INEOSは3月21日、同社の技術の根幹の一つであるアクリロニトリル技術について、Sinopec Ningbo Engineering Company (中石化寧波工程)が昔からの契約に違反し、INEOSの同意なしに一連のワールドスケールのアクリロニトリルプラントを建設したとして、Sinopec Ningbo Engineeringと建設したSinopec各子会社を北京高級法院(Beijing High Court)に訴えるとともに、 スウェーデンで調停を申請したと発表した。
Jim Ratcliffe会長は次のとおり述べている。
・INEOSはベストの技術を中国に持ち込みたいが、同時にそれは保護されねばならない。
・アクリロニトリル事業は重要な石化事業であり、INEOSの事業は世界一で、30億ドルを売り上げ、5000人を雇用している。
・中国で多くのコピープラントを作られれば、INEOSの事業は破綻する。
・INEOSの価値は技術にある。なにがあっても守らざるを得ない。
INEOSのアクリロニトリル技術は元はStandard Oil of Ohio (Sohio)
の技術で、1987年に
BPがSohioを買収した。
INEOSは2005年にこれを含むBPの石化子会社
Innovane を買収した。
Sinopecとの提携はBPが行ったもので、BP
は1970年代初めから中国に進出しており、現在も石油化学では上海SECCO石油化工(Sinopec とのJV)と酢酸、PTA事業を継続している。
2008/1/28 BP、中国事業を更に拡大
BPは1984年にSinopec Ningbo Engineering にアクリロニトリル技術を供与し、安徽省安慶に5万トン設備、黒竜江省大慶に5万トン設備、吉林に66千トン設備などをつくってきた。
しかし、最近になってSinopec各社はSinopec Ningbo Engineeringの技術でINEOSの了承なしで大規模プラントを順次建設している。
INEOSはこれを死活問題として訴えたもの。
これに対し、Sinopec側は、「Sinopec Ningbo Engineeringは50年の研究開発の後にコア技術を開発した。Sinopecはそれら技術に完全な知的財産権を有しており、INEOSが主張する技術侵害の根拠は無い」と反論している。
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なおINEOSは中国の石油化学の今後の長期的な発展を確信しており、中国各社と提携して事業を行っていきたいとしている。
同社は最近、自社技術を持ち込み、2つのJVを設立することで合意した。
1)天津渤海 とのアクリロニトリル
INEOSの最新プロセス・触媒を使用するもので、2016年待つの完成を見込んでいる。
需要の増加に応じ、将来増設することも検討している。
天津渤海はプロピレンやSM、ABSなどを製造しており、子会社の天津大沽はPVCを生産するとともにLGとのPVCのJVも持っている。
2007/8/23 天津大沽化工、天津でSM 500千トンプラント建設
丸紅が戦略的パートナーシップ契約を結んでいる。
2010/6/24 丸紅、天津渤海化工集団との戦略的パートナーシップ契約締結
2)SinopecとのフェノールJV
INEOS とSinopec
揚子石化は2014年2月20日、南京市に50/50JVを設立する契約を締結した。
JV名は INEOS YPC Phenol (Nanjing) Companyで、Sinopecのキュメン技術とINEOSのフェノール技術を使用し、フェノール、アセトンを製造するもので、投資額は5億ドル、2016年末の完成を見込んでいる。
能力は中間製品のキュメンが55万トン、製品のフェノールが40万トン、アセトンが25万トン。
ベンゼン+プロピレン → キュメン → フェノール+アセトン
当初から天然ガス価格の値上がりを懸念している Dow Chemical などは当然、反対している。