2013年5月アーカイブ

韓国の原子力安全委員会は5月28日、稼働中や建設中などの原発6基の安全装置に、性能確認試験の結果を示す書類が偽造された部品が使われ、一部は緊急時に十分機能しない不良品であることを確認したと発表した。

事故発生時に冷却装置を作動させる信号を送る「制御ケーブル」が、カナダでの性能確認試験の書類が偽造された不良品と判明した。

委員長は「問題になった制御ケーブルの原本の試験成績書を分析した結果、問題部品が試験を通らなかったにもかかわらず検査を担当した業者の職員がこれを偽造した」と説明した。

問題の6基は 、稼働中の新古里2号機と新月城1号機、点検停止中の新古里1号機、運転の許可審査中の新月城2号機、及び建設中の新古里原発 3~4号機。

安全委は稼働中の2基を停止させることを決めた。ケーブル交換には最低4カ月かかる見通し。
計画予防整備中の新古里1号機に対して整備期間を延長して不良部品を交換するよう、現在運営許可の審査段階である新月城2号機は運営許可前までに部品を交換するように 命じた。

  韓国の原発

韓国には原発が23基あるが、整備などで既に停止中の8基を含め10基の稼働が止まることになる。
この場合、原子力発電所全体の設備容量2071.6万キロワットのうち37%の771.6万キロワットを稼動できなくなる。

現在、古里1・2号機、新古里1号機、ハンピッ(もと霊光)3号機、月城 1・2号機、 ハンウル(もと蔚珍)4・5号機の計8基が停止中。
また6月8日には月城3号機の計画予防整備が予定されている。

韓国政府は、夏場の電力需要がピークに達する8月第2週に200万キロワットの供給不足が予想される「類例のない電力難」になると国民に節電を求めている。
産業部は今月末に国家政策調整会議を経て電力受給総合対策を発表する。



韓国の原発一覧 (ハンウルは元の蔚珍、ハンピッは元の霊光)

 

 

運転開始 原子炉形式 容量
 kW
 最近のトラブル

書類偽造

2012/11 今回
ハンウル

1

1988/9/10 加圧軽水炉 (PWR) 95万 2011/12 復水器の異常で停止
2012/8/23
異常を知らせる信号が点灯、停止
   
2 1989/9/30 加圧軽水炉 (PWR)  95万      
3 1998/8/11 加圧軽水炉 (PWR)  100万   稼働のまま交換  
4 1999/12/31 加圧軽水炉 (PWR)  100万 2011/9 定修で伝熱管の亀裂発見。
蒸気発生器自体の交換が必要と判明(1-2年要)
  停止中
5 2004/7/29 加圧軽水炉 (PWR) 100万     停止中
6 2005/4/22 加圧軽水炉 (PWR) 100万      
新ハンウル 1 2012/5 着工 KSNP (APR-1400) 140万      
2 2012/5 着工  KSNP (APR-1400) 140万      
3  計画 KSNP (APR-1400) 140万      
4  計画 KSNP (APR-1400) 140万      
ハンピッ

 

1

1986/8/25 加圧軽水炉(PWR) 95万      
2 1987/6/10 加圧軽水炉(PWR) 95万      
3 1995/3/31 加圧軽水炉(SYSTEM80)  100万   稼働のまま交換 停止中
4 1996/1/1 加圧軽水炉(SYSTEM80)  100万   稼働のまま交換  
5 2002/5/21 KSNP(OPR-1000)  100万 2012/10/2 蒸気発電機の水位低下し、停止 停止  
6 2002/12/24 KSNP(OPR-1000) 100万 2012/7/30 故障で自動発電停止 停止  
月城 1 1983/4/22 CANDU  67.8万     停止中
2 1997/7/1 CANDU 70万     停止中
3 1998/7/1 CANDU 70万     停止予定
4 1999/10/1 CANDU 70万      
新月城 1 2012/7/31 KSNP(OPR-1000) 100万 2012/8/19 制御棒制御系統の故障で停止(稼働19日目)   運転停止
2 試運転中 KSNP(OPR-1000) 100万      
古里 1 1978/4 加圧水型(PWR) 55.6万 2012/2/9 電源喪失で停止、1か月以上隠ぺい   停止中
2 1983/7 加圧水型(PWR) 60.5万 2011/6 継電器の設計ミスで停止   停止中
3 1985/9 加圧水型(PWR) 89.5万 2011/12  タービン発電機に過電圧で停止    
4 1986/4 加圧水型(PWR) 89.5万      
新古里 1 2011/2 加圧水型(PWR) 96万 2012/10/2 制御系統の故障で停止   停止中
2 2012 加圧水型(PWR) 96万     運転停止
3 建設中 加圧水型(PWR) 134万   交換  
4 建設中 加圧水型(PWR) 134万   交換  


韓国では昨年来、上の表のとおり、原発の停止が相次いでいる。

2012/10/6   韓国で原発停止相次ぐ

更に昨年にも品質保証書の偽造事件があった。

韓国知識経済部は11月5日、原発の部品供給業者8社が外国機関の発行する品質保証書を偽造し、原発事業者の韓国水力原子力に部品を納入していたことが分かり、光州地検に捜査を依頼したと発表した。

偽造保証書で納入された部品は、ヒューズやスイッチなどの消耗品で、全体の98.2%が霊光原発5・6号機に使用された。

韓国水力原子力は霊光原発5・6号機の運転を同日から停止し、該当部品を交換する。
霊光原発3・4号機と蔚珍原発3号機にも数十個ずつ使われたが、交換対象の部品が少なく、運転中に取り換えられる。

大統領直属原子力安全委員会の原発部品官民合同調査団は12月10日、「建設中の新古里原発3・4号機の消火水ポンプ用制御パネルの耐震試験成績書が偽造されたことを確認した」と明らかにした。 このパネルが不良品であれば火災が起きた時に消火水ポンプはまともに作動できなくなる。

「納品業者がこの部品に対する耐震性能試験検査を受けていないにもかかわらず、検査を受けたかのように試験成績書を偽造した」と話した。

ーーー

日本のハイテク企業が韓国に生産拠点や研究所を相次いで設置している。

地理的に日本と近く、人件費、電気料金、税金などのコストが日本より割安なことが理由だ。

特に3.11震災後は電気が大きな要因となっている。

東レは2011年6月に、韓国・慶尚北道の亀尾国家産業団地で炭素繊維工場の起工式を行ったが、日覚昭広社長は「日本では電気料金がどれだけ上がるか分からないので、積極的に韓国への投資を増やすことにした」と説明した。

エネ庁  電気料金 国際比較(グラフ内の数字は日本の料金に対する比率)
  

韓国の電気代が安い第一の理由は、発電単価の安い石炭と原子力で発電電力量の約8割をまかない、かつ韓国の寒冷な気候のため日本と比べて原子力の設備利用率が高い(95%以上)ことである。

これに加えて、韓国の電気料金は「政策的料金」という位置づけのもと、料金をコスト以下に設定している。
電気料金が原価割れしている国は、OECD加盟国のうち韓国だけである。

これ以外にも、韓国はいろいろの問題を抱えている。

2011/9/28  韓国の電力事情

今後、電気料金の大幅な引き上げや、大停電のおそれがある。



米司法省は5月21日、米自動車部品販売を巡るカルテルでデンソーの2人が罪を認め、禁固刑と罰金支払いで合意したと発表した。

これまでの経緯 2012/8/21 米自動車部品販売巡るカルテルで矢崎総業幹部に禁錮刑

同省の発表では、米国の自動車部品販売を巡るカルテルでの処分は9社、14名となる。

企業:日系7社と他2社の合計9社

      罰金
古河電工 2011/9 ワイヤーハーネス 200 百万ドル
矢崎総業 2012/1 同上 470百万ドル
デンソー 2012/1 electronic control units (ECUs)
heater control panels (HCPs)
78百万ドル
 ジーエスエレテック
(デンソー関係会社)
2012/4 antilock brake systems 2.75百万ドル
フジクラ 2012/4  wire harnesses 20百万ドル
Autoliv Inc
(Stockholm)
2012/6 seatbelts, airbags and
steering wheels
14.5百万ドル
TRW Deutschland
(米社独子会社)
2012/7 seatbelts, airbags and
steering wheels
5.1百万ドル
日本精機 2012/8 自動車用計器 1百万ドル
東海理化 2012/10 ヒーターコントロールパネル 17.7百万ドル


個人:古河電工3名、矢崎6名、デンソー4名、山下ゴム1名の計14名

  氏名  発表 or 合意書  禁固 罰金
古河電工 J. F. 2011/10/24 1年+1日 各人
2万ドル
H. N. 2011/10/13 15か月
T. U. 2011/11/10 18か月
矢崎総業 T. H. 2012/1/30 2年
R. K. 2012/3/26 2年
S. O. 2012/3/26 15か月
H. T. 2012/3/26 15か月
T. S. 2012/8/16 14か月
K. K. 2012/9/26 14か月
デンソー N. I. 2012/3/26 1年+1日
M. H. 2012/4/26 14か月
Y. S. 2013/5/21  16か月
H. W. 15か月
山下ゴム H. Y. 2012/11/16  12か月+1日

日本人が米国の独禁法違反で禁固刑となるのは、これまで2名のみであったが、一気に16名となった。

ダイセル社員のH. H.氏 (防カビ剤のソルビン酸価格カルテル)
   2006/2/16
独禁法改正

ブリヂストンのM. H.氏(マリンホース国際カルテル)
   2008/12/12 マリンホース国際カルテル事件で日本人に有罪判決

それまでも多数が起訴されているが、日米犯罪人引渡条約の対象に該当しないため、米国での時効の中断状態となっている。
(他の国では犯罪人引渡条約の対象になる国が多く、米国以外に旅行して米国に引き渡される恐れがある。)

前者海外に行けないのでは仕事にならないため、自ら渡米し、刑に服したもの。
後者は
現場で逮捕された。

今回、14名もが刑に服するのは、米国の強い姿勢の結果であると思われる。

推測だが、企業との和解交渉で、責任者が罪を認め、刑に服することを条件にしたのではないかと思われる。
企業がこれに応じない場合、和解ではなく裁判になり、有罪となれば
、独禁法の規定で賠償額が3倍になる恐れがある。

Dow Chemical のポリウレタン独禁法違反裁判では、陪審員の罰金4億ドルの決定に対し、裁判官は3倍の12億ドルの決定を下した。

今後、米国で独禁法違反となれば、責任者が禁固刑というのが一般的になる可能性がある。



ミャンマー訪問中の安倍晋三首相は5月25日、ヤンゴン市内で行われた日本・ミャンマー経済セミナーに出席し、「官民一体となってミャンマーの国づくりを支援したい」と表明した。具体的には電力網や水道、道路などのインフラ整備を挙げたほか「人材教育に注力していく」と訴えた。

セミナーに先立ち視察したヤンゴン近郊のティラワ経済特区(Thilawa SEZ)にも言及し、「日本とミャンマーの経済協力の象徴だ。絶対に成功させなければならない」と力説した。

5月26日にはテイン・セイン大統領と会談し、共同声明を発表した。

日本政府はミャンマーの発展を支援するため約2千億円の対日債務を解消し、インフラ整備支援などのため910億円のODAを2013年度末までに順次実施する。
ミャンマー政府の制度整備や人材育成を重視。日本からの技術協力の重要性を共有し、発展させていく。
両国間の貿易・投資を含めた経済関係の強化のため、投資協定の早期署名に向けた作業を加速化。技術協力協定に向けて努力し、ティラワ経済特区開発などに協力する。

ミャンマーの開発にはインフラ整備がまず必要となる。
発電の7割を水力が占め、ダムの水量が減る乾期終盤の4~5月には停電が頻発する。

同国では天然ガスの開発が進むが、外資獲得のため、自国では余り使用せず、主にタイにパイプラインで輸出している。来月には中国へのパイプラインでの輸出が始まる。


ミャンマーでは3つの経済特区計画がある。

  先行するのは北部のチャウピュー(Kyaukpyu)で中 国が開発しており、既に中国向けの原油とガスのパイプラインが完成している。
  
2013/5/24  パイプライン万里長城が完成


ヤンゴン南部のティラワ(Thilawa SEZ)は日本が担当する。

南部のDawei SEZはタイが担当するが、出遅れている。

 


ティラワ経済特別区(Thilawa SEZ

ミャンマー政府はThilawaを環境モデル都市にし、その都市づくりをヤンゴンに生かそうとしている。

日本政府とミャンマー政府は2012年12月、「ティラワ経済特別区開発のための協力覚書」に署名した。
2012年4月の首脳会談の際に閣僚級で署名されたティラワ・マスタープランに関する意図表明文書を受けたもの。

協力覚書の主要な内容は以下の通り。

両政府はヤンゴン市南東のThilawa SEZ(約24平方キロ)の開発を協力して行う。
両国の投資家はThilawa SEZの区域開発者として共同事業体を設立する。
Thilawa SEZの商業的運用を2015年に開始する。


三菱商事、丸紅、住友商事の3社は2013年4月、Thilawa SEZにおける工業団地先行開発エリア(4.2平方キロ)の事業化調査や環境影響調査等を行うため、共同で、エム・エム・エス・ティー有限責任事業組合を設立した。

F/S及び環境影響調査等の完了は今年秋頃を目標とし、周辺環境への影響、ミャンマー政府による住民移転への対応等を慎重に見極め、先行開発エリアへの投資判断を行う。

Thilawa SEZの問題点は住民が立ち退き補償を求めてミャンマー政府と対立している ことである。
立地はティラワ港の後背地の水田地帯で、土地はすべて国有で、農民は使用権を持つ。予定地に隣接して政府分譲の工場用地があり、最近高額で取引されたこともあり、農民は高額の補償金 を求めている。

同地は1997年に工業団地造成で収容されたが、造成計画が宙に浮き、当局は収用した農地について、補償金を受け取った農民や新たに入植した農民に5年期限で貸し出し た経緯がある。

ミャンマー政府は2012年12月の「協力覚書」締結の後、住民を「不法占拠者」扱いし、「2週間以内に退去せよ。従わなければ30日間、刑務所に拘留する」と通告 、住民の移転先も用意していない。(その後、当局は退去命令を「延期」した。)

問題がこじれると、スケデュールが遅れる可能性がある。

ーーー

ダウェー経済特区(Dawei SEZ)

Dawei SEZは2008年にミャンマーとタイの両国が開発で合意した。

2010年にタイの大手建設会社Italian-Thai Development Corporation Limited (ITD) が250平方キロの土地について60年間の事業権利と75年間の租借権を得て、開発に着手した。
しかし、実際は1社では開発資金をまかないきれず、地元住民の移転や周辺土地と一部道路の整備程度しか進んでいない。

2012年7月のタイのインラック首相とテイン・セイン大統領との会談で、Dawei 開発の仕切り直しが行われ、両国政府が協力して進めることで合意、Dawai開発の特別目的事業体(SPV)に土地の開発権と租借権がITDから移管される。

Dawei SEZの開発面積はThilawa SEZの10倍あり、港湾や発電所などのインフラ整備だけで1兆円とされる。

このため、タイ政府とミャンマー政府は日本にも参加を要請した。
2012年9月に日タイ・ワーキンググループ調整委員会会合が開催されたが、テーマの一つが
Dawei SEZであった。
但し、
両国はあくまでThilawa SEZ優先ということで合意している。

 1997年の金融危機時のタイの財務大臣のDr. Thanong Bidayaは5月27日の講演で、タイと日本がインドシナ半島のCLMV各国(カンボジャ、ラオス、ミャンマー、ヴェトナム)を共同で開発することを提案、一例としてDawei SEZを挙げた。日本抜きでは無理としている。


タイ側ではPTTが
Dawei SEZをLNGとLPGの貯蔵基地として利用することを検討している。


ミャンマー南部ではTotalがYadanaガス田を、PetronasがYetagunガス田を開発中で、2007年にはタイのPTTEPがZawtikaガス田を発見した。

Yetagunガス田 を含むM-12、M-13、M-14鉱区はPetronasが40.9%、PTTEPが19.3%、Myanma Oil and Gas Enterprise が20.5%、JX日鉱日石開発が19.3%の権益を持つ。
Yetagunガス田は
2000年5月から天然ガスの生産を開始し、タイ石油公社PTTにパイプラインで販売している。

JX日鉱日石はこのほか、M-11鉱区にも権益を持つ。
 (PTTEP 45%、TOTAL 40%、JX日鉱日石 15%)

現在、両ガス田から天然ガスがタイのRatchaburi発電所まで パイプラインで輸送されている。

PTTはZawtika ガス田とYetakun ガス田からDaweiへのパイプラインを建設することを検討しており、長期的には、Daweiに港と年間500万トンのLNG基地、LPG基地を建設、DaweiからMap Ta Phutまで天然ガスパイプラインを建設する計画。

PTTは現在のところはミャンマーの需要を勘案し、Daweiに製油所や石油化学基地をつくる考えはないが、状況が変われば検討するとしている。

ーーー

カンボジャ、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナムのメコン川流域諸国は大メコン経済圏経済協力開発プログラムを推進している。

その経済活動の動脈となる道路整備については、まず東西経済回廊が2006年に開通、続いて南北経済回廊、南部経済回廊の整備が進められている。Daweiは南部経済回廊の起点で、バンコクを経てベトナムのHo Chi Minh市とQuy Nhon市に通じる。

PTTはベトナムQuy Nhon市のニョンホイ経済特別区に日量66万バーレルの製油所と石油化学コンプレックスを建設する計画を持っている。


 

 

Dow Chemicalは5月24日、K-Dow問題でKuwait国営のPetrochemical Industries Company (PIC)から損害賠償として受け取った22億ドルのうち、20億ドルを2013年中に借入金返済に使用することを明らかにした。

ーーー

国際商工会議所の国際仲裁裁判所は2012年5月24日、Dow とKuwait国営のPetrochemical Industries Company (PIC) との間のK-Dow Petrochemical に関する調停結果を発表した。

PICがK-Dow Petrochemical 設立の契約を破棄したため、Dowが損害を被ったとして訴訟を行い、最終的に調停を求めることとしたもの。

仲裁裁判所はPIC側に責めがあると認定し、PICに対しDowへの21.6億ドルの損害賠償支払いを命じた。金利と費用はこれに追加される。

事態と経緯については、2012/5/25     Dow、石化JV中止問題での調停で勝利、21.6億ドルを獲得

その後2013年3月4日に国際仲裁裁判所は最終金額を発表した。金利と費用は318百万ドルで、これを加えると合計24.8億ドルとなる。

Dowは2013年5月7日、PICから22億ドルを受け取ったと発表した。
これは仲裁裁判所の決めた21.6億ドルにDowのコストを加えたもので、金利を免除する代わりに、KuwaitにおけるDowの事業についての罰則措置に関し好意的な合意を取り付けたとしている。

ーーー

Dowは第2四半期に16億ドル程度の借入金を返済する。
6月24日には2015年満期の利率5.90%の借入金12.5億ドルを返済する。
このほかに、InterNote債と免税債の返済を第2四半期内に行う。

更に追加の4億ドルの返済を下半期に計画する。

22億ドルの借入金返済により、年間ベースで支払金利が1億ドル以上減少する。

Dowは2008年末のK-Dow計画破綻で、予定していたRohm & Haas買収資金が失われ、これを多額の借入と資産売却で切り抜けたが、今回の返済で同社の資本/負債比率は2008年危機の前のレベルに戻ることとなる。

Andrew N. Liveris CEOはこれを誇るとともに、「重要なことは、Dowは業界を主導するプラスチック事業を完全保有している」と述べている。

同社は当初、原料価格の変動で業績が左右される基礎部門の強化を"asset light" strategy「資産を持たない、減らす」戦略 ) 、即ちJV化を通して行う方針を明らかにしており、PEPPPC、エチレンアミン、エタノールアミンをPICとの50/50JVのK-Dowに出す予定であった。

しかし、その後のシェールガス革命を受け、Dowは米国の石油化学を再評価し、エチレン、プロピレンの大々的な投資を始めている。

2011/4/26 ダウ、エチレンとプロピレンの拡張計画を発表

PICが断ってくれたおかげで、今後高収益が期待される樹脂事業を売らずに済み、更に22億ドルを受け取ることとなった。

 

Dowへの22億ドルの支払いで国会の追及を受けていたKuwaitの石油相が5月26日に辞表を出し、受理されたと報道されている。

Kuwaitでは国会の会派 Popular Action Bloc の議員が政府と対立、DowとのJV合意の際にも問題視し、反対運動を展開していた。






原子力規制委員会は5月22日、定例会議を開き、日本原子力発電敦賀原発2号機の原子炉建屋直下を走る断層を「活断層」と断定した有識者会合の報告書を了承した。

日本原電はこれまで強く反論してきたが、規制委は、得られたデータから十分判断できると、主張を受け付けなかった。

  焦点となるのは、2号機の真下を横切る「D-1」断層。

規制委はD-1断層の延長上で見つかったK断層が活断層だと指摘。K断層とD-1断層はつながっており、D-1も活断層の可能性があると判断した。

一方、原電はK断層の横にあるG断層 がD-1断層の延長部だと主張、G断層には最近動いた痕跡がないため活断層ではなく、G断層につながるD-1断層も活断層ではないと主張した。

原電の依頼を受けて第三者の立場から同断層について調査した海外の専門家などによる検討チームの中間報告が5月21日に発表された。
中間報告では断層は活断層ではないとした原電の見解を「支持する」としながら、確定的な結論には「より広い範囲を調査する必要がある」としている。

メンバーの地質学者 Dr. Kelvin Berryman は「非常に限られたデータしかないが、現時点では活断層はないと考えられる。活断層であることを示すデータは一切なかった」と述べた。

古い断層の評価は技術的に極めて困難で、両者とも直接的な証拠は示してない。
規制委が最終的にD-1は活断層と判断したのは、原発の耐震設計指針に「可能性を否定できなければ耐震設計上考慮する活断層とみなす」との規定があるため。

島崎邦彦委員長代理は5月22日の規制委で「否定できないものは安全側の判断をする」と明言した。

会合のあと、記者会見をした田中委員長は2号機の運転について「活断層が原子炉の下にあることを、国の指針では想定していない」と述べて、再開は難しいという認識を示した。

一方で「新たなデータが出てきて結論が変わることまでは否定していない」と述べた。

ただ、6月まで続く日本原電の独自調査で今回の結論を覆すのは極めて難しく、敦賀原発2号機は事実上、運転ができず、廃炉になる可能性が高くなる。

ーーー

実際に廃炉するとすれば、多くの問題が出てくる。

日本で廃炉を終えたのは日本原子力研究開発機構の小型の試験炉だけ。

原研JRR-4(濃縮ウラン軽水炉1MW)
東海村で1963年10月26日に日本初の電力発電、1976年3月18日運転終了、1996年3月31日解体終了。


現在、廃炉が決まっている炉の廃炉解体予定は次の通りで、長期にわたる。

    運転開始   能力
万KW
運転終了 解体終了予定
日本原子力
 東海
1号機 1966/7/25 英国製黒鉛
減速ガス冷却炉
16.6 1998/3/31 2020年度
中部電力
 浜岡
1号機 1976/3/17 BWR
(Mark-1)
54.8 2009/1/30 2036年度
2号機 1978/11/29 84.0
東京電力
 福島第一
1号機 1971/3/26  BWR
(Mark-1)
46.0 廃止
2012/4/19
2050年
2号機 1974/7/18  78.4
3号機 1976/3/27 78.4
4号機 1978/10/12 78.4
日本原子力
研究開発機構
 
敦賀
ふげん 1978/3/20 新型転換炉 16.5 2003/3 2028年度


東海原発の解体日程は以下の通り。



費用については、電力会社9社が出資する日本原子力発電によると、標準的な原子炉1基の解体から放射性廃棄物の処分までに必要な廃炉費用が、2002年6月の段階で約550億円といわれていた。

東海第二原発 (出力110万kw) をモデルにした試算で、モデルでは解体費用が388億円、原子炉圧力容器などの放射性廃棄物の処理・処分費用が157億円、合計で545億円という見積もりを根拠にしてい る。

しかし、実際に解体が始まっている東海原発1号機の場合、廃炉費用を885億円としている。

電力各社は40年操業を前提に廃炉費用を引き当てしているが、実績が見積もりを上回れば、引当不足で損失となる。

今回の敦賀2号機の場合、運転開始は1987年7月であり、26年しか経っておらず、大幅引当不足となる。

なお、放射性廃棄物の処理処分方法は以下の通りとなっている。

放射性廃棄物は性状・放射能レベルに応じ、減容、固化等の処理後、貯蔵庫一時保管し、廃止措置期間終了までに廃棄施設に搬出する。
廃棄先が確定できない場合は、安全貯蔵期間を延長する。

実際には廃棄先が簡単に決まるとは思えない。取り出した燃料の処理方法も未定である。

 

参考  日本の原発の現況 https://www.knak.jp/blog/genpatsu-list.htm

 


D8(Developing 8=イスラム途上国8カ国)の石油化学会議が5月20日、テヘランで開催され、イラン、トルコ、マレーシア、ナイジェリア、エジプトの5か国が出席した。

D8は1997年にトルコ首相の提案で設立されたイスラム教徒が多い途上国のグループで、メンバーは上記5か国のほか、バングラデシュ、インドネシア、パキスタンの8か国。

この会議でトルコとエジプトが、イランが提案していたOPECに類似する国際的な石油化学製品の組織、石油化学製品輸出国フォーラム(Petrochemical Exporting Countries Forum :PECF) の設立に同意した。イランのTVがイラン石油化学協会会長の発言を伝えた。

近く国際組織設立の手続きや憲章作成のため、他のイスラム諸国との交渉を始めるとしている。

会長は「イラン、トルコ、エジプトの3か国で石油化学OPECの核が出来た。カタールやサウジアラビアが交渉に参加する」と述べた。
会長は2012年11月には、他にUAEやロシアも候補に挙げている。

以前のOPECのような価格カルテルになる可能性はほとんどないと思われる。

ーーー

同様の組織としては、ロシア主導で2008年に設立されたGas Exporting Countries Forum (GECF)がある。

2008/12/26 天然ガス版OPEC?設立

 メンバーは以下の通り。

正式メンバー
(13か国)
アルジェリア、ボリビア、エジプト、赤道ギニア、イラン、リビア、ナイジェリア、
カタール、ロシア、トリニダード・トバゴ、ベネズエラ、
(追加加盟) オマーン、UAE
オブザーバー
(4か国)
カザフスタン、ノルウェー
(追加)オランダ、イラク

このフォーラムの加盟国は、世界の天然ガス総生産量の42%、世界の天然ガス埋蔵量の70%、そして輸送パイプラインによって移送されるガスの38%と、世界の液化ガスの取引の85%を占めてい る。

しかし、GECFは、当初懸念されていたガス版カルテルにはなっていない。

特に最近は米国のシェールガス革命で市場の状況が大きく変わり、欧州の死命を制するかと懸念されたロシアの天然ガスの 重要性が減少、ロシアはアジアに目を向けざるを得なくなった。
今回の米国のFTA非締結国へのLNG輸出承認で状況は更に変化する。


2012年11月に
赤道ギニアの首都マラボで開かれた第14回閣僚会合では、シェールガス増産を背景にガス消費国から見直しを求める声が強まっている原油価格連動方式が議論された。




ミャンマー西部の港町チャウピュー(Kyaukpyu)から中国雲南省の昆明まで800kmに達する石油とガスのパイプラインが5月初めに完成し、中国がマラッカ海峡を経由せずミャンマーの天然ガス と中東等の原油を輸入できるようになった。

早ければ来月から、韓国の大宇インターナショナルのコンソーシアムがミャンマー西部海洋で採掘したガスがこのパイプラインで昆明に送られる。来年からは原油も輸送される。

5月20日付の韓国の中央日報が伝えた。

パイプラインのルートは以下の通り。

下の写真(大宇インターナショナル)はミャンマー中部のマンダレー付近の山中を通過する"パイプライン万里長城"。

第二次世界大戦で日本軍により重慶に追われた蒋介石の国民党に物資を供給するため、連合軍が険しい山中に建設し 、1945年1月に完工した「ビルマロード」に沿っており、現地ではパイプライン万里の長城と称されている。


ミャンマー西岸のインド洋では石油とガスの採掘が大々的に行われている。

韓国の大宇インターナショナルは2000年にA-1鉱区で ミャンマー最大規模のポテンシャルのShwe/Shwe Phyu ガス田を発見、その後、インドのOil and Natural Gas Corp に17%、Myanmar Oil & Gas Enterpriseに15%、インドのGAILと韓国のKogasに各8.5%を譲渡、大宇 の権益は51%となった。

更に同コンソーシアムは隣接するA-3鉱区でMyaガス田を発見、合計の可採埋蔵量は4.5~7.7兆立方フィートとされる。

重慶市政府は2004年末にミャンマーから雲南省昆明市まで原油パイプラインを建設し、その後昆明から重慶市まで延長するという計画を国務院に提出した。
中国の輸入原油の約8割はマラッカ海峡を経由しているが、このパイプラインが完成すれば、中国は中東原油の輸入ルートを複数持つこととなる。

ミャンマー軍事政権は2007年4月、PetroChinaに 、ミャンマー西部ラカイン州沖合で開発中のShwe/Shwe Phyu ガス田のガス購入権と、同州西部の港湾都布チャ ウビューから中国に向けたガスと原油のパイプラインの共同建設を認める決定をした。

2008年6月にPetroChinaはミャンマー政府や大宇グループのコンソーシアムとA1およびA3鉱区における天然ガスの販売・輸送に関する了解覚え書きに調印した。

天然ガス価格は100万英熱単位当たり7.72ドルで2013年から30年間の供給。

軍事政権は2008年11月、石油と天然ガスのパイプライン の経営権を中国に付与した。

チャウピュー(Kyaukpyu)近郊のマデ島にガス集荷基地と石油タンカー専用港を建設し、中部マンダレー近郊、シャン州ラーショーなどを経由して中国との国境の町ムセから昆明へと結ぶ。
石油と天然ガスパイプラインは平行して走り、全長771km。
中東などからの原油の年間輸送量は1200万トンで、将来輸送量を2200トンまでアップする。
天然ガスはA-1、A13ガス田から送る。

事業主体となる企業にはPetroChinaが50.9%、ミャンマー国営石油ガスが49.1%を保有する となっていたが、その後、大宇コンソーシアムメンバーが参加を表明、PetroChina 50.9%、大宇 25.04%、ONGC 8.35%、GAILlとKogasが各4.17%、ミャンマー国営石油ガス7.37%となった。

総事業費は石油パイプラインが15億ドル、天然ガスは10億4935万ドル。

石油タンカー専用港は中国が20年間の使用権を持つ。

軍事政権に払われる使用料などは年間10億ドル以上と見積もられている。

2009年10月31日、マデ島で着工式が行われた。

 



2013年3月決算がほぼ出揃った。

主な企業の営業損益、当期損益の対比は以下の通り。

 

営業損益  
 
 

営業損益は企業により大きく異なる結果となった。

多くの企業、特に石油化学関係の業績が年を追って悪化しており、2011/3>2012/3>2013/3となっている。

三井化学が典型である。

下記企業も大幅減益だが、好調な事業が石化等の減益を大きくカバーした結果での大幅減益である。

三菱ケミカルは医薬品が、住友化学は情報電子化学と健康農業関連、医薬品が石油化学の減益をカバーしている。

旭化成も住宅と医薬・医療が、帝人はヘルスケアがカバーした。

日本触媒は爆発事故の影響で減益となった。トクヤマは多結晶シリコンの損益が激減した。

逆に、強みを持つ製品の貢献で増益となった企業もある。

信越化学はシンテックが好調で、半導体シリコンの減益を補い、増収増益となった。

積水化学は住宅の損益が急上昇、全社利益の半分以上を占める。高機能プラスチックも好調。

クラレも若干の減益となったが、ポバール製品等が好調で高水準の利益を継続した。

なお、多結晶シリコンについては、トクヤマの2008年3月期の「特殊品」(ほとんどが多結晶シリコン)の営業損益は300億円程度もあったのがゼロになった。信越化学の信越半導体グループも同じ期に1330億円の営業損益を計上していたが、2013年3月期は200億円程度と推定される。

液晶パネルの例に見られるように、グローバル化の進展で市場の状況が短期間で激変するようになった。

ーーー

当期損益  
 
 

当期損益では、業績悪化を受け、減損処理等で多額の特別損失を計上した企業が多い。

住友化学は千葉工場のエチレンを停止することに伴うものとと、レゾルシンと偏光フィルムの環境変化に伴うもので229億円の減損損失を計上、更に事業構造改善費用として108億円を計上した。
更に、赤字計上に伴い繰延税金資産の見直しを行い、350億円の法人税等調整(損失)を行った。

三井化学事故損失 (保険金でカバー)、事業再構築の減損損失56億円、関連事業損失41億円などを特別損失に計上した。

帝人も炭素繊維他で減損損失294億円を計上した。

トクヤマ特別損失に多結晶シリコンとその併産品の乾式シリカ設備の減損損失や棚卸資産評価損を計上した。

 

  

医薬メーカーの決算は以下の通り。

 

各社の決算のポイントは以下の通り。

武田薬品

   営業損益:前期比 1425億円減

増収により339億円増益となったが、販売費・一般管理費が1764億円増加した。

うち、研究開発費 424億円増、
   販売費 503億円増、労務費 402億円増、その他のれん・無形固定資産償却費増などで1340億円増

   特別損益&税金:

特別損益は前期 -179億円に対し、当期は165億円で、差引 344億円の増益

   投資有価証券売却益 531億円、
      インフルエンザワクチン政府助成金 228億円、
      減損損失 -436億円(特許権、販売権等)
   事業構造改善費用 -252億円(海外従業員削減計画等) (前期は -355億円)

税金では移転価格税制による還付を過年度法人税等として-574億円を計上(益)
これの還付加算金(利息)151億円を特別利益に計上 (合計725億円の益)

還付加算金は2010年以降は年4.3%で、国税庁は理解不能の更正決定を行い、結果として武田に大きな利益を与えたこととなる。

   当期損益:経常損益ベースでは前期比-1572億円であったが、当期損益は逆に71億円の益となった。

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アステラス製薬

   営業損益:前期比 223億円増

増収により307億円の増益、研究開発費 78億円減、その他販管費 162億円増

   特別損益:前期比 243億円減(減損損失 前期比 255億円増)

   当期損益:前期比 46億円増

ーーー

田辺三菱製薬

   営業損益:ほぼ前期並み

増収となったが、薬価改定の影響で売上総利益は前期比20億円減益、販売費、一般管理費は研究開発費の減で20億円増益。

   特別損益:前期は-50億円、当期は-16億円で、差引34億円の増益となった。

特別損失には、関係会社のベネシスと日本赤十字社の血漿分画事業統合による資産処分損 23億円や、HCV訴訟損失引当20億円などがある。減損損失は前期比 26億円減。

   当期損益:29億円の増益。

ーーー

第一三共

   営業損益:前期並み(増収により142億円の増益、一般管理費 138億円増)

   経常損益:前期比229億円の増益

インド子会社Ranbaxyがデリバティブ取引をしている。
前年は評価損 165億円、本年は評価益 64億円で、差引営業外損益が 229億円の増益となった。

   特別損益:前期は423億円の損、当期は70億円の損で、差引353億円の増益。

前期にはインド子会社Ranbaxyの米司法省との和解金引当399億円(500百万ドル)がある。

米国食品医薬品局(FDA)は2008年9月16日、ランバクシー・ラボラトリーズの医薬品30種以上の輸入を一時停止した。

医薬品の安全性に問題はないが、ランバクシーのインドのデワスとパオンタ・サヒブにある2つの工場で、製造器具の洗浄状況、生産管理、品質管理などに関する記録の保存に関して問題が改善されていないためとしている。
また、FDAが1月から3月にかけて問題の2工場を査察した際、抗生物質の取り扱い方法にも問題が発見されたという。

2011年11月に、ランバクシーは米国食品医薬品局(FDA)と同意協定書を締結、データの信頼性を確実にするための手段や方針を更に強化し、現行の適正製造基準を遵守することを確約した。

同時に米国司法省との案件の解決に向け、500百万米ドルを引き当てた。

2013年5月14日、第一三共はランバクシーの米国司法省との協議が終結したと発表した。支払額は引当と同じ500百万ドルとなった。

   当期損益:税引き前損益が前期比582億円増となり、法人税等調整を含め、純損益では562億円の増益となった。

ーーー

エーザイ

   営業損益:前期比252億円の減

販売管理費(450億円減)、研究費(47億円減)は減少したが、売上高が743億円減った影響が大きかった。

   当期損益:102億円の減益となった。

ーーー

大正製薬

   営業損益:前期比31億円の減益

売上総利益は40億円の増、研究費は9億円の減で、合計49億円の増益となったが、販売費、人件費、情報関連費用等が増加し、合計で減益となった。

   当期損益:

投資有価証券評価損の前期比減少などで、特別損益が前期比22億円の増となり、法人税等も21億円の減となって、差引20億円の増益となった。

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塩野義製薬

  営業損益:118億円増

増収に加え、原価率の改善、コスト削減、米国事業の集積の改善等で増益

  特別損益:

抗HIV薬に関するViiVとの契約締結に伴い、シオノギViiVヘルスケア簿価とViiV株式10%の時価との差額404億円を特別利益に計上。
同時に米国事業の販売権とノレンの減損で408億円の特別損失を計上。

これを受け、単体決算では株式評価損1101億円を計上。(連結決算では影響なし)

  2012/11/2  塩野義製薬、HIV治療薬JVの枠組み変更

   法人税等:前期比 229億円減

単体決算での株式評価損で税金等の費用が大きく減少したため、連結での税金は-85億円となった。(前期 144億円)

   当期損益:前期(271億円)比396億円増の667億円となった。次期予想は370億円。

ーーー

大日本住友製薬

   営業損益:前期比46億円の増益

薬価改定の影響などによる減収で売上総利益は55億円減となり、研究開発費は30億円増えたが、
経費削減で販売費・一般管理費が131億円減となった。

なお、一般管理費には米国でのSepracor Inc.(現在のSunovion Pharmaceuticals )買収に伴う特許権とのれんの償却費 が含まれるが、前期は277億円、当期は259億円であった。

   当期損益:

特別損失に事業構造改善費用(前期比36億円増の48億円)などを折り込み、当期利益は前期比14億円増となった。



基礎化学、石油化学の減益が大きく、減益となった。

特別損益に多額の減損損失、事業構造改善費用を計上、当期損益は511億円もの赤字となった。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2011/3 19,824 880 841 244 3 6
2012/3 19,479 607 507 56 6 3
2013/3 19,525 450 503 -511 6 0
前年比 46 -157 -5 -567 0  -3 
2014/3 23,500 900 900 300 6 3

 

営業損益対比(億円)           
  2011/3 2012/3 2013/3 前年比 2014/3
予想
基礎化学 206 93 -64 -157 0
石油化学 111 62 -32 -94 50
情報電子化学 261 110 117 7 340
健康・農業関連 233 265 263 -2 340
医薬品 287 209 309 99 320
その他 41 77 80 2 50
全社 -260 -209 -222 -12 -200
合計 879 607 450 -157 900


基礎化学部門は合成繊維原料の市況下落と数量減、メタアクリル、アルミニウムなどの市況の下落で大幅減益となり、石油化学とともに赤字に転落した。

情報電子化学と農薬は前期並みの損益を維持、医薬品は増益となった。
情報電子化学では、液晶ディスプレイ材料の偏光フィルム、カラーフィルムの価格が下落したが、偏光フィルムの数量は増えている。

次期予想では石油化学は黒字、情報電子化学はスマートフォン用タッチパネルや偏光フィルムの出荷増で約3倍の利益を見込む。

営業損益の大幅減少のなか、経常損益ではほぼ前年並みとなり、当期損益は大幅な赤字となった。
この理由は以下の通り。(単位:億円)

  2011/3 2012/3 2013/3 前年比
営業損益 880 607 450 -157
営業外損益 受取利息・配当金 67 77 76 -1
支払利息 -130 -124 -128 -4
持分法利益 108 20 54 35
為替差損益 -66 -37 68 104
その他 -18 -35 -17 19
合計 -39 -100 52 152
経常損益 841 507 503 -5
特別損益 投資有価証券売却益 98 -98
減損損失 -32 -36 -229 -193
事業構造改善費用 -41 -64 -108 -44
投資有価証券評価損 -47 -47
持分法投資損失 -260 260
その他 -11 -7 4 11
合計 -84 -268 -379 -111
税引前当期利益 757 239 123 -116
法人税等 348 83 527 444
(うち 法人税等調整額) (36) (-195) (350) (545)
差引 損益 409 156 -404 -561
少数株主利益 164 101 107 6
当期純利益 244 56 -511 -567


営業外損益では為替差損益が前年比で104億円の益となった。

特別損益には差引379億円の損失を計上した。

 1)減損損失 229億円

千葉 エチレン等   63
2015/9目処に千葉エチレン停止
大分  レゾルシン  66 事業環境悪化で収益性低下
中国 偏光フィルム  57 環境変化で事業計画見直し(建設途中)
ポーランド 偏光フィルム  32 営業停止を決定


住友化学は2月1日、国内石油化学事業の拠点の千葉工場の競争力強化のため、2015年9月(次の定修時期 )までに、エチレン製造設備(定修スキップ年能力415千トン)を停止すると発表した。
このため、千葉工場のエチレン等の設備の減損損失を計上した。

2013/2/4 住友化学、エチレン国内生産から撤退

これ以外に、事業環境悪化で収益性が低下しているレゾルシンと偏光フィルムについて減損処理を行った。

レゾルシンの世界需要は約6万トンとされ、能力も約6万トンで、うち住友化学が30千トン、三井化学が7.6千トンであった。
しかし、中国でレゾルシンの反ダンピング調査を要請した浙江鴻盛化工
Zhejiang Hongsheng Chemical が2万トンの設備を完成させていることが分かった。

このため、事業環境が悪化しているとみられる。三井化学のレゾルシン工場は2012年4月に爆発事故を起こし、再建を断念し、昨年末に事業撤退した。

偏光フィルムについては上記のとおり利益を計上しており、来期も増益を見込んでいるが、需給状況の悪化を受け、中国計画を見直し、ポーランドについては営業停止を決定した。

なお、中国計画については、2012年9月に日経新聞が「中国生産を白紙にする方向で検討に入った」と報道したのに対し、同社は、需要の伸びが緩やかなこと、既存プラントの生産性があがったことから、稼働時期を見合わせているだけと述べている。

 2)事業構造改善費用 108億円

これには千葉工場の石油化学分が(減損損失のほかに)17億円含まれている。

 なお2012年3月期の持分法投資損失260億円は豪州農薬会社のNufarm の株式評価損。


税金は、前年は持分法投資損失(評価損) で減る予定の税金を繰延資産に計上し、法人税等調整額がマイナス(利益)になったが、本年は赤字計上に伴い繰延税金資産の見直しを行い、350億円の法人税等調整(損失)を行った。

税引後損益は404億円の大幅赤字となったが、子会社のなかで利益の大きい大日本住友製薬(出資比率は50.12%)などの利益の他株主帰属相当分が少数株主利益として控除されるため、純損益は511億円の赤字となった。

 

大日本住友製薬の実績は以下の通り。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2011/3 3,795 310 286 168 9 9
2012/3 3,504 204 189 86 9 9
2013/3 3,477 250 245 100 9 9
前年比 -27 46 56 14    
2014/3 3,690 260 250 130 9 9


営業損益はSepracor Inc.(現在のSunovion Pharmaceuticals )買収に伴う特許権とのれんの償却費259億円を控除したのちのもの。
前年は277億円であった。



米エネルギー省は5月17日、テキサス州のFreeport LNGに対し、日本などFTA非締結国への輸出を承認したと発表した。同社の計画には中部電力と大阪ガスが加わっており、2017年にも日本への輸出が始まる見通し。

Freeport LNGは2005年にテキサス州FreeportのQuintana IslandにLNGを海外から輸入してガスに戻す設備を完成させたが、米国内でガスの採掘が進んだため、天然ガスの液化設備を建設してLNGの輸出基地に替えることを決め、2010年にエネルギー省に輸出認可を申請した。
2011年2月には米国とFTAを締結している国に対する輸出認可を得ている。

米国はLNGを戦略物質とみなし、輸出を個別の許可制にしている。唯一の例外は本土48州に輸送不可能だったアラスカのKenai LNGの輸出だった。
米国は輸出承認に際し、米国とFTAを締結している国とそれ以外で差をつけており、FTAを結んでいない日本はガス輸入のハードルが高い。


これまで非締結国に対する輸出承認を得たのは2011年5月のCheniere EnergyのSabine Pass LNG Terminalのみである。
   2012/2/24 米国からのLNG輸入問題

その後、オバマ政権はLNG輸出に向け動き始めたが、Dow Chemicalなどが反対運動を起こしている。

2012/12/7 米エネルギー省、LNG輸出に向けての報告書を発表

2012/12/12 Dow、エネルギー省のLNG輸出に関する報告に反論

後記の通り、Freeport LNGにはDow Chemicalが出資しており、そこに輸出承認が与えられたのは皮肉である。

本ブログは米国政府によるLNG輸出承認制度はWTO規則違反であるとの見方をしている。
    
2013/2/5 米国の天然ガス輸出規制はGATT違反? 

なお、LNGの輸出が制限されているため、天然ガスの需給が緩み、価格が低下しており、倒産した会社も出た。
   2013/4/5 米国のシェールガス開発会社が破産法申請

ーーー

今回、エネルギー省はFTA非締結国向けの2番目の輸出承認をFreeport LNGに与えた。

1日当たりの輸出量を14億立方フィート (LNG換算で年900万トン)までに限定し、申請は25年間ではなく20年間に短縮して輸出を認める条件を設けることで、「(米国の)公益に反しない」と判断した。

承認理由として、以下を挙げている。

反対派は承認が公共の利益に反するという証拠を示していない。
輸出は米国にとり net economic benefits となると思われる
承認により、天然ガスが供給不足になったり、天然ガス価格上昇や著しい価格変動を起こすことは考え難い。
  http://energy.gov/sites/prod/files/2013/05/f0/ord3282.pdf

Freeport LNGは年間440万トンの能力の液化設備3系列を建設中で、2017年に液化事業を開始することを目指しているが、下記の通り 2系列分について契約を締結している。

大阪ガスと中部電力は2012年7月31日、天然ガス液化加工契約に関する契約を締結した。
第1系列の液化設備においてそれぞれ年間約220万トンずつの天然ガス液化能力を確保した。
大阪ガスはFreeport のLNG基地事業にも参加している。(後記)

大阪ガスは2012年6月22日、米国テキサス州イーグルフォード地区のPearsall Shale ガス・オイル開発プロジェクトに参画することを決め、Cabot Oil & Gas Corporationとの間で、権益35%を250百万米ドルで取得すること等を定めた権益売買契約を締結した。

同社と中部電力は東京ガスとともに三菱商事が参画しているカナダシェールガス開発プロジェクトにも参加した。 
  2011/5/14 中部電力、東京ガス、大阪ガスと
JOGMEC、カナダシェールガス開発プロジェクトに参加 

BP Energyは2013年2月、年間440万トンの天然ガス液化加工契約に関する契約を締結した。

残る1系列分については、今回のFTA非締結国向けの承認枠を超えるため、既に承認を得たものを含むFTA締結国向けになるとみられる。

ーーー

Freeport LNGの概要は以下のとおり。


Dowは2003年にFreeport LNGに参加した。LNGを海外から輸入してガスに戻すために利用していた。
同社は
DowはFreeport LNGによるLNG輸出計画には反対してきたが、2012年にこの65億ドルの液化計画に参加しないことを発表した。

三菱商事は2005年1月にLNG受入基地に係わる17年間の使用契約を締結した。
同社は2004年7月にOmanのQalhat LNGとの間でLNGの長期購入契約を締結しており、これを再気化して、主にテキサス州の需要家に販売する。

大阪ガスは2008年1月30日、Contango Oil & Gasとの間で、同社が保有する米国のフリーポートLNG基地事業の全持分を譲り受けると発表した。
この事業のための特別目的会社 Turbo LNG LLC を通じて同プロジェクトに10%出資した。

この時点ではLNGの輸出は検討されておらず、LNGの輸入ー再気化事業である。
ConocoPhillips、Dow Chemical、三菱商事の3社が最大25年間に渡り基地を使用する契約を締結済みであり、長期に渡る安定した収益が見込まれるとしていた。

ーーー

今後、米国の天然ガス価格は100万BTU当たり6ドルになるとの説があるが、それでも、LNGへの加工費3ドル、輸送費3ドル(メキシコ湾岸)を加えても12ドル程度であり、現在の原油価格スライドの約16ドルと比べ、かなり安くなる。

但し、現在のLNG輸入価格は単なる原油スライドではなく、震災後の買いあさりで割高になっているもので、長期的にみれば米国からのLNGはそれ程有利でないかも分からない。


ーーー

日本企業では他に下記の各社が米国産LNGの輸入を計画し、輸出認可を待っている。

東京ガスは2013年4月1日、米国のDominion Cove Point LNGから住友商事を通じて年140万トンのLNGを輸入すると発表した。
関西電力も同日、年80万トンを輸入すると発表した。
     https://www.knak.jp/blog/2012-4-2.htm#sumisho

三菱商事と三井物産は2013年5月17日、米国のSempra Energyの子会社であるCameron LNGとの間で、それぞれ、天然ガス液化加工契約及び合弁会社設立契約(液化事業への参加)を締結したと発表した。
     https://www.knak.jp/blog/2012-4-2.htm#LNG




SK Capital Partners は5月1日、Chemtura Corporationの酸化防止剤と紫外線安定剤(UV stabilizer)事業の買収を完了したと発表した。
2012年11月に売買契約を締結したもので、
対価は約2億ドル。

新会社 Addivantを設立する。同社は ポリマー、プラスチック、ゴムの性能向上に使われる酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、 阻害剤 (inhibitor)、樹脂改質剤、紫外線安定剤を含む包括的な添加剤を扱う。

Chemtura は2005年にCrompton とGreat Lakes Chemical が合併して設立された会社で、樹脂添加剤では世界最大のメーカー。
ほかに農薬、石油添加剤、ウレタンポリマー等を生産している。農薬は旧Uniroyal の事業。

Crompton 1999年に Crompton & Knowles と塩ビ添加剤メーカーのWitco が合併して出来た。
Crompton & KnowlesUniroyalの事業を買収している。

Great Lakes Chemical は水処理剤、家庭用クリーナー、難燃剤、安定剤等のメーカー。

Chemtura は2006年に旧Uniroyalの事業のEPDMとゴム薬事業をLionに売却した。
      2006/11/14 
合成ゴム会社 Lion Copolymer, LLC

Chemtura は2009年3月に米国の事業に関して Chapter 11 の申請を行ったと発表したが、2010年11月20日、財務リストラが完了し、Chapter 11から離脱したと発表した。

2009/3/21 Chemtura、民事再生法申請

ーーー

SK Capital Partners はニューヨークを拠点とする非公開株式会社で、同社の戦略は、Specialty Materials &Chemicals とHealthcare分野のニッチ市場のリーダー企業を買収することにある。

同社はこれまで、下記の事業を買収している。

買収企業  製品 取得 相手
Aristech Acrylics acrylic sheet 2008/4 三菱商事
Ascend Performance Materials Integrated Nylon Business 2009/6 Solutia
Calabrian Corporation sulfur dioxide and downstream derivatives 2011/5  
IBA Molecular radiopharmaceutical products 2012/4 Ion Beam Applications
TPC Group C4 hydrocarbons 2012/12  
  Textile Chemicals, Paper Specialties,  Emulsions 2012/12 Clariant
Addivant Antioxidant and UV Stabilizer 2013/5 Chemtura


第1号事業が三菱商事から買収したAristech Acrylicsである。

Aristech Chemical 化学品(フェノール、アセトン他)、ポリマー製品(ポリプロピレン他)の製造販売を行っていた。

1989年にHuntsmanがAristechの買収を計画した。Aristechはこれを拒否、一時は住友化学にもPPを分離してJVにする提案もしたが、1990 年に三菱商事が買収提案を行い、Huntsmanが買収を諦めたため、三菱商事による買収が確定した。買収額は850百万$だが借入金の引継ぎなどをいれると 10億$以上となるといわれた。

当初同社には三菱化成、三菱油化、三菱瓦斯化学、三菱レーヨンが各4.48%出資して三菱グループ総力を挙げて取り組む姿勢を見せたが、その後、 三菱商事100%となった。

2000年11月、三菱商事はAristechをSunocoに売却した。アリステックを買収して以来、石油化学品事業の戦略において、北米の橋頭堡として位置づけてきたが、原料価格の上昇を製品価格に転化しきれず、採算が大幅に悪化していた。譲渡価格は固定資産及び棚卸資産の合計で695百万ドル、これにその他の資産・負債を加減した金額になる。

1997年にアリステック・ケミカルのアクリル樹脂事業部門を分離独立し、三菱レイヨンが10%出資し、Aristech Acrylics LLC を設立したが、これはスノコへの売却資産には含まれず、三菱商事が88%出資で残っていた。

ーーー

SK Capital Partnersは2009年6月、Solutia Inc. からのナイロン事業買収を完了した。新しく Ascend Performance Materials を設立した。
買収金額は50百万ドルで、Solutiaは新会社の2%を受け取る。更に2011年以降4年間、毎年1百万ドルを受け取る。

Solutiaは1997年9月にMonsantoの化学部門が分離独立して設立された会社である。

Monsantoは1901年設立の化学会社だが、1985年にバイオケミストリー分野での事業展開のため、G.D.Searle を買収した。
1997年に化学部門をSolutia として分離した。

なおMonsantoは
1998年に American Home Products と合併で合意したが、破談となっている。
2000年4月にPharmacia & Upjohn と合併し、Pharmacia となった。

Pharmacia は2002年に農薬部門を再度 Monsanto として分離した。
Pharmaciaは2003年にPfizer に買収された。

Solutia は2003年12月、連邦破産法11条申請を行った。
2008年2月、会社更生手続き(Chapter 11)を終了し、再生に向けスタートした。

  2008/3/4 Solutia、破産手続き終了

2012年1月、Eastman Chemical がSolutia Inc. の買収を発表した。

  2012/2/3  Eastman Chemical、Solutia を買収

Solutiaのナイロン事業は主に、自動車、建築、輸送、産業用に機能材料を生産するが、主要製品は以下の5つ。

・Saflex®:合わせガラス用 polyvinyl butyral (PVB) 中間膜
・CPFilm® :窓ガラス用フィルム
・Nylon Plastic & Fibers:アジピン酸、ヘキサメチレンジアミン、Nylon 66、ナイロン繊維
・Flexsys® :合成ゴム加硫剤
・Specialty Products :高温合成系熱媒体、航空機用作動油、航空機用洗浄溶剤、
    ポリビニルブチラール樹脂、ジフェニルオキサイド

同社は2008年6月に「原料やエネルギー価格などに左右されやすく、景気循環の影響を受けやすい」ナイロン事業をどうするか検討のためコンサルタントと契約を締結していた。

ーーー

SK Capital Partnersは2011年5月、二酸化硫黄と関連製品のメーカーのCalabrian Corporation を同社のオーナーと共同で再構築することを決めた。

ーーー

SK Capital Partners は2012年4月、 IBA(Ion Beam Applications S.A.)から IBAの radiopharmaceutical divisionを分離独立させたIBA Molecularの 60% を買収した。残り40%はIBAが所有する。

同社の製品はPositron Emission Tomography (PET)やSingle-Photon Emission Computed Tomography (SPECT)などで使用される。

ーーー

SK Capital Partnersは2012年12月、エネルギー分野での投資会社のFirst Reserve Corporationと共同で、ブタジエン、ブテン-1、イソブチレンなどC4留分専業会社の TPC Groupを買収した。
買収額は負債込で約850百万ドル。

TPC Groupは旧称Texas Petrochemicalsで、元々は1943年に米国政府が合成ゴム製造促進のためにつくったRubber Reserve Co.である。
その後、合成ゴム事業は各社に分離され、同社は現在はC
4留分の専業会社となっている。
2000年にDIBに進出、2006年にHuntsmanからMTBEとブタジェンのプラントを購入している。

ーーー

SK Capital Partnersは2012年12月、Clariant のTextile Chemicals, Paper Specialties, Emulsions 事業を買収する契約を締結した。
買収金額は約5億ドルで、SK Capital は年金債務の一部を負担する。

 

 


下記の件、それぞれ以前の記事に付記しました。

1) Dowに独禁法違反で12億ドルの支払い命令、Dowは控訴する。

2013/2/27   Dow Chemical、ポリウレタン独禁法違反裁判で有罪

2) 三井物産と三菱商事、米国産LNG輸出プロジェクトで天然ガス液化加工契約及び合弁会社設立契約を締結

2012/4/20 三菱商事と三井物産、米国産LNGを輸入へ

 



安徽省合肥市の合肥國軒高科動力能源有限公司 (Hefei Guoxuan High-tech Power Energy) は上海市松江区で自動車用のリチウムイオン電池工場の建設を計画していたが、反対運動を受け、5月15日に事業計画を撤回すると表明した。用地を当局に返還、補償は求めないとしている。

この企業は当初、約10億元(約167億円)を投じて工場を建設する計画であった。

しかし環境汚染を心配する地元住民が工場建設に反対、4月21日に続き、5月に入り何度も数百人が計画撤回を求めてデモ行進した。
5月11日には1000人以上がデモした。

これに対し地方政府は、電池の工程には材料(anodeとcathode)製造とバッテリーセルの製造、組み立ての3工程があるが、今回の工場は材料製造を含まず、後の2工程のみであり、廃水やガスを正しく処理すれば環境汚染の懸念は全くないと説明した。

上海化工研究院は昨年9月に環境評価報告を発表し、環境汚染の可能性はほとんどないとした。
報告では廃水は出さないとしているが、地方政府は毎日5トンの廃水を出すと述べている。

このため、住民はこの報告の信頼性を疑っている。

昨年末には上海化工研究院がアンケートを取り、68%が計画に賛成との結果を得ており、計画に賛成する住民は、デモに参加した数百人は近くの住民8万人のほんの一部であり、公聴会を開催すべきだと主張していた。
しかし、計画に反対する住民は逆に、このアンケートの対象は8万人の住民のうちのたった150人に過ぎないと反論し、公聴会を求めた。

工場側は住民の反対を受け、計画を撤回した。

ーーー

中国では環境汚染を懸念する工場建設反対運動が相次いでいる。

雲南省昆明市では5月4日、PetroChinaの石油化学工場の建設に反対する住民約1千人が市中心部の広場に集まった。
5月16日にも数百人がデモを行った。

PetroChinaは本年2月、昆明市郊外での精製事業について中国国家発展改革委員会(NDRC)から承認を受けたと発表した。
NDRCへの提出資料ではガソリンなどのほか年産50万トンのパラキシレン(PX)も生産するとなっている。

新華社によると、昆明市の市長は、市民の反対が多ければ計画を中止する方針を表明した。

中国ではパラキシレンは非常に毒性の高いものとの認識があり、各地で反対運動が起こっている。

2006年11月に台湾資本のDragon Group(騰龍グループ)が福建省厦門の海滄投資区で芳香族とPTAプラントの建設に着工した際に、「事故が起こると何千トンもの毒物が放出される」といった内容の記事がインターネットに次々掲載され、反対運動が広がったのが始まりである。

2007/6/11 中国のインターネット反対運動が石化計画を止める

2011/8/15 中国・大連で化学工場の撤去求め デモ

2012/10/30   寧波で大規模デモ受け、SinopecのPX増設取り止め

四川省成都市でも5月4日、PetroChina が建設中の成都彭州石油化学に反対するデモが呼びかけられたが、地元当局が「地震対策訓練」に名を借りて警察官を大量動員し、抑え込んだという。

成都彭州石油化学はPetroChinaが75%、成都石化(PetroChina と成都市のJV)が25%出資する。
80万トンのエチレンコンプレックスに加え、10百万トンの製油所を建設するもの。

住民は空気と水の汚染を懸念するとともに、地震の巣である地域での建設に反対している。
彭州市は、2008年に死者行方不明9万人を出した四川大地震(中国では汶川大地震)の震源地の汶川県と同じ断層帯にある。

PetroChinaでは、この計画は中国の環境当局とNDRCの承認を得ており、地震に対しても評価を受けているとし、空気と水の問題は重視しており、もし環境問題が発生すれば工場を停止すると約束した。

ーーー

2012年7月には江蘇省南通市にある王子製紙の工場から出る排水が環境汚染を引き起こす恐れがあるとして、住民1万人以上が抗議デモを始めた。

南通市政府が経済技術開発区に王子製紙などを誘致する際、廃水を南通市が建設する約100kmのパイプラインで黄海に排出すると約束していた。完成後、王子製紙の工場から1日15万トンが排水される予定だった。

住民の反対を受け、南通市政府はパイプライン建設計画を「永遠に」取り消した。

2012/8/1 王子製紙の排水に抗議、中国江蘇省でデモ 

 

 

昨日の記事の通り、欧州の塩ビ業界は供給過剰による困難に直面しており、塩ビ業界での名門のSolvayが将来の撤退を前提にINEOSとの塩ビ事業統合を決めたが、TotalグループのArkemaは2012年7月 に塩ビ事業をコモディティ製品に特化するKlesch Group に売却した 。

 2011/11/30 Arkema、塩ビ関連事業を売却

Klesch Groupは1990年にスイスで設立されたコモディティ事業の企業で、メタルと石油を扱う。
メタル部門はオランダに精錬能力165千トンのDelfzijl BV (ALDEL)を持つ。

プラントはリストラなしで移管、従業員はそのままとし、Arkemaから経営陣を派遣、Klesch Group の下でこれを欧州の塩ビ産業のリーダーとするとしていた。

この取引では赤字の事業をリストラなしで引き取ってもらうため、売る側のArkemaが買い手のKlesch Groupに100百万ユーロを支払う。
これを含めてArkemaは2011年に470百万ユーロの費用を計上した。

Arkemaは残る2つのスペシャルティ部門(Industrial Chemicals、Performance Products)に集中する。

新しいPVC会社はKEM ONEと名付けられた。

Klesch Group は同社を電解~PVCまでのKem One SASと、コンパウンド、窓枠、塩ビ管を扱うKem One Innovative Vinyls SASの2社に分離した。

同社の概要は以下の通り。

能力(千トン)
塩素 660
苛性ソーダ 730
VCM 870
PVC 870
コンパウンド 170
窓枠 35
塩ビ管 45

 

  Vauvertで岩塩から塩水をつくり、近くのFos-sur-Mer とLavéraにダクトで送る。

Fos-sur-MerとLavéraで塩素/ソーダ、VCMを製造、BalanとSaint-AubanでPVCを製造する。

他に、下記にコンパウンドや塩ビ安定剤の工場を持つ。

 メキシコ   Resinoplast North America
 埼玉   昭島化学工業
 江蘇省常熟市
    Changshu Resichina Engineering Polymers
 Vietnam 
     Resinoplast Vietnam

 



本年3月、Klesch Group はArkemaに対し、310百万ユーロの損害賠償を求めた。

塩ビ事業の売買に当たり、PVC資産について正しい財務情報を開示しなかったというもの。

塩ビ事業を取得し8か月経つが、取引に際してArkemaが開示した財務情報と現在の状況に著しい差が見付かったとし、これらが分かっておれば、あの条件での取引はなかったとしている。

またArkemaが経営陣を派遣するとしていたが、すぐ辞めてしまったとしている。

その後、これまで数か月交渉したが効果がなかったとし、310百万ユーロの賠償を求め、正式に調停を申請した。

3月27日、上流のKem One SASが親会社の Klesch の要請で破産申請した。
下流のKem One Innovative Vinyls SASは"satisfactory".とされている。

ArkemaはKleschの主張を全て否定した。

数か月交渉したという事実も無く、交渉段階でKleschは全ての情報にアクセスできた。
取引は完全な透明性のもとで行われ、証明できる。

問題はKleschがKem Oneを上流と下流の2つの企業に分断したことにあるとし、以下の通り述べている。

塩ビ事業を売却する際には、電解、VCM、PVCからコンパウンド、窓枠、塩ビ管までのパッケージとした。
一貫して運営することがKem Oneの将来の成功のためのキイであった。

スタート時にはKem Oneは健全なバランスシートで、借入金はなく、100百万ユーロの現金の寄付もあった。
KleschはKem Oneのニーズに合った資金計画作成を約束していた。

しかし、Kleschは一方的に上流と下流に分断し、必要な資金を供給しなかった。

Arkemaには現時点でKem Oneへの債権が65百万ユーロと、第三者への保証債務 60百万ユーロ、合計125百万ユーロが残っている。


ArkemaはKleschに赤字事業を押し付けた積りであったが、高くつく恐れがある。

ーーー

欧州塩ビ業界では他に、投資会社のAdvent International が塩ビ子会社 Vinnolit の売却先を探す努力を続けている。
欧州の住宅建築のスローダウンで窓枠やドア材などの塩ビ製品の販売が停滞しているのが理由。

Vinnolit はHoechst とWacker のJVであったが、2000年にAdvent International が買収した。

2007年にVinnolitはINEOSから
ペーストPVC(Emulsions-PVC)事業を 買収した。
英国のHillhouseとドイツのSchkopauのペーストPVC工場を買収するとともに、INEOSのイタリアのPorto Torres 工場で生産するペーストPVC全量の引取り権も得た。

Vinnolit の状況は以下の通り。

能力(千トン):

PVC 780
VCM 665
Caustic soda (100%) 475

工場:

立地 製品   VCM
ドイツ Cologne Microsuspension (paste) PVC
Suspension PVC
Wacker Chemie工場内 鉄道輸送
Knapsack 電解、EDC、VCM、
Suspension PVC
Hoechst 工場内 自製
Gendorf 電解、EDC、VCM、
Suspension PVC
Emulsion PVC
  自製
Burghausen Suspension PVC
Emulsion PVC
Wacker Chemie工場内 Gendorf からパイプ輸送
Schlopau Emulsions-PVC Dow ValuePark内
(旧INEOS)
Dowからローリー輸送
英国 Hillhouse Emulsions-PVC
Microsuspensions-PVC
(旧INEOS) INEOSのRuncornからローリー

 

 

SolvayとINEOSは5月7日、欧州の塩ビ事業を統合し、50/50のJVとする覚書に調印した。
今後、従業員の代表と協議した後、正式契約を締結する。

この覚書には将来のSolvayのJVからの撤退について記載されている。JV設立から4年から6年の間にINEOSがSolvayの持株を全て買取り、100%子会社とするというもの 。

買取価格はREBITDA(経常損益+支払利息+減価償却・減耗費)の平均の5.5倍となっており、SolvayはJV発足時に前渡し金として250百万ユーロを受け取る権利を持つ。

2012年実績ベースでは合計のREBITDAは257百万ユーロとなっており、この5.5倍では1,414百万ユーロとなる。

欧州の塩ビ事業は2007年以来、需要が30%も下落し、輸出も今後減少する見込みで、大幅な供給過剰が予想されており、シェールガス革命の恩恵を受ける米国との原料価格差も今後拡大する。

このため、2012年にTotalグループのArkemaが塩ビ事業をコモディティ製品に特化するKlesch Group に売却した。本件のその後は別記。

そのなかで Solvayは2011年にRhodiaの友好的買収を行い、スペシャルティ化を推し進めており、これはその一環である。
今後、石油・ガス用の特殊ポリマー、水及び健康分野、消費者用化学品(肌ケア、毛髪ケア)などに投資する。

ーーー

統合対象は欧州のクロルアルカリと塩ビ事業で、詳細は下記の通り。

  2012年売上高 対象 対象外
Solvay 19億ユーロ Solvin
(Solvay 75%, BASF 25%)
・塩化ビニリデン
RusVinyl(ロシアのSiburとのJV)
Solvayのクロルアルカリプラント Povoa、Bussi、Torrelavega
製塩プラント(Tavaux、Martorell、 Jemeppe)  
欧州の塩素誘導品
(エピクロルヒドリン、CLM、塩酸、Hypo)
 
フランスFevzinのエチレンの42.5%
(残りの出資はTotal)
 
Ineos 24億ユーロ Kerling
(Ineos ChlorVnyl)
ノルウェー Rafnesのエチレンの50%
(残りはIneos)

Solvayの統合対象は欧州の塩ビ事業だけであり、アルゼンチンとブラジルに工場を持つ子会社のSolvay Indupa とタイのJVのVinythaはSolvayに残る。

KerlingはINEOSの塩ビ事業子会社。

1986年にICIとEniChemが50/50の塩ビ事業JVのEVCを設立した。
2001年にINEOSがEVCの過半を買収、更にICIから塩素化学事業を買収した。
2005年にEVCを100%子会社とした。
  
2006/6/14  事業買収で急成長した化学会社

INEOS は2007年にNorsk Hydro からポリマー事業のKerling 社(旧称 Hydro Polymer)を買収し、INEOSの塩ビ事業をKerlingとした。

INEOSは2011年にベルギーのTessenderloに本拠を置く Tessenderlo Groupから塩ビ関連事業(LVM)を買収した。
 

 統合により、2012年の決算数値ベースでJVの売上高は43億ユーロとなり、PVC能力で信越化学に次ぐ世界第二位となる。


 

 



旭化成

ケミカルズは減益とはなったが頑張っており、住宅と医薬・医療が好調で、若干の減益で止まった。

2014年3月期については、ケミカルとエレクトロニクスの増益を見込む。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2011/3 15,984 1,229 1,182 603 5 6
2012/3 15,732 1,043 1,076 558 7 7
2013/3 16,666 920 951 537 7 7
前年比 934 -123 -124 -21    
2014/3 18,910 1,300 1,300 770 7 7

営業損益対比(億円)           
  2011/3 2012/3 2013/3 2014/3
予想
  前年比 差
増減 売買差  数量差  コスト差
ケミカルズ 644 445 229 430 -216 -59 -53 -104
住宅 365 463 543 600 79 27 91 -39
医薬・医療 70 88 159 205 71 -29 162 -62
繊維 42 31 40 70 9 6 -9 11
エレクトロニクス 143 64 28 100 -36 -59 -40 63
建材 21 18 40 55 21 3 7 12
クリティカルケア     -37 -40 -37     -37
その他 17 30 22 15 -8   -8  
全社 -72 -97 -105 -135 -8     -8
合計 1,229 1,043 920 1,300 -123 -111 150 -164

 


同社の医薬・医療事業の概要は以下の通り。

医療用医薬品 1954年に日本初の国産の抗生物質を開発して以来、独創性の高い新薬を継続して提供している。
骨粗しょう症治療剤「エルシトニン」、排尿障害改善剤「フリバス」錠、抗うつ剤「トレドミン」、血液凝固阻止剤「リコモジュリン」など
診断薬 独自の酵素利用技術を活用した診断薬で健康維持に貢献
ヘルスケア製品 高濃度流動食や粘度調整流動食、栄養補給ゼリーなどの多彩な栄養補給製品を提供
透析 膜分離技術をもとに、人工透析に用いられる中空糸型人工腎臓を開発
アフェレシス
(血液浄化療法)
膜分離技術、吸着技術を用いた各種製品の開発から装置操作、高度な血液浄化治療システムの開発まで積極的に取り組む。
「プラノバ」 ウイルス除去フィルター
血しょう分画製剤やバイオ医薬品の製造工程でウイルスなどの病原物質を除去
輸血用
血液フィルター
超極細繊維の白血球除去フィルター


2012年4月に
米国の救命救急医療機器大手のZoll Medicalの買収を完了した。
同社関連の業績を、「クリティカルケア」セグメントで開示。

2012/3/19 旭化成、米国ZOLL Medical Corporationを買収

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日本触媒

2012年9月29日、姫路製造所のアクリル酸のタンクが爆発した。

ほとんどのプラントが停止、12月に一部プラントの使用停止命令が解除されたが、アクリル酸とそれを使ったアクリル酸エステル、吸水性樹脂(SAP)は下期全期間停止し、現在もまだ停止している。
メタアクリル酸およびメチルメタアクリレートについては、2013年4月30日に一時使用停止命令が解除された。

プラント停止に伴う減収減益と、他の製品の原料・製品の価格差等で大幅な減益となった。
なお、停止期間中の固定費は特別損失に振り替えている。

停止期間中の固定費を含む爆発火災事故に係わる損失(減収損失を除く)8,882百万円を特別損失に計上した。
保険金8,231百万円が入り、特別利益に計上している。

大幅減益となるため、法人税等は74億円減少となった。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2011/3 2,883 298 310 211 10 12
2012/3 3,207 311 331 213 11 11
2013/3 2,695 100 138 84 11 5
前年比 -512 -211 -193 -129 0  -6 
2014/3 3,000 150 180 120 8 8

営業損益対比(億円)           
  2011/3 2012/3 2013/3 前年比 2014/3
予想
基礎化学品 140 134 21 -113 150
機能性化学品 133 165 68 -97
環境・触媒 24 17 14 -2
全社 1 -5 -3 2
合計 298 311 100 -211 150

基礎化学品:アクリル酸、アクリル酸エステル、EO・EG、高級アルコール、その他
機能性化学品:高吸水性樹脂、無水マレイン酸、不飽和ポリエステル樹脂、その他

 

2014年3月期については、下期には姫路製造所の稼働が回復し、生産活動が本格化すると見込み、増収増益を予想している。

ーーー

帝人

炭素繊維を中心とする高機能繊維・複合材料と電子材料・化成品が赤字に転落、大幅減益となった。
ヘルスケアのみが好調で、全社の損益を支えている。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2011/3 8,157 486 503 252 2 3
2012/3 8,544 340 343 120 3 3
2013/3 7,457 124 98 -291 2 2
前年比 -1,087 -217 -245 -411 -1  -1 
2014/3 8,300 250 230 80 2 2


特別損失に減損損失294億円を計上した。内訳は以下の通り(億円)

炭素繊維 日本・ノレン -173
ドイツ・機械装置 -31
米国・機械装置 -19
ヘルスケア 米国・ノレン等 -54
その他   -17

炭素繊維のうち、ノレンは2007年に東邦テナックスを100%子会社化した際の「のれん代」

長期化する景気低迷、またスポーツ・レジャー用途を中心とした競合激化の状況を踏まえ、将来キャッシュフロー予測に基づく回収可能性を慎重に検討して減損処理した。

2013/4/6    帝人、炭素繊維関連で減損処理

ヘルスケアは米国で在宅医療事業を営むBraden  Partners L.P. を2008年に114百万ドルで買収した際ののれん等の未償却残高の一部で、米国での医療制度改革で保険価格が大幅に引き下げられたこと等の環境変化で買収時に想定した収益性が見込めなくなった。
 
その他は2001年の洪水で被災したタイの子会社の工場の固定資産の一部等の減損損失。

営業損益対比(億円)           
  2011/3 2012/3 2013/3 前年比 2014/3
予想
高機能繊維・複合材料 44 72 -47 -119 35
電子材料・化成品 234 37 -19 -57 10
ヘルスケア 229 259 248 -11 250
製品 77 66 47 -19 50
その他 31 37 42 5 40
全社 -131 -131 -148 -16 -135
合計 486 340 124 -217 250


同社のヘルスケア部門には「医薬品」と「在宅医療」がある。

 医薬品:

骨粗鬆症治療剤は後発品を含む他社新薬の伸張で厳しい状況が続く。

そのなかで、痛風・高尿酸血症治療薬「フェブキソスタット」が国内・海外共に順調に販売を伸ばしている。

 在宅医療:

国内外で約40万人の患者にサービスを提供している。

 在宅酸素療法(HOT)用酸素濃縮装置
 睡眠時無呼吸症候群(SAS)治療器:携帯電話網でモニタリング
 補助換気療法機器
 超音波骨折治療器 など

 

 

 

三菱ケミカルホールディングス

営業損益は前年比で403億円の減益となったが、石油化学(ケミカルズ、ポリマーズ)がほぼ同額の減益で、ともに損益ゼロとなっている。

製品と原料の価格差が1000億円もあり、石油化学がそのうち700億円。(ケミカルズでは主としてテレフタル酸関係)

エレクトロニクスアプリケーションズは前年に引き続き赤字。

ヘルスケアが好調で、全営業利益の80%強を占める。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2011/3 31,668 2,265 2,239 836 5 5
2012/3 32,082 1,306 1,336 355 5 5
2013/3 30,886 902 871 186 6 6
前年比 -1,196 -403 -466 -169 1  1 
2014/3 35,700 1,580 1,430 510 6 6

営業損益対比(億円)           
  2011/3 2012/3 2013/3 2014/3
予想
  前年比 差
増減 売買差  数量差  コスト
削減
その他
ケミカルズ 530 148 -2 145 -150 -289 113 34 -8
ポリマーズ 550 238 1 225 -237 -429 73 82 37
エレクトロニクス
アプリケーションズ
10 -53 -51 -10 2 -45 -15 62 0
デザインド
マテリアルズ
365 256 225 450 -31 -62 -30  87 -26
ヘルスケア 851 764 749 800 -15 -194 153 6 20
その他 45 61 65 50 4   0 13 -9
全社 -86 -108 -85 -80 23     12  11
合計 2,265 1,306 902 1,580 -403 -1,018 294 296 25

注 エレクトロニクス・アプリケーションズ:記録材料、電子関連製品、情報機材
   デザインド・マテリアルズ:食品機能材、電池材料、精密化学品、樹脂加工品、
                   複合材、無機化学品、化学製品


2014年3月期については、円高の修正による増益効果と、機能商品・素材分野における需要回復と拡販による増益を見込む。


田辺三菱製薬の業績は以下の通りで、薬価改定の影響はあったが、新製品6品目の伸びが大きく、純利益では5期連続の最高益となった。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2012/3 4,072 690 688 390 15 20
2013/3 4,192 690 694 419 20 20
前年比 120 -1 6 29 5 0 
2014/3 4,170 700 715 440 20 20


三菱ケミカルホールディングスの田辺三菱製薬持分は56.34%であるため、営業損益、経常損益は全額が連結決算に反映されるが、当期損益ベースでは少数株主利益が控除され、持株比率分しか反映されない。

ーーー

三井化学

減収で大幅減益となった。

2012年4月22日、岩国大竹工場のレゾルシンプラントで爆発・火災事故が発生した。
レゾルシンは再建を断念し、事業撤退、メタパラクレゾールその他が長期休止した。

これによる販売減少が448億円ある。

営業損益は基礎化学品の交易条件差、数量差が大きく、大幅減益となった。

特別損益は事故損失49億円、事業再構築の減損損失56億円、関連事業損失41億円などがあり、受取保険金55億円などがあったが、差引100億円の損失となっている。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2011/3 13,917 405 389 249 3 3
2012/3 14,540 216 229 -10 3 3
2013/3 14,062 43 92 -81 3 3
前年比 -478 -173 -137 -71 0  0 
2014/3 16,000 280 230 50 3 3

営業損益対比(億円)           
  2011/3 2012/3 2013/3 2014/3
予想
  前年比 差
増減 交易
条件 
数量差  固定費
石化 128 89 77 160 -12 -68 10 46
基礎化学品 204 86 -189 -140 -275 -247 -83 55
ウレタン -90 -146 -26 70 119 92 10 18
機能樹脂 72 82 84 105 2 -40 18 24
(加工品) 14              
機能化学品 100 116 124 155 7 -16 21 2
フィルム・シート   2 -33 -20 -35 -37   2
その他 1 1 -6 -50 -7     20
全社 -25 -15 12 27    
合計 405 216 43 280 -173 -316 -24 167


三井化学は機能化学品部門にヘルスケア材料事業部を持つが、三菱ケミカルの田辺三菱製薬、住友化学の大日本住友製薬のように損益に貢献するには至っていない。

同社では景気変動の影響を受けにくいヘルスケア材料事業の拡大を目指しており、本年4月に歯科材料事業を543億円で買収した。




TDKは4月26日、中国・広東省梅州市の梅州高新技術産業園区に希土類磁石の製造合弁会社を設立することを決めたと発表した。

同社は、自動車向けをはじめ、IT 機器などの各種エレクトロニクス機器、産業用機器向けに各種磁石を製造している。
特に、自動車、家電等、省エネ、環境対応が重要視されることに伴って「希土類磁石」の需要が世界的に急増すると見込まれる。

資源的にも限られている希土類材料の、より一層の安定供給を確保するため、中国に磁石製造の合弁会社を設立する。

社名 広東東電化広晟稀土高新材料有限公司
出資 TDK 59%
広晟有色金属 37%  希土類、タングステン製品の製造、販売
東海貿易 4%


エコカーなどのモーターには、高性能なネオジム磁石が使われている。
ネオジム磁石は日立金属
社員が発明した。

佐川眞人氏:大同特殊鋼顧問
ネオジム磁石のアイデアを見出し研究中の1982年に富士通を退社、住友特殊金属(現、日立金属)に移籍し1982年5月ネオジム磁石を作り上げた。



同磁石の世界需要は年1万~1万3000トンで、日立金属、TDK、信越化学工業の3社でシェアを独占している。
現在は3社とも日本だけで生産している。

ネオジム磁石は高温になると磁力が落ちる弱点があり、ジスプロジウム(Dy)を添加する必要がある。
ジスプロは中国でしか産出せず、高価である。

また、ネオジム磁石の基本特許は 20147月に期限切れを迎える。
ジスプロシウムの価格高騰と特許期限切れのダブルパンチにより、このままではネオジム磁石の国際競争力を失うことは必至である。

TDKは、中国がレアアースの輸出制限を始めたため、中国での磁石製造に踏み切ったが、以下の経緯がある。

ーーー

2012年4月に、日本経済新聞はTDKと昭和電工が中国で高性能磁石の合弁事業を検討していると報道した。

第1段階として昭和電工が計画する中国で3カ所目のレアアース合金工場の建設運営にTDKと現地の資源会社を加えて、5月にJVを設立する。

昭和電工は磁石の原料のレアアース合金を製造している。

2002年12月、中国のレアアースメーカーとのJVの包頭昭和稀土高科新材料有限公司を設立した。

社名 包頭昭和稀土高科新材料有限公司
所在地 内蒙古自治区包頭稀土高新技術産業開発区
出資比率 昭和電工 60%
東海貿易 5%
内蒙古包鋼稀土高科技股イ分有限公司 30%
中国冶金進出口総公司  5%
能力 年産1,000トン


2006年8月、中国のレアアースメーカーとのJVで贛州昭日稀土新材料有限公司を設立した。

社名 贛州昭日稀土新材料有限公司
所在地 江西省贛州経済技術開発区
出資比率 昭和電工 80%
東海貿易 10%
贛州虔東実業集団有限公司 5%
贛県紅金稀土有限公司  5%
能力 年産2,000トン(2007/9)⇒3,000トン(2011/7)


後者の増設完了で、秩父事業所(5,000トン)を合わせ、年産9,000トン体制を確立した。
同社では、今後の需要動向を睨み、年産10,000トン体制の構築を検討するとしていた。

第二段階はTDKの主導で高性能磁石の新工場をレアアース合金 工場に併設し、原料から製品までの一貫生産体制を作る。

総投資額は100~200億円で、具体的な内容は年末までに詰めるとしていた。

ーーー

しかし、経済産業省が2012年8月1日に輸出貿易管理令を改正し(7月13日議決定、高性能磁石とその製造装置、関連部品を規制対象に加え た。
輸出企業は磁石がミサイルなど大量破壊兵器に利用されないことを証明する必要がある。

外国為替及び外国貿易法の第48条は、
国際的な平和及び安全の維持を妨げることとなると認められるものとして政令で定める特定の地域を仕向地とする特定の種類の貨物の輸出をしようとする者は、政令で定めるところにより、経済産業大臣の許可を受けなければならない。
としている。

今回、輸出貿易管理令別表第一の16(1)に、「焼結磁石等」を加えた。
なお、核兵器等の開発等のために用いられることがない場合は、許可が不要となる。

同省では、「国際的な合意を踏まえた安全保障上の見直しで、貿易制限が目的ではない」と説明する。

しかし、この時点での「焼結磁石等」の追加は、中国での合弁を止めさせるのが狙いである。

日本企業の動きに神経をとがらせ、中国企業との合弁は中国の「思うつぼ」であるとして、中国進出を思いとどまるよう、各社を説得したとされる。

それとともに、2012年3月13日に米国・EUとともに中国によるレアアースの輸出制限についてWTOに提訴した。
提訴対象にはレアアースのほか、タングステンとモリブデンも含まれる。

しかし、各社の動きが止まらないため、輸出貿易管理令に踏み切った。

磁石メーカーは、許可が得られない場合、「仮に装置を現地調達して工場をつくったとしても、顧客の開拓や設備の保守ができず操業できない」としている。

この結果、TDKと昭和電工は計画を断念した。

日立金属も別途検討していた計画を断念した。

輸出貿易管理令の改正に中国側は反発を強めているとされ、日本企業から中国への磁石半製品等の輸出が事実上のストップをうけていると報じられた。

ーーー

昭和電工の市川社長は2012年12月に開催した事業説明会で、レアアース合金事業のビジネスモデルを大きく見直す方針を示した。

中国磁石合弁工場は建設の見通しが立たず、日本向け輸出もままならないため、「2013年以降は中国で生産した合金は現地で販売したい」と語った。

日本経済新聞は、昭和電工のレアアース合金を使って高性能磁石を生産してきたTDKが、昭和電工に「それは裏切り行為だ」と食ってかかったと報じている。

これらの経緯を経て、TDKは今回、昭和電工とのJVではなく、独自での中国進出となる。

なお、同社は日中両国政府から合弁会社の設立、運営に必要な許認可が得られなければ「今回の合弁会社を解散する場合もある」としている。

これに対する経産省の対応が注目される。

ーーー

なお、高性能ネオジムは日立金属、信越化学、TDKの3社がシェアを独占しているが、この磁石の原料となる高品位のレアアース合金も、昭和電工、信越化学、三徳、中電レアアース の4 社が世界生産を独占している。

昭和電工は上記の通り、中国の2工場と秩父事業所(5,000トン)を合わせ、年産9,000トン体制を確立した。

ーーー

信越化学は合金と高性能磁石を武生工場で一貫生産している。

同社は2012年3月、中国福建省にレア・アースマグネットの中間原料であるマグネット用合金を製造する新会社、「信越(長汀)科技有限公司」を信越化学100%により設立した。投資額は15億円、生産能力は年産3,000トン。

生産する全量を日本に持ち込み、ハイブリッド車向けに需要が急増する高性能磁石の原料にする予定。

ーーー

三徳は早くも1948年にレア・アース分野に乗り出し、現在、原料から高純度化合物、各種合金まで一貫生産するレア・アース総合メーカーとして世界をリードする存在に成長した。

製造品目は、ネオジム磁石合金、サマリウム磁石合金、水素吸蔵合金、負極コイル、マグネシウム・リチウム合金、その他。

内蒙古・包頭市稀土高新技術産業開発区に包頭三徳電池材料、江西省ガン州市香港工業園に五鉱三徳ガン州希土材料有限公司を持っている。

2011年4月に米国アリゾナ州の子会社 Santoku America, Incを現金1750万ドルでMolycorpに売却した。

ーーー

中電レアアースは中央電気工業の100%子会社。

1990年に住友金属工業が米国のMolycorpとのJVで、住金モリコープを設立、Molycorpの日本のソールエージェントとなり、同社製品の輸入販売を開始した。
1992年に和歌山事業所を建設し、希土類磁石合金の製造、販売を開始した。

2007年に日立金属、アドバンスト マテリアル ジャパン及び中国の有研稀土新材料(66%)との合弁で、北京郊外にレアアース合金製造販売の廊坊関西磁性材料を設立。

2009年にはミクニ総業、エムアプリ他と合弁で(72%出資)、ハノイ近郊に Vietnam Rare Earth を設立した。
ベトナムでは、レアアース磁石製造工程で発生するスクラップから得た酸化物を電解してメタルとしている。

2009年12月に中央電気工業の100%子会社となり、中電レアアースに社名変更した。

同社は本年3月1日、Molycorpと磁石合金用レアアース酸化物の調達及び磁石合金用レアアースメタル委託製造に関する合意書に調印した。
Molycorpの酸化物をベトナムでレアアースメタルに加工する。一部はMolycorpからの受託となる。


BPは5月2日、同社主導のShah Deniz コンソーシアムがアゼルバイジャンのカスピ海沖のShah Deniz ガス田第2期のガスの欧州向け輸送ルートについて、2つのパイプライン会社からの正式提案の検討を開始したと発表した。

Shah Deniz ガス田第2期は世界最大級の天然ガス開発計画で、新設する4,000kmの南部ガス回廊(Southern Gas Corridor)を経由して欧州に送り、欧州のエネルギー安全保障に貢献する。

Shah Deniz コンソーシアムのメンバーは以下の通り。

BP 25.5% Operator
Statoil 25.5% ノルウェー
SOCAR 10.0% State Oil Company of Azerbaijan Republic
Total S.A. 10.0%  
LukAgip 10.0%  Eni & LUKoil (ロシア) JV
NIOC 10.0% National Iranian Oil Company
TPAO 9.0% Turkish Petroleum
 


Shah Deniz ガス田第1期は年産90億立方メートルだが、現在、第2期(年産160億立方メートル)の設計(FEED)段階にある。

2010年6月、トルコとアゼルバイジャンがこの天然ガスの供給をトルコが受けることで覚書に署名した。
トルコが60億立方メートルを購入するのに加え、残り100億立方メートルを欧州など他国へ再輸出する権利を持つ。

本年3月末に2つのコンソーシアム、Nabucco Gas Pipeline International &Trans Adriatic Pipeline (TAP) から提案を受けた。この提案は現在は正式提案となっており、Shah Deniz コンソーシアムは南部ガス回廊のルートを2013年6月末に最終決定する。

トルコへの輸出開始は2018年、欧州へは2019年を予定している。

現在、欧州の15社以上の需要家から年300億立方メートル以上のオファーを受けており、今後販売先を決定する。

パイプラインルートついては、Shah Deniz コンソーシアムの基本構想は以下の通り。

1)South Caucasus Pipeline (SCP)

Azerbaijan とGeorgiaをつなぐSouth Caucasus Pipeline (SCP) に56インチのパイプラインを増設する。

2)Trans Anatolian Pipeline (TANAP)

トルコ国内はトルコ政府とアゼルバイジャン政府の交渉で新しくTrans Anatolian Pipeline (TANAP) 運営会社が設立された。
BPはこれを強く支持しており、TANAPに12%出資することを決めた。

トルコからは新設の2つのパイプラインで欧州に送り、既存のパイプラインに接続する。

3)Nabucco Gas Pipeline

Nabucco Gas Pipeline の建設計画は2002年に始まり、2009年7月13日には、トルコ、ルーマニア、ブルガリア、ハンガリー、オーストリアの5カ国間で合意書に署名がなされた。
この5カ国にドイツを加えた6カ国のコンソーシアムであるNabucco Gas Pipeline Internationalが開発事業者である。

下記6社が各々16.67%の株式を保有する。

OMV オーストラリア
FGSZ ハンガリーMOLの100%子会社
Transgaz ルーマニア
Bulgarian Energy ブルガリア
Botas トルコ
RWE ドイツ


なお、Shah Deniz コンソーシアムがNabucco 採用を決めた場合、Shah Deniz コンソーシアムのメンバーのBP、SOCAR、Statoil、Totalの4社がNabuccoに合計で50%迄出資するオプションが与えられている。

南部ガスライン計画にはEUがバックアップするNabucco計画とロシアのSouth Stream計画が争っていた。


Nabucco計画は当初、トルコ東端から欧州までつなぐ計画であった。

現在はTrans Anatolian Pipelineができるのを勘案し、トルコとブルガリアの国境を起点とするNabucco West を検討している。


 

 

4)Trans Adriatic Pipeline (TAP)

 ギリシャからアルバニアを経由、アドリア海を渡ってイタリアに通じる全長800kmのパイプライン計画。

Trans Adriatic Pipeline (TAP) AG の株主は以下の通り。

EGL(Axpo子会社) 42.5% スイス
Statoil 42.5% ノルウェー
E.ON Ruhrgas 15% ドイツ


なお、Shah Deniz コンソーシアムがTAP 採用を決めた場合、Shah Deniz コンソーシアムのメンバーのBP、SOCAR、Statoil、Totalの4社がTAPに合計で50%迄出資するオプションが与えられている。

 

 

 


経産省は4月30日、「世界の石油化学製品の今後の需給動向」(対象期間2004~2017年)を発表した。

 

主要製品の状況及びそのうちの日本と中国の状況は以下の通り。

エチレン系製品合計
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エチレン需給
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 付記
 
   中国についてはLDPEの生産が能力を上回るという状況になっている。
これについて、 当方からの質問に対しMETIは以下の通り述べている。

LDPEとHDPEのスイングプラントについて、生産能力の比率を1:1にしています。
仮に、あるプラントのLDPEとHDPEの生産実績が7:3だとしても、生産能力を1:1にしています。
生産能力は、各社の公式資料を基本にしています。
プラントの運転方法を改善する等で、生産実績が公称の生産能力を超える場合があるようですが、各社の公式資料を基本にしております。

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イタリアの中道左派、民主党のエンリコ・レッタ前副書記長は4月27日、ベルルスコーニ前首相率いる中道右派の政党、自由国民などと大連立による政権樹立で合意し、ナポリターノ大統領に閣僚名簿を提出、大統領は承認した。

イタリアでは議会が解散した昨年12月以降、約4カ月にわたりモンティ前首相が選挙管理内閣の首相を続けていた。

イタリア下院は29日、上院は30日にレッタ新内閣を信任し、 新政権は正式に発足した。

レッタ氏は29日の下院での所信表明で、「財政規律は重要」としながらも、イタリア経済は10年以上に及ぶ景気低迷から脱却できておらず依然深刻な状況にあるとし、「財政再建だけではイタリアは死んでしまう。成長政策をこれ以上先延ばしにすることはできない」と言明 、EUが進める緊縮路線一辺倒の流れから成長・雇用促進に軸足を移す考えを示した。

同氏は広範な不動産税改革を行う方針を示し、7月に予定されていた付加価値税の引き上げも先送りすることを望むと述べた。
福祉制度の強化や、若者や失業者を雇用する企業への給与税減税、女性の労働参加促進など、一連の改革に意欲を示した。

レッタ新首相は4月30日夕、ベルリンでドイツのメルケル首相と会談した。

その後の記者会見では メルケル首相に一定の配慮を示し、「危機克服のため、ドイツと高度な協調関係を築きたい」と連携の重要性を強調し、「財政健全化も確固とした我々の義務だ」と述べた。

メルケル首相も これに応じ、成長と緊縮は相反するものではない、雇用創出が欧州の最優先事項となると述べた。

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多額の財政赤字を抱えるスペイン政府は、EUに対し、来年までに財政赤字をGDPの3%以内に抑えると約束し、付加価値税の増税や公務員の給与削減など財政再建を進めてきた。

しかし、財政緊縮策が景気の悪化を招き、本年の経済成長率はマイナス1.3%と大幅に悪化する見通しとなり 、財政赤字はGDPの6.3%になると予想され、来年までの目標達成はほぼ不可能となった。

このため、財政再建の達成時期をこれまでより2年遅らせて、2016年にすることを決めた。

欧州委員会はこれを理解できるとの立場を示したが、正式決定は5月29日となる。
IMFも緊縮路線を緩めるスペインの方針を歓迎している。

ーーー

各国が財政再建策に取り組んでいるが、スペインやギリシャでは4人に1人が失業しており、南欧を中心に不満が噴出している。

ユーロ圏の中核諸国の基本的な成長展望に関する長期的な強い不安感から、PIIGSだけでなく、FISH(フランス、イタリア、スペイン、オランダ)が問題になっている。
これら4国はユーロ高と不況に悩んでおり、ドイツの独り勝ちとなっている。

2013/3/5   ユーロ圏の不安、PIIGS からFISHに拡大

EUの欧州委員会は5月3日、実質経済成長率見通しを発表した。2013年、14年とも、2月の予測から下方修正した。

  2013年 2014年
EU -0.1 1.4
ユーロ圏 -0.4 1.2
ドイツ 0.4 1.8
英国 0.6 1.7
フランス -0.1 1.1
イタリア -1.3 0.7
スペイン -1.5 0.9
EUのバローゾ欧州委員長は4月22日の講演で「緊縮策は限界に達しており、政治や社会を支える対策が必要だ」との見解を示した。
レーン副委員長(経済・通貨担当)はこれまでの改革などで「財政再建のぺ一スを緩めることができる」とする。

ラカルドIMF専務理事は英国に関して「緊縮のぺースを調整する時期にさしかかった可能性がある」と指摘、ルー米財務長官も「財政余力のある国は、経済成長のけん引役である消費を刺激すべきだ」と緊縮策の緩和を訴えた。

一方、ドイツはこれら発言に反発、メルケル首相は「緊縮策には邪悪な響きがあ り、私は予算の均衡と呼ぶ」と規律重視を貫く。

欧州中銀は5月2日、政策金利を0.75%から過去最低の0.5%に引き下げた。ドラギ総裁は「金融緩和を必要な限り続ける」と述べた。
特に雇用悪化が目立つ南欧での企業向け融資拡大を促す。

ーーー

ドイツは債務国支援の条件に「倹約」を押し付け、「ドイツによるヨーロッパ」という上下構造が出来ているとの見方が現れている。

ウルリッヒ・ベックの「ユーロ消滅? ドイツ化するヨーロッパへの警告」(岩波書店) は、債務国の予算決定に介入して主権を奪い、ユーロ圏から切り離すことでEUや欧州の分断へと踏み出しかねないドイツ主導の権力地図に警鐘を鳴らし、危機を克服しながら欧州の連帯と統合を強化する方策を提起する。

「ドイツによるヨーロッパ」という上下構造ではなく、本来は、EU参加国の間には公平原則、均衡原則(大国・小国、強国と他の)、和解原則(責任転嫁や蔑みでなく)、搾取防止原則が必要であると説く。

イタリアのジャーナリストのエウジェニオ・スカルファリの発言を紹介している。

「ドイツがユーロを挫折するような政策をとるなら、欧州の挫折はドイツの責任。 第一次、第二次の両大戦とホロコーストに続く第四の罪になる」



東京電力は4月30日、2013年3月期決算を発表した。

2014年3月期の業績見通しを「未定」とした。経営再建計画で黒字転換を掲げていたが、柏崎刈羽原発の再稼働の見通しが立たず、業績見通しを示せなかった。

3期連続の経常赤字となれば銀行から新規融資を受けるのも難しくなり、経営再建計画の見直しは必至となる。

                     単位:百万円、配当 円

  売上高 営業損益 経常損益 特別損益 法人税等 当期損益 配当
中間 期末
2010/3  5,016,257 284,443 204,340 0   -86,741   133,775 30 30
2011/3 5,368,536 399,624 317,696  -1,077,685 -478,445 -1,247,348 30 0
2012/3 5,349,445 -272,513 -400,405 2,516,891
-2,867,864
-22,839 -781,641 0 0
2013/3 5,976,239 -221,988 -326,955 913,972
 -1,248,811
-28,681 -685,292 0 0
増減 626,794 50,525 73,450 16,134  -5,842  96,349    
     2011/3の法人税等には、繰延税金資産取り崩しを含む。(2010年12月末時点で約4800億円)


単独決算で見ると、経常損益は前年度比で306億円の増益となっている。

電気料収入増  6214億円 (うち、電力料金値上げ 3730億円、燃料費調整制度の影響 1600億円)
燃料費増 -5016億円 (原発代替 -3090億円、円安 -1230億円、価格差 -1530億円
購入電力料増 -844億円  
     
人件費減 210億円  
償却費減 523億円  
バックエンド費用減 332億円 (使用済み燃料再処理、放射性廃棄物処分費引当減)
修繕費増 -701億円 (火力発電所、配電設備など)
株主資本                             単位:百万円
  2011/3月末 2012/3月末 2013/3月末

増減

資本金 900,975 900,975 1,400,975 500,000
資本剰余金 243,653 243,653 743,621 500,000
-32
利益剰余金 前期末残高  1,831,487 494,054 -287,497 -781,551
配当支出 -81,002 0 0 0
当期純損益 -1,247,348 -781,641 -685,292 96,349
その他 5 90 16 -74
当期末残高 494,054 -287,497 -972,773 -685,276
純資産合計 1,602,478 812,476 1,137,812 325,336
   

東京電力は2012年5月21日、2種類の優先株を合計19億4000万株、金額換算で1兆円を発行すると発表した。

債務超過リスクや資金繰り面でのリスクを回避し、事業の継続性を確実なものにするとともに、公募債市場への復帰等自律的な資金調達力の早期回復を図るためにも、資本を増強し、財務基盤を強化する。

政府の原子力損害賠償支援機構が全株引き受け、7月25日までに全額を払い込む。
これにより、東電の経営は実質公的管理下に置かれることになる。

2012/5/25  東京電力、1兆円の優先株発行、公的管理下に

特別損益内訳                                                                                                                   単位:百万円  
  2011/3 2012/3 2013/3

累計

原子力損害賠償支援機構資金交付金   2,426,271 696,808 3,123,079
固定資産・有価証券・関係会社株式 売却益   90,619 143,530 234,149
退職給与制度改定益     73,633 73,633
特別利益合計   2,516,891 913,972 3,430,863
災害特別損失 1,020,496 297,802 40,231 1,358,529
原子力損害賠償金 賠償見積額     2,644,930 1,161,970 3,806,900
原子力損害賠償補償契約 補償金   -120,000   -120,000
(差引 合計)   (2,524,930) (1,161,970) (3,686,900)
資産除去債務会計基準の適用 57,189     57,189
その他   45,131 46,608 91,739
特別損失合計 1,077,685 2,867,864 1,248,811 5,194,360


賠償補償:
通常の原子力損害の場合の賠償に対しては、民間の損害保険会社による保険である責任保険により、賠償措置額(発電用原子炉の場合は通常1200億円)まで保険金が支払われる。
地震、噴火、津波の自然災害による原子力損害等の場合は政府補償により、賠償措置額まで補償金が支払われるが、今回は適用されない。

 

ーーー

全国の電力会社では北陸電力と原発を持たない沖縄電力以外の8社で経常損益と当期損益が赤字となった。

電力会社 経常損益 当期損益
当期 前期 増減 当期 前期 増減
北海道 -1,281 -96 -1,185 -1,328 -720 -607
東北 -932 -1,765 832 -1,037 -2,319 1,282
東京 -3,269 -4,004 735 -6,853 -7,816 963
中部 -435 -678 243 -321 -921 600
北陸 17 10 7 1 -53 54
関西 -3,532 -2,655 -877 -2,434 -2,423 -12
中国 -288 298 -586 -220 25 -244
四国 -570 -19 -551 -429 -94 -335
九洲 -3,312 -2,135 -1,176 -3,324 -1,663 -1,660
沖縄 63 103 -40 43 70 -26




経営危機に陥っていたEastman Kodakは2012年1月19日、ニューヨークの連邦地裁に米連邦破産法 Chapter 11(民事再生法)を申請したと発表した。米国以外の事業は対象外。米国でも事業は継続する。

負債総額は6,751百万ドル。つなぎ資金(debtor-in-possession credit)としてCitigroupから18か月期限で950百万ドルの融資を受けた。

同社では、Chapter 11申請は、米国内外における手元流動性の強化、非戦略的知的財産の収益化、過去の経緯にかかわる債務の整理、最も価値のある事業分野への集中を目的とするとしている。

2012/1/23 Eastman Kodak、米連邦破産法11条申請 

ーーー

ブラザー工業は本年4月15日、Eastman Kodak が所有するDocument Imaging事業買収のための資産譲渡契約を締結したと発表した。
Document Imaging事業は、ハイエンドのドキュメントスキャナー、スキャナー用ソフトウェア、テクニカルサービスなどの事業をグローバルに展開している。

破産裁判所による承認を得て、破産裁判所管轄下で公開入札が実施され、最終的な買収者が決まるが、ブラザーの場合、負債67百万ドルを含め210百万米ドルでの買収となる。

ブラザーは2012年7月、企業向けスキャナー事業に本格参入し、無線LANでネットワーク上のクラウドサービスと連携できる製品などをそろえた。同社ではスキャナー事業の成長の余地は大きいとみている。


しかし、Eastman Kodakは4月29
日、消費者向けの写真フィルムや店頭の現像機を扱う
Personalized Imaging事業とスキャナーの販売や書類を電子的に整理するソフトを扱うDocument Imaging事業の2事業を650百万ドルで売却すると発表した。

売却先は、Kodakの最大の債権者である英国の退職年金ファンドのU.K. Kodak Pension Planで、主に英国に在住するKodakの退職者や現従業員を対象にした年金を運営しており、加入者は約1万5000人。
同ファンドは2事業の対価として650百万ドルを支払うとともに、Kodakに対する約28億ドルの支払い要求を放棄する。

請求権放棄分はファンドの赤字となる。
今後10年から15年、2事業からの収益で補填していくこととなる。

破産裁判所の承認を経て売却が完了するが、非中核事業の売却と負債の削減より、Kodakは米連邦破産法の管理下からの脱却に大きく前進 する。

Kodakは高速印刷機や商業印刷など法人向けのCommercial Imaging 事業に経営資源を集中させる。


KodakはDocument Imaging事業はブラザー工業に売却することで合意していたが、2事業まとめた売却案を優先し、ブラザーとの合意は撤回する。

ブラザー工業では、「残念だが、英ファンドが提示した2事業買収という条件を上回る提案は難しい」としている。



北朝鮮は3月に始まった米韓合同軍事演習に猛反発して武力挑発の脅しをかけるとともに、4月8日に開城工業団地の稼働中断を一方的に発表、北側従業員5万3000人を撤収させた。

韓国の報道機関が「開城は北朝鮮の数少ない外貨獲得源であり、潰すことはないだろう」としたことに北朝鮮は反発、17日の声明で、「団地での北朝鮮側の労働者の賃金は基本的な生活費にもならないが南の企業の利益は計り知れない」と、韓国側が一方的に利益を得ていると主張した。

団地には韓国側関係者約200人が設備管理などのため残留しており、韓国側企業は食料や医薬品などを届けるため団地への訪問を申請したが、北朝鮮は4月17日要請を拒否した。

その後、韓国企業側は順次帰国、電力・通信施設の関係者や管理委職員ら50人が残り、施設の運転・保守や北朝鮮側との折衝にあたった。

韓国は4月25日、北朝鮮に実務協議を提案した。26日午前中の回答を迫り、「なければ重大措置をとる」とした。

これに対し、北朝鮮は、「残っている人員の生命が心配なら全員撤収させればよい。さらに事態を悪化させるなら、わが方が先に最終的かつ決定的な重大措置を講じざるを得ない」とし、対話を拒否した。

4月30日、開城工業団地に残っていた50人のうち43人が韓国へ帰還した。
韓国政府は29日中に全員を撤収させようとしたが、協議が終わらず、韓国側運営機関の5人と通信会社の職員2人の7人が残った。

北朝鮮側は、労働者の賃金や税金の支払いを求めた。北朝鮮側が要求している賃金は約720万ドルで、このほか法人税や通信料を要求している。
これに対し、韓国側は製品や原材料の搬出を求めた。

韓国側関係者7人は5月3日午後7時過ぎ、韓国に帰還した。これと前後して、北朝鮮側が要求していた北朝鮮労働者の賃金などの未払い金を積んだ現金輸送車が北朝鮮側に向かった。
北朝鮮側は韓国側が求めてきた製品の搬出については認めなかった。

進出企業が設置した生産設備や韓国側が投資した社会基盤などの取り扱いをめぐる話し合いがついておらず、韓国側では「没収される恐れがある」(進出企業関係者)と懸念する声が出ている。

開城工業団地を清算した場合、被害金額は韓国政府の試算で1兆ウォン(約900億円)にのぼるとされる。

南北経済協力保険に加入していれば最大70億ウォンが補償されるが、123社の韓国企業のうち27社は加入していないという。

朴大統領は、「出資企業と労働者が路頭に迷わないように政府が支援をする」と表明。また、「世界の誰が北朝鮮に投資しようとするだろうか」と非難した。

北朝鮮側としては、一時的に従業員を撤収させたのが誤算で、韓国の報道機関に本音を読まれ、引っ込みがつかなくなり、大事な外貨収入源を失うこととなった。

ーーーーーーー

開城工業団地は2000年8月、金正日総書記と鄭夢憲・現代グループ会長との合意で、北側が土地と労働力を、南側が技術と資本を提供して、開城に一大工業団地を作ることが決まった。
2003年8月に南北当局者間で投資保障、二重課税防止、清算決済、商社紛争合意書の4項目に関する経済協力合意書を交わした。

2007/9/8 北朝鮮開城工業団地に中国企業進出
2009/6/13  北朝鮮、開城工業団地の土地賃貸料や労務費の大幅引き上げを要求

2013年時点で、進出した韓国企業の投資総額は5,568億ウォン (482億円) で、生産額は月4,000万ドル。
これとは別に韓国側の公的企業が、造成や社会基盤整備に5.5兆ウォン (4,770億円) から6兆ウォン (5,200億円) 投資している。

一方、北朝鮮側は労働者約5万3千人分の賃金として1年間に8,700万ドルの外貨収入を得ており、北朝鮮にとってはドル箱事業である。

朝鮮日報によると、開城工業団地を北朝鮮が独自に稼働させるのは困難である。

開城で使用される電力は百パーセント韓国の発電所から送られている。
京畿道坡州のムンサン変電所から送られた電気を韓国側が建設した開城平和変電所(10万キロワット級)が受け取り、これを各工場に送電している。
電力不足の北朝鮮には開城に送る電力の余力はなく、送電設備もない。

電力供給がストップすれば、工業用水を確保するための浄配水場も稼働がストップする。

機械など工場の設備を修理する能力も低く、修理に必要な部品の確保にも限界がある。

なお、韓国の対北朝鮮経済協力のもう一つの柱であった金剛山観光事業は、2008年の韓国人旅行者射殺事件以来、中断されている。



 4月28日の香港証券取引所への届出によると、シノペック冠德、中国海運集団、商船三井(Mitsui O.S.K. Lines)の3社出資の合弁会社が滬東中華造船Hudong-Zhonghua)と中国造船に6隻のLNG船を発注した。

シノペックが49%、中国海運が51%出資でChina Energy Shipping Investment を設立、同社が80%、商船三井が20%出資で6つの合弁会社を設立した。6隻のLNG船それぞれの輸送業務を行う。

商船三井は現在、69隻のLNG船を保有しており、約2割の世界シェアを持つ。
中国側は商船三井のLNG船輸送のノウハウを必要としたとみられる。

建造費合計は15.1億ドルで、その20%は出資金、80%が中国EXIM銀行、中国工商銀行、中国銀行、三井住友銀行、三菱東京UFJ銀行、みずほ銀行の日中6行のシンジケートローンでまかなう。

2016年4月から2017年11月までに順次引き渡される。
2016年から20年間、年760万トン(中国輸入量の約5割、世界需要の3%)のLNGをオーストラリアから運ぶ。

輸送するLNGはシノペックも出資するAustralia Pacific LNG Project のもの。

Australia Pacific LNG ProjectはオーストラリアのQueenslandでコールシームガス(Coal seam gas:CSG) を採掘、パイプラインで輸送し、Gladstone沖のCurtis IslandのLNG施設でLNGを生産するもの。2系列で合計年間900万トンのLNGを生産する。

ConocoPhillipsが37.5%、豪州のLNG業者のOrigin が37.5%、シノペックが25%を出資している。

ConocoPhillips は2006年以降、Darwin でLNG施設を所有・運営している。
チモール海共同石油開発海域の Bayu-Undan油・ガス田

OriginはQueensland では30年間活動しており、CSG分野では15年の経験を持つ。

CSGは、Coalbed methane、炭層ガス、炭層メタンなどとも呼ばれ、石炭層を覆っているメタンガス。

石炭層は地下200~1,000mの地層に存在する。
石炭層にメタンが付着しており、炭層の亀裂(Cleats)は水で満たされている。

ポンプで水を汲み上げることで水圧が減り、メタンガスが石炭から分離して水とともに汲み上げられる。
水とガスは分離され、ガスはパイプラインでGladstone沖のCurtis IslandのLNG施設でLNGにされる。

 





 

クラレはポバール製品、積水化学は住宅と世界シェアNo.1の高付加価値製品が数多くある高機能プラスチックが好調で、2014年3月期に経常最高益を見込む。
トクヤマは一時は高収益を誇り、増設中の多結晶シリコンが供給過剰で利益が急減、多額の減損損失を計上した。


クラレ

売価差その他で前年比で若干の減益となったが、ポバール製品等が好調で高水準の利益を継続し、増配した。

単位:億円 (配当:円)

  売上高 営業損益 経常損益 当期損益

 配当

中間 期末
2012/3 3,690 547 539 315 16.0 17.0
2013/3 3,694 492 486 288 18.0 18.0
前年比 5 -55 -54 -27 2.0  1.0 
2014/3予 4,300 600 585 350 18.0 18.0

一部セグメントを変更
 樹脂 →(改称) ビニルアセテート(ポバール製品群、エバール)
 化学品 →(分割) イソプレン(イソプレンケミカル、セプトン、ジェネスタ)
    機能材料(メタクル、メディカル、クラリーノ)
     
営業損益対比(億円)
  2012/3 2013/3 増減 2014/3予
ビニルアセテート 499 489 -10 540
(化学品) 91   -33
イソプレン   39 75
機能材料   19 30
繊維 11 18 7 20
トレーディング 35 34 -2 35
その他 57 40 -17 40
全社 -145 -146 -1 -140
合計 547   492 -55  600

同社のポバール、エバール事業については下記参照。
  2012/5/7 クラレの2012年3月決算と樹脂事業概況 

ーーー

積水化学

住宅、高機能プラスチックが好調で増収増益となり、来年度も更に大幅増益を予想。
配当は来年度で4年連続の増配となる。

単位:億円 (配当:円)

  売上高 営業損益 経常損益 当期損益

 配当

中間 期末
2012/3 9,651 546 542 281 7.0 8.0
2013/3 10,324 596 607 302 9.0 9.0
前年比 673 50 65 21 2.0  1.0 
2014/3予 10,780 740 700 350 10.0 10.0

住宅の損益が急上昇、全社利益の半分以上を占める。
高機能プラスチックも好調。

営業損益対比(億円)
  2012/3 2013/3 増減 2014/3予
住宅 311 363 52 400
環境・ライフライン 30 18 -12 70
高機能プラスチックス 206 232 27 300
その他 -2 -7 -5 -15
全社 2 -10 -12 -15
合計 546   596 50  740


高機能プラスチックス部門には、
 車両材料(AT)の高機能中間膜、自動車内装用架橋発泡ポリオレフィン、
 電子材料(IT)の液晶用スペーサー、導電性微粒子、
 メディカル(MD)分野のコレステロール検査薬など
世界シェアNo.1の高付加価値製品が数多くある。


ーーー

トクヤマ

多結晶シリコンの販売数量減、販売価格下落等により減益となった。

特別損失に多結晶シリコンとその併産品の乾式シリカ設備の減損損失や棚卸資産評価損を計上し、当期損益は大幅赤字となった。

単位:億円 (配当:円)

  売上高 営業損益 経常損益 当期損益

 配当

中間 期末
2012/3 2,824 137 115 94 3.0 3.0
2013/3 2,586 68 32 -379 0.0 3.0
前年比 -237 -69 -83 -473 -3.0 -
2014/3予 2,755 140 100 75 3.0 3.0

2009年3月期までは、「特殊品」のみ表示。現在のシリコンと特殊品のほか、他の製品も含まれているが、大勢には影響しない。
一時は300億円もあった営業損益が、前期は100億円になり、それが今期はゼロとなった。

他方、セメントは国内需要の回復に伴う数量増、販売価格是正、合理化によるコストダウンで増益となった。

営業損益対比(億円)
  2012/3 2013/3

増減

2014/3予  
化学 19 4 -15 35

無機、有機、VCM、PVC、PO

特殊品 102 3 -99 25

シリコン、特殊品

セメント 29 53   24 45  
ライフアメニティ
(機能部材)
17 29 12 45

フィルム、樹脂サッシ、医療診断システム、歯科器材、
ガスセンサ、イオン交換樹脂膜

その他 20 26 6 35  
全社 -51 -49 2 -45  
合計 137 68 -69 140  

2014年3月期より、機能部材セグメントをライフアメティティセグメントに改称。
2014年3月期より、各セグメントへの費用負担方法を変更(2013年3月期も変更後の数値とした)

特別損失には減損損失273億円を計上した。

山口県周南市の多結晶シリコンと併産品の乾式シリカプラントの固定資産を回収可能価額まで減額し、266億円の損失を計上。
合わせて、愛媛、山口、北海道、宮崎の遊休土地の簿価を回収可能まで減額し、6億円の損失を計上した。

このほか、特別損失の「その他」として38億円を計上しているが、2月27日の発表では多結晶シリコン用原材料について棚卸資産評価損を約20億円計上するとしており、これが含まれていると思われる。

トクヤマのシリコン事業の概況と現状については
 2013/3/6     太陽電池素材事業、苦境に


2014年3月期については、シリコン関連は依然として販売数量減、操業度減でのマイナスがあるが、設備と原材料を評価減しているため、減価償却費と原料費が減り、増益が見込まれるとしている。

同社では、多結晶シリコンは当面供給能力過剰の状態が続き、コスト競争力が生き残りのカギになるとみている。

中長期的には需要拡大と競争力のないメーカーの生産停止等で、需給ギャップは徐々に縮小し、2015年頃には需要と主要メーカー供給能力はバランスすると予測している。




1983年5月24日「特定産業構造改善臨時措置法(産構法)」が、1988年6月30日を期限とする時限立法として施行された。

本年は産構法が施行されて30周年となる。

本ブログでは、30年前をシリーズで振り返った。

2013/3/28   産構法30年(1) 第二次石油危機
2013/3/29   産構法30年(2) 産構法成立
2013/3/30   産構法30年(3) エチレン構造改善
2013/4/1   産構法30年(4) ポリオレフィン構造改善
2013/4/1   産構法30年(5) 塩ビ及びその他の構造改善

 

産構法は1988年6月までの5年間の時限立法であったが、1986年に原油価格が急落した。

国産ナフサ基準価格は1985年4Qに39,400円/klであったのが、1986年1Qには31,300円、2Qには16,900円、3Qには15,100円に下がった。

これとともに景気は回復し、石化製品の需要も急増した。
塩ビの場合、1984-86年に142-143万トンであった内需は、87年161万トン、88年178万トン、89年188万トンと増大した。

塩ビ業界の赤字も83年、84年、85年と順次減少し、86年には5.6億円の黒字に、88年には100億円の利益となった。

通産省は業界の経営状況が安定し今後環境の激変がない限り構造不況に陥ることはないとの判断から、1987年9月16日にエチレンについて産構法の特定産業指定を取り消し、同時にポリオレフィンと塩ビ樹脂製造業の指示カルテルも取り消した。

1988年6月30日、産構法は期限切れとなった。

 

産構法後期に各社の業績は回復したが、ナフサ価格下落による需要の増大に負うところが大きい。

産構法で抜本的な構造改革をしたのではなく、小規模多数メーカーの存在という状況には変わりがなく、一時的なカルテルによる時間稼ぎという意味が強い。

このため、需要が再度減少した場合は再度、昔の繰り返しとなることが懸念された。しかし、産構法が終了した後、再度カルテルに戻ることは認められない。このため、今後とも産構法の精神を維持しようとして、2つの対応が取られた。

①「デクレア方式」(事前報告制度)
 
産構法終了により今後は設備カルテルは認められなくなったが、新増設の乱立をおさえるため、新増設に当たっては事前に通産省に報告し公表する制度がつくられた。

具体的には
 ・3万トン/年以上の新増設は着工の6ヵ月前、
 ・3万トン/年以上の設備を改造する場合は着工の3ヵ月前、
 ・休止設備を再開する場合は稼働開始の3ヵ月前
に通産省に報告して公表することとなった。 

実際には通産省が業界の意向を尊重し、業界の反対の強いものについては増設の「事前報告」を受け付けないという例もあった。

②共販制度の維持

公取委は産構法の終了をもって共販会社も解散すべきだと強く主張した。
米国の市場開放要請の中に共販制度を参入障害とする指摘があったことも、これを後押しした。

しかし業界では共販制度が価格競争を防ぐ重要な手段であると考え、継続を強く主張した。
設立のきっかけが産構法であったとしても(塩ビ共販はそれ以前)、商法上誕生した株式会社であり、生産・流通・販売の合理化のためにも必要とした。

最終的に公取委は、他の共販メンバーとの提携をしないこと、生産・流通・販売の合理化の進展状況を毎年報告することを条件に存続を認めた。
公取委は各共販の毎年の状況報告について厳しく追及した。

この時期、設備の増強に当たっては単独では大規模設備の増設は難しいことから共同生産方式が取られたが、上記の制約により、共販メンバー同士の合弁による共同生産が行われた。
更に共販会社単位での合理化策であることを示すために、合弁生産会社に共販会社が一部出資するという形態を取った。

最終的には、発展的に解消した第一塩ビ販売とダイヤポリマーを除き、公取委が禁止した「他の共販メンバーとの提携」で、共販会社は解散した。

塩ビ 第一塩ビ販売 1995/6 呉羽化学離脱、
他3社が事業統合し、新第一塩ビとして発展的解消(95/7/1営業開始)
共同塩ビ販売 1995/12 東ソー(共同塩ビ)と三井東圧・電気化学(日本塩ビ)が大洋塩ビ設立発表
(96/1/1設立、96/4/1営業開始)    
日本塩ビ販売
中央塩ビ販売 1996/7 96/4 三菱化学(中央塩ビ)と東亜合成(日本塩ビ)の提携発表
ポリ
オレフィン
ダイヤポリマー 1994/9 94/10 三菱油化と三菱化成が合併、三菱化学誕生
エースポリマー 1995/6 昭和電工(エース)と日石化学(三井日石)が日本ポリオレフィン設立
(95/10営業開始)
三井石化(三井日石)と宇部興産(ユニオン)がグランドポリマー設立
(95/10営業開始)
三井日石ポリマー 1995/9
ユニオンポリマー
 

ーーー

景気の回復により供給不測に陥り、業界では早くも増産に乗り出した。

まず、産構法で休止した設備の再稼動を行った。

通産省は1987年9月16日にエチレンについて産構法の特定産業指定を取り消したが、1988年に入り、各社が相次いで休止設備の再稼動に乗り出した。

出光石油化学: 3月中に49,120トンを再開、6-7月に合わせて 50,960トンの設備の稼動
三菱油化: 2月に25,500トン、3月に22,900トンの設備を再稼動
丸善石油化学: 3月中に 22,000トンを再稼動
新大協和石油化学: 4月に24,200トンを稼動し、7月にはさらに29,940トンの再開
大阪石油化学: 5、6月に合わせて6万トンの再稼動
山陽エチレン: 7月にも20,700トンを再稼動
昭和電工: 年産22万トン設備のうち12万5千トン分を8月から再開

この結果、産構法の指定解除後、再開する設備の合計能力は年間45万1120トンとなった。

LDPEでも休止設備の再稼動が行われた。

旭化成: 水島製造所の年産7,300トンの設備を再稼動
東ソー: 四日市工場の年産23,500トンの設備を再稼動
宇部興産: 千葉工場の同24,000トンを再開
日本ユニカー: 川崎工場で同8千トン規模で設備を再稼動
昭和電工: 大分工場で同1万8千トンの設備を再稼動

塩ビ業界では通産省の指導もあって産構法終了後も重合槽を増やさないという業界の暗黙の了解であった。
しかし1988年に極端な品不足に陥ったため、信越化学は「通産省の要請」という形で、業界で唯一の休止設備(重合槽127m3:8万トン)を稼動させた。

次いで新規増設の検討が相次いだ。

エチレン 三菱油化・鹿島2期 326千トン  
京葉エチレン 600千トン 丸善石化。後に住友化学、三井石油化学が参加
(宇部エチレン) (500千トン) 実現せず
LLDPE 千葉ポリエチレ) 80千トン 住友化学/東ソー
宇部興産 50千トン  
PP 千葉ポリプロ 60千トン 住友化学/宇部興産/トクヤマ/共販会社
宇部ポリプロ 80千トン 宇部興産/住友化学/トクヤマ/共販会社
四日市ポリプロ 65千トン 東ソー/チッソ/共販会社
浮島ポリプロ 80千トン 日石化学/三井東圧/三井石化/共販会社
ディー・ピー・ピー 80千トン
50千トン
三菱油化/三菱化成
旭化成 64千トン  
PVC 第一塩ビ製造 80千トン 住友化学/日本ゼオン/呉羽化学/サンアロー/共販会社
PS 日本ポリスチレン 30千トン
70千トン
昭和電工/住友化学
SM 三井東圧 240千トン 宇部立地

これらが完成する頃には、バブルが弾け、需要は再び減少し、各社の損益は悪化した。

その後、一時的には中国バブルで息を吹き返したかに見えたが、中国バブルが弾けた現在、日本の石化は30年前の産構法以前と同じ状況にある。 老朽小規模プラントはスクラップされ、最新プラントに置き換わっているが、欧米や中東、中国のプラントと比較すると小規模である。

今更、再度の産構法はあり得ず、産構法の時のような石油価格下落等による需要の回復は考えられない。




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