2009年11月アーカイブ

欧州連合(EU)のBarroso 欧州委員長は11月27日、「閣僚」に相当する欧州委員候補27人の担当を発表した。

EU競争法(独占禁止法)を運用する競争政策担当には現経済・通貨担当のスペインの政治家 Joaquín Almunia Amann 氏が横滑りする。

現在の担当のNeelie Kroes女史(オランダ)はDigital Agendaの担当となる。

Kroes委員は任期中に違反企業に高額の制裁金を次々に命じたが、Almunia委員が厳罰主義を継続するかどうか注目される。

地球温暖化への取り組みとして新設された気候変動担当には、デンマークの気候変動・エネルギー相のConnie Hedegaard  女史が選ばれた。

委員の任期は5年。新体制は欧州議会による承認を経て、来年初めにも始動する。

バローゾ委員長は「5年をかけて、欧州を経済危機から脱出させ、持続的成長を伴う競争力のある経済へと導く上で、欧州委に力になってもらいたい」と語った。


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無錫市とシンガポールのSembcorp が共同運営するWuxi-Singapore Industrial Parkで11月26日、無錫太陽電池産業パーク(Solar Park)の起工式が行われた。

太陽電池のリーディング カンパニー Suntech Powerと無錫国家太陽光発電製品品質監督検査センターが中心となり、製品開発から検査、物流、販売、人材育成までの一連の総合サービスを行い、国内の太陽電池産業の上から下までの連動的な発展をけん引していく役割を果たす。

3年以内に太陽電池産業の売上高1000億元、5年後には年18,000MWの太陽電池・モデュールを生産する売上高1500億元の世界最大の太陽電池産業基地を目指す。

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Sembcorp はシンガポールのユーティリティ会社で、シンガポール、中国、ベトナム、英国、中東に3,300MWの発電能力を有し、日量400m3の水を供給している。
また、同社は船舶・海洋土木のリーダーで、更にアジアで産業パークの設計を行っている。

Wuxi-Singapore Industrial Park1993年末に市当局が51%、Sembcorpが49%の出資で設立された。
シンガポールのジュロン島や、Sembcorpが運営するインドネシアのバタム島(シンガポールの南 20km)の
Batamindo Industrial Park をモデルとし、ハイテク産業基地の誘致を狙った。エレクトロニクス、太陽電池、精密機械が中心となっている。

現在、パナソニック、アルプス電子、住友電工、村田電子など日本企業を含む海外の88社を誘致している。
4万人を雇用し、総売上高は400億人民元(56億ドル)、輸出は40億ドルに達する。

 


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Rio Tinto 106日、モンゴル政府との間でモンゴル南部のOyu Tolgoi 銅・金鉱山開発のための投資契約を締結した。

同鉱山は中央アジアや豪州で鉱山の開発を行っているカナダのIvanhoe Minesが権益を持っている。
Rio2006年にIvanhoe9.9%を出資したが、モンゴル政府との投資契約締結後に19.7%とし、更に固定株価で43.1%まで、またその後は時価で最終46.65%まで増やす権利を持っている。(1028日に19.7%とした)

モンゴル政府は開発を担当するIvanhoe Mines Mongolia34%出資する。
2013年には生産を始め、5年後にフル稼働で年45万トンの銅、33万オンスの金を産出する予定。

Rioはこの計画をすすめるため、中国アルミ(Chinalco) と交渉を行っていると伝えられた。

Rio Tinto は2009年2月に、Chinalcoから現金で195億ドルの出資を受けると発表したが、6月5日にこれを取り止めた。
これがあってか、中国の検察当局はRio Tinto社員を産業スパイと贈賄の容疑で逮捕している。

2009/6/6  中国アルミのRio Tinto への出資 取り止め
2009/8/18 Rio Tinto 事件と中国での贈賄事件

Oyu Tolgoi 鉱山は中国国境から200kmのところにある。
鉱山機械の輸送、電線・水道の敷設、鉄道の接続、製品の販売などで中国の協力が必須である。

このため、まだRioの最大株主であるChinalcoが最適の協力者となる。

しかし、中国ではRioは「信頼できない相手」とみなされている上、モンゴルと中国との関係も微妙である。
Rioと
Chinalcoの本計画での提携が両国の承認を得られるかどうかは疑問となっている。

Oyu Tolgoi の北にあるTalvan Tolgoi 鉱山のコークス用石炭開発については中国の神華エナジーが有力候補2社のうちの1社となっている。
神華エナジーはモンゴル国境まで鉄道をつなぎ、Oyu Tolgoi Talvan Tolgoi の石炭と銅を中国に運ぶ計画のコンソーシアムの中心となっている。

他方、Ivanhoeは中国と良好な関係を維持している。

Ivanhoeの子会社SouthGobi Energy Resources1028日、モンゴル南部のOvoot Tolgoi 炭鉱の拡大(150万トン→800万トン/年)の資金として中国政府ファンドのCIC5億米ドルを融資することで合意したと発表した。CICは見返りに取締役1名を派遣する。

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Ivanhoe Mines はモンゴルのOyu Tolgoi 銅・金鉱山、Ovoot Tolgoi 炭鉱のほかに、豪州Queensland Cloncurry 酸化鉄・銅・金プロジェクト、カザフスタンのBakyrchik Gold Project などを手掛けている。

同社は昨年、中国のJinshan Gold Minesの権益(全体の42%)を中国黄金集団(CNGC)に譲渡することで合意したと発表した。
Jinshan Gold Minesは、内モンゴル自治区において2007年から金鉱山の操業を開始しており、現在120oz(3.7t)/年に向け増産体制を整えている。
中国黄金集団は
1979年に設立された政府系企業で、Ivanhoe Minesは同社との間で長期的な戦略パートナーシップを目指している。今後、共同で中国での金、銅の探鉱、鉱山開発に集中していく。

 


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Qatar Petroleum International (QPI) CEOはこのたび、アジアの拡大する需要に対応するため、2015年までに中国とベトナムで98億ドルに達する2つの石油化学プラントを建設することを明らかにした。

中国ではCNOOCともう1社と組み、海南省に58億ドルを投じてコンプレックスを建設する。

ベトナムに関しては、
40億ドルを投じる計画を、PetroVietnam、伊藤忠、タイのSiam Cement Group と予備的協議を開始した。

QPIはアジア進出を進めており、<p>HTML clipboard</p>既報の通り、住友化学主導のシンガポールの2つの石化会社、PCSとTPCにQPIが参加することで合意した。

また、20086月に QPIとPetroChinaShell 3社は中国での石油精製・石油化学コンプレックス建設の予備検討開始の覚書を締結した。

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両計画とも石化原料としてカタールのLPGを使用する。

カタールは、年間約600万トンの液化石油ガス(LPG)生産量を来年末には同1200万トンまで増やすことを計画しており、増加分のほとんどをアジア向けに供給したいとしている。

積極的な投資は、原料にLPGを利用するプラントを建設することでLPG需要の拡大を狙ったもの。

海南島の計画はCNOOCともう1社と組み、海南省に58億ドルを投じてコンプレックスを建設するもので、2010年下期にもNDRCの承認を取得したいとしている。
第一段階では年
380万トンのLPGを原料に年産260万トンのオレフィンを生産するもので、最終的にはオレフィンを500万トンにすると言われている。

海南島ではSinopecが2008年4月に、海南省政府との間で年産100万トンのエチレン計画に関する契約に調印している。

2008/4/14 Sinopec の新しいエチレン計画

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ベトナムではタイのSiam Cementグループとベトナム側のJVのLong Son Petrochemical が、37.7億ドルを投じてHo Chi Minh市近郊で石化コンプレックス建設を計画している。

SiamグループのPVC事業会社Thai Plastic and Chemicals (TPC) と、TPCの子会社でベトナムでPVC事業を行うVina SCG Chemicals が合計で71%を出資、残りをPetroVietnamVietnam Chemical (Vinachem)が出資するもの。

首相が20089月末に建設着工することを承認した。

2008/8/25 ベトナム最大の石化コンプレックス、9月に建設着工

今回、QPIはこの計画への参加について、PetroVietnam、伊藤忠、Siam Cement Group と予備的協議を開始した。

伊藤忠はSiam Cement Group Cementhai Chemical と組んで、イランでHDPEの生産を行っており(下記)、QPIとも2007年11月に海外の石油ガス上流開発、新エネルギー事業、石油化学の分野で協力することで合意している。
同社は1997年以来、QPIが大口株主であるラスラファンLNG社への参画を通じて、カタール国とは長期的に友好な関係を築いている。

伊藤忠広報部によると、同社はベトナムでの石化プラント事業について検討しているという。

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イランでのHDPEの製造販売

 会社名:Mehr Petrochemical Company Ltd(略称:MHPC)
 立地  :
アサリューエ
 
出資者:NPC (イラン国営石油化学) 40%
      投資会社 60%
 能力  :30万トン
 プロセス  三井化学保有の高密度ポリエチレン製造技術
 建設  三井造船・三井化学 

2006/6/20 伊藤忠のイランHDPE計画に米国の圧力?

 


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Qatar Petroleum International(QOI)Shell11月11日、QPIがシンガポールの住化主導の2つの石化会社、Petrochemical Corporation of Singapore(PCS) The Polyolefin Company (TPC)のシェル持分に参加する契約に調印した。12初めにも実現する。

QPIとシェルは2007年に戦略的パートナーシップ契約を締結し、川上から川下全般で、双方が関心を持つインターナショナルな計画を一緒に行うこととしている。

現在、シェルはPCS50%TPC30%を出資しているが、この持分をQPIとシェルの新設の50/50JVQPI and Shell Petrochemicals (Singapore) Pte Ltd に譲渡する。譲渡価額は明らかにされていない。

TPCPCSについては 
   
2006/4/2 シンガポールの石油化学の歴史
   
2006/4/3 シンガポールの石油化学の歴史-2 

QPIにとっては初めての海外での石油化学への参加となる。

QPI20083月にSinopecとの間で中国でのエチレンプラント建設の覚書を締結した。

場所は未定だが、エチレン能力は年産70万~80万トンを考えている。カタール石油では同社が原料をコンデンセートを供給すること、生産開始を2013年と考えていることを明らかにした。

また、20086月に QPIとPetroChinaShell 3社は中国での石油精製・石油化学コンプレックス建設の予備検討開始の覚書を締結した。その後の情報では、場所は浙江省台州で、20百万トンの製油所、12百万トンのエチレンとされている。

2008/4/14 Sinopec の新しいエチレン計画

QPIでは、QPIの目標は世界のエネルギー産業で主要なプレイヤーとなることで、カタールは石化原料の生産を増やしており、重要なアジア太平洋地域の石油化学事業に進出することで、グローバルな目標達成に一歩を進めたいとしている。

シェルはカタールのRas Laffan Industrial City世界最大の2つのエネルギープロジェクトPearl GTL(Gas to Liquids)Qatargas 4 LNG 計画を行っている。

Pearl GTL はシェルのGTL技術を使用し、日量16立方フィートのガスを処理し、日量12万バレルのNGLとエタン、日量14万バレルのGTL製品を生産する。現在最終テストを行っている。

Qatargas 4 は日量14立方フィートの天然ガスをLNG、NGLに転換する。年780万トンのLNGと原油換算日量7バレルのNGLを生産する。
シェルは
QPIと組み、30%の出資を行っている。

 


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2009年11月13日の取締役会で増資の決議を行ったと発表した。株数で29%増、総額643億円もの多額の増資となる。

2009/11/16 三井化学、増資

三井化学は11月24日、発行価格を発表した。
同日の株価 205円から3.41%ディスカウントし、198円となった。(払込は189.8円)
(引受人は払込金額で買取引受けを行い、発行価格で募集を行う)

増資発表前日の終値は288円であった。
同社では手取りを279.5円として、総額を643億円とみていた。

増資発行で需給の悪化を懸念した売りが続いた。
ヘッジファンドなどが発行価格の引き下げを狙って値決め前に同社株を信用取引で売り、価格決定後に買い戻す動きがあったという。

発表後の翌取引日の11月16日の終値は243円と13.2%の大幅値下がりとなったが、その後も19日には223円に下がり、24日は安値204円、終値205円となった。

同社株の10年来最安値は本年3月3日の一時201円で、終値最安値は同じく3月3日の206円であった。
11月25日に一時198円となり、10年来最安値を更新した。

この結果、手取概算額合計上限は 433億円と、当初予定より210億円もの大幅減少となった。

同社では、投資計画には変更なく、調達不足分は借入なども検討するとしている。


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中国有色金属建設(NFCChina Nonferrous Metal Industry's Foreign Engineering and Construction Co.)は豪州の銅・ボーキサイト・金などの採鉱会社Ord River Resources とのJVSino Australian Resources (Laos) でラオスでボーキサイトの採鉱を行っている。

SARCONFC51%ORD49%を出資し、NFCが運営を担当している。
現在、南ラオスのBolaven Plateau
574km2の採掘権を持ち、LSIと密接に協力し、開発中で、更に867km2を申請している。
ボーキサイトの埋蔵量は20億トンと推定されている。

このJV(SARCO) 1029日、ラオスのSahabolisat Lao Bolikarn Ltd LSI:Lao Service Incorporation Ltd)との間でボーキサイト採掘・アルミナ生産のための合弁契約を締結した。



新しい
JVSARCO 51%を出資、LSI は残り49%を出資するが、LSIの出資部分の一部はラオス政府が引き受ける。
JV設立で、ボーキサイトの開発段階から実際の採掘に移行する。

JV契約によれば、
・年産60万
トンのアルミナ工場を建設する。現在の予想で建設費は5億米ドル。
FS結果にもよるが、将来必要になれば能力を180万トンに拡張する。
FS18ヶ月で完成させる。
・建設資金は中国の銀行を含む商業銀行と各国の開発銀行から調達する。

ーーー

中国有色金属建設は中国国内及び海外で非鉄金属資源の開発を行っている。

海外プロジェクトには以下のものがある。

カザフスタン アルミ精錬計画 年産25万トンのアルミ精錬所を2期に分けて建設
ザンビア Chambishi 銅鉱山
ベトナム Sin Quyen 銅鉱山
イラン Yazd 亜鉛精錬
Faryabフェロアロイ工場
Arakアルミ精錬
Jajarmアルミナ工場再建 1999年に28万トン能力が完成したが不具合で動かず。
再建を担当、2002年に稼動。
Khatoon Abad 精銅工場

 


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114日、米通商代表部は中国が金属や化学工業製品などの原材料の輸出を不当に制限しているとして、欧州連合、メキシコとともに世界貿易機関(WTO)に対して紛争処理小委員会(パネル)の設置を求めたと発表した。

米国は中国がWTOルールに違反して、黄リン、ボーキサイト、コークス、ホタル石、マグネシウム、マンガン、金属シリコン、炭化珪素、亜鉛などの輸出を制限しており(輸出割当てや輸出税、最低輸出価格等)、これが原因で国際価格が高騰していると非難、中国企業は不公平に有利になっていると指摘している。

EUによると、こうした輸出規制が一般的なWTOのルールだけではなく、WTO加盟議定書に署名することで中国が引き受けた具体的なコミットメントにも違反していると考える。
同議定書は、輸出税については、その適用を禁止しているか、あるいは、限られた数の製品に対してのみ厳格な上限付きで認めており、輸出許可を必要としたり、拘束力のある最低輸出価格を適用したりすることについてもルールを定めている。

これに対し中国は1119日、これを拒否した。「輸出政策は主に環境保護と資源保護を目的としたもので、WTOのルールに沿っている」と主張している。

中国商務省は11月5日、「中国が一部の資源型製品に対し輸出管理を実施する目的は、環境と再生不可能資源の保護にあり、この措置は中国自身の科学的な発展のニーズに合致しており、世界経済の持続可能な発展に向けた努力でもある」と表明した。
WTO加盟時の協定によれば、中国は100種近い原材料など大量使用した製品に対し、輸出制限を実施する権利があるとしている。

本年6月に米国とEUがこの問題でWTOに提訴、その後メキシコが加わった。中国と米国・EU・メキシコとの間で7月と9月に協議が行われたが、不調に終わった。

パネル設置要請への拒否は1回限りで、米国等が再度要請すると、自動的に設置される。

ーーー

この最中に、中国はこれまで制限を加えてこなかったレアメタルの採掘・輸出行為に対し引き締め政策を実行する。

参考 2009/4/22 中国がレアアースの輸出を制限?

工業・情報化部は「2009~2015年レアアース工業発展計画改定案」の策定を終えた。
レアアース輸出に厳しい制限を加えたもので、まもなく正式に公布される。

中国は世界のレアメタルの主な供給国であり、多くのレアメタルの埋蔵量は世界のトップに立っているが、これまで採掘権に対する国の規制が緩く、各種レアメタル鉱はむやみに採掘され、ほとんどが一次産品の形で国外に安売りされた。

このため、2005年に「レアアース原鉱」を「加工貿易禁止類商品目録」に組み入れ、原鉱を禁輸とした。

2007年、国家発展改革委員会と商務部は新たな「外国投資産業指導目録」を公布した。
「目録」では、タングステン、モリブデン、スズ、アンチモンなどのレアメタルが外国業者の進出規制分野に組み入れられた。

しかし、レアメタル鉱の乱採掘問題は依然として由々しい状態で、廉価での輸出は減っていない。

このため、国土資源部は2009年4月、タングステン鉱、アンチモン鉱、レアアース鉱の実地調査許可証、採鉱許可証の申請の受理を2010年6月30日まで一時停止した。

今回、レアアース輸出に厳しい制限を加える。

ーーー

中国商務部は中国のレアメタル輸出規制の主要な目的は環境保護、自然資源保護であるとする。

商務部は以下の通り述べている。

統計によると、日本のレアアースの約83%は中国からのものである。大量のレアアースを入手した後、日本は利用を急がず、備蓄している。

日本は1983年には早くも希少鉱物製品戦略備蓄制度を打ち出した。7種類のレアメタルの輸入依存度は90%を超えている。日本は備蓄する一方で、他方では様々な手を尽く して世界各地、特に中国からこれらの資源を輸入している。

2005年に中国のレアアース産出量は世界の96%に達し、輸出量も60%以上に達したが、価格決定権は中国の企業が握るものではなかった。1998年に比べて、中国のレアアース輸出量は10倍増えたが、価格は36%下がった。

レアメタル採掘のため、鉱区は環境が深刻に汚染され、特に風塵汚染によって地表植生が破壊された。多くの鉱区で周辺数キロが不毛の地となる事態になってしまった。

また、中国の自然資源は過度の採掘によって欠乏するようになり、資源の不足は中国経済の持続的発展にとって重大な障害となりつつある。

中国非鉄工業金属協会のデータによると、現在、中国のレアアース埋蔵量はこれまでの世界の85%から現在は58%に下がり、中国の鉄重石はほとんど採掘しつくされてしまい、約20年採掘することができるだけの灰重石しか残っていない。このほか、現在のペースで採掘すれば、モリブデンは16年、スズは 12年、亜鉛は10年、アンチモンは6年しか採掘できない。

もう一つの理由は、現在では中国は過去のように代価を惜しまず外貨を獲得する必要がなくなった。
中国はもう資源を低価で安売りして外貨と交換する必要はなくなった。

更に、「アメリカと欧州が中国を非難するのは理不尽だ。各国はみな自国の資源を保護しているのだから、どうして中国ができないことがあるだろうか」とする。

アメリカの数多くの鉱産資源の埋蔵量は世界のトップに立っているが、 アメリカは自国の資源を保護するため、多くの鉱山を封鎖し、外国からの鉱産物輸入に転じている。アメリカは1999年から早くも自国のレアアース資源採掘 を次第に停止するようになった。

レアアースの埋蔵量が世界第二の米国は早くから国内最大のレアアースが埋蔵するMountain Pass鉱山を封鎖、モリブデンの生産も停止し、毎年中国から大量のレアアースを輸入している。


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米商務部は11月18日、10月の住宅着工件数を発表した。
年率 529千戸で、一旦上向いたのが、再び下落した。

米国 住宅着工件数推移(季節調整済み年換算:千戸)

  2008 2009 前年同月比
1月  1,083     488  -54.9%
2月  1,100     574   -47.8%
3月   993     521   -47.5%
4月  1,001    479   -52.1%
5月   971   551  -43.3%
6月  1,078   590  -45.3%
7月   933   593   -36.4%
8月   849   581   -31.6%
9月   822   592  -28.0%
10月   763   529  -30.7%
11月   655    
12月     556    
年合計   905.5   550   -39.3%

Obama 大統領は本年217日、7,970億ドルの景気対策法案(Stimulus Plan)にサインした。

サブプライム問題で住宅着工が急激に落ち込んだのに対しては、住宅購入に対して15,000ドルを限度とする税控除制度が導入された。しかし、これは最終的に限度8,000ドルに減額された。

5月からの少しの回復は一部にはこれが貢献しているかも知れない。

しかし、これは11月末で終了する。

米国では自動車買い替え助成制度(燃費の悪い車を燃費の良い車に買い替えると最大4500ドルの補助)を11月までの予定で7月下旬にスタートした。
当初10億ドルだった予算を3倍に増やしたが、予算が底をつく見通しになり8月25日に制度を終了した。

これを利用して販売された自動車は、トヨタが19.4%でトップ、GM 17.6%、Ford 14.4%、ホンダ 13.0%、日産 8.7%の順であった。

米市場の8月の新車販売台数が年換算で約1400万台の水準に急伸したが、助成制度が終了した8月25日以降、販売台数は年換算で800万台に落ち込んだ。

ーーー

欧州でもスペイン政府が2009年以降、太陽光発電の補助金を年間500MWに制限した結果、太陽電池の世界首位のドイツのQ-Cells 上半期決算で大幅な赤字となった。
  2009/9/16
欧州で「太陽電池バブル」崩壊


米議会は住宅減税の延長を決め、11月6日に法案が成立した。内容は以下の通り。

・初めての住宅購入者(3年間住宅を持たない人)は購入額の10%の税控除を受ける。(最高 8,000ドル)
・現在の住宅を少なくとも5年所有している人は購入額の10%(最高6500ドル)の税控除を受ける。
 (これまでは初めての購入者のみであった)
・対象は年所得が125千ドル以下(共稼ぎの場合225千ドル)
・購入契約は2010年4月30日までに締結し、6月30日までに成立すること。
・住宅は居住用であること。

しかしながら、バブル時代には住宅の値上がりが担保となり、返済余力のない人(NinjaNo income, No job, No asset)にも融資が行われたが、現在では融資条件が厳しい。
(2009年7-9月期の住宅ローンの延滞率と差し押さえ率の合計は過去最悪の14.41%となっている。)
これにより住宅購入→新築が急増するとは考え難い。

ーーー

日本でもエコポイント、エコカー補助金も来年3月末で期限を迎える。

経済産業省はこのたび、省エネ型家電の購入を促すエコポイント制度を9ヶ月以上延長する方針を固めた。
対象に発光ダイオード(
LED)照明なども加える方向で検討する。

また低燃費車への買い替えを促すエコカー補助金も少なくとも6ヶ月延ばす方針。

ーーー

消費が振るわないなかで、補助金の効果は大きい。

中国では「家電下郷」、「汽車下郷」の効果で、家電や自動車の生産は依然として伸びている。

参考 2009/6/29 中国の現状

 


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民事再生法手続き中のLyondellBasell 1121日、インドのRelianceから買収のオファを受けたと発表した。
金額などは明らかにされていない。

20077月にBasellが借入金込み190億ドルでLyondellを買収、1220日に合併が完了し、世界第三位の化学会社 LyondellBasell が誕生した。

しかし、2008年の金融危機の影響で売り上げが急減し、合計260億ドルの借入金が重荷となり、借入金の返済期限延長交渉を行っていたが、200916日に破産法 Chapter 11 (民事再生法)の申請を行った。

2009/1/7 LyondellBasellChapter 11 申請

現在、民事再生法の下で再建計画を検討中で、大口債権者に債権の代わりに支配権を与える案が出ている。

今回のRelianceのオファを受け、同社では、これを含め最善策を検討するとしている。

なお、同社はロシアの億万長者 Len Blavatnik の所有するAccess Industries が株主だが、本年5月にドイツの ProChemie Holding Ltd が加わり、両社の50/50出資の ProChemie GmbH が株主となっている。

2009/5/22 LyondellBasell に新出資者

Reliance はインドの新興財閥でインド最大の私企業。 事業は多岐にわたり、ガスパイプライン、石油精製、化学繊維、アパレル等の上流から下底までの石油化学事業、通信、電力等インフラ事業を行っている。

同社はアジアを越えて欧州と北米に石油化学、合成樹脂事業などを拡大する機会を狙っており("global player になりたい")、いずれも失敗はしたが、BPの石化子会社 Innovene 買収を図り、更にGE Plasticsの買収も検討した。

2007/1/16 インドの Reliance Industries

同社では買収により最新技術が得られること、流通ネットワークが得られることなど、大きなシナジー効果が得られるとしている。

Reliance は本年9月に$660 百万ドルの増資を行っている。


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現代重工業を中心とする現代グループは、アブダビ首長国100%所有の投資会社 IPIC からHyundai Oilbank の株式を買い戻すべく、国際仲裁裁判所に訴えていたが、このたび国際仲裁裁判所はIPICに対し、全持ち株を現代グループに買い戻させるよう命じる判決を下した。

ーーー

Hyundai Oilbank は大山に日量36万バレルの製油所と、年産38万トンのパラキシレン、11.3万トンのベンゼン工場を持つ。

本年6月9日、コスモ石油(同じく IPICが20%を出資)がHyundai Oilbank と共同で韓国でパラキシレン事業を行うと発表した。
合弁会社が大山の38万トンのパラキシレン設備を購入し、新たに80万トンの設備を新設する。

2009/5/8 コスモ石油、韓国でパラキシレン製造へ

アジアの金融危機の後の199912月にIPICはHyundai Oilbank の50%を現代重工業から取得した。その後2003年に現代重工業が持つ残り20%を買い取る権利を取得し、2006年にこれを実行した。

現在の株主はIPIC International が20%、IPIC子会社のHanocal Holding が50%で、残り30%を現代グループ各社が保有している(うち現代重工業 19.2%現代自動車が 4.35%)

しかしIPIC2007年に Hyundai Oilbankの業績悪化を受け、20-50%を第三者に売却しようとした。
同年
11月に韓国紙がGS Caltex Corp.がこれに応募すると伝えた。

2008年3月、現代重工業はHyundai Oilbankを買収する意向を示しているGS Caltex などGSグループの3社を相手取って株式買収禁止仮処分を法廷に申請した。
また、IPICが保有しているHyundai Oilbank の全株式に対し株式購入のための権利を行使することにし、これをIPIC側に伝えた。
更に、IPICがこれを不服とする場合に備え、シンガポールの国際仲裁センターに法的紛争の仲裁も要請した。

IPICによると、現代にも売却の意向を伝えたという。しかし、現代側はこれに応じず、全株式の譲渡を求めて訴えた。
現代重工業では「IPICは現代重工業など以前の現代系列の株主と2003年に結んだ株主間契約を違反し、第三者に売却しようとした。契約内容に背いた場合、相手の持っている株式をすべて買収できるように定められている」と主張した。

ーーー

国際仲裁裁判所は今回、IPICが保有する全株式を時価より25%安い価格(@15,000 won)で現代重工業など旧現代グループ系列企業に売却することを命じた。

IPICは1999年と2006年に2回にわたり、現代側から現代オイルバンクの株式を計70%取得しているが、同時に配当2億ドルを受け取 ことを取り決めている。
この際、現代側はHyundai Oilbankが配当2億ドルの支払いを完了するまで、買戻し権の行使を放棄することに同意した。

国際仲裁裁は今回、 IPIC側が故意に配当の受け取りを先延ばしし、現代側の買戻し権行使が妨害されたと認定した。
現代とIPICが当初締結した契約に「一方が契約に違反した場合、相手側に株式を全て譲渡しなければならない」との条項があることを根拠として、現代側への株式売却を命じたという。

ーーー

現代グループの中で、これをどう配分するかは明らかでない。

造船業の現代重工業は最近、事業の多角化を行っており、昨年には CJ Investment and Securitiesを買収している。

ーーー

IPICについては下記を参照。

 2009/2/24 アブダビのIPIC、カナダのNOVA Chemicals を買収

 


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石油化学工業協会は11月19日、政府税制調査会で租税特別措置の見直し等の一環として、ナフサ等石油化学原料の免税に手を加えようとする動きがあることに対し、重大な懸念を表明、非課税の原則が貫かれるよう強く要求するとする緊急決議を行った。

内容は以下の通り。

1. 工業原料の非課税原則は世界の常識
    世界を見渡しても原料用ナフサ等に課税している国はない。
   
2. 世界に類のない石化原料課税は産業存立基盤を破壊
  石油化学工業は下流部門を含めると出荷額30兆円、雇用者73万人、中小企業2万社を擁する重要産業。
中東産油国の石化増強などで厳しい競争にさらされているこの産業の存立基盤をさらに脅かす。
   
3. ナフサ等の課税は国民生活にも大きな影響
  各種容器、食品包装、断熱材などから電気製品や自動車の部品に至るまで材料として広汎に使用され、課税に伴う価格上昇は国民生活に大きな影響を与えるおそれがある。
   
4. 民主党の政策一貫性を期待
  昨年租税特別措置法が期限切れを迎えた時、野党であった民主党は租特法の延長には反対しつつも国民生活に多大な影響のある7項目(ナフサ等の石油石炭税免税を含む)の免税措置を延長する法案を参議院に提出した。
民主党の主張の一貫性を期待。
   

本来、本則で非課税とすべき工業原料用ナフサを便宜的に租税特別措置という形で免税しているが、他の特例的措置と同列に論ずること自体がおかしい。

原料ナフサの課税は世界の常識に反し、産業、雇用、地域経済の実態を理解しないばかりか、国民生活にも配慮せず、論理的にも一貫しない行為であり、全く受け入れることが出来ない。

ーーー

ナフサ等の課税の概要

  石油石炭税 揮発油税
税率 原油・石油製品 2,040 円/KL
[本則の税率]
   24,300 円/KL (国税)
  +4,400 円/KL (地方税)
     
[暫定税率]
  24,300 円/KL (国税)
  + 800 円/KL (地方税)
     
53,800 円/KL  
     
免税の
定め方
租税特別措置法で2年毎に延長
(来年3月末で期限切れ)
租税特別措置法で期限を定めず
に免税
免税
相当額
  約1,000億円   約3兆円

なお、ナフサ(輸入)価格は11月現在約4万5000 円/KL

参考 2008/1/22 ガソリン税問題と石油化学業界への影響

 


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三菱ケミカルHDと三菱レイヨンは11月19日、三菱ケミカルHDに三菱レイヨンを統合することに合意し、基本合意書を締結したと発表した。

三菱ケミカルHDが三菱レイヨンの発行済株式のすべてを取得し、三菱レイヨンを完全子会社とする。

三菱ケミカルHDは、国内外の関係法令に基づく必要な手続き及び対応が完了することを条件に、2010年2月上旬に、三菱レイヨンの発行済株式のすべてを対象とする株式公開買付けを開始し、3月末までに決済を完了する予定。
買付価格は、三菱レイヨンの普通株式1株当り380円を予定。(11月18日終値 271
円)
(買収総額は最大で2174億円となる)

公開買付けは三菱レイヨンの議決権の過半数を保有することとなる株式数を下限として設定。
(応募株式が当該数に達しない場合には、応募株式の全部の買付けを行わない予定)

三菱レイヨンの発行済株式のすべてを取得できなかった場合、取得できなかった株式については、三菱レイヨンとの間で三菱ケミカルHDの株式を対価とする株式交換を行い、三菱レイヨンを完全子会社とする。

三菱レイヨンの上場は廃止。

ーーー

8月10日の日本経済新聞はトップ記事で三菱ケミカルホールディングスが三菱レイヨンを買収する方針を固め、TOBにより完全子会社化する方向で調整していると伝えた。

三菱ケミカルホールディングスの小林善光社長は8月21日の記者懇談会で、三菱レイヨン買収で同社と協議を進めていることを正式に認めた。

両社の歴史、三菱レイヨンの概要は以下を参照。

2009/8/10 三菱ケミカルホールディングスが三菱レイヨンを買収?

ーーー

両社は本経営統合の目的を、両社の経営資源を一体化し、企業規模の拡大と強固な事業基盤の確立を図るとともに事業競争力と開発力を強化し、今後一層の激化が予想されるグローバルな競争に勝ち抜く企業グループとなることとしている。

新体制
三菱ケミカルHD 三菱化学 化学品                         
三菱レイヨン MMAを基軸とした化成品・樹脂事業
アクリル繊維・アクリロニトリル及び誘導品事業
炭素繊維・複合材料事業
アセテート・機能膜事業
三菱樹脂 機能商品
田辺三菱製薬 ヘルスケア


経営統合で期待される効果は以下の通り。

 三菱ケミカルHD:
  企業規模の拡大に加えて、 
  三菱レイヨンのMMA事業という新たな中核事業の獲得
  今後急速な需要拡大が期待される
炭素繊維・複合材料事業及び水処理事業などの成長事業の獲

  高付加価値事業へのシフト加速
  スペシャリティーケミカル事業分野におけるシナジー
  物流、購買調達、事業拠点及び類似事業を行う関係会社群の統合等によるコストシナジー

 三菱レイヨン:
  MMA系事業、炭素繊維・複合材料事業及び水処理事業の育成と拡大などについて、
  三菱ケミカルHDの強固な事業基盤や優良な経営資源をフル活用することが可能
  (
Lucite買収資金は16億米ドルで、同社にとっては重荷である)

  グループ内のシナジー効果によって「世界市場でトップの事業群を構築する」という基本目標の実現を加速
  人材面を含めた様々な経営資源の拡充・強化

三菱ケミカルHDの小林社長は、「三菱レイヨンの参画により、三菱ケミカルグループの連結売上高は3兆5000億円、世界の化学会社の中ではデュポンを抜き、SABICに次いで第6位となる。レイヨンのMMA事業や炭素繊維・複合材、水処理事業、スペシャリティケミカル事業など、次世代コア事業を一体的に運営することによりコストで30億円、事業面で70億円、計100億円のシナジーが実現できる」と強調した。

世界の化学メーカーの売上高(三菱ケミ資料)

1 BASF  7.8兆円
2 Dow Chemical  6.0
3 LyondellBasell  4.9
4 Bayer  4.1
5 SABIC  3.9
6 三菱ケミカル+三菱レイヨン  3.5
7 DuPont  2.7
8 Evonik Industries(Degussa)  2.0
9 Akzo Nobel  1.9
10 住友化学  1.7
11 Air Liquid  1.6

付記

発表後の19日の三菱レイヨンの終値は80円アップの351円に、三菱ケミカルHDは16円安の294円(一時287円)になった。

 


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経済産業省は11月12日、化学産業について、その将来の方向性と官民の今後の取り組みについて検討するため、「化学ビジョン研究会」を発足すると発表した。

1.目的
我が国の化学産業は、時代とともに発展し、最近では、電子材料や、自動車に部材を提供し、我が国製造業の競争力の源泉となっている。
他方、昨年来の世界的な不況や地球環境問題への対応の必要性、中東や中国での新鋭プラントの増強等、化学産業をめぐる環境には大きな変化が生じている。
こうした中で、次世代に向けた新たな化学産業の方向性について問題意識を共有化し、その対応のあり方について検討を行う。

2.主要議題
① 化学産業の現状と課題
② 新たな化学産業の方向性
 (グローバリゼーション、地球温暖化問題、ビジネスモデル、研究開発、人材育成)
③ 化学産業の発展のための取組

3.検討スケジュール
 第1回(11月13日): 現状と課題を議論
 第2回(2月):作業ワーキンググループの検討経過を踏まえた中間段階の議論
 第3回(3月頃):研究会報告取りまとめ

メンバーは東京大学大学院の橋本和仁教授を座長に、産学代表、有識者ら16人で構成する。(順不同、敬称略)

◇座長   橋本和仁   東京大学大学院 工学系研究科教授
         
◇委員  : 石川城太   一橋大学大学院 経済学研究科教授
    水野哲孝   東京大学大学院 工学系研究科教授
    橘川武郎   一橋大学大学院 商学研究科教授
         
    小林喜光   三菱ケミカルホールディングス 代表取締役社長
    榊原定征   東レ 代表取締役社長
    菅原公一   カネカ 代表取締役社長
    高橋恭平   昭和電工 代表取締役社長
    田中稔一   三井化学 代表取締役社長
    土屋 隆   東ソー 取締役会長
    蛭田史郎   旭化成 代表取締役社長
    廣瀬 廣   住友化学 代表取締役社長
    古河直純   日本ゼオン 代表取締役社長
    吉田淑則   JSR 代表取締役会長
         
    小柳正治   JEC(日本化学エネルギー産業労働組合)連合会 会長
         
    金井孝男   シティグループ証券 調査部マネージングダイレクター
    西村修一   野村證券 企業調査三部長
         

第一回会合は11月13日に開かれ、メンバーのほか、METIの松下忠洋経済産業副大臣、近藤洋介政務官、平工奉文製造産業局長らが出席した。
 
松下副大臣は以下の通り挨拶した。

鳩山総理から直嶋経済産業大臣には
(1)アジアの成長を取り入れた経済成長戦略の構築
(2)中小企業対策の強化
(3)安定した資源の確保
(4)チャレンジ25、つまり25%カットを目指した地球温暖化対策への取組み、
の4つをしっかりやるよう指示されている。
どれも重要なテーマだが、このビジョン研究会の議題ともよく合致している。
化学産業の将来のためにもよく議論し、立派な結果を出してほしい。

同日、具体的検討を開始するに当たり、次の2つのワーキング・グループを立ち上げた。

 ・研究会ワーキング・グループ   (座長、水野哲孝・東京大学大学院工学系研究科教授)
 ・石油化学サブ・ワーキング・グループ   (座長、橘川武郎・一橋大学大学院商学研究科教授)

ーーー

このブログで何度も取り上げているように、日本の石油化学の問題点は、小規模多数のエチレンコンプレックスの存在である。
産構法以降で日本の石油化学が儲かったのは、1985年~1990年頃のバブル時と、2003年頃からの中国バブルの時代だけで、今後は期待できない。

中東や中国の大規模プラントの新設で、今後は輸出に依存することは難しい。

このため、国内需要に合わせて、エチレンコンプレックスを統合・削減することが必要である。

石油化学事業を今のままにして、化学産業の将来のビジョンはあり得ない。<p>HTML clipboard</p>

この研究会が大胆な結論を出すことを期待したい。
(但し、産構法の場合のように、政府主導のカルテルで構造改善することは出来ず、各社で独自に対応するしかない。)



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欧州委員会は11月11日、塩ビ用熱安定剤のカルテルでAkzo、Ciba等に合計192,126千ユーロの制裁金を科した。
(委員会発表では
173,864千ユーロとなっているが、各社の金額を合計すると上の通りとなる)

各社は、スズ安定剤については1987年から2000年の間に、エポキシ化大豆ESBO/esters)については1991年から2000年の間に、価格協定、需要家割り当て、市場情報交換などを行った。

調査はChemtura からの情報に基づき、2003年2月に始められた。

2003年2月には、欧州委員会の要請に基づき、米国司法省、カナダ競争局、日本の公正取引委員会が塩ビ樹脂用モディファイヤーのMBSの販売を巡る国際カルテルに関する同時調査に着手している。

Chemtura はこの調査の過程で本件カルテルについて通報したのではないかと思われる。

本年3月に各社に対して異議告知書を送付し、法的措置を開始した。

「異議告知書」とは、欧州独占禁止法違反の疑いに関する欧州委員会の暫定的な見解(未確定)を示し、当事者の意見を求めるもの。「異議告知書」は調査途中の文書であり、欧州委員会の最終決定ではない。

制裁金は以下の通り。

  tin stabiliser ESBO/ester 合計
Fine (Euro)
  加減率 Fine (Euro)  加減率 Fine (Euro)
Akzo (オランダ)    21 800 000    18 800 000  40 600 000
Elementis (英/)    16 834 000    15 741 000  32 575 000
Arkema France (フランス) +90% -30%  10 046 400 +90% -50%  18 600 400  28 646 800
Baerlocher (ドイツ)  -20%  1 000 000      1 000 000
Chemson (オーストリア)        3 801 600  3 801 600
Chemtura()  -100%  0 -100%  0  0
Ciba (スイス) -15%  61 320 000 -25%  7 104 000  68 424 000
Faci (イタリア)        5 940 000  5 940 000
Reagens(イタリア)    10 791 000      10 791 000
AC Treuhand (スイス)    174 000    174 000  348 000
合計   121 965 400    70 161 000  192 126 400

Chemtura はカルテルの存在を通知したため、制裁金を免除された。
他方、
Arkemaは以前にも同様のカルテルに参加していたため90%増しとなった。

ArkemaBaerlocherCibaは調査への協力で減額された。

AC Treuhand はスイスのコンサルタントで、カルテルのアレンジをしたため、制裁金を科せられた。

マリーンホースカルテルでもコンサルタントが同様の理由で米国で30ヶ月の禁固刑、10万ドルの罰金を科せられている。

<p><p><p>HTML clipboard</p></p></p>Cibaを買収したBASFでは、Cibaが1998年に添加剤事業を売却(Witcoのエポキシ事業と交換)しており関係がないという理由で、本件を欧州第一審裁判所へ提訴するとしている。

Witco 1999年にCrompton & Knowles と合併し、Crompton となった。
2005年にCrompton Great Lakes Chemical が合併し、現在のChemtura となった。

Chemtura は制裁金を免除されが、カルテル当時はWitcoである。

AkzoNobel も2001年に添加剤事業部 Akcros Chemicals PVC を英国の投資会社 GIL Investmentsに売却している。

 


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文部科学省科学技術振興調整費で行われている「戦略的研究拠点育成」で、東京大学が環境関係の大プロジェクト IR3Sを実施しているが、このプロジェクトの叢書No.1として、「地球温暖化懐疑論批判」という冊子が発行された。

内容: http://www.ir3s.u-tokyo.ac.jp/pages/236/all.pdf

「人為起源の二酸化炭素排出を主な原因として地球規模で気候が温暖化するという、いわゆる人為的地球温暖化説の信憑性や地球温暖化による被害を緩和するための対策の重要性に対し、懐疑的あるいは否定的な見解をとる議論が日本国内でも存在している。
社会からの信頼にその活動基盤を置く科学者コミュニティは、こうした現状を座視すべきではないと考える。
したがって、本稿ではこれらの議論から主な論点を拾い上げ、一方的な、あるいは間違った認識に基づくものに対して具体的な反論を行う。
(本文「our mission」より)

執筆者(批判側)と、取り上げられた否定的見解(批判される側)は以下の通り。(敬称 略)

批判   批判される側
明日香 壽川    東北大学
吉村 純    気象研究所
増田 耕一     海洋研究開発機構
川宮 未知生      海洋研究開発機構
江守 正多      国立環境研究所 
野沢 徹        国立環境研究所
高橋 潔    国立環境研究所
伊勢 武史    海洋研究開発機構
川村 健二    国立極地研究所
山本 政一郎    東京大学

      

  槌田 敦
薬師院 仁志
渡辺 正
伊藤 公紀
近藤 邦明
池田 清彦
矢沢 潔
ロンボルグ
ダーキン(映像監督)
武田 邦彦
伊藤・渡辺
山口 光恒
丸山 茂徳
武田・丸山
養老 猛司
赤祖父 俊一

安井至氏の「市民のための環境学ガイド」がこれを取り上げ、内容を紹介している。
  
http://www.yasuienv.net/CriticalSkeptic.htm

その中で同氏は、「ざっと読んだ感想としては、これで科学的な論破はできているように思う」とし、「いずれにしても、この冊子が懐疑論者に対して、決定的な影響を与えるだろう。これはほぼ確実だ。果たしてどんな結末になるか、しばらくは見守りたい」としている。

これに対してNPO法人「もったいない学会」会長の石井吉徳・東京大学名誉教授は、「あまりに幼稚な内容の冊子、東大サステナの知性を疑いました」と述べている。


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Braskem 119日、メキシコのProject Ethylene XXI のための原料エタンの入札(Pemex Gasによる)で、メキシコの化学会社IDESAと組み、落札したと発表した。

メキシコ政府は2004年に同国の石油化学の拡大のため、野心的な "Phoenix project" を打ち出した。
国営石油会社 Pemex がパートナーとしてカナダの Nova Chemicals とメキシコの私企業2社 Idelpro Grupo Idesa を選んだが、Pemex が天然ガス等の原料の価格を米国の市場価格ベースにするよう主張したため、話がまとまらなかった。

2008年2月、Felipe Calderón 大統領は、新しく年産100万トンのエチレンコンプレックスを建設して同国の石油化学を復活させるための入札を発表した。
今回の計画には Pemex
自体は参加せず、長期契約での原料のエタン、天然ガスの購入の入札を行なうこととした。

2008/2/23 メキシコ政府、第二のPhoenix project 開始

Project Ethylene XXI Veracruz州のCoatzacoalcos Petrochemical Complex2015年に操業開始を予定している。
メキシコは現在、年間100万トン以上のPEを輸入しており、これを自製しようという政府の方針に基づく。

Braskemが主導でIDESAが参加するJVが運営に当たる。
・競争力ある価格で原料エタンを
Pemex Gasから20年間の契約で購入する。
・エタンを原料に年産
100万トンのエチレンクラッカーを建設する。
3系列合計年産100万トンのPEプラントを建設する。

エチレンの一部は、PEMEX Petroquimicaの既存のVCMプラントに供給される。VCMプラントは同じCoatzacoalcosにあり、3年内にデボトルネックされる。

投資額は5年間で25億ドルと想定されており、70%を借入金、30%を自己資本で賄う計画で、Braskem201012月までに最終的な投資計画を確定する。

Project Ethylene XXIBraskemの米大陸におけるレジンのリーダーになるという戦略を補完するものとなる。

ーーー

当初、メキシコの化学会社3社、Mexichem、IDESAAlpekが参加を表明した。3社は昨年、コンソーシアムを結成した。
JVを設立し、有利な価格でエタンが得られれば、エチレンとPEPPのコンプレックスを建設することとした。

IDESSAは当初のPhoenix project のPemex パートナーの1社(他はカナダの Nova ChemicalsとメキシコのIdelpro

Mexichemはエチレン自製により、PVCチェーンのコストダウンを狙った。
IDESA PEに関心を持つ。
AlpekAlfaグループの石油化学部門)PPに関心を持つ。

Alpek LyondellBasell PPJV Indelpro に参加している。ほかにEPSPTAPETを生産している。

しかし3社のどれもエチレンの生産をしておらず、ポリオレフィンでもAlpek PPJV Indelpro に参加しているだけである。

Braskemの参加はコンプレックスの技術面、運営面で大きな意味を持つが、反面、Braskemが中心となり、3社のJVにおける位置付けが弱まる。
また、
BraskemPEに関心があり、PP計画は消えた。

今回 IDESAのみがパートナーとなったのは、この理由で他の2社が撤退したためと思われる。

ーーー

Grupo IDESAPetrochemicalConstruction SystemsDistribution 3事業を行っている。

Petrochemical1956年にメキシコ市近辺での無水フタル酸の生産で始まった。

現在の扱い製品は以下の通り。
  エチレングリコール、プロピレングリコール、エタノールアミン、ポリスチレン(
EPSGPPSHIPS
  可塑剤
DOP、無水フタル酸、無水マレイン酸


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三井化学、増資

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2009年11月13日の取締役会で増資の決議を行ったと発表した。株数で29%増、総額643億円もの多額の増資となる。

同社が公募増資を実施するのは、1997年10月に三井石油化学と三井東圧化学が合併し、三井化学が発足して以来、初めて。

 

同社は11月2日に経営概況説明を行い、主要戦略見直しを説明した。
http://jp.mitsuichem.com/ir/pdf/event_rev3_091102.pdf

主要戦略見直しで、「新たな成長戦略」と「事業基盤の強化」を打ち出したが、そのための設備投資、投融資の資金とする。

1.新たな成長戦略
  他社との提携やM&Aにより、事業拡大と新事業創出のスピードアップを図りながら、
  次の3つの基本戦略を推進する。
   ① 競争優位事業のグローバルな拡大
   ② 持続可能な発展のための高付加価値事業の拡大
   ③ 地球環境との調和を担う新製品・新事業の創出

2.事業基盤の強化
  上記の3つの基本戦略を進めるために、次の方策により事業基盤の強化にも取り組む。
   ① 筋肉質な体質への転換 (更なるコストダウンの推進)
   ② 国内設備の統廃合推進 (最新鋭の大型設備への統合による競争力の強化)
   ③ マーケティング力強化
      (営業部門やアジア各拠点への新たなマーケット要員配置による市場開発加速)

今回の公募増資及び第三者割当増資により、発行済株式総数は以下の通りとなる。

現在の発行済株式総数  792,020,076株
公募増資による増加株式数 206,000,000株
第三者割当増資による増加株式数 24,000,000株
増資後の発行済株式総数 998,020,076株
増資による手取概算額合計 上限 64,292百万円

発行価格は11月24日から27日までの間のいずれかの日に決める。
(上記の手取り概算は279.5円)

手取額概算643億円のうち、60億円は、フェノールプラントを建設する上海中石化三井化工と、中国華南地区に設立する佛山三井化学ポリウレタンへの投融資資金とする。
    2009/11/4  
三井化学、シノペックとの合弁事業の基本合意

残りは同社の一般の投資資金に充てる。

セグメント 設備の内容 投資予定額 うち
既支払額
機能材料 α-オレフィンコポリマー製造設備増強
液状ポリオレフィンオリゴマー製造設備増強
超高分子量ポリエチレン製造設備増強
ウレタンフォーム原料製造設備増強
太陽電池封止シート製造設備増強
その他設備の合理化・維持更新等
480億円 93億円
先端化学品 リチウムイオン電池用電解液製造設備増強
その他設備の合理化・維持更新等
80億円 13億円
基礎化学品 1-ヘキセン製造設備新設
メタロセン直鎖状低密度ポリエチレン製造設備増強
ポリプロピレンコンパウンド製造設備増強
その他設備の合理化・維持更新等
410億円 80億円
その他 各種設備の合理化・維持更新等 380億円 73億円
1,350億円 259億円

ーーー

増資のタイミングとしては最悪の時期ではないであろうか。

同社は2009年3月期に952億円の赤字を計上、2010年3月期も390億円の赤字を予想している。
中間配当も無配とした。

                                 単位:百万円(配当:円)
売上高 営業損益  経常損益 当期損益  配当
中間 期末
08/9中間 905,615 9,989 13,343 7,640 6.0
09/9中間 549,869 -19,010 -22,131 -31,363 0.0
増減 -355,746 -28,999 -35,474 -39,003 -6.0
09/3 1,487,615 -45,493 -50,768 -95,237 6.0 3.0
10/3 1,210,000 -15,000 -23,000 -39,000 0.0 未定

同社の株価は(住友化学や三菱ケミカルHDも同様だが)、現在非常に低い水準にある。(発表前日の終値は288円)

 

付記

13日の発表後の翌取引日の11月16日の終値は243円と13.2%の大幅値下げとなった。
(10年来最安値は3月3日の一時201円、終値206円)

時価総額は1,924億円となり、7ヶ月ぶりに2,000億円を下回った。
(同日の株価で住友化学の時価総額は5,941億円、三菱ケミカルHDは4,714億円)


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三菱ケミカルHDは2009年9月中間決算で、マレーシアに廃棄物処理施設を設置する工事費用の負担に備え、関係会社整理損として125億円を計上した。

当時の三菱化成が1973年にマレーシア最大の選鉱業者で希土類事業に進出を企てていたBEH Minerals Sdn Bhd との合弁会社 Malaysian Rare Earth Corporation を設立した。

三菱化成は1979年にBEH Minerals などとともに同社35%出資でAsian Rare Earth (ARE)を設立した。
1982年にイットリウムなどレア・アースをスズの鉱石と一緒に出るモナザイト鉱などから抽出する事業を首都クアラルンプールの北側にある町 Ipoh 郊外にあるBukit Merah Industrial Estate で開始した。

能力は年産 4200 トンの軽希土類、550トンの重希土類、4400トンのリン酸三カルシウムで、希土類は全て日本に輸出され、日本で分離精製された。

しかし、工場はトリウムを含む残土の保管施設を持たず工場の裏にあった池や地面に野積み状態にしていた。

このトリウムはウランと同じように放射性物質で、日本では 1968年の原子炉等規制法の改正により、その投棄や保管には厳格な法規制が課せられた。1971年には日本での操業はなくなった。

工場の目の前には人口1万人が住むBukit Merah 村があった。住民たちの間に健康被害が現れ、住民はAREの操業停止を求めて抗議活動を展開した。

1985年にはイポー高等裁判所に提訴し、高裁はすぐさま仮処分として操業停止命令を出したが、その後AREは廃棄物の仮備蓄場を建設し、マレーシア原子力許可委員会から操業の再開を認められた。

しかし保管は完全でなく反対運動は続いた。

1992年にはイポー高裁で操業中止の判決が出されたが、1993年にクアラルンプールの最高裁で操業を合法として認める判決が出された。

しかし、三菱化成は1994年1月、マレーシアからの撤退を決め、問題の工場も閉鎖された。

ーーー

工場撤去工事はマレーシア政府認可に基づき2005年末までに完了し損失処理が終了している。

三菱化学は、2007年7月にマレーシア政府から廃棄物処理施設設置工事の認可を得た後、2009年3月に複数の候補との間で工事契約締結に向け詳細検討を開始、8月に契約締結を決定した。


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東ソーが豪州アルミナ各社と進めていた7-12月期の苛性ソーダ価格は、前期比210ドル安の180ドル/トン(本船渡し)となった。

2008年7-12月期に史上最高の495ドルとなった。

    2008/7/8 豪州向け苛性ソーダ輸出価格、最高値に

しかし、2009年1-6月分は交渉が難航した。
日本側は2008年11月に670ドルを提示、豪州
勢は反発して購入希望価格も提示しなかった。
その後、アジアスポット市場が急落、中東や台湾メーカーが390ドルで決着したため、日本もこれで妥結した。

2009年4月のPlatts の報道では、米国でパルプ、製紙、アルミナでのソーダ需要減により価格が急降下、中国品が200ドル/トンまで下がった。

今回の交渉では、5月半ばに300ドルの売値を示したが、豪州勢の提案は200ドル未満で、交渉が難航したという。<p><p>HTML clipboard</p></p>
なお、今回から、各社が個別に交渉する。

 


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中間決算対比

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各社の9月中間決算がほぼ出揃った。

営業損益で見ると、各社とも前年同期比で大幅減益で、2007年9月期と比べると、更に大幅な減益である。

特に総合石油化学の減益幅が大きい。JSRなど、新規事業でも大幅減益となっている企業も多い。

この中で、チッソの健闘(前年同期比プラス)が目立つ。液晶と液晶関連材料が好調としている。
協和発酵キリンは2008年4月にキリンファーマを逆取得した。

2009/10/28 注目企業の9月中間決算ー1 信越化学、JSR
2009/11/2 注目企業の9月中間決算-2 住友化学、三井化学
2009/11/5 注目企業の9月中間決算-3 三菱ケミカル
2009/11/6 注目企業の9月中間決算-4 東ソー、旭化成
2009/11/11 注目企業の9月中間決算-5 帝人、東レ、三菱レイヨン

6月中間決算会社の赤字が大きいのは期間の問題。
全般的に本年1-3月が最悪、4-6月、7-9月と大きく改善しており、9月中間決算会社と比べ、7-9月の代わりに1-3月が入るのが響く。

6月中間決算の旭硝子の営業損益の前期比は、
  ガラス -478億円   
電子・ディスプレイ -409億円
化学  -127億円など、
-1,021億円
昭和電工は、
電子・情報 -232億円
石油化学 - 40億円など、
-475億円
いずれも電子・情報部門の赤字が大きい。

7-9月期では旭硝子の営業損益は318億円の益、昭和電工も67億円の益となっている。
旭硝子では電子・ディスプレイ部門が391億円の益となっている。

ーーー

既報の通り、中国向け輸出が好調で、エチレンはほぼフル操業を続けている。

製品別でもPE、塩ビはよくないが、他の製品の操業度はかなり高い。

それにもかかわらず、上期の営業損益は極端に落ちこんでいる。

中国向けの11月のPVC輸出価格は850ドル/トンとなった。米国の塩ビメーカーが中国や中東に輸出攻勢をかけている。
日経の商品相場欄では国内価格は135.5円/kgとなっており、内外価格差は大きく、輸出は以前のように採算の取れるものではなくなっている。

その中国の需要は「家電下郷」、「汽車下郷」などの景気刺激策に負うところが大きく、いつまでも続かない。

PetroRabighが11月8日に竣工式を挙行したが、今後も中東・中国の新設備が次々に完成する。
更に、ナフサ価格の更なる上昇などマイナス要因が多い。

<p>HTML clipboard</p>石油化学については、今後、損益が大きく改善する可能性は見当たらない。 


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イラクは6月30日、第一次開放対象の国際入札を実施した。権益は与えず、生産量に応じ報酬を得るもの。

Rumaila油田については、BP 66% /CNPC33% 連合がExxonMobil 80.1%/Petronas 19.9%連合を破り、落札したが、他の油田、ガス田は条件が合わず。マンスーリャは応札なし。

BP/CNPCは投資コストを回収した上で原油1バレル3.99ドルの利潤を得ることを提案していたが、イラク石油省はこの利潤を2ドルに引き下げるよう求めた。さらに、イラクはルマイラ油田の一日の採掘量を110万バレルから280万バレルに引き上げることも求め、BP側は承諾した。

BP連合は11月3日、イラク政府のState Oil Marketing Organisation と技術サービス契約に調印した。
コンソーシアムはBP 38%、CNPC 37%、イラク政府の
State Oil Marketing Organisation 25%となった。

BP CNPC 150億ドルを投資する計画。

2009/4/7 イラクの油田開放、クルド人自治政府と契約の韓国企業を除外

他社が落札しなかったのには問題があった。

イラク側の条件は権益は与えず、生産量に応じ報酬を与えるというものだが、各社が4~5ドルの報酬を求めたのに対し、イラク側は2ドルを主張した。
しかもイラクの税制では、全収入(石油コスト
+利潤)に課税するというもので、税引後では余り残らず、各社にとってメリットがなかった。

ーーー

今回、イラク政府は税制を改正し、利潤にのみ課税されるようになった。

<p><p>HTML clipboard</p></p>

112日、イラク石油省はイタリアのEni、米Occidental Petroleum、韓国ガス公社(KOGAS)の連合と、41億バレルの Zubair開発の仮契約に調印した。

7年内に現在の日量20万バレルを110万バレルにする。連合の利潤は当初の要求額バレル当たり4.80ドルに対し、2ドルに引き下げられた。

 

なお、第一次開放とは別枠でNasiriyah油田(Samawahの南東)の交渉が行われている。

将来、日量数十万バレルの生産が見込まれる有望油田で、日本連合(新日本石油/国際石油開発帝石/日揮)とEniが争ってきた。

Eniは今回調印したZubair開発に注力するため、Nasiriyah油田は放棄する意向で、日本側に権利が与えられるのは確実とみられている。

ところがロイターの報道によると、日本石油の代表が交渉のために11月初めにバグダッドに到着したが、空港から出て石油省に行くのを拒否しているとのこと。

Hussain al-Shahristani 石油相は10日、「多忙のためオフィスを離れて外で交渉する訳には行かない。多くの石油会社が石油省で交渉をしているのに、石油省に来ないというのは分からない。日本石油のやり方は不可解である」と述べた。

これが本当なら、本当に不可解である。
<p>HTML clipboard</p>

   

その後の報道では "due to traffic jams     and the security situation" となっている。.    

日本石油は11日、依然交渉中であるとし、コメントを拒否した。

ーーー

イラク石油省は11月5日、ExxonMobil (80%)/Shell(20%)にWest Qurna開発の仮契約に調印した。

契約では
250億ドルを投資し、運営に更に250億ドルをかける。
現在の日量27万バレルを7年内に225万バレルに引き上げる。利潤は1.90ドル。

米系石油会社主導によるイラク石油開発は、1972年の石油国有化以来初めて。

 

第一次開放対象は以下の通り。

  発見 埋蔵量
(億バレル)
現状
(千b/d)
 
北ルメイラ油田(Rumaila)
南ルメイラ油田
1953      92
    73
    470
    585
BP/CNPC
キルクーク油田(Kirkuk) 1927     65     360  
西クルナ油田(Qurna) 1973     74     300 ExxonMobil/Shell
ズベイル油田(Zubair) 1949     40     240 Eni/Occidental Petroleum/KOGAS
ミサン油田群(Missan)
(アブギラブ、ブズルガン、
ジャバルファウキ)
1969
1971
1974
    25     114  
バイハッサン油田(Bai Hassan) 1953     23      7.5  
アッカス ガス田(Akkas)     7tcf    
マンスーリヤ ガス田(Mansuriyah)     5tcf    

 


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主要合繊3社の中間決算で、炭素繊維や産業用樹脂の需要が減り、全社が最終赤字に転落した。
3社とも炭素繊維を含むセグメントは3四半期連続赤字で、回復時期が見えない。

 

帝人

営業損益は黒字だが、最終損益は257億円の赤字だった。
合成繊維などの需要が減少したほか、工場の稼働率低下などで多額の特別損失を計上した。

異常操業損失 -82億円、減損損失 -22億円、事業構造改善費用 -32億円
金銭信託の追加拠出
-72億円

                                単位:百万円(配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
中間 期末
08/9中間  489,871 15,070 8,915  415  3.0  
09/9中間 360,192 2,784 -3,618 -25,783 0.0  
増減 -129,679 -12,286 -12,533 -26,198 -3.0  
             
09/3 943,409 17,966 -2,680 -42,963  3.0  2.0
10/3 760,000 13,000 1,000 -28,000  0.0  2.0

セグメント別には化成品は第2四半期に黒字となったが、合成繊維は赤字が続く。

 
営業損益対比(億円)
  中間決算対比   09/3   四半期対比
08/9 09/9 増減 08/4Q 09/1Q 09/2Q
合成繊維  41 -73  -114     -28   -69 -40 -33
流通・リテイル 20 10 -9   39   6 2 8
化成品  39 5 -34   2   -51 -19 24
医薬医療 107 125 18     248   65 65 60
IT・新事業 5 8 4    36   28 1 7
全社  -61 -48   14   -118   -23 -24 -24
営業損益合計  51 28 -123   179   -44 -15 43
 *合成繊維:パラアラミド繊維、炭素繊維、PEN繊維、ポリエステル繊維
   化成品:ポリカーボネート、PENフィルム、PEN樹脂、ポリエステルフィルム、ポリエステル樹脂
 

東レ

営業損益は黒字だが、最終損益が63億円の赤字となった。

                                単位:百万円(配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
中間 期末
08/9中間  800,865 30,295 27,497 10,532  5.0  
09/9中間 617,928 5,493 -2,678 -6,320 2.5  
増減 -182,937 -24,802 -30,175 -16,852 -3.0  
             
09/3 1,471,561 36,006 20,522 -16,326  5.0  2.5
10/3 1,300,000 25,000 10,000 0  2.5  2.5

炭素繊維は航空機や産業向けなどで需要が低迷したほか、減産を継続したことも利益を圧迫した。

 
営業損益対比(億円)
  中間決算対比   09/3   四半期対比
08/9 09/9 増減 08/4Q 09/1Q 09/2Q
繊維  62 2   -60     77   -23 -11 13
プラスチック・ケミカル 82 11 -71   41   -67 -9 20
情報・通信機器  96 53 -43   98   -30 15 38
炭素繊維複合材料  56 -18 -73      84   -3 -8 -10
環境・エンジニアリング  2 -1 -3   33   29 -15 14
ライフサイエンスその他  8 0 -7     32   23 -3 3
全社 -3 7   10   -4   -2 6 0
営業損益合計 303 55 -248   360   -71 -24 79
 

三菱レイヨン

営業損益、経常損益、当期損益とも赤字で、2010年3月期通期でも赤字の予想。無配とした。

なお、買収したルーサイトは2009年5月に連結子会社とした。中間決算では株式取得以降6月までの実質1か月分のみ含まれている。

                                単位:百万円(配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
中間 期末
08/9中間  198,292 2,942 3,644  126  3.0  
09/9中間 149,789 -2,501 -9,186 -9,776 0.0  
増減 -48,503 -5,443 -12,830 -9,902 -3.0  
             
09/3 345,048 -7,612 -3,758 -28,950  3.0  1.0
10/3 370,000 4,600 -7,000 -8,500  0.0  0.0

同社は20063月期より、退職給付会計における数理計算上の差異の処理方法を、発生の翌年度に営業費用として一括償却する方法に変更している。数理計算上の差異償却を除くと、営業損益は以下の通りとなる。

08/9中間  5,956
09/9中間 80
増減 -5,876

セグメント別では、アクリル繊維・ANと炭素繊維・複合材料は3四半期連続して赤字である。
化成品・樹脂は第2四半期に大きく改善した。

 
営業損益対比(億円)
  中間決算対比   09/3   四半期対比
08/9 09/9 増減 08/4Q 09/1Q 09/2Q
化成品・樹脂  52 53    1     44   -16 -6 59
アクリル繊維・AN -29 -12 17   -91   -28 -6 -6
炭素繊維・複合材料   25 -41 -65   19   -18 -28 -13
アセテート・機能膜   10 -1 -11      10   -2 -5 5
全社  1 1  -0   1   0 2 -1
営業損益合計   60 1 -59   -17   -64 -42 43
 * 化成品・樹脂:MMAモノマー、アクリル樹脂(成形材料、板、フィルム)、高級エステル、
            樹脂改質剤、
ABS樹脂、アクリロニトリルほか
 

 


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ダウと神華集団は11月3日、陜西省楡林市で大規模石炭化学JVの起工式を行った。
但し、FSがほぼ終了し、間もなく中央政府の承認を求め申請する段階である。

JVにはダウ中国と神華集団子会社のChina Shenhua Coal to Liquids and Chemicals Co. (CSCLC) 及び地方政府が出資する。

投資額は約100億米ドルで、陜西省楡林市に石炭と岩塩を原料とし、石炭化学・クロルアルカリ技術を使った23のプラントが建設される。

主な製品は以下の通り。(年産能力)

 メタノール 332万トン(Coal to Methanol)
 オレフィン 122万トン(Methanol to Olefins)
 クロルアルカリ 50万トン
 MEG  40万トン
 エタノールアミン/エチレンアミン 21万トン
 ポリエーテル ポリオール 34万トン
 アクリル酸 15万トン
 アクリレート 20万トン
 EDC  51万トン
 PVC  50万トン

神華集団は1995年に設立された国有企業で、世界8大炭田の一つとされている神府東勝鉱区の開発・運営を担当しており、関連事業として鉄道、発電、貯炭設備、輸送設備を運営している。
内蒙古自治区など各地で石炭化学を手掛けている。

ダウは2004年12月に、神華集団との間で、陜西省楡林市で石炭からオレフィン(coal-to-olefin)を生産する計画のFSを共同で実施する契約を結んだ。

両社は2007年5月に協力契約に調印し、本計画の詳細FSを始めた。当初は2008年に詳細FSを終える予定であった。

ーーー

ダウは2008年7月にRohm and Haas を188億ドル(借入金引継ぎを含む)で買収する契約を締結した。

ダウはこの資金の多くを、石油化学事業をクウェートのPICとの50/50JVにすることで入る資金で充てることにしていたが、2008年12月25日にこれが破談になった。

このため、ダウはRohm and Haas の買収を一時延期したが、裁判になり、結局本年4月1日に買収を完了した。
   2009/4/3 
ダウ、Rohm & Haas の買収を完了

買収資金のつなぎ融資は1年間の契約のため、 K-Dow 破談によって資金繰りが危うくなり、このままでは格付会社が投資基準以下への格下げを行うことが確実なため、ダウは増資や史上初めての減配を行うとともに、R&H子会社のMorton Salt、塩化カルシウム事業、Total とのJVのTotal Raffinaderij Nederland、マレーシアのPetronas とのJVのOptimal グループなどの売却を進めた。
   2009/8/3 
ダウ、マレーシアのOptimal も売却 

また、多くのプラントを停止している。
   
2009/9/14 ダウ、Freeport, Texas 工場のSMを停止

つなぎ融資返済の目処は付きつつあり、一時検討したDow AgroSciences の売却は避けられる見通しだが、このような多額の投資をする余裕はまだないと思われる。
ダウ自身は今回なにも発表はしておらず、着工にはまだ時間がかかると思われる。



参考 2006/8/23 中国でのダウの活動


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住友化学とSaudi Aramcoが合弁で設立したRabigh Refining and Petrochemical (PetroRabigh)は、11月8日、サウジアラビアのRabighで竣工式を挙行した。

竣工式には、首相特使の岩國哲人・前衆院議員のほか、福田康夫元首相や河野洋平前衆院議長ら日本側関係者200人を含む900人が出席した。

住友化学はこのため、JALとANAからジャンボ機を各1機チャーターした。

このうちのJAL機が帰途、ジッダ空港で離陸直前にエンジン制御システムの不具合が発覚した。
河野太郎議員によると、河野前衆院議長はANAなのでよかったが、JALを選んだ福田康夫元総理は、サウジが再入国を認めなかったため滑走路で待つしかなくて大変だったらしい。
 

2006/3/25 ペトロラービグ起工式

2009/4/10 Petro-Rabigh スタート・アップ

2009/4/21 住友化学とアラムコ、「ラービグ第2期計画」の共同FS実施


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米国の鉄管メーカーと組合(United Steelworkers Union)は本年4月8日、中国の輸出した油井パイプ製品に対して、反ダンピングと反補助金及び相殺措置に関する合同調査を行うよう米国商務省とITCに申請した。

ITCは522日、6:0で中国からの輸入により国内産業が被害を受けていることを認めた。
この結果、商務省は相殺関税、ダンピング関税の調査を開始した。
(米国の調査手続きは、ITCが損害について、商務省が調査開始手続・ダンピング・補助金について担当している。)

中国商務部はこれに対抗し、6月1日に、米国とロシア原産の輸入電磁鋼板に対してダンピング調査を開始、合わせて、米国の電磁鋼板に対して相殺関税制度(輸出国の補助金を受けた輸入貨物に対し、国内産業保護のために補助金額の範囲内で割増関税を課す制度)による調査を開始した。

2009/6/3 米中 貿易戦争勃発? 

ーーー

米ITCは6月18日、中国製の自動車用タイヤが安値で大量に輸入され米市場に被害を与えたとして、緊急輸入制限(セーフガード)発動へ「クロ」の認定を下した。
中国製タイヤの輸入急増に伴い米国内の多くのタイヤ工場が閉鎖に追い込まれたとして、全米鉄鋼労組がセーフガード発動を申し立てていた。

米国は9月26日から、中国製の乗用車とトラック用タイヤに対し、現行の4%に35%の輸入関税を上乗せする。
2年目の上乗せ幅は30%、3年目は25%とする。

中国商務部は9月27日、米国原産の輸入ブロイラーに対し、反ダンピング、相殺関税制度による反補助金調査を開始した。

ーーー

米商務省は11月5日、中国製の油井管に対し、最大約99%の反ダンピング(不当廉売)課税を適用すると仮決定した。

OCTG (oil country tubular goods) に対し、
 
Tianjin Pipe International Economic and Trading Corp
 Zhejiang Jianli Co Ltd
 Wuxi Seamless Pipe Co
など37社からの輸入に対して36.53%を課税する。

その他の業者からの輸入に対して
99.14%を課税するというもの。

商務部はこの措置を保護主義と批判、報復措置を取ると述べた。
米国は中国に対して「市場経済国」扱いをせず、アンチダンピング課税で差別的扱いをし、中国の鉄鋼セクターの輸出に重大な影響を与えていると批判した。

商務省によると、昨年の中国製油井管の輸入規模は26億ドル。9月に特別セーフガード(緊急輸入制限)で最大35%の上乗せ関税を決めた中国製タイヤの輸入規模を大幅に上回るとみられる。油井管の扱いは仮決定を踏まえ、来春に米政府が最終決定する見通し。

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これに対抗して、中国商務部は2009/11/6 公告83号&84号を出し、米国製の排気量2000cc以上のSaloon carsCross-country carsについてダンピング調査、相殺関税制度による反補助金調査を行うと発表した。

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米国際貿易委員会(ITC)は11月6日、中国製の光沢紙リン酸塩の輸入により米国内のメーカーが損害を受けていると認定した。
商務省は相殺関税、ダンピング関税の調査を開始する。

光沢紙は雑誌やパンフレットに使われるもので、国内メーカーが中国とインドネシアからの輸入に100%課税するよう求めている。

米国の洗剤や食品添加物メーカーは洗剤やペットフード、肥料などに使われる4タイプの中国産リン酸塩に189%の課税を求めている。

ITCはこのうち、3タイプ(ピロリン酸4K 燐酸1カリウム、燐酸ジカリウム)については被害を認めたが、輸入品の半分を占めるトリポリ燐酸ソーダについては却下した。

なお、同時に審査をしていた中国製のファスナーについては被害を与えていないとして要請を却下した。

Nucor が中国及び台湾製について申請していた。

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これらの決定は11月16日のObama大統領の訪中の直前になされた。

 


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遼寧省瀋陽の Shenyang Power Group (SPG) と、米国の再生可能エネルギー関連の投資会社U.S.Renewable Energy Group(US-REG) 及びテキサスに本拠を置く風力発電企業Cielo Wind Power, LP 3社は1029日、テキサスの36千エーカーの土地で600MWの風力発電を行う計画についてJV契約を締結したと発表した。

再生可能エネルギーに関する最大の米中共同投資計画となる。
また、世界最大の風力発電国である米国への中国からの最初の進出となる。

SPG49%を出資、残りを米国の2社が出資する。
総投資額は約
15億米ドルで、所要資金は中国の銀行がSPGを通じて融資する。

SPGの株主である中国のA-Power Energy Generation Systems が瀋陽の工場で製造する2.5MWの風力発電タービン240基を供給する。20103月にもタービンの出荷を始める予定。

完成すれば18万戸の家庭に電気を供給、数百人を雇用する。

SPGは中国の分散型発電システムと風力発電タービンの主要供給者であるA-Power の主導で20095月に瀋陽に設立された発電会社で、出資者は発電機器メーカーから設計会社まで多岐にわたる。SPGが代替エネルギー分野で大規模なインターナショナルの事業を遂行するため、瀋陽地区の企業を統合した。

A-Power25MWから400MWの代替エネルギーに注力しており、現在年間1.1GWの風力発電タービンを製造している。GE DrivetrainやドイツのFuhrlander などの有力企業の技術をもとに、欧州の部品を使用している。
20093月には GE Drivetrain とのJVを設立した。瀋陽に風力発電タービンのギアボックスを製造する。
また、北京の精華大学、広州の中国科学院と、他の再生可能エネルギー技術の開発・商業化のための戦略的提携を行っている。

米国では本年初めに American Recovery and Reinvestment Act of 2009 が通り、代替エネルギーの技術開発と投資を促進することとなった。

Cielo Wind Powerでは、この法律がなければ、本計画は出来なかったであろうとしている。

 

なお逆に、米国のFirst Solarは2009年9月8日、公式訪米中の中国全国人民代表大会常委会委員長の呉邦国氏との間で、内モンゴル自治区のオルドスに2000MW(2GW)の太陽光発電所を建設することで合意した。

2009/9/16 欧州で「太陽電池バブル」崩壊、米First Solarは好調 

 


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東ソー

営業損益は黒字となったが、当期損益は赤字。
年間配当は前年度と同じとする予定。

                               単位:百万円(配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
中間 期末
08/9中間   425,775  12,009 13,574 5,318  4.0  
09/9中間 297,737 2,491 -60 -2,238 3.0  
増減 -128,038 -9,518 -13,634 -7,556 -1.0  
             
09/3 733,505 -20,314 -21,091 -25,262  4.0  2.0
10/3 650,000 20,000 14,000 5,000  3.0  3.0
 
営業損益対比(億円)
  中間決算対比   09/3   四半期対比
08/9中 09/9中 増減 08/4Q 09/1Q 09/2Q
石油化学  45 26   -18   -48   -56 -8 34
基礎原料 -8 -1 7   -175   -40 -21 20
機能商品 66 -10 -77   -9   -39 -23 13
サービス  18 11 -7    28   6 3 7
営業損益合計 120 25 -95   -203   -130 -49 74
 

ーーー

旭化成

前年同期比で減収減益だが、黒字決算となった。
中間配当は2円減益だが、通年では前年同額とする。

                                単位:百万円(配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
中間 期末
08/9中間  843,185  40,139 40,665 23,415  7.0  
09/9中間 658,648 17,964 15,077 4,242 5.0  
増減 -184,537 -22,175 -25,588 -19,173 -2  
             
09/3 1,553,108 34,959 32,500 4,745  7.0  3.0
10/3 1,437,000 50,000 47,000 16,000  5.0  5.0

セグメント別ではケミカルズも大きな黒字となった。
ケミカルズの売価差
-710億円は膨大だが、原料価格差が+830億円あったという。(ナフサ510億円、ベンゼン142億円、他175億円)。ナフサは各社共通だが、ベンゼン系の交易条件が大きいのが他社との違いか?

このうち、ポリマー系は家電・自動車向けの販売減で減益となったが、モノマー系は交易条件の改善などで増益、高付加価値系事業は前年並みとなった。

 
営業損益対比(億円)
  中間決算対比   増減内訳   09/3   四半期対比
08/9中 09/9中 増減   数量
売価
コスト
差他
08/4Q 09/1Q 09/2Q
ケミカルズ  131 115  -16   -63 -710 757   -65   -185 22 93
ホームズ 30 41 11   -51 16 46   219   111 -29 70
ファーマ  102 34 -68   28 -23 -73   120   -10 31 3
せんい  13 -29 -42   -20 -47 26   -15   -18 -15 -14
エレクトロニクス  126 28 -98   -16 -66 -16   73   -51 -6 34
建材  8 6 -2   -25 10 12   17   -2 0 6
Service & Eng. 31 10 -21   -20 0 0   56   15 4 6
全社  -40 -26 14   - - 13   -55   -12 -10 -16
営業損益合計  401 179 -222   -167 -820 765   350   -152 -3 182
 

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三菱ケミカルHD

営業損益は黒字となったが、経常損益、当期損益は赤字となった。
上期の配当は半減、通期では8円とした。

                               単位:百万円(配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
中間 期末
08/9中間  1,587,734  56,211 65,516 23,544  8.0  
09/9中間 1,145,807 2,071 -4,551 -2,567 4.0  
増減 -441,927 -54,140 -70,067 -26,111 -4.0  
             
09/3 2,909,030 8,178 -1,906 -67,178  8.0  4.0
10/3 2,490,000 60,000 42,000 0  4.0  4.0

<p><p><p><p><p><p>HTML clipboard</p></p></p></p></p></p>

セグメント別ではポリマーズの赤字が大きい。(但し第2四半期では黒字転換)
昨年第4四半期に大きな赤字のケミカルズは当期は赤字幅が大幅に縮小した。

ケミカルズ、ポリマーズの四半期別の損益にズレがあるが、これは在庫評価(総平均法)の影響と、価格転嫁時期の影響と思われる。
ヘルスケアの変動も大きいが、田辺三菱製薬の損益による。

 
営業損益対比(億円)
  中間決算対比   09/3   四半期対比
08/9中 09/9中 増減 08/4Q 09/1Q 09/2Q
エレクトロ  106 4   -102   48   -67 -9 13
デザインド 27 16 -11   -21   -46 -8 24
ヘルスケア   372 321 -51   793   93 252 70
ケミカルズ 70 -24 -93    -555   -326 -29 6
ポリマーズ  -5 -259 -254    -130   -43 -281 22
その他  62 26 -36     88   3 3 23
全社   -70 -64   7   -141   -35 -33 -30
営業損益合計   562 21 -541   82   -422 -106 127
 

当期の特別損益に変わったものが計上されている。

  特別利益  負ののれん発生益  136億円
          段階取得に係る差益  66億円

M&Aに関する会計基準は2010年4月から適用だが、2009年4月からの早期適用も可能で、同社はこれを行った。<p><p>HTML clipboard</p></p>(当期損益の赤字縮小に貢献)

負の「のれん」は(企業買収価額<買収企業の<p><p><p><p>HTML clipboard</p></p></p></p>純資産)の場合の差額で、従来は一定期間で償却していたが、一挙に利益に計上する。

企業買収を段階的に行う場合、従来は個々の取引時の時価を簿価にしていたが、支配獲得時の時価を全株式の簿価とするよう変更になる。
最終株価と個々の取引時の株価の差が「段階取得に係わる差益」となる。

同社の当期中の買収には、三菱樹脂によるQuadrantのTOBなどがある。
これに関するものと思われるが、詳細は不明。

ほかに特別損失に、関係会社整理損 -126億円がある。

三菱化学が1992年撤退したマレーシアにおける希土事業について、本年8月に廃棄物処理施設の設置工事契約を締結した。この工事の施工に伴う費用の負担に備え、関係会社整理損として125億円を計上した。

 

なお、田辺三菱製薬の損益は以下の通り。

                                単位:百万円(配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
中間 期末
08/9中間  206,339  34,075 35,140 16,381  14.0  
09/9中間 198,239 27,456 27,910 13,552 14.0  
増減 -8,100 -6,619 -7,230 -2,829    
             
09/3 414,752 71,694 72,582 26,532  14.0  14.0
10/3 408,000 63,500 63,500 32,500  14.0  14.0

 


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三井化学は本年4月15日にシノペックとの間で協力関係拡大の覚書を締結した。

①フェノール・アセトン、ビスフェノールA及びその誘導品(例えばMIBK)等の協力関係について検討
②以下の事項に関し協力の可能性を検討
  技術交流並びに共同研究開発、その他のプロジェクト合弁、エンジニアリングサービス

両社は11月2日、フェノール及びEPTについて、合弁事業に向けて基本合意したと発表した。
これらによる設備投資額の合計は、600億円規模に達する予定。

三井化学は1986年にSinopecに対しウレタン原料の技術輸出を行い、1993年にはウレタン原料・樹脂の製造販売会社を合弁で設立している。

会社名:天寰ポリウレタン(Tianjin Cosmo Polyurethane)
出資者:三井武田ケミカル 45%→70%
     Sinopec天津石油化工公司 45%→25%
     蝶理 10%→5%
能力  :天津 4,500t/年、蘇州 4,000t/年
     他に、
天津に塗料用硬化剤及び包装用接着剤 17,000t

また、両社は2006年4月に折半出資により、ビスフェノールA合弁会社「上海中石化三井化工」を設立し、2009年1月に年産12万トンのプラントを稼動している。

今回の合意内容は以下の通り。

1)フェノールの合弁事業

両社はビスフェノールAの合弁の上海中石化三井化工で、BPA原料のフェノールの合弁事業を行う。
既設の
上海中石化高橋分公司のフェノールプラントも合弁会社に統合する。

1. 所在地   上海市・上海化学工業区
2. 出資比率50:50
3. 生産能力
 フェノール  アセトン  BPA
今回新設  25万トン  15万トン
既設(上海中石化三井化工)  12万トン
既設(上海中石化高橋分公司)  12.5万トン   7.5万トン
合計  37.5万トン  22.5万トン  12万トン
4. 新プラントプロセス三井化学技術
5. 営業運転開始時期2013年第2四半期

同社は誘導品事業(ビスフェノールA、MIBK)を含めたフェノール事業で世界トップを目指す。

現在、フェノール92万トン、誘導品54万トン、合計146万トンで2位。
中国のフェノール38万トンが加わると、184万トンとなる。

 1位:Ineos Phenol (誘導品なし) 188万トン
 3位:Solutia   フェノール86万トン、ビスフェノールA 11万トン、合計97万トン

ーーー

2)EPTの合弁事業

両社はSinopec傘下の上海中石化高橋分公司においてEPTの合弁事業の検討を進めることについて合意

1. 所在地 上海市・上海化学工業区
2. 事業内容三井EPTの生産・販売
3. 生産能力年産7.5万トン
4. 完工時期2013年第4四半期

同社は市原の世界最大級プラント(75千トン)の稼動でアジアトップの能力(合計10万トン)を保有しているが、中国進出で世界トップレベルの生産能力を保有することとなる。

ーーー

なお、三菱化学とシノペックも同じ4月14日に、相互の技術、原料、市場における優位性を活かし両社の提携をより一層強化して事業を拡大加速することを目的とする戦略提携パートナー関係を確立するための基本合意をしている。

2009/4/15 三菱化学、シノペックと事業戦略提携の基本合意

三菱化学は、三菱エンジニアリングプラスチックスとSinopecの3社で中国におけるビスフェノールAとポリカーボネート樹脂の製造・販売JVを設立し、建設中。

2008/4/12 三菱化学、中国でビスフェノールAとPCの合弁会社設立申請

ーーー

これとは別に、三井化学は機能材料事業分野における高付加価値事業の拡大について決定したが、この一つとして、中国華南地区におけるポリウレタン事業新会社設立を決めた。

中国華南地区においては、自動車内装材分野の更なる成長が見込まれるため、独自に新会社を設立し、日系自動車メーカーの需要獲得を目指す。
新会社には、顧客への技術サポート、タイムリーな製品供給等の機能に加えて開発センターとしての機能を付与する。

会社の名称 佛山三井化学ポリウレタン
資本金750万USドル
所在地広東省佛山市
事業内容ウレタンフォーム原料の製造、販売及び技術サービスの提供
生産能力10,000トン/年
スケジュール会社設立2009年12月予定、営業運転開始2011年初め

これに加え、以下のプロジェクトを決めた。

 超高分子量ポリエチレン(商標「ハイゼックスミリオン®」)の生産能力増強

立地三井化学 岩国大竹工場内
増強能力2,500t/年増強(既存プラント生産能力の約50%増)
スケジュール2010年2月着工、11年6月完工、11年9月営業運転開始

 液状ポリオレフィンオリゴマー(商標「ルーカント®」)の生産能力増強

立地三井化学 岩国大竹工場内
増強後の生産能力22,000t/年(既存プラントの生産能力は12,000t/年)
スケジュール11年7月営業運転開始


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新日本石油と新日鉱ホールディングスはは10月30日、経営統合契約を締結、統合持株会社設立のための株式移転計画を作成したと発表した。

両社は2008年12月4日に「経営統合に関する基本覚書」を締結し、両社グループの経営統合に向けた協議を進めてきた。
       
2008/12/8 新日本石油と新日鉱ホールディングス、経営統合

統合の概要は以下の通り。

経営統合の基本コンセプト

  各事業にわたる全面的な統合を実現し、両社グループの経営資源を結集してこれを最大限活用することにより、石油精製販売、石油開発および金属の各事業を併せ持つ世界有数の「総合エネルギー・資源・素材企業グループ」へと発展することを目指す。
  積極的かつグローバルに成長戦略を展開することとし、"Best Practices"をキーワードとして、収益性の高い部門に経営資源を優先配分することにより企業価値の最大化を図る。
  石油精製販売事業について、経営統合により初めて可能となる劇的な事業変革を早期に実現する。

経営統合の方法

 2010年4月1日  両社が共同して株式移転を行うことにより統合持株会社 JXホールディングス を設立

新日石の普通株式1株に対して統合持株会社の普通株式1.07株を、
新日鉱の普通株式1株に対して統合持株会社の普通株式1.00株を割当て交付

参考:社名のJX
    Jは、日本を代表する世界有数の「総合エネルギー・資源・素材企業グループ」を
    Xは、未知への挑戦、未来への成長・発展、創造性・革新性などを、それぞれ表している。

    シンボルマークおよびブランド(商標)については、追って決定

 2010年7月1日  両社グループの全事業を統合持株会社の傘下に統合・再編・整理

統合グループの基本的な理念

  統合グループは、「エネルギー・資源・素材」の事業領域において、将来にわたり、地球環境との調和および社会との共生を図り、健全で透明なコーポレートガバナンスと適正かつ機動的な業務執行体制を確立し、もって、持続可能な経済・社会の構築・発展に貢献。
  統合グループは、「エネルギー・資源・素材」の上流から下流までの一貫操業体制のもと、安定的かつ効率的な供給と事業全般にわたる創造性・革新性を追求。

石油精製能力の削減

統合グループは、2010年7月の石油精製販売事業会社の設立後、2011年3月末日までに、昨年12月4日(基本合意日)を基準として日量約40万バーレルの石油精製能力を削減。
また、遅くとも2015年3月末までに、
さらに日量20万バーレルの石油精製能力を削減する予定。

参考 原油処理能力(2008年12月1日現在)

新日本石油 新日鉱ホールディングス
               (千BD)
室蘭製油所          180
仙台製油所          145
根岸製油所          340
大阪製油所          115
水島製油所          250
麻里布製油所         127
大分製油所          160
富山製油所(日本海石油㈱) 60
合計             1,377
               (千BD)
水島製油所          205
鹿島製油所(鹿島石油㈱) 270

 




合計              475
         総合計  1,852千BD

経営統合によるシナジー効果

  2010年4月の統合持株会社設立後、2013年3月末日までに、年額600億円以上

精製部門   140(億円/年)
調達・需給・物流部門   130
購買部門   100
その他のコスト削減   230

  また、2015年3月末日までに、さらに年額400億円を積み増し、合計年額1,000億円以上。


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両社とも当期損益は赤字となった。

営業損益では、昨年第4四半期から本年第1、第2四半期と急速に改善はしているが、本中間決算では両社の石油化学、住友化学の情報電子化学が赤字となっている。

特に、石油化学については、主として中国向け輸出が好調で、エチレンはフル操業を続けているにもかかわらず、赤字である。
(輸出は内販と比較して価格が安く、採算は悪い。)

中国の需要は「家電下郷」などの景気刺激策に負うところが大きく、いつまでも続かない。
更に、ナフサ価格の更なる上昇、中東・中国の新設備完成など、今後のマイナス要因が多い。

ーーー

住友化学 

中間決算実績は当初予想(営業損益 -50億円、当期損益 -200億円)よりは大きく改善し、営業損益は112億円の利益となったが、大日本住友製薬等の少数株主利益の控除が大きく、当期損益は赤字となった。

中間決算では無配とし、期末配当は6円と予想している。

                                単位:百万円(配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益  配当
中間 期末
08/9中間 1,009,207  31,009  22,973  6,288  6.0  
09/9中間 735,205 11,172 7,788 -3,485 0.0  
増減 -274,002 -19,837 -15,185 -9,773 -6.0  
             
09/3 1,788,223 2,114  -32,624  -59,164  6.0  3.0
10/3 1,620,000  35,000  20,000  10,000  0.0  6.0

セグメント別には基礎化学(合繊原料、MMAなど)、石油化学、情報電子化学が赤字となったが、農業化学、医薬品が好調。

「ラービグ計画」は、第1四半期から順次稼動を始めたが、まだ業績には寄与していない。

 
営業損益対比(億円)
  中間決算対比   09/3   四半期対比
08/9中 09/9中 増減 08/4Q 09/1Q 09/2Q
基礎化学  -12 -38  -26    -153   -77 -28 -10
石油化学  -101 -63  38    -303   -198 -56 -7
精密化学  22 1 -21    16   -20 -1 2
情報電子化学  123 -57  -180    -10   -187 -31 -26
農業化学  123 128 5     244   90 58 70
医薬品  192 158 -34    324   34 98 60
その他  -36 -20  15    -79   -47 -20 -1
全社  -1 4   5    -17   2 4 0
営業損益合計  310 112  -198    21   -402 23 89
 

四半期別に見ると、基礎化学、石油化学、情報電子化学ともに、赤字は急速に減少している。

なお、大日本住友製薬は若干の増益となった。

2010年3月予想には、10月に買収し子会社化した米医薬会社Sepracor Inc.の業績は含んでいない。

                               単位:百万円(配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益  配当
中間 期末
08/9中間 134,358  18,177  18,208 10,870  9.0  
09/9中間 132,210 18,919 19,053 12,654 9.0  
増減 -2,148 742 845 1,784 -  
             
09/3 264,037 31,166 31,395 19,987  9.0  9.0
10/3  264,000 29,000  27,000 18,000  9.0  9.0

 

ーーー

三井化学

前期に比して大幅な減収で、営業損益・経常損益・当期損益ともに赤字となった。
上期の配当は無配とし、下期は未定としている。

                                   単位:百万円(配当:円)
  売上高 営業損益  経常損益 当期損益  配当
中間 期末
08/9中間  905,615   9,989  13,343  7,640  6.0  
09/9中間 549,869 -19,010 -22,131 -31,363 0.0  
増減 -355,746 -28,999 -35,474 -39,003 -6.0  
             
09/3 1,487,615  -45,493 -50,768 -95,237   6.0  3.0
10/3 1,210,000 -15,000 -23,000 -39,000  0.0  未定

セグメント別には機能材料、基礎化学品の赤字が大きい。

機能材料については、前年同期比 187億円の採算悪化で、数量差が-76億円、交易条件差が-144億円となっている。
基礎化学品は113億円の採算悪化で、数量差が -151億円となっている。
全社合計では数量差が-263億円、交易条件差が-136億円、固定費差その他が+109億円となっている。

通期予想でも両セグメントは赤字となっている。

 
営業損益対比(億円)
  中間決算対比   09/3 10/3   四半期対比
08/9 09/9 増減 08/4Q 09/1Q 09/2Q
機能材料  92 -95  -187    -160 -105   -258 -67 -28
先端化学品  36 29  -7    73 90   22 8 21
基礎化学品  -2 -115 -113    -320 -95   -327 -70 -45
その他  -2 10  12    1     -0 2 8
全社  -24 -19  5    -49 -40   -12 -8 -11
営業損益合計  100 -190  -290    -455 -150   -575 -135 -55
 
機能材料 自動車・産業材(エラストマー)、包装・機能材(工業樹脂)、生活・エネルギー材(機能加工品)、
電子・情報材(電子材料、情報材料、機能性ポリマー)、ウレタン樹脂原料
先端化学品 精密化学品、農業化学品
基礎化学品 基礎原料(エチレン、プロピレン等)、フェノール、合繊原料・ペット樹脂、工業薬品、PE、PP
その他 その他関連事業等

四半期別に見ると、機能材料、基礎化学品ともに、赤字は急速に減少はしているが、先端化学品(精密化学品、農業化学品)の黒字幅が小さく、赤字部門の赤字を吸収できない状態にある。

農業化学品・医薬品の黒字が大きい住友化学との違いとなっている。

 


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