2012年10月アーカイブ

 

Dow Chemical は10月23日、第3四半期の決算を発表するとともに、マクロ経済成長の低迷が続くなかで、コスト削減措置を加速させ、同社の変身を次の段階へ進めるための合理化計画を発表した。

1ー9月の実績は以下の通りで、売上高は欧州の減が大きい。(単位:百万ドル)
損益面では、農業科学を除き、全部門が前年比マイナスとなっている。

  Sales   EBITDA
2011/1-9 2012/1-9 増 減 2011/1-9 2012/1-9 増 減
Electronic & Functional Materials 3,536 3,383 -153 850 803 -47
Coating & Infrastructure Solutions 5,639 5,321 -318 990 787 -203
Agricultural Science 4,311 4,816 505 768 821 53
Performance Materials 11,097 10,253 -844 1,523 1,173 -350
Performance Plastics 12,598 10,802 -1,796 2,773 2,215 -558
Feedstocks & Energy 8,456 8,113 -343 765 532 -233
Corporate 251 181 -70 -1,296 -865 431
Total 45,888 42,869 -3,019 6,373 5,466 -907
 
Net Income 2,422 1,588 -834


Dowは本年4月2日に欧州経済の不振に対応するため、合理化策を発表した。
欧州、北米、ラテンアメリカでいくつかの工場を閉鎖するとともに、設備投資の削減、900人の人員減を行うもので、年間250百万ドルの効果を狙い、特別損失として350百万ドルを見込んだ。

ポルトガル、ハンガリー、イリノイ州のSTYROFOAM断熱材製造工場を閉鎖、オランダの同工場を休止
ブラジルのTDI工場を閉鎖
ポリウレタン、エポキシ事業のいくつかの工場の統合

今回は更に合理化を進めるもので、主な内容は以下の通り。

人員削減 ネットで約2400人(全世界の従業員の5%)
約20の工場の閉鎖

以上によるコスト削減は年間500百万ドル(2014年末時点)

これに対応し、第4四半期に1株当たり50-60セントの特別損失を計上する。
(資産除却、評価減、退職金、その他)

更に、環境変化により最早優先度を持たない事業について、投資及び設備投資の削減(約500百万ドル)を実施する。

Andrew N. Liveris CEOは以下の通り述べている。

現実として、当社は短期的には低成長の環境下で事業を行っており、これらの措置は困難であるが、とりわけヨーロッパにおいて事業運営をしっかりと行い、現在の市場における変化の影響を緩和しようとする当社の決意を表している。

当社は今年初め、コストを削減し当社の利益の成長軌道を確保するために当社が実行を計画している、特定の措置を発表した。本日当社が発表する措置は、効率性を向上させ当社の成長プログラムの優先順位を決定するための次の段階を表している。

しかし、Liveris CEOは、同社の将来にとり重要のプロジェクトについては継続することを強調した。

重要なのは、例えば、Dow AgroSciences、Dow Electronic Materials ならびにSaudi Aramcoとの石化JVのSadara 計画やシェールガスを利用するU.S. Gulf Coastでの投資など、この環境下においても差別化を行うだけの価値があり、利益拡大の機会が明確であれば、当社はプロジェクトに対する資金の供給を継続していくということである。

全体としてみると、ダウの戦略は依然として損なわれておらず、当社の長期的な成長のためのファンダメンタルズは力強い。

今回閉鎖する工場は以下の通り。

 ベルギーTessenderloのHDPE工場
 オランダ Delfzijl の水素化ホウ素ナトリウム工場
 ミシガン州Midlandのディーゼル微粒子除去フィルター工場
 スペイン、英国、オハイオ州のFormulated Systems 製造工場
 愛知県衣浦のエポキシ工場
 
これに加え、
 リチウムイオン電池に対する世界的な需要の減少を反映して、Dow Kokam LLCの資産の評価減
 含酸素溶剤事業の一定の資産を統合
 多くのその他の小規模な製造施設を閉鎖


他方、同社は10月24日にGulf Coast(立地選考中)でワールドスケールの最新鋭のメタロセンEPDMを建設すると発表した。2016年の稼働を目指す。Gulf Coastでのエチレン、プロピレン増設に対応するもの。

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ダウケミカル日本の愛知県半田市の衣浦工場は1984年に生産を開始した。
現在の能力はエポキシ液状樹脂が22千トン、固形樹脂が20千トンとなっている。

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Dow Kokamはリチウム電池の製造のためのJV。

JVは2009年に、投資会社Townsend Venturesの子会社の TK Advanced BatteryとDowのJVとして設立され、Townsendが出資する韓国のリチウム電池メーカーのKokam Co の技術を導入した。
その後2010年1月に、フランスのGroupe Industrial Marcel Dassaultが参加し、電池パック子会社のSociete de Vehicules ElectriquesをJVに加えた。

現在、ミシガン州Midland、ミズーリ州Lee's Summit と フランスのLe Bouchet に工場を持つ。

2009年2月にObama 大統領は7,970億ドルの景気対策法案(Stimulus Plan)にサインしたが、この中には、電池製造支援として、米国での先進的な電池や自動車用電池メーカーへの補助金として20億ドルが含まれている。

2009年5月、Dow Kokamは161百万ドルの補助金を受けた。

2009/5/27 ダウ、ミシガン州にリチウム電池工場





浙江省の寧波市政府は10月28日、Sinopecが計画していたパラキシレン工場の拡張を中止することを決めた。
パラキシレンによる健康被害を懸念する地元住民による抗議デモが、10月28日まで7日連続で発生したことを受けた措置。

Sinopecの石油精製・石油化学コンプレックスの拡張計画は中断し、再検討する。
計画のうち、パラキシレン増設については計画を取り止める。

なお、既存のパラキシレンについては触れられていない。

共産党大会が11月8日に開幕するが、国の公安当局は地方政府に対し、指導者交代を前に騒乱を避けるためあらゆる手段を講じるよう要請しており、市政府は社会の安定を優先した。

しかし、デモ隊は市長の辞職も要求するなど当局への不信感を募らせており、緊迫した状態が続いている。


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Sinopec子会社の鎮海煉油化工は2009年12月に浙江省寧波市の鎮海地区にエチレンコンプレックスを完成させた。

 

 

 

 

 

 

 

 





  既存
   千トン
第一期
   千トン
技術
Refinery  

23,000

 
エチレン    1,000  
LLDPE     450 Unipol
PP   200   300 Sinopec
EO/MEG     650 Dow
BTX  1,000   600  
PX   500   Axens (IFP group)
エチルベンゼン     650  
MTBE      110  
Butene-1      40  
Butadiene     160  
SM(JV)     620 Lyondell  
 SM/PO併産
PO (JV)     285
PG (JV)     100 Lyondell
尿素   600    


ZRCC
Lyondell 20074月に50/50製造JVNingbo ZRCC Lyondell Chemical Company を設立した。

2010/3/4 シノペック鎮海煉油化工、新エチレンセンターのポリプロ工場を先行稼動

今回、Sinopecは増設計画を実施しようとした。

投資額は557億人民元(89億米ドル)で、Refinery 1500万トン、エチレン 120万トンのほか、能力は明らかにされていないが、PE、PPのほか、パラキシレンを含んでいる。

10月初旬から、健康被害が出るとして住民が計画撤回を求め始めた。

市政府は、工場に近い住民の移転を約束したり、環境保護対策を発表したが、住民は受け入れを拒否していた。

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中国ではこれまでもパラキシレンに対する反対運動が相次いでいる。
最初は下記の厦門でのデモで、この事件からパラキシレンは恐ろしい化学物質との情報が浸透したと思われる。

2006年に台湾資本のDragon Group(騰龍グループ)が福建省厦門の海滄投資区で芳香族とPTAプラントの建設に着工した。

しかし、2007年にインターネットで「(パラキシレン工場で)事故が起こると何千トンもの毒物が放出される」との情報がインターネットで流れ、大規模のデモが発生した。"I Love Xiamen, No PX ". といったビラが厦門市中にばらまかれた。

この結果、計画は中断され、2007年12月にこれを福建省Zhangzhou市の古雷半島に移転させることが決定、2009年5月になって、古雷半島で2年遅れで建設が始まった。

2007/6/11 中国のインターネット反対運動が石化計画を止め


2011年8月に遼寧省大連市で8月14日、化学工場の撤去を求める市民およそ1万2,000人が市政府庁舎前に集まり、抗議を始めた。

撤去を求めているのは、大連の市街地から北東約20kmの大孤山石化産業園区の沿岸部にある大連福佳・大化石油化工有限公司の工場で、パラキシレンを生産している。

台風が接近した際、工場から約50mの距離にある防波堤が決壊したが、防波堤のすぐ近くに保管されていたパラキシレンが漏れ出す恐れが強まり、付近住民らが避難する騒ぎとなった。

市政府は当初、工場の移転を一つのオプションとして検討するとし、同時に有毒物質を出来るだけ早く取り除くとしていたが、夕方になり工場の即時操業停止と早期移転を決定し、抗議活動は収束した。

2011/8/15 中国・大連で化学工場の撤去求め デモ 

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中国では住民の権利意識が高まり、環境面から工場建設に反対する動きが高まっている。

本年7月2日、四川省什邡市で化学工場建設に反対する住民2万人による抗議デモが発生した。

亜鉛精錬大手の四川宏達グループが6月29日、金属モリブデンなどの精錬工場の建設を始めたのが発端。7月1日の夜、建設に反対する住民約1万人が抗議デモを起こし、翌日には2万人に膨れ上がった。

工場が完成すれば、年間 モリブデン4万トン、銅40万トン、硫酸180万トンを精錬する見通しだった。
モリブデンや銅などの精錬は汚染リスクが高く、住民らは「死神が近づいている」と不安を募らせた。

当局が工場建設の中止を発表したため、騒ぎは沈静化した。


7月末には江蘇省南通市にある王子製紙の工場から出る排水が、環境汚染を引き起こす恐れがあるとして、住民1万人以上が抗議デモを始めた。

問題の工場は江蘇王子製紙(王子製紙 90%、南通市経済技術開発区総公司 10%)の南通工場で、南通市の経済技術開発区にあるが、南通市政府は廃水を南通市が建設する約100kmのパイプラインで黄海に排出することとしていた

住民の反対を受け、市政府は「パイプラインの建設計画を永遠に取り消す」と発表した。

2012/8/1 王子製紙の排水に抗議、中国江蘇省でデモ 


 


中国国務院は10月24日、温家宝首相の下で常務会議を開き、「エネルギー発展第12次5カ年計画」(2011-15年)を決定した。
   

合わせて、原子力発電に関する2つの計画、The national plan for nuclear power security (2011-20) と Nuclear power development (2011-20) を発表した。

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中国は福島第1原発の事故を深刻に受け止め、原発や関連施設の安全検査を実施し、この間はエネルギー政策における原発の位置づけを再検討するため、原発新設の審査などを見合わせていた。

また、沿海部で建設中の原発27カ所は、昨年3月に工事が中断され、安全性の点検作業が行われている。
(うち、
浙江省泰山第2原発の4号機については、2012年に稼働したとされる。この結果、現在稼働中は15基、建設中は26基となっている。)

国務院の温家宝総理は5月31日に国務院常務会議を開催し、全国の民間利用の原子力設備の総合的安全検査の情況報告を改めて聴取するとともに、「原子力安全プラン」を審議し原則として可決した。

2012/6/29    中国政府、原発新設を再開

今回、検査の結果、中国の原発は安全だと確認できたとしている。

過去20年間の操業で、Level 2 以上の事故を起こしていない。
操業上の指標は世界平均以上で、いくつかは世界トップレベルである。
中国は、発電所の計画、立地選択、設計、建設、操業の全プロセスで「安全第一」の原則を採っている。
安全管理監督と放射能環境管理を強化している。
今後も技術開発に投資、最新の技術を採用、機器を改良、教育に注力する。

2015年までに原発能力を40百万kwに増やす。

今回の決定を受け、建設中の原発26基は工事が再開される見通し。

但し、計画中の原発については、建設認可基準を厳格化し、「建設ペースを合理的に調節し、段階的に推進していく」としている。
原発の新設は第3世代の安全基準を満たす場合のみ建設を認める。
また、万一の際に被害が拡大する恐れ
(水の汚染等)がある内陸部には2015年まで原発を建設しないことを決めた。

安徽省、湖北省、江西省、湖南省、浙江省、広東省などに内陸部の計画がある。

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「エネルギー発展第12次5カ年計画」(2011-15年) の内容は以下の通り。
 全文(英語):http://english.gov.cn/official/2012-10/24/content_2250497.htm

中国はエネルギー問題に対応するため、今後、太陽光発電、風力発電、地熱発電、バイオマスなどの再生可能エネルギー、クリーンエネルギーの利用を促進していく方針を示している。

具体的目標としては、第12次5カ年計画(2011―2015年)の終了する2015年までに、エネルギー消費に非化石エネルギー消費の占める割合を、11.4%にまで引き上げる 。

  現状(2011) 2015
水力 230百万kw 世界一 290百万kw
原子力 稼働中 15基 12.54百万kw
建設中 26基 29.24百万kw
全エネルギーの1.8%
(世界平均は14%)
40百万kw
風力 47百万kw 世界一 100百万kw
太陽光 3百万kw
温水暖房 2億平方マイル
21百万kw
4億平方マイル
その他 バイオガス、地熱、潮力その他  同左
非化石合計 全エネルギーの8% 11.4%

GDP当たりのエネルギー消費を2010年比で16%減らす。
GDP当たりのCO2排出を2010年比で17%減らす。

中国政府はこれまで、2020年までに非化石燃料の割合を15%とし、GDP当たりのCO2排出を2005年比で40-45%減らすとの公約をしている。
この達成のため、引き続き努力するとしている。

現在稼働中と建設中の原発は以下の通り。


  

稼働中 15基

    出力
千KW
営業運転
浙江省 泰山   310 1994/4/1
浙江省 泰山第2 1 650 2002/4/15
2 650 2004/5/3
3 650 2010/8/1
4 650

2012

浙江省 泰山第3 1 720 2002/12/31
2 720 2003/7/24
広東省 大亜湾 1 984 1994/2/1
2  984 1994/5/6
広東省 嶺澳 1  990 2002/5/28
2  990 2003/1/8
広東省 嶺澳第2 1 1,000 2010/9 
2 1,000 2011/8
江蘇省 田湾 1 1,060 2007/5/17
2 1,060 2007/末
 


建設中 26基

 

千KW

広東省 陽江 1,080x4
浙江省 三門 1,250x2
海南 昌江 650x2
広西 防城港 1,080x2
浙江省 方家山 1,080x2
福建省 福清 1,080x2
山東省 海陽 1,250x2
遼寧省 紅沿河 1,080x4
福建省 寧徳 1,080x4
広東省 台山 1,770x2

 

 


 

 

中国の環境保護部は10月19日、ダウと神華集団(Shenhua) の陜西省楡林市の石炭化学コンプレックスの環境評価書(17日受領)を公表した。

全文(中国語)は http://hps.mep.gov.cn/jsxm/xmsl/201210/W020121019511825884207.pdf でかなり詳細なもの。

ダウは2007年5月21日、中国の国有石炭最大手・神華集団との間で、陜西省楡林市にワールドスケールのCoal-to-Chemicals コンプレックスを建設するための詳細FS実施の契約を締結した。

2004年12月に神華集団との間でFS共同実施の契約を結んだ。
神華集団は1995年に設立された国有企業で、世界8大炭田の一つとされている神府東勝鉱
区の開発・運営を担当しており、関連事業として鉄道、発電、貯炭設備、輸送設備を運営している。

計画では "clean coal" technologies を使用し、石炭からメタノール、メタノールからエチレンとプロピレンを生産する。電解設備も建設し、苛性ソーダ、VCM、有機塩素等を生産する。
このほか、誘導品としてグリコール類、アミン、溶剤、界面活性剤、アクリル酸と誘導品、プロピレン誘導品などが計画されている。

ダウと神華集団は2009年11月3日、陜西省楡林市で大規模石炭化学JVの起工式を行った。
FSがほぼ終了し、中央政府の承認を求め申請する段階である。

JVにはダウ中国と神華集団子会社のChina Shenhua Coal to Liquids and Chemicals Co. 及び地方政府が出資する。

2009/11/10 ダウと神華集団、陜西省で大規模石炭化学JVの起工式 

本計画は2010年3月に国家エネルギー局から仮承認を受け、2012年9月に水資源部の黄河保護委員会から水資源承認を受けている。

中国政府の投資規則によると、正式な建設開始には環境保護局の環境承認を得たうえで、国家発展改革委員会(NDRC)の承認を得る必要がある。


コンプレックスの建設期間は2013年から2018年。

投資金額は、石炭部分が40億元(うち環境投資 4千万元)、化学品部分が1000億元(うち環境投資 50億元)となっている。

今回の環境評価書では、製品が若干変更となっている。

当初計画に入っていたクロルアルカリ(50万トン)とEDC、PVC(50万トン)が削除された。

    今回 当初計画
石炭 1,300万トン  
化学品

(3ゾーン、
 23製品)
ハイドロカーボン(8製品)

(石炭ガス化~メタノール合成~
オレフィンとアンモニアの生産)
メタノール(Coal to Methanol) 400万トン 332万トン
オレフィン(Methanol to Olefins) 150万トン 122万トン
基礎プラスチック(5製品) オキソアルコール 127万トン

(内訳非公表)
 
EO/EG 40万トン
LDPE  
PP  
n-プロパノール  
クロルアルカリ 0 50万トン
EDC 0 51万トン
PVC 0 50万トン
機能性プラスチック(10製品) エタノールアミン/エチルアミン 172万トン

(内訳非公表)

21万トン
粗アクリル酸  
精アクリル酸 15万トン
ブチルアクリレート 20万トン
オクチルアクリレート
ポリエーテルポリオール 34万トン
プロピレンオキサイド(PO)  
プロピレングリコール(PG)  
過酸化水素(PO原料)  
グリコールエーテル  


 



米国の発電会社のDominion は10月22日、ウイスコンシン州 Carltonにある556千kwのKewaunee 原発を2013年第2四半期に停止し、閉鎖すると発表した。

米原子力規制委員会が2011年2月に、2033年までの20年間の操業延長を承認したばかりであったが、電力販売価格の低下で採算に合わないと判断した。
停止後は電力供給先の2つの電力会社には、2013年12月の契約期限までは買電により供給を続ける。

米国には、Kewauneeを含め合計104基の原発があるが、閉鎖は1973年12月のコネティカット州のMillstone 1 原発以来となる。
エネルギー需要の伸び悩みと天然ガス価格低下により、中西部で古い石炭火力の廃止が続いているが、これが原発にまで及んできたとみられている。

Kewaunee原発は1974年の運転開始で、2005年7月に同社が購入した。Dominion は2011年4月に採算面から売却を決定、買い手を探していたが、買い手を探すことが出来なかった。

同社は「運転状況が良かっただけに苦渋の決断だった。純粋に経済性に基づく判断だ」とのコメントを発表した。

Kewaunee 発電所(下の地図参照)は556千kwという最大クラスの原発の半分の能力で、かつ同地には1基しかなく、通常2基でセットになっている他の原発と比較し、間接費が高いという問題がある。

同社では中西部でいくつかの原発を購入し、間接費を薄めようとしたが、うまくいかなかった。

また、同原発購入時に、売り手との間で電力の売買契約を結んだが、この契約が切れた。
中西部では電力供給は入札制となっており、シェールガスの普及で天然ガス発電のコストが下がっているため、 現在の市場価格である従来よりかなり安い価格で売るしかない状況となっている。

原発は運転開始後の経費は安いと言われてきた。だが、米国では、原発がコスト面での優位性を失いつつある。また、東京電力福島第一原発事故を受けてNRCが3月 に追加の安全対策を指示し、コスト増の要因になるとの見方もある。

New York Timesによれば、地域によっては売電平均価格は50$/Mwh以下となっているが、ある調査では原発全体の1/4の高コストグループのコストは2008-2010年で平均 51.42$となっており、現在は更に上がっているという。

業界団体のNuclear Energy Instituteでは、これはDominion特有の理由によるものであり、原発は依然として頼りとなる、コスト面で有利な電力であると述べ、閉鎖のショックを和らげようとしているが、New York Timesは、それでは何故、もっと有利な立場にある会社がこれを買いに来なかったのかと疑問を呈している。

General ElectricのCEOのJeff Immelt は、シェールガス革命で天然ガスが豊富に供給され、再生可能エネルギーの選択肢も増えたことから、原子力発電を正当化することは難しくなったとしている。

2012/7/31 原子力発電の正当化困難にーGE会長

米電力大手Exelonは8月28日、テキサス州Victoria County Stationの原発申請を取り下げた。
同社は、シェールガスの増産で天然ガスが値下がりし、予想しうる将来にわたって競争力がなくなったと判断した。

2012/9/6 米電力大手Exelon、原子力発電所の申請を取り下げ 


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Dominionはエネルギー会社で、主な事業は3つに分かれる。

1) Dominion Virginia Power:Virginia 州での電力供給

2) Dominion Energy:天然ガス輸送・販売

3) Dominion Generation:発電

 ・Utility Generation 上記 1) 用の発電 19,000MW
 ・Merchant Generation  売電用の発電  8,500MW

Utility Generationの発電所

原子力発電所
  North Anna   2基  1,647MW
  Surry    2基  1,678MW


三菱重工業は2010年5月7日、DominionがNorth Anna発電所3号機向けに、三菱重工業の170万kW級加圧水型原子力発電プラントUS-APWRの採用を内定したと発表した。


Merchant Generation の発電所

原子力発電所
  Kewaunee    

556MW

  Millstone 2     878MW
  Millstone    1,138MW

 

 
















千代田化工建設は10月23日、自社開発した酢酸技術がPetrobrasのGas-to-Chemical complexに採用されたと発表した。

年産20万トン規模で、2013年末までに初期設計を完了の予定。契約金額は非公開。
同社は、酢酸製造技術の実施許諾、技術支援、トレーニング等を行う。

千代田化工建設が開発した酢酸製造技術(ACETICA)プロセスは、メタノール・カルボニル法酢酸製造プロセスのひとつで、同社が自社開発した固体触媒を利用し、原料のメタノールと一酸化炭素を高収率で酢酸に転換する。

高性能な固定化触媒

メタノールのカルボニル化反応にはロジウム錯体が触媒としてよく使われるが、反応液に溶かすために、大量の水が必要で、大量の水は助触媒であるヨウ化メチルと反応して腐食性の高いヨウ化水素酸を生成し、プラントの腐食を引き起こす。
また、製品酢酸から水を分離するのに大量のエネルギーを消費する。

これらの課題を解決する狙いで、千代田は高温に耐えられるビニルピリジン樹脂を開発し、ロジウム錯体を樹脂上に固定化することに成功した。

循環気泡塔型反応器

樹脂触媒を活用できる循環気泡型反応器を採用

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Petronasは2012 - 2016事業計画で、ガスとエネルギーに135億ドルを投じる計画をつくった。その42%が肥料関係である。
狙いは以下の通り。

ブラジルは海上油田開発で大量の副生ガスを生産するが、これを利用したい。
ブラジルはチッソ肥料の半分を輸入に頼っている。

副生ガスで肥料を生産

この計画の一環として、Petrobras は既に年産303千トンの硫安工場をLaranjeiras工場に建設中で、2013年に完成する。

2014年にはUFN-III(unit of nitrogen fertilizer N°3:チッソ肥料第三工場)を Matto Grosso do Sul 州のTres Lagosでスタートさせる。

これは以下の構成となっている。
  尿素 年産120万トン
  アンモニア 80万トン
  粒状尿素  4千トン

更に2012 - 2016事業計画には、UFN-Vとして Matto Grosso州のUberabaでアンモニアの生産を行う計画が含まれている。

今回千代田化工の酢酸技術が採用されたのは、Braskemがこの一環として、Esperito Santo州Linharesで行うUFN-IV(Unit of Nitrogen Fertilizer N°4)の一つ。

UFN-IVは総額30億ドルとされ、年産100万トンの肥料を製造するもので、以下の製品を含む。

尿素、アンモニア、メタノール、酢酸、ギ酸、メラミン。

UFN-IV全体の設計その他の業務はFoster Wheelerが受注している。

計画では全体のスタートは2016年となっている。

 

 

 


露石油最大手 Rosneftは10月22日、BPとロシアの投資家グループAlfa-Access-Renova(AAR) の合弁 の ロシアの石油会社TNK-BPを、双方から合計550億ドルで買収することを明らかにした。6か月以内の取引完了を目指す。

BPはJVの50%を譲渡し、現金171億ドルとRosneftの株式 12.84% を取得する。
BPは同時に、ロシア政府からRosneft株式 5.66%を48億ドルで買収する。(BPはネットで123億ドルを受け取ることとなる。)
BPは既にRosneft株式 1.25%を保有しており、この取引で合計19.75%を保有することとなり、Rosneftの取締役会に2人の取締役を出す。

Rosneftにはロシア政府が75%出資し、残りは上場している。

他方、Alfa-Access-RenovaはJVの50%を280億ドルでRosneftに譲渡する。
覚書を締結した段階で、詳細は今後詰める。

付記

BPとAARは11月23日、両社の間の全ての争いを解決することで合意したと発表した。
両社ともTNK-BPのRosneft への売却を進める。

TNK-BPは Rosneft とLukoilに次ぐロシア第三位の石油会社で、これの買収により、Rosneftは生産能力日量450万バレルとなって、ExxonMobil(420万バレル)を抜き世界最大の石油会社となる。

TNK-BPは西シベリア(Tyumen、Khanty-Mansiysk、Yamal-Nenetsk、Novosibirsk 地域)、ヴォルガ・ウラル(Orenburg、Saratov地域)、東シベリア(Irkutsk 地域)で活動しており、2011年の生産は石油換算で日量199万バレルであった。

Rosneftの2011年の生産量は245万バレルで、開発済み確認埋蔵量は原油換算99.6億バレル、未開発確認埋蔵慮は83.9億バレルとなっている。

BPは、これはロシアの石油事業からの撤退ではなく、むしろそれを進めるものだとしている。
Rosneft株式は長期的に保有し、大株主として同社の今後の成長を支えるとしている。

後記の通り、BPは2011年1月に、Rosneftとの間でグローバルな戦略的提携で合意した。但し、これはAARの反対で白紙となった。

Rosneft のCEO は22日に本件をPutin大統領に報告、大統領は、これはロシアの石油産業にとってだけでなく、ロシア経済全体にとって重要な good big deal だと述べた。

 

付記 TNK-BPは以下の構成となっている。

RosneftはBP及びAARとTNK-BP International の株式購入の交渉をしている。
一般株主については、Rosneft は交渉する気はないとしており、見放された形になっている。


ーーー

TNK-BP の株主のAlfa Access Renova は下記の3社の連合。

Alfa Group ロシアの新興財閥で、ロシア最大の金融産業コングロマリットのひとつ。
Mikhail Fridman と German Khan が50%ずつ保有。
Access Industries ロシア生まれの Len Blavatnik が設立し所有する米国の投資会社で、Basellを買収した。
Renova Holding ロシアの長者番付では第5位のViktor Feliksovich Vekselberg (SUALの大株主)のベンチャーキャピタル。


2003年、BPと Alfa Access Renova はロシアとウクライナにそれぞれが所有する石油資産を共同で所有する戦略的パートナーシップの設立を発表、50/50所有の TNK-BP が設立された。

Alfa Access Renova はTyumen Oil Co.(TNK)株の97%とSidanko株の56%を新会社に移管、
BPはSidanko株の25%、サハリン5の事業権益、モスクワのガソリンスタンドを新会社に移管した。

2004年1月、Alfa Access Renova の持Slavneft の持分をJVに移管することが合意された。

これにより、TNK-BP はロシアとウクライナで上流部門から下流部門まで一貫操業を行ない、生産子会社15社、精製子会社5社(うちロシア国内は4社)、販売子会社11社を保有する。

埋蔵量及び生産量でRosneft とLukoil に次ぎ、ロシアで第三位となった。


しかし、CEOの任命権をBPが持ち、多くの経営幹部や技術者がBP出身であるなど、BP主導で運営してきた。

このため、ロシア側株主は、TNK-BPという会社がBPの利益ための会社であって、ロシアの為の会社でないという不満を持っていた。
そもそもロシア側には、双方の貢献面から、50/50が不公平との感があった。

BPは 2008年9月、TNK-BPの経営問題でロシア側株主に譲歩し、和解した。

2008/9/9 BPロシアの石油JV 経営問題でロシア側に譲歩


BPと
ロシアのRosneftは2011年1月、グローバルな戦略的提携で合意した。

Rosneft はBPの株式5%を購入、見返りにBPはRosneftの株式 9.5%を購入する。
(BPがRosneftに発行する株式の価値は現在の株価で約78億ドルになる。)

両社はロシアの北極海大陸棚にある3つの鉱区を共同で開発する。

2011/1/17 BP、ロシアのRosneft と戦略的提携

しかし、TNK-BPの株主のAlfa Access Renovaを構成する4人の新興財閥が、BPとRosneftとの取引がTNK-BPを除外しているのは、BPとTNK-BPの株主契約に違反するとして反対し、ロンドンの高等法院に訴えた。

裁判所は調停での問題解決を命じた。

2011/8/31 BPとTNK-BPの争い、仲裁へ

調停委員会は2011年5月1日、下記の決定を下した。
  ・
TNK-BPは Rosneft の同意を前提に、北極海開発に参加する。
  ・これを条件に、BPとRosneftの株交換を認める。

これに対しRosneft はTNK-BPの北極大陸棚での事業参加には難色を示した。
このため、AARの持ち株をBPと Rosneftが買い取る交渉が進められたが、AARは拒否し、この結果、BPとRosneftの契約は5月16日に時間切れで白紙となった。

2011/5/18 BPとRosneft との提携、白紙に 

この後、Rosneftは2011年8月30日にExxonMobilとの間で北極海と黒海の開発、技術協力、米国その他での共同事業の実施で合意した。

2011/9/1  Rosneft、石油開発でExxonMobil と提携

この直後には、TNK-BPのロシアの少数株主のAndrei Prokhorovが TNK-BPの役員でもあるBPの役員を、Rosneftの交渉を知っていたに違いないとし、この情報をTNK-BPに伝えなかったために、TNK-BPが北極海開発の機会を失い、約870億ルーブル(約2,970百万ドル)の損害を被ったとし、訴えるということもあった。

BPはこれらに嫌気を示し、JVからの離脱を検討した。

BPは2012年7月に、Rosneft との間でTNK-BP持分の売却の交渉を行うとし、TNK-BPの契約に基づき、7月19日にAlfa Access-Renovaとも売却交渉を開始したことを明らかにした。

AARはBPに対し、BP持株の半分(25%)を100億ドルで購入するという提案を行ったとされる。
しかし、BPにとっては25%を残しても意味がなく、また25%分で100億ドルは少くな過ぎ、成立しなかった。

AARは実際には、BPにTNK-BP の持株を買ってもらい、代わりにBPの株式を10%程度取得するのが狙いであったとされる。
しかし、BPはAARがトップ株主になるのを好まなかった。

また、Rosneft側が金融機関に圧力をかけ、AARは買収資金を得られずギブアップしたともされる。

問題は、TNK-BPの株を買いたいという会社が少ないことで、西側の石油メジャーは関与するのを嫌った。中国の石油会社は政治的に問題であり、結局、買収資金を持つRosneftが残ることとなった。




ExxonMobil Canadaは10月17日、カナダのエネルギー開発会社Celtic Explorationを買収する契約を締結したと発表した。

買収に伴い、ExxonMobilは liquids-rich のMontney shaleで545千エーカー、Duvernay shale (Kaybob)で104千エーカー、他に Alberta州の他の地域の鉱区の権益を取得する。

同鉱区での生産量は天然ガスが日量7200万立方フィート、原油やコンデンセート、LNGが日量4000バレル。

Celtic Explorationの2011年末時点の推定では、埋蔵量は石油換算で128百万バレルで、そのうち原油、コンデンセート、NGLが24%、天然ガスが76%となっている。

買収金額は1株当たり24.5カナダドルで、Celticの債務の引き継ぎなどを含め、総額31億カナダドルになる。

Celticの権益のうち、ExxonMobilが引き継がない権益がある。
British Columbia州のInga 地域、Alberta州のGrande Cache 地域の権益と、
Alberta州Karrの石油・ガス資産の権益で、これらの事業を行う新会社Spincoが別途設立される。

Celticの株主はCeltic株1株当たり24.5カナダドルを受け取るほかに、Celtic株1株につき新会社Spincoの株式 0.5株を受け取る。

ーーー

Celtic Explorationの事業概況は以下の通り。ExxonMobil に移る権益以外も含む。


Celtic Explorationによる2012年の生産の見通しは以下の通り。青字はExxonMobilに移らない権益)

  2011実績 2012予測 2012年末
Oil (bbls/d) 3,789 5,385 8,200
Natural gas (mmcf/d) 74.54 99.69 130.20
合計 (BOE/d) 16,212 22,000 29,900
地域別
Kaybob/Fir   11,300 14,400
Resthaven/Grande Cache   8,900 13,300
Inga/other   1,800 2,200
合計 (BOE/d)   22,000 29,900

ーーー

ExxonMobil は2009年12月21日、XTO Energyを410億ドルで買収すると発表した。

XTOは米国のみで操業する非在来型天然ガス生産大手で、シェールガス、タイトガス、コールベッド・メタン、シェールオイルなど、合計換算 45兆立方フィートのガス資源を有しており、Barnett, Fayetteville, Haynesville, Marcellusなど主要シェールガスの全てで開発を行っている。

ExxonMobilの最大の狙いはシェールガス開発技術の適用ノウハウ(人的資源)の獲得とされる。これらのノウハウは、非在来型ガスのみならず、世界の在来型及び非在来型石油に適用可能。

ExxonMobil のCEOは2010年1月、米議会で証言し、XTO買収がシェールからの天然ガス生産拡大につながり、環境に害を与えることなく米経済を押し上げるとの見通しを示した。

参考 石油天然ガス・金属鉱物資源機構 資料

今回のCeltic Exploration買収について、ExxonMobilは以下の通り述べている。

今回の買収でExxonMobilの北米の非在来型石油資源に大きなliquids-rich 資産を加えることとなる。

ExxonMobilの資金面、技術面の強みと、タイトガス、シェールオイル・ガス、コールベッドメタンなどの開発に強みを持つ子会社のXTO Energyの力を合わせると、新規取得資産の価値を最大化できる。





森口尚史氏が iPS
細胞から作った心筋細胞の移植手術を行ったと虚偽発表した件で、Harvard 大学のMassachusetts General Hospital は10月19日、森口氏と同病院のRaymond T. Chung医師を共同発明者とするiPS細胞作製技術の特許を米当局に出願していたが、17日にこれを取り下げ たことを明らかにした。

病院の広報担当者は「正式な出願は2011年7月7日で、森口氏が医師や知的財産部門に強く働き掛けたと聞いている。結果的に虚偽の研究に基づくものと判明したため取り下げた」と説明している。

共同発明者にChung准教授が名を連ねているため、内容などに問題はないと判断し、「2人の共著論文もあったため、研究内容を信用した」としている。

同病院の知的財産管理部門が米国で暫定特許を出願、今年1月に一般公示された。


  ・特許内容 RNA-145 inhibitor とTGF-β activator の2種類の化合物によるiPS細胞の作製技術など

 ・発明者は森口氏とRaymond T.  Chung氏。

Chung氏はMassachusetts General Hospitalの胃腸科のVice Chief で、肝移植計画のMedical Director。

2002年以降、森口氏との共著で9つの論文を発表しているという。

2011年には、森口氏と東大病院形成外科・美容外科の三原誠助教、東京医科歯科大学の佐藤千史教授との共著で、RNA-145 inhibitor とTGF-β activator の2種類の化合物によるiPS細胞の作製について記載した "Embryonic Stem Cells -- Recent Advances in Pluripotent Stem Cell-Based Regenerative Medicine"を出版している。

 ・Assignee(譲受人=特許取得後の特許権者)はMassachusetts General Hospital  

ーーー

Harvard 大学とMassachusetts General Hospital は10月11日、以下の発表を行った。

「1999〜2000年にかけてマサチューセッツ総合病院の客員研究員だったが、それ以来、同病院やハーバード大とは関係がない。森口氏の職務に関わる臨床試験は、同大学あるいは総合病院の審査委員会により承認されたものではない」

しかし、Massachusetts General Hospital のRaymond T.  Chung氏が最近、森口氏などとの共著を出し、両氏を発明者とする特許を同病院が申請、その特許のassigneeが同病院となっていることから、「(2000年)以来、同病院やハーバード大とは関係がない」とは言えないのではないか。

同病院の知的財産管理部門が、 共同発明者にChung准教授が名を連ねているため、内容などに問題はないと判断し、「2人の共著論文もあったため、研究内容を信用し」 、特許を出願したというのも驚きである。

今回の問題を受けて、Chung氏は森口氏との共著論文から名前を削除することを同病院を通じて表明 したという。

ーーー

東京医科歯科大の佐藤千史教授 について、同大の調査委員会は事情聴取し、佐藤氏が「論理的に間違っていないかアドバイスをしただけ」と証言したため、「研究の中身について検証せず、共著となることはありえない」と判断し、処分の対象とする見通し。

産経新聞が読売新聞の記事を受けて佐藤氏に電話取材した際に、「(読売新聞報道の)事実関係はあっている」との説明を受けたという。(産経新聞)

東京大学医学部付属病院は、「最先端・次世代研究開発支援プログラム」の一つとして、臓器凍結保存やiPS細胞保存などの技術研究で内閣府から助成金を受けているが、プロジェクトの代表の東大病院形成外科・美容外科の三原誠助教は実施状況の報告書で、「iPS細胞保存研究に関しては、特任研究員 森口尚史を中心として進めている」と記載している。

三原医師は10月15日、読売新聞の取材に対し、「森口氏から『ハーバード大の特許の問題があるので、先生にも話せないことがある』と言われた」とし、森口氏が担当する研究論文の内容をチェックしていなかったことを認めた。(読売新聞)

 

内容をチェックもせずに共著者になるというのは考え難いが、日米の学者3人が名前を連ねていたということになると、学会の状況が心配になってくる。

ーーー

東京大学は10月19日、同大病院の森口尚史・特任研究員について、懲戒解雇処分にしたと発表した。




 

河野太郎代議士のブログ「ごまめの歯ぎしり」(2012年10月17日)に「あなたの電気代も流用されている」という記事が掲載されている。
http://www.taro.org/2012/10/post-1276.php

日本原子力発電という会社がある。東海第二原発と敦賀1号機、2号機を保有する原子力専業の発電会社だ。
敦賀1号機は2011年1月26日に運転を停止し、敦賀2号機は2011年5月7日に、東海第二は2011年5月21日にそれぞれ運転を停止した。
この会社の発電は全て止まった。

2010年3月期の発電量は136億kWh。
2011年3月期の発電量は170億kWh。
2012年3月期の発電量は10億kWh、そう10億kWh。

前々年の14分の1の発電量で、電力料収入はほぼ同じ。

なぜこんなことになるかというと、日本原子力発電は電力会社との契約で、発電しようがしまいが「基本料金」にあたるお金がもらえる。

東京電力は、おそらく年間400億円を超える金額を日本原子力発電に支払うことになる。
2011年4月から9月に、東京電力は232億円、関西電力220億円、中部電力195億円を支払っている。

いや、正確に言うと、東電が支払っているのではない。この年間四百数十億円は、東電管内の企業と世帯に東京電力が請求する電気代に含まれている。

東電の値上げのときに、さすがにこれを値上げに入れるのはおかしいだろうという議論が出たが、枝野経産大臣はすんなりと、お認めになった。

本来ならば、売るものがない日本原子力発電が破綻して、株主である電力会社がその損失を負担すればよいだけの話だ。
(途中 略)


同社の事業報告にも以下のように記されている。

当社におきましては、福島第一原子力発電所事故以降、全国的に原子力発電所が再起動できない状況が続く中、当年度は、東海第二発電所及び敦賀発電所1号機が年度を通して停止したほか、敦賀発電所2号機につきましても、燃料集合体からの漏えい事象の発生やその後の定期検査によって昨年5月以降運転を停止することとなり、その結果、当年度の全発電所の平均設備利用率は4.6%、総発電電力量は10億65百万キロワット時と、当初計画を大きく割り込むこととなりました。

同社の決算は以下の通り。

2011年度の発電量は前年度の6%しかないのに、売上高は1453億円で、前年の1743億円から17%の減に止まっている。

「支出面では,業務各般にわたり徹底した合理化,効率化の推進による諸経費の縮減に努めました結果、経常費用合計は1,394億34百万円となりました」としているが、
個別決算でみると、大きく減っているのは燃料費と使用済燃料再処理費等と原子力発電施設解体費引当で、停止に伴う当然の減である。

経常損益は前年度からは下回っているが、2007年度~2009年度と比べると、大幅増となっている。

「経常利益は75億98百万円となりましたが、災害特別損失など特別損失として108億42百万円を計上したことにより、税引前当期純損失は32億44百万円となり、法人税率の変更に伴う繰延税金資産の取崩しによる法人税等102億57百万円を控除後の当期純損失は135億1百万円となりました。」

同社は1957年5月に、電力会社の社長会で、電力会社9社が出資して日本初の原子力発電の会社を設立する案が打ち出され、電力会社9社80%、電源開発20%の出資によって設立された。

現在の株主は以下の通り。
  電力9社合計 85.04% (うち東京電力 28.23%)
  電源開発    5.37%
    一般(142人)   9.58%  (日立 0.92%、みずほコーポレート銀行 0.71%、三菱重工 0.64%)

ーーー

日本原子力発電は日本で最初の原発を建設・運営するために電力9社が中心で設立したもので、発電した電力は電力9社が引き取っており、恐らく出資比率=引取比率となっていると思われる。

このような製造合弁会社の場合、ある引取会社の引取不足による原価高を他の引取会社に影響させないよう、Take or Pay の形をとる場合が多い
実質的に、各電力会社が引取比率で分けた分工場を持つ形となる。

この意味では、通常のケースでは仮に引取電力量が前年の6%になっても、各電力会社が固定費分は100%支払うのはやむを得ないこととなる。 (電力会社にとっては、どの工場を止めるかだけの問題)

しかし、休止が長期間続く場合や再稼働が認められない場合は異常事態であり、負担をどうするかは日本原子力発電と株主電力会社の協議で決めることとなろう。

そして、仮に東電が負担するとしても、発電に寄与していないので、それを電気代に含めて需要家に求償することにはならない 筈である。

「東電の値上げのときに、さすがにこれを値上げに入れるのはおかしいだろうという議論が出たが、枝野経産大臣はすんなりと、お認めになった。」(上記)

 

「ごまめの歯ぎしり」の続き:

東京電力の原子力関係の費用のうち、固定費は3489億円。ほぼこれにちかい費用が、原発が全く動いていない2013年3月期にも費用に計上される。

そして東電は胸を張って、この費用をあなたに請求する。

原子力規制委員会が安全基準を作り直し、それに沿った審査が行われ、必要なバックフィットを実施していたら、まず当分は動かないだろう。

ということを認めれば、東電の持つ原子力関係設備は発電に寄与していないので、その維持にかかる費用は当然総括原価には盛りこまれない。

しかし、東電の計画には原発再稼働が盛りこまれているので、原発の維持コストも総括原価に盛りこまれ、あなたの電気代にそれを盛りこんで請求される。

なぜ、動かせないはずの柏崎刈羽を盛りこんだ計画が認められたかと言えば、やっぱり枝野大臣がお認めになったからだ。
(途中 略)
 




2011年9月に倒産した米国の太陽電池メーカーのSolyndra は10月12日、中国太陽電池企業の尚徳電力(Suntech Power)、天合光能(Trina Solar)、英利緑色能源(Yingli Green Energy)の3社を相手取り、独禁法違反を理由に15億ドルの賠償を求め、 San Franciscoの連邦裁判所に訴えた。

被告らは定期的に会合を開いて共謀し、太陽電池パネルをコストを下回る価格で米国市場にあふれさせ、同社を破産に追いやったとしている。
3社の米国価格は4年で75%も低下したとしている。

Suntechでは、Solyndraが競争力ある価格で製品化できなかった失敗の スケープゴートを求めるもので、根拠はなく、徹底的に争うとしている。

ーーー

Solyndraはかつて米国のエネルギー革新のモデル企業とされ、2009年に環境・エネルギー分野で雇用創出を目指すオバマ大統領の「Green New Deal」政策の一環として535百万ドルの融資保証を受け、2011年5月にはObama大統領も訪問した。

Solyndraの製品は、ビルや商業施設に設置する円筒状の太陽光パネルで、直射日光だけではなく散乱光・反射光もすべて捉え、風や光を通すことが最大の特徴だった。

光吸収層の材料として、シリコンの代わりに、銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、セレン(Se)などを用いたCIGS型太陽電池である。


しかし、
同社は2011年9月6日に破産法(Chapter 11)を申請した。
同社の役員は、「低価格の中国製太陽電池が大量に米国に流れ込み、当社は2008年に発表した取引総額が12億ドルに達する契約を履行できなかった」と 述べた。

ーーー

米国商務省は10月10日、中国製の太陽電池およびモジュールにダンピングおよび補助金の行為が存在するとする最終判決を下した。

2012/10/13 米国商務省、中国製太陽電池のダンピングを最終認定 

ーーー

10月15日付のForbesには、この訴訟は"Entire Nonsense"であるという投稿が載っている。

共謀はあったかも知れないし、中国政府の支援を受けているかも知れない。Solyndraが米政府の支援を受けていたように。

Solyndraの例の通り、米国の企業も融資保証などを受けている。

本年6月28日には米太陽光発電パネルメーカーのAbound Solarが米連邦破産法の適用を申請する方針を発表したが、同社も「Green New Deal」政策の一環として、米エネルギー省から受けた4億ドルの融資保証枠のうち7000万ドルを利用していた。

しかし、Solyndraの倒産はそのためではなく、技術面でSolyndraのとった選択によるものだ。
選択が誤りであったというのではなく、「結果論」(シリコン価格が下がったことによる)。

Wall Street Journalも同じことを述べている。

2008年頃に太陽発電用シリコンは供給不足で、価格が高く、この結果中国製パネルの価格も高かった。
Solyndraはシリコンを使わないCIGS型に賭け、高価な工場を建設した。

しかしその後の4年で、新しいポリシリコン製造工場への投資が増え、価格はkg当たり400ドルから20ドルにまで下がった。

この結果、シリコンを使った中国製のパネルの価格が下落した。

ーーー

Solyndraの破産法申請直後に、FBIは会計上の不正行為の疑いなどで同社を捜査した。

これについては米議会でも問題となり、最初から収益を上げる見込みのない同社に多額の融資をした政府の責任を追求するべく、裁判所からホワイトハウスに関係書類提出令状を発令させた。
しかしオバマ政権は、これは政治目的によるもので、実際の捜査とは関係ないので協力するつもりはないと全面的に拒絶した。

ーーー

Solyndraはこのたび、裁判所に対し、破産から離脱するための再建策を申請した。

再建策では、Solyndra自体は清算し、親会社の360 Degree Solar Holdingsが存続することとなっている。

政府は貸付金142.8百万ドルの19%程度を回収できるが、残りの債務保証からの債権の385百万ドルについてはほとんど回収できない。
政府はこれに反対している。

投票権のある債権者のうち、再建策に反対しているのは政府だけとされる。

一方、税務当局(Internal Revenue Service)は再建策の目的は租税回避にあるとして、これを認めないよう主張している。

親会社には975百万ドルの税務上の損失が引き継がれ、この結果、親会社のオーナーであるArgonaut Ventures I LLC とMadrone Partners LP は300百万ドル以上の税金を免れることとなる。

Delaware破産裁判所は10月17日に再建策について5時間にわたり、双方の証言を聞いた。
10月22日に最終弁論を行う。

ーーー

これとは別に、米リチウムイオン電池メーカーのA123 Systems, Inc は10月16日、破産法11条の適用を申請した。

同時に、自動車関連の技術、製品、ミシガン州にある2工場、中国のcathode powder製造工場、上海汽車とのJVのShanghai Advanced Traction Battery Systemsの持分などを、自動車部品メーカーのJohnson Controls, Inc.に1億2500万ドルで売却することで合意したことを明らかにした。

Johnson ControlsはA123の破産法申請後の運営資金(debtor in possession financing)として7250万ドルの資金を援助する。

破産法11条の申請は、この売却をスムースに進めるためとしている。
(破産法363条では、通常の商行為をこえる財産の処分は、裁判所の許可なければできない
許可があれば出来る。)

A123 Systems は8月16日、中国の万向集団(Wanxiang Group Corporation)が、A123 Systemsの株式の過半数を、465百万ドルで取得する契約を結んだと発表した。最終的に万向集団は、A123 Systemsの株式を80%まで買い進める計画であった。

しかし、A123はこの取引が中止になったと発表した。
取引の条件の
米国の外国投資委員会(CFIUS)の承認が得られなかった。 軍事用の先進的なバッテリー開発計画がある。
また、議会からも、税金で開発した重要な知的財産を外国に売り渡すのかとの批判が相次いだ。

同社は、オバマ政権が打ち出したGreen New Deal 政策を通じ、2億4900万ドルの助成金を受けていた。

同支援プログラムを受けていた企業で破綻した企業に提供された支援額は少なくとも8億1300万ドルに上り、大統領選で問題となっている。



中国国家統計局が10月18日発表した2012年7〜9月期のGDP実質成長率(速報値)は、前年同期比7.4%と、7四半期連続で鈍化した。

中国政府が3月に下方修正した政府目標の7.5%を下回った。

2012年1~9月平均は7.7%となった。

 

参考  2012/10/16 中国の経済(2012年9月)




 

三菱商事は10月17日、再生可能エネルギー事業の拡大を目指し、インドネシアのジャワ島で2000年以来、安定して商業運転を続けているWayang Windu 地熱発電所等の運営を統括するStar Energy Geothermal Pte Ltd.の株式20%を取得すると発表した。

2億ドル強を出資する。出資スキームは下図の通り。


Wayang Windu 地熱発電所は、約13,000ヘクタールの契約鉱区を有し、現在23万キロワットが稼働中。
2017年までに発電規模を42万キロワットとする。
増設計画が実現した場合の本発電所の総事業費は約10億ドル程度と見込まれる。

Wayang Windu 地熱発電所は ジャワ島西ジャワ州バンドン市郊外の広大な茶畑の中にある。

既設は23万キロワットで、1号機11万キロワットが2000年6月に、2号機12万キロワットが2009年3月に稼動した。今後3号機・4号機の増設を検討中。
インドネシア電力公社に30年間にわたり全量を売電する長期契約を締結済み。

既存の発電所を拡張しながら新たな電源開発も進め、2020年までに計70万キロワット強の発電容量を目指す。
現在、Halmahera島で2基の新設のFSを実施中。

インドネシアは高い電力需要の伸びが見込まれており、世界最大級の約 2,900万キロワットの推定資源量を活用すべく、地熱発電の開発に注力する方針で、同国では今後2020年までに、総計約600万キロワットにも上る新規地熱発電案件の開発が計画されている。
 
三菱商事では、これまで培ってきた電力事業の経験と、今後習得していくWayang Windu 地熱発電所の運営ノウハウを活かしつつ、インドネシア政府が推進する地熱開発計画の実現に貢献するとともに、日本を初めとする他の有望な地熱資源を保有する国においても、地熱発電事業に取り組んでいくとしている。

ーーー

Star Energy はSupramu Santosaにより設立された。

2007年にBarito Pacificのオーナーで合板王と呼ばれる彭雲鵬 (Prajogo Pangestu) がStar Energy Investmentを設立して、Star Energyの71%を3億ドルで取得した。残りの29%はロンドンのAshmore Investmentが取得した。

彭雲鵬はStar Energy Investmentの60%を保有し、事業パートナーのAgus Prajosasmito が残りの40%を保有している。

Wayang Windu 地熱発電所のほか、石油・ガスの開発を行っている。
(三菱商事は地熱発電事業のみに参加する)

Kakap PSC では石油・ガス田の開発を行っており、日量8,000バレルの石油、60百万立方フィートの天然ガスを生産している。

他の3プロジェクト、Bayumas、Sebatik、Sekayu は開発段階。
Star EnergyはSebatik油田の権益の75%を持ち、オペレーターとなっている。

ーーー

彭雲鵬はインドネシアの石油化学会社 Chandra Asri の大株主。

Chandra Asri は当初、Barito groupが75%日本インドネシア石油化学投資(丸紅 85%、昭和電工 10%、TEC 5%)が25%出資で設立された。

2005年に日本側は撤退、その後、株主が次々に代わった。

2011年9月にタイのSiam Cement Group がChandra Asriの株式30%を取得、経営に参画 した。
Barito Pacificの出資比率は64.8%で最大株主となっている。

PT Chandra Asriは2007年に豊田通商からスチレンモノマー製造・販売の PT.Styrindo Mono Indonesia を買収し、2011年1月1日付でPPメーカーの PT Tri Polyta Indonesiaを統合し、新社名PT. Chandra Asri Petrochemical Tbk.として上場した。

2011/6/8  Chandra Asri の増設計画

 



石油資源開発は、10月1日から8日まで、秋田・女川層タイトオイル(鮎川シェールオイル)の実証試験を行った。

10月10日、その結果を発表した。

 10月1日、鮎川油ガス田・女川シェール層(深度1800m)に対し酸処理テスト(*)を開始

(*)既存坑井を通じ希釈塩酸等を含む酸性流体をポンプで注入
  シェールオイルがあるとみられる岩盤の割れ目に詰まった石灰などを溶かす。

 10月2日、流体の注入(総量:141.6kl)を終了、ガス・リフト(*)により、注入した流体の回収作業を開始

(*)高圧ガスを坑井内に放出し、坑内液体の比重を小さくし、ガスの膨張上昇エネルギーによって液体を地上に汲み上げる手法。

  10月3日、地表に回収した流体中に少量の原油の混入を確認

 10月8日、流体回収作業を終了

回収した流体総量:100.6kl
回収した流体に含まれた原油総量:31.1kl

その後、坑井を密閉し、資機材の撤収作業を行った。

同社では、酸を流し込んだ地層に地下水脈はないため外部に漏れ出すことはなく、酸も産業廃棄物として処理するため、環境上の問題はないとしている。

今後、取得データなどの詳細分析などを行う。

来年から水平方向に井戸を掘り進め、高い水圧で割れ目を破砕し(水圧破砕法:fracking)、原油を取り出せるかを調べる。

経済性などを調べて生産への移行を検討する。

現時点で、鮎川油ガス田には約80万キロリットル(約500万バレル)程度のシェールオイルが採れる可能性があるとみている。

ーーー

石油資源開発は8月10日、米国テキサス州のシェールオイル開発プロジェクトに参入すると発表した。

買収した権益は、テキサス州アタスコサ郡、マクミュレン郡、ライブオーク郡のEagle Ford層の権益で、軽質原油、NGL、天然ガスを産出する。Marathon Oil が95%を有し、オペレーターとなっている。

石油資源開発では、Eagle Fordシェールオイル開発に参加して得られる最新の開発技術とノウハウを、今後の国内の非在来型石油ガスの開発において利用する考え。

2012/8/15 石油資源開発、米のシェールオイル開発に参加、日本での開発への技術習得目指す 

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石油資源開発は本年7月20日、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と共同で、秋田県由利本荘市にある同社の「鮎川油ガス田」で、タイトオイル(シェールオイル)に係るエンジニアリングスタディを3月から実施中であることを明らかにした。

シェールオイルの埋蔵が確認されているのは、「鮎川油ガス田」の地下1000~1500メートルにある頁岩(シェール)と呼ばれる粘土質の岩盤層。

鮎川油ガス田の貯留層は、船川層、女川層、グリーンタフなど複数の貯留層から構成されている。
共同スタディは、大規模なタイトオイル(シェールオイル)開発が進んでいるカリフォニア州Monterey層と同タイプで、タイトオイルの存在が期待される女川(おんながわ)層を対象とする。

同社によると、シェールオイルを含む硬いシェール層は、県内に分布しており、1989年に発見された鮎川油ガス田など所有する秋田県内3か所の油田でシェールオイルの存在も確認されていたが、これまで採掘する手段がなかった。

シェールオイルがあると分かった女川層


 

 




中国税関総署は10月13日、9月の貿易統計を発表した。

全体の輸出は1863億5千万ドルで単月では過去最高となったが、前年比は9.9%増で、昨年の勢いはない。
輸入は1586億8千万ドルで2.4%増で低水準となった。
この結果、貿易収支は 276億7千万ドルの黒字で7カ月連続の黒字となった。

日本への輸出は 2.1%増の139億ドルにとどまり、輸入は161億ドルで 9.5%減となった。
中国経済の減速に加え、尖閣諸島国有化に反発した反日デモや、日本製品不買運動などが影響したとみられる。

新華社通信は、9月の輸出入は国内外の経済政策による需要回復で増加したが、近い将来の貿易の力強い回復は考えにくいとしている。
外国政府の金融緩和策とクリスマス商戦用の注文で先進国向けの輸出が増大したとしている。
中秋節・国慶節祭日(9月30日-10月7日)を前に駆け込みの輸出もあったとみられる。

1~9月の累計の輸出は14,954億ドルで前年同期比 7.4%増、輸入は13,471億ドルで 4.8%増、輸出入を合わせた貿易総額の伸びは6.2%増に止まった。
(今年の政府目標は10%前後の増加)

1~9月の主要地域別の貿易状況は以下の通り。

    輸出入額   前年比    
EU(最大の貿易相手)   4,110億ドル   2.7%減   欧州経済の不振
日本   2,488億ドル   1.8%減   9月に減少幅拡大
             
米国   3,554億ドル   9.1%増    
ASEAN   2,889億ドル   8.1%増    
ロシア   662億ドル   14.2%増    
ブラジル   654億ドル   5%増    

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9月28日の上海外国為替市場の人民元相場は、対ドルで反発し、一時、1ドル=6.2835人民元を記録した。

2012/9/29  人民元、最高値更新


国慶節休暇明けの10月8日以降も人民元の上昇を続いている。

終値最高値は10月12日の6.2672人民元(弾力化前の8.92%高)。

10月15日には一時 6.2580人民元(弾力化前の9.08%高)の過去最高を記録した。

この間、中国人民銀行は基準値をむしろ引き下げたため、1%の上限に張り付く状態が続いたが、12日と15日には基準値が引き上げられた。
これは中国政府が人民元の上昇を認めるものとみられ、米国による為替操作批判を避けるものとの見方が出ている。

Romney候補は、「大統領に就任すれば中国を為替操作国に認定する」と述べている。

 

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中国国家統計局は10月15日、9月の物価を発表した。

消費者物価指数(CPI)は前年同月比1.9%上昇した。

食品は前年同月比2.5%上昇で、豚肉は昨年の価格高騰の反動で17.6%下落した。
食品以外は1.7%の上昇だった。

CPIの1~9月平均は前年同期比2.8%の上昇となり、政府の今年の抑制目標である4%前後の上昇の範囲内に収まっている。

同時に発表した9月の工業生産者出荷価格(卸売物価)指数は同3.6%低下し、7カ月連続のマイナスとなった。





読売新聞は10月11日、「iPS心筋移植、ハーバード大で ... 初の臨床応用」と報じた。

ハーバード大の森口尚史客員講師らが iPS細胞から心筋の細胞を作り、重症の心不全患者に細胞移植する治療を6人の患者に実施し 、成功したとしている。

iPS細胞を利用した世界初の臨床応用例で、最初の患者は退院し、約8か月たった現在も元気だという。

iPS細胞の作製方法は、4種類の遺伝子を注入する山中教授の手法とは異なるものだという。

報道によると、以下の手法をとった。
 ・患者の肝臓から肝臓の前駆細胞を採取

 ・2種類の化学物質を用いてiPS細胞を作製
            Nature誌によると、森口論文記載では microRNA-145 inhibitor と TGF-β ligand

 ・心筋細胞に変化させた後、冷却装置を用いて大量増殖
           森口氏の他の本では、冷却は単に保存のためとしている。

 ・重症心不全患者の心臓の約30カ所に注入
 

更に読売新聞は森口客員講師とのインタビューを掲載した。

 ・患者6人

いずれも米国籍で、日系の患者も1人。ハーバード傘下の同じ病院の患者。

最初の患者は肝臓移植を受けていたため、心臓が悪くなったのに次の移植の機会がなかなか得られなかった。心筋梗塞や狭心症、糖尿病も持ち、仮に心臓移植をやっても難しかっただろう。

ほかの5人も、慢性虚血性で重症の心不全。危険因子を多く抱えていた。
3人は何か治療しなければ死んでいただろう。他の3人も1か月くらいしかもたない状況だった。
患者たちの容体は安定し、1人は社会復帰して働いている。

 ・チーム構成

5人ほど。私が細胞を担当。
過冷却の担当者は生命工学や機械工学を専攻するハーバード大とマサチューセッツ工科大の大学院生ら。

(手術した医師の名前が出てこないのがおかしい 。同氏は東京医科歯科大学医学部保健衛生学科卒業で、看護師の資格を持つが、医師の資格は持たない。)

 ・日本と米国の違い

日本なら規制が色々あってできなかっただろう。

 ・資金調達

大学院生らがボストンのベンチャーキャピタルに行って集めてくれた。

森口氏は、米ニューヨークのロックフェラー大学で10日から開かれていた 7th Annual Translational Stem Cell Research Conference  (幹細胞学会)で、iPS細胞から心筋の細胞を作り、重症の心不全患者に細胞を移植する治療を実施したとポスターで展示した。

共著者には4人の名前が挙がっている。各氏の発言は以下の通り。

東京医科歯科大学の佐藤千史教授 
 「メールで研究の抄録を受け取り、内容の整合性を確認、名を連ねることを了承した。
注意が不十分だった」

東京大学の井原茂男特任教授
 「基礎的なデータ解析は頼まれたが、人の臨床に応用するとは聞いていなかった」

杏林大の上村隆元講師
  「iPS細胞について、私は全くの専門外。事前に一切連絡はなく、なぜ私の名前が入っていたのか分からない」

慶応大医学部の興津太郎助教
(森口氏が本年9月に発表した「肝臓がんの細胞から作ったiPS細胞を使った新治療法」の共同執筆者とされた)
  「掲載された研究に関与した事実は一切ない」
 

NHKの取材に対し森口氏は、細胞移植はことし2月以降、ボストンにあるハーバード大学の関連病院、マサチューセッツ総合病院で院内の倫理委員会の暫定承認を得たうえで実施した、と説明した。

NHKは読売の報道前に同氏にインタビューしたが、病院側の確認が取れないことや、 列挙されている著者が日本人ばかりで手術した医師などが入っていないなど、不審なことが多いため、放送しなかったという。

毎日新聞、朝日新聞、日本経済新聞も取材を依頼されたが、説明に不審な点があるため、記事化を見送ったとしている。

ーーー

読売新聞の 報道を受け、海外の記事を探したが、一切報道されていなかった。
ハーバード大学なども臨床応用実施の発表はしていない。

米ハーバード大と、患者への治療を実施したとされる米マサチューセッツ総合病院は11日、「森口氏の一切の臨床試験は、我々が承認したものではない」との声明を発表した。

「1999〜2000年にかけてマサチューセッツ総合病院の客員研究員だったが、それ以来、同病院やハーバード大とは関係がない。森口氏の職務に関わる臨床試験は、同大学あるいは総合病院の審査委員会により承認されたものではない」

これを受けて国際学会を主催した財団も、「疑義が生じた」と指摘し、会場から発表内容を示したポスターを撤去する措置をと った。

ウェブで参加登録をした研究者は誰でもポスターを示して研究成果を説明することができるといい、審査などはないという。

これについて森口氏は、「きちんとした手続きにのっとって移植を実施した。私に医師の資格はないが、移植は医師の指示の下で行われたので問題はない。ハーバード大学が私が所属していないと否定するのはよく分からない」と話してい る。

森口氏が「論文を投稿する」と説明したNature Protocolsの編集部は「該当する論文は受理されていない」としている。

英科学誌 Natureは10月12日、森口氏の主張におかしな点が多数あることを指摘し、更に、iPS細胞に関する本で森口氏が執筆を担当した部分に、山中伸弥・京都大教授の論文と同じ表現があることが分かったとの記事を電子版に掲載した。

http://www.nature.com/news/stem-cell-transplant-claims-debunked-1.11584


読売新聞は10月12日、以下の通り報じた。

「iPS心筋移植」報道、事実関係を調査します

本紙記者は、事前に森口氏から論文草稿や細胞移植手術の動画とされる資料などの提供を受け、数時間に及ぶ直接取材を行った上で記事にしました。

森口氏は本紙記者のその後の取材に対し、「(取材に)話したことは真実だ」としていますが、報道した内容に間違いがあれば、正さなければなりません。

現在、森口氏との取材経過を詳しく見直すとともに、関連する調査も実施しています。読者の皆様には、事実を正確に把握した上で、その結果をお知らせいたします。

同紙は13日、森口氏の説明は、「虚偽と判断」し、「今回の事態を招いたことに対し、読者の皆さまに深くおびいたします」とし、以下の通り述べた。

「事実だ」と主張し続ける森口氏の説明は客観的な根拠がなく、説明もまったく要領を得ません。

私たちはそれを見抜けなかった取材の甘さを率直に反省し、記者の専門知識をさらに高める努力をしていきます。

本紙は過去にも森口氏の記事を取り上げています。そのうちの2010年5月の記事について東京医科歯科大が12日、同大での実験や研究を否定しました。ゆゆしき事態であると認識しています。


ーーー

読売新聞は2010年5月1日、「iPS活用 初の創薬...C型肝炎 副作用少なく 東京医科歯科大など成功」の記事を掲載した。

ヒトのiPS細胞などを使って、C型肝炎を治療する効果的で副作用も少ない薬の組み合わせを見つけ出すことに、森口尚史・米ハーバード大学研究員らと東京医科歯科大のグループが成功した。

難治性C型肝炎の治療はインターフェロンと抗ウイルス薬リバビリンの同時投与が一般的だが、インターフェロンには発熱やうつ症状、リバビリンには重い貧血などの副作用があった。
森口研究員らは既存の治療薬など10種類から2~3種類を選択。C型肝炎ウイルスに感染した肝臓の培養細胞に同時投与して薬の効果を調べる一方、ヒトiPS細胞から作った心筋や肝臓の細胞にも同様に加えて薬の副作用を調べた。

その結果、量を4分の1に減らしたインターフェロンと、高脂血症治療薬、臨床試験中の肝がんの新薬の計3種類を組み合わせて使うと、ウイルスは10%以下まで急減。iPS細胞由来の心筋の拍動や肝臓細胞へのダメージも少なかった。

東京医科歯科大は10月12日記者会見を開き、森口氏が同大と、iPS細胞を使ってC型肝炎の新しい治療法を開発したとする読売新聞の2010年の報道について、「同大で研究実験を行った事実はない」と発表した。

ーーー

東京大学のホームページには、森口氏について以下の記載がある。

 東大
先端科学技術研究センター知的財産分野 寄付研究部門 先端医療・知的財産政策(第一製薬)

客員助教授 森口尚史

1995年 東京医科歯科大学大学院医学系研究科卒業後、(財)医療経済研究機構 調査部長及び主任研究員として活動し、1999年度7月より現職。現在、ハーバ ード大学医学部マサチューセッツ総合病院 消化器内科教室リサーチフェロー及び東京医科歯科大学医学部非常勤講師を兼務。

先端研ニュース(2002/4/1)では、2002年3月31日退職となっている。

2007年9月に東大で博士号(学術)を取得した。
  
博士論文題目は「ファーマコゲノミクス利用の難治性C型慢性肝炎治療の最適化

現在は東京大学医学部附属病院形成外科・美容外科で有期契約の特任研究員をしているという。

東京大学医学部附属病院は10月12日以下のコメントを出した。

本日現在、本人とは連絡がとれておりません。
東京大学医学部附属病院では、事実関係の確認を急いで行っているところです。

付記

東京大学は10月19日、同大病院の森口尚史・特任研究員について、懲戒解雇処分にしたと発表した。

ーーー

森口氏は10月13日、記者会見し、iPS細胞を使った手術について、時期や回数などに虚偽が含まれていたことを認めた。

手術は昨年6月に1件行ったとしたが、詳細は明らかにしなかった。

なぜ直ぐにバレルことをやったのだろうか。




米国商務省は10月10日、中国製の太陽電池およびモジュールにダンピングおよび補助金の行為が存在するとする最終判決を下した。

米国際貿易委員会(ITC)が11月下旬の会合で米企業の被害を最終的に認定すれば、納税命令を出す。
ITCは2011年12月2日に、
中国から輸入されたソラーパネルが米市場で不当に安く販売されており国内業界に損害を与えているとの仮決定を下している。米国メーカーの倒産が相次いでいることから、被害認定はほぼ確かとみられる。

米国ではダンピングの存在は商務省が、被害の存在はITCが認定する。

ーーー

米商務省は3月20日、中国のソラーパネルメーカーが中国政府から不当な補助金を受けているとして、相殺関税を課す仮決定を下した。

相殺関税の対象となるのは中国製の結晶シリコン型ソラーパネルで、中国製の太陽電池セル(発電素子)を使ったパネルやモジュールであれば、第三国から輸入する製品にも適用される。

米商務省は5月17日、中国製太陽電池を対象に反ダンピング関税を課す仮決定を下した。

2012/3/24   米商務省、中国製ソラーパネルに相殺関税 


米商務省は10月10日、反ダンピング関税と相殺関税を課す最終決定を下した。

今回の決定の内容は以下の通り。 

単位:%   AD:反ダンピング、CVD:相殺関税
  仮決定   最終決定
AD CVD 合計 AD 輸出
補助金
調整後
 AD
CVD 合計
Wuxi Suntech 31.22 2.90 34.12 31.73 -10.54 21.19 14.78 35.97
Trina Solar 31.14 4.73 35.87 18.32 -10.54 7.78 15.97 23.75
他の59社  31.18 3.61 34.79 25.96 -10.54 15.42 15.24 30.66
他の全て 249.96 3.61 253.57 249.96 -10.54 239.42 15.24 254.66


相殺関税が大幅にアップとなっているが、逆に反ダンピング関税から輸出補助金相当分が控除されるため、合計ではあまり変わらない。
合計では中国最大手の尚徳電力(Suntech) が引き上げられ、Trina Solar
(天合光能) は引き下げとなった。
 

EUも本年9月6日、中国製太陽電池に対する反ダンピング調査を発動すると発表した。

中国は2011年に約358億ドルの太陽光発電製品を輸出したが、そのうち6割以上はEU向けで、EUに輸出された製品の価値は210億ユーロに達した。EUの中国太陽光発電企業に対する影響は、米国を大きく上回る。

米国商務部のデータによると、米国は2011年、中国から31億ドル相当の太陽電池およびモジュールを輸入した。

ーーー

米国では中国製の安い太陽電池の輸入が急増した結果、太陽電池パネルの価格が急落。米メーカーの経営破綻や工場閉鎖などが相次いでいる。

2009年に環境・エネルギー分野で雇用創出を目指すオバマ大統領の「Green New Deal」政策の一環として535百万ドルの融資保証を受け、2011年5月にはObama大統領も訪問した太陽電池メーカーのSolyndraが2011年9月6日に破産法(Chapter 11)を申請した。

本年6月28日には米太陽光発電パネルメーカーのAbound Solarが米連邦破産法の適用を来週申請する方針を発表した。
同社も「Green New Deal」政策の一環として、米エネルギー省から受けた4億ドルの融資保証枠のうち7000万ドルを利用していたが、中国メーカーの低価格攻勢などで事業継続が困難となった。

米商務省は2011年10月にドイツの太陽電池大手SolarWorld の米国子会社など7社から、「中国メーカーは政府支援を受けて生産・販売コストより安くパネルを販売している」として、関連調査と100%超の関税適用をするよう請願を受けた。

SolarWorldは太陽電池パネルの大幅値下がりによりカリフォルニアの工場を閉鎖しており、中国の輸出業者のダンピングで米国のメーカーは根こそぎにされると批判している。

米商務省によると、中国からの太陽電池パネルの輸入は2009年の640百万ドルから2010年に1,500百万ドルに急増した。
 

他方、中国からの安い輸入パネルで太陽発電を推進している米国のメーカー25社(The Coalition for Affordable Solar Energy)はこれに反対し、太陽電池の価格上昇で米国の需要は減少し、10万人の職が失われるとしている。

ーーー

米商務部の決定を受け、中国商務省の瀋丹陽報道官は10月11日に談話を発表した。

「米商務省が中国政府および企業の合理的な反論を無視し、中国製太陽電池製品に税徴収措置をとったことに対し、強く不満の意を示す」

「アメリカは新エネルギー分野で貿易摩擦を引き起こし、全世界に保護貿易主義および新エネルギーの発展を阻止しようとするシグナルを発信した。これは気候変動への全世界対応とエネルギーの安全保障という大きな流れに背くものである。また、G20首脳会合で可決された確約にも違反している」

「中米両国の企業間では、協力や共通利益が日増しに緊密になっている。アメリカが誤ったやり方を是正し、ともに新エネルギーおよびグリーン経済の発展を促していくよう希望する」

ーーー

米国の動きに対し、中国も対抗している。

中国商務省は7月20日、米国製の太陽光発電パネル向け多結晶シリコンについて反ダンピング調査、反補助金調査を開始したと発表した。合わせて韓国製の多結晶シリコンについても反ダンピング調査を開始した。

中国が輸入している多結晶シリコンの約4割が米国製で、2割は韓国製とされる。

2012/7/24    中国商務部、米の太陽発電向けポリシリコンに反ダンピング、反補助金調査開始

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中国が米国とEUのダンピング調査で問題にしている点に、米国とEUが中国を非市場経済国待遇をしていることがある。

WTO協定では「貿易の完全な又は実質的に完全な独占を設定している国ですべての国内価格が国家により定められているものからの輸入の場合には、規定の適用上比較可能の価格の決定が困難であり、また、このような場合には、輸入締約国にとって、このような国における国内価格との厳密な比較が必ずしも適当でないことを考慮する必要があることを認める。」と規定している。
但し、「非市場経済国」の定義はなされておらず、どのような場合に輸出国を「非市場経済国」として認めるかについては各国の裁量にゆだねられている。

「市場経済国」との認定を受けていない国の場合、ダンピング調査の際に、輸出価格は、国内価格との比較ではなく、経済発展レベルが近い代替国の価格と比較して判定される。

実際には中国よりコスト水準の高い国を代替国に採用するケースが多く、この結果、ダンピングと判定される確率も高くなっているといわれている。

今回、米国は代替国としてタイを選んだが、EUは米国を代替国に選んだとされる。

EUの場合も、ダンピング認定がされるのは必至とみられている。

 
 


  

BPは10月8日、テキサス州Texas Cityの製油所と米国南東部の販売ネットワークの一部をMarathon Petroleum に25億ドルで売却する契約を締結したと発表した。

売却対象は、
 製油所 能力 日量 475千バレル
 隣接するSouth Houston Green Power コジェネレーション設備
    液化天然ガスパイプライン3本
 米国東南部の4か所の販売ターミナル

この製油所は1998年のAmocoとの統合でBPの所有となった。

なお、製油所に隣接するTexas City 石化コンプレックスは製油所とは独立しており、BPのグローバル石油化学事業の重要な一部であるため、売却の対象外。今後もMarathon Petroleum所有となる製油所との間で長期的な原料供給契約を結び、やっていく。

ーーー

同社は8月13日に、カリフォルニア州Carsonの製油所と、販売設備をTesoro Corporationに25億ドルで販売する契約を締結している。

売却対象は、
 製油所 能力 日量 266千バレル
 隣接する400メガワットのコジェネレーション設備の持分(51%)
 Wilmingtonのコークス煆焼設備(年産35万トン)
 販売設備(パイプライン、貯蔵ターミナル)
 ARCOブランドの販売ネットワーク(南カリフォルニア、アリゾナ、ネヴァダ)

この製油所は2000年のARCO買収でBPの所有となった。 

ーーー

BP は米国に5つの大規模、近代的な製油所を持っていた。
 ・テキサス州 Texas City   今回売却
 ・カリフォルニア州 Carson  8月に売却
 ・ワシントン州 Cherry Point
 ・インディアナ州 Whiting
 ・オハイオ州 Toledo (Husky Energyとの50/50JV、2008年設立)

BPは2011年2月1日、 グローバルな需要の変動を背景に、米国の製油・販売事業を再編し、2つの製油所を処分すると発表した。
テキサス州 Texas City とカリフォルニア州 Carson製油所とそれらに付属する販売設備の売却先を探すとした。

同時にBPは、残りの3つの製油所を強化するとした。以下の計画を進めている。 

 ・ワシントン州 Cherry Point (240千バレル)   超低硫黄クリーンディーゼル燃料、超低ベンゼンガソリンの製造
       
 ・インディアナ州 Whiting (405千バレル)   カナダの重質油の処理能力を増強 
       
 ・オハイオ州 Toledo (160千バレル)   連続触媒改質装置の追加
 (Husky Energyとの50/50JV)

ーーーーーー

BPは流出事故費用をまかなうため、また、BPの強みと成長機会を生かすため、2010年から2013年の間で380億ドルの資産売却を目標としている。(2010年7月には、2011年末までに300億ドル分の資産を売却するとしていた。)

今回の売却を含めると、累積額は350億ドルを超える。

2012/9/14  BP、メキシコ湾の非戦略的石油資産を売却 



 

米下院情報委員会は10月8日、中国の通信機器大手で世界2位の華為技術(Huawei Technologies)と 世界5位の中興通訊(ZTE Corp )に対する中国当局の影響力が米国の安全保障上の脅威となる恐れがあるとする報告を公表し、両社と取引のある米国企業に他のメーカーを選ぶことを検討するよう呼びかけるとともに、米連邦政府に両社の米国でのM&A活動を阻止するよう要求した。

11カ月にわたり2社に対する調査を実施した。

Rogers委員長(共和党)とRuppersberger下院議員(民主党)が中心となった情報特別委は2011年11月、両社が中国の情報機関のため、重要な通信部品・システムに悪意あるハードウェアやソフトウェアを組み込んだ疑いがあるとして、両社に対する調査の発動を発表した。

中国政府が両社がつくったネットワーク機器に組み込んだソフトウエアで cyber-espionage を行う恐れがあるとしている。

「中国の軍および情報機関は、米軍の技術優位性を認識し、将来の米国との対立時に利用するため、有利となるものを積極的に探している。送電網や金融ネットワーク等の重要なインフラに悪意のある埋め込みを行えば、とてつもない武器となりうる」と述べている。

中国政府は中興の株式を保有し、中国の国有銀行が両社に資金の一部を提供しており、両社は中国の政府や軍と取引があり、両社の内部には中国共産党の基層レベルの組織があることから、両社は党や政府の機関から独立していない企業だとみなし、そのうえで、中国政府からの要求を拒絶することは難しいため、その製品にはリスクが存在し、米国の安全上の利益を損なう可能性があると結論づけた。

華為技術については、1年に及ぶ調査で贈収賄や不正行為、差別行為、著作権違反など米国の法律に違反しているとの確かな情報をつかんでおり、FBIやその他の政府機関に調査を委ねるとしている。

Bloomberg社は、今回の報告書は両社の米国市場での業務展開にとってより大きな障害になると分析している。

ーーー

華為は公式サイトで声明を発表し、情報特別委が主導し、11 カ月をかけて完成させたこの報告書が、明確な情報や証拠を提出して同委の懸念を実証できていないと述べた。また同報告書は伝聞が多く、その本質や目的は中国企業の米国市場への参入を阻止し、競争から阻害することであるとの見方を示した。

中興は、同社は米国市場にとっていかなる安全保障上の脅威にもなっていないとし、米国の関連機関や関係者が今すぐやらなければならないことは、視野を広げて電気通信産業の供給チェーン全体をしっかり眺めることだと指摘した。

中国外交部の洪磊報道官は、定例記者会見で、「中国の電気通信企業は市場経済の原則に基づきグローバル経営を行っており、その米国における投資には中米経済貿易関係の互恵・Win-Win という性質が体現されている。米国議会が事実を尊重し、偏見を捨て、中米経済協力に役立つ行動をとる事を望む」と述べた。

人民日報は、「事実の裏付けを欠いたよりどころのない懸念を抱きながら、相手側に対し事実によって無罪を証明するよう求める。こんなロジックはまるでかつての"推定有罪"のように乱暴なものだと批判している。

同委の賢明とはいえない政治的な動きは、中米の経済貿易協力の健全な発展を阻害するものだ。事実に背き、偏見に満ちたこの報告書は、貿易保護主義のたちの悪い拡大であり、疑心暗鬼になっての空騒ぎであると同時に、米国という「法治至上国家」が推定有罪という醜態を演じていることを暴露するものでもある。

今回非難を受けた両社は中国の法律や国際的に通行するルールに基づいて合法的に経営を行い、グローバル市場で立派な業績を上げ、多くの国で受け入れられている。それがどうして米国では安全保障上の脅威になるのだろうか。

ーーー

米国は数多くの中国製品に対し、反ダンピング調査や反補助金調査を行い、中国も対抗措置を取っている。

米国は9月17日に、中国が輸出する自動車・自動車部品に大規模な補助金を支給しているとしてWTOに提訴、中国も同日、米国が中国の輸出品に対し不当な相殺関税をかけているとしてWTOに提訴し、米中両国間の貿易摩擦が激化している。

Obama大統領は9月28日、「国の安全保障に関わる」として、中国系企業Ralls Corp. によるオレゴン州の米海軍施設近くの風力発電企業4社の買収と所有を禁止し、本年取得した所有権を放棄することを求めた。

2012/10/4 オバマ大統領、米国内での中国企業の風力発電買収を阻止 

米紙は、これは、Obama大統領が北京に対して弱腰だというRomney大統領候補を含む共和党の批判に対して、最近頻繁に打ち出している強硬ラインの一つであるとしている。

Kissinger元国務長官は10月3日、Obama大統領と共和党のRomney氏が遊説などで争って中国カードを切っていることを批判し、「中国を攻撃する発言は最悪だ」と述べた。

「Obama大統領とRomney氏が選挙キャンペーンで、『中国は貿易分野で米国をだましている』と言っているが、これは最悪の発言だ」と批判した。

また、Romney氏が、「大統領に就任すれば中国を為替操作国に認定する」と述べていることに対し、「ほとんどすべての中国問題専門家が異議を抱いている。中国との貿易摩擦を戦争にしようとするのは、中国を知らない理論家だけだ」と指摘した。

米紙は、中国でテレコム関連の製品を売っている米国企業が報復されかねないと懸念している。
但し、中国はハイテク部品を欧米や日本の企業に頼っており、これを切ることはないだろうとの見方もある。(他の分野での報復はありうる)

 

 


Westlake Chemicalは10月2日、ケンタッキー州Calvert Cityのエチレン工場の原料をプロパンからエタンに変更するとともに、能力を205千トンから286千トンに増やすと発表した。

Marcellus shaleで開発されている安価なエタンを活用するもので、同工場のビニルチェーンの競争力を高める。
同社は同時にCalvert CityのPVCの能力を現在の500千トンから590千トンに増強すると発表した。

北米では、天然ガスが豊富にあるため、エチレン原料としてはエタンが最も多く、それに続いてプロパン、ブタンもクラッキングに使われている。

同社のLake Charles工場のエチレンはエタンを原料にしている。

合計の投資額は201~240百万ドルで、エチレンは2014年第2四半期、PVCは2014年後半に完成する予定。

同社は2011年8月に本件を検討していることを明らかにし、以下の通り述べている。

「Marcellus shale のエタンをGulf Coastに輸送するパイプラインの完成を待っている。
Calvert Cityにエタンを持ち込むため、それに接続する。
プロパンからエタンに転換した時点でデボトルネッキングにより能力を増強する。」

現在、Enterprise Products Partners がMarcellus shale のエタンをペンシルバニア州HoustonからGulf Coastに輸送するパイプラインのATEX Express  を建設中で、2014年第1四半期にサービスを開始する予定。

ペンシルバニア州Houstonからの新設パイプラインを、石油製品をGulf Coast からmidwest に送っていたパイプラインに接続し、逆送させる。テキサスでの新設パイプは貯蔵設備までのもの。


別途、
Sunoco Logistics PartnersがMarcellus shaleのガスの輸送のため、
MarkWest Liberty Midstream & Resourcesと組んで、Mariner East計画 を進めており、エタンをペンシルバニア州Houstonから同州Marcus Hookmまで送って処理したうえで、Gulf Coast や欧州に船で輸送する。

2012/10/2 Ineos、米のシェールガスからのエタンを欧州のエチレン原料用に輸入
 

Westlakeでは北米のエタンベースのエチレンは中東のエタンベースエチレンに次いで、世界で2番目の低コストエチレンであるとしている。
原料コストの低下(及び原油価格アップによるナフサ価格アップ)により、エタンの有利性は更に拡大しつつある。

これを受け、各社は米国およびカナダでのエチレン増強を行いつつある。

1)ダウ  2011/4/26 ダウ、エチレンとプロピレンの拡張計画を発表

2)シェル 2011/6/14 Shell、アパラチア地方でエチレンクラッカー建設へ

3)LiondellBasell

LyondellBasellは2011年12月8日、投資家説明会を開催し、現状と今後の戦略を説明した。

今後の成長戦略のなかで、SinopecとのJVで中国でのPO/TBA計画のFS実施を決めたことや、米国で安価なエタンを使用したエチレンの増強などを明らかにしている。

2011/12/20   LyondellBasellの成長戦略 

他に、Shaleエタンの利用も。

  Nova

NOVA Chemicalsは2011年5月、Range Resourcesとの間でMarcellus Shale Basinのエタンの長期購入契約を締結したと発表した。Ontario州Sarniaにパイプラインで輸送する。

  Ineos

2012/10/2 Ineos、米のシェールガスからのエタンを欧州のエチレン原料用に輸入


DowのAndrew Liveris CEOは2012年3月8日、エネルギー関連の調査機関が主催する年次会合CERAweek でスピーチし、シェールガスからのLNGの輸出を制限するよう求めた。

アメリカのこの安く豊富なガスの産業での有利性は、首尾一貫した国のエネルギー政策をつくらなければ消えてしまう。天然ガスを輸出する代わりに、液体形態ではなく、これを加工した固体形態で輸出するべきだ と述べた。

ーーー

Westlake Chemicalは台湾でCGPCを設立した故 T.T. Chao が1986年に米国に進出、設立した。

現在の能力は以下の通りで、オレフィン事業(エチレン/PE/SM)とビニル事業(エチレン/塩素/VCM/PVC/塩ビパイプ)からなっている。
エチレン増強、電解増設により、エチレンと塩素の購入なしの一貫体制を目指す。


工場別能力(単位:千トン)

    エチレン   VCM PVC
Olefins Business Lake Charles, LA  1,140 PE     1,140
SM   
   260
   
Vinyls Business Calvert City, KY   205286 塩素      250  590  500590
Geismar, LA   塩素    (350) 270  270

 ・ Calvert CityはBF Goodrichから買収
 ・ PEの一部はCities Service と Eastman から買収
 ・GeismarのVCMとPVCは、
Bordenから買収したプラントを停止し、その後新設した。
 ・Geismar では電解を新設中(当初計画は塩素250千トン、その後350千トンに修正)で、2013年完成予定。





ノーベル生理学医学賞を決定する機関のカロリンスカ医科大学(Karolinska Institutet) は10月8日、今年のノーベル医学生理学賞を、京都大学の山中伸弥教授と英ケンブリッジ大のSir John B. Gurdon に与えると発表した。

山中教授は2006年、マウスの皮膚細胞に4種類の遺伝子を入れることで、あらゆる組織や臓器に分化する能力と高い増殖能力を持つ人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作り出した。2007年には人間でも同様のiPS細胞づくりに成功した。

Sir Gurdonは1962年、カエルの成体の細胞の核を卵子に移植すると、受精卵のような「多能性」をもつようになり、さまざまな細胞や組織に「初期化」できることを示した。

ノーベル賞ホームページは山中教授のインタビュー録音を載せている。
タイトルは教授の発言から、"My goal, all my life, is to bring this stem cell technology to the bedside, to patients, to clinics ..."

ノーベル医学生理学賞の受賞は1987年の利根川進・米マサチューセッツ工科大教授以来2人目。
今回の受賞で日本人の受賞者は、米国籍の南部陽一郎氏(2008年物理学賞)を含め19人。

      (敬称略)
物理学賞 (7人)   湯川秀樹、朝永振一郎、江崎玲於奈、小柴昌俊、小林誠、益川敏英、南部陽一郎
化学 (7人)   福井謙一、白川英樹、野依良治、田中耕一、下村脩、鈴木章、根岸英一
医学・生理学賞 (2人)   利根川進、山中伸弥
文学 (2人)   川端康成 江健三郎
平和賞 (1人)   佐藤栄作

ーーー

山中伸弥教授とSir John B. Gurdon は2009年にラスカー賞(基礎医学部門)を受賞している。
ラスカー賞は米国で最も権威がある医学賞で、受賞者の2割以上がノーベル賞を受けている。

ラスカー賞の日本人の受賞は6人目。

1982年   花房秀三郎(基礎医学研究賞)    
1987年   利根川進(基礎医学研究賞)   ノーベル賞
1989年   西塚泰美(基礎医学研究賞)    
1998年   増井禎夫(基礎医学研究賞)    
2008年   遠藤章(臨床医学研究賞)    
2009年   山中伸弥(基礎医学研究賞)   ノーベル賞

2008年には血中コレステロール濃度を下げる薬のもとになる物質「スタチン」を発見した遠藤章・東京農工大特別栄誉教授が臨床医学部門で受賞している。

2008/9/16 米ラスカー賞に遠藤章・東京農工大名誉教授




京都大の研究チームはこのたび、マウスのiPS細胞とES細胞(受精卵をもとにした胚性幹細胞)から卵子をつくることにが成功した。その卵子を体外受精させ、子どもや孫も生まれた。iPS細胞から生殖能力のある卵子ができたのは初という。

京大発表 多能性幹細胞から機能的な卵子を作製することに成功
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2012/121005_2.htm

米科学誌サイエンスの10月4日の速報電子版で発表、解説記事も掲載した。

Offspring from Oocytes Derived from in Vitro Primordial Germ Cell-Like Cells in Mice
   http://www.sciencemag.org/content/early/2012/10/03/science.1226889.abstract

解説記事 Sperm and Eggs Created in Dish Produce Mouse Pups
   http://news.sciencemag.org/sciencenow/2012/10/oocytes-normal-mice.html

京大の斎藤通紀・医学研究科教授や林克彦准教授らの研究チームが下記の手法で卵子をつくり、この卵子計163個を、マウスが自然につくった精子と体外受精させて、雄雌3匹の子どもが生まれた。
いずれも正常で、別のマウスとの間に孫をつくることもできた。

同チームは昨年、iPS細胞とES細胞から精子を作る同様の実験にも成功している。

ーーー

チームは、メスのマウスの細胞から作ったiPS細胞とES細胞に2種類のたんぱく質などを加えて培養し、 卵子や精子を作る元となる「始原生殖細胞」に極めて似た細胞を作った。

始原生殖細胞は生殖細胞のもとになる未分化の細胞で、発生の初期に出現し、将来の卵原細胞あるいは精原細胞になる。

昨年の精子の場合は、この始原生殖細胞を雄の精巣に移植して精子を作った。

しかし、卵子はそのままでは分化しにくい。
このため、始原生殖細胞をマウス胎仔の中から取り出した将来の卵巣になる体細胞と共に培養した後に、雌マウスの卵巣に移植することで未成熟卵子を得た。

それらの未成熟卵子を体外培養により受精可能な卵子にまで成熟させた後に、自然につくった精子と体外受精させることにより健常なマウスを得た。

ーーー

本成果は基礎および応用面の双方において大きな効果が期待できる。

基礎面においては、始原生殖細胞の発生メカニズムの解明や卵子形成の初期段階の解析が可能になる。

応用面においては、不妊症の原因究明に効果が期待できる。

ES/iPS細胞を起点として、始原生殖細胞から卵子形成の初期段階までの一連の分化過程を追えることから、この培養系を発生モデルとして用いて、始原生殖細胞の発生や卵子の分化・成熟に必要な遺伝子の単離に貢献すると考えられる。

これらの遺伝子はヒトの不妊症の原因遺伝子となっている可能性があるが、iPS細胞からも卵子を作製できることから、不妊症患者からのiPS細胞を用いることにより、疾患原因遺伝子の同定を行うことが可能になると考えられる。

しかし、本研究はマウスを用いた試験段階であり、マウスとヒトの相違点を考慮すると、応用面での貢献のためには、さらなる基礎研究が必要である。

人とマウスのiPS細胞は性質が違い、人で同様に始原生殖細胞をつくるのはかなり難しいという。

また、卵子は生命の根源となる細胞であり、倫理的な課題を慎重に検討する必要がある。

ES細胞とiPS細胞の取り扱いを定めた国の指針では ヒトについて「できた卵子や精子を受精させない」としている。
政府の総合科学技術会議は昨秋、研究のため人工的に作った生殖細胞の受精の是非について、ようやく検討を始めた。

チームの斎藤通紀教授:

つくった卵子の機能に問題がなく、倫理上の問題も解決されて社会的にも認められることが前提だが、成果が不妊治療に役立てばいいと強く思う。

現時点の技術をヒトで応用することは非常に難しい。

山中伸弥・京都大iPS細胞研究所長:

精子に続き、わずか1年で卵子作製に成功したことに敬意を表したい。体の中で精子や卵子がどうできるのか、緻密な研究を積み重ねてきたチームだからこそと思 う。不妊症の原因解明や創薬につながる大きな一歩。

ーーー

慶応大の岡野栄之教授らが、人間の皮膚の細胞から作ったiPS細胞を培養し、「始原生殖細胞」に成長させることにが成功した。10月6日の各紙が報じた。

始原生殖細胞に特徴的に現れる遺伝子が確認できた。

海外では既に作製例が報告されているが、国内では初とみられる。


 

米議会予算局(CBO)は10月5日、2012会計年度(2011年10月- 2012年9月)の財政赤字が4年連続で1兆ドルの大台を突破したとの見通しを明らかにした。前年の1兆2970億ドルからは2070億ドル減少した。

財政赤字のGDP比は2009年度10.1%、2010年度9%、2011年度8.7%に対し、約7%に改善した。

歳入が増加し、支出が減少した。

付記 米財務省は10月12日、2012会計年度の財政赤字が1兆893億5300万ドルとなったと発表した。


単位:10億ドル
    2011 2012 増減理由
歳入 個人所得税 1,091 1,129 38 給与所得増
社会保険料 819 850 31 所得増
法人所得税 181 242 61 減価償却ルール変更など
その 211 229 18  
合計 2,302 2,450 148  
歳出 軍事費 678 651 -27 アフガン、イランの費用減
Social Security 720 762 42  
Medicare 483 469 -14 政府負担計画の終了
Medicaid 275 250 -25  
失業保 126 96 -30 最近の対象者減
その予算 1,089 1,030 -59  
国債金利 266 258 -8  
TARP -38 24 62  
合計 3,599 3,540 -59  
赤字 -1,297 -1,090 207  
   * TARP:不良債権買取プログラム

2013年度がどうなるかは、減税失効と歳出の自動削減開始が重なる「財政の崖 (Fiscal Cliff)」問題の行方に左右される。
 

Fiscal Cliff 問題

米国では、年末に大型減税が期限切れを迎え、来年1月からは財政管理法に基づき、歳出の自動削減が開始され 、その影響は最大で6060億ドルに達し、赤字は減少するが、大規模な財政緊縮が起こる可能性がある。

バーナンキFRB議長が2012年2月の議会証言で「大規模な財政の崖」という表現で米景気の先行きに警鐘を鳴らし、注目を集めるようになった。

10月4日の日本経済新聞の景気討論会でも、米国経済については、米国の住宅バブル崩壊に伴う家計のバランスシート調整がほぼ終了した、シェールガス革命による産業界の活性化(三菱ケミカル小林社長)、という明るい点が指摘されたが、半面、米国経済の最大のリスク要因として「財政の崖」の問題が挙げられた。

今年の年末~来年1月にかけて起こる具体的な増税、特別措置の終了、そして歳出削減の内容 は、以下の通り。

増税関連
・ 医療改革に伴う増税 110億ドル
・ 医療保険税(Obama Care)増税 180億ドル

特別措置の終了
・ 失業手当金給付期間延長措置の終了 260億ドル
・ 投資減税延長期間の終了 650億ドル
・ 給与税減税の終了 950億ドル
・ ブッシュ減税(所得税率や配当・キャピタルゲイン税率の軽減)の終了 2,210億ドル

歳出削減
・ 2011年8月の財政管理法に基づく歳出の一律削減 650億ドル (後記)
 

財政管理法に基づく歳出の一律削減

問題の根源は連邦政府の債務上限で、それに対する対策案が民主党と共和党で全く異なることである。

昨年5月に連邦政府債務は当時の上限14.29兆ドルに達し、つなぎの資金繰り対策でしのいでいた。
8月2日までに上限が引き上げられなければ、米国は新たな借り入れができなくなり、米国史上初のデフォルトに陥るおそれがあった。

米与野党指導者は7月31日夜、連邦政府の債務上限を2.1兆ドル引き上げるとともに、その条件として今後10年間で2.5兆ドルの財政赤字を削減することで合意に達した。

11月23日までに1.2~1.5兆ドルの削減案決定(増税、福祉費、軍事費を含める) を採決しない場合、2013年1月から10年間1.2兆ドルの予算カット条項が発動される。この半分は国防・安全保障費で、メディケアも一部カットされる。但し、Social Security とMedicaidは除外。

しかし、米議会の超党派委員会が、11月23日の期限を前に、決裂した。

 民主党:2.3兆ドルの赤字削減、うち富裕層向けに1兆ドルの増税
 共和党:年金、医療保険の大幅縮減

2011/8/3  米国、債務上限引き上げ、デフォルト回避 


付記

米議会予算局(CBO)によると、「財政の崖」が現実になれば5000億ドル超の規模の財政緊縮となり、2013年の実質経済成長率は-0.5%、失業率は9.1%になる。

「財政の崖」と赤字削減に関連する主張の隔たり(2012/11/9 日本経済新聞)

  オバマ氏・民主 共和
政策の基本理念 公平な機会を実現するため
所得再配分機能を強化
徹底した小さな政府に向け
政府プログラム、税、歳出など縮小
ブッシュ減税
(崖の中心)
年収25万ドル以下のみ1年延長 現行の減税を全面的に延長
企業税制 法人税を35%から28%に下げ、
製造業を優遇し雇用拡大
法人税率を35%から25%に。
外国所得への追加課税廃止
歳入措置 富裕層を軸に実質増税し
財政赤字を削減.
表面税率は上げず、
各種控除や優遇措置を見直し歳入を積み上げ
歳出 非国防費と国防費を半々の割合でカット 国防費はGDP比4%を堅持。
年金などへの切り込み深く
医療改革法
(オバマケア)
国民の強制保険加入で皆保険に オバマケアは廃止。
民間保険の活用拡大


ーーー

Thomas Friedman と Michael Mandelbaum の"That used to be us --- How America fell behind in the world it invented and How we can come back" は、共和党の「減税」も民主党の「福祉」も行き過ぎているとし、米国は昔はこんなではなかったと嘆いている。
(右枠に本の紹介)

 

米国民の1%が収入の1/4、財産の40%を保有するという異常な格差があり、大幅な財政赤字があるのに、共和党は減税を主張する。

Reaganは赤字コントロールが目標 とし、必要なら増税も行うとした。
財政赤字がインフレを生み、より高い税率が適用されて実質増税になること、投資が抑制されることを恐れた。

その後、Volkerがインフレ を抑圧し、新世代は「赤字は問題でない」と考えるようになってしまった。

そもそもはニクソンのドルとの交換停止 による赤字増大が問題で、Friedmanの理論では 赤字増大に対し抑制が効くとした。しかし、中国の米国債購入で歯止めがかからなくなった。

福祉も行き過ぎで、Medicareではコストを理由に治療を止めることを法律で禁止しているため、患者の死の直前2か月のためだけ に使われる費用が550億ドル にも達しており、無意味な治療が20~30%もある。

 

10月2日午前8時10分に釜山市の新古里原発1号機が制御棒などの故障で原子炉とタービン発電機が止まり、発電を停止した。

新古里原発1号機は韓国で初めて建設された改良型の韓国標準型原発で、2011年2月28日に商業運転を開始した。

同日午前10時45分には、韓国南部の霊光原発5号機で蒸気発電機の水位低下が起こり、発電を停止した。
故障の原因を調査中。放射能漏れなど安全に問題はないとしている。

同機は2002年5月の商業運転開始後、17回の事故を起こしており、安全性に対する不安が高まっている。

市民団体は運転中止を要求している。
他方、原発の老朽に関係なく故障が頻発する中、同時多発的に発生したという点で、冬季の電力難に対する不安感が強まっている。


 

昨年も故障が相次いだが、今年に入って故障による原発の稼働中断は計7回となった。

本年2月9日に古里原発1号機ですべての外部電源が12分間、喪失する事故が起きたが、事業者の韓国水力原子力はこれを1カ月以上報告していなかった。

韓国の原子力安全委員会は7月4日、停止中の古里1号機の再稼働を承認した。

周辺自治体から廃炉要求が相次いだため、運営会社の韓国水力原子力が、IAEAに同機の安全点検を依頼、IAEAは「設備の状態は良好」との結果を明らかにしていた。

2012/3/14 韓国でも原発トラブル

蔚珍4号については、昨年9月の定修で伝熱管の亀裂を発見、定修を2012年4月まで延長していたが、その後、蒸気発生器自体の交換が必要と判明した。交換には1-2年が必要とされる。

新月城1号は本年7月31日に商業運転を開始したが、19日目の8月19日に制御棒制御系統の故障で停止した。

古里原発では上記の通り、発電所長が1号機の停止を外部に知られないよう関係者を口止めし、現場にいた60人以上の作業員も全員が事故の隠蔽に協力していたが、本年7月には古里原発の十数人の現場管理職が、廃棄された中古部品を協力会社に横流しし、新品のようにペイントを施した上で再び納品させ、見返りに賄賂を受け取ったとして逮捕・起訴された。

本年9月21日には、古里原発で非常時の消防対応などにあたる職員2人が、覚醒剤を使用したとして麻薬類管理法違反の疑いで逮捕された。このうち1名は古里原発の消防隊の事務室で覚せい剤を使用していたことが分かった。

野党の国会議員は9月26日、「原発の安全性が信用できない」として廃炉を求める声明を出した。

付記

韓国知識経済部は11月5日、原発の部品供給業者8社が外国機関の発行する品質保証書を偽造し、原発事業者の韓国水力原子力に部品を納入していたことが分かり、光州地検に捜査を依頼したと発表した。

偽造保証書で納入された部品は、ヒューズやスイッチなどの消耗品で、全体の98.2%が霊光原発5・6号機に使用された。

韓国水力原子力は霊光原発5・6号機の運転を同日から停止し、該当部品を交換する。
霊光原発3・4号機と蔚珍原発3号機にも数十個ずつ使われたが、交換対象の部品が少なく、運転中に取り換えられる。

 

韓国の原発一覧

    運転開始 原子炉形式 容量(kW)  
蔚珍 蔚珍
 1号
1988/9/10 加圧軽水炉 (PWR) 95万 2011/12 復水器の異常で停止
2012/8/23
異常を知らせる信号が点灯、停止
 2号 1989/9/30 加圧軽水炉 (PWR)  95万  
 3号 1998/8/11 加圧軽水炉 (PWR)  100万  
 4号 1999/12/31 加圧軽水炉 (PWR)  100万 2011/9 定修で伝熱管の亀裂発見、2012/4まで延長。
その後、蒸気発生器自体の交換が必要と判明(1-2年要)
 5号 2004/7/29 加圧軽水炉 (PWR) 100万  
 6号 2005/4/22 加圧軽水炉 (PWR) 100万  
新蔚珍
 1号
  KSNP (APR-1400) 140万 2012/5 着工
    2号   KSNP (APR-1400) 140万 2012/5 着工
  (3号)   KSNP (APR-1400) 140万 計画
  (4号)   KSNP (APR-1400) 140万 計画
霊光 霊光
 1号
1986/8/25 加圧軽水炉(PWR) 95万  
 2号 1987/6/10 加圧軽水炉(PWR) 95万  
 3号 1995/3/31 加圧軽水炉(SYSTEM80)  100万  
 4号 1996/1/1 加圧軽水炉(SYSTEM80)  100万  
 5号 2002/5/21 KSNP(OPR-1000)  100万 2012/10/2 蒸気発電機の水位低下し、停止
 6号 2002/12/24 KSNP(OPR-1000) 100万 2012/7/30 故障で自動発電停止
月城 月城
 1号
1983/4/22 CANDU  67.8万  
 2号 1997/7/1 CANDU 70万  
    3号 1998/7/1 CANDU 70万  
 4号 1999/10/1 CANDU 70万  
新月城
 1号
2012/7/31 KSNP(OPR-1000) 100万 2012/8/19 制御棒制御系統の故障で停止
    (稼働19日目)
    2号   KSNP(OPR-1000) 100万 建設中
古里

 

消防担当2名が覚せい剤使用で逮捕、1名は原発事務所で覚せい剤使用
古里
 1号
1978/4 加圧水型(PWR) 55.6万 2012/2/9 電源喪失で停止、1か月以上隠ぺい
 2号 1983/7 加圧水型(PWR) 60.5万 2011/6 継電器の設計ミスで停止
 3号 1985/9 加圧水型(PWR) 89.5万 2011/12  タービン発電機に過電圧で停止
 4号 1986/4 加圧水型(PWR) 89.5万  
新古里
 1号
2011/2 加圧水型(PWR) 96万 2012/10/2 制御系統の故障で停止
    (2号)   加圧水型(PWR) 96万 計画
    (3号)   加圧水型(PWR) 134万 計画
    (4号)   加圧水型(PWR) 134万 計画

KSNP:韓国標準型原子炉(韓国電力公社設計、加圧水型原子炉)

 



Chevron Phillips Chemical は10月1日、JVのSaudi Polymers Company (SPCo) がサウジのAl-Jubailで建設していた石化コンプレックスが商業生産に入ったと発表した。

Saudi Polymers Company はサウジの投資会社Saudi Industrial Investment Group SIIGの子会社 National Petrochemical Company (Petrochem)が65%、シェブロンが35%する合弁会社で、2008年1月に石化コンプレックスの建設を開始した。

当初はSaudi Industrial Investment Group  SIIG50/50JVでスタートしたが、SIIGがPetrochemを設立、65%出資とした。

2008/1/25 Chevron Phillips のサウジ石化事業

製品と能力、技術は以下の通り。

製品   能力 EPC担当 技術
エチレン エタンクラッカー  1,220千トン 日揮 Lummus
プロピレン metathesis   440千トン 日揮 Lummus OCT(Olefins Conversion Technology)
1-Hexene     100千トン 日揮 Chevron Phillips
PE     550千トンx 2系列 Daelim  
PP     400千トン Daelim  
PS     100千トンx 2系列 Daelim  


製品はサウジ国内で販売するとともに、Chevron Phillips Chemicalのグローバルネットワークを利用し、海外にも販売する。

Chevron Phillips Chemical はHoustonに住友化学とのポリプロピレンのJVのPhillips Sumika Polypropylene Companyを持っていたが、2011年に工場を永久停止し、JVを解散することで住友化学と合意した。

Chevron Phillips Chemical はサウジのSaudi Polymers Companyの製造するPPを米国で販売する。

住友化学は今後も北米地域におけるコンパウンド製品供給を継続する。

2011/9/15 住友化学の米国のポリプロJV、解散へ 

Chevron Phillips とSaudi Industrial Investment Group (SIIG)は、同じジュベイル工業地区に既に3つのJVを持っている。
いずれも50/50のJVとなっている。
今回の計画のPS用のスチレンモノマー、PP用の不足プロピレンはここから供給する。

1)Saudi Chevron Phillips Petrochemical
  製品: Benzene   485千トン790千トン ( CPChem のAromax (R)技術)
    Cyclohexane   220千トン360千トン
    ガソリン    
  2000年に生産開始 、その後増設 
         
2)Jubail Chevron Phillips Company
  製品: エチルベンゼン                      上のベンゼン使用
    SM   715千トン  日揮がEPC受注
    プロピレン   140千トン
    ガソリン     300千トン      
         
3)Petrochemical Conversion Company  
  製品: ナイロン6.6   50千トン
    ナイロンコンパウンド   20千トン
     HDPEパイプ、エンプラ射出成型部品 120千トン
         
  ナイロン6.6は上記Saudi Chevron Phillips Petrochemicalのシクロヘキサンを利用する。
2013年生産開始予定



オバマ大統領は9月28日、「国の安全保障に関わる」として、中国系企業Ralls Corp. によるオレゴン州の米海軍施設近くの風力発電企業4社の買収と所有を禁止し、本年取得した所有権を放棄することを求めた。

Ralls Corp. の買収行為がアメリカの安全を脅かす可能性があると認識し、買収の阻止を命じたとしている。

先ず、米国の外国投資委員会(CFIUS)がこの取引をやめるよう命じたため、Ralls Corp.がこれを越権行為で違法であると訴えた。
このため、大統領がCFIUSの提言を基に命令した。

New York Timesは、22年ぶりに大統領が商取引を禁止したが、これは、オバマ大統領が北京に対して弱腰だというRomney大統領候補を含む共和党の批判に対して、最近頻繁に打ち出している強硬ラインの一つであるとしている。

米国は外国からの米国内直接投資を歓迎するが、国家安全保障を保護するための例外を設けている。
外国投資委員会(CFIUS)が審査を行い、投資内容が米安全保障にかかわるものと大統領が判断した場合には究極的には買収案件を拒否できる。

まずCFIUSが外資による投資の予備審査をした後、同委員会が必要と認める案件についてのみ、本審査を行い、最終的に大統領の決定を仰ぐ。

財務省が議長となり、国土安全保障省、商務省、国防総省、国務省、司法省、エネルギー省、通商代表部、労働省、国家情報局がメンバーとなる。

これまで中国企業の買収阻止を命じたのは、1990年2 月にGeorge Bush大統領が行ったもので、China National Aero-Technology Import and Export Corp(中国宇宙航空技術輸出入公司)による航空機部品メーカーのMAMCO Manufacturing, Inc.の買収のみ。

付記

三一重工は10月18日、これを不服として、オバマ大統領と米政府の対米外国投資委員会(CFIUS)を米コロンビア地区連邦地裁に提訴したと発表した。

「一枚の禁止令により、2000万ドル以上の直接的な損失が生じ(間接的な損失を含まず)、企業の対外的なイメージも損なわれる。提訴はやむなきことだった。誰も裁判を望んでおらず、当社は潔白を証明するため仕方なく訴訟措置を講じた」

「米国は何の説明もなく、中国の風力発電プロジェクトを無理やり中止させた。中国製の設備の使用を禁じた上、当社が米国人の経営する米国企業に譲渡するのを禁じ、補償すら行わなかった」

ーーー

デラウエア州法人のRalls Corp.は中国の重機械メーカーのSany Group (三一集団)の役員2名が共同所有している。

同社は本年3月に、オレゴン州の4つの風力発電企業(合計発電能力40百万ワット)を買収した。
買収目的は、Sany Group の子会社の Sany Electric が製造する風力発電タービンで風力発電を行うこととされる。

Ralls Corp.によると、買収してすぐに、米海軍が、風力発電の場所が軍用機の訓練の邪魔になるとの懸念を表し、設備を除去するよう求めた。
近くの
米海軍施設(Naval Weapons Systems Training Facility)では遠方から自動操縦する無人飛行機と、爆撃機に同行して敵のレーダーを邪魔するelectronic warfare aircraftの訓練が行われている。

同社は6月末に、自発的に外国投資委員会(CFIUS)にこの取引を報告した。

CFIUS は安全保障を理由にRallの4つの風力発電の建設と操業を止めるよう命じ、すぐに設備を除去することを求めた。

これに対し、Rall側は土地と設備を売りたいと申し出たが、CFTUSは許可なしに売却することを禁じ、その土地でのSany社の製品の使用を禁止した。

Rallは年末までに工事を完成し、25百万ドルの投資税額控除を受ける予定であったが、これが不可能となったため、訴訟に踏み切った。

訴えでは、CFIUSは取引のどこが安全保障の問題になるのかについて証拠を示さず、説明も行っていないとしている。

米国法によれば、CFIUSは外国投資の禁止を大統領に提言できるが、自ら禁止することは出来ない。
今回は、大統領への提言をバイパスし、Sanyの製品の販売の禁止まで命じている。(越権、違法)

ーーー

新華社通信は、今回の措置は、米国の政治の偽善と、外国からの投資歓迎のダブルスタンダードを示すものだとしている。

中国紙は、米国市場を狙う中国企業はこれを教訓にし、安全保障を理由に買収に待ったがかかる可能性を考えるべきだとし、CNOOCによるカナダのNexen買収(150億ドル)についても、同じことが起こるかもしれないとしている。
Nexenは米国にもGulf of Mexico に資産を持ち、CFIUSの評価待ちとなっている。

2012/7/31   中国石油大手による買収 続く

 



BPは9月28日、マレーシアのPTA事業をインドの Reliance Global Holdings Pte. Ltd. に売却することで合意したと発表した。

売却するのはBP Chemicals (Malaysia) Sdn Bhd の全株で、Kuantanで1996年以降、年産61万トンのPTAプラントを運営している。
売却金額は230百万ドル(現金)で、2012年中に取引完了を目指す。

RelianceはKuantanでPTAの原料を供給しており、Reliance子会社のRECRON MalaysiaはPTAのマレーシア最大のカスタマーである。

Relianceは世界最大のポリエステル繊維メーカー。生産能力の80%はインドにあり、自社のPTAを使用しているが、マレーシアではPTAをBPから購入していた。今回の買収で原料自給体制を整える。

ーーー

BPは流出事故費用をまかなうため、また、BPの強みと成長機会を生かすため、2010年から2013年の間で380億ドルの資産売却を目標としている。

今回の売却を含めると、2010年以来の売却額は約330億ドルとなる。

過去の売却  2012/9/14  BP、メキシコ湾の非戦略的石油資産を売却

ーーー

BPでは、同社はグローバルなPTAメーカーであり、世界の生産量の約1/5を占めており、今後も中国やOECD市場でPTAに注力するとしている。更に、PTAや原料パラキシレンの技術のライセンスで収益を得るとしている。

同社の現在の世界全体の能力は年産750万トン。

製造拠点は、米国(2工場)、ベルギー、中国、インドネシア、マレーシア、台湾(2工場)。
このうち最大工場は中国の珠海で、現在能力は150万トンだが、2014年に更に125万トンの増設を行い、世界最大プラントとする。

  2011/2/22  BP、中国のPTA事業を拡大

ーーー

BPのマレーシアでのPTA以外の事業は以下の通り。

BP Petronas Acetyls Sdn Bhd

立地:Kerteh
出資:BP 70%、Petronas 30%
製品:酢酸
能力:
56万トン

BP Castrol Lubricants (Malaysia) Sdn Bhd

立地:Port Klang
製品:
lubricants

・エチレン、ポリエチレン(売却)

2010/9/2 BP、マレーシアのエチレンポリエチレンJV持分をペトロナスに売却 






米国の
Ex-Im Bankは9月27日、アラムコとダウのJVのサウジの石油化学会社 Sadara Chemical に対し、過去最大の49億75百万ドルの直接融資を承認したと発表した。

   
2011/7/26  
DowとSaudi Aramco、石油化学JV設立を最終決定

このプロジェクトが米国の雇用に貢献するのが融資の理由。
コンプレックスの建設のために、約18,400人の雇用が確保され、その12.5%は13の州の中小企業。約70社が輸出し、そのうち20社が小企業であるとしている。

Ex-Im Bankは連邦政府に属する独立行政機関で、2011会計年度に過去最大の327億ドルの融資を行った。
これには、中小企業の輸出をサポートするための、これも過去最大の60億ドルの直接融資が含まれる。





Ineosは9月26日、欧州のエチレン原料用にエタンを輸入するため、供給契約と輸送契約を締結したと発表した。

同社は独立系石油・ガス業者のRange Resourcesとの間で、2015年からエタンを購入する契約を締結した。
詳細は明らかにしていない。

欧州のエチレン事業の原料の多様化を図るもので、欧州のエチレンメーカーとしての競争力を強化するものになるとしている。

同社のエチレンプラントは下記の通りで、まず、ノルウェーのRafnes 工場で使用する。
 1.  Grangemouth, United Kingdom
 2.  Köln, Germany
 3.  Lavéra, France (50:50 JV: Naphtachimie between INEOS & TOTAL Petrochemicals)
 4.  Rafnes, Norway

Range Resources はMarcellus shaleを2004年から開発しており、2012年には全社の投資の86%を同地域で行っている。 

Ineosはまた、Sunoco 子会社のSunoco Logistics Partnersとの間で、エタンをペンシルバニア州Houstonから同州Marcus Hookまで輸送するため、パイプライン輸送契約とターミナルサービス契約を締結した。

ペンシルバニア州Houstonでは、MarkWest Liberty  Midstream & ResourcesがMarcellus shaleのガスの集積、処理、分離、販売等の設備を建設中。

Marcus Hookには2011年12月に停止したSunocoの製油所があり、 ここでプロパン分離、貯蔵、出荷等を行う。

Marcus Hookからは船でデラウエア湾経由で欧州まで輸送する。

ーーー

Sunoco Logistics PartnersはMarcellus shaleのガスの輸送のため、MarkWest Liberty Midstream & Resourcesと組んで、Mariner East計画とMariner West計画を進めている。

Sunoco Logistics は既存の石油製品のパイプラインを、液体エタン輸送パイプラインに改造し、能力を高める作業を行っている。
MarkWest Liberty社は、Sunocoの東西のパイプラインをペンシルバニア州Houstonの処理場につなぐための液体エタンパイプラインを建設中。

Mariner East はペンシルバニア州Houstonから同州Marcus Hookの停止中のSunoco製油所まで日量7万バレルのエタンとプロパンを輸送し、そこでプロパンを分離する。2015年上半期に使用可能となる。

Dow はRange Resources との間で、ペンシルバニア州南西部のシェールガスからのエタンをダウの既存のルイジアナ州のコンプレックスに供給する長期契約を締結する旨の覚書を結んだ。
    2011/4/26 ダウ、エチレンとプロピレンの拡張計画を発表

ーーー

SunocoはRefinery事業からの撤退を決め、ペンシルバニア州のPhiladelphiaとMarcus Hook の製油所の買い手を探した。

Carlyle Groupは2012年7月2日、Sunocoとの間で合弁会社 Philadelphia Energy Solutionsを設立することで合意したと発表した。
8月に停止予定であったSunocoのPhiladelphia Refinery をJVに移し、稼働を続ける。

Carlyleでは、米北東部でのエネルギーのハブとして重要であるとともに、 Marcellus Shaleの天然ガスに関し、新しいビジネスチャンスがあるとしている。

2012/7/10    Sunoco、Philadelphia 製油所の停止を取りやめ 

Marcus Hook refineryは2011年12月に停止した。

製油所としての買い手は見つかっておらず、Marcellus Shale の副産品を含む燃料の貯蔵、加工などの多目的プラントとして使用する。

ーーー

なお、Phillips 66のPhiladelphia のTrainer refinery complex も停止予定であったが、Delta Air Linesが買収した。

2012/5/10 Delta Air Lines、製油所を買収 

 

Mariner Westはエタンをカナダのオンタリオ州Sarniaの石化コンプレックスにエタンを輸送する。

NOVA Chemicalsは2011年5月に、Range Resourcesとの間でMarcellus Shale Basinのエタンの長期購入契約を締結した。


9月29日午後2時30分すぎ、日本触媒・姫路製造所で爆発があり、消火活動中だった消防隊員1人が死亡し、工場従業員1人が意識不明の重体となった。ほかに従業員ら34人が重軽傷を負った。


同社によると、アクリル酸の入ったタンクの温度が上昇し、爆発したという。

爆発したのは、アクリル酸の貯蔵タンク(高さ5.6メートル、直径4.2メートル、容量70トン)で、南北に3基並んだタンクのうち一番南側。

午後1時前、タンク内の温度が異常に上昇しているのに従業員が気付き、同社の自衛消防隊が放水。しかし、温度は下がらず、「発火につながる重合反応が起きるかもしれない」と消防に応援を要請した。

消防隊員らが駆け付け、放水準備をしていたところ、約30分後に爆発し、北隣のアクリル酸のタンク(容量100トン)、トルエンのタンク(同50トン)に延焼したとみられる。

アクリル酸は重合反応で熱を出すため、タンク内は、常時、窒素を注入して酸素濃度を下げ温度を60℃前後で管理しているという。

タンク内のアクリル酸(液体)がゲル状に変化していたことが分かった。県警は、何らかの原因で異常な化学反応が発生し、爆発した可能性があるとみている。

付記

タンク内の温度管理について、管制室での監視ではなく、タンクに付いている温度計を目視するシステムであることが分かった。
「爆発前は温度計を読んでいない。アクリル酸の臭気で近づけなかったのではないか」という。

姫路市消防局は、現場の火災は9月30日午後3時半、爆発から約25時間ぶりに鎮火したと発表した。


同社は姫路製造所でアクリル酸と、それを原料にしたアクリル酸エステル、吸水性樹脂(SAP)を製造している。
SAPは紙おむつの生産に使用される。


アクリル酸の製法

  一段目  プロピレン(C3H6) + O2 →アクロレイン(CH2=CHCHO)+H2O

  二段目  アクロレイン(CH2=CHCHO)+1/2 O2→アクリル酸(CH2=CHCOOH)

ーーー

日本触媒のアクリル酸、SAPの能力は以下の通りで、日本では姫路製造所のみで生産している。(千トン)

  アクリル酸 SAP
現   状 2013末 現   状 2013末 2014末
日本 姫路 460   +80 320    
US ヒューストン 60   60    
ベルギー アントワープ     60    
インドネシア チレゴン 60 +80   +90  
シンガポール ジュロン島 40        
中国 張家港     30   +30
Total 620 780 470 560 590

日本触媒は2012年1月31日、中国の能力を倍増すると発表した。
2014年3月末完成、7月から商業運転を開始する予定。


事故があったのはアクリル酸などの貯蔵設備で、SAPなどの生産設備には損傷はなかったが、姫路市の石見市長は29日付で消防法に基づく危険物施設の緊急使用停止命令を出した。安全が確認できるまで、危険物施設すべての使用ができなくなり、同製造所の操業は事実上ストップする。
再開には 事故調査や原因究明、再発防止策の策定まで「半年かかる可能性が高い」とされ、長期の製造休止は避けられそうにない。

同社のSAPの生産能力は世界シェアの3割にあたる年47万トンで、日本では32万トンを姫路製造所のみで生産している。
在庫はSAPが0.8か月、アクリル酸が2週間程度。
しかし、いずれも構内にあるため同命令の解除まで出荷が不可能という。

日本触媒のSAPの最大需要家はプロクター・アンド・ギャンブルで、アジア向け紙おむつについて日本触媒から全量調達している。
同社は代替品調達などの対応策を固める方針だが、 SAPの各メーカーは紙おむつ需要拡大でフル生産が続き、代替生産する余地が少ないとされる。

また、紙おむつメーカーによってSAPに求める吸収スピードや保水力などが異なり、調達先をすぐに切り替えることは難しい。

オムツ・メーカーとSAPメーカーの組み合わせは、下記の通り。

P&G   日本触媒、BASF
キンバリー・クラーク   三洋化成、Evonik
ユニ・チャーム   住友精化、三洋化成(サンダイヤ)
花王   内製

 

SAPメーカーは下記の通り。

日本触媒:上記の通り、中国で+3万トン→59万トン
BASF:
ブラジルのCamaçariに60千トンプラントを建設(生産開始は2014年末)→59万トン

2011/8/4 日本の各社、高吸水性樹脂を増強 

Evonik:サウジJVで8万トン生産を決定。

2011/8/31 Evonikも高吸水性樹脂を増強


アクリル酸メーカーは下記の通り。(2010/10)

B社はBASFC社はDowD社はArkema(元 Atofina)と思われる。


日本触媒と住友化学は2002年に、住化のアクリル酸事業、日触のMMA事業を、シンガポール事業を含めそれぞれ相手に譲渡した。事業交換により夫々がコア事業に経営資源を投入することとしたもの。

日本触媒は住友化学・愛媛工場のアクリル酸製造プラント(年産8万トン)と製品の営業を譲り受けたが、愛媛プラントは2007年末に停止し、姫路に同能力のプラントを建設した。




理化学研究所は9月27日、新たに3 個目の113 番元素の同位体の合成を確認したと発表した。

新たな崩壊過程を確認したことで発見を確実に証明でき、新元素として国際的に認定される可能性が高まった。

認定されれば命名権が与えられる。元素名は「ジャポニウム」が有力視されている。

ーーー

現在、原子番号1 番の水素(H)から112 番のコペルニシウム(Cn)までと、114 番フレロビウム(Fl)、116 番リバモリウム(Lv)の計114 種類が認定されている。

自然界には92番ウランより重い原子が存在しない。
(それ以上の原子番号の原子核は短い時間で崩壊し、安定な別の原子核へと変化してしまう。)

93 番以降は人工的に合成され、最近では114 番と116 番についてロシアと米国の共同研究グループが存在を報告、元素発見の優先権について国際的な認定を受けている。

国際純正及び応用化学連合(IUPAC)は2009年5月、112番元素を公式に認めた。
コペルニクスに因んだ「Copernicium」(元素記号 Cn)はコペルニクスの誕生日「1473年2月19日」に合わせ、2009年2月19日に正式に発表された。

2009/8/26 112番目の元素 Copernicium

国際純正及び応用化学連合(IUPAC)は2011年12月1日、同年6月に新元素であることを認めた2つの元素(原子番号114と116)の名前を発表した。

2011/12/8 新元素 Flerovium(原子番号114) とLivermorium(原子番号116)

ロシアのドブナ研究所とアメリカのローレンス・リバモア研究所の共同研究グループは、カルシウム(Ca)のビームを、アメリシウム(Am)やバークリウム(Bk)、カリホルニウム(Cf)に照射して113、115、117、118 番を合成し、その発見を主張してい る。

113番元素については、「115番新元素の原子核の初合成に成功し、その崩壊連鎖上の原子核として原子番号113の原子核も発見した」と発表した。

新元素の合成を証明するには、その元素が崩壊連鎖を起こして既知の原子核に到達することが重要だが、上記のどれも崩壊後に既知の原子核に至っていないため、優先権はいまだ認定されてい ない。

ーーー

理研の森田浩介准主任研究員らは2004年と2005年の2回、原子番号113の元素を加速器で合成した。

理化学研究所は2004年9月28日、これまで確認されている元素より、さらに重い113番元素の発見に成功したと発表した。

中央研究所加速器基盤研究部が、世界最高のビーム強度を有する理研線形加速器を80日間連続稼働させて得られた実験結果によるもの。

理研では、原子番号83のビスマスに、1秒間に2.5兆個の原子番号30の亜鉛ビームを80日間照射し続け、約100兆回の衝突を行わせ、原子番号113の原子を1原子合成し、確認することができた。

寿命は約0.0003秒で、次々にアルファ線を出し、さらに核分裂していった。

アルファ崩壊:
アルファ粒子(ヘリウム4 の原子核で原子番号2、質量数4)を放出してより安定な核に崩壊すること。これによって原子番号が2 小さく質量数が4 小さい核に変化する。

理研では国際機関に申請したが、データ不足などを理由に認められなかった。

当時は、113 が崩壊してできたボーリウム(Bh)が1例の報告しかなく既知核と確定できないこと、また、観測数が 2個と少ないことを理由に認定されなかった。

その後、研究グループは、2008~2009 年にボーリウム(Bh)を直接合成し、既知核への到達が確かであることを実験的に示した。

2012年8月12日、3 個目の113 の合成に成功し、これまでの4 回のアルファ崩壊に続き2 回のアルファ崩壊を観測、最後は原子番号101 のメンデレビウム(Md)になったことを確認した。

この113 は、これまでに理研が確認した2個とは異なる新たな崩壊経路をたどったため、113 番元素の合成をより確証づけるものとなる。

Db は、自発核分裂かアルファ崩壊で崩壊することが知られている。
前回は自発核分裂を起こしたが、今回はアルファ崩壊でLrとなり、両方を観測したこととなる。

今回の合成で113 番元素の命名権が認められると、周期表に日本発の名前を、アジアの国として初めて書き加えることとなる。

1908年に当時第一高等学校教授であった小川正孝が第43番元素を発見し、ニッポニウム Nipponium: Npと命名した。
しかし後にそれは43番元素ではなかったことが判明し、ニッポニウムは幻の元素となった。
これは原子番号75のRheniumであった。

今回の113には、一度間違いとされた元素名ニッポニウムは使用できない。

理研では、今後は、未報告の119 番以上の原子番号を持った新元素の探索に挑戦し、超重元素探索の研究分野を牽引していくとしている。


 

 

 

 

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