2020年5月アーカイブ

1.JXTG

JXTGホールディングスは3月26日、2020年3月期の損益予想の修正を発表した。

新型コロナウイルス感染症拡大に起因する原油価格の下落や国内外における石油・石化製品需要・マージン等の状況から2019118日に公表した予想を修正した。

営業損益では、一般損益が3100億円悪化、在庫評価で1800億円悪化し、前回2800億円の利益と予想したのが、現時点では2100億円の赤字とした。

石油業界は「石油の備蓄の確保等に関する法律」によ り、営業活動に必要な在庫に加え、消費量の70日分相当量の石油の備蓄義務がある。原油価格が急激に変動する場合は、これが損益に大きな影響を与える。

今回、エネルギー部門の損益は、需要の減少と、このマージンの縮小で1950億円の悪化となった。

備蓄分を含めた在庫については、安価な購入品を含めた総平均法により簿価は期首よりは下がるが、期末の時価よりは非常に高い水準にあり、低価法で時価に置き換えると、2500億円の評価損となる。2019年11月時点では700億円の損失を見込んでいたが、更に1800億円悪化する。

2019/11/8
予想
修正 2020/3/26
予想
営業損益 一般  エネルギー 1,950 -1,950 0 需要減少、マージン大幅に縮小
石油・天然ガス開発 550 -1,050 -500 資産の減損
金属 500 -100 400
その他 500 0 500
合計 3,500 -3,100 400
在庫影響(低価法) -700 -1,800 -2,500
総計 2,800 -4,900 -2,100
当期損益 1,550 -4,550 -3,000


2020/3/28 JXTGホールディングスも大幅減益発表 

東京市場でのドバイ原油価格は2月末が48.50ドルであったのが、3月31日は24.30ドルとなっている。
なお、 5月29日は34.40ドルとなっている。これは2カ月後渡しの価格で、実際の購入価格ではない。

最終決算では、営業損益で、在庫影響が-2,098億円にとどまり、一般が967億円に増益となった。

この結果、営業損益は-1,131億円、当期損益は-1,879億円となった。 

次年度予想では平均原油価格を当年度の半分の30ドルとみているが、在庫影響は550億円の損失を見込む。
原油価格は2020/3/31時点から大きく下がるが、2021/3/31時点ではかなり上昇すると見ていると思われる。

  2018年度

2019年度

2020年度
実績 予想2020/3/26 実績 予想
平均ドバイ原油価格(/バレル) 69ドル 60ドル 30ドル
営業損益 一般  エネルギー 3,541 0 437 900
石油・天然ガス開発 378 -500 -388 0
金属 681 400 479 290
その他 557 500 439 460
合計 5.,157 400 967 1,650
在庫影響(低価法) 214 -2,500 -2,098 -550
総計 5,371 -2,100 -1,131 1,100
当期損益 3,223 -3,000 -1,879 2,279


2. 出光興産

出光興産は2019年4月1日に昭和シェル石油を統合した。

2018/7/11  出光と昭和シェル、来年4月に統合 

対比のため、前年実績は出光と昭和シェルの合計で示す。また、コア営業損益として、営業損益+持分法損益を採った。

在庫影響を-893億円としている。

セグメント別では、燃料油は在庫影響とそれを除く本体での赤字化で大幅減益となったが、それ以外の部門も基礎化学品(石油化学)を中心に大きく減益となった。

次期予想では、在庫影響はなしとしている。これを除く損益は燃料油は回復を見込むが、それ以外は更に悪化するとみている。


単位:億円
2019/3 2020/3 2021/3予想
売上高 68,666 60,459 39,000
営業利益+持分法損益 2,291 -262 250
  在庫影響 108 -893 0
一般損益 2,183 631 250
特別損益 -557 -33 -67
株主帰属損益 945 -229 50
  在庫影響除き 870 390 50


営業利益+持分法損益 セグメント別 内訳

2019/3 2020/3 2021/3予想
燃料油(在庫影響除く) 690 -201 350
 同  (在庫影響) 108 -893 0
基礎化学品 504 119 0
高機能材 332 284 0
電力 再生可能エネ -75 -5 -50
石油開発 371 178 -30
石炭 515 240 0
その他 -154 15 -20
合計 2,291 -262 250
在庫影響除く 2,183 631 250

2020年3月期の医薬会社の決算は下記の通り。
斜線はIFRS方式。

売上高


営業損益

経常損益(IFRSの場合は税引前損益)

当期損益(株主帰属損益)

武田薬品は既報のとおり、2019年1月8日付でアイルランドの製薬大手Shire plc 買収を完了し、今期は売上高は急増した。
コア営業利益も倍増したが、
買収の影響(企業結合会計の影響と買収・統合関連費用)のため、営業損益、税引前、株主帰属損益は異常なものとなっている。

アステラス製薬はほぼ前期並み。

第一三共は増収増益。

エーザイも増収増益。

田辺三菱は、三菱ケミカルHD決算参照。仲裁中のライセンス収入を除外したため大減益となったが、今後、仲裁で勝利した場合、売上収益から除外している部分については一括収益計上するとしている。

塩野義は下記のロイヤリティを含み、これが営業損益に貢献する。

'17/3 '18/3 '19/3 '20/3
ViiV HIV治療薬 733億円 1,035億円 1,244億円 1,271億円
AstraZeneca クレストール 330億円 226億円 220億円 220億円
その他 94億円 289億円 339億円 165億円
合計 1,157億円 1,550億円 1,830億円 1,656億円

また、主にViiVからの配当金が増大した。(営業外損益)

'17/3 '18/3 '19/3 '20/3
配当金 180億円 265億円 299億円 276億円


2017/11/29 塩野義製薬参加のViiV Healthcareの2剤配合錠、抗HIV治療でFDAの承認取得


大正製薬は前期(2019/3)に富山化学の株式を富士フィルムに売却し、429億円の売却益があった。


大日本住友製薬は住友化学の決算参照。


これまで各社の決算を報じたが、信越化学を除き、他社(三菱ケミカルホールディングス住友化学三井化学、東ソー三菱ガス化学)は全て減益である。

特に三菱ケミカル、住友化学、三菱ガス化学の減益は大きい。

しかし、それほど減益とならなかった企業も多い。

一般的に石油化学は損益が悪化しているが、当期はまだその程度が少ない。
2021年3月期に大きな影響が出ると思われる。(多くの企業が次期予想を発表していない)

三井化学の場合、石化・基礎化学品を中心とする基盤素材事業は当期の営業損益は前期が +278億円、当期が+87億円で、次期予想は-115億円としている。

当期の損益悪化が大きいのは、特定品目の比重が高い場合である。

三菱ケミカルの場合はMMAであり、2018年3月期の1,096億円の利益が当期は243億円にまで落ち込んだ。

住友化学も量は三菱より少ないがMMAを持つ。同社の場合はさらにメチオニンの価格下落が大きい。

三菱ガス化学の場合は、メタノール等の価格下落と、サウジのJVの出資比率変更の影響が大きい。

ダイセルの減益は、小の影響が大きい。この関連で米国で減損も計上した。


各社の結果を比較した。斜線はIFRS方式の企業。

売上高

営業損益

経常損益(IFRS方式の場合は税引前損益)

当期損益(株主帰属損益)

xx

米下院本会議は5月27日、中国新疆ウイグル自治区で少数民族ウイグル族への弾圧に関与した中国の当局者に制裁を科すようトランプ政権に求めるウイグル人権法案を賛成413、反対1の圧倒的多数賛成で可決した。

米政府が弾圧や人権侵害に携わった人物のリストを180日以内に作って議会に報告、これらの人物を対象に、ビザ(査証)発給の停止や資産凍結などの制裁を科す内容。

米上院本会議は5月14日、ウイグル人権法案を全会一致で可決した。

下院は2019年12月に類似の法案を407対1の圧倒的な賛成多数で可決していたが、上院で内容を修正したため、再度可決した。

成立にはトランプ大統領の署名が必要だが、大統領は香港情勢を巡る米中対立の激化も踏まえて対応を判断する。


この投票は下院で史上初めて遠隔投票(remote voting)が認められた。

下院は5月15日、新型コロナウイルスの影響で議会運営が停滞するのを避けるため、「遠隔投票」(remote voting)を可能とする規則変更の決議案を賛成多数で可決した。

共和党 民主党 無所属 合計 欠員
賛成 217 217
反対 185 3 1 189
棄権 11 13 24
合計 196 233 1 430 5

注 その後の補欠選挙の結果、現在は共和党が +1人

欠席議員が代理人を登録し、代理の議員が代わりに投票する。

この日は民主党議員74人がこれにより投票した。(全議員の17%に相当)

遠隔投票に反対の共和党は出席して票を投じた。

下院共和党議員は5月26日、憲法違反を理由に遠隔投票を阻止すべく Pelosi 下院議長を訴えた。遠隔投票で議決された法案は法律にならないことを求めている。

なお、下院の委員会では1995年以前は代理投票が認められていた。

EUと英国は5月15日、5日にわたった第3回会合(テレビ会議)を終えたが、「公正な競争環境の確保」や「漁業」など対立する重要分野での進展は今回も見られず、「期待外れだった」(EUのバルニエ首席交渉官)。

最大2年の期間延長を決定できる期限が6月末に迫る。6月初めに予定する次回会合で正念場を迎える。

付記

6月の交渉は6日に成果なしで終了した。

引き続き話し合いを重ねる意向だが、月内でトップ同士で月内に中間評価を実施する。

特に溝が深いのが「公正な競争の確保(Level Playing Field)」 で、EUは関税ゼロを目指すFTAの締結の条件として、労働者や環境保護、国家補助の規制、競争法、税制などのルールをEUの水準に合わせるよう求めている。

これは、2国間のFTAではなく、実質的に英国が重要な分野でEUに残留するものである。

世界のFTA交渉でこんな条件はなく、英国が受け入れる筈はない。

漁業に関しては、英国はEU離脱で主権を回復し、領海内での漁業を自国で管理しようとしているが、EUは従来通りのEU諸国の操業権を求めている。

2020/4/30 英国の「EU離脱後」交渉、難航

最後の交渉でEUが降りない限り、英国は年末に「FTAなし」で離脱する可能性が強まっている。

英・EUの間では移行期間を2022年末まで延長できることになっており、6月末に判断する。

しかし、仮に延長しても、EUが態度を変えない限り、今後決着する可能性は少ない。

また、移行期間中は英はEU域外とFTAを発効させることはできず、EU予算への拠出金の負担を強いられる。

ジョンソン首相は離脱関連法案に、EUとのFTAの締結が間に合わない場合でも本年12月末までの移行期間を延長したり、EU法の英国への適用停止日を延期したりできなくする条項を付け加えた。

2020/1/10 英下院、EU離脱法案を可決 1月末の離脱実現へ



英国は、最後の交渉でEUから良い条件を引き出すため、準備を加速している。

英国は5月19日、これまで適用してきた最恵国に対する関税率表(Common External Tariff)に代わる2021年1月1日以降の英国の関税率表(UK Global Tariff )を発表した。

企業が海外から製品を輸入するのを容易に、かつ安くすることで経済を支援する。現在のEUのそれより簡単で、使用が容易で、関税を引き下げる。複雑な手続きを無くし、不要なバリアを除去し、コストを下げ、消費者の選択を増やす。

無関税の貿易を拡大する。

農業、自動車、漁業などの分野では多くの製品で関税を維持する。

英国産業のバックアップ

  • 肉類などの農産物の関税維持
  • 自動車関税10%維持.
  • ほとんどのセラミック製品の関税維持.
  • 英国のサプライチェーンに入る300億英ポンド相当の製品の関税免除 

関税撤廃で消費者の選択が増え、コストが下がる。

  • 皿洗い機、フリーザー、衛生製品、ペンキ、鏡、ハサミ、クリスマスツリー等

再生エネルギー関連の100以上の製品の関税を撤廃し、再生可能経済を推進

ほとんど全ての医薬品や医療機器は関税を免除する。

ーーー

英国は北アイルランドを含め、EU関税同盟から離脱するが、アイルランド島の国境には物理的な関税等は設けないため、下記の特殊措置をとることとなっている。

2020年末までの移行期間終了後、名目上は北アイルランドを含む英全土がEUとの関税同盟から抜ける。
しかし、アイルランド島の国境付近での税関業務を省略できるよう、北アイルランドに限り関税手続きをEU基準に合わせる。
英本土から北アイルランド向けの品物はいったんEUの関税を徴収されるケースも出る。

本土から北アイルランドに入る段階でEU関税を支払い。(英国が実施するが、EUは立ち合いの権利を持つ。個人の荷物はチェックしない。)
北アイルランドに留まるものは関税還付。
アイルランドに運ばれるものは関税還付なし。

英国は5月20日、本土から北アイルランドに入る製品の扱いについて、北アイルランドに税関を設置しないと発表した。

既存の農業食品のチェックポイントは拡張するが、税関設備はつくらない。

英国の他地域から北アイルランドに入る製品のうち、アイルランド共和国向けのもの及びそこから輸出されるものだけに関税が課せられる。

サムスン電子の李在鎔副会長は5月17日に訪中、西安メモリ工場(NAND型フラッシュメモリなど)を点検し、19日に西安で地方政府の最高責任者たちに会い、「事業・投資」と関連した協力を求め、肯定的な約束を受けた。

訪中は5月1日から開始された「韓中企業迅速通路(Fast Track)」を利用して行われた。

通常なら中国入国後に現地で14日間の隔離が必要だが、企業家などに限って韓国出国前、中国入国後にそれぞれ新型コロナウイルスの検査を受けて陰性判定が出れば、隔離が免除される。

韓国出国前に少なくとも14日間の健康監視を行い、出発72時間以内に陰性確認書の発行を受け、中国入国後もPCR検査を受けて陰性を確認する。

李副会長は韓国帰国時にもPCR検査を受け、2泊3日の中国旅行で3回、検査を受けた。

ーーー

三星電子は5月22日、「韓中企業迅速通路」を利用して、西安の半導体第2工場の増設のために必要な本社・協力会社の技術者300人をチャーター機で派遣した。
西安でバッテリー工場を運営している三星SDIの人材30人も同乗した。

起亜自動車も同日のチャーター便で江蘇省鹽城工場に100人を派遣した。

SKイノベーションは5月21日に鹽城バッテリー工場の建設現場で働く人材120人をチャーター機で送った。

ーーー

5月12日付の日本経済新聞は、中国が日本側に「陰性」などの条件付きで入国制限緩和を打診したことがわかったと報じている。入国規制の緩和に関しては、双方の国で合意が必要となる。


現在、日本政府は、111カ国・地域(5月22日に11か国を追加後)からの入国を拒否しており、他の全ての国・地域からの入国者に対してはホテルなどで14日間の待機を要請する入国規制を行っている。

日本も184カ国・地域から入国制限を受けている。
日本も184カ国・地域から入国制限を受けている。
日本も184カ国・地域から入国制限を受けている。

日本も184カ国・地域から入国制限を受けている。

茂木外相は5月22日、当初5月末までとしていたこれらの入国制限措置を1カ月延長する方針を発表した。

これらの入国規制の緩和に対して、日本国内での感染収束後に3段階での緩和を想定している。まず第一段階の緩和はビジネス客と研究者の往来を対象とし、第二段階が留学生らを対象とした緩和。観光客への規制緩和は第三段階となるが、「観光客を対象とする緩和は、かなり先になる」。

日本政府の入国制限1カ月延長に対し、韓国外交部は「防疫状況が安定している韓国に対して査証制限など入国制限措置が続いているのは遺憾」とし「日本政府に入国制限措置の解除を継続して促していく予定」と述べた。

中国CanSino Biologics(康希諾生物)の研究者は5月22日、医学誌 Lancetで、新型コロナウイルスワクチンの第1相臨床試験でワクチンの安全性と急速な免疫反応の誘導を確認したと発表した。

Safety, tolerability, and immunogenicity of a recombinant adenovirus type-5 vectored COVID-19 vaccine: a dose-escalation, open-label, non-randomised, first-in-human trial

CanSino Biologicsは旧称 天津康希諾生物技術有限公司で、中国を拠点し、主にヒト向けワクチン製品の研究開発、製造、および商品化に取り組む。

新型コロナウイルスワクチン(Ad5-nCoV)は、組換アデノウイルス5型をベクターとし、体内に新型コロナウイルスのスパイクタンパクの遺伝子を送り込むもの。

アデノウイルスは、呼吸器、目、腸、泌尿器などに感染症を起こす原因ウイルス 。

アデノウイルス遺伝子をHEK293(ヒト胎児腎細胞293)のゲノムに組み込むことで、組換えタンパク質を効率的に産生する。

中国メディアによると、中国軍の生物化学兵器防衛の最高責任者である陳薇少将が率いる軍事医学研究院生物工程研究(Beijing Institute of Biotechnology)の研究チームと共同で開発したという。

臨床試験は3月16日~27日に武漢市の健康な成人18-60歳の108人を対象に行なわれた。3つのグループに異なる量(5 × 1010、1 × 1011、1.55 × 1011 viral particles) を注射した。

主な副作用は、注射部位の軽度な痛みや発熱、疲労感、頭痛、筋肉痛などで、深刻な副作用は見られなかったという。

2週間でウイルス特異抗体(2週間でそれぞれ28%、31%、42%に、7週間ではそれぞれ50%、50%、75%)とT細胞の産生が見られた。

但し、ワクチンが新型コロナ感染症を予防するかどうかは一段の研究が必要としている。

ーーー

カナダの National Research Council of Canada (NRC) は5月12日、CanSino Biologicsとの新型コロナウイルスワクチンでの共同開発を発表した。

カナダ保健省は5月18日、CanSino Biologicsがこのワクチンの臨床試験をカナダのDalhousie UniversityのCanadian Centre for Vaccinology で実施することを承認した。

NRCは2013年にエボラウイルスのワクチン開発のため、CanSino BiologicsにHEK293(ヒト胎児腎細胞293)を提供した。今回のワクチンもNRCのヒト胎児腎細胞293を使っている。

但しカナダ国内では中国軍部の関与するワクチンに対する反対も見られる。

ーーー

これとは別に、CanSinoBIOは5月20日、ナノ粒子医薬品の発見、開発、製造のための革新的なソリューションのグローバルリーダーであるカナダのPrecision Nanosystems Inc.との間で、mRNA-LNPワクチンの共同開発契約を締結した。

PfizerとドイツのBioNTech のワクチンと同じ種類のものと思われる。

Precision NanosystemsのLNPデリバリーシステムとナノ医薬作製装置(NanoAssemblr®)を使うもので、Precision Nanosystemsはワクチンの開発を担当、CanSinoBIOは臨床試験や登録手続き、商業化を担当する。

承認取得後はCanSinoBioは日本を除くアジアでの販売権を持ち、Precision Nanosystemsはそれ以外での販売権を持つ。費用分担やロイヤリティも決めたが、公開されていない。


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日本や東アジア諸国の新型コロナウイルスの死者は欧米と比べ極めて少ない。

5月19日時点の人口100万人当たりの死者は、ベルギーが784人、スペインが593人、英国が513人、イタリアが495人、オランダが332人、米国が273人であるのに対し、ベトナムがゼロ、バングラデシュが2人、マレーシアが3人、パキスタンが4人、日本が6人となっている。 一覧表

本ブログはBCG接種(特に日本型)ではないかとしてきた。

BCG注射と死者数には明らかに相関関係がある。

上記のうち、ベルギー、イタリア、オランダ、米国はBCGの全員接種をしたことがない国である。BCG接種国でも、日本型の国とデンマーク型の国では、同じように接種していても、死者数が非常に異なる。

日本型・ソ連型BCGは欧州で使われるデンマーク株と細胞膜構成成分が異なる。また、日本株とソ連株は他の亜株に比し、結核に対して免疫を起こす力は同程度だが、生菌数が非常に多い。

2020/5/4 COVID-19とBCG接種(その4)

但し、日本型と同じ種類のソ連型をみると、デンマーク型の国よりもはるかに少ないが、日本型とはかなりの差がある。この理由は不明である。

ーーー

東京大学先端科学技術研究センターの児玉龍彦名誉教授が、日本を含む東アジア人には新型コロナウイルスに対する免疫を持つのではないかとの仮説を唱えている。

「SARSの流行以来、実際にはさまざまなコロナウイルス(SARS-X)が東アジアに流行していた可能性があるのではないか。その結果として、免疫を持っていた可能性があるのではないかということも考えられる」

東京大学先端科学技術研究センターがん・代謝プロジェクトの研究によるもので、川村猛氏らによってまとめられ、The Lancetに投稿済みとのこと。

ーーー

ウイルスに感染すると、ウイルスを排除するための抗体が生産される。

最初に生産される抗体が「IgM抗体」で、早期対応のための幅広いウイルス認識力を持っている。

IgM抗体によってある程度ウイルスの認識が進むと、対象となるウイルスの排除に特化した「IgG抗体」が作られる。

その後、中和抗体が出てくると二度とかからないという免疫ができる。


       図は児玉名誉教授のスライドより


IgM抗体はその後消えるが、IgG抗体は感染を排除した後も残り続けるため、
再度ウイルスが侵入したときに素早く IgG抗体が増殖
できる。

今回、日本人で新型コロナウイルスに対する反応を調べると、上図の動きではなく、IgGが先に反応が起きた。またIgMの反応が弱いということが分かった。

これは、既にlgG抗体を持っている場合と同じである。


5月18日のNature誌に、重症急性呼吸器症候群(SARS)から回復した患者の抗体が、新型コロナウイルスの感染を阻止するとした研究論文が発表されている。

Davide Cortiたちの研究チームは2003年に、重症急性呼吸器症候群(SARS)から回復した患者に由来するモノクローナル抗体がヒト由来と動物由来の両方のSARS関連コロナウイルスを阻害できることを明らかにしていた。

今回、Cortiたちは、これらのモノクローナル抗体のうちの25種について、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を阻害する特性(交差反応性)を評価し、遊離ウイルスと感染細胞の双方に結合できる8種の抗体を見つけ出した。そして、これらの抗体候補の1つ(S309)が、SARS-CoV-2に対して特に強い中和活性を有することが示された。

今回の研究では、被験者による実験は行われていない。

SARSの流行以来、実際にはさまざまなコロナウイルス(SARS-X)が東アジアに流行していた可能性がある。

東アジアの人は、すでにさまざまなコロナウイルスの亜型にかかっており、 新型コロナウイルスに効く免疫が出来ているのではないか。


また、重症化は免疫の過剰反応が原因として知られているが、今回の研究では、IgM抗体の生産が緩やかな場合には、重症化しにくいことが明らかになった。

感染の初期において、広範な影響力を持つIgM抗体よりも、専門化されたIgG抗体が多く生産されることで、免疫も過剰応答を避けることができると考えられる。

日本人はIgMの反応が弱いため、重症化しにくい。死者が少ない理由である。


逆に、IgMの反応が普通に起こり、IgMの立ち上がりが早い場合は重症化する。


三菱
ケミカルは5月22日、新型コロナウイルス感染症対策支援のため、「知的財産する新型コロナウルス感染症対策支援宣言趣旨賛同参画したと発表した。

新型コロナウイルス感染症のまん延終結目的とした開発製造販売等行為しては権利者保有する特許権実用新案権意匠権著作権権利行使わないことを宣言するもの

これにより
本宣言対象となる知的財産権する侵害調査やライセンスをけるための交渉などを必要がなくなり迅速かつ最善開発および製造可能となる。

ーーー

世界大手企業や研究所は4月20日、新型コロナウイルス・パンデミックを収束させるために関連の知的財産権のライセンス利用を無償にするプロジェクト「Open COVID Pledge」に参画したと発表した。
新型コロナウイルス・パンデミック対策に研究機関が、幅広い知的財産権を無料で利用できるようになった。

これを受け、5月7日に、日本の20社の経営者、知財責任者が発起人となり、これを発表し、国内外の企業や研究機関などに広く参画を募った。

知的財産に関する新型コロナウイルス感染症対策支援宣言

我々は、新型コロナウイルス感染症のまん延防止の実現に向けた、医療の提供、感染管理、感染防止その他の感染症対策を一刻も早く進める上で、障害となる知的財産権の行使を行わない環境を整えることを目的に、一切の対価や補償を求めることなく、ここに宣言する。

1. 我々は、すべての個人および団体に対し、この宣言の日から世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルス感染症まん延の終結宣言を行う日までの間、新型コロナウイルス感染症の診断、予防、封じ込めおよび治療をはじめとする、新型コロナウイルス感染症のまん延終結を唯一の目的とした行為について、特許権、実用新案権、意匠権、著作権(以下「知的財産権」)の権利行使を行わない。

一部の権利者はその無償解放する知的財産の範囲や開放期間などに制限を加えたり、使用前の通知を条件に無償開放している。

以下略


5月22日時点の日本の宣言者は54、対象特許数は743,374 となっている。

  https://www.gckyoto.com/covid19


神戸大学分子フォトサイエンス研究センターの立川貴士准教授のグループは、赤錆の光触媒作用によって太陽光と水から水素を製造する際の効率を飛躍的に高める構造制御技術の開発に成功した。

本研究成果は、4月30日にドイツ化学誌「Angewandte Chemie International Edition」のオンライン版で公開された。

安全・安価・安定で、可視光を幅広く吸収できるヘマタイト(赤錆)のメソ結晶(5nm程度の超微粒子の集合体)を透明電極基板に焼き付けるだけで、極めて高い導電性を有する光触媒電極を作製できることを見出した。

ーーー

光触媒に光が照射されると、触媒表面に電子(e-)と正孔 (h+ :電子が抜けた孔)が生成し、この電子が水の水素イオンを還元することで水素が生成する。

h+ の働き H2O→2H+ + 1/2 O2
e- の働き 2H+ →H2

ヘマタイト (赤錆)は、安全・安価・安定な光触媒材料で、古くから太陽光を利用した水素製造への応用が期待されてきた。
他にも多くの光触媒が開発されてきたが、生成した電子と正孔のほとんどが触媒表面で再結合し、消失してしまうため、光エネルギー変換効率が非常に低いという課題があった。

太陽光と水から水素を作り出す光触媒の実用化には、現状数%にとどまっている太陽光エネルギーの変換効率を10%程度以上に向上させる必要がある。

チームは2019年10月に、光触媒の超微粒子を配向を揃えて三次元構造化した「メソ結晶」をソルボサーマル法(高温または高圧の溶媒を用いて固体を合成する方法)によって合成し、さらに、メソ結晶を透明電極基板に集積・焼結することで、導電性と水分解性能に優れたメソ結晶光触媒電極を開発した ことを発表した。

今回、メソ結晶を構成するヘマタイトを約5nmの超微粒子化し、さらにメソ結晶を透明電極基盤に集積・焼結することで導電性と水分解性能に優れたメソ結晶光触媒電極を開発した。

サイズを5nmまで小さくすることで粒子同士の接触面積を増やし、焼結する際に生成する酸素空孔(酸素の格子空孔)の量を飛躍的に増やすことができた。

酸素空孔の付与によって光触媒電極の導電性が向上するとともに、粒子表面に大きな電位勾配が生じ、電子(e-)と正孔 (h+)の分離が促進される。

同時に多数の正孔(h+)が粒子表面に移動し、水を高効率に酸化分解することで、ヘマタイト系電極で世界最高の光水分解性能を達成した。


擬似太陽光を照射したところ、1.23Vの電圧印加の下、5.5mAcm-2の光電流密度で水分解反応が進行することがわかった。
これは、光吸収特性とコストの両面において理想的な光触媒材料のひとつであるヘマタイトにおける世界最高性能である。

また、ヘマタイトメソ結晶光触媒電極は、100時間にわたる繰り返し実験においても安定に動作することがわかった。

本技術は、太陽光水素製造をはじめ、幅広い用途に向けた光触媒の開発に応用できる。

今後は、ヘマタイトメソ結晶光触媒電極の更なる高効率化と太陽光水素製造システムへの導入を産学協働で進めると同時に、人工光合成を含む様々な反応系への応用展開を図る。

AstraZenecaは5月21日、英オックスフォード大学と共同開発する新型コロナウイルスのワクチンについて、10億回分の生産体制を整えたと発表した。更に増設する。

このワクチンはまだ効果があることが未確認の段階である。4月に健康なボランティアでテストを開始したが、結果の判明は6月央である。その後にもっと広範なテストを開始する。

しかし、既に4億回分の受注契約を結んでおり、9月にも供給を始める。



ワクチンはOxford UniversityのJenner Instituteが開発したAZD1222。当初名はChAdOx1で、Chimpanzee Adenovirus Oxford 1の略語である。

チンパンジーに感染する風邪のアデノウイルスが人間の体内で増殖できないように、複製能を欠損させた改変ウイルスを作る。
そこに、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)粒子の表面に存在するスパイクタンパクの遺伝子を組み込む。


これをヒトに注射すると、人間の体内でSARS-CoV-2のスパイクタンパクが作られ、それに対する免疫反応が惹起され、中和抗体ができる。


AstraZenecaは同日、米生物医学先端研究開発局(BARDA)から10億ドルの支援を受けたことも明らかにした。

Financial Timesによると同社が受注した4億回分のうち、およそ3億回分は米国向けになるという。
米保健福祉省はAstraZeneca と協力しており、最初のワクチンが10月にも可能であるとしていた。これはトランプ大統領の爆速ワクチン計画(Operation Warp Speed)の一環である。

英国政府も6550万英ポンドを支援し、英国人用に1億回分(うち 9月までに3千万回分)を確保した。


付記  2020/6/8 AstraZeneca、新型コロナウイルスワクチン増産、開発途上国に供給

付記

AstraZenecaは6月13日、英オックスフォード大と共同開発している新型コロナウイルスワクチンを、欧州に最大4億回分供給することで、ドイツ、フランス、イタリア、オランダで形成するワクチンの早期確保のための「ワクチン同盟」と合意したと発表した。「利益なし」で、年末までに納入を始める。

独保健省も同日、EU全体向けに「少なくとも3億回分」のワクチン確保でAstraZenecaと合意したと表明、ワクチンは「同盟への参加を望む全ての加盟国に人口に応じて配分される」と説明した。
今後はEU欧州委員会とも連携を深める。


AGC(旧称 旭硝子)は5月21日、米国の CDMO (Contract Development & Manufacturing Organization)子会社であるAGC Biologicsが、タカラバイオから、新型コロナウィルス向けDNAワクチン中間体の製造を受託したと発表した。

本ワクチンは大阪大学およびアンジェスが有するDNAプラスミド製品の開発実績をもとに開発され、タカラバイオがその製造を担うもの。2020 年夏頃からの臨床試験開始を目指し開発されている。

ーーー

アンジェスは大阪大学医学部の森下竜一助教授による研究成果を基に1999年に設立され、マザーズに2002年に上場した。

同社は2019年3月に、「標準的な薬物治療の効果が不十分で血行再建術の施行が困難な慢性動脈閉塞症(閉塞性動脈硬化症及びバージャー病)における潰瘍の改善」を効能・効果とする「コラテジェン筋注用4mg」を条件付きで承認を受けた。

プラスミド(大腸菌などの細菌や酵母の核外に存在し、細胞分裂によって娘細胞へ引き継がれるDNA分子の総称)に、血管を新生する作用を持つHGF(肝細胞増殖因子)遺伝子を組み込み、それをベクターとして虚血部位に注射することで、細胞内で遺伝子が発現、血管新生が促され血流が確保されて潰瘍を改善するとされる。

2019/2/22 厚労省部会、国内初の遺伝子治療2品目の承認を了承

アンジェスは本年3月に、上記の実績をもとに大阪大学と共同で新型コロナウイルス対策のための予防用DNAワクチンの開発を行うことを決定した。

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のゲノム配列に基づき、ウイルスのスパイク蛋白質の遺伝子を導入したプラスミドDNA(環状のDNA)を設計し、このプラスミドDNAを産生する組換え大腸菌を確立し、GLP試験に使えるDNAワクチンの原薬を製造した。

プラスミドDNAを体内に投与することで、体内で治療に必要とされる物質がつくられる。

DNAワクチンは、危険な病原体を一切使用せず、安全かつ短期間で製造できる特徴がある。

対象とする病原体のたんぱく質をコードするプラスミドDNAを接種することで、病原体タンパク質を体内で生産し、病原体に対する免疫を付与する。
弱毒化ワクチンなどとは異なり、病原性を全く持たないため、安全であると言われている。


アンジェスは本ワクチンの開発・製造に当たり、下記の体制を作り上げた。

 アンジェスおよび大阪大学(臨床遺伝子治療学・健康発達医学)が有するプラスミドDNA製品の開発実績を生かす。

 製造はプラスミドDNAの製造技術と製造設備を有するタカラバイオが担当

 ダイセルが、新規投与デバイスによる皮内への遺伝子導入法を開発

 臨床開発を促進するため、医薬品開発支援機関としてEPSホールディングスが参画

 ペプチド研究所が、抗体価測定のためのペプチド合成研究を担当

 新日本科学が、非臨床試験におけるDNAワクチンの安全性の検証業務を中心に担当

 
ワクチンの有効性等の評価指標となるバイオマーカーの探索でヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ社が参画

 スリー・ディー・マトリックス社と抗体検査キットの国内臨床利用可能性を検討

 AGCのCDMO事業子会社であるAGC Biologicsが、タカラバイオから、新型コロナウィルス向けDNAワクチン中間体の製造を受託

 Cytiva(旧称 GE Healthcare Life Science)


付記 6月18日、新たにシオノギファーマが中間体の分担製造でタカラバイオ社の協力体制に加わった。

 

付記 アンジェスは5月25日、ワクチン投与で抗体ができることを動物実験で確認したと発表した。7月から治験を始める。

ーーー

AGCは5月14日に、米国子会社AGC Biologicsについて、新型コロナウイルス関連で下記の発表をしている。

AGCの米国子会社が原薬製造を受託する医薬品がCOVID-19治療薬候補として臨床試験

AGCの米子会社、デンマークのAdaptVac社から新型コロナウィルス向けワクチン候補の製造を受託

付記 6/4  AGC Biologics、Novavaxから新型コロナウイルス感染症ワクチン候補アジュバントの製造を受託

付記 8/18 Novavaxからのアジュバント受託量を1.5倍に拡大、シアトル工場で製造。

付記 7/20 スイスのMolecular Partners AGの開発する新型コロナウイルス感染症向け治療薬候補「MP0420」の製造を受託

Molecularの保有するDARPin技術を用いて開発されている新型コロナウイルス感染症向け治療薬候補で、新型コロナウイルスの表面に存在するスパイクたんぱく質に特異的に結合することで、新型コロナウイルス感染症を治療する効果だけでなく予防する効果もあり得ると考えられている。

主力の液晶材料が赤字に転落した結果、営業損益、経常損益でも赤字が続く。

当期利益は4年連続の赤字で、2020年3月末の未処理損失は 1,602億円となった。
資本金は78億円で、純資産は
-1,308億円となっている。 

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 特別損益 当期損益   配当
中間 期末
2018/3 1,600 29 48 -40 -33 0 0
2019/3 1,550 -38 -14 -38 -82 0 0
2020/3 1,449 -8 -13 -84 -119
前年比 -102 30 1 -45 -38 0 0
2021/3予

未定


特別損失:

  16/3 17/3 18/3 19/3 20/3
水俣病補償損失 -37 -35 -33 -31 -31
災害損失   -16 -7 -7
事業整理損 -20
減損損失 -38 -3 -1 -24


経常損益は次の通り。

これまでの主力であった液晶材料等の機能材料部門は、2015年3月期には最高の182億円の利益を計上したが、その後、128億円、83億円、26億円に激減し、2019年に赤字に転じた。

パネルの供給過多の状況が増幅され、顧客が引き続き稼働調整したことに加え、中国液晶材料メーカーの台頭が影響したとしている。
液晶パネルから有機ELパネルに切り替わっており、今後、液晶が元に戻る可能性は少ない。

液晶材料の不振を補うような製品は見当たらず、このままでは補償金の支払いも難しくなる。

  15/3 16/3 17/3 18/3 19/3 20/3 増減
機能材料
(液晶材料等)
182 128 83 26 -28 -31 -3
加工品
(繊維製品、肥料、電子部品等)
21 16 15 18 5 15 10
化学品
(アルコール、樹脂等)
-11 17 -1 21 32 5 -27
商業事業 4 3 3 3 3 3 -0
電力 5 1 0 1 1 16 15
その他 2 1 2 2 -3 2 5
全社 -28 -28 -27 -23 -24 -23 2
合計 175 138 75 48 -14 -13 1


チッソは2011年1月に「事業再編計画」に記載した100%子会社
JNC㈱ を設立し、事業を譲渡した。

2011/1/12 チッソ、「事業再編計画」に基づく、新会社を設立

親会社のチッソは当面、子会社JNCの株式配当益で補償業務を担い、3年後をめどに株式を他者に全面譲渡し、譲渡益を熊本県に納付して補償業務を委ね、清算するという構想である。

特措法では、「救済の終了」と「市況の好転」をJNC売却の条件としている。

JNCの資本と損益の状況は次の通り(2019/3→2020/3)。現在のところは過去の蓄積分が残っている。

資本金 31,150 百万円
資本剰余金 27,149
利益剰余金 37,42424,745
株主資本合計 95,723→83,045



将来、チッソがJNCを売却して、譲渡益で補償を終える計画であるが、JNCの赤字が続くと、その構想も実現が難しくなる。

 

キオクシア(旧称 東芝メモリ)は5月14日、2020年3月期の連結決算概要を発表した。

ーーー

2017年4月1日に東芝からメモリ事業を会社分割し(旧)東芝メモリが発足した。

2018年6月1日にBain Capitalを軸とする企業コンソーシアムにより組成される㈱Pangeaが買収 、東芝メモリ㈱となった。
議決権は、東芝 40.2%、HOYA 9.9%、Bain Capital 49.9%である。

2017/9/30 東芝メモリの株式譲渡契約締結

2019年10月1日付で社名を「キオクシア㈱」 (Kioxia Corporation)に変更した。

2019/7/19 東芝メモリ、「キオクシア㈱」に改称 

同社の決算推移は次の通り。(億円)

(旧)東芝メモリ

東芝メモリ (2019/10 キオクシア)

2018/3月期 2019/3月期

2020/3月期

'18/4~5 '18/6~19/3

合計

1Q 2Q 3Q 4Q 合計
売上高 12,294 1,894 10,745 12,639 2,142 2,390 2,544 2,796 9,872
営業利益 4,568 704 459 1,163 -989 -658 -205 121 -1,731
 (うち一般) (4,568) (704) (2,731) (3,435) (-360) (-375) (72) (394) (-269)
 (PPA影響) (-2,272) (-2,272) (-285) (-282) (-288) (-273) (-1,128)
(停電) (-344) (-1) (11) (0) (-334)
当期純利益 7,186 489 116 605 -952 -560 -253 98 -1,667

 2018/3月期の当期純利益には、法人税調整額▲3,346億円(益)を含む。

キオクシアは 旧東芝メモリを時価(交渉価格)で買収したため、簿価との差が出る。
このため、
買収価額を、資産及び負債の時価を基礎として、適切な勘定科目に配分する。これをPPA(Purchase Price Allocation) と呼ぶ。

キオクシアは以下の処理を行った。

棚卸資産を1,388億円 増やした。これを2019年3月期に全額コスト化した。、

固定資産を4,295億円 増やした。2019年3月期に884億円を償却、残りは総額の95%まで、2022年3月期までに各年1,000億円程度償却する。

この結果、2019年3月期には 2,272億円の損失追加となった。
2020年3月期では1,128億円の損失追加となった。

2019年6月15日、四日市工場で停電が発生し、一部の生産ラインが停止した。復旧に7月中旬までかかり、これに伴い、334億円の赤字を計上した。

また、営業外損失として、借入金期限前返済、優先株期限前償還等で2019年4-6月に194億円の損失を計上した。

この結果、当期の営業損益は-1,731億円、当期損益は -1,667億円となった。特殊要因を除いた営業損益は -269億円である。

営業損益は、2018/3月期の4,568億円が2019/3月期の実質で3,435億円に下がったが、当期では-269億円と激減した。

これは主に主力製品であるNAND型フラッシュメモリーの価格下落が続いているためである。

128GBの大口取引価格の推移は下図の通り。

2018/3月期は年末までが4.8ドル、第4四半期が4.5ドルまで下がった。
2019/3月期は期首の4.5ドルから急降下で2ドル強まで下がった。
2020/3月期は通期2ドル前後で推移、期末に若干上がった。第4四半期で実質営業利益が121億円の黒字となったのはその為と思われる。

中国の新興勢力も含め、開発・販売競争は激化しており、今後、元の価格水準に戻ることは考え難い。

そのなかでキオクシアは後2年間はPPA関係で年間1000億円の費用負担があり、苦しい状況が続く。


同社は2018年6月の独立時に3年以内の上場を目指す方針を出した。出資の海外勢は再上場により高値で売却し、売却益を得ることを目的としている。

同社では、この方針に基づき、東京証券取引所への株式上場準備についても継続的に進めているとしている。

しかし、この損益状況では仮に再上場しても大きな売却益を得ることは難しい。


出資・融資内訳(億円)

  出資・融資 出資 融資  
議決権 転換社債 議決権なし
東芝 3,505 40.2% 1,096   2,409   議決権の一部は産業革新機構と日本政策投資銀行に指図権
HOYA 270 9.9% 270   0    
(日本側計) (3,775) (50.1%)         今後も過半を維持
Bain 2,120 49.9% 1,361   759    
SK Hynix 3,950   15% 1,290 2,660   10年間のファイヤーウォール(機密情報へのアクセス制限)
10年間は15%超の議決権は与えられない。転換には各国競争当局の承認要
(Bain/SK) (6,070)            
Apple 4,155     4,155    
Seagate
Kingston Technology
Dell Technologies Capital
合計 14,000 2,727 1,290 9,983    
金融機関借入 6,000  

6,000

 
再計 20,000

14,000

6,000  


米上院は5月20日、米国に上場する外国企業に経営の透明性を求める法案(Holding Foreign Companies Accountable Act)を可決した。

2019年に共和党と民主党の議員が超党派で提出し、継続審議になっていた。今後は下院の審議に委ねられる。

米国内で上場する外国企業に対し、米企業と同じ規制に従うことを求める形をとる。

米国に上場する外国企業で、①その監査法人が3年以上連続して米国公開企業会計監視委員会(PCAOB)による検査を受けないもの、②外国政府の支配下にないことを示す書類を提出しない企業は上場廃止とするというものである。

対象となるのは、その企業の監査をする監査法人が① 外国にあり、②米国公開企業会計監視委員会(PCAOB)による検査を受けないもの。米国の監査法人が監査をする場合は対象外である。

米国公開企業会計監視委員会(PCAOB:Public Company Accounting Oversight Board)は2002年にアメリカ合衆国の上場企業会計改革および投資家保護法(SOX法)に基づき設置された非営利法人で、企業の監査を監督することを通じ、投資家利益の保護及び監査報告書発行における公益性を高めることを目的とする。

日本における公認会計士・監査審査会(金融庁の下部組織)に相当する。

この法案で、対象企業の監査法人が3年以上連続してPCAOBの検査を受けない場合、米国で上場廃止となる。

中国政府はPCAOBによる自国監査法人の検査を認めておらず、米国上場の中国企業で中国の監査法人の監査を受けている場合が問題となる。その中国監査法人が3年以上連続してPCAOBの検査を拒否した場合、その中国企業は米国で上場廃止となる。

また、対象企業は、自社が外国政府の所有でないこと、又は外国政府に支配されていないことを示す書類の提出が求められる。(そうでないことの証明は難しいが。)
提出しない場合、上場廃止となる。

提案議員は背景を下記の通り説明している。

米議会は2002年に公開企業の監査を検査するためにPCAOBを設立した。企業が大衆に供与する情報が正確で、独立性があり、信頼性があることを保証するためである。

しかし、中国政府はPCAOBが中国と香港に登録された企業の監査を検査することを認めていない。

SECによると、米国で上場されている224の企業がPCAOBの検査を受けない国にある。

PCAOB はこれまで、米国上場を求める中国企業の中国の監査法人からの数値の正確性について多くの懸念を示してきた。

過去10年で、米国で資金を得るために米国に上場する中国企業の数は著しく増えている。

この法律は、実際には中国企業を対象としており、中国企業の「締め出し」につながりかねない内容で、中国政府の反発を招きそうだ。

中国側が自国監査法人の検査を認めるか不透明である。

現在拒否している理由は明らかではないが、米規制当局による「主権の侵害」を気にしているとの見方がある。
監査法人の持つ自国企業の財務諸表に共産党に関連する内容が含まれ、検査を通じた情報の漏洩を懸念しているとの指摘もある。

実際に法律が執行された場合、中国企業の上場維持は難しくなる可能性がある。

米株式市場には電子商取引大手のアリババ集団やインターネット検索最大手の百度(バイドゥ)、中国のネットサービス大手、騰訊控股(テンセント)系の音楽配信サービス会社など中国の有力民間企業が多数上場するが、こうした企業は中国・共産党の影響下にないことをSECに説明する必要がある。

ーーー

別途、米証券取引委員会(SEC)は2月19日に、4大会計事務所に対して、米国上場の中国企業への監査態勢を強化するよう促した。特に新型コロナウイルスの感染拡大によって事業リスクが増大している点を考慮するよう求めている。

BIG 4 は米上場中国企業合わせて約140社の監査を担当しており、これらの企業の経営やリスク開示の状況をきっちり監視することを求めた。



NASDAQは近く、新規株式公開(IPO)に関する新たなルールを発表する。

中国を含む一部諸国の企業のIPO規模について、最低2500万ドルか、上場後の時価総額の少なくとも4分の1という基準を設ける。

中国企業による多くのIPOの規模はこの基準を下回っており、株式はインサイダーの少数グループが保有し、流通量が少ない。一部の中国企業のNASDAQ上場が難しくなる。

上場申請企業の監査状況もより厳しく審査する方針。

三井化学

基盤素材(石油化学品・工業薬品)の交易条件悪化で大幅減益となった。

2021年3月期にはさらに営業利益の半減を予想する。

 単位:億円(配当:円)
  売上高 営業損益 持分法 経常損益 特別損益 株主帰属
損益

配当

中間 期末
18/3 13,285 1,035 71 1,102 -160 716 9.0 9.0
19/3 14,829 934 108 1,030 23 761 10.0 10.0
20/3 13,390 716 32 655 29 379 10.0 10.0
増減 -1,439 -218 -76 -375 6 -382 0 0
IFRS コア営業 税引前
21/3予 11,450 350 340 200

未定


営業損益

17/3 18/3 19/3 20/3 増減

内訳

21/3予
数量差 交易条件 固定費他
モビリティ 407 423 427 392 -35 -23 6 -18 275
ヘルスケア 101 108 136 138 2 10 1 -9 105
フード&パッケージング 206 199 178 181 3 0 18 -15 160
基盤素材 385 389 278 87 -191 -64 -135 8 -115
その他 -3 -9 -14 -2 12 3 -75
全社 -75 -75 -71 -80 -9
合計 1,021 1,035 934 716 -218 -77 -110 -31 350

 

ーーー

東ソー

クロルアルカリの交易条件の悪化などで減益となった。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 特別損益 当期損益

 配当

中間 期末
2018/3 8,229 1,306 1,323 -19 888 12.0 16.0
(32.0)
2019/3 8,615 1,057 1,130 3 781 14.0
(28.0)
14.0
(28.0)
2020/3 7,861 817 860 -23 556 14.0
(28.0)
14.0
(28.0)
増減 -754 -241 -271 -26 -226
2021/3予

未定 

14.0
(28.0)
14.0
(28.0)

 普通株式2株を1株の割合で併合

営業損益は下記の通り。

 

 

18/3

19/3 20/3 増減

内訳

数量差 交易条件 固定費他
石油化学 225 134 103 -31 -16 7 -21
クロルアルカリ 666 460 282 -178 -22 -102 -54
機能商品 339 353 279 -75 -22 -28 -24
エンジニアリング 49 83 127 44 44 0 0
その他 27 27 25 -2 -1
合計 1,306 1,057 817 -241 -18 -124 -100

主力のメタノールが、値下がりと、サウジのメタノールJVの出資比率減、一過性費用の発生などで赤字となり、大幅減益となった。

単位:億円 (配当:円)

  売上高 営業損益 持分法 経常損益 特別
損益
当期
損益
  配当
中間 期末
2018/3 6,359 627 183 807 -73 605 24.0
(12.0)
35.0
(17.5)
2019/3 6,490 414 284 692 -1 550 35.0
(17.5)
35.0
(17.5)
2020/3 6,133 343 -13 311 32 212 35.0
(17.5)
35.0
(17.5)
増減 -356 -71 -297 -381 34 -338 0 0
2021/3予 5,800 270 15 260 170 35.0
(17.5)
35.0
(17.5)


同社の海外メタノール事業はJV運営で持分法損益となるため、これを含めた経常損益ベースで判断する。

18/3 19/3 20/3 増減 うち持分法 21/3予想
天然ガス系 149 227 -57 -284 -244 -18
芳香族 251 140 105 -35 56
機能化学品 386 282 223 -59 -45 194
特殊機能材 63 45 58 14 -4 49
その他 3 5 0 -5 -4 0
全社 -46 -6 -18 -12 -20
合計 807 692 311 -381 -297 261


主力のメタノールの価格は下図の通り、低迷が続く。

持分法子会社以外の営業損益でも71億円の減益だが、メタノール等の価格差が-108億円ある。
光学樹脂ポリマー、電子材料等では数量増の益が56億円ある。

三菱ガス化学が主体(47%出資)の日本・サウジアラビアメタノール(JSMC)とサウジのSABICとの50/50JVのSaudi Methanol Company (AR-RAZI) は2018年11月29日に合弁契約の期限切れを迎えた。

その後の交渉で下記の通りとなった。

JSMC SABIC  
従来 50% 50%  
2018/11/29 25% 75% SABICは 150百万ドルをJSMCに支払い
2019/3/末契約延長  25%  75% JSMCは 1,350百万ドルをSABICに支払い

JSMCは 1,350百万ドルを20年分割で経費算入する。

これにより、2020年3月期は持分利益が半減した。 

2018/11/5 三菱瓦斯化学のSaudi Methanol、合弁契約の期限切れ 

なお、三菱ガス化学は当期にAR-RAZI株式売却に伴う損失や追加の税金費用など一過性費用の発生78億円を計上した。


持分法損益については2021年3月期も、一過性費用がなくなるだけで、当期と同じ状況が続く。



トランプ大統領は5月18日夜、世界保健機関(WHO)のTedros Adhanom Ghebreyesus事務局長に書簡を送り30日以内に対応しなければ、資金を恒久的に引き上げると通告した。 脱退の可能性も示唆した。

トランプ大統領は4月14日の記者会見で、WHOへの資金拠出を当面の間停止すると表明した。「コロナウイルスの拡散への対応の誤りと隠蔽について、WHOがどんな役割を担ったかを調査する」と述べ、その間は資金拠出を停止するよう指示したと明らかにした。

2020/4/11 トランプ大統領、WHOへの拠出金削減を検討 


資金引き上げ、脱退での脅しは不適切だが、WHOへの批判は間違っていないように見える。

WHO年次総会は5月19日、新型コロナウイルス感染拡大への世界的対応に関して独立した検証を求める"COVID-19 Response" 決議を採択した。

書簡の内容は下記の通り。

4月14日に述べた調査の結果、WHOが中国から独立していないとの懸念が確認された。次の点が分かった。

WHOは「昨年12月以前から武漢でウイルスが広がっている」との信頼すべき報告を無視してきた。WHOは中国の主張と合わない信頼すべき情報を独自に調査しなかった。

12月30日以前にWHO北京事務所は武漢で重大な健康面での懸念があることを知っていた。12月26日から30日の間に中国メディアは 、中国の多数のゲノム企業に送られた患者のデータから、「新しいウイルスが武漢で発生している」ことを報道した。この間、武漢の病院のDr. Zhang Jixianが中国当局に「新しいコロナウイルスが新しい病気を引き起こし、約180人の患者が出ている」ことを報告している。

翌日までに台湾当局が「このウイルスが人から人に感染する」ことをWHOに連絡している。しかしWHOは恐らく政治的理由から、これら重要な情報を世界に知らせなかった。

WHOは台湾からは「人に感染する」との情報は来ていないと言い訳した。
これに対し、台湾は「患者が隔離されている」と報告しており、隔離するということは感染するからであるとした。

国際的な規則では、各国は健康面での緊急事態を24時間以内に報告することになっている。しかし中国はWHOに原因不明の肺炎のケースを12月31日まで報告しなかった。
事態を何日も何週間も前に知っていた筈なのに。

Shanghai Public Health Clinic Centerの Dr. Zhang Yongzhen によると、1月25日にウイルスの遺伝子の配列を当局に伝えた。
これは広報されず、彼自身が1月11日にオンラインに載せた。翌日、当局は彼のラボを閉鎖した。WHOも認めているように、彼の行動は極めて「透明性」行動である。しかしWHOは、ラボの閉鎖と博士が事実を6日前に当局に伝えたとの主張について沈黙した。

WHOは繰り返し、コロナウイルスについて主張するが、不正確はミスリーディングなものである。

1月14日にWHOは、「コロナウイルスはヒトからヒトに感染しない 」という今や誤りとわかっている中国の主張を確認し、「中国当局の調査でヒトからヒトへの感染の明確な証拠はない」と述べた。これは武漢からの検閲された報告とも明らかに矛盾する。

1月21日に、習近平は貴職にコロナウイルスの蔓延を緊急事態としないよう圧力をかけた。貴職はこの圧力に負け、 「コロナウイルスは国際的な懸念の公衆衛生上の緊急事態ではない」と世界に伝えた。1週間後の1月31日に、圧倒的な証拠 が出たため、これを変更した。

1月28日に、習近平と北京で面会後、貴職は中国政府のコロナウイルスに関する透明性を褒めたたえた。 「中国は蔓延対策で新しい基準を打ち立て、世界に時間を稼いでくれた」と述べた。中国がウイルスに関してしゃべった医師を黙らせたり罰したりしたこと、中国の機関が情報を発表することを制限したことについては述べなかった。

1月30日に貴職が遅まきながら緊急事態を宣言した後も、WHOの専門家チームをすぐ受け入れるよう、中国に求めなかった。その結果、チームの到着は2週間後の2月16日になった。
その時さえ、チームは最終日まで武漢に行けなかった。WHOは、中国がチームの2人の米国人の武漢訪問を最後まで拒否したことを黙認した。

貴職は中国の国内旅行規制を強く褒めたが、どういう訳か、中国から来訪する人の米国入国禁止に反対した。私は貴職の反対を押して実行した。
貴職の本件での姿勢は極めて問題だ。他国は貴職のコメントに従い、命に係る中国からの、及び中国への旅行制限を遅らせた。
信じられないことに、2月3日に貴職は、中国は世界をウイルスから救う偉大な仕事をしているため、旅行制限はむしろ害があると述べた。その時には、中国が、武漢封鎖の前に500万以上の人が武漢を離れ、世界中に向かうことを認めていたことを世界中が知っていた。

2月3日に中国は各国に旅行制限をやめるよう強く圧力をかけた。これは貴職の「ウイルスの中国以外への拡散は限られた、遅いもので、中国以外に拡散する恐れは非常に低い」との不正確なコメントに支えられた。

3月3日に、WHOは、深刻な拡散リスクを弱めるための中国のデータを使い、「COVID-19はインフルエンザのようには強力に感染しない」、「インフルエンザと異なり、この病気は感染しているが発症していない人からは感染しない」と世界に伝えた。中国が主張し、WHOが繰り返し世界に伝えたことは誤りであったことは明らかだ。

3月11日に貴職がようやくパンデミックだと認めた時には、既に少なくとも114か国で4000人以上が死に、10万人以上が感染した。

4月11日にアフリカの数カ国の大使が中国外務省に中国でのアフリカ人に対する差別を訴えた。貴職は中国当局がアフリカ人への強制隔離、立ち退き、サービス拒否などをしているのを知っていたのに、貴職は中国の人種差別について述べなかった。
しかし貴職は台湾が貴職のパンデミックの扱いでのミスをについての証拠のある不平(年末までに台湾当局が「このウイルスが人から人に感染する 」ことをWHOに伝えたのに無視したと批判)をしたことを人種差別とした。
(注 事務局長はエチオピア人、中国による同じアフリカ人への差別は黙認しながら、台湾による事務局長批判を人種差別とした。) 

この危機を通じ、WHOは不思議なことに中国の「透明性」を褒め続けた。実際は全く透明でないのに、貴職はこれに加わった。
例えば、中国は1月初めにウイルスサンプルの破棄を命じ、重要な情報を破壊した。
現在でも、正確でタイムリーな情報、サンプルを供与することを拒否し、ウイルスとその根源についての重要な情報を出していない。今も中国の研究員と研究所へのアクセスを拒否し、研究員を監視している。

WHOはウイルスの根源の独立した調査を中国に表立って求めていない。各国はWHO総会で"COVID-19 Response" 決議を求める。

 注 WHO年次総会は5月19日、新型コロナウイルス感染拡大への世界的対応に関して独立した検証を求める"COVID-19 Response" 決議を採択し、2日間の日程を終えた。

我々は、WHOがもっともっとうまくやれた筈だということを知っている。

数年前、他の事務局長の下で、WHOはうまくやった。2003年の中国でのSARS蔓延で、Harlem Brundtland事務局長は55年間で初めて緊急旅行勧告を出し、中国南部の発生源との行き来について勧告した。中国が通告者を逮捕したり、メディアを監視することで事態を隠し、世界を危機に落とし込むのを批判した。
この例に従っておれば、今回、多数の命が救われた筈だ。

貴職とWHOの失策の繰り返しは高価なものとなった。唯一の方法は中国からの独立を実際に示すことだ。

米政府は既にWHOをどう変えるか、貴職と議論を始めている。しかし、すぐに行動することが必要だ。無駄にする時間はない。

そのため大統領として、貴職に伝える。もしWHOが30日以内に大きな改善をしないなら、米国はWHOへの資金供給の一時的凍結を永久的なものとし、脱退も検討する。米国の納税者が米国の利益に明らかに貢献しない組織に資金を供給し続けることを認めるわけにはいかない。

ーーー

「一つの中国」を認めない蔡英文政権が発足した翌年の2017年から、中国の反対で台湾はオブザーバー参加ができていない。

ポンペイオ国務長官は、WHOの年次総会で、台湾のオブザーバー参加が認められなかったことについて非難する声明を発表した。「テドロス事務局長は台湾を総会に参加させるあらゆる法的な権限があり、前例もあるのに、そうせず、中国政府の圧力を受けて台湾を招かないことを選択した。事務局長が独立性を欠いたため、台湾の科学的ノウハウを総会から奪い、WHOの信頼性と有効性を損なった」とした。

台湾は、「WHOの事務局は中国政府の圧力に屈し、2300万人の台湾の人々の健康に関する権利を無視し続けた。中国がWHOをコントロールし、干渉する力は非常に強い」と述べている。

茂木外相は13日の衆院外務委員会で、台湾がオブザーバー参加できない理由について「中国の問題がある」と中国を名指しした。

武田薬品は2019年1月8日付でアイルランドの製薬大手Shire plc 買収を完了した。

日本企業のM&Aとして最大となる460億ポンド、約6.2兆円の買収が実現した。

前期は第4四半期だけのため、当期は実質的に買収後の初年度である。

最終決算の結果は下記の通りで、Shireの買収の影響等を除いたコア営業利益は前年から倍増した。

単位:億円(配当:円)
売上高 営業損益

うちコア

税引前 株主帰属
損益
配当
中間 期末
2018/3 17,705 2,418 3,225 2,172 1,867 90.0 90.0
2019/3 20,972 2,050 4,593 949 1,091 90.0 90.0
2019/3new 20,972 2,377 4,593 1,276 1,352 90.0 90.0
2020/3 32,912 1,004 9,622 -608 442 90.0 90.0
前年比 11,940 -1,373 5,029 -1,884 -910 0 0
2021/3予 32,500 3,550 9,840 2,000 600 90.0 90.0


Shireの買収の影響(企業結合会計の影響と買収・統合関連費用)を含むため、非常に複雑である。

2019年3月期(実績)にはShireの2019/1-3の業績を含んでいる。

当年度においShire買収により取得資産およびけた負債について取得対価配分完了
この年度財務数値遡及修正している。(表の 2019/3 new)

Shireの買収の影響(企業結合会計の影響と買収・統合関連費用)を除くと下記の通りとなる。

売上高 営業損益 税引前 株主帰属損益
連結 除 Shire 連結 除 Shire コア 連結 除 Shire 連結 除 Shire
2018/3 17,705 17,705 2,418 2,418 3,225 2,172 2,172 1,867 1,867
2019/3 20,972 17,880 2,050 4,118 4,593 949 3,574 1,090 3,128
2019/3new 20,972 20,972 2,377 4,716 4,593 1,276 3,837 1,352 3,416
2020/3 32,912 32,912 1,004 7,788 9,622 -608 6,391 442 6,167
前年比 11,940 11,940 -1,373 3,072 5,029 -1,884 2,554 -910 2,751
2021/3予 32,500 32,500 3,550 9,840 2,000 600


2020/3月期のShireの買収の影響の主なものは下記の通り。下のグラフはこれを除いたもの。

企業結合会計 買収関連費用
売上原価 -1,995億円
無形資産償却 -3,251億円
その他営業費用 -1,354億円
金融損益 -144億円 -71億円
法人所得税 982億円 292億円
その他 -25億円 -159億円
-4,434億円 -1,291億円
合計

-5,725億円


米バイオ医薬ベンチャーのModerna, Inc.は5月18日、開発中の新型コロナウイルスワクチン(mRNA-1273) の初期の治験の結果が有望だったと発表した。

ワクチンは米国立保健研究所(NIH)の国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)の研究者らがMoerna と共同で開発したもので、たんぱく質の遺伝情報を運ぶ「メッセンジャーRNA(mRNA)」を投与して体内に抗原を作り出し、免疫反応を起こさせる。

今回は主にワクチンの安全性を見るために実施されたもので、目立った危険な兆候は見られなかった。

米国立衛生研究所(NIH)が実施した治験には18歳から55歳までの45人が参加した。試験結果の詳細を今後発表する予定 。

25 µg と 100 µg を2回接種したグループと250 µg を1回接種したグループがある。

今回、詳細結果が判明した 25 µg と 100 µg を2回接種したグループ各4人、合計8人全員 からウイルスの感染を予防する働きをする「中和抗体」が確認できた。
中和抗体はウイルスに結合して、ウイルスが人の細胞を攻撃できないようにする。同社は、「こうした抗体や免疫反応が、実際にウイルスを遮断できることを我々は実証した」としている。

Modernaは間もなく600人規模が参加する次の治験を始め、7月には数千人規模が参加する最終段階の治験を予定している。
米食品医薬品局(FDA)は5月12日にFast Track(優先承認審査)対象に指定した。

同社は第2段階について、接種量を当初予定の250 µg から50 µg に変更すると明らかにした。将来的な生産本数を増やす狙いがある。


同社は4月16日、開発加速のため米厚生省の生物医学先端研究開発局から最大4億8300万ドルの拠出を受けると発表した。

この資金によって、2020年に月間で数百万本の生産が可能になり、ワクチンの有効性が証明されれば、追加投資によって2021年は月間で数千万本が生産できるようになるとしている。


同社は5月1日、スイスの製薬会社Lonzaとの間で「mRNA-1273」の10年間の製造契約を締結した。Lonzaは
7月にも
Lonza U.S. で製造した最初のバッチを供給する。

この協業で2021年末までに1回の接種量50 µg 換算で年間最大10億本の生産体制が整う見通しだとしている。

石油化学(石油化学製品、メタアクリルの交易条件悪化)と健康・農業(メチオニンの交易条件悪化、農薬出荷減)で大幅減益となった。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 うちコア うち
持分法
税引前
損益
法人
所得税
税引後
損益

うち

配当

少数株主 株主帰属 中間 期末
18/3 21,905 2,509 2,627 553 2,408 627 1,782 444 1,338 10.0 12.0
19/3 23,186 1,830 2,043 372 1,884 359 1,525 345 1,180 11.0 11.0
20/3 22,258 1,375 1,327 92 1,305 761 544 235 309 11.0 7.0
増減 -928 -455 -716 -280 -579 402 -981 -110 -871 0 -4.0
2021/3

未定


税金の増加は、大日本住友製薬の影響(下記参照)

 

営業損益

単位:億円
  18/3 19/3 20/3 増減
石油化学 946 616 145 -471 石油化学品やメタアクリルなどの交易条件の悪化
エネルギー・機能材料 192 230 203 -27
情報電子化学 123 262 251 -11 販売価格下落
健康・農業関連 440 197 21 -176 メチオニンの交易条件の悪化や農薬の出荷減少
医薬品 948 808 753 -55 売上収益は増加、新たに取得したSumitovant Biopharmaの費用が増加。
その他 111 94 88 -6
全社 -132 -164 -134 30
コア営業損益合計 2,627 2,043 1,327 -716

MMAの年初の国際価格(アジア地域)は1トンあたり1550ドル弱で、前年同期の2,650ドルから大幅に下落した。

健康・農業関連は飼料添加物メチオニンの交易条件悪化の影響が大きい。

2018年に10月4日、メチオニン製造設備1系列を増強、既存設備15万トンとあわせ年産約25 万トンになった。2019年9月に生産効率の低い旧式のプラントを停止し、コスト優位性のある他のプラントも必要に応じた生産体制の見直しにより、競争力を強化

医薬品については、大日本住友製薬を参照。


持分法損益も激減した。

付記 2020/5/28 経営戦略説明会で2021/3予想を発表 不確定減益要因 -200-500億円

ーーー

大日本住友製薬の業績は次の通り。(住友化学出資比率 50.22%)

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 うちコア 税引前
損益
法人
所得税
税引後
損益
配当(円)
中間 期末
17/3 4,084 403 644 428 115 313 9.0 11.0
18/3 4,668 882 906 849 314 534 9.0 19.0
19/3 4,593 579 773 650 164 486 9.0 19.0
20/3 4,827 832 720 839 480 408 14.0 14.0
増減 235 254 -53 189 316 -79 5.0 -5.0
21/3予 5,100 240 330 70 14.0 14.0

特記事項

1) 抗がん剤として開発中の経口剤ナパブカシンの膵がんを対象としたフェーズ3 試験の中止

2019年7月2日、米国子会社であるBoston Biomedical, Inc.が創製し、抗がん剤として開発中の経口剤ナパブカシンの膵がんを対象としたフェーズ3 試験の中止を発表した。

この関係で、減損損失を197億円計上したが、Boston Biomedicalの買収に係る条件付き対価公正価値(費用)が大きく減少することとなり、費用を418億円戻入した。

(所定の業績が達成できない場合には売主から対価を返還してもらう、または支払うべき対価を減額する契約)

この二つの費用の前期比増減が296億円の非コアの営業利益増となった。

税務上では、この影響で米国で繰延税金取り崩しを行うこととなり、税金が増加した。

2) Sumitovant Biopharma

大日本住友製薬は2019年10月31日、米国の Roivant Sciences との間で、戦略的提携に関する正式契約を締結した。

本戦略的提携には、Roivant の子会社 5 社の株式取得、他の子会社 6 社の株式取得に関するオプションの獲得、Roivant 株式の 10%の取得ヘルスケアテクノロジープラットフォームの取得が含まれている。

大日本住友製薬は対価として総額30億ドルを支払う。(子会社5社を含めた新会社に 20億ドル、Roivantの株式に10億ドル)

2019/11/4 大日本住友製薬、Roivant Sciences と戦略的提携、30億ドルを投資

2019年12月に手続き完了、英国に持株会社 Sumitovant Biopharma Ltd.、米国に運営管理会社Sumitovant Biopharma Inc. を設立した。

買収した5社はまだ売上高がなく、管理費、研究費は多額である。

2020/3月期は第4四半期だけであるが、コア営業損益で-156億円となった。

2021年3月期にはフルにかかるため、営業損益で660億円のマイナスとなる。暫くは負担が続くと思われる。

2020/3 2021/3予想
新社 一般 合計 新社 一般 合計
売上高 0 4,828 4,828 40 5,060 5,100
販管費 65 1,834 1,899 460 1,830 2,290
研究費 90 836 926 240 790 1,030
コア営業損益 -156 876 720 -660 990 330
営業損益 -155 987 832 -660 900 240
当期損益 -167 526 359 -680 540 -140
親会社帰属 -119 526 407 -470 540 70

米商務省の産業安全保障局 (Bureau of Industry and Security ) は5月15日、Entity Listによる華為技術(Huawei)に対する輸出禁止措置を強化すると発表した。

米国に由来する技術を使った半導体は、外国製でも同社への輸出ができなくなる。

Huaweiはもちろん、Huawei傘下の半導体メーカーHiSilicon向けに半導体を供給する台湾の台湾積体電路製造(TSMC:Taiwan Semiconductor Manufacturing Co.)にも影響を与える。

付記 これを受け、台湾積体電路製造(TSMC)はHuaweiからの新規受注を止めた。

人民日報系の環球時報は同日、中国政府が対抗措置を講じる準備をしていると報じた。 Appleなど米企業を「信頼できない事業体リスト」に登録し、事業を制限することを検討しているという。


トランプ大統領は2019年5月15日、米国の安全保障にとってリスクのある外国企業の通信機器を米企業が使うことを禁止する大統領令に署名した。

トランプ大統領は2020年5月13日、この大統領令の効力を1年間延長した。

米商務省は同日、華為技術(Huawei)に対する米国製ハイテク部品などの事実上の禁輸措置を発表した。

輸出管理法に基づき安保上懸念がある企業を列挙したEntity List (規則 744.11(b) )にHuawei と子会社を追加した。
同社が制裁対象のイランとの金融取引に関わったと指摘している。

今後、日本企業を含む企業が米国のハイテク製品や技術を同社に輸出する場合は商務省の許可が必要になり、原則却下される。

「再輸出」の規制は米国の国内法を海外の国にも適用する「域外規制」であり、もし、日本企業がこれに違反し、米国品を再輸出した場合には、罰金、禁固、取引禁止顧客としての指定、米国政府調達からの除外等が課せられ、そのため実質的に米国との取引が以後出来なくなる事態が生じる。

「域外規制」では、イラン、北朝鮮、シリア、スーダン向け輸出については米国品が10%以上、れ以外の国への輸出の場合は米国品が25%以上含まれておれば、再輸出となり、規制対象となる。
日本企業は11社がHuaweiに対し電子部品やカメラなどを供給している。

2019/5/16 米国、Huawei を対象に2施策

これには「抜け穴」(米商務省)があった。

Huaweiは半導体生産の多くをTSMCに委託しており、これは対象になっていない。

今回の禁輸強化は半導体製造装置などで米国由来の技術を使うTSMCなどからの輸出を封じる狙いがある。

下記の条項が追加された。

チップセットのような製品で、米国以外にある規制対象の半導体製造装置で、Huawei 及びHiSiliconなど子会社の設計仕様書でつくられた製品

これにより、米国に由来する技術を使った半導体は、外国製でも同社への輸出ができなくなる。

なお、経過措置として下記が認められた。

5月15日時点でHuaweiの仕様書で生産を開始したウエハーについては、今後120日以内に出荷された場合は適用除外とする。チップセットは5月15日までに生産が完了しているもののみ、出荷が認められる。

ーーー

なお、2019年5月のEntity List 指定時に、携帯電話のソフトウェア更新やネットワークの保守・運用に必要な一部の取引を90日間認めた。「現在Huawei 製のスマートフォンを使っている一般ユーザーと地方のブロードバンドネットワークのための運用継続を認めるもの」とした。

この措置は次々延長された。

今回、更に90日延長され、2020年8月13日までとした。最後の延長としている。

ーーー

半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)は5月15日、米アリゾナ州に最先端の半導体工場を建設すると発表した。
2021年に着工し、24年に量産を開始する。

総投資額は120億ドルで、回路線幅 5ナノ(ナノは10億分の1)の製品を生産し、生産能力はウエハー換算で月2万枚。

米側はこれまでもTSMCに米本土生産を要請していた。

TSMCは半導体の受託生産で世界シェアの約5割を占め、Apple の「iPhone」のCPU(中央演算処理装置)もTSMCが全量生産する。




米下院は5月15日、民主党が主導する3兆ドルの新型コロナウイルス対策案(The Heroes Act)を、208対199の賛成多数で可決した。
民主党の14議員が反対、共和党の1議員が賛成した。


上院で多数を占める共和党は上院では即否決するとしており、同案そのままでの成立は不可能である。

トランプ政権と共和党は大型減税などを軸に対案の検討に入っている。

ーーー

トランプ米政権と与野党の議会指導部は4月21日、4840億ドルの新型コロナウイルス対策で最終合意した。第3弾の対策の補充で、COVID-19 3.5 relief packageと呼んでいる。

上院は関連法案(Paycheck Protection Program and Health Care Enhancement Act )を同日可決 、下院も4月23日に可決し、大統領に送った。

これまでの3回の経済対策と合わせ、財政出動は2兆8千億ドルになる。

大統領は、この後すぐに『経済対策第4弾』の議論に入るつもりだと表明した。「地方でのインフラ投資や給与税の減税など、次策の議論を開始する」と述べた。

2020/4/24 米国で4800億ドルの3.5次対策で合意、更に第4次対策を検討 

ーーー

第4弾については、民主党と共和党で異なっている。

民主党のペロシ下院議長は12日、連邦議会で「3300万人が既に失業保険を申請し、過去に例のない大災害となった。必要な資金を届けるために、追加の行動が必要だ」などとする声明を発表した。

主な内容:

 ・ 州や地方政府にCOVID-19対応に従事する人への支払い用に1兆ドル
 ・ 医療従事者らに総額2000億ドルの特別手当( essential worker hazard pay)も支給
 ・ COVID-19対策(テスト、追跡、隔離)に750億ドル
 ・ 家計へは1人あたり最大1200ドル(家族に最高6000ドル)の給付
 ・ 中小企業向け緊急助成金に100億ドル
 ・ 郵政公社向け支援に250億ドル
 ・ 連邦政府による失業給付上乗せの延長

ホワイトハウスと共和党は、民主党案に異論を唱えている。

財政難の州・地方政府はニューヨークやカリフォルニアなど民主党が地盤の地域が多いことから、州・地方への支援については反対する。
共和党の上院トップ、Mitch McConnell 院内総務は
4月に、新型コロナの対応で財政が悪化している州について「財政破綻を容認する」と発言。同氏は「ブルーステート(民主党州)の救済を阻止する」と宣言している。

トランプ大統領は雇用効果の大きいインフラ投資や、労使が負担する基幹税である「給与税」の減税を考えている。

McConnell
院内総務は、新型コロナによって
企業や学校、政府機関に対して巨額の賠償請求が起きかねないことから、「訴訟の免責条項を第4弾には盛り込む」と話す。

ーーー

下院は5月15日、新型コロナウイルスの影響で議会運営が停滞するのを避けるため、「遠隔投票」を可能とする規則変更の決議案を賛成多数で可決した。

新型コロナに対応するための暫定的な規則変更で、議場にいる別の議員に代理で投票してもらう形を取る。1人の議員に最多で10人分の代理投票を容認する。遠隔地からの電子投票が技術的に可能になれば、導入を検討する。

与党・共和党からは、代理投票の合憲性を疑う声が上がった。

民主党のマクガバン規則委員長は採決に先立ち「下院は法律を制定し続けなければならない。そして、我々の安全が確保されるような方法でなされなければならない」と語り、規則変更の正当性を訴えた。

賛成は217票、反対は189票で、共和党の議員は全員が反対した。


上院では、委員会の公聴会で議員や証言者が自宅などから遠隔参加することを認めているが、「遠隔投票」については、容認しない方向。


大幅減益となった。

産業ガスを除いてすべて減益だが、特にMMAとヘルスケアの減益が大きい。
なお、田辺三菱製薬は2月に100%子会社となり、上場廃止となった。

                                     単位:億円(配当:円)
  売上高 営業損益 うち
コア
うち
持分法
税引前
損益
法人
所得税
継続
事業
損益
非継続
事業
損益
税引後
損益

うち

配当

少数株主 株主帰属 中間 期末
18/3 37,244 3,557 3,805 266 3,441 -677 2,764 2,764 646 2,118 15.0 17.0
19/3 38,405 2,948 3,141 268 2,848 -706 2,143 25 2,167 472 1,695 20.0 20.0
20/3 35,805 1,443 1,948 134 1,220 -523 697 169 866 325 541 20.0 12.0
増減 -2,600 -1,505 -1,193 -134 -1,628 183 -1,446 144 -1,302 -147 -1,155 - -8.0
21/3 33,340 1,370 1,400 1,140 490 12.0 12.0


連結子会社であったLSIメディエンスの全株式の株式交換に伴い同社及びその子会社等の事業を非継続事業に分類

 

営業損益

  17/3 18/3 19/3 20/3 増減 内訳 21/3
売買差 数量差 コスト削減 その他
機能部材 623 580 382 369 -13 -26 -125 63 1 370
機能化学 319 360 331 257 -74 140
MMA 379 1,096 944 243 -701 -808 -47 26 -148 260
石化 209 259 87 -21 -108 -130
炭素 38 124 249 81 -168 30
産業ガス 521 575 633 880 247 0 198 12 37 800
ヘルスケア 984 812 538 146 -392 -43 -448 78 21 -10
その他 2 -1 -23 -7 16 6 22 0 -12 -60
合計 3,075 3,805 3,141 1,948 -1,193 -871 -400 179 -101 1,400

その他差には受払差、持分損益差等

MMAの年初の国際価格(アジア地域)は1トンあたり1550ドル弱で、前年同期の2,650ドルから大幅に下落した。
2018/3月期の営業利益1096億円から853億円も減益となった。

産業ガスについては、子会社の大陽日酸が2019年3月に米国Praxairの欧州事業を買収したため、増収増益となった。

2018/7/13 大陽日酸、米国Praxairの欧州事業を買収

ヘルスケアは、下記の田辺三菱製薬 参照

ーーー
三菱ケミカルホールディングス
は2019年1118田辺三菱製薬普通株式の全てを取得し、完全子会社とすることを目的とし、公開買付けを実施すると発表した。

田辺三菱製薬は、2020/1/17~2/26の間は整理銘柄に指定され、2/27に上場廃止となった。

従来は田辺三菱製薬の税引き後損益の56.39%が三菱ケミカルホールディングスの連結損益となったが、今後は100%となる。

2019/11/22 三菱ケミカルホールディングス、田辺三菱製薬に公開買付け

営業損益のほとんどを占めていたロイヤリティ収入が激減し、大幅減収減益となった。
同社はロイヤリティ収入を除くと、コア営業損益はほとんどゼロである。

  売上高 営業損益 うちコア ロイヤリティ 税引前 株主帰属 配当
中間 期末
18/3 4,339 773 785 791 788 580 38.0 28.0
19/3 4,248 503 558 631 504 374 28.0 28.0
20/3 3,798 -60 190 174 -64 1
増減 -450 -563 -368 -457 -568 -373
21/3 3,835  170 100 非公表 175 85    


営業損益のうち、コア損益以外はメディカゴの米国開発計画変更に伴う製品に係る無形資産の減損損失 240億円ほか

問題は多発性硬化症治療剤「ジレニア」のロイヤリティ収入である。

田辺三菱製薬の前身の吉富製薬が創製し、海外ではノバルティス(スイス)に導出したこの薬剤のロイヤリティ収入は、収益の柱となっている。

2019年2月、ノバルティスから本件契約の規定の一部の有効性について疑義が提起され、2019年2月15日、国際商業会議所より、ノバルティスを申立人とする仲裁の申立てがあった旨の通知を受領した。

ノバルティスは、米国、EU等における製品の売上ベースのロイヤリティ支払い義務を定める本件契約の規定の一部は無効であり、ノバルティスにはロイヤリティの一部の支払義務がないことの確認を求めている。

本仲裁は、ICCの仲裁規則に従い、英国ロンドンを仲裁地として行われる。

IFRSルールでは、収益認識基準の要件の一つ に「契約の当事者が契約を承認しており、それぞれの義務の履行を確約している」 があり、ノバルティスが契約の有効性について疑義を提起している部分がこれを満たさなくなったため 、売上収益から除外する。

田辺三菱は、本件契約の有効性を検討した結果、何ら問題はないという結論に至っているとしている。今後、仲裁で勝利した場合、売上収益から除外している部分については一括収益計上する。

もう一つのロイヤリティの「インヴォカナ」は、ヤンセンファーマシューティカルズに導出した2型糖尿病治療剤。

 

 

原子力規制委員会は5月13日、使用済み核燃料からプルトニウムなどを取り出す日本原燃の青森県六ケ所村の再処理工場について、安全審査で国の新規制基準を満たしていると判断し 、事実上の合格証となる「審査書案」をまとめた。

付記 原子力規制委員会は7月29日の定例会で、安全審査の合格を正式に決めた。残りの規制手続きや安全対策工事の完了などに1年以上を要する見通しで、稼働は2021年度以降となる。

審査は、再処理工場の構造が原発と異なり前例がないことから、慎重に進められた。

日本原燃は当初、地震の最大の揺れ(基準地震動)を600ガル、青森と秋田の両県境にある十和田火山の噴火で降り積もる火山灰を30センチと想定 したが、審査の結果、基準地震動は700ガル、火山灰は青森県の八甲田山の噴火も考慮に入れ55センチと見直して対策をすることになった。落下してくる飛行機への対策なども十分だと評価された。

稼働には安全対策工事の完了や立地自治体の同意が必要で、2021年度以降となる。

新規制基準の対応前に約2兆2000億円を見込んでいた建設費は 3兆円近くに膨らむ。

なお、同地のウラン濃縮工場については、2017年5月17日に新規制基準に基づく安全審査に合格したとする「審査書」を正式決定している。

ーーー

原燃の再処理工場は使用済み核燃料からウランやプルトニウムを商業的に取り出す国内で唯一の施設。100万キロワット級の原発約40基分に相当する年間800トン(ウラン換算)の使用済み核燃料を処理できる能力を持つ。

建設は1993年に始まった。しかし相次ぐトラブルにより、完成時期は24回も延期。当初は1997年だったが、現在は2021年4~9月を予定している。

再処理の仕組み:

軽水炉では、中性子が当ってウラン235が核分裂したときのエネルギーで発電する。

その時、一部の中性子が核分裂しないウラン-238にも当り、ウラン238はベータ崩壊を繰り返し、プルトニウムに変化する。

プルトニウムの一部が核分裂するときに発生する熱も発電に役立つ。

残ったプルトニウムとまだ使えるウラン235を再処理して取り出し、ウラン燃料やMOX燃料の原料として使うもの。


当初は再処理で取り出したプルトニウムとウランを混ぜて作るMOX燃料を高速増殖原型炉「もんじゅ」で使用する計画であった。

高速増殖炉では使用済み燃料から取り出したプルトニウムを再利用する。

高速増殖炉の燃料は、①最初の分裂を起動させるための若干のウラン235、②プルトニウム239、③そのまわりをぐるっとウラン238で囲んだ八角形の構造である。

核分裂が始まると中心のプルトニウムから中性子が飛び出し、外側のウラン238に当って、さらにプルトニウムを作る。

軽水炉では中性子がぶつかって核分裂を起こすたびにウラン235は減るが、高速増殖炉では、核分裂によってウラン238がプルトニウムに変わって増えるため発電しながら消費した以上の燃料を生成できる。「核燃料サイクル計画」と呼ばれた。

ウランを輸入に頼る日本にとっては理想的なものであった。

福井県敦賀市にある日本原子力研究開発機構の高速増殖炉もんじゅは、高速増殖炉実用化のための原型炉として建設されたが、冷却用ナトリウム漏れ事故等のトラブルにより、ほとんどの期間は運転停止状態であった。2016年12月21日に廃炉が正式決定され、現在、廃炉作業中。

間もなく承認される再処理工場では、100万キロワット級の原発約40基分に相当する年間800トン(ウラン換算)の使用済み核燃料を処理できるが、54基稼働していた原発で廃炉が相次ぎ、再稼働したのは9基に過ぎない。MOX燃料を使える原発は限られる。

また、高速増殖炉もんじゅは廃炉となり、消費量は極めて少ない。 稼働しても順調な操業は考え難い。

過去にMOX燃料を使用した原発

東京電力 福島第一 3号機 廃炉
九州電力 玄海 3号機  稼働
中部電力 浜岡 4号機 審査中
四国電力 伊方 3号機 稼働
北海道電 泊 3号機   審査中
関西電力 高浜 3&4号機 稼働

計画中の原発

東北電力 女川 3号機
電源開発 大間

実際には、原発の使用済み核燃料は再処理用として青森に運んでいるが、再処理をやらなければただの核のゴミであり、処分が必要となる。国、電力会社と青森県との約束で、電力会社は使用済み核燃料を青森県から持ち出さなくてはならなくなる。再処理工場のプールは既に満杯でこれ以上の受け入れができない。

再処理工場の稼働で、使用済核燃料は「核のゴミ」ではなく「原料」の位置づけになる。

なお、現在はフランスなど海外の工場での再処理でMOX燃料へと加工している。

四国電力は2020年1月6日、伊方原発3号機で、日本で商用原発で初めて使用済みMOX燃料を取り出した。次いで1月27日に関西電力の高浜3号機でも取り出した。

政府は使用済みのMOX燃料をさらに再処理する方針だが、必要な工場の建設計画はメドは立っていない。プルトニウムの濃度が高く、臨界の危険性などから、六ヶ所では再処理できない。使用済みのものはたまり続けることとなる。


米TeslaのElon Musk CEOは5月11日、カリフォルニア州Alameda CountyFremont 市のEV工場が同日から生産を再開すると明らかにした。


カリフォルニア州の Newsom 知事は3月19日、新型コロナウイルスの感染対策として、約4000万人の全住民に対し、食料の買い出しや通院など必要な場合を除き自宅にとどまるよう命じた。感染が住民の半数以上に広がる恐れがあるとして、医療体制の崩壊を防ぐため、期限を定めずに大規模な外出禁止に踏み切った。

アラメダ郡を含む周辺自治体は3月中旬から外出制限を始めた。Teslaは外出制限後もEV工場の操業を続けていたが、同郡が「Teslaは命令で定めた必要不可欠な業種ではない」との判断を示したことで3月下旬から操業停止を余儀なくされていた。CEOは外出禁止令について「ファシストだ」と強い不満を示していた。

カリフォルニア州は8日、新型コロナウイルス対策で3月19日に発令した外出禁止令を50日ぶりに緩和し、一部の店舗について営業再開を許可した
カリフォルニア州は8日、新型コロナウイルス対策で3月19日に発令した外出禁止令を50日ぶりに緩和し、一部の店舗について営業再開を許可した


カリフォルニア州は5月8日、新型コロナウイルス対策で3月19日に発令した外出禁止令を50日ぶりに緩和し、書店や衣料品店、生花店など一部の店舗について営業再開を許可した。

自動車産業が集積する米ミシガン州はすでに自動車関連工場の再開を認めており、GMなどの自動車大手は5月18日から段階的に生産を再開する計画を表明している。

カリフォルニア州のNewsom知事も5月8日、一部工場の操業再開を認めると表明した。

Tesla は5月9日、操業再開プロセスに着手したと明らかにした。

しかし、これに対しアラメダ郡は6月1日までテスラの工場再開を認めないことを伝えた。

州政府は市や郡などの自治体がより厳しい独自ルールを設けることを認めている。シリコンバレー周辺の自治体は、医療機関向けの防護服が不足しているなどとして5月8日以降も行動制限を続けると表明した。

TeslaのMusk CEOは5月9日 、アラメダ郡が工場再開を認めないことへの対応として、ツイッターで「Teslaは郡に対し直ちに訴訟を起こす。選出されたわけでもない無知な暫定保健担当官は州知事や米大統領、憲法の自由、そして常識に反する行動をとっている」と述べた。

Teslaは同日、工場の再開を認めなかったことを巡り、 郡の外出禁止令は行き過ぎで憲法で保障された法の下の平等にも反するなどとし、命令の停止などを求め、サンフランシスコ連邦地裁に訴訟を提起した。

またCEOは「我慢の限界だ」と述べ、カリフォルニア州パロアルト市にあるTesla本社について「テキサス州かネバダ州に即座に移転する」ともツイートした。(パロアルト市長はTeslaへの支援を表明した。)
フリーモント工場を残すかどうかも、「将来的にTeslaがどういう扱いを受けるかによる」と移転をちらつかせた。

メディアによると、フリーモント市のTeslaのEV工場では5月11日朝から従業員らが出勤を始めていた。CEOは「誰かが逮捕されるとしたら、私だけであることを願う」とも書き込んだ。

Tesla is restarting production today against Alameda County rules.
I will be on the line with everyone else.
If anyone is arrested, I ask that it only be me.

トランプ大統領は5月12日、ツイッターに「テスラの工場を再開させるべきだ。安全にすばやく再開させることができる」と投稿し、地元自治体に対して早期に再開を認めるよう促した。

California should let Tesla & Elon Musk open the plant, NOW.
It can be done Fast & Safely!


付記 

アラメダ郡の公衆衛生当局は5月12日、フリーモント工場の再開に関して、Tesla と合意に達した、と発表した。Tesla が提出した感染拡大防止策を精査し、安全面でいくつかの追加の対策を施すことなどを条件に、工場再開で合意した。フリーモント工場の生産再開は、5月18日からとなる予定。


フリーモント工場は、もともとトヨタ自動車とGMの合弁会社「NUMMI」の工場であった。GMの経営破綻を機に合弁は解消され、2010年4月に操業を停止。その後、Teslaの工場になった。

同社にとって米国で唯一の完成車の組み立て拠点で、年産能力は約49万台。従業員は1万人を超える。


サウジアラビアは、原油価格の急落や新型コロナウイルス感染拡大による経済への影響で打撃を受けている国家財政を強化する取り組みの一環として、生活費手当の停止や付加価値税(VAT)引き上げを実施する。国営通信が11日、政府の声明を伝えた。

 生活費手当は6月1日に停止され、VATは7月1日に現在の5%から15%に引き上げられる。

サウジアラビアは、原油価格の急落や新型コロナウイルス感染拡大による経済への影響で打撃を受けている国家財政を強化する取り組みの一環として、生活費手当の停止や付加価値税(VAT)引き上げを実施する。国営通信が11日、政府の声明を伝えた。

 生活費手当は6月1日に停止され、VATは7月1日に現在の5%から15%に引き上げられる。

サウジアラビアは、原油価格の急落や新型コロナウイルス感染拡大による経済への影響で打撃を受けている国家財政を強化する取り組みの一環として、生活費手当の停止や付加価値税(VAT)引き上げを実施する。国営通信が11日、政府の声明を伝えた。

 生活費手当は6月1日に停止され、VATは7月1日に現在の5%から15%に引き上げられる。

サウジアラビア政府は、原油価格急落と新型コロナウイルスの感染拡大が財政に及ぼす影響とに対応するため、一連の緊縮措置を発表した。

サウジ財務省は5月11日、声明を発表し、世界的な需要の落ち込みによって原油価格が低迷し、国の歳入が大幅に減少している一方、新型コロナウイルスの感染拡大が続き、医療費などの負担が増えているとし、財政の安定化に向けた新たな措置をとると明らかにした。

サウジの財政均衡に必要な原油価格は1バレル=80ドル超程度とされる。

第1四半期で石油収入は24%減の343億ドルとなり、支出が収入を超過し、90.9億ドルの赤字となった。
2019年第Ⅰ四半期は74億ドルの黒字であった。
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1) 付加価値税引き上げ

Saudi Arabia は2018年1月1日から付加価値税(VAT)を導入した。

税率は5%で、食品を含むほとんどの財とサービスに適用される。

2018/1/4 サウジとUAE、1月から付加価値税導入

今回、7月1日からこれを一気に3倍の15%へ引き上げる。

2) 政府職員の生活費手当の撤廃

2018年のVAT導入に際し、物価上昇の影響を緩和するため、政府職員に1カ月1000リヤル($267)の生活費手当を支給した。

今回、これを6月1日に廃止する。

3) その他 公共事業の中止、延期など

ムハンマド皇太子の「ビジョン2030」構想の一部プログラムの予算も縮小する。

歳入拡大・歳出削減措置の規模は合わせておよそ1000億リヤル(約2兆8500億円)となる。

ジャドアーン財務相は、「本日の措置は痛みをもたらすかもしれないが、財政と経済の短・長期的安定性を守るために必要であり、助けになる」と説明した。

ーーー

サウジアラビアは5月11日、自発的かつ一方的に日量100万バレルの減産を実施すると発表した。

OPECプラスは4月12日、5月と6月について日量970万バレルの減産で最終合意した。7~12月は770万バレル、2021/1~2022/4月は580万バレルにする。

サウジとロシアは1,100万バレルを基準とし、250万バレル減らし、850万バレルとする。

2020/4/13 OPECプラス協調減産、日量970万バレルで最終合意

今回、サウジは6月の生産量目標を日量750万バレル弱とする。ブルームバーグのデータによると、これは2002年半ば以来の低水準となる。

サウジのエネルギー省当局者は「今回の追加減産を通じ、サウジは世界の石油市場の安定に取り組み、OPECプラスの参加国やその他の産油国にこれまでの約束を守るとともに自発的な追加減産実施を促すことを目指す」と説明した。

東京大学医学部附属病院は5月8日、肺炎を発症している新型コロナウイルスSARS-CoV-2陽性患者を対象に、ファビピラビル(アビガン®200mg)とナファモスタットメシル酸塩(注射用フサン®50の併用療法の特定臨床研究を開始したと発表した。

付記

東大医学部附属病院は7月6日、重症患者へのナファモスタットメシル酸塩(商品名フサン他)、ファビピラビル(商品名アビガン)併用療法の観察研究の結果を発表した。
患者11例中10例で症状の軽快が見られ「併用の有効性を示唆する」としている。結果は3日付の医学誌『クリティカル・ケア』(電子版)に掲載された。

現在、治療に用いられている抗ウイルス剤はノイラミニダーゼ阻害剤(Neuraminidase inhibitors)で、増殖されたウイルスの放出を阻害して感染の拡大を防ぐものだが、アビガンは、ウイルスの細胞内での遺伝子複製を阻害することで増殖を防ぐRNAポリメラーゼ阻害剤である。Remdesivir も同じくRNAポリメラーゼ阻害剤である。


ある報告では、投与開始14日後に重症患者の6割が改善、軽症や中等症では9割の患者で改善が認められた。

2020/4/21 アビガン投与で重症患者6割、軽中等症患者9割が改善 


東京大・医科学研究所の井上純一郎教授らは3月18日、急性膵炎の治療薬として国内で長年使われてきた点滴薬剤「ナファモスタット(商品名フサン)」が新型コロナウイルスの感染を阻止する可能性があると発表した。

ウイルスが人体に感染するには細胞の表面に存在する受容体タンパク質(ACE2受容体)に結合したのち、ウイルス外膜と細胞膜の融合を起こすことが重要である。

コロナウイルスの場合、ウイルスのSタンパク質がヒト細胞の細胞膜のACE2受容体に結合したあとに、タンパク質分解酵素(TMPRSS2)で切断され、Sタンパク質が活性化されることが重要であるが、ナファモスタット(フサン)はTMPRSS2による切断を阻止し、ウイルスの侵入を阻止する。

2020/3/18 急性膵炎治療薬が新型コロナウイルス感染阻止の可能性

フサン(感染阻止)とアビガン(増殖阻止)は、作用部位が異なるため、両者を併用することで相加的な効果が得られることが期待される。
また、新型コロナウイルス感染症の一部の患者では血管内での病的な血液凝固が病気の悪化に関与していると考えられ、フサンの抗凝固作用が有効であると期待できる。


本試験は東京大学医学部附属病院のほか、多施
設共同で実施する。

対象は肺炎を有するCOVID-19患者で、2074歳の男女。

アビガンとフサンの併用群と、アビガン単独群の二群で薬剤の作用を比較し、想定される有効性や安全性が認められるか確認する

付記

鳥居製薬からフサンを承継した日医工は5月18日、フサンの増産を発表した。

現在は鳥居製薬(日本たばこ産業子会社)に委託し、年65万本程度生産しているが、能力の100万本まで増産する。
別途、自社の愛知工場に40億円をかけて年内に稼働、委託分を含め能力を年300万本にする。

住友化学は5月8日、高精度の臭気検知IoTプラットフォームを開発するイスラエル のNanoScent社へ、同社が進める臭気検知デバイスを用いた新型コロナウイルス感染症の迅速診断センサー開発のため、必要資金の約7割を提供すると発表した。

NanoScentは、2017年設立のテクニオン・イスラエル工科大学発のスタートアップ企業で、Scent Recognition as a Serviceというコンセプトのもと、臭気検知のハードウェアのみならずソフトウェア開発も行っている。

NanoScent はケミレジスタ(chemiresistor)を搭載した臭気検知デバイスとデジタル技術を融合したさまざまな新型センサーを開発してい る。

ケミレジスタとは絶縁性または半導体性の媒体中に導電性材料を混合した材料で,物質の吸着など周辺の化学的環境により導電パスの状態が変化し電気伝導性が変化するため、さまざまな物質を検知するセンサーとして活用できる。一般にナノテクノロジーを活用した材料が用いられる

複数の臭気をリアルタイムで検知できるポータブルデバイスと、検知したデータをクラウド上に蓄積・解析し、スマートフォンなどの端末にその結果を表示させる情報基盤の試作品を完成させてい同社のNanoScent SR (Scent Recorder) は直径1mm の8つのセンサーを持つ。

NanoScent は、新型コロナウイルス感染症の拡大抑止に向けて、この技術を活用し、鼻の呼気からウイルス感染を検知できる迅速診断センサーの開発に着手した。

国境や空港、病院などでの感染スクリーニングシステム構築のため、イスラエルおよび欧州の病院や高精度な検査技術を開発する企業と連携し、実証実験を始めている。

臭気検知デバイスを用いた非侵襲(生体を傷つけない)かつ即時に判定ができる極めて簡便な診断方法と、PCR法などのより高精度な検査方法を組み合わせて、「短時間」「低コスト」「高精度」で実施可能な感染スクリーニングシステムの実現を目指す。

住友化学は、迅速診断センサー技術の開発は、新型コロナウイルス感染症はもとより、将来に発生が懸念されるパンデミック対策にも応用が可能であると考えている。

ーーー

住友化学は2019年12月にNanoScent に200万ドルを出資し、戦略的な技術的連携を深めるとともに、新規ヘルスケア事業の創出に取り組むこととした。

住友化学は連携により、次世代ヘルスケアプラットフォームの鍵となる「体調可視化」の実現を目指している。

排泄物の臭気データから体調変化や病気の兆候を読み取り、その日の体調に適したソリューション(食事や薬、生活習慣など)の提案により、健康管理に役立てる仕組みを構築すべく、実証実験を計画している。

また、さまざまな揮発性化学物質の集合体である臭気を高精度で検知できるNanoScent の技術は、ヘルスケアに留まらず、工場や街中での有害物質の検知・モニタリング、自動車内の臭気判定・管理など、応用範囲は多岐にわたるため、次世代事業の創出につながると判断した。

ーーー

臭いによる新型コロナウイルスの感知は全く新しい方法である。

現在、新型コロナウイルスの検査には、PCR検査、抗原検査、抗体検査がある。

PCR検査と抗原検査は、人体に侵入したウイルスを検査し、抗体検査は、人間が持つウイルスへの抗体を検査する。


PCR検査はウイルスのRNAの存在を検査する。ウイルスは、デオキシリボ核酸(DNA)を持つDNAウイルスと、リボ核酸 (RNA)をゲノムとするRNAウイルスに分けられる。

コロナウイルスはRNAウイルスなので、PCR法の前にRNAをDNAに変える「逆転写」という作業を行う。
次に、一本のDNAをもとに、次々にDNAを複製する。

PCR法では、検体に含まれるウイルスの遺伝子量では検出できないが、増幅することにより検出できるようになる。

2020/2/29 COVID-19 ウイルス、迅速検出

抗原検査は、ウイルスの外側に付いている突起部分(スパイク)のたんぱく質を検出する。抗原は、免疫細胞上の抗原レセプターに結合し、免疫反応を引き起こさせる物質の総称。

米食品医薬品局(FDA)は5月9日、新型コロナウイルスに感染しているか簡易診断できる「抗原検査」に初めて緊急使用認可を与えたと発表した。

Quidel Corporationが手掛ける抗原検査Sofia® 2 SARS Antigen FIAで、同社のSofia 2 Fluorescent Immunoassay Analyzer で検査する。

抗原検査は鼻の奥から綿棒で粘液を採取し、ウイルス特有のたんぱく質を検出する。

「PCR検査」より精度は劣るものの、検査現場で15分で判定できるほか、コストが安いのも利点である。

厚労省は富士レビオの抗原検査キットを5月13日に薬事承認し、保険適用する。15~30分で検出する。精度はやや劣るため、陰性が出た場合は、念のためPCRによる検査を実施する見通し。


ヒトがウイルスに感染すると、まずlgM抗体ができ、短期間で消失する。lgM抗体に遅れてlgG抗体ができ、漸減しながら長期間持続する。

抗体検査は、この抗体を検査する。

2020/5/7 米FDA、ロシュの新型コロナ抗体検査薬の緊急使用許可


Washington Post は5月7日、数多くの米国人が、自身は以前に新型コロナウイルス感染症にかかっていたと確信する現象が起こっていると報じた。

So many people are convinced that they had covid-19 already

カリフォルニア州の女性は昨年の感謝祭の1週間前に新型コロナと同じ症状に襲われた。2週間自宅で休養すると、症状は急に収まった。
その2カ月後にカリフォルニア州で最初のCOVID-19の患者が出た。

インフルエンザや風邪とCOVID-19の症状に似たところがあるが、 彼女は、みんなが知るまえにCOVID-19が発生しており、自分もそれに罹ったのではと思っている。

同じように考えている人が多数存在するという。

同紙は、COVID-19が問題になる前にこの病気に罹っていたと考える現象を「thinkihadititis」と呼んでいる。

「Think I had it」病(itis )=「私はそれに罹った」病である。多くの人が 'I think I had it, I think I had it' と叫んでいるという。

有名人に多いという。

最近の抗体検査で、COVID-19に罹った人よりもはるかに多い人で抗体が見つかっている。

COVID-19には罹りたくないが、すでに新型コロナを体験しているため体内に抗体が生成されている筈だとの希望がこの現象を生んでいるという。

(但し、WHOは抗体ができても再度罹らないとの保証はないと警告している。)

ーーー

別記事で、4月30日に新型コロナウイルスの抗体検査で陽性だったことを明かした米歌手のマドンナが、5月2日に自宅待機命令を無視して友人の誕生日パーティーに出席していたことが発覚し、批判を呼んでいる。

2月22日に仏パリで公演を行った後、けがによる不調を理由にその後のツアーを中止。そして感染予防として3月10日と11日に同地で行われる予定だった最終公演も中止したが、実際には自身も含めてツアースタッフの多くが体調不良だったこ

2月22日に仏パリで公演を行った後、その後のツアーを中止したが、実際には自身も含めてツアースタッフの多くが体調不良だったという。

2月22日に仏パリで公演を行った後、けがによる不調を理由にその後のツアーを中止。そして感染予防として3月10日と11日に同地で行われる予定だった最終公演も中止したが、実際には自身も含めてツアースタッフの多くが体調不良だったこ

2月22日に仏パリで公演を行った後、けがによる不調を理由にその後のツアーを中止。そして感染予防として3月10日と11日に同地で行われる予定だった最終公演も中止したが、実際には自身も含めてツアースタッフの多くが体調不良だったこ

マドンナは3月末に「新型コロナは富裕層も賢い人も感染する。平等をもたらすのは素晴らしい」などと投稿し、物議を醸していた。




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インドのAndhra Pradesh州のVisakhapatnamのLG Polymers Indiaで5月7日の未明 2時半頃に、ガスが漏出し、これによって少なくとも子供を含む11人が死亡して数百人がけがをした。


APは「スチレンが工場から流出し、これによって一部の住民は路上で倒れ、一部は病院に運ばれた。11人が死亡し、近隣3キロメートル範囲にいた1000人ほどの人々が呼吸困難や目の痛みなどを訴えている」と報じた。死亡者の中には8歳の少女もおり、脱出のために家の2階から飛び降りて亡くなった人もいると伝えた。睡眠中の住民の被害を増やした。

他の報道では「200人から500人が近隣の病院で治療中」で、「このうち70人以上は意識がない状態」としている。

モディ首相はツイッターで「事故現場の状況について、内務省および国家災難管理局の関係者と話を交わした。状況を綿密にモニタリング中」と述べた。

LG Chemは「現在、現地地域住民の被害現況を確認し、住民や役職員の保護のために最大限必要な措置を関係機関と共に取っている」と述べた。

この工場は新型コロナウイルスによるロックダウンで6週間休止しており、操業再開の準備中であった。タンクの周辺には誰もいなかったとされる。従業員の死亡はない。

州政府の役人は、未熟練の労働者がメンテ作業でミスをし、ガスが漏れたと推測している。


2020年3月期は増収増益で、営業損益、経常損益、当期損益とも10年連続増益で、いずれも3期連続の最高益になった。
Shintechが減益となったが、半導体シリコンの増益で補った。

2021年3月期については、
コロナ禍がいつどのように終息するか、世界経済への毀損がどのぐらいになるのか、現時点では見通せないため、未定とした。

単位:億円 (配当:円)

  売上高 営業損益 経常損益 株主帰属
当期損益

配当

中間 期末
2017/3 12,374 2,386 2,421 1,759 60 60
2018/3 14,414 3,368 3,403 2,662 65 75
2019/3 15,940 4,037 4,153 3,091 100 100
2020/3 15,435 4,060 4,182 3,140 110 110
前年比 -505 23 29 49 10 10
2021/3

未定

2008年3月期以降の減益については 2019/5/1 要企業の2019年3月決算ー信越化学 の後半参照

年間配当は5期連続での増配で、2015年3月期までの100円から220円とした。

営業損益は下記の通り。


営業損益推移 (
単位:億円)

セグメント  17/3 18/3 19/3 20/3 増減  
塩ビ・化成品 532 932 1,065 922 -143 シンテックは高水準の出荷を継続したが、市況の影響を受け減収減益(下記)。
シリコーン 425 520 585 615 29 汎用製品の価格下落
機能性化学品 222 257 266 277 11
半導体シリコン 560 930 1,320 1,433 113 販売価格と出荷水準の維持
電子・機能材料 552 616 670 685 15
その他 96 115 133 148 15  
全社 -1 -2 -3 -20 -18  
合計 2,386 3,368 4,037 4,060 23  


シンテックのエチレンプラントは商業生産を開始、順調に稼働している。塩ビ樹脂の増設計画は第三期まであり、第一期分の工事が進行中。


Shintechの損益は下記の通りで、減収減益となった。
(前回、発表なしとしたが、掲載場所が変わっただけで、発表されていた。)

今後は、エチレン新設(2020年上半期稼働)と電解からPVCまでの一貫生産(第一期が2020年末完成)により更なる増益が期待される。

Shintech の能力は次の通りとなる。単位:万トン

立地 PVC VCM カ性ソーダ エチレン
Texas州 Freeport  145   -   -  
Louisiana州 Addis   58   -   -  
Plaquemine   60   160  106  
  2013/6 増設 32 30 20  
手直し     4  
2020初め 完成       50
(認可取得)   (86) (66)  
2020年末 完成 29 ? 27  
今回増設後合計 324  ?   157 50

 

米製薬大手Pfizer Inc.は5月5日、ドイツのバイオ医薬スタートアップ企業のBioNTech SE と共同開発する新型コロナウイルスの予防ワクチンの臨床試験(Phase1/2) を米国でも始めたと発表した。

4種類のRNA(リボ核酸)ワクチン候補 BNT162 をヒトに接種し、安全性を確認する。ドイツで4月に先行して同段階の治験を開始した。早ければ年内に数百万本を生産する。

ワクチンの臨床試験では通常、安全性の検証(Phase 1)から開始するが、今回はワクチン開発を加速化させるため安全性と免疫システムの反応(Phase 2) を同時に検証する。

先ず、NYU Grossman School of Medicine と University of Maryland School of Medicineで始め、その後、University of Rochester Medical Center/Rochester Regional Health とCincinnati Children's Hospital Medical Center で実施する。

健康な360人を18-55歳と65-85歳の2グループに分けて実施する。先ず、若いグループで安全性と免疫システムの反応が確認された時点で、高齢者層のグループの臨床試験を開始する。

世界各地でワクチンの開発が進められており、いくつかの種類があるが、同社のは「mRNAをベースにしたワクチン」で、抗原となるたんぱく質をmRNAで発現させ、それに対応した抗体が体内で産出されるよう促すもの。

それぞれ異なるmRNA構造と標的抗原を有する4種のワクチンをテストする。
4つのワクチン候補のうち2つは修飾ヌクレオシドmRNA (modRNA)を含み、1つはウリジン含有mRNA(uRNA)を含んでおり、4つめは自己増幅 mRNA(saRNA)を利用している。

まず、18~55歳の健常成人を約200名組み入れ、1~100 µgの用量を投与して今後の臨床試験の至適用量を検討するとともに、ワクチン候補の安全性と免疫原性を評価する。
加えて4つのワクチン候補のうち、uRNAまたはmodRNAを含む3つを反復投与した際の効果も評価する。

COVID-19感染症が重症化するリスクの高い被験者(65-85歳)は、本試験の2つ目のパートに組み入れる。

臨床試験に当たり、BioNTechがワクチンを提供する。

ーーー

BioNTech はオーストリアのPolymun Scientificと組んで、ドイツのMainz及びIdar-Oberstein工場でmRNA を生産している。


Pfizer とBioNTech は
2018年にインフルエンザ予防を目的としたmRNAワクチンの開発のために共同開発契約を結んだ。

この契約に基づき、両社は3月19日にコロナウイルスに対するmRNAワクチンの共同開発および流通(中国を除く)に関する覚書について合意した。

BioNTechのmRNAワクチンBNT162の開発を加速することを目的とする。米国とドイツを含む両社の複数の研究開発施設を活用する。

これを基に、今回の契約となった。

BioNTech は3月16日、Shanghai Fosun Pharmaceutical (上海復星醫藥)との間で、BioNTechのCOVID-19のmRNAワクチン候補であるBNT162の中国での開発のための戦略的開発及び商業化協力契約を締結した。

BioNTechの供給するBNT162を使い、復星醫藥の中国における広範な開発、規制対応、商業化の能力を活用し、中国で共同で臨床試験を実施する。

中国で承認を得られた場合、復星醫藥が中国で販売する。中国以外の全世界での開発・販売権はBioNTech が持つ。

なお、復星醫藥BioNTech に50百万ドルを出資した。

ーーー

臨床試験の成功を予想し、両社は供給体制を増強している。

Pfizerは承認を前提に世界中に供給すべく拡張に着手している。同社の米国3工場 (Massachusetts, Michigan and Missouri) とベルギーのPuurs工場を製造工場に決め、更に追加工場を決める。2020年に数百万本を供給、2021年に数億本に増やす。

BioNTechも既存のドイツのMainz及び Idar-Oberstein工場で能力増強を図る。

承認取得後、BioNTech と Pfizer は中国を除く世界全体で共同で販売する。

ーーー

世界で開発中の新型コロナウイルスワクチンは70種類に上るとされる。

米国のModerna, Inc. がmRNAワクチン「mRNA-1273」の臨床試験(Phase 1) を行っている。

同社は4月16日、開発加速のため米厚生省の生物医学先端研究開発局から最大4億8300万ドルの拠出を受けると発表した。

付記

スイスの製薬会社Lonzaは5月1日、Modernaのワクチン「mRNA-1273」の製造契約を締結したと発表した。

7月にもLonza U.S. で製造した最初のバッチを供給する。

また、INOVIO Pharmaceuticals がDNAワクチン「INO-4800」の臨床試験(Phase 1)を行っている。

中国では、Cansino Biologics(康希諾生物)と中国人民解放軍軍事科学院軍事医学研究院生物工程研究所が共同開発したウイルスベクターワクチンが第2相試験の段階にある。




スイス製薬大手Rocheは5月3日、新型コロナウイルスの抗体検査薬 Elecsys® Anti-SARS-CoV-2 について米食品医薬品局(FDA)から緊急使用許可(Emergency Use Authorization :EUA) を取得したと発表した。

今月中にも欧米で数千万回分を提供する。日本でも5月中に承認申請する。

ドイツ政府は5月に300万個、それ以降は月500万個購入する契約を締結した。

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に暴露した人々に存在する抗体を検出する。
ウイルスに感染した人、感染した可能性があるものの症状の発生を伴わなかった人を判別するのに役立つ。
また、免疫獲得の状態を判断することによって、業務従事の可否を判断する一助になり、経済活動の正常化に向けた道筋を描きやすくなる。

なお、WHOは4月24日のScientific Brief で、抗体の存在を"immunity passport" や "risk-free certificate" とする向きがあるが、今のところ抗体を得た人が再度罹らないとの科学的根拠はないと注意を促している。

韓国の中央防疫対策本部は4月12日、新型コロナウイルスによる感染症が完治し、隔離が解除された後、再び陽性判定を受けた人が計111人になったと発表した。
罹患して直っても(多分、抗体が出来ている筈)、再度罹患した。

2020/4/14 韓国でCOVID-19 回復後に再陽性111人 


Elecsys Anti-SARS-CoV-2は、血清および血漿中のSARS-CoV-2に対する抗体(IgGを含む)を検出し、免疫反応状態を判断する。

世界中の病院検査室ならびに検査会社において広く使用されているRocheの電気化学発光法免疫分析装置 コーバス(cobas e 411 analyzer, cobas e 601 / cobas e 602 modules, cobas e 801 module) によって検査することができる。

測定時間は約18分で、1時間当たり最大300テストの測定が実施できる。

同社は約5200人について臨床試験を実施した。PCR検査で新型コロナの感染が確認された人について14日後に検査したところ、正しく陽性と判断する感度(sensitivity)が100%で、正しく陰性と判断する特異度(specificity)は99.8%超と信頼性が極めて高い。

注射で採取した血液で検査を行うため、指先からの採血による検査よりも正確性が高いという。

簡易検査キットの場合、一般的な風邪の原因となるウイルスとコロナウイルスに対する抗体とを間違う可能性もあるが、Rocheのキットは新型コロナだけを高い精度で特定できるとされる。


Rocheは月間生産量を現在の5000万個から年末までに1億個以上に引き上げる。

国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構の平野俊夫理事長は4月15日、北海道大学遺伝子病制御研究所の村上正晃教授と共同で、新型コロナウイルスに関する論文を発表した。

COVID-19で肺炎を起こしても軽い症状で治る場合もあるが、重篤化する人もいる。特に重症化したCOVID-19に発症する急性呼吸器不全は致死率が高い。

この原因は免疫系の過剰な生体防御反応のサイトカインストームが原因であることを見付けた。

論文はImmunity に掲載された。COVID-19: A New Virus, but a Familiar Receptor and Cytokine Release Syndrome

論文のポイント​:

  • COVID-19に伴う致死的な急性呼吸器不全症候群(ARDS: Acute Respiratory Distress Syndrome)は、免疫系の過剰な生体防御反応であるサイトカインストームが原因であると考えられる。

  • サイトカインストームは、遺伝子の転写因子であるNF-kBとSTAT3の協調作用により、免疫関連タンパク質であるインターロイキン6(IL-6)の増幅回路(IL-6アンプ)が活性化され、炎症性サイトカインの産生が異常に増加し起こる。

  • COVID-19にみられる急性呼吸器不全症候群の治療薬の標的としてIL-6 アンプが有望であり、IL-6-STAT3経路の阻害が有効である。

すでに遺伝子導入T細胞(CAR-T)療法におけるサイトカイン放出症候群の治療に使用されており、かつIL-6アンプを阻害できる抗IL-6受容体抗体 も有望である。

最近のNature と Cell の論文で下記の点が明らかになっている。

1)SARS-CoV-2ウイルスの表面に存在するスパイクタンパクは、細胞表面のACE2を受容体として結合するが、細胞内に入って感染するためにはスパイクタンパクが細胞表面のタンパク分解酵素であるTMPRSS2により切断・分割 (開裂活性化) される必要がある。



2)その後切断・分割され活性化したスパイクタンパクがウイルス膜と細胞膜の融合を引き起こす結果、ウイルスはACE2とともに細胞内に取り込まれる。

3)TMPRSS2の阻害剤はウイルス感染モデル実験系においてウイルスの細胞内取り込みを阻止した。またACE2に対する抗体もウイルスの細胞内取り込みを阻止した。


したがって、SARS-CoV-2ウイルスとACE2との結合を抑制する分子や、TMPRSS2の阻害剤はウイルス感染を抑制する効果が期待され、ウイルス感染の初期には有効な治療薬になる可能性がある。
また、スパイクタンパクに対する抗体、スパイクタンパク以外のウイルス膜タンパクに対する抗体やサーズウイルスや新型コロナウイルスから治癒した患者に存在する抗体なども期待される。

一方、感染後期に生じる致死的な急性呼吸器不全ARDSは、ウイルスが減少し始めた頃に生じる 。

筆者らは、これを、ウイルスそのものによるものではないと考え、過剰な生体反応であるサイトカインストームにより引き起こされるサイトカインリリース症候群CRSである とする。

気管支・気道上皮細胞にてACE2に結合したSARS-CoV-2ウイルスは、TMPRSS2の作用により細胞内に取り込まれる。

転写因子であるNF-kBとSTAT3の協調作用により、インターロイキン6(IL-6)の増幅回路(IL-6アンプ)が活性化され、炎症性サイトカインの産生が異常に増加するサイトカインストームが発生することによりが発症するという仕組みを提唱した。

NF-kB は炎症反応で中心的な役割を果たす転写因子で、病気を引き起こすような過剰な活性化は、NF-kB活性化と同時にIL-6-STAT3経路の活性化が必要である。

STAT3 (Signal Transducer and Activator of Transcription 3) は転写因子であり核内で機能する。炎症時のSTAT3活性化因子はIL-6で、核内でNF-kBと会合してNF-kBの活性を増強する。


SARS-CoV-2ウイルスが細胞内に取り込まれると、ウイルス分子の構造を認識した細胞のパターン認識受容体(PPRs)が活性化し、下流のNF-kB経路が活性化する。

さらに、感染に伴って本来ACE2に結合して分解されるアンジオテンシン(AngII)が血中に増加し、アンジオテンシン受容体1(AT1R)からの信号が過剰となる。
活性化されたAT1R信号は、蛋白質分解酵素であるADAM17を活性化し、細胞膜型のTNFa、IL-6Ra、増殖因子などの炎症関連分子を可溶性のものに変換する。

可溶性の炎症関連分子(図ではsIL-6Ra)は、気管支・肺胞上皮細胞、血管内皮細胞を含む非免疫系細胞にてNF-kBとIL-6-STAT3を同時に活性化し、IL-6アンプを活性化、これらの細胞の局所にて過剰なサイトカインが産生される。

その結果、サイトカインリリース症候群CRSが引き起こされ、COVID-19にみられる致死的な急性呼吸器不全症候群ARDSが発症すると考えられる 。

感染初期は免疫力を高める必要があるが、重篤化すると逆に免疫を抑える治療が必要になる。

感染後期に見られる致死的な急性呼吸器不全症候群の治療には、すでに遺伝子導入T細胞(CAR-T)療法におけるサイトカイン放出症候群の治療に使用されており、かつIL-6アンプを阻害できる抗IL-6受容体抗体 も有望である。


有望視されるのが、中外製薬のIL6 阻害薬「アクテムラ」 ヒト化抗ヒトIL-6レセプターモノクローナル抗体)で関節リウマチ, 若年性特発性関節炎, 成人スチル病, 高安動脈炎・巨細胞性動脈炎, キャッスルマン病の治療に使われている。

中外製薬の親会社のRocheは3月19日、米国食品医薬品局(FDA)と連携し、重症COVID-19肺炎による入院患者を対象にActemra/RoActemraの第III相臨床試験を開始すると発表した。
Actemra/RoActemraについては、3月3日に中国国家衛生健康委員会(NHC)が発行したCOVID-19診断・治療計画第7版で言及されているが、安全性、有効性を確認する。

中外製薬は4月8日、「アクテムラ®点滴静注用80 mg、同200 mg、同400 mg」[一般名:トシリズマブ(遺伝子組換え)]について、COVID-19肺炎を対象とした国内第III相臨床試験を実施すると発表した。


付記

エーザイは7月1日、同社のTLR4(Toll-Like Receptor 4)拮抗剤エリトランが新型コロナウイルスのサイトカインストームを抑制の候補として臨床試験に入ると発表した。

カリフォルニア州のGlobal Coalition for Adaptive Researchとエーザイが、University of Pittsburgh Medical Centerと共同で臨床試験に入る。今後、日本を含む各国に拡大する。

エリトランは、細菌の感染に対する過剰炎症反応である重症敗血症の治療剤で、エーザイが創製したエンドトキシン拮抗剤。
細菌から放出されたエンドトキシンがその受容体であるTLR4に結合することを阻害することにより、TLR4が活性化すると引き起こされる受容体シグナルの伝達を防ぐ。その結果、炎症性サイトカインの遊離が阻害され、敗血症症状の発現が抑制される。

エリトランの安全性プロファイルは、重症セプシスを対象として実施した大規模な臨床第Ⅲ相試験で確認されている。

東京工業大学 科学技術創成研究院の原亨和教授、元素戦略研究センター長の細野秀雄栄誉教授らは4月27日、50 ℃未満の温度で水素と窒素からアンモニアを合成する新触媒の開発に成功したと発表した。

豊富なカルシウムに水素とフッ素が結合した物質「水素化フッ素化カルシウム(CaFH)」とルテニウム(Ru)ナノ粒子の複合材料「Ru/CaFH」で、室温で水素と窒素からアンモニアを合成できる。

現在、アンモニアはHaber-Bosch 法により、窒素ガスと水素ガスから工業的に合成されているが、高温・高圧の過酷な反応条件(使用されている鉄系触媒では約400~500°Cかつ14~30MPa)に加え、原料となる水素ガスが化石燃料由来であり、大量のCO2を発生させ、水素ガスの製造には多大なエネルギーを消費する。

新触媒により、自然エネルギーを使った温室効果ガスのCO2排出ゼロにつながることが期待される。

本研究成果はNature communicationsオンライン速報版に4月24日に掲載された。

Solid solution for catalytic ammonia synthesis from nitrogen and hydrogen gases at 50 °C

ーーー

なお、既報の通り、東大大学院工学系研究科が2019年4月25日、常温・常圧の温和な反応条件下で窒素ガスと水からアンモニアを合成する世界初の反応の開発に成功したと発表している。
モリブデン触媒を用い、窒素ガスおよびプロトン(H+)源として水、還元剤としてヨウ化サマリウムを用いることで、常温・常圧の反応条件下で世界最高の触媒活性を達成した。

2019/5/3 世界で初めて窒素ガスと水からのアンモニア合成に成功

ーーー

アンモニア合成の難関は、窒素分子(N2) を窒素原子(N) にまで分解することである。

窒素分子(N2)は2つの窒素原子が三重結合という強い結合で結ばれているため、非常に安定な分子で、反応性が乏しく、ほとんどの生物は大気中の窒素を直接利用することができない。
マメ科の植物に共生する細菌が持つ酵素「ニトロゲナーゼ」のみが常温・常圧で窒素の三重結合を断ち切って窒素をアンモニアへと変換している。

窒素分子の分解には、鉄などの遷移金属からN2へ電子を一時的に与えることが必要であるが、そのためには金属に電子を与える電子供与材料が必要となる。

従来のアンモニア合成の鉄触媒では酸化カリウム(K2O)が電子供与材料として使われる。しかし、100~200 ℃で電子を与える力が弱まり、作動しなくなる。

ーーー

チームはありふれた脱水材の水素化カルシウムCaH2に着目した。これ自体は低温では役に立たない。


CaH2はCa2+の陽イオンと水素の陰イオンH-(ヒドリドイオン)が結合したイオン性固体である。

200 ℃より高い温度にすると一部のH-が水素分子として抜け、電子をCa2+イオンの周りに残す。

この状態の電子はアルカリ金属並みの電子供与能をもつため、この電子で遷移金属の電子供与をブーストすればN2分子は窒素原子まで分解できる。

しかし、Ca2+--H-のイオン結合エネルギーが強いため、低温で使うことができない。

対策として、Ca2+とより強い結合をつくる陰イオンを入れ、Ca2+--H-の結合エネルギーを弱める。

Ca2+--F-の結合エネルギーはCa2+--H-のそれの2倍の強度をもつ 。

CaH2のヒドリドイオンの一部をF-で置き換え、水素化フッ素化カルシウムCaFHをつくった。


この場合、Ca2+--H-のイオン結合エネルギーが弱まり、水素の陰イオンH-(ヒドリドイオン)は低温で水素分子として脱離し、低温で強い電子供与能を発揮する。


実際に合成したCaFHでは室温程度からヒドリドイオンが水素分子として抜けることが確認された。


チームは、この水素化フッ素化カルシウム(CaFH)とルテニウム(Ru)ナノ粒子の複合材料「Ru/CaFH」で触媒を作った。

実験結果は下記の通り。


この触媒は100 ℃以下でもアンモニアを合成し、50 ℃でさえ作動していることがわかった。

現在のアンモニア生産に使われている商用の鉄触媒、そして、つい最近発表された最高性能の触媒(Ru/BaO-BaH2)、第2位の触媒(Ru/CaH2) は100 ℃以下の温度では全く作動しない。

他の触媒が機能する200 ℃での場合でも、この触媒は最高性能触媒の2倍を越えており、高い温度でも既存触媒を凌駕している。

なお、Ru/CaFHの活性化エネルギー(反応を進めるために必要なエネルギー)は20 kJ mol-1であり、これまで報告され現在のアンモニア生産にてできたアンモニア合成触媒の1/2程度にしか過ぎない。
また、Ru/CaFHは安定な触媒であり、300 ℃を越える反応温度でも900時間以上アンモニア合成速度の低下なく、作動し続ける。

原教授のコメント

今回の研究に対する私たちの感想は、「社会が求めるアンモニア生産のきっかけを見つけた」に過ぎません。

しかし、化石資源を使わずに肥料を生産し、人々に食糧を届けることが単なる夢想ではなくなり、現実味を帯びてきました。

従来の触媒開発がしてきた性能向上をたどることによって、私達のアプローチ・触媒は真に地球・社会・人が求めるアンモニア生産に繋がると考えています。

さきに2019/4/7「BCGはCOVID-19に効くか?」、2020/4/13 BCGとCOVID-19(補足)、2020/4/27 BCGとCOVID-19(その3)を書いた。BCGとCOVID-19の関連についての仮説を確かめた。

そのまとめ:

1) BCG全員注射をやったことのない4か国の死者は極めて多い。

2) 現在もBCG注射をしている国は、現在はしていない国境を接する隣国に比し、著しくひくい。

3) BCG全員注射をやったことのない4か国(160人以上)と、現在もやっている残りの国(5人未満)との差は驚くほど大きい。

4)ワクチンのうち、ソ連株、日本株を使う国は死亡率が低い。死亡率が高い国はDenmark株が多い。

日本株とソ連株は、デンマーク株と細胞膜構成成分が異なる。

日本株とソ連株は他の亜株に比し、結核に対して免疫を起こす力は同程度だが、生菌数が非常に多い。

ーーー

ここで問題に気が付いた。「現在もやっている国」と「現在はしていない国」の対比は正しくない。

いつ始めたか、いつ止めたかにより、国民のどれだけが接種をしているかに差がある。

東京工大のチームがmedRxivに発表した論文 Relationship between COVID-19 death toll doubling time and national BCG vaccination policyを見つけた。

BCG接種国と非接種国で死亡率が大きく異なるが、接種国の中では東京株と他の株でも大きな差があるとする。
死亡数が倍になる日数が東京株の8カ国平均で7.2日であるのに対し、他の株の34か国平均は5.5日である。

この論文には、国別に集団接種を実施した期間、集団接種を受けた人の現在の年齢(何歳から何歳まで)とその国のBCG株の種類が記載されている。

これにより、全人口のうちのどれ位が接種をうけているかが分かる。

前の記事で、隣接する英国(現在はしていない)とアイルランド(最近まで実施)との差が急速に近づいているとした。
実際には英国では延べ53年間接種を実施(最初の年に12、3歳児までを実施)、アイルランドとの差は少ない。
(今回の表ではアイルランドは1950s-2003?となっているが、前回資料では1937-2015となっている)

スウェーデン(延べ36年)と隣接するノルウェー(延べ63年)では死亡率に差がある。

札幌医科大学医学部の人口あたりの新型コロナウイルス死者数の推移から最新(4月30日)の人口100万人当たり死者数を使用し、世界58カ国を死者の多い順に並べた。(ベトナムを追加)

1) 集団接種をしたことのない5カ国(ベルギー、イタリー、オランダ、米国、カナダ)の死亡率は極めて高い。
カナダは比較的少ないが、任意の接種で2012年から日本株を使っている。

2) 東京株接種の国の死亡率は極めて低い。

イラクは隣接するイランに比し、極めて低い。

3) ロシア(ソ連)株は日本株に近く、死亡率は低いが、東京株よりは高い。

4) 欧州はデンマーク株(Danish 1331)が多いが、接種の延べ年数が高くても(人口の多くが接種を受けている)死亡率が極めて高い。

それでも、過去にやっていないスペインと比べ、隣接するポルトガルの死亡率は低い。


人口100万人当たり死者数 順位 (2020/4/30時点)

人口千人 集団接種
実施期間
接種者
現年齢
接種
延年数
BCG株 100万人
当たり死者
ベルギー 11,590 Pasteur 1173 647
スペイン 46,775 1965-1981 39-55 17 Danish 1331 519
イタリー 60,462 Danish 1331 458
英国 67,886 1953-2005 28-80 53 Glaxo 384
フランス 65,274 1950-2007 13-70 58 Danish 1331 369
オランダ 17135 Bulgaria 275
スウエーデン 10,099 1940-1975 45-80 36 Danish 1331 244
アイルランド 4,938 1950s-2003? 17-60+ 44 Danish 1331 241
米国 331,003 184
スイス 8,655 1960s-1987 33-50+ 18 Merieux (Danish) 163
ポルトガル 10,197 1965-2015 5-55 51 Danish 1331 95
カナダ 37,742 Connaught(-2012),
Tokyo 172-1(2012--)
79
デンマーク 5,792 1946-1986 34-74 41 Danish 1331 76
ドイツ 83,784 1961-1998 22-59 38 Danish 1331 旧東独はRussia 75
イラン 83,993 <1990-2018+ 0-30+ 31 Pasteur 1173 P2 71
オーストリア 9,006 1952-1990 30-68 39 64
エクアドル 17,643 <1995-2018+ 0-25+ 26 Russia-Bulgaria 50
トルコ 84,339 1952-2018+ 0-68 69 Serum Inst. India (Russia) 45
スロベニア 2,079 1947-2005 15-73 59 Danish 1331 43
パナマ 4,315 <1980-2018+ 0-40+ 41 Russia-Bulgaria 41
ノルウェー 5,421 1947-2009 11-73 63 Danish 1331 37
フィンランド 5,541 1941-2006 14-79 66 Glaxo, Danish 1331 37
ルーマニア 19,238 1928-2018+ 0-92 93 Romania BCG substrain 35
マケドニア 2,083 <1993-2018+ 0-27+ 28 Toronto Canada (Connaught) 35
ハンガリー 9,660 1953-2018+ 0-67 68 Danish 1331 32
プエルトリコ 2,861 30
ペルー 32,972 <1990-2018+ 0-30+ 31 Danish 1331 29
モルドバ 4,034 <1992-2018+ 0-28+ 29 28
ドミニカ 10,848 <1995-2018+ 0-30+ 31 Russia-Bulgaria 27
ブラジル 212,559 <1990-2018+ 0-30+ 31 Moreau 26
イスラエル 8,655 1955-1982 38-65 28 25
チェコ 10,709 1953-2010 10-67 58 Moreau 21
セルビア 8,737 <1992-2018+ 0-28+ 29 Pasteur 1173 P2 19
ポーランド 37,847 1955-2018+ 0-65 66 Danish 1331 16
メキシコ 128,933 1951-2018+ 0-69 70 Danish 1331 13
ギリシャ 10,423 <1980-2014+ 12-46+ 35 Danish 1331 13
チリ 19,116 <1980-2018+ 0-40+ 41 Danish 1331 11
アルジェリア 43,851 <1985-2018+ 0-35+ 36 10.
ロシア 145,934 <1992-2018+ 0-28+ 29 Russia 7
ウクライナ 43,734 <1992-2018+ 0-28+ 29 Bulgaria NCIPD 6
コロンビア 50,883 <1980-2018+ 0-40+ 41 Pasteur 1173 5
フィリッピン 109,851 1979-2018+ 0-41 42 Tokyo 172-1 and others 5
韓国 51,269 1970s-1985? 0-40+ 41 Tokyo 172-1 5
アルゼンチン 45,196 <1985-2018+ 0-35+ 36 Anlis Malbran (Pasteur) 5
モロッコ 36,911 1949-2018+ 0-71 72 5
サウジ 34,814 <1985-2018+ 0-35+ 36 Pasteur, Danish 1331,
Tokyo 172-1
5
エジプト 102,334 <1990-2018+ 0-30+ 31 4
豪州 25,500 1950s-1985? 40-70 31 Connaught (until 2010s) 4
日本 126,476 <1951-2020 0-69+ 70 Tokyo 172-1 3
中国 1,439,324 1949-2018+ 0-71 72 Shanghai D2PB302 3
マレーシア 32,366 <1980-2018+ 0-40+ 41 Tokyo 172-1 3
インドネシア 273,524 <1990-2018+ 0-30+ 31 Pasteur 1173 3
イラク 40,223 <1980-2018+ 0-40+ 41 Tokyo 172-1 2
南アフリカ 59,309 <1995-2011+ 0-25+ 26 Danish 1331 2
パキスタン 220,892 1978-2018+ 0-40 41 Danish 1331(-2007)
Tokyo172-1(2008-)
2
バングラデシュ 164,689 <1990-2018+ 0-30+ 31 Serum Inst. India (Russia)
Tokyo 172-1
1
インド 1,380,004 1951-2018+ 0-69 70 Danish 1331 1
ベトナム 94,670 30年以上前から 0

   

ベトナム(いまだに死者ゼロ)の場合は、完全な封じ込めが成功した例である。

2020/4/28 COVID-19対策、ベトナムの場合


上記のデータから見ると、COVID-19による死者数とBCG接種の関係は偶然の一致とはとても思えない。

現在、世界各地でこの研究が行われている。


なお、上表では日本の集団接種は<1951年となっているが、実際は全員接種である。

1949年にBCGワクチンによる結核予防接種が法制化されたが、30歳未満の人に毎年ツベルクリン反応検査を行い、免疫が確認されなかった場合は繰り返し接種を行っている。

2013年に接種対象者が生後1歳に達するまでに変更された。

WHOは4月29日、新型コロナウイルスに感染した子どもの中で、血管に炎症が起きて発疹や目の充血などを起こす「川崎病」に似た症例が複数報告され、各国と連携しながら注視していく考えを示した。

ヨーロッパ各国では全身の血管に炎症が起こる「川崎病」に似た症状のある子どもがこのところ相次いで確認されている。

英国のハンコック保健相は4月28日、同国で既往症のない子どもが珍しい炎症性症候群で死亡するケースが複数でており、研究者らがCOVID-19と関連があるとみていると述べた。子どもは病院に搬送されてきた時に高熱と動脈部の腫れの症状があった。

ハンコック保健相は、「死亡した何人かの子どもには既往症がなかった。COVID-19ウイルスが原因かもしれないが、検査で陽性反応がでなかった人もいる」とし、「引き続き調査を進める」と述べた。

同様の報告はスペインやベルギーなど各国で挙がっていて、フランスでは、今月半ばからこれまでに15ほどの症例の報告があった。

イタリアの専門家は、「今の段階でははっきりしていないが、どちらにせよCovid19が川崎病と同じ症状を引き起こすことはあり得る。ウィルスに感染したのをきっかけにそれを防ごうとする免疫反応として川崎病の症状が出るのかもしれない」としている。

ーーー

「川崎病」は、1967年 に小児科医の川崎富作医師が発表した、手足の指先から皮膚がむける症状を伴う小児の「急性熱性皮膚粘膜りんぱ腺症候群」が新しい病気であることがわかり、博士の名前をとって川崎病という病名にな った。

川崎病は急性熱性疾患(急性期)と冠動脈障害を主とした心疾患(後遺症)の2つの疾患をもつ。

急性期の症状は下記の通り。

  1. 5日以上続く発熱(38度以上)
  2. 発疹
  3. 両方の目が赤くなる(両側眼球結膜充血)
  4. 唇が赤くなったり、苺舌がみられる
  5. 病気の初期に手足がはれたり、手のひらや足底が赤くなったりする
    熱が下がってから、手足の指先から皮膚がむける膜様落屑(まくようらくせつ)がある
  6. 片側の首のリンパ節がはれる

重症の血管炎から後遺症として冠動脈障害や心筋梗塞を引き起こす。

冠状動脈(冠動脈)の血管壁の構造がこの反応によって破壊されてもろくなり、もろくなった部分が拡大して瘤となることがある。(冠動脈障害)
冠動脈障害が原因になって、この動脈が詰まり、心筋梗塞がおこる場合がある。
(通常、心筋梗塞は動脈硬化からくる成人病だが、こどもでも川崎病による冠動脈障害が原因となっておこる場合がある。)

この病気は世界各地で報告されていて、とくに日本人、日系アメリカ人、韓国人などアジア系の人々に多くみられる。

原因はまだ不明だが、ウイルスや細菌に感染したのをきっかけにそれを防ごうとする免疫反応がおこり、全身の中小の血管に炎症が生じるのではないかと考えられてい る。

細菌などが侵入すると、それが刺激になって白血球が増え、血管の壁(血管壁)に集まる。
この状態が血管炎で、炎症が強すぎると白血球から出る酵素によって血管壁は傷んでしまう。

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安倍晋三首相は4月27日の衆参両院の本会議で、新型コロナウイルス治療薬の候補であるRemdesivirを「間もなく薬事承認が可能となる見込みだ」と説明した。

付記 Gilead Sciencesが5月4日に承認を申請し、厚生労働省は5月7日、Remdesivirを「特例承認」した。
   厚労相は、「いつ日本に届くのか確定した情報はない」とし、「必要な量の確保に向けて努力したい」と述べた。

薬事・食品衛生審議会は、有効性や安全性についての情報は極めて限られているとし、患者に文書で同意を得ることや、腎機能や肝機能の検査を毎日行うことなどを条件とした。最大10日間投与する。 主な投与経験をもとに、現時点では原則として重症患者を対象に投与を行うこととしている。 集中治療室(ICU)に入っている患者、気管挿管されている患者、ECMOを導入している患者が対象となる。

下記のとおり、ウイルスの細胞内での遺伝子複製を阻害することで増殖を防ぐRNAポリメラーゼ阻害剤であり、本来は初期の患者に効くものである。

日本が開発した抗インフルエンザ薬「アビガン」の承認も急ぐと強調した。「希望する患者への使用をできる限り拡大し、可能な限り早期の薬事承認をすべく努力している。すでに2000例以上投与され、症状改善に効果があったと報告を受けている」と指摘した。

現在、Remdesivirが承認された国・地域は無いが、ドイツや米国では5月中旬までに承認される見通しで、厚生労働省は海外で先に承認された場合、日本での審査を短縮する「特例承認」を適用する。

特例承認は、①国民の生命及び健康に重大な影響を与える恐れがある疾病が蔓延し、緊急に使用する必要がある
②日本と同等の審査水準がある外国で承認されている――
ことを条件に、通常は1年ほどかかる審査期間を短縮して承認できる制度。

日本人における有効性及び安全性の評価を行うため、原則として日本国内で実施された臨床試験データを併せて提出することを求めている。

下記の通り、Remdesivirについては日本の医療機関も治験に参加している。

付記 米食品医薬品局は5月1日、Remdesivirを症状の重い入院患者に投与する緊急使用を許可した。
   日本で「特例承認」を適用する検討が加速する可能性があるが、日本向けの供給数量は限られているとされる。

アビガンは2014年3月24日に製造販売承認を取得したが、新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症が発生し、既存の抗インフルエンザ薬が無効又は効果不十分である場合に備え、新しいメカニズムのアビガンを使用可能な状況にしておくことは意義があると判断され、世界に先駆けて国内で承認となったもので、厳しい条件がついている。

新型コロナウイルス用としては日本で未承認だが、世界のどの国でも承認を受けていない。このため、「海外で先に承認された場合、日本での審査を短縮する特例承認」が適用されず、所定の手続きによる承認が必要となる。

厚労省は、過去の薬害エイズ事件などの経験から、正規の手続きを短縮した承認には消極的であるとされる。

付記

新型コロナウイルス感染症の治療薬について、日本医師会の有識者会議(座長=永井良三・自治医科大学長)は18日、「科学を軽視した判断は最終的に国民の健康にとって害悪」だとして、適切な臨床試験を経て承認の手続きを進めるよう求める声明を公表した。国が早期承認を目指す新型インフルエンザ治療薬「アビガン」を念頭に、拙速に特例的な承認を行うべきではないと提言した。

 声明は、科学的根拠の不十分な候補薬について「有事だから良い、ということには断じてならない」と指摘。自然に回復する患者も多いため、症例数の多い臨床試験が必要だとした。妊娠中の女性が服用して胎児に重い先天異常を引き起こしたかつてのサリドマイド薬害も引き合いに「数々の薬害事件を忘れてはならない」と強い懸念を示した。

 有識者会議のメンバーで、国立国際医療研究センターの國土典宏理事長は「既存薬ならば、データがそろうまで適応外使用も可能だ。一度承認されれば有効性の検証は難しくなる」と警鐘を鳴らす。

新型コロナウイルス感染症の治療薬について、日本医師会の有識者会議(座長=永井良三・自治医科大学長)は18日、「科学を軽視した判断は最終的に国民の健康にとって害悪」だとして、適切な臨床試験を経て承認の手続きを進めるよう求める声明を公表した。国が早期承認を目指す新型インフルエンザ治療薬「アビガン」を念頭に、拙速に特例的な承認を行うべきではないと提言した。

 声明は、科学的根拠の不十分な候補薬について「有事だから良い、ということには断じてならない」と指摘。自然に回復する患者も多いため、症例数の多い臨床試験が必要だとした。妊娠中の女性が服用して胎児に重い先天異常を引き起こしたかつてのサリドマイド薬害も引き合いに「数々の薬害事件を忘れてはならない」と強い懸念を示した。

 有識者会議のメンバーで、国立国際医療研究センターの國土典宏理事長は「既存薬ならば、データがそろうまで適応外使用も可能だ。一度承認されれば有効性の検証は難しくなる」と警鐘を鳴らす。

日本医師会の有識者会議は5月18日、「科学を軽視した判断は最終的に国民の健康にとって害悪」だとして、適切な臨床試験を経て承認の手続きを進めるよう求める声明を公表した。
「アビガン」を念頭に、拙速に特例的な承認を行うべきではないと提言した。

科学的根拠の不十分な候補薬について「有事だから良い、ということには断じてならない」と指摘。自然に回復する患者も多いため、症例数の多い臨床試験が必要だとした。

妊娠中の女性が服用して胎児に重い先天異常を引き起こしたかつてのサリドマイド薬害も引き合いに「数々の薬害事件を忘れてはならない」と強い懸念を示した。

ーーー

RemdesivirはGilead Sciencesがもともとエボラ出血熱を対象に開発を進めていた低分子化合物。

現在、治療に用いられている抗ウイルス剤はノイラミニダーゼ阻害剤(Neuraminidase inhibitors)で、増殖されたウイルスの放出を阻害して感染の拡大を防ぐ。

これに対し、Remdesivirはアビガン と同じく、ウイルスの細胞内での遺伝子複製を阻害することで増殖を防ぐRNAポリメラーゼ阻害剤である。

Remdesivirは体内で代謝を受けてその活性型GS-441524に変わる。GS-441524は、ウイルスのRNAポリメラーゼ を混乱させて、ウイルスRNA産生の減少を引き起こす。

このことから、両剤とも早期の患者に有効である。

付記 Remdesivirは静脈内投与する点滴注射薬(重症者向け)
   アビガンは錠剤(軽症者向け)

米国立衛生研究所(NIH)は2月25日にGilead Sciencesが開発した抗ウイルス薬Remdesivirの世界規模での治験計画を発表した。世界50カ所で偽薬とremdesivir を患者に投与し、治療効果を検証するもので、国立国際医療研究センター(NCGM)はこれに参加している。

中国を視察しているWHOのBruce Aylward 事務局長補は2月24日、「現時点で有効と思われる唯一の薬がある。それは remdesivirだ」と述べた。

Gilead SciencesではRemdesivir の効果についてさらに多くのデータを集めるため、これまでの治験とは別に、新たに横浜市立市民病院など国内の3つの医療機関と連携し、新型コロナウイルスの患者に薬の投与を行う治験を4月14日から始めた 。治験は、日本だけでなく、アメリカやイタリアなどの合わせて4000人を対象に、重症や中程度などのグループに分けて薬の安全性や有効性を確かめる。


ヘルスケア・ライフサイエンス系専門メディアのSTATは4月16日、COVID-19の中等度と重度の患者を対象に実施しているRemdesivirの臨床試験の結果を報じた。

University of Chicago Medicine は125名の患者(うち113名が重症)でテストをした。このうち、ほとんどが既に退院した。死亡は2名だけであったという。
対照群にプラセボ群は置いていない。

2020/4/17 Remdesivirの臨床試験で好結果 

Gilead Sciencesは4月29日、「有望なデータが得られつつある」と発表した。承認申請前の最終段階の第3相臨床試験を2つ実施しているが、そのうちの一つ。

397人の患者を対象に臨床試験を行い、投与初日から14日目の状況を調べた。
5日間投与したグループでは60%の患者が退院し、10日間の投与では52%が退院した。
治療期間が短くてすむ可能性が示されたとする。
また、症状が出てから10日以内に投与されたグループの方が、それより後に投与されたグループに比べ、症状
が改善したケースが多かった。

米国立衛生研究所(NIH)傘下の国立アレルギー・感染症研究所は4月29日、Remdesivirの臨床試験で、患者の回復スピードが31%早まったとの暫定結果が得られたと明らかにした。

新型コロナ感染症の入院患者1063人を対象に実施した臨床試験では、Remdesivirを投与した患者が11日で回復したのに対し、プラセボ(偽薬)を投与した場合は15日を要した。
死亡した人の割合を比較しても低く抑えられた。

なお、中国のチームが4月29日に、「明確な治療効果が確認できなかった」とする臨床試験の結果を英医学誌ランセットに発表した。

但し、中国の感染者が減って予定した参加人数に達せず、試験を途中で打ち切ったため有効性を評価するにはさらにデータが必要としている。投与が早いと症状の改善が望める可能性は示された。

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