ分の 賃金、年金、公務員削減による節減策を議決

2)「財政緊縮策実行の誓約書」
   ギリシャ与党党首が「緊縮策実行の誓約書」に署名。

3)「歳出削減策の具体化」(これが難航した。)
   6億2500万ユーロの歳出削減めぐって暗礁に乗り上げたが、
    うち、3億ユーロを年金の削減で賄うことを決定
   残り 3億2500万ユーロについては、最終的に国防費や公共投資などの削減で賄うことを決定。

 

 

ミヨシ油脂は2月13日、同社のピペラジンジチオカルバミン酸系飛灰用重金属固定化処理剤で東ソーから提訴されていた特許権侵害訴訟に関し、最高裁への上告を取下げ、ミヨシ油脂側の特許権侵害を認めた2011年12月の知財高裁判決に従って対象製品の製造・販売停止や損害賠償などに応ずることを発表した。

同社は、ピペラジン系飛灰用重金属固定化処理剤を名古屋工場で製造し、商品名「エポルバ」シリーズとして、ごみ焼却灰に含まれる重金属処理向けに販売してきた。

自治体が建設したゴミ焼却施設で発生するダスト(飛灰)は、集塵機(バグフィルター)で集められるが、非常に細かく、このままでは処分できないので、 重金属を混練機「高分子系液体キレートのエポルバと練り込んで固定化し、処分する。
雨で重金属が溶け出さない効果に、高い評価を得ている。

東ソーは、2007年1月、ミヨシ油脂の製品が、自社の特許第3391173号「飛灰中の重金属固定化方法及び重金属固定化処理剤」を侵害しているとして、対象製品の製造差止めと約27億円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。

ミヨシ油脂は、「同特許は出願時点での先行特許・技術と同じで、無効」などと主張したが、東京地裁は2010年11月18日、「先行特許・技術と同一とはいえず、特許は有効」と判断し、東ソー勝訴の判決を下した。

ミヨシ油脂による対象製品の製造販売の禁止
対象製品の廃棄
損害賠償金1,191百万円(+遅延利息)の支払い

これに対し、双方が控訴したが、知的財産高等裁判所は2011年12月22日、東ソー勝訴の判決を下した。

ミヨシ油脂による対象製品の製造販売の禁止
対象製品の廃棄
損害賠償金1,800百万円(+遅延利息)の支払い

専門家によると、控訴審で損害賠償金が増額となるのは珍しいとのこと。
対象製品の製造販売の禁止、対象製品の廃棄も認められ、「近時にない、教科書的勝利」とされる。

ミヨシ油脂はこれを不服として、2011年12月26日、最高裁に上告したと発表した。

しかしミヨシ油脂は今回、訴訟継続による経営への影響を熟慮し、当該事業の一刻も早い立て直しが急務であるとの結論に達したとし、上告を取り下げ、対象製品の製造・販売停止や損害賠償などに応ずると発表した。
弁護士らと協議した結果これ以上正当性を主張することは難しいと判断した。

同社はまた、特許権侵害訴訟に対する経営責任の明確化と、新しい経営体制のもとでの業績回復と社業の発展のため、会長と社長の交代を発表した。

ミヨシ油脂は今後、同処理剤の事業化から手を引く。
但し、対象品目が「飛灰用処理剤」のため、水処理用など対象以外の商品は、引き続き製造販売していく方針。

同社は飛灰用のエボルバのほか、以下の製品を扱っている。

「エポラス」 
  水の浄化などに使われているイオン交換樹脂

  水銀専用キレート樹脂般重金属用キレート樹脂など

「エポフロック」 
  分子タイプの液体重金属捕集剤で、メッキ工場や金属加工工場などの排水に含まれる重金属類を捕捉

「エポアース」
  
高性能な土壌用高分子重金属固定剤

 

東ソーは2月16日、業績予想の修正を発表した。損害賠償金18億円を特別利益に計上、純損益を11億円上方修正した。

 

 

カナダの天然ガス最大手のEncana Corporationは2月17日、British ColumbiaCutbank Ridgeの未開発の土地でのシェールガス開発で三菱商事と提携したと発表した。

三菱商事は新たに子会社Cutbank Dawson Gas Resources を設立し、29億カナダドルを投じて40%の権益を取得し、Cutbank Ridge 埋蔵エリア(Play)の409千エーカーのMontney層天然ガスランドの開発を行う
三菱商事は2月末までに権益を取得する予定。

付記

国際協力銀行(JBIC)は8月12日、三菱商事のCutbank Dawson Gas Resourcesとの間で、融資金額650百万加ドル限度の貸付契約に調印した。三菱東京UFJ 銀行及びみずほコーポレート銀行との協調融資。
JBICの「円高対応緊急ファシリティ」の下での資源・エネルギーの確保・開発の促進に係る案件。

なお、この取引にはEncanaの既存の生産分(天然ガス日量6億立方フィート)や加工プラント、集荷システム、EncanaのAlbertaの土地などは含まれない。 

Encanaは2011年2月、PetroChinaとの間でCutbank Ridge事業を50/50のJVとすることで合意した。
PetroChinaはEncana Corporation から権益の50%を54億カナダドルで買収するもの。

Encanaが生産している日量4億立法フィートに新たなMontney層を加えると、約7億立法フィートとなる。
資産は130万エーカーの土地、3,400km
のパイプライン、Hythe地下ガス貯蔵タンクを含む。

しかし、両社は6月21日、条件が折り合わず、交渉を中止したと発表した。

2011/2/16  PetroChina、カナダの天然ガス権益取得

今回の三菱商事の取得権益は今後のCutbank Ridge事業のみで、PetroChinaのケースと比べると範囲は狭い。

契約ではEncanaはCutbank Ridge Partnershipの60%、三菱商事は40%の権益を持つ。
三菱商事は契約発効時に14.5億カナダドルを支払い、今後、開発投資費用の40%と伴に、今後5年間の開発期間のEncanaの
開発費用の半分の肩代わりとして14.5億カナダドルを負担する。
Encanaは操業を担当する。

Cutbank Ridge Partnershipが保有する天然ガス資産の合計可採埋蔵量は、35兆立方フィート(約7.2億トン)以上と推定され、日本の天然ガス年間需要の約9年分に相当する膨大な量が見込まれている。

今後5年間でPartnershipとして総事業費約60億カナダドル以上を投じ、累計約600本以上の生産井を掘削して開発を進める。
生産期間は50年以上で、今後10年の間に日量約30億立方フィート(約2,250万トン/年)の生産を目指す。

 

三菱商事は現在、コルドバ堆積盆地で天然ガスの開発を進めている。
同社は又、現在、カナダで生産した天然ガスを原料に、液化天然ガス(LNG)として輸出する可能性についても検討を進めている。

ーーー

福島第1原発の事故後、火力発電の燃料として日本のLNG需要が急増している。
2011年の輸入量は7853万トンと前年比12%増えた。

世界的な需要増でスポット価格も上昇している。

 日本でLNG輸入が本格化した1970年代の発電燃料は石油のため、原油価格連動でLNG価格を決めた。
その後LNGを導入した韓国や台湾も同じシステムを採用し、これが一般ルールとなった。

 このため、原油価格の上昇により、LNG価格も上がっている。

(米国では天然ガス価格は需給で決まる。)



これに対し、米国の天然ガス市況はシェールガス増加で大幅に下がり、100万BTU当たり 2ドル台になっている。 

付記 LNG輸入の場合、これに液化費用と輸送費合計で100万BTU当たり5~6ドル?)がかかる。

従来は、原油100ドル/bbl天然ガス10ドル/100万BTUであった。
現在の米国の天然ガス価格は原油価格との格差が大きく、アジアの天然ガス価格とも大きな差がある。

天然ガスの輸出にはそのための設備が必要で、時間がかかる。
また、米国は基本的に戦略物資として「エネルギー輸出禁止」政策を採っており、政府の承認が必要。


日本の各社のシェールガス等非在来型資源の開発状況は以下の通り。

三菱商事
①ブリティッシュ・コロンビア州の
Cordova堆積盆地のシェールガス
 
Penn West Energy Trustから50%の権益

 
2010/8/26 三菱商事、カナダのシェールガス開発プロジェクトに参画
 
2011/5/14 中部電力、東京ガス、大阪ガスとJOGMEC、カナダシェールガス開発プロジェクトに参加


②カナダのシェールガス(今回) 

三井物産
ペンシルベニア州のMarcellus Shaleエリアのシェールガス
 
Anadarko Petroleum から32.5%の権益

 
2010/2/18  三井物産、米国でシェールガス開発生産プロジェクトに参画


②テキサス州
Eagle Ford shale 
  
SM Energyから12.5%の権益

  2011/7/4  三井物産、テキサス州のシェール開発に参加

住友商事
①テキサス州
Barnett Shale field開発
 
Carrizo Oil & Gasから12.5%の権益

②ペンシルベニア州
Marcellus Shale field開発
 
Rex Energyから30%の権益

 
2010/8/26 三菱商事、カナダのシェールガス開発プロジェクトに参画
双日
テキサス州北東部
Carthage onshore gas 鉱区Tightsand gas、シェールガス
 
20077月に権益取得

 2010/10/19 伊藤忠、米国のシェールオイル開発に参加、商社の非従来型石油/ガス開発出揃う

伊藤忠
①ワイオミング州
Niobraraのシェールオイル
  
Fidelity Exploration & ProductionMDU Resources Group子会社)から25%の権益

 2010/10/19 伊藤忠、米国のシェールオイル開発に参加、商社の非従来型石油/ガス開発出揃う

2011/11/28 KKRと伊藤忠など、米Samsonを72億ドルで買収へ

丸紅
①Niobrara shale oil
  2011/4/13 丸紅、米国のシェールオイル開発計画に参加


Eagle Fordシェールオイル・ガス田
  
2012/1/9 丸紅、イーグルフォード・シェールオイル・ガス開発事業に参画

日揮
①テキサス州
Eagle Ford シェール
  
2011/6 TriTech I, LLCからChesapeake Energy運営の鉱区の10%の権益


国際石油開発帝石と日揮、NexenのBritish Columbia州北東部のシェールガス開発に参加 

 

 

 

 

 

米司法省、Coast Guard、EPAは2月17日、三井石油開発のMoex Offshore がClean Water Act に基づき70百万ドルの罰金を支払うとともに、環境保全のための土地買収の為、少なくとも20百万ドルを支払うことに同意したと発表した。

Clean Water Act に基づく70百万ドルの罰金はこれまでの最高額で、このうち、45百万ドルは国が受取り、法律に基づき将来の原油流出事故への対応、クリーンアップ、損害補償のために使われるOil Spill Liability Trust Fundに充当される。
残りの25百万ドルは和解に参加した各州が受け取る。

三井石油開発はこれに加え、環境保全のための土地買収の為、少なくとも20百万ドルを支払う。
Louisiana、Texas、Mississippi、Floridaの各州にある環境保全すべき土地を開発から守るため、州政府、非営利団体、土地信託その他が購入するのに使用される。

    政府  
Civil penalties
(Clean Water Act)
70百万ドル 45百万ドル   政府のOil Spill Liability Trust Fundに充当
  25百万ドル
Louisiana  6.75
Alabama 5.00
Florida 5.00
Mississippi 5.00
Texas 3.25
land acquisition projects 20百万ドル   20百万ドル  

 

メキシコ湾の原油流出事故を巡り、米司法省は2010年12月15日、BPと三井石油開発子会社MOEXなど計9社を相手取って、損害賠償請求訴訟をルイジアナ州ニューオーリンズの連邦地裁に起こした。

今回の和解はこれに基づくもので、米国連邦政府は三井石油開発と関連会社、その関係者に対して制裁金等につき提訴しない旨に同意することとなる。
また、各州は州法に基づく制裁金等について請求権の放棄および訴訟を提起しないことに同意する。

    2010/12/17 米司法省、BP原油流出事件で提訴

司法省は和解を受け、これは重要な一歩だが、第一歩に過ぎないとし、BPなど他の各社の責任を追及する姿勢を強調した。

三井石油開発の和解は、同社が10%の持分所有者に過ぎず、掘削には全く関与していないため、他社の参考にはならない。

Clean Water Actでは、原油の流出量1バレルに対して、1,100ドルの罰金が決められている。
但し、重大な過失による場合は、罰金は4,300ドルとなる。

政府は410万バレルが流出したと見ており、重大な過失であれば、罰金は176億ドルにもなる。
BPでは流出量を320万バレルとし、バレル1100ドルを適用し、35億ドルを引き当てており、現在政府と交渉中。

ーーー

BPは2011年520日、メキシコ湾原油流出事故の損失負担で三井石油開発(及び子会社MOEX USA とその子会社で事業参加者のMOEX Offshore 2007 LLC )との間で合意に達したと発表した。

三井石油開発はBPに対し、106500万ドルを支払う。
三井石油開発は当該鉱区の全権益を
BPに譲渡、また本事故に関与する当事者に対する請求権をBPに譲渡する。

今後発生する本事故関連費用について、BPは三井石油開発に対して請求を行なわない。
また、三井石油開発に対する第三者の請求の大部分は
BPが全額補償する。

但し、水質浄化法に基づく米当局からの制裁金や州の環境法に基づく制裁金など(civil, criminal or administrative fines and penalties, claims for punitive damages, and certain other claims) は和解の対象外となっていた。

2011/5/20  BPと三井石油開発、メキシコ湾原油流出事故損失負担で和解 
 

 

 

国会の東京電力福島原子力発電所事故調査委員会は2月15日、国会内で第4回委員会を開催し、参考人として、原子力安全委員会の班目春樹委員長と原子力安全・保安院の寺坂信昭前院長の2人を招致し、質疑が行われた。

国会の東京電力福島原子力発電所事故調査委員会は次の目的で国会に設置された機関
  ①福島原発事故に係わる経緯・原因の究明
  ②今後の原発事故の防止及び被害の軽減のための施策又は措置の提言

委員長は黒川清氏(東京大学名誉教授、元日本学術会議会長)で、委員には地震学者の石橋克彦氏(神戸大学名誉教授)や島津製作所の田中耕一氏などが入っている。

委員会終了後、黒川委員長は以下の通り述べた。
    http://www.naiic.jp/wp-content/uploads/2012/02/ik04.pdf

1)原子力安全委員会の班目委員長自身が安全指針そのものに瑕疵があったことを認め、謝罪した。
  ・昭和39年の原子炉立地審査指針という、時代に沿わない指針をもとに設置が許可されていること
  ・現状の発電所の安全性に大きな問題がある
    同指針の「仮想事故」(技術的には起こることは考えられない事故)よりも、はるかに多くの放射能が放出された。
  ・原子力発電所を建てられない日本に、建てられるように基準を作っており、全面的にその改訂が必要

2)原子力の安全を担う使命を持つそれぞれの組織に緊急時の備えが出来ていなかった。
  また、そこには事故はないであろうという前提で推進されてきた原子力の根本的な問題を含んでいる。
  それぞれの組織が住民あるいは国民の安全を守るという意識が欠如しているということも判明した。

3)組織としての専門性のなさ、組織の長としての専門性のなさによる問題も浮き彫りにされた。
  独立性の高い、科学的根拠に基づいた勧告や提言の行える制度や組織の重要性が改めてクローズアップされた。
  今後、原発事故を引き起こした日本としては国際的な信頼に足る安全基準をつくる責務がある。

 

斑目委員長と寺坂前院長の発言は以下の通り。両氏が平然と(時には笑いながら)問題点を挙げているのには愕然とする。http://www.shugiintv.go.jp/jp/wmpdyna.asx?deli_id=41555&media_type=wb&lang=j&spkid=&time=

1)斑目委員長

原発の安全対策を示した国の指針について、いろんな意味で瑕疵があった。原子力安全委員会を代表してお詫びする。

 ・津波に対する十分な記載がなかったり、すべての電源の喪失も「長時間考えなくてもいい」とされていた。

 ・アメリカでは全電源喪失への対応など安全基準を高める動きがあった。
  これに対し、日本では、対策をやらなくてもいいという言い訳づくりばかりやっていた。
  抵抗があってもやるという意思決定ができにくいシステムになっている。

 ・官僚制度の問題
   任期(2年)の問題、減点主義から大きな改革が出来ない。やらない言い訳だけを考える。

 ・事業者の責任を強く求めるべき。事業者と規制当局の間にオープンなコミュニケーションが必要。
  実際には護送船団方式で、低い安全基準を事業者が提案し、規制当局がのんでしまう。
  国がお墨付きを与えたから安全だとなり、事業者が安全性を向上させる努力をしなくなる悪循環に陥っていた。

  一義的には事業者に責任。指針を超えてでも安全性を求めるべし。

斑目委員長は、浜岡原発訴訟の中部電力側の証人として証言、複数の非常用発電機が起動しない可能性を問われ、以下の通り答えた。
「非常用ディーゼルが二台同時に壊れて、いろいろな問題が起こるためには、そのほかにもあれも起こる、これも起こる、あれも起こる、これも起こると、仮定の上に何個も重ねて初めて大事故に至るわけです。[・・・]何でもかんでも、これも可能性ちょっとある、これはちょっと可能性がある、そういうものを全部組み合わせていったら、ものなんて絶対造れません。だからどっかでは割り切るんです。」
事故後の3月22日の参院予算委員会で社民党の福島瑞穂党首がこの発言を追及したのに対し、班目氏は「割り切らなければ(原発の)設計ができないことは事実。
割り切り方が正しくなかったことも、十分反省している」と述べた。

今回、これについて質問を受けたが、記憶にないと述べた。

 ・津波が想定を超えても、それを超えた防御がなされているべきだった。
  福島沖で大きな津波の可能性の知見があった。これへの対応がなかったのは残念。

 ・国際安全基準に全く追いついていない。30年前の技術で安全審査をしている。早急に直さないといけない。
   IAEAでは五重の防御が必要とし、シビアアクシデント対策、防災対策も求めているが、日本にはない。

放射性物質の拡散を予測するSPEED1のデータのが迅速に公開されていたらもっとうまく避難できたというのは、全くの誤解だ。
SPEED1の予測結果に頼った避難計画にしていること自体が問題で、直ちに避難するようなルールにしておくべきだった。

 

2)原子力安全・保安院の寺坂前院長

2001年に発足以降、人材育成や能力向上をはかってきたが、欧米と比べると専門性や知見は十分なものでなく、弱い。
緊急事態に対応できる人材がいたかというと否定的にならざるを得ない。専門性、知見、習熟度は米国やフランスと比べて弱かった。

SPEED1は避難方向など何らかの形で有用な情報になったのではないかという思いはある。

原子力緊急事態宣言後に官邸をあとにしたが、「私は事務系なので、理系の次長が官邸に残った方がいいと判断した」。

  

付記

斑目委員長は2月20日、ストレステストについて、「欧米でもストレステストを稼働条件には使っていない。1次評価は安全評価としては不十分で、しっかり詰めないといけない」と語った。

 

独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は2月15日、愛知県渥美半島沖で、次世代エネルギー資源と期待される「メタンハイドレート」の海洋産出試験に向けた海底掘削を始めた。

掘削する海洋研究開発機構の地球深部探査船「ちきゅう」は、船中央部のやぐらから海底に向けて、先端にドリルをつけたパイプを下ろした。

「ちきゅう」は全長210m、幅38mで、海底から地中へ7千メートル掘る能力がある世界最高水準の探査船。波や風を受けても、高い精度で船を同じ位置に保つことができる。

計画では、水深約1000mの海底を約260m以上掘る。氷状のメタンハイドレートを地層内でメタンガスと水に分解して地上に取り出す試験井戸と、周辺の環境への影響を調べるための観測井戸の計4本を10~20m間隔で3月下旬までに掘る。

「我が国におけるメタンハイドレート開発計画」のフェーズ1(2001~2008年度)では、東部南海トラフ海域(静岡県から和歌山県の沖合にかけた海域)をモデル海域として地震探査・試掘などの調査を実施し、同海域において、相当量のメタンハイドレートの賦存を確認している。

 

2009年度から開始された同計画のフェーズ2では、メタンハイドレートを天然ガスとして取り出す技術の開発を目指しており、今回の試験は、海洋における世界初のメタンハイドレート産出実験となる。

来年1~3月に世界初となる海洋産出試験を計画している。

事業費は約170億円。

陸上では石油天然ガス・金属鉱物資源機構が世界で初めて減圧法によりメタンハイドレートからメタンガスを連続的に生産することに成功した。
2008年3月、カナダ北西部のBeaufort海沿岸陸上地域で、永久凍土の地下約1100mに存在するメタンハイドレート層からメタンガスを産出する試験を実施したと発表した。カナダの天然資源省と共同研究の形で、約6日間の産出試験に成功した。

ーーー

清水建設は2009年3月、ロシア科学アカデミー陸水学研究所、北見工業大学及び北海道大学と共同で、バイカル湖水深約400mの湖底で、湖底表層に閉じ込められたメタンハイドレートから、ガスを解離・回収する実験に成功したと発表した。

2008年8月にバイカル湖の南湖盆の水深約400mの湖底で成功したガス回収は、「チャンバー」と呼ばれる鋼鉄製・茶筒状の反応容器内で、メタンハイドレートと水を攪拌、水に溶かしたメタンハイドレートを湖上へ運び、ガスを解離・回収した。
海底または湖底を含め、表層メタンハイドレートから、ガスの解離・回収に成功したのは、今回の実験が世界で初めて。

ーーー

韓国は2007年に東海(日本海)の鬱陵海盆(対馬海盆)海域で埋蔵量6億トンを超えると推定される大規模ガスハイドレート層を発見したと発表した。

韓国知識経済部は2010年2月、このガスハイドレート開発のため、4月末から2次ボーリング作業を始めると発表した。
(その後の報道は見当たらない)

     日本政府は1978年に国際水路機関に「対馬海盆」とし登録

2010/2/23   韓国、対馬海盆でガスハイドレート開発

 

Frank Schatzing の海洋サイエンスフィクション "The Swarm"(邦訳「深海のYrr」)には、北海のMethane hydrate 採掘現場で海底が大崩壊し、発生した津波で欧州の沿岸区域が壊滅する話が含まれている。

 

サウジ政府のJubail/Yanbu王立委員会は2月12日、Jubail Industrial Cityでの総額212億サウジリアル(56.5億米ドル)の石化計画を承認、調印式が行われた。

1)Kemya(Al Jubail Petrochemical Company:SABIC/ExxonMobil JV)

EPDM、合成ゴム、カーボンブラック計画(120億サウジリアル)

このプロジェクトはブチルゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム、EPDM、熱可塑性特殊ポリマー、カーボンブラックを合計年間40万トン生産するもので、新興の国内市場やアジア・中東の海外市場に供給する。

サウジアラビアの国家産業クラスター開発計画庁と提携して職業訓練センターと製品応用開発・サポートセンターの設立も行い、サウジアラビアの製造業の発展と多角化を図る。

このうち、カーボンブラック製造技術についてはContinental Carbonから、SBRおよびポリブタジエンゴム技術についてはGoodyear Tyre and Rubber から技術導入した。

2011年5月にJacobs Engineering と三井造船との間で基本設計(FEED)契約を締結した。

2)Jubail Chemical Industries Company (JANA)

既存製品の増強及び新製品の生産のためのコンプレックス(30億サウジリアル)
能力60万トンとされるが、内容は不明。

JANAは現在、Jubailで
Epoxy Resinsを幅広く生産している。
中東・アフリカでの唯一のEpoxyメーカーで、既存能力及び計画は以下の通り。

 既存能力 6万トン(Huntsman Advanced Materialsから技術導入、元はCiba-Geigy技術)

 計画  +6万トン(2012/6)
     +12万トン(2017) 
     原料エピクロルヒドリン増設 (+9万トン)

3)Saudi International Petrochemical Co. (SIPCHEM)

EVA/LLDPE 20万トン計画(28億サウジリアル)

同社の第3期計画の追加で、ExxonMobil の高圧法LDPE技術を導入、本事業を韓国のHanwha Chemical とのJV(Sipchem 75%、Hanwha 25%)とすることで合意したと発表している。

2010/8/12 サウジのSipchem、酢酸エチルを事業化

4)National Industrialization Co. (Tasnee)

高吸水性樹脂 8万トン計画(14億サウジリアル)

Evonikは2011年8月、Tasnee とSahara Petrochemicalsのアクリル酸系製品の統合会社の Saudi Acrylic Acidとの間で、高吸水性樹脂を製造するJVのSaudi Acrylic Polymersを設立する契約に調印した。
出資比率は明らかにされていない。(他のJVの例からみると、Evonikの出資比率は25%か?)
工場はAl Jubail chemical parkのTasneeの工場に立地し、能力は年産80千トン。2013年下期のスタートアップを目指す。

2011/8/31 Evonikも高吸水性樹脂を増強 

Tasnee、Saharaについては、
2006/5/13 サウジの民間ポリオレフィン計画

 

5)Saudi Arabian Fertilizer Co. (SAFCO)

尿素 367万トン計画 (20億サウジリアル)

 

 

民主党は2月10日、社会保障と税の一体改革調査会の総会を開き、一体改革後に導入を目指す新しい年金制度案について4通りの財源試算を公表した。
   
http://www.dpj.or.jp/download/6008.pdf

いろいろな前提を置いてのものであり、非常に分かり難い。
制度の完全実施までに40年かかる(無年金・低年金問題の解消にも40年かかる)。

概略は以下の通り。

1)現行制度との違い 

                                                 図は日本経済新聞 2012/2/11
 

現在は、国民年金(基礎年金)と厚生年金(サラリーマン)、共済年金(公務員)の3つの制度に分立している年金制度を一つに統一する。

民主党案では、所得の15%の保険料を財源とする所得比例年金と、消費税を財源とする最低保証年金から成る。
夫婦の所得は二分二乗して計算する。 

所得比例年金:財源は保険(所得の15%) (夫婦二分二乗)
最低保証年金:財源は消費税(月額7万円、所得で限度)

所得比例年金の保険料は15%で、企業と従業員が折半する。(個人は7.5%)
自営業者は「雇い主兼従業員」とみなされ、合計15%を払う。

(2)最低保障年金

所得がゼロ(所得比例年金がゼロ)の場合は満額(月額7万円)が払われるが、所得がある場合に、どこまで最低保障年金を払うかが問題となる。

民主党案では4つのケースを考えている。
下記の最低保障年金の7万円とゼロの間を直線的に支給

 

  最低保障年金(双方を直線で結ぶ) 備考
月額7万円 ゼロ
所得比例年金
 ゼロ
生涯平均年収
 380万円
生涯平均年収380万円=
    所得比例年金7万円
 同上 生涯平均年収
 520万円
生涯平均年収520万円=
    全体の平均年収の2倍
 同上 生涯平均年収
 690万円
生涯平均年収690万円=
所得比例年金12.6万円=
    男子単身の標準的な年金額
生涯平均年収
 260万円まで
生涯平均年収
 690万円
生涯平均年収260万円=
    全体の平均年収

夫婦の所得は二分二乗するため、生涯平均年収 260万円のケースは、
 妻の所得がゼロの場合は、夫の所得は520万円

 

これを図示すると以下の通り。

なお、2007年の参院選時に、民主党が年金改革案を提示した時には、最低保障年金の減額スタートが年収600万円(二分二乗では300万円)、打ち止めが1200万円(同600万円)というものであり、今回の④案(260万円~690万円)とほぼ同じ。

3)年金試算

2016年度から新制度に移行すると仮定。支給月額は2065年度の推計、生涯平均年収は260万円。
 二分二乗のため、妻の収入がゼロの場合、夫の年収が520万円。

現行制度では夫の厚生年金は7.4万円、国民年金(基礎年金)は各5.3万円で、夫婦合計で18万円。
このケースでの所要財源は11.7兆円で、消費税換算で4.1%となる。このままでは2075年度では+2.4%が必要。

これに対し、各ケースでの試算は以下の通り。
2075年度の必要な消費税は、2015年度の制度移行直前の現行ケース(4.1%) と比べ、
 ケース①で+2.3%
 ケース④で+7.1%
が必要となる。

図に示される通り、高所得者の場合は、現行より減額となる。

最低保障は2016年度「月額7万円」だが、これが上図及び下表では5.8万円と表示されている。

制度移行後、見なし運用利回りで伸ばすと2065年度で19.8%、これを賃金上昇率で割り戻せば、2065年度で5.8万円となると注記されているが、非常に分かり難い。

  ④案 ③案 ②案 ①案 現行制度
支給月額
 
夫婦2人 21.1万円 16.7万円 15.3万円 13.2万円 18万円
1人 10.6万円 8.4万円 7.7万円 6.6万円 夫12.7万円 妻5.3万円
基礎年金           5.3万円  5.3万円
厚生年金           7.4万円     ー
所得比例年金 4.8万円x2 4.8万円x2 4.8万円x2 4.8万円x2  
最低保証年金 5.8万円x2 3.6万円x2 2.9万円x2 1.9万円x2  
▼所要財源(単位兆円、カッコ内は追加で必要になる財源の消費税率換算 %)
     (見なし運用利回りスライド)
2015年度
制度移行直前
11.7 (4.1%) 11.7 (4.1%) 11.7 (4.1%) 11.7 (4.1%) 11.7 (4.1%)
2035年度 17.8 (+0.6) 17.0 (+0.4) 16.4 (+0.2) 16.1 (+0.1) 16.5 (+0.3)
2055年度 38.7 (+4.4) 33.0 (+3.2) 28.9 (+2.3) 26.3 (+1.7) 27.0 (+1.9)
2075年度 61.3 (+7.1) 49.3 (+4.9) 40.5 (+3.3) 35.1 (+2.3) 35.7 (+2.4)

注 今回の消費税の5%アップ分のうち、1%分は子育て支援や在宅介護の充実など社会保障機能の強化に使われ、残りは基礎年金の50%国庫負担を維持するため(うち一部は交付国債の償還財源)に使われる。
2015年度の4.1%は現行体制維持のためのもので、2035年度以降の消費税率アップは更に必要な追加分。

ーーー

民主党案については、色々な問題点が提起されている。
学習院大学教授・鈴木亘のブログ(社会保障改革の経済学)が分かり易い。
   上 http://blogs.yahoo.co.jp/kqsmr859/36051663.html
      下 http://blogs.yahoo.co.jp/kqsmr859/36051666.html

■最低保障年金は、月額7万円を保障しない

月額7万円の実質価値が、将来的にどんどん下がってゆく制度設計(図では5.8万円)
5.8万円という数字も甘い経済見通しに基づいた単なる目安の数字で、もっと減る可能性も。

■不自然な消費税率の上昇テンポ

2016年度に新制度がスタートしても、その移行には60年ぐらいかかるから、その間、基礎年金制度は存在していなければならない。
基礎年金の年金給付をするために、2016年から消費税を引き上げなくてはならない。
このために必要な消費税率は4.1%。

所得比例年金は、払った分は返ってこない制度

運用利回りよりもはるかに低い賃金上昇率から、さらに少子化分を差し引いた「みなし運用利回り」で年金額を決めるということであり、「支払った分に見合う年金が戻ってくる」という積立方式ではない。

■甘すぎる経済前提

今後100年近い経済前提は、運用利回り4.1%、賃金上昇率2.5%という「バラ色のお花畑シナリオ」

■民主党案で、低所得者対策が改善されるか?

自営業、農林水産業の人々の所得把握の実現性
(最低保障年金への「ただ乗り」が広範に起きる可能性)
 *自営業者は「雇い主兼従業員」とみなされ、所得比例年金の保険料はサラリーマンの倍の合計15%を払う必要がある。

■民主党案で世代間不公平は改善するか?

給付額が少子化の進展を反映してどんどんカットされてゆく仕組み
消費税率についても、将来ほど、どんどん引き上げられるような制度設計
 →世代間不公平はかなり残る

 

 

SABICとSinopecはTrinidad and Tobago に共同で53億ドルを投じてメタノールコンプレックスを建設する件で同国政府との交渉を開始した。SABICが2月11日に証券取引所に報告した。両社は他の各社も入った入札で一番札となった。

SABICとSinopecは2012年1月14日、新規事業開発に関する協力覚書を締結している。
  2012/1/18 Saudi AramcoとSinopec、サウジでの製油所建設の合弁契約締結

具体的な計画は明らかにしていないが、地元紙はMethanol-to-olefins (MTO) と Methanol-to-petrochemicals (MTP) が含まれていると報じている。

同地の天然ガスを原料とするもので、立地はPoint Lisas。

 

 

Trinidad Tobagoは天然ガスが豊富で、液化能力は1,520 万t/年あり、米国への最大のLNG 輸出国である。
2009年の天然ガス利用量のうち、LNGは59%、メタノールは15%、アンモニアは15%となっている。

詳細(上記グラフも)はJOGMEC資料 http://oilgas-info.jogmec.go.jp/pdf/3/3638/1008_out_l_tt_lng.pdf

 

本計画の入札の透明性についてTrinidad and Tobago で論争が起きており、野党議員も、Sinopecが参加することを知らなかったと述べ、交渉内容を明らかにするよう求めている。
報道によると、米大使は政府に書簡を送り、米国企業(Celaneseが参加)などの競合相手を抑えてSABICを選ぶことに懸念を表したとされる。

問題の一つは原料の天然ガスの価格の大幅値引きである。

SABICはNYMEXでの天然ガス価格が100万BTU当たり2.48ドルであるのに対し、1ドル以下を要求していると伝えられている。

このため、国内メーカーよりも極端に安い価格を外国企業に認めるのはおかしいとの声が出ている。

Point Lisasでは国営Methanol Holdings (Trinidad) やMethanexがメタノールを生産しているが、減税などの恩典はあるが、原料の天然ガスについては国営National Gasから特別な割引は受けていないとされる。

ーーー

現在、Point Lisasには合計7つのメタノールプラントがあり、能力合計は660万トンに達する。

     国営 Trinidad and Tobago Methanol Company

1999年に子会社を統合した。
下記のメタノール5工場のほか、アンモニア/尿素プラントを持つ。

子会社
統合
Trinidad and Tobago Methanol Company (TTMC) 1984年 TTMC I 46万トン
1996   TTMC II 55万トン
Caribbean Methanol Company Limited (CMC) 1993 50万トン
Methanol IV Company Limited (MIV) 1998 55万トン
M5000
(5000T/D+既存プラント排ガスで400T/D)
2005 184万トン
合計   400万トン

   Methanex 及び Atlas Methanol

工場 能力  備考
Methanex   85万トン  
Atlas Methanol  170万トン  BP 36.9%/Methanex 63.1%

現在はメタノールはそのまま海外に輸出されている。

今回の計画は、単にメタノールを生産するだけでなく、酢酸やエチレン・プロピレンを生産し、付加価値をつけるもの。
同国では川下分野の多角化を進め、付加価値の高いプラスチック産業の基礎をつくるという戦略をつくっている。

既にLyondellBasellがこの方針に基づき、Methanol - Propylene - PP計画を進めている。

Basell Trinidad and Tobago National Gas CompanyNational Energy Corporation 及びLurgi AG は2007年12月に、Trinidad and Tobago で統合PP コンプレックスを建設するMoU を締結した。

2008年9月、LyondellBasell は上記各社にTrinidad and Tobago 政府も参加して、本プロジェクトのProject Development Agreement に調印したと発表した。

計画内容は以下の通り。
  Methanol :Lurgi'
s MegaMethanol technology
        Methanol-to-propylene
 (Lurgi's MTP technology)
        PP
 490千トン(Spherizone technology)
  

 2007/12/25 Basell など、Trinidad and Tobago PP 事業

ーーー

SABICは今後、サウジで原料を大量に得るのは難しいと考えており、サウジでのプロジェクトのほとんどは高付加価値製品である。

逆にSABICは最近、シェールガスを原料に米国でクラッカーを建設することを考えていると明らかにした。

 

 

Moody'sは2月13日、イタリアなど欧州6カ国の国債の信用格付けを引き下げたと発表した。

スペイン   A1A3 (2段階)
イタリア、マルタ   A2A3 (1段階)
スロバキア、スロベニア   A1A2 (1段階)
ポルトガル   Ba2Ba3 (1段階)

いずれも見通しを更に格下げの可能性を示唆する「ネガティブ」とした。

付記 
 S&Pは4月26日、スペイン国債をAからBBB+に2段階引き下げた。

 S&Pは5月2日、ギリシャ国債をSD(選択的デフォルト)からCCCに引き上げた。

最上位格付けのフランス、オーストリア及びユーロ圏外の英国について、格付けは据え置いたが、見通しを「安定的」から格下げの可能性を示唆する「ネガティブ」とした。

欧州金融安定基金(EFSF)の債務格付けは「Aaa」に据え置いた。

Standard and Poorsは1月13日、最上位である「トリプルA」のフランス、オーストリアを含むユーロ圏9カ国の国債格付けを引き下げている。また1月16日には、欧州金融安定基金(EFSF)の長期債の格付けを最上級のAAAから1段階引き下げ、AA+にした。

2012/1/14 米格付け会社S&P、フランスなどユーロ圏 9カ国を一斉格下げ
2012/1/18 S&P、欧州金融安定基金の長期債の格付けを引下げ

 

付記 S&Pは2012年2月27日、ギリシャの長期信用格付けを「CC」から部分的なデフォルト(債務不履行)を示す「SD(選択的デフォルト)」に引き下げたと発表した。

付記 Moody'sは3月2日、ギリシャ国債の格付けを従来の「Ca」から1段階引き下げ、最低の「C」にしたと発表した。
    「C」は通常、デフォルト(債務不履行)に陥っており、元利の回収の見込みが極めて薄い状態を示す。

付記 Moody'sは3月13日、キプロスを投機的格付けのBa1に1段階引き下げた。

付記 Moody'sは6月13日、スペインをA3からBaa3に、キプロスをBa1からBa3に引き下げた。

付記  Moody'sは7月13日、イタリアをA3からBaa2に引き下げた。

 

S&PとMoody'sの各国の格付けは以下の通り。うち、EFSFは欧州金融安定基金。

青字2011年に格下げがあったもの
赤字は2012年に格下げ
以前の格付け(日付は格下げ日) 

 

S&P Moody's

ユーロ ユーロ圏外
ユーロ ユーロ圏外
AAA (EFSF 1/16)
ドイツ

(フランス
↓1/13)
(オーストリア
↓1/13)
オランダ

フィンランド
ルクセンブルグ
英国
カナダ
(米国
8/5)
Aaa EFSF
ドイツ
フランス

オーストリア
オランダ

フィンランド
ルクセンブルグ
英国
カナダ

米国
AA+ EFSF
フランス
オーストリア

(ベルギー
11/25)
米国 Aa1 (ベルギー12/16)
AA ベルギー (日本1/27) Aa2   (日本8/24)
AA- (スペイン↓1/13)
エストニア
(スロベニア
↓1/13)
日本
中国
Aa3 ベルギー
(スロベニア
12/22)
日本
中国
A+ (スロバキア↓1/13)
スロベニア
(中国'10/12/16) A1 (スペイン2/13)
エストニア
(スロバキア
2/13)
(スロベニア
2/13)
韓 国
(中国'10/11/11)
A (スペイン↓4/26)
スロバキア
(イタリア↓1/13)
(マルタ
↓1/13)
韓国 A2 (イタリア2/13)
(マルタ2/13)
スロバキア
スロベニア

A- マルタ   A3 (ギリシャ'10/6/14)
スペイン
イタリア

マルタ
 
BBB+ イタリア
アイルランド
スペイン
(ギリシャ'10/4/27)
(キプロス
7/29)

Baa1 (キプロス11/4)
BBB (キプロス↓1/13)   Baa2    
BBB- (ポルトガル↓1/13) (ハンガリー12/21) Baa3 (キプロス3/13) (ハンガリー11/24)
 投資適格     投機的格付
BB+ キプロス
(ギリシャ3/29)
ハンガリー Ba1 アイルランド
キプロス
(ギリシャ3/7)
ハンガリー
BB ポルトガル
Ba2 (ポルトガル2/13)
BB- (ギリシャ5/9)   Ba3 ポルトガル  
B+

B1 (ギリシャ6/1)
B (ギリシャ6/13)   B2    
B-

B3

CCC+     Caa1 (ギリシャ7/25)  
CCC (ギリシャ7/27)
ギリシャ

Caa2

CCC-     Caa3    
CC (ギリシャ2/13)
 




SD (ギリシャ↑5/2)   Ca (ギリシャ2/13)  
D     C ギリシャ  
SD:Selective Default 選択的デフォルト       
D :Default デフォルト
Ca:一部デフォルト
C:デフォルト

 

 


東京電力は2月13日、2011年4-12月決算を発表した。

災害損失、損害賠償額が増大した。
損害賠償額の増大に伴い、政府は支援機構資金交付金の6900億円の追加を認めた。

(単位:億円、配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
中間 期末
10/1-3Q 39,599 3,269 2,786 1,399 30  
11/1-3Q 38,008 -1,444 -2,205 -6,230 0  
増減 -1,591 -4,713 -4,992 -7,629    
             
10/3 50,163 2,844 2,043 1,338 30 30
11/3 53,685 3,996 3,177 -12,473 30 0
12/3 52,800 -2,650 -3,900 -6,950 0 0


特別損益は以下の通り。

単位:億円
  1-3Q実績 中間決算  中間決算比 前年度
特別損失        
   災害特別損失   3,123  1,850   +1,273  10,205
 原子力損害賠償額 16,445     8,908   +7,537  
 その他 449      
 合計 20,017      
特別利益        
   支援機構資金交付金 15,803    5,436
(+3,473)
     +6,895  
 その他 395      
 合計 16,198      
特別損益 -3,819      

参考  2011/11/19  東京電力、2011年9月中間決算 


災害損失
 東電社長は、「廃炉の関係で損失を積み増している」と語った。
 廃炉にかかる費用は「2~3年、全部ではないが見通せるものは見通した」と説明したが、
 一方で「先々は見通せない。どのくらいかも不確定だ」とも語った。

損害賠償額
 中間決算での損害賠償額は8,909億円(見込み額 10,100億円 マイナス 賠償補償 1,200億円)
 東電社長は今回、賠償に必要な金額を見直したことも明らかにした。
 「2012年3月をめどに(賠償の)業務を開始したい」と語った。対応人員を3500人増やし、1万人を超す体制で取り組む。

支援機構資金交付金
 中間決算では5,436億円で、その後11月4日に、残り3,473億円の資金交付を決定した。
 今回、経産相は以下の基本姿勢を示したうえで、東電と機構が申請していた6,900億円の賠償資金の追加援助について認定した。

付記 

東京電力は4月23日、原子力損害賠償支援機構から、2,186億円の交付を受けたと発表した。5月末までに必要となる支払い見込額が計1兆22億円となったため。

 支援機構交付金   15,803億円
 政府賠償補償     1,200億円
 合計   17,003億円
     
交付済    
 2011年11月   5,587億円
 2012年3月   1,049億円
 2012年4月    2,186億円
 小計   8,822億円
 政府賠償補償    1,200億円
 合計   10,022億円

ーーー

東電と機構は3月末までに、賠償への政府支援を続ける前提となる総合特別事業計画をまとめる。
機構が1兆円の公的資金で東電に資本注入し、廃炉費用などで悪化する東電の財務基盤を強化することが柱。

計画は経産相の認定が必要となるが、計画の策定に向けた枝野経産相の主な指示は以下の通りで、東電の経営権の掌握を目指している。

公的資金による資本注入の前提として、注入額に見合う十分な議決権を要求
 (3分の2以上を視野に、少なくとも過半の議決権を取得し、経営権を掌握することを想定)
・経営責任の明確化
・電気料金原価の見直し結果を企業向け料金にさかのぼって適用
・原子力被害賠償の加速
・思い切った事業再編、不動産売却・経営合理化の加速

経産相は東電社長との会談で「資本注入額に照らし、十分な議決権を伴わない形で資本注入を求める総合計画が提出されても、認定するつもりは全くない」と強調した。

 

 

 

米商務省は2月10日、2011年の貿易収支を発表した。

財とサービスの取引を合計した国際収支ベースの赤字は前年比11.6%増の5580億ドルと大幅に拡大、2008年以来3年ぶりの高水準となった。GDP比で3.7%になる。

但し、赤字は金融危機前からは縮小している。

単位:億ドル
  輸出 輸入 バランス
2007  16,546  23,613 -7,067
2008 18,427 25,410 -6,983
2009 15,750 19,563 -3,813
2010 18,376 23,376 -5,000
2011 21,031 26,611 -5,580

 

内訳は以下の通りで、輸出、輸入ともに増大した。(いずれも過去最大)

単位:億ドル
  輸出 輸入 バランス  
2010 12,887 19,346 -6,459  
 うち中国 919 3,649 -2,731 42.3%
日本 605 1,205 -601 9.3%
その 11,363 14,491 -3,127  
サービス 5,489 4,030 1,458  
合計 18,376 23,376 -5,000  
2011 1,498.2 2,235.3 -737.1  
うち中国 1,039 3,993 -2,955 40.1%
日本 662 1,288 -626 8.5%
その 13,282 17,072 -3,790  
サービス 6,049 4,259 1,790  
合計 21,031 26,611 -5,580  

サービスを除く貿易赤字のうち、対中国赤字が2955億ドルで全体の40%を占めている。(対日赤字は8.5%)

対中赤字は2000年代前半から一貫して増加、2009年には金融危機の影響で貿易量が減少して一時減ったが、2011年は10年比で増加している。

このため、米国内で人民元問題などで対中強硬論が拡大する可能性がある。
共和党の大統領候補のロムニー前マサチューセッツ州知事は「為替操作国認定」の方針を明言している。

オバマ大統領は1月24日の一般教書演説で、「競争相手がルールを無視した場合に傍観はしない」と述べ、中国の通商政策や知的財産侵害を批判した。
中国などの「不公正な貿易慣行」を調査する新部局の新設を明言し、米中摩擦の解消に善処するようくぎを刺した。

ーーー

中国の次期指導者に内定している習近平国家副主席が2月13日から訪米し、オバマ大統領などと会談する。

中国当局者は逆に、習副主席の訪米時にハイテク製品の対中輸出規制の撤廃を求めることを明らかにした。
「中国は米国からの輸入を拡大する用意があり、障害を取り除いてほしい」と述べ、米が軍事転用が可能だとして制限しているハイテク輸出の条件緩和を求めた。

人民元については、「我々は確固たる改革を進めてきたし、今後もさらに改革する」と述べるにとどめた。

中国人民銀行は2月10日の人民元の中間値を過去最高の6.2937元/ドルに設定した。
同日に一時、過去最高の6.2884元/ドルを記録、
人民元を管理フロート制に戻した2010年6月19日の前日の終値 6.8262人民元に比して8.55%の人民元高となった。

中国の2011年の輸出額は1兆8986億ドル、輸入額は1兆7434億ドルで、貿易黒字は1551億ドルとなった。

2012/1/12 中国の2011年貿易収支

なお、2012年1月の中国の輸出入は大きく減少した。
本年は春節の休み(1週間)が1月になったこともあるが、それを折り込んだ予想より減少しており、ユーロ圏の金融危機や米国の景気低迷の影響が出ていると見られており、中国経済の減速への懸念が高まっている。

 

 

 

Totalは1月27日、Samsung Group との50/50JVのSamsung Total Petrochemicalsの大山コンプレックの増強を発表した。

18億ドルを投じて芳香族の第二系列とEVAプラントを新設する。

新設能力は芳香族第二系列はベンゼンが42万トン、パラキシレンは100万トンで、EVAは24万トンとなっている。

パラキシレンについては既存の61万トンを2012年に76万トンに増強する予定で、第二系列の完成で合計能力は176万トンとなる。

Totalでは、この投資は成長市場での拡大を目指す同社の戦略に基づくとしている。
JVの大山コンプレックスの製品の50%は主に中国に輸出されている。

パラキシレンは三星石化のPTA用に供給される。

三星石化はBPと三星グループのJVであったが、BPが撤退し、三星グループの企業となっている。
   
2006/7/26 BPが韓国のPTA事業から撤退

なお、PTAのもう一つの原料の酢酸はBPと三星のJVの三星BPが生産している。

ーーー

三星グループと現代グループは供給過剰時の1988年に業界や政府の反対を押し切り、中国向け輸出を中心とするとして大山地区にエチレンコンプレックス(三星総合化学、現代石油化学)を建設した。

1998年夏に韓国・全国経済人連合会が主管して進めた五大財閥の構造調整案(いわゆるビッグディール)に基づき大山地区で隣接する三星総合化学と現代石化との統合計画が進められ、一時は三井物産、住友商事を含めた4社で基本合意書を締結したが、出資額で調整がつかず、まとまらなかった。

その後、現代石油化学はLGと湖南石化連合が買収した。

三星は2002年12月仏石油大手トタルフィナ・エルフの化学部門であるアトフィナから資本を受け入れる覚書を結んだ。
2003年8月
50/50JVのSamsung Atofinaが設立され、三星総合化学の資産が移管された。(その後Samusung Total と改称)

2005年10月、同社は「選択と集中」戦略に基づく600億円の拡張計画を発表した。

エチレン   63万トン 83万トン
プロピレン   32万トン →  55万トン
SM   67万トン →  87万トン
PP   27万トン →  57万トン

その後の増強で現在の能力は以下の通り。(千トン)

 

 


 

 


 

BPは2月7日、第4四半期と2011年の決算を発表した。

事故関連費用を除いた損益は2010年を若干下回ったが、石油価格の高騰を受け、2009年をはるかに上回っている。

なお、損益内訳では「川上」が圧倒的である。

メジャー各社は川上分野に注力している。

参考 2011/7/20 ConocoPhillips、石油開発と精製に会社分割

    2012/1/30 ExxonMobilが東燃ゼネラル石油から実質撤退


事故関連費用については、パートナーであったAnadarkoと三井石油開発、及び掘削業者2社との和解による入金などで38億ドルの戻入があり、最終損益で257億ドルもの利益を計上した。

同社は2010年第1四半期から第3四半期分を無配とし、第4四半期に復配したが、2011年第4四半期については増配する。

決算内容は以下の通り(単位:百万ドル)

  2009 2010 2011
一般 事故 合計 一般 事故 合計
Exploration &
Production
24,800 30,886   30,886 30,500   30,500
Refining &
 Marketing
743 5,555   5,555 5,474   5,474
事故関連     -40,858 -40,858   3,800 3,800
調整 -717 447   447 -113   -113
金利・税前損益 22,504 35,372 -40,858 -5,486 33,383 3,800 37,183
金利(net) -1,302 -1,046 -77 -1,123 -925 -58 -983
税金(Replacement
cost base)
-7,066 -10,804 12,894 2,090 -10,516 -1,387 -11,903
少数株主持分 -181 -395   -395 -397   -397
Replacement cost
損益
13,955 23,127 -28,041 -4,914 21,545 2,355 23,900
在庫損益 3,922 1,784   1,784 2,634   2,634
対応の税金 -1,299 -589   -589 -834   -834
財務損益 16,578 24,322 -28,041 -3,719 23,345 2,355 25,700


BPは2010年決算で事故関係の費用409億ドルを引き当てた。
これには2010年
616日のオバマ大統領とBP首脳陣の会談でBPが約束した200億ドルの基金を含んでいる。

一方で同社はパートナーのAnadarkoと三井石油開発に持分相当の請求を行うとともに、掘削業者の責任も追求した。

2010/7/1  BP、パートナー2社に事故関係費用分担金を請求

長期間の交渉の結果、パートナー2社と業者2社とは和解に達した。

2011/5/20  BPと三井石油開発、メキシコ湾原油流出事故損失負担で和解

2011/10/19   BP、メキシコ湾原油流出事故でAnadarko Petroleum と和解

なお、掘削業者のTransoceanとHalliburtonはともに、BPとの契約で損害賠償について免責されていると主張、2社とBPはともに訴訟を行った。

1月末に出たそれぞれの判決では、損害賠償については契約に基づき免責となったが、懲罰的賠償や民事制裁金については免責されなかった。Halliburtonについては損害賠償の免責は条件付となったが、現時点では欺瞞行為は認定されていない。

  相手 和解 判決
損害賠償 懲罰的損害賠償
民事制裁金
2011/5 三井石油開発 10%の持分 1,065百万ドル    
2011/10 Anadarko 25%の持分  4,000百万ドル    
2011/6 Weatherford U.S 掘削機器部品
float collar
供給
  75百万ドル    
2011/12 Cameron International Blowout preventerの
設計・製造
  250百万ドル    
           
2012          
 1/26 Transocean Rig 所有、掘削作業   免責 免責せず
 1/31 Halliburton セメント作業   免責
但し、BPへの欺瞞行為
あれば免責せず
免責せず
和解金合計 5,390百万ドル    

 

BPは事故を受け、2010年の第1四半期から第3四半期分の配当を無配とした。

2010年第4四半期分からは普通株について1株当たり7セントの配当を再開したが、今回、第4四半期分の配当を8セントに増配することを決定した。

BPでは2011年のOperating cash flowが220億ドルに達し、2010年を60%も上回り、また、現在の原油100ドルが続いた場合に2014年のCash flowは2011年の50%増しになるとみている。

同社では増加分の半分は投資に回し、残り半分は増配を含めた他の目的に使うとしている。

 

 


スイスの商品取引最大手Glencore Internationalは2月7日、同国の資源大手Xstrataを260億ポンドで買収し、対等合併すると発表した。
新会社の社名はGlencore Xstrata International PLCとなる。

付記

Xstrataの株主のカタールの政府系ファンド Qatar Holding (12%出資)などが合併条件の見直しを求めており、7月中の株主総会承認は難しくなった。

付記

Glencoreは2012年9月7日、Xstrataの買収案を引き上げた。
Xstrata株主に割り当てるGlencoreの新株数を2.8株から3.05株に引き上げた。
買収額はおよそ370億ドル規模となる。
Glencoreはまた、株主による承認を得やすくするため、合意の仕組みを変更する可能性についても提案した。

Xstrata 1株に対し、Glencoreは新株2.8株を割り当てる。これは2月1日のXstrata株価に対して15.2%のプレミアムとなる。 

Xstrataは2月2日、Glencoreが株式交換による「対等合併」案について打診してきたことを明らかにした。
Glencoreは既にXstrataの株式の 34%を保有している。

XstrataがGlencoreの炭鉱を取得した際に、Glencoreが大株主となった。
Glencoreは商品取引が中心だが、鉱山事業への投資を加速中で、同社のCEOは2011年5月の新規株式公開後、XstrataへのM&Aに取り組むことを公言していた。

これに対し、Xstrataの株式を合わせて3.6%保有するStandard Life InvestmentsとSchrodersは、今回の合併案はXstrataの価値(Xstrataの資産と今後の業績の寄与)を過小評価しているとし、合併に反対する意向を表明した。今後他の株主も同様の動きに出る可能性がある。

新会社は採掘から処理加工、貯蔵、輸送、物流、マーケティング、販売までを一貫して手掛ける総合資源会社となり、今年の総売上高は2,090億ドルになると見込まれている。

Glencoreは現在、年間約2000万トンの火力発電向け石炭を生産しているが、Xstrata買収で生産能力は5倍に跳ね上がる。
日本の石炭輸入に影響が出ると懸念されている。

ーーー

Xstrataはスイスに本拠を置く資源会社で、銅、コークス用石炭、発電用石炭、クロム鉄、ニッケル、バナジウム亜鉛の7つのコモディティを中心に国際市場で活動しており、このほか、プラチナ、金、コバルト、鉛、銀なども扱っている。
発電用石炭では世界最大の輸出業者である。

Xstrata に対してはブラジルの資源大手Vale do Rio Doceが2008年初から買収交渉を続けたが、同年3月、買収交渉が決裂した。

Xstrataの株の34%を握るGlencore International が障害となった。
Rio Doceが45ポンド/株を提案したのに対し、
Glencoreは50ポンド/株を要求した。
同社はまた、
Rio Doce によるXstrata 買収後に両社の製品を販売する権利を要求したが、これはValeが呑めない要求であった。

Xstrata は2009年6月、Anglo American に対等合併の提案書を送付した。
両社の合併は大きなシナジー効果があるとした。

Anglo American の前身は1917年9月にSir Ernest Oppenheimer (ダイヤモンドへの投資で成功)が金鉱床の開発を目的として設立したAnglo American Corporation of South Africaである。

鉱物資源、製紙・林業、建設業、金融サービス業など幅広い分野に事業を展開、プラチナ(Anglo Platinum)では世界最大で、世界需要の37%を扱っており、ダイヤモンドではDe Beers Investments に45%出資している。

しかし、Anglo Americanはこれを拒否し、2009年10月にXstrataは交渉を断念した。

2009/6/25 スイスの資源大手 Xstrata が英国のAnglo American に合併提案

ーーー

Glencore Internationalは1974年設立のスイスの商品取引最大手で、40か国以上に50の事務所を置いて商活動を行い、13か国に15工場を有する。

Metals and Minerals、Energy Products、Agricultural Productsの3部門を持ち、以下の製品を扱っている。
   Metals and Minerals
   アルミ
ナ/アルミニウム、亜鉛/銅/鉛、フェロアロイ/ニッケル/コバルト/鉄鉱石

 Energy Products
   石油製品、石炭
/コークス

   Agricultural Products
         
  小麦/トウモロコシ/大麦、食用油/油糧種子、砂糖

Glencore InternationalはXstrataの34%を所有するほか、以下の各社に出資している。
 スイスのCentury Aluminum(アルミ事業持株会社)44%(議決権の39%)
 コンゴの銅・コバルト鉱山Katanga Miningの74.8%
 ロシアのアルミ大手
United Company RUSALの8.8% 
   
2006/9/5 
ロシアのアルミ最大手RUSAL、同国2位のSUALを買収 
 海上燃料輸送のChemoil Energy の51.5%
 金属・プラスチックのリサイクル大手のRecylexの32.2%

 

 

 

財務省は2月8日、2011年の国際収支状況(速報)を発表した。

経常収支は年間で9兆6289億円の黒字で、黒字額は前年比で43.9%減と、1985年以降で最大のマイナス幅を記録した。

内訳は以下の通り。

1)貿易収支(財貨の輸出入の差、FOBベース)

東日本大震災後のサプライチェーン寸断や海外景気減速の影響で輸出が落ち込む一方、火力発電用LNGの輸入増加が響き、1兆6089億円の赤字に転落した。
旧統計基準を含めた国際収支ベースで1963年以来、48年ぶりの貿易赤字。

輸出額は62兆7234億円で、1.9%減少した。輸入額は64兆3323億円で15.0%増えた。

財務省が2月8日発表した2012年1月上中旬(1~20日)の貿易統計(通関ベース)によると、貿易収支は1兆5600億円の赤字となった。
輸出は前年同期比11.9%減となる一方、輸入は同12.6%増加した。

付記
財務省が4月19日発表した2011年度の貿易赤字は4兆4101億円となった。1979年度以降で最高。
 輸出 65兆2819億円
 輸入 69兆6920億円

地域別貿易収支
 米国   4兆3024億円 (前年度比 -4.8%)
  EU          9194億円 (      -49.8%)
  アジア 5兆2185億円
 (うち中国 -2兆3020億円)
 中東  -11兆2770億円      

2)サービス収支(輸送、旅行、通信、建設、保険、金融など、財貨以外のサービスの取引差)

大震災と原発事故をきっかけに訪日外国人が減り、「旅行収支」などの赤字が増え、1兆6407億円の赤字となった。
「特許使用料」では黒字が拡大している。

上記2つの合計の貿易・サービス収支は1985年以降初の赤字となった。

3)所得収支(利子・配当など)

所得収支黒字は19.9%増え、14兆296億円となった。所得黒字の拡大は4年ぶり。

外国債券などへの「証券投資」から得る利益は9兆5375億円で、海外金利の低下にもかかわらず、前年より15%増えた。
海外への「直接投資」に絡んだ収益は34%増の3兆8136億円となった。

2009年度税制改正で、海外法人からの受取配当は2009年4月からほぼ非課税となった。

それまでは、海外の税率が低い場合、国内税率との差が課税された。
このため、配当を日本に還流させず、現地で再投資する方が有利であった。

世界的に配当免税の流れが加速したため、税制改正が行われた。

4)経常移転収支(政府間の無償資金援助、国際機関への拠出金など)

1兆1510億円の赤字となった。

 

付記

財務省が3月8日発表した2012年1月の国際収支状況(速報)によると、経常収支は4373億円の赤字だった。単月の経常赤字は2009年1月以来で、3年ぶり。対前年同月では9845億円の悪化となった。

貿易収支 -1兆3816億円
サービス収支 -930億円
所得収支 1兆1326億円
経常移転収支 -952億円
経常収支合計 -4373億円

経常収支の推移は以下の通り。        

 財務省では今後、所得収支は一定の黒字基調が見込めるとしながらも、貿易収支の赤字転落は、震災以外にも海外景気減速の影響など一時的ではない要因もあると指摘、経常収支がすぐに赤字となることは考えづらいが、黒字幅の推移は弱含みが続きそうだとしている。

米政府は2月6日、日本とEUの要求に応じ、反ダンピング(不当廉売)関税の計算法「ゼロイング (Zeroing)」を廃止することで日欧と合意したと発表した。7日以内にゼロイングを撤廃することを約束した。

米通商代表部(USTR)のRon Kirk 代表は声明で「厄介な、損害を与える可能性のある貿易問題とついに決別した」とし「貿易における報復の不確実性を伴うことなく、米国の農家、企業は雇用を創出する輸出市場に投資できる」との見解を示した。
米国の輸出業者に対する数億ドルもの報復措置を回避できるとしている。

一方で、Kirk代表は今後のWTOの交渉でZeroingがWTOのルールに合致するという主張を続けると述べた。

反ダンピング関税の計算で米国が用いてきた「ゼロイング」は世界貿易機関(WTO)が国際ルール違反と認定している。

ゼロイングとは以下の例のように、高値輸出を無視し、安値輸出のみで計算することにより、全体のアンチダンピング税率を不当に高くする計算方法。高値輸出のダンピングマージンをゼロとするもの。

正常価格 100
輸出価格がAが80(ダンピングマージン 20)、Bが125(同
-25)、Cが150(同 -50)の場合
(いずれも同数量とする)

通常の計算 〔(20)+(-25)+(-50)〕/(80+125+150) = -15.5% ダンピングなし
  

ゼロイング  〔20+0+0〕
/(80+125+150) = 5.6% ダンピングあり

ーーー

日本は、2004年11月、米国のゼロイングはWTO協定に違反すると主張し、WTOに対して協議を要請した。
2007年1月、WTOは日本の申立てを認め、米国にゼロイングの撤廃を勧告したが、米国は勧告履行期限である同年12月を経過してもこれを是正しなかった。

WTOの紛争処理上級委員会は2009年8月、日本の提訴に基づきWTO協定違反と認定されたゼロイングについて、日本の主張を認めた小委員会(第1審)の判断を支持し、米国がWTOの是正勧告に従っていないと認定した。日本の「勝訴」が確定し、米国は計算方法の見直しが義務付けられた。

2009/8/20  米の反ダンピング関税調査、WTO違反が確定

しかし、米国は依然としてゼロイングを適用し続けた。

国際社会においては、当事国の意思に反して国際法上の義務の履行を強制することは難しい。
ゼロイング案件において米国が紛争解決機関勧告を履行しない場合の対策としては、紛争解決機関の事前承認を受けた上で「譲許その他の義務の停止」をすることができる。
具体的には、WTO協定のその他の加盟国との間で約束した関税率を、勧告を履行しない国との関係においては引き上げることもできることになる。

このため日本は、米国に対してゼロイングを撤廃するよう繰り返し求めるとともに、2010年4月からは米国への対抗措置(関税引上げ)に着手するためのWTOの手続を進めてきた。

ーーー

日本の産業界は、ゼロイングにより米国から多額のアンチダンピング税を過剰徴収されてきた。
特にベアリング業界は同税の賦課が開始された1989年以降、22年間にわたって年間約10億円を過剰支払となっている。

ベアリングの関税は通常は2~9%だが、対米輸出ではこれに10%程度上乗せされてきた。
ゼロイングの撤廃で上乗せ関税がなくなるほか、米国からは2010年5月以降の上乗せ関税(計20億円程度)が還付される。

枝野経産大臣は、「世界経済が停滞し保護主義措置の蔓延が懸念される中で、多角的貿易体制の下でWTO加盟国によるルール遵守が徹底され、WTO紛争解決メカニズムが機能することを重視する」との立場を表明した。
その上で、「今後、米国の新規則がWTO勧告に沿って運用され、ゼロイングが確実に廃止されるよう引き続き注視していきたい」との考えを示した。

 

 

Shell とPetroChinaはカナダと米国での非在来型ガス開発での協力を強化する。

ーーー

PetroChinaの親会社のChina National Petroleum Company (CNPC) とShell は2011年6月20日、中国及び海外で相互にメリットのある開発案件で相互に協力するGlobal Alliance Agreement を締結した。

両社は又、Well Manufacturing JV (50% CNPC / 50% Shell)を設立する契約を締結した。
JVは両社の技術を統合して、陸上での井戸掘削の効率を著しく改良する革新的で高度に自動化されたWell Manufacturing System (WMS)を開発するもの。

タイトガス、シェールガス、炭層メタン(coal bed methane) の採掘には何年にもわたって、毎年数百の井戸の掘削を必要とする。WMS は最新のオードメーション技術を使用して、標準化され、繰り返し可能なやり方で掘削を行うことを狙いとする。

中国には1275兆立方フィートもの技術的に採掘可能なシェールがあり、中国の通常の天然ガスの埋蔵量の12倍にもなる。
U.S. Energy Information Administrationによると、これは米国の862兆立方フィートより50%多い。

Shell とCNPC は昨年3月に中国の最初の水平シェールガス井戸を完成させた。
両社は2011年に中国のシェールガスの開発に4億ドル以上を投資した。

ーーー

PetorChinaは2月6日、Shell のカナダのBritish Columbia州Groundbirchシェールガス計画の20%の権益を取得したと発表した。
詳細は明らかにされていないが、対価は10億ドル以上と報道されている。

Shell は又、両社が中国のシェールガス掘削井戸数を2011年の15から2012年には20~25に増やす計画であることを明らかにした。

GroundbirchはFort St. JohnとDawson Creek の間に位置する。
Shellは2008年にカナダのDuvernay Oil を59億カナダドルで買収し、この権利を取得した。

Shell は従来通りオペレーターを続け、製品は北米市場に供給される。PetroChinaでは将来はLNGの形でアジアに輸出することも考えたいとしている。

PetroChinaでは本投資を通じて、先進技術を中国に持ち帰りたいとしている。

 

PetroChinaは2011年2月にカナダの天然ガス最大手のEncana Corporation から天然ガスの権益の50%を54カナダドルで買収することで合意したと発表した。

しかし、両社は6月21日、条件が折り合わず、交渉を中止したと発表した。

  2011/2/16  PetroChina、カナダの天然ガス権益取得

 

 

 

中国のレアメタルの輸出規制が世界貿易機関(WTO)のルールに違反しているとして、2009年に米国・EU・メキシコが訴えた貿易紛争を巡り、WTOの最終審に当たる上級委員会は1月30日、欧米側の主張を認める第1審裁決を支持する報告書を発表した。

問題となったのは、下記の9種の鉱物資源の輸出関税、輸出割当、最低輸出価格、輸出許可制などの輸出制限で、その結果、これらの価格が上がり、各国の産業に幅広い被害が出たと訴えた。

ボーキサイト、亜鉛、黄燐、コークス、蛍石、マグネシウム、マンガン、炭化ケイ素、シリコン金属。

ほとんどの製品で中国が主要産地となっており、輸出制限でグローバルに需給ギャップが広がった。
中国は2010年末時点で亜鉛と蛍石の最大産地で、ボーキサイトも2番目に大きいとされる。

このうち、石炭コークスについては2012年に臨時の40%の輸出関税を課しており、黄燐の輸出関税も20%となっている。

米国などの批判に対し、中国は天然資源の保護や環境保護を輸出規制の理由として説明した。
WTOの前身のGATTの規定では、希少天然資源の保護、環境保護のために輸出関税を課したり、輸出を制限することを認めている。

しかし、上級委員会は、中国が天然資源保護を言いながら国内での生産・消費を制限していないこととの関連を説明できなかったとし、環境保護についても、輸出制限が短期的、長期的に環境汚染を減らすということを説明できなかったとしている。

中国商務部では、この決定について「遺憾だ」としながらも、「中国はWTOの裁決を真剣に評価し、またWTOのルールに基づき資源製品に対する科学的な管理を行い、持続的な発展を実現する」と表明した。

今回の決定そのものは、影響は限定的とみられている。

貿易紛争が起きた2009年以降、これら9品目の需給関係は大きく変化した。世界経済が低迷する中で、欧米では原材料需要が伸び悩んでおり、中国が規制を解除したとしても、需給関係を速やかに変化させることはなく、短期的にみれば業界や企業への影響は限定的とみられる。

しかし、これが今後のレアアースの輸出問題に与える影響が注目されている。

上記の9品目とは異なり、レアアース価格が過去最高の水準にあり、欧米や日本にとって今回の裁決は問題の対象をレアアースに向けさせることに真の意義がある。 

付記

日本と米国、EUは3月13日、中国によるレアアースの輸出制限について、WTOに提訴した。
提訴対象にはレアアースのほか、タングステンとモリブデンも含まれる。


このほか、錫、タングステン、アンチモンなどに対する中国の輸出政策も注目されている。

商務部は2011年12月、タングステン、アンチモンなどの非鉄金属の2012年第1弾の輸出割当枠を発表した。
タングステンは1万1400トン、酸化アンチモンは3万3500トン、錫は1万800トンの輸出枠を設定した。

 

 

2012年1月28日付 Economist 誌は新興国の金融・財政浮揚余力指数 (Monetary and Fiscal Wiggle-room Index)を発表した。

  記事 http://www.economist.com/node/21543468
   根拠  http://www.economist.com/blogs/graphicdetail/2012/01/daily-chart-11
        (グラフの上部の各項目をクリックすると、項目毎のグラフが出る)

欧州と米国の経済不振で、新興国の平均成長率も2011年第1四半期の6.5%から第4四半期には3%以下に下がった。
輸出減や資金流入の減も理由の一つ。EU問題が続くと、更に影響が強まる。

しかし、多くの新興国では金融・財政政策により、経済を浮揚させる余地が多い。
新興国の財政赤字は平均してGDPの2%に過ぎず、政府の債務もGDPの36%に過ぎない。

同誌では、27の新興国について、金融政策と財政政策で景気を浮揚させる余力を指数化し、これをMonetary and Fiscal Wiggle-room Indexと呼んだ

具体的には以下の項目を勘案した。

金融面での
 経済浮揚余力
 Monetary
  Manoeuvrability
インフレ率  
与信余力 銀行貸し出し伸び率と名目GDPの伸び率の差
実質金利率 金利率とインフレ率の差
通貨の動向 対米ドルレートの過去6か月の動き
経常収支(対GDP)  
財政面での
 経済浮揚余力
 Fiscal-Flexibility
政府債務(対GDP)  
構造的財政赤字
 (対GDP)
 

 

結果は下図の通りで、Wiggle-room indexが小さいほど、景気停滞を迎えた時に、経済成長を後押しするために通貨・財政政策を稼働できる余地が大きいことを意味する。

サウジ、インドネシア、中国は成長を支えるために金融財政政策を最も利用し得る国である。
チリ、韓国、シンガポール、ロシア、ペルーがこれに続く。

逆に、エジプト、インド、ポーランドは景気刺激策を採る余地が最も少ない。
ブラジル、ベトナム、パキスタン、トルコ、アルゼンチン、ハンガリーも危険ゾーンにある。

ーーー

各項目での特記事項

1)インフレ率

台湾が2%で最も低く、ベネズエラとアルゼンチンは20%を超える。
食料価格の低下で多くの国でインフレ率は下がったが、半分の国で依然として5%を上回っている。

2)与信余力

アルゼンチン、ブラジル、香港、トルコは危険水準。
逆に中国は銀行貸し出しの伸びがGDPの伸びよりも少ない。

3)実質金利率

半分の国でインフレ率より低いマイナス金利となっているが、ブラジルと中国では+2%を超えている。

4)通貨動向

ブラジル、ハンガリー、インド、ポーランドなど9か国では半年で米ドルに対し10%以上下がっており、輸入価格の上昇でインフレを招く恐れがある。

5)経常収支

グローバルの金融情勢が悪化した場合、経常収支の大幅な赤字の場合にはファイナンスが出来ず、金利率引き下げが困難となる。
トルコがGDP比で9%の赤字で、最も弱い。ポーランド、南ア、インドも4%程度の赤字。

6)政府債務

政府債務はエジプトとハンガリーがGDP比で75%を超えており、ブラジル、インド、パキスタン、ポーランドも60%前後となっている。
(シンガポールはゼロ、サウジは10%以下)

7)構造的財政赤字

エジプトとインドが8%を越え、パキスタンとポーランドも6%を超えている。
逆にサウジは10%近い黒字、韓国とシンガポールも黒字で、財政出動の余地が大きい。

 

ーーー

このうち、中国については、2009年の時のような膨大な景気刺激策を今後は取り得ないのではないかとの議論がある。

政府の公式の債務はGDPの27%に過ぎないが、地方政府への銀行貸し付けが除かれており、これを含めるとGDPの60%にもなる。
Economist誌は、中国政府には国有企業の持株など膨大な資産もあるため、問題ないとの立場を取っている。

 

Eastman Chemical は1月27日、Solutia Inc. の買収を発表した。買収価額はSolutiaの負債込みで47億ドル。

Solutiaは1997年9月にMonsantoの化学部門が分離独立して設立された会社である。
(日本のソルーシアの元は1952年設立の三菱モンサント化成)

Monsanto からスピンオフした際に引き継いだ法的債務(訴訟費用・賠償金、環境対策費用、退職者医療費債務等)で毎年1億ドル程度を支払い、これが負担となっていた。

このため、2003年12月に連邦破産法11条申請を行った。
2008年2月28日、Chapter 11手続きを終了し、再生に向けスタートした。

2008/3/4 Solutia、破産手続き終了

なお、現在のMonsantoは農業バイオテクノロジーのリーディングカンパニーで、除草剤「ラウンドアップ」などの農薬事業と畜産事業の「農業関連製品事業部門」と、遺伝子組み換え種子等の「種子とバイオテクノロジー製品事業部門」を持つ。

Eastman Chemical の企業戦略は以下の通りで、Solutia買収はその全てに合致したものであるとしている。

 ・Growing core businesses    自動車や建築等の市場を狙う。
 ・Bias toward emerging markets Eastmanの売り上げの25%がアジア太平洋地域(Solutiaは30%)
 ・Focus on sustaibale businesses 再生可能資源利用、製品の安全性

2006/11/22 Eastman Chemical、石炭ベースの化学品志向へ

Eastmanはこれまで、汎用品事業、非コア事業から撤退し、スペシャルティ事業を拡大、アジアに展開してきた。
Solutiaも同様で、統合により、スペシャルティの事業を拡大するとともに、成長するアジアへの展開を促進する。

Eastman の動き

2004   CASPI(coatings, adhesives, specialty polymers and inks)のうち、不採算事業をApollo Managementに売却
2005   工業用酵素のGenencorの42%持分をDaniscoに売却
 その後、DuPontがDaniscoを買収(
2011/5/27 DuPontDaniscoの買収成功
2007   PE事業売却
  2006/10/16  Eastman、ポリエチレン事業をWestlakeに売却
2009   Beaumont, Texasのindustrial gasification計画を中止(高コスト、原料価格差、環境問題等)
  2007/8/10 
Eastman、メキシコ湾岸で石油コークスのガス化計画 2件に参加
2010   PET事業売却
  2010/10/29 
Eastman Chemical、PET事業をメキシコ企業に売却 
2011   Sterling Chemicals 買収
  
2011/6/29  Eastman Chemical、Sterling Chemicalsを買収

ーーー

Solutiaの動き

2004 食品添加物事業をNovus International に売却
2005 
Acrylic Fibers事業から撤退
2007 水処理用フォスホン酸塩製造事業部門であるDequestをThermphos Trading GmbHに売却
2009 Nylon事業を
SK Capital Partners IIに売却

2010年の売上高は 1,950百万ドルで、内訳は以下の通り。

Advanced Interlayers  世界最大のポリビニルブチラール(PVB)樹脂中間膜メーカー
  自動車や建築用合わせガラスに使われる機能性中間膜、太陽電池用封止材など

Performance Films  全世界の自動車用および建築用ウィンドウフィルム市場でN0.1のシェア
  省エネ、プライバシー防犯、防災の機能を付加するウィンドウフィルム

Technical Specialties 
  有機合成熱媒体、航空機用作動油など

 

両社ともアジアに進出しており、統合によりアジア(特に中国)での存在感が強まる。

 

 

 ConocoPhillipsと中国海洋石油(CNOOC)は1月25日、蓬莱19-3油田の原油流出事故による漁業への損害賠償・補償問題について、中国農業省、河北省・遼寧省両政府との間で合意に達したと発表した。

蓬莱 19-3での最初の原油漏れは2011年6月4日に Platform B付近で発見され、6月17日にはPlatform C 付近でも発見された。しかし、ConocoPhillipsとCNOOCはこの事実を1カ月近く隠していた。

7月10日に新たに油の流出が確認され、監督機関の国家海洋局は7月13日にConocoPhillipsに対し、Platform BとPlatform C(生産量は蓬莱油田の3分の1相当)の稼働停止を命じた。

合計で約700バレルの原油が渤海湾に流出し、約2500バレルのミネラルオイルベースの掘削用泥(MOBM)が海底に流れた。被害は少なくとも 6,200km2にも及んでいる。

Platform Bはシールされ、Platform Cは廃棄された。

2011/8/17 渤海湾の原油流出事故

ConocoPhillipsは河北省と遼寧省の養殖業、および渤海の天然漁業資源への損害賠償・補償に10億元(約158百万ドル)を拠出する。

これとは別に、天然漁業資源の回復や漁業資源環境の調査などのために、海洋環境・生態保護基金からConocoPhillipsは1億元、中国海洋石油は2億5千万元を拠出する。

両社は昨年、海洋環境・生態保護基金を設定することに同意した。
ConocoPhillipsは基金の詳細を発表していない。CNOOCは5億元を出資した。

CNOOCは、原油流出事故による損害への早急かつ理にかなった賠償・補償に向けて、引き続き的確な措置を積極的に講じていく方針を表明。合意に基づく損害賠償・補償、環境保護の実行を促していくと述べた。

両省政府は補償金を被害を受けた漁民に配分するが、配分方法が明確でなく、懸念する声が出ている。

 

 

米司法省は1月30日、矢崎総業とデンソーが米国での自動車用ワイヤーハーネス等のカルテルで有罪を認め、548百万ドルの罰金を支払うことで合意したと発表した。 (DOJ発表

矢崎総業はワイヤーハーネス、インパネクラスター、ヒューエルセンサーの3件に係わった。
デンソーは電子制御ユニット(ECU)と
ヒーター操作パネル(HCP)の2件に係わった。

矢崎総業の罰金は470百万ドルで、これは米独禁法(Sherman Act)での2番目に大きい罰金となる。
デンソーの罰金は78百万ドル。

過去最高額は1999年にスイスのF. Hoffmann-La Rocheがビタミンカルテルで支払った5億ドル。

ビタミンカルテルはリジンカルテルを契機に摘発された。クエン酸カルテルに関するHoffman-LaRocheなどの調査でビタミンカルテルの存在が分かった。

米・スイス・独・日・加の計11社に総額9億1050万ドルの罰金  
 武田薬品 72百万ドル  
 エーザイ 40百万ドル  
  第一工業製薬 25百万ドル  
  Roche 500百万ドル  
  BASF 225百万ドル  
  Merck  14百万ドル  
  Degussa-Huls  13百万ドル  
  Lonza 10.5百万ドル  

別途、矢崎総業の4人が15か月から2年の禁固刑を受ける。2年は米独禁法で外国人の禁固刑では最長となる。
(下記の通り、
ブリヂストン社員がマリンホース国際カルテルで2年の禁固刑を受けている。)

O氏、T氏 各15か月
H氏、K氏 各2年

4人はまた、それぞれ2万ドルの罰金を支払う。 

付記

米司法省は3月26日、デンソーの社員 I氏が有罪を認め、1年と1日の禁固刑、2万ドルの罰金を言い渡されたと発表した。.

既報の通り、古河電工は9月29日、米国司法省との間で、自動車用ワイヤーハーネス係るカルテルに関して以下の内容の司法取引に合意した。(DOJ 発表

 1.罰金200 百万米ドルを支払う。

 2.社員3名が有罪を認め、禁固刑に服する。
     F氏 1年と1日
     N氏 15か月
     U氏 18か月

2011/10/4 古河電工、自動車用ワイヤーハーネス・カルテル問題で米国司法省と合意 

司法省によれば、日本の自動車部品3社の罰金合計は748百万ドルとなり、昨年度の独禁法の罰金合計を超えた。

付記

米司法省は4月23日、フジクラが米国での自動車用ワイヤーハーネス等のカルテルで有罪を認め、20百万ドルの罰金を支払うことで合意したと発表した。


矢崎総業は日本でも、ワイヤーハーネスカルテルで96億円(1社に対する課徴金額として過去最高額)、建設・電販向けでは72.6億円、VVFケーブルでは24.6億円の課徴金支払い命令を受けている。

2012/1/28  公取委、自動車用ワイヤーハーネスのカルテルで課徴金 

ーーー

日本人で米国の独禁法で禁固刑となるのは、9人となる。(3/26 +1名)

 最初はダイセル社員(防カビ剤のソルビン酸価格カルテル)

日本在住であったが、今後一切、海外に行けないのでは仕事にならないため、自ら渡米し、3ヶ月の禁固刑に服した。

2006/2/16 独禁法改正

 もう一人はブリヂストン社員(マリンホース国際カルテル)

現場で逮捕された。有罪を認め、2年の禁固刑と8万ドルの罰金を課せられた。

2008/12/12 マリンホース国際カルテル事件で日本人に有罪判決

 これに自動車部品関連での7人(古河電工3人、矢崎総業4人)が加わった。(+デンソー1名)


実際にはこれ以外に非常に多くが起訴されているが、日本在住の場合は犯罪人引渡条約の対象(両国でいずれも処罰の対象となり両国の法律で死刑、無期懲役、1年以上の拘禁刑に当たる罪の場合)に該当しないため、米国での時効の中断状態となっている。
(米国や欧州などに行った場合は逮捕され、米国で裁判を受ける)

 

付記

米国において罰金が科された日本企業上位10社

  企業 罰金額($) 対象商品
1 古河電工 2011 2億 ワイヤーハーネス
2 シャープ 2009 1億2000万 液晶ディスプレイパネル
3 日本航空 2008 1億1000万 国際航空貨物輸送運賃
4 エルピーダメモリ 2006 8400万 DRAM
5 全日空 2010 7300万 国際航空貨物輸送運賃及び旅客運賃
6 パナソニック 2011 4910万 冷却用コンプレッサー
7 日本貨物航空 2009 4500万 国際航空貨物輸送運賃
8 日立ディスプレイズ 2009 3100万 液晶ディスプレイパネル
9 ブリヂストン 2011 2800万 マリンホース
10 日本通運 2011 2111万5396 国際航空貨物輸送運賃

(注)平成24年1月現在。
(※)古河電工の罰金額については,現時点において連邦裁判所未承認。
(出所)米国司法省反トラスト局ホームページに基づき公正取引委員会作成。

参考 欧州において制裁金が賦課された日本企業上位10社

  企業 罰金額
  (ユーロ)
対象商品
1 YKK 2007 1億5025万 ファスナー
2 三菱電機 2007 1億1857.5万 ガス絶縁開閉設備
3 東芝 2007 9090万 ガス絶縁開閉設備
4 ブリヂストン 2009 5850万 マリンホース
5 日立製作所 2007 5175万 ガス絶縁開閉設備
6 ソニー 2007 4719万 業務用ビデオテープ
7 電気化学工業 2007 4700万 クロロプレンゴム
8 旭硝子 2011 4513万5000 ブラウン管ガラス
9 日本電気硝子 2011 4320万 ブラウン管ガラス
10 日本航空 2010 3570万 燃油サーチャー

 (注)平成24年1月現在。
(出所)欧州委員会ホームページに基づき公正取引委員会作成。

http://www.jftc.go.jp/teirei/h24/120118siryou.pdf
 

 

 

ExxonMobil とベネズエラ国営石油会社Petroleos de Venezuela, S.A. (PDVSA)の間のベネズエラによる石油の国有化を巡る争いで、2011年12月、国際商業会議所はPDVSA側に非常に有利な決定を行った。

2007年にベネズエラは石油の国有化を決め、各石油会社は国営石油会社 PDVSAと条件交渉を行なった。
Chevron、Total、BP、StatoilHydroはPDVSAの条件を呑み、Minority partner として操業を続けることとした。

しかし、Exxon Mobil はこれを拒否した。同社は油田国有化で損害を被ったとして補償を求めて訴訟を行い、米欧の裁判所は2008年に同国が支払いに応じなかった場合に備え、PDVSAが海外に保有する資産を差し押さえる命令を下した。

米ニューヨーク連邦地裁は3億ドルの現金、英裁判所は120億ドルまでの資産の差し押さえを命じた。

既報の通り、PDVSAは米国に子会社CITGOを持つが、社債等が大きく、社債権者が優先権を持つことから除外された。

その後、英裁判所はPDVSAの資産(120億ドルまで)の凍結命令を撤回した。判事は、このような凍結命令は稀であり、重大な国際的不正の強い証拠があるときに出されるが、今回のケースはそのようなものではないとした。
PDVSAは英企業でないうえ、英国内にまとまった資産を保有していないというPDVSAの主張も認めた。

ExxonMobilは世界銀行付属の国際投資紛争解決センター(ICSID)に提訴した。これに対し、ベネズエラ側はパリに本部を置く国際商業会議所(ICC)に問題を提起した。

ICSID ( International Centre for Settlement of Investment Disputes )  は、「国家と他の国家の国民との間の投資紛争の解決に関する条約」のもとに設立された。この条約は1965年に署名が開始され、翌1966年に発効した。

2011年12月の国際商業会議所の裁定は、PDVSAがExxonMobil にネットで746.9百万ドルを支払うというもので、接収資産の簿価にほぼ等しい。

裁定額は907.6百万ドルだが、PDVSAのExxonMobilへの債権(ロイヤリティや税金)161百万ドルを控除した。

907.6百万ドルは1997年に両社で結ばれた契約に基づくもので、1997年の原油価格(27ドル/bbl)を基に、2035年までの失われた収益を高い割引率で現在価値に換算したものであり、資産の評価額ではない。

PDVSAはこの裁定を受け入れ、この額からNew York で凍結されている300百万ドルとExxonのベネズエラ子会社の債務191百万ドルを除外し、残りの255百万ドルを支払うとしている。

ExxonMobilは当初、接収資産の補償として120億ドルの資産の差し押さえを求めたが、英国裁判所が凍結命令を撤回したため、2010年に70億ドルを要求して仲裁を求めた。今回の裁定はExxonMobilの要望の1/10に過ぎない。

ExxonMobilはこの裁定に同意せず、ICSIDの判断を待つ構え。

チャベス大統領は1月8日の国営テレビ番組で、ExxonMobilが過去50年間、税金も払わず大もうけしてきたと指摘し、120億ドルの要求の不当性を訴えた。

米国が決定的な影響力をもつICSIDがいかなる裁定を下そうとも、ベネズエラとしては従わず、場合によってはICSIDからの脱退もありうることを示唆した。

 

 

米の石油会社Hess Corporationとベネズエラ国営石油会社Petroleos de Venezuela, S.A. (PDVSA)の50/50JVの合弁会社HOVENSA L.L.C. は1月18日、米領Virgin Islands のSt. Croix の製油所を2月半ばに閉鎖し、石油貯蔵ターミナルに転用すると発表した。

過去3年だけで13億ドルもの赤字を出しており、今後もこれが続く見通しのため、閉鎖を決めた。

同社によると、赤字の理由は、世界的な不況による石油精製製品の需要の減少と、新興成長市場での新製油所の建設によるもので、これが過去3年で欧米で18の製油所(合計精製能力 日量200万バレル以上)の閉鎖の原因となっている。
また、天然ガス価格の低下も同社にとって不利に働いているとしている。

同製油所は1966年にHess により建設され、その後能力を増強、1998年にPDVSAとのJVとなり、現社名に改称した。

精製能力は日量50万バレルで、原油を輸入し、製品のガソリン、ディーゼル油、灯油、ジェット燃料、ケロシンなどをメキシコ湾岸や米国東海岸に販売している。32百万バレルのタンクも所有している。

ほかにBTX設備を持ち、能力はベンゼン 15万トン、トルエン 25万トン、混合キシレン 25万トンとなっている。

ーーー

PDVSAは米国に100%子会社のCITGO Petroleum Corporationを持っている。

同社は元々、1910年に設立されたCities Service Companyである。1965年に商標をCITGOとした(社名の初めに"Go"を付けた)。

1982年にOccidental Petroleum が買収したが、1983年に当時7-ElevenのオーナーであったThe Southland Corporationがコンビニチェーンへのガソリンの安定供給のために買収した。

1986年9月にPDVSAが50%を買収、1990年1月に残りも買収し、100%子会社とした。

CITGOは以下の3つの製油所を持つ。

 ・Corpus Christi Refinery 日量165千bpd、ガソリン生産 日量 420万ガロン
    ・Lake Charles Manufacturing Complex  日量425千bpd、ガソリン生産 日量 880万ガロン
    ・Lemont Refinery(イリノイ州)  日量167千bpd、ガソリン生産 日量 400万ガロン 

このほか、1993年にLyondellとの合弁会社Lyondell-Citgo(Lyondell 58.75%)を設立した。
Houstonに268千bpdの製油所を持っていたが、両社の関係が悪化し、2006年8月にLyondellがCitgoの持株41.25%全てを買取った。(PDVSAとの間で、230千bpd、5年間の原油供給契約を締結した)

 

 

最近のコメント

月別 アーカイブ