2021年3月アーカイブ

アラブ首長国連邦(UAE)は4月から中国Sinopharmのワクチンの生産を開始する。

Gulf Pharmaceutical Industries(通称Julphar)は3月28日、Sinopharmのこの地域でのdistributor であるAbu DhabiのGroup 42 (通称G42:人工知能とクラウドコンピューティングのリーディングカンパニー)との間でワクチンを生産する契約を締結したと発表した。G42は以前に、この地域での供給のため本年に生産を開始すると述べていた。

SinopharmとG42がJV を設立し、Julphar に生産を委託する形となる。能力は年2億回分になる見通しで、UAEだけでなく、広く中東・アフリカへの供給を考えている。

3月28日にUAEを訪問した中国の王毅国務委員兼外相とアブドラの外務・国際協力相との合意に基づく。

JulpharはRas Al Khaimah首長国にあるUAE初の製薬会社で、インスリンを製造する。


中国はUAEの石油の大顧客であるが、パンデミックの期間に関係を深めてきた。UAEはコロナ危機の初期に武漢に機器を送った。

UAEの保健予防省は2020年12月、中国の北京生物制品研究所が開発したSinopharmの新型コロナウイルス不活化ワクチンを認可したと発表した。

UAE国内でも125の国籍の31千人のボランティアに対して行われたフェーズIII臨床試験で86%の有効性を確認。抗体陽転率は99%、中等症・重症化の予防には100%有効で、安全性に対する深刻な懸念はないとした。

UAEでは既に 感染症対策の最前線に立つ人々に対して同ワクチンの緊急接種が認可されており、感染予防や医療の従事者だけでなく、UAE副大統領兼首相・ドバイ首長をはじめとする政府要人も接種済み、と報じられている。

また、アブダビ政府は12月7日、ロシア製ワクチン「スプートニク5号」のフェーズIII臨床試験を開始すると発表した。

UAEはワクチンの国際的な流通・供給拠点を目指すとの意向も示している。

アブダビでは、アブダビ保険局が関連機関・企業とコンソーシアムを組成し、数十億回分のワクチンを世界中に供給するロジスティクス・ハブを設置すると発表 した。
アブダビ港湾公社が運営するハリーファ工業団地にある最先端の定温倉庫1万9,000平方メートルを貯蔵に使用、輸送にはスイスのスカイセルが開発する次世代の温度管理技術による医薬品コンテナを用いる 。

ドバイでも、航空貨物会社Emirates SkyCargoが、新型コロナワクチンに特化したエアカーゴ・ハブをAl Maktoum International Airportに開設する。同社の航空貨物拠点を用途転換し、医薬品の適正流通基準であるGDPコンプライアンスに準拠する4,000平方メートルの専用定温倉庫を運用する。

(JETRO ビジネス短信より)

王毅外相は、両国は共同して中東とアフリカでのパンデミックと戦うと述べた。

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王毅外相は3月22日、23日と広西チワン族自治区の桂林でロシアのセルゲイ・ラブロフ外相と会談、事実上の「中ロ準同盟」を宣言した。

その後、3月24日から30日まで、サウジアラビア、トルコ、イラン、UAE、バーレーン、オマーンと6カ国を歴訪する「中東外交」を、精力的にこなしている。

3月24日にサウジを訪問、ムハンマド皇太子と会談した。

王毅外相は 、「サウジアラビアは中国の中東地域における重要な戦略パートナーであり、両国関係を発展させることは、中国の中東政策の優先課題だ。中国はサウジアラビアの国家主権の維持、保護、民族の尊厳、安全安定を固く支持し、いかなる勢力がいかなる口実をもってしてもサウジアラビアに食指を伸ばすことに反対する」と述べ、カショギ事件で米国とサウジの関係が怪しくなるなか、サウジ側に付くことを明確にした。

イランでは、今後25年間にわたって経済など幅広い分野で協力を深めることを盛り込んだ計画に署名した。ロウハニ大統領とも会談し、イラン核合意について意見を交わした。

中東歴訪中の中国の王毅国務委員兼外相は 3月27日、訪問先のイランで25年間に及ぶ両国の包括的協力協定に署名した。

イラン外務省報道官は協定について「今後25年間の両国関係のロードマップ」と位置付け、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」へのイランの参加など、経済面を中心に多岐にわたる協力強化が含まれるとした。

王毅外相は「イランとの関係は足元の状況に左右されず、恒久的で戦略的なものだ」と述べた。

本件は、2016年にイランを訪問した中国の習近平国家主席が提案し、ロハニ大統領と合意した「全面戦略パートナーシップ共同声明」で動き出した。

その後、米国が2018年5月に核合意から離脱し、原油の禁輸を含む制裁を再発動した。

このため、各国はイランとの経済協力から手を引いたが、中国が支援に乗り出した。
中国はすでに、米による制裁で低迷するイラン経済を支えている。オマーン産などと偽りイラン原油を輸入しており、中国のイラン産原油の輸入量は今月、米政権が全面禁輸に踏み切って以降で最高となる日量90万~100万バレルに達する とされる。

今回の包括的協力協定の詳細な内容は明らかにしていないが、関係筋によると、2020年7月にNew York Times が報じた内容と大差ないという。

それによると、25年に及ぶ貿易・軍事などの包括的な内容で、中国が今後25年間で、 金融、通信(5G移動通信システムなど)、港湾、高速鉄道、ヘルスケア、ITなどで4000億ドル相当をイランに投資し、見返りとして格安で原油の供給を受けるとされる。さらに合同軍事訓練や武器の共同開発、情報共有なども含まれる。

4000億ドルのうち、2800億ドルをエネルギー部門、1200億ドルを輸送、通信、製造部門に投じるとの報道もある。

本件については、イラン内部でも外国との協力に否定的なイラン保守強硬派が反発し、アハマディネジャド前大統領は2020年6月下旬 に、協定を「疑わしい秘密取引」と一蹴し、「25年の秘密合意は認めない」と批判していた。

 

米欧の反発は必至である。

バイデン大統領は3月26日のジョンソン英首相との電話協議で、中国の「一帯一路」に対し「民主主義国家で同様のイニシアチブを作り上げ、世界中の民主主義陣営を支援する構想」について提案した。「民主主義国も同様の構想を持つべきで、支援を必要とする国を支えることを提案した」としている。

中国については、支援対象国を「借金漬け」にするとの批判が根強い。一部の国では港湾の運営にも関与し、将来、軍事的な目的に使われる恐れがある 。

バイデン大統領は米中の対立を「民主国家と専制国家の争い」と位置付けている。 構想の詳細には触れなかったが、中国に対抗し、質の高いインフラ投資を主導する狙いとみられる。

Novavaxと武田薬品は2020年8月7日、ワクチンに関する提携を発表した。

- Novavaxが新型コロナウイルス感染症ワクチンの製造技術を提供し、武田薬品が日本国内向けにワクチンを製造・流通
- NovavaxがアジュバントMatrix-Mを供給
- 日本政府は本ワクチンの製造技術移転、生産設備の整備、スケールアップに対し助成

武田薬品は Novavaxからのワクチン製造技術の移転、生産設備の整備、およびスケールアップの資金として、厚生労働省から助成金を受領する。
光工場の新型インフルエンザ製造設備を転用、年間2億5千万回分以上のワクチンの生産能力を整備し、
ワクチン原液から充填・包装まで製造する。

両社は2021年3月1日、協力関係の進展について発表した。

両社は独占ライセンス契約を締結しており、
武田薬品はNovavaxのNVX-CoV2373を日本で開発、製造、販売を行う。

武田薬品は2月24日、Novavaxから導入した新型コロナウイルスワクチンの国内臨床試験を開始したと発表した。

武田薬品は別途、Moderna のワクチンの日本でのPhase Ⅰ/Ⅱ 臨床試験開始している。

2021年前半より5000万回の接種分を輸入し、国内で供給する計画で、3月5日に Modernaワクチンについて厚生労働省に製造販売承認を申請した。

同社では今年6月までにModerna製、今夏以降にNovavax製の供給開始を目指す。

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Novavaxがワクチンについて原料不足を理由にEUとの供給契約締結を延期しているニュースで、韓国でもワクチン供給に支障が出ないか懸念の声が出始めている。

韓国は2月26日から新型コロナワクチンの接種を始めた。AstraZenecaワクチンとPfizerワクチンを使用している。

AstraZenecaワクチンはSK BioScienceが韓国で受託生産をしている。

韓国における今年下半期のワクチン接種計画で、Novavaxは非常に重要視されてきた。韓国政府が確保している7900万人分のワクチンのうち、Novavaxは2000万人分を占めている。

NovavaxワクチンはSK BioScienceが技術移転契約を締結し、安東工場で製造される予定で、独自で製造量を決め韓国国内に供給することが可能となっている。

EUが域内で製造したAstraZeneca ワクチンの輸出を規制し、最近はインドもSerum Institute of India製のAstraZenecaワクチンの輸出を止めた。Pfizerのワクチン供給も契約より遅れている 。
このため、韓国にとってNovavaxワクチンの重要性は高まっており、「原料不足」がいつまで続くのか、懸念されている。

原子力規制委員会は3月24日、柏崎刈羽原子力発電所でテロ対策に不備があったとして、東京電力に核燃料の移動を禁止するなどの是正措置を命じる行政処分を行う方針を決めた。
正式に決定すると、事態が改善されたと判断されるまでは再稼働ができない状態が続くことにな る。

付記

原子力規制委員会は4月14日、柏崎刈羽原発のテロ対策の不備を問題視し、原発再稼働に必要な核燃料の移動や装塡を禁じる行政処分の是正措置命令を決定した。
東電に対し原因究明と再発防止策を盛り込んだ報告書を9月までに提出するよう求めている。

付記

この問題を受け、原子力規制委員会が全国の原発を調べたところ、3月に東京電力の福島第二原発でもテロ対策上の不備が相次いで確認された。

福島第二原発の1号機と4号機で、防護区域につながっている通路に管理されていない扉があることが確認され、東京電力は扉を閉鎖する措置をとった。
また福島第二原発では、防護区域の出入り口で金属探知機による点検などの手続きが十分行われていなかった。

更に中部電力浜岡原発では関連会社従業員が手続きなしで原発内に入ったほか、四国電力伊方原発では周辺防護区域に至る場所で閉鎖措置が不十分な開口部があった。



柏崎刈羽原発については昨年来、大きな問題が相次いで発生している。(詳細後記)

2020年9月に社員が中央制御室に不正に入室する問題が発生した。

東電は7号機の新規制基準に基づく安全対策工事が2021年1月12日に完了したと発表したが、その後、施行ミスや未完のものが次々と見つかり、2月26日に検査日程を「未完」と変更した。他の箇所でも問題がないか点検する。

さらに、2020年3月以降、テロリストなどの侵入を検知する複数の設備が壊れ、その後の対策も十分機能していなかったことが明らかになった

原子力規制委員会は3月16日、柏崎刈羽原発の核物質防護設備の機能一部喪失について、安全重要度評価 を「赤」とし、3月23日に「対応区分:第4区分」として扱うことを伝えた。

安全重要度評価
(原子力施設の安全確保に対する劣化程度)
対応区分
(検査指摘事項の重要度評価及び安全実績指標の分類に応じて)


不良
 


安全確保の機能又は性能への影響が大きい水準 第5
区分
監視領域における活動目的を満足していないため、プラントの運転が許容されない状態
安全確保の機能または性能への影響があり、安全裕度の低下が大きい水準 第4
区分
各監視領域における活動目的は満足しているが、事業者が行う安全活動に長期間にわたるまたは重大な劣化がある状態
安全確保の機能または性能への影響があり、安全裕度の低下は小さいものの、規制関与の下で改善を図るべき水準 第3
区分
各監視領域における活動目的は満足しているが、事業者が行う安全活動に中程度の劣化がある状態
安全確保の機能または性能への影響があるが、限定的かつ極めて小さなものであり、事業者の改善措置活動により改善が見込める水準 第2
区分
各監視領域における活動目的は満足しているが、事業者が行う安全活動に軽微な劣化がある状態
第1
区分
各監視領域における活動目的は満足しており、事業者の自律的な改善が見込める状態


また、
同発電所における一連の核物質防護事案について、直接原因や根本的な原因の特定、安全文化および核セキュリティ文化要素の劣化兆候(第3者により実施された評価を含む)を特定し、その内容を踏まえて、改善措置活動の計画を定め、本年9月23日迄に報告するよう指示した。

核セキュリティー分野で「赤」という判定は、日本で初めてというだけでなく、同種の検査制度を20年にわたって運用しているアメリカでも近年例がない という。
東電の核セキュリティーは最低レベルであり、原子力発電事業者としての適格性が問われる。

原子力規制委員会はテロ対策に大きな問題があるとして、3月24日に行政処分について検討が行われた。

更田委員長は、「テロの対象ともなる核燃料を移動させないことが現状では核物質の防護につながる」などとして原子炉に核燃料を入れたり、新しい燃料を運び込んだりといった核燃料の移動を禁止する是正命令を提案し 、委員からは「いまは応急措置が取られているだけで、万全な体制とは言えず、核燃料の移動禁止などは必要。問題の根は深い」などの意見が出され、この処分案を承認した。

規制委員会では今後、内容を詰めて東京電力に処分案を示し、意見を聞いたうえで正式に是正措置の行政処分が決まる が、改善されたと判断されるまでは柏崎刈羽原発は再稼働ができない状態が続くことにな る。

ーーー

1)不正入室問題

2020年9月20日朝、中央制御室員Aが同僚の中央制御室員Bのロッカー(無施錠)よりIDカードを無断で持ち出し 、Bを名乗って中央制御室入域を試みた。委託警備員及び社員警備員Cは違和感を覚えつつも、入域を止めなかった。
社員警備員Cの裁量で、BのIDカードにAの識別情報を登録し、AはBのIDカードを不正に使用し て周辺防護区域及び防護区域を通過し中央制御室まで入域 した。


詳細は発表されていないが、IDカードには個人を識別する情報が登録されており、本人ではないため入れない。しかし、本人だと主張したため、現場にある識別情報登録装置 で、本人の識別情報に入れ替え、入場させた模様。中央制御室に入れる社員は限られており、警備員が本人かどうか分からないだろうか。 そもそも、現場で識別情報を変更できるなら、IDカードの意味はないことになる。

識別情報を変更したため、翌日にBが入域の際、個人を特定する認証にエラーが発生、AのIDカード不正使用が判明した 。


本件は直ちに原子力規制庁に報告したが、原子力規制庁は安全重要度評価は「白」、「対応区分:第2区分」とした。

「赤」とされた検知設備の機能喪失はテロリストの入域の可能性の問題であるのに対し、こちらは実際に他人のIDカードで中央制御室に入っており、はるかに重大である。規制庁の「白」評価はおかしい。

本件について、東電の説明は次の通り。

原因  
 ・核セキュリティに関する重要性の認識不足   
 ・IDカードの保管管理が十分でない。
 ・個人認証エラー時の対応の不十分

背後要因
 ・物質防護のための手段の不足:人定確認のルール不備、設備構成 
 ・核物質防護の重要性の理解不足
 ・厳格な警備業務を行い難い風土

東電自身が核セキュリティに関する重要性の認識不足を認めたというのは恐ろしいことで、核物質を扱う資格がない。他の原発はどうなのか、東電だけの問題とも思えない。

2) 未完工事

東電は7号機の新規制基準に基づく安全対策工事が2021年1月12日に完了したと発表した。

その後、設備の健全性を確認する検査を進めていたが、1月27日に6、7号機中央制御室用の陽圧化空調機が保管されている区域のダンパーの設置工事が完了していないことを確認した。
同様のことが無いかを改めて徹底して確認したところ、火災感知器の設置工事が一部未完了であること、原子炉建屋地下1階の配管床貫通部の止水工事が一部未完了であることが判明した。

未完了と分かった4件には、設計側と工事側の連携の不十分さが共通すると説明している。(福島第一でも昨年来、地震計の故障を放置しており、先月の地震を観測できなかった。)

東電は2月26日、7号機の再稼働に必要な一連の検査の終了時期を従来の6月から「未定」とすると発表した。検査の終了時期が見通せなくなった。

3) 侵入検知装置の不備

2021年1月27日、協力企業が侵入検知装置を誤って損傷させる事案が発生し、同日、原子力規制庁に報告した。

2月12日 に本件侵入検知設備の機能の一部が復旧した状況を報告、その際、他の侵入検知設備の故障状況を問われ、12箇所の故障があり、代替措置を講じていることを説明。

その後、他の侵入検知設備3 箇所の故障を加えた15箇所について進捗状況に関する資料を原子力規制庁に提出したが、規制庁から15箇所の内10箇所で代替措置が不十分な状態で30日以上経過しているという趣旨の指摘があった。

規制庁の聞き取りに対して現場の担当者は代替措置が不十分だと認識していたと答えたというが、発電所の上司には共有されず、本社にも報告されなかった。

2月21日から3月4日まで原子力規制庁による現地検査が行われ、以下の点に関する指摘を受けた。

東電の代替措置が、2020年3月以降、複数箇所で実効性があるとはいえず、不正な侵入を検知できない可能性がある状態が、長期間にわたり改善されていない 。

社員警備員は代替措置に実効性がないことを認識していたにもかかわらず、改善していなかった 。

その結果、不正な侵入を30日を超える期間で検知できない状態になっていた可能性があること

以上のような状態を、組織として十分に把握できていない状況にあること

2018年1月から2020年3月までの期間においても、侵入検知設備の機能の一部喪失が複数箇所発生し、復旧するまでに長期間を要していた 。

東電の報告を受けて規制庁が問題を認識、立ち入り調査で確認して分かった事態であり、それがなければ、今もテロリストが侵入できる状態であったことになる。

原子力規制委員会は3月16日、「柏崎刈羽原子力発電所は、組織的な管理機能が低下しており、防護措置の有効性を長期にわたり適切に把握しておらず、核物質防護上重大な事態になり得る状況にあった」として、暫定評価として「重要度評価:赤」の通知を した。

3月5日 に、故障設備の修理・補修により、全ての故障箇所が復旧していることを確認した旨、原子力規制庁へ報告 した。
当該箇所における不正侵入は確認されていない。 侵入検知設備の故障等が新たに発生した場合において、実効性がある代替措置が実施できる体制を構築済。

ーーー

原子力規制委員会は2020年9月23日、柏崎刈羽6、7号機の再稼働に向けた審査で、東電が保安規定に盛り込んだ安全に対する基本姿勢を了承した。 福島第一原発事故起こした当事者に原発を再び動かす「適格性」が担保されたと認めた。

今回の問題を受け、原子力規制委員会は1年以上かけて追加検査して原因を究明する。

原発を運転する「適格性」も審査し直す必要がある。更田委員長も「(原子炉設置変更許可取り消しの)議論が出てくるということは否定しない」と述べている。

「いま問われているのは東京電力の核物質防護そのものへの姿勢で懸念が消えておらず、少なくとも柏崎刈羽原発では、核燃料の移動をする資格がない疑いがあると思っている。原子力規制委員会の発足後、検査で見つかった事例の中でいちばん重いと言っていいと思う 。」 

今後については「この事案を重大だと思っているからこそ、詳細や背景など、いま明らかにできることは明らかにする必要があり、東京電力にはしっかりした分析を望みたいし、私たちも拙速な判断は避け、しっかりした検査を加えていきたい」と述べ、東京電力による原因分析と、その後の検査に1年以上かかるとする見通しを改めて示した。

仮に原子力規制委員会が再稼働を認めたとしても、地元の了承が得られるとはとても思えない。

米半導体製造装置大手Applied Materials, Inc.は3月22日、旧日立製作所系の同業KOKUSAI ELECTRICの買収計画について、期限の3月19日までに中国の規制当局から承認を得られていないため破談になった 模様だと発表した。3月26日までに承認を確認できなければ、正式に断念し、KKRに解約手数料1億5400万ドルを支払う。

付記 3月29日、断念を発表した。

KOKUSAI ELECTRICは日立国際電気から独立し、2018年6月にKKRファンドの下で半導体製造装置メーカーとしてスタートした。バッチ式プロセス装置製造を得意としており、Applied Materialsは、同社が提供する枚葉式処理装置ラインアップを補完するものと期待していた。

中国の不承認の背後には米国と中国の半導体を巡る対立があるとみられる。

ーーー

日立製作所は、中核事業に経営資源を集中する一方、非中核事業は売却し、収益率を高める選択と集中を徹底するため、黒字の連結子会社 日立国際電気の売却を決めた。

日立国際電気は、日立グループ内で無線通信機器や放送・映像機器の製造販売を手がけていた国際電気・日立電子・八木アンテナの3社が2000年10月1日に合併して誕生した。(八木アンテナはその後、同社の100%子会社として分社化し、現在、日立国際八木ソリューションズと改称している。)

2009年には日立グループの総合力強化と日立国際電気のグローバルな事業拡大をめざし、日立が公開買付により連結子会社とした。

事業は下記の通り。

  • 映像・通信ソリューションセグメント
  • 成膜プロセスソリューションセグメント (半導体製造装置)

日立製作所は2017年4月26日、KKRの所有するHKEホールディングス合同会社及び日本産業パートナーズが出資するHVJホールディングスとの間で、下記の契約を締結した。

①HKEが日立国際電気を完全子会社とする(上場廃止)

②そのうえで、日立国際電気を分割し、
   a. 成膜プロセスソリューション事業を独立させてHKEが吸収
   b. 映像・通信ソリューション事業が残る日立国際電気に、日立製作所とHVJが各 20%の出資を行う。

2017/5/3 日立、子会社の日立国際電気を売却

KKR傘下のHKEホールディングスは2018年6月1日に成膜ソリューション事業(半導体製造装置)を独立させ、㈱KOKUSAI ELECTRICとした。

バッチプロセス装置 (高品質成膜・高性能半導体製造装置など)
枚葉プロセス装置
薄膜形成プロセス技術

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Applied Materialsは2019年7月1日、KKRが保有するKOKUSAI ELECTRICの全発行済み株式を22億ドルで取得する最終合意に達したことを発表した。

KOKUSAI ELECTRIC は生産効率の高いバッチ式プロセス装置とサービスで業界をリードしており、メモリ、ファウンドリ、ロジック分野の顧客に提供している。
世界トップレベルの成膜技術を生かした半導体製造装置を生産し、世界のトップメーカーに製品とサービスを納入し、半導体の高機能化、高性能化を支えている。
これらの装置は、Applied Materialsが提供する業界トップの枚葉式処理装置ラインアップを補完するもと期待している。

当初は1年以内の手続き完了をめざしていたが、2020年6月末までに許可が出なかったため、一旦2020年9月末まで期限を延ばした。

更に中国当局からの買収承認を得るのに時間を要しているため、2020年12月30日に延ばした。

KOKUSAI ELECTRIC 半導体製造装置の需要改善と、統合後の新会社の業績見通しを反映していると説明した。
また、

中国政府がまだゴーサインを出しておらず、最後の関門となっている。

しかし、買収完了の期限だった3月19日までに中国当局の承認が得られず「買収契約が解除された可能性がある」と発表した。
契約解除料の支払期限である3月26日までに改めて承認が確認できなければ、買収は破談となり、KKRに解約手数料1億5400万ドルを支払う。

現在、欧米で承認されているPfizer/BioNTech と ModernaのワクチンはともにmRNAワクチンである。

Developer/manufacturer Platform Type doses Timing
 
days
Route Phase 承認
Pfizer / BioNTech
+ Fosun Pharma
RNA BNT162 (3 LNP-mRNAs ) 2 0, 28 IM

UK 2020/12/2
FDA 2020/12/11
EU 2020/12/21
WHO 2020/12/31

Moderna / NIAID RNA mRNA -1273 2 0, 28 IM

FDA 2020/12/17
EU 2021/1/6


mRNAワクチンは、Katalin KarikoとDrew Weissmanの研究が基になっている
発表当時、ほとんど無視されていた論文に注目した2人のうちの1人がModernaの創業者
Derrick Rossiである。(もう一人はBioNTechのUğur Şahin社長で、Katalin Karikoは現在、同社のSenior Vice President である。)

Derrick Rossiは カナダのトロントで生まれた。トロント大学で分子遺伝学を学び、 ヘルシンキ大学で博士号をとり、2003年から2007年までスタンフォード大でポスドクを勤めた。

2006年に山中伸弥博士がマウスのiPS細胞作製成功を発表した。

Rossiによると、「山中伸弥教授によるiPS細胞の素晴らしい発見がアイデアの発端になっています。2006年にiPS細胞の論文が発表されたときにすぐに目を通して、ほかのすべての科学者と同様に、感銘を受けました 。ただ、山中氏は当時『山中4因子』をレトロウイルスで運ぶことでiPS細胞を作製していました。実際の治療などに用いられるには、このウイルスを取り除かなければならなかった。 」

当初、iPS細胞は 繊維芽細胞に4因子(Oct3/4、Sox2、Klf4、c-Myc)を、それぞれレトロウイルスやレンチウイルスなどのウイルスベクターで導入することで樹立された。

しかし、再生医療への応用に際して、ゲノムへのウイルスベクター挿入に起因する腫瘍形成が危惧されていた。またウイルスベクターは実験のたびに厳密に管理された実験室で作成する必要があり、iPS細胞技術の普及の障害となった。

Rossiは2007年にHarvard Medical School の助教授に就任、自分のラボを持ったが、iPS細胞を、ウイルスを使わずにmRNAを使って作成することを考えた。4因子をウイルスに運ばせるのではなく、4因子の設計図であるmRNAを導入し、細胞内で4因子を作成するものである。

しかし、mRNAを入れた細胞は死に、うまくいかなかった。免疫系が異物と認識し、炎症反応を引き起こすためで、Katalin Kariko とDrew Weissmanが苦労した点である

mRNAは、「アデニンA」「ウラシルU」「シトシンC」「グアニンG」という4種類の塩基からなる。
Katalin KarikoとDrew Weissmanは、その一つをわずかに細工すること(RNA修飾)で免疫系をすり抜け、炎症を回避し、細胞にたんぱく質を作らせる手法を考えた。

ウラシルから誘導されるヌクレオシドはウリジンであるが、ウリジンをシュードウリジン(Ψ)などに置き換えると、mRNAの二次構造が変化し、効果的な翻訳を可能にしながら、自然免疫系による認識を低下させる。

2021/2/3 今年のノーベル医学・生理学賞は確定? mRNAワクチンの開発

Rossiはさまざまな方法を探る中でKarikoたちの論文に行き着き、実際にKarikoらが発表した方法に基づいて修飾したmRNAを使 い、2009年にmRNAによるiPS細胞の作成に成功した。

山中教授のグループはRossiの成功前の2008年10月10日に、ウイルスを使わずiPS細胞樹立に成功したと発表している。
マウス胎仔線維芽細胞に、3因子(Oct3/4、Klf4、Sox2)をこの順で搭載したプラスミドと、c-Mycのみを搭載したプラスミドを同時に導入し、iPS細胞を樹立した。

Rossiは同僚のTimothy Springerに連絡、SpringerはMIT最高位のInstitute Professorの一人のRobert Langerにコンタクトした。

2人から説明を聞いたRobert Langerは大発明だと考えた。RNAの設計を変えれば、細胞内で多種多様なタンパク質を作り出せる、これを利用すれば新しい医薬品、新しいワクチンが作れると伝えた。

RossiはFlagship VenturesのNoubar Afeyanに説明、数カ月後にRossi、Springer、Langer、Afeyan等が新会社Moderna を設立した。

社名のModerna は発明の基であるmodified mRNAから採った。

RossiのModernaは、iPSをつくるためにウイルスを除去する構想から生まれ、コロナウイルスのワクチンを生んだ。Rossiは当時を振り返り、「今と同じように『ウイルス』がキーワードだった」と述べている。

山中教授は述べている。

モデルナは2010年に、デリック・ロッシという幹細胞研究者が持つ技術を医療に役立てるために誕生したベンチャー企業です。その技術は、メッセンジャーRNAを使ってiPS細胞を樹立するというもので、私たちが10年前から取り組んでいた研究と同種のものでした。

モデルナの研究者は、研究開発をiPS細胞のステージから大きく広げました。だからこそ迅速なワクチンの開発に成功したわけです。

アメリカでは、このように大学から企業へ橋渡しする役割をベンチャーが担う形で、医療応用が次々と実現しています。

https://events.z-holdings.co.jp/tougou/futurevision/031601/

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Karikoは、Derrick Rossi が山中教授のiPS発明からmRNA利用を思いつき、Karikoらの論文を見付けて成功したことに触れ、「もし山中教授がいなければ、もしiPS細胞の発見がなければ、私たちの論文が 『発見』されることはなかったかもしれません」と述べている。

Karikoの発明がなければ、mRNAワクチンはなかったかも知れない。

Derrick Rossiは、彼ら(Katalin KarikoとDrew Weissman)の論文は「根底をくつがえす」もので、ノーベル化学賞に匹敵すると述べている。

EUの欧州委員会は3月24日、1月末に導入した新型コロナウイルスワクチンの輸出規制の強化方針を発表した。

ワクチンが契約通り EUに供給されることを狙い、EUへの輸出を制限しているワクチン生産国や、ワクチン接種率でEUに先行する国への出荷を停止できるようにする。

3月25日のオンラインでのEU首脳会議の議題になる見込みで、欧州委の提案は(人口を考慮した)「特定多数」が反対しない限り、導入されるが、特定多数が反対する可能性は低い。

付記

この時、EUの高官は、「これはEU対英国の話ではない。AstraZenecaとの問題だ」と話していた。(下記)

欧州委員会は4月26日、ワクチンを契約通りに供給していないとしてAstraZenecaを提訴した。EUの27か国全部がこれを支持している。

最大4億回分を購入する契約を結んでいたが、4~6月期は1億8千万回の予定が7千万回になる見通し。

AstraZenecaは努力義務だと反論している。

付記

欧州委員会がAstraZenecaを訴えていた裁判でブリュッセル第一審裁判所は6月18日、AstraZenecaに9月までに8020万回分を納入するよう命じた。欧州委は6月までに1億2000万回分を求めていた。

3月までに3020万回分を納入しているが、7月26日までに1500万回分、8月23日間までに2000万回分、9月27日までに1500万回分を納入するよう命じた。納期通りに納入できない場合、1回分当たり10ユーロの罰金を払う。

ーーー

EUは1月29日、輸出の透明性を高めるためとして、域内の工場で生産されたワクチンを輸出する際、事前申告と許可を必要とする措置を導入すると発表した。

3月末までの措置としていた。

2021/1/31 EU、ワクチンの輸出規制 

イタリア政府は3月4日、イタリア国内で製造されたAstraZenecaのワクチンのオーストラリアへの輸出を差し止めたと発表した。

欧州委員会は3月11日、新型コロナウイルスワクチンの輸出制限措置を6月まで延長すると発表した。

欧州委によるとEUはバルカン諸国やアフリカへの支援用も含め、最大26億回分のワクチンを契約しているが、EUへのワクチン供給が遅れているため延長に踏み切った。

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今回は「相互関係」と「釣り合い」を重視し規制を厳格化する。

相手国のワクチンや原料のEU向け輸出制限の有無に加え、接種率や感染状況の比較を承認可否の判断基準に加える。
EUへの輸出を制限しているワクチン生産国や、ワクチン接種率でEUに先行する国への出荷を停止できるようにする。

今回の措置は、英製薬大手AstraZenecaからの大幅供給減でEUの接種計画に遅れが生じていることによる。特に、オランダのLeidenにあるAstraZenecaの下請けの Halix で生産されたワクチンについて英国がEUに供給しないことを問題視している。

EUは3月17日に、不足しているコロナワクチンを域内市民向けに確保するため、英国への輸出を禁止する可能性を示唆した。これまでにコロナワクチンを接種した人数の人口比は、英国の方がEU加盟国と比べて高い。

EU当局者は3月21日、オランダで生産したAstraZenecaのワクチンについて、英国からの輸出要請を拒絶していることを明らかにした。Halixが生産したものはEUに届けられる必要があるとしている。

AstraZenecaはHalixが生産するワクチンについてEUに承認を申請しておらず、EU域内で使用できないが、EU当局によると承認手続きを進めているという。

EUのフォンデアライエン欧州委員長は、AstraZenecaのワクチンをめぐり「われわれには輸出を禁じる選択肢がある」と語り、ワクチンをEUに優先供給するよう同社に警告した。「他国への供給を始める前にまず欧州との契約を履行せよというのがメッセージだ」とも強調した。

EUは先進国唯一の大規模な輸出元であると強調。「(輸出は)双方向であるべきだ。EU市民への適時で十分なワクチン供給を確保しなければならない」と訴えた。

英国はEUの「ワクチンナショナリズム」をけん制しており、EUを離脱した英国とEUの関係が緊迫化する恐れがある。

EUでは今回のワクチン輸出承認制度は特定の国を対象にしているわけではないとしている。

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EUの高官は、「これはEU対英国の話ではない。AstraZenecaとの問題だ」と話した。

AstraZenecaが英国にワクチンを供給し続けた一方で、EUとの約束の大半を反故にしていたとしている。

これについてAstraZenecaは、EUとの契約では「適切な範囲で最善を尽くす」ことが決められており、製造面での困難に直面しながらも、最善を尽くしているとしている。

欧州委員会がワクチン供給と製造能力について判断を誤ったという批判がEU内外から出ている。

欧州委は世界最大のワクチン輸出者という評判を得るため、たった6週間で31カ国に4000万回分のワクチンを輸出した。この恩恵に最も預かっているのが英国で、この期間に1000万回分を受け取ったとされる。

JCRファーマは3月23日、遺伝子組換えムコ多糖症II型治療剤「イズカーゴ®点滴静注用10mg」(JR-141の製造販売承認を取得したと発表した。

ライソゾーム病の一種であるムコ多糖症II型(ハンター症候群)に対して、全身症状だけでなく 、血液脳関門を通過し脳実質細胞への直接のを発揮する初めての医薬品で ある。

独自の血液脳関門通過技術J-Brain Cargo®を適用した世界でめての医薬品で 、ムコ多糖症IIおいて、点滴静注により血液脳関門通過を可能にした治療酵素製剤としても、世界で初めての医薬品で ある。

血液と脳(そして脊髄を含む中枢神経系)の組織液との間の血液脳関門は酵素タンパクのような高分子化合物は通さない。
J-Brain Cargoを使用することで、薬剤を脳に届けることに成功した。

脳実質細胞への直接の作用により、中枢神経症状のまたは進行の抑制が期待でき るとしている。

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ライソゾーム病は難病の一つ。

ライソムは細胞の中の「ごみ処理工場」のような役割をしている細胞内小器官で細胞の内外の老廃物がこのライソムにあ「酵素で分解され代謝される。
それらの酵素の一つが生まれつき欠損しているかその働きが低下していることによってその酵素によって分解されるべき物質が老廃物として体内に蓄積しさまざまな症状を引き起こすのがライソゾーム病である。

ハン症候群は、「イズロン酸-2-スルファゼ」と呼ばれる酵素が生まれつき欠損しているかその働きが低下していることによって発症するX染色体連鎖劣性遺伝性疾患
成長するに伴い、さまざまな臓器や組織が次第に損なわれていく進行性の病気で「関節拘縮「中枢神経障害「骨変形「肝臓や脾臓の 肥大「呼吸障害「心臓弁膜症などがあらわれる。

患者数は世界で約7800人、日本で約250人。重症型が2/3で、知的障害を伴う。

従来の酵素補充療法は、血液脳関門により酵素が脳内に移行せず、中枢神経系に作用しない。
このため、ハンター症候群の約70%に認められる精神発達遅延や神経退行症状に対する治療効果は期待できない。

中枢神経症状の改善には、医薬品の有効成分を中枢神経に届ける高度な技術開発が求められている。

JCRは、血液脳関門を通過させて脳内に薬剤を届けるために、JCR独自技術である血液脳関門通過技術 J-Brain Cargo®の開発を進めてきた。

今回、J-Brain Cargo®を適用した世界でめての医薬品開発した。

仕組みは次の通り。

『鉄』は生きていために不可欠な微量金属だが、単体では反応性に富み、有害である。このため、血液中では鉄の輸送タンパクであるトランスフェリンと結合し安定することで、毒性を抑えている。
全ての体細胞におけるトランスフェリン-鉄複合体の取り込みは,トランスフェリン受容体(TfR)を介して行われている。

J-Brain Cargoは、ヒトトランスフェリン受容体を特異的に認識するヒト化抗体である。

ハン症候群は、「イズロン酸-2-スルファゼ」が欠損しているため、ヒトイズロン酸-2-スルファターゼの遺伝子組換え融合タンパク質を補填するが、そのままでは血液脳関門を通過 しないため、これとJ-Brain Cargoを結合する。

薬剤と結合したJ-Brain Cargoはトランスフェリン受容体(TfR)を介して脳に取り込まれるため、ヒトイズロン酸-2-スルファターゼの遺伝子組換え融合タンパク質も一緒に脳に取り込まれ、不足分が補填される。

J-Brain Cargo®は、血液脳関門を通過するだけではなく、これまで薬を届けることが難しいとされていた骨格筋にも効果的に薬を届けられる特徴を持っている。

JR-141は現在、ブラジルにおいて製造販売承認を申請中で、また、米国・ブラジル・欧州(イギリス、ドイツ、フランス)におけるグローバル臨床第3相試験の開始に向けた準備を進めて いる。

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ライソゾーム病関連でのJ-Brain Cargo利用での開発状況は下記の通り。ライソゾーム病関連以外でも開発している。

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JCRファーマは日本でAstraZenecaのワクチンを製造受託している。

既存設備を利用して原液を製造しているが、3月4日に新工場を神戸市に建設すると発表した。7月に着工し、2022年10月の完成を予定している。

 

第一三共は3月22日、新型コロナウイルスワクチンの臨床試験(治験)を始めたと発表した。日本人152人を対象として、安全性や有効性を確認する初期段階の治験である。
同社のワクチンはPfizerやModernaと同様、mRNAを使うものである。

mRNAは体内に入ると分解されてしまうため、脂質の膜にくるんでワクチンとして投与するが、第一三共は独自技術を用いた材料を膜に使用し、接種後の炎症が起きにくくなることが期待できるという。

KMバイオロジクスも同日、開発中のワクチンの第I/II相臨床試験(治験)を始めたと発表した。毒性をなくしたウイルスを用いる「不活化ワクチン」で、同タイプの新型コロナウイルスワクチンの治験は国内初となる。

国産ワクチンでは他に、アンジェスと塩野義製薬が臨床試験を行っている。

KMバイオロジクス 独自ワクチン   前臨床段階 2021年3月21日 第I/II相治験開始 
国立感染症研究所、東京大学医科学研究所、医薬基盤・健康・栄養研究所との協業による不活化ワクチンの開発
2020年度内の国内臨床試験開始を目標
アンジェス
 
Phase Ⅱ/Ⅲ段階

ワクチンの実生産(大規模生産)体制の早期構築を 図るための事業
2020/6/26 アンジェスのコロナワクチン、大阪市大病院で治験へ

タカラバイオがその製造を担い、AGC Biologics社が中間体の分担製造、Cytivaが精製用資材の優先的な供給で、更にシオノギファーマが中間体の分担製造で協力体制に加わった。

塩野義製薬
 
組換えタンパクワクチン感染研/UMNフ ァーマ/塩野PhaseⅠ/ Ⅱ段階

遺伝子組換え技術を用いて培養細胞よりコロナウイルスのタンパク質抗原を製造しコロナウイルスタンパク質抗原を人に投与するための注射剤

付記 2022/11/26 塩野義製薬、COVID-19ワクチンS-268019の国内における製造販売承認申請 

第一三共

メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンDS-5670  前臨床段階 
  2021年3月22日、国内で152人を対象に初期段階の治験開始


付記 2023/1/13 追加免疫の国内製造販売承認申請(下記)

第一三共バイオテックの工場での生産体制整備

IDファーマ/感染 アイロムグループのIDファーマ  前臨床段階
コロナウイルスの遺伝情報を
持ったセンダイウイルス(仙台の東北大で発見)投与するワクチ人体の中コロナウイルスのタンパク質(抗原)が合成される

GMPに準拠したベクター製造施設・細胞培養加工施設(CPC)を保有

Medicago
 
海外生産
田辺三菱製薬のカナダ子会社

2020/7/17 田辺三菱製薬、カナダ子会社の新型コロナウイルスワクチンの第1相臨床試験開始を発表


最も進んでいるのはアンジェスのワクチンである。

同社では当初、2021年春の臨床試験終了、2021年中の実用化を予定していた。しかし、大規模な追加治験を求められたことから、実用化時期も2022年以降にずれ込む。

付記

第一三共 新型コロナに対する国産mRNAワクチン「DS-5670」を承認申請
第一三共は2023年1月13日、新型コロナに対するmRNAワクチン「DS-5670」について、18歳以上の追加免疫用として承認申請したと発表した。
自社創製品で、冷蔵温度帯(2~8度)で流通可能なことが特長のひとつとなる。

国産の新型コロナワクチンの申請は塩野義製薬の「S-268019」(同)に続く2剤目、国産mRNAワクチンの申請は初めて。

同社は今回、通常承認の手続きで申請し、承認取得後に初回免疫用やオミクロン株対応2価ワクチン、小児適応などの一変申請を行い、新たな適応を追加していく方針。

DS-5670の生産は埼玉県北本市の子会社 第一三共バイオテックの工場で生産する。

ーーー

日本での医薬品承認手続きは下記の通り。

1)通常の承認制度

臨床試験は、比較的少人数の健康な人を対象とする第Ⅰ相試験、少数の患者を対象とする第Ⅱ相試験、多数の患者を対象とする第Ⅲ相試験という流れで行わう。

2) 特例承認制度

国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある疾病のまん延等を防止するために緊急に使用されることが必要な医薬品で、当該医薬品の使用以外に適当な方法がない場合、特例的に承認する。但し、我が国と同等の水準にあると認められる国で承認されたもの。

現状は下記に限る。
対象品目:
「新型インフルエンザのワクチン」と
      「新型コロナウイルス感染症にかかる医薬品」 (レムデシビルを見越して追加)
我国と同等の水準の国:「米国、英国、カナダ、ドイツ、フランス」のみ

レムデシビルとPfiazerのワクチンはこれにより承認された。

3) 条件付き早期承認制度

有効な治療方法が乏しく患者数が少ない疾患等を対象とする医薬品で、治験実施が困難、あるいは治験の実施にかなりの長期間を要する場合、検証的臨床試験の成績を求めることなく、市販後に必要な調査等を実施することを承認条件として当該医薬品の製造販売承認を行う制度。

①適応疾病が重篤であること、
②既存の治療法がないこと等により、医療上の有用性が高いこと、
③検証的臨床試験の実施が困難であること、
④検証的臨床試験以外の臨床試験等の成績により、一定の有効性、安全性が示されると判断されること

米国には、流行が終わるまでの「緊急使用許可」制度があるが、日本にはない。(米国での緊急使用許可も日本の特例承認制度の対象にはなる。)

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日本では新型コロナの患者が少なく、海外と同じ数万人単位の治験は難しい。

ワクチン接種グループと偽薬(placebo)接種グループで感染者を比較するが、患者が少ない場合、両者の差が少なく、ワクチンの有効性が判断できない。

このためアンジェスでは、「検証的臨床試験の実施が困難であること」を理由に、数百人規模の治験ですむ条件付き早期承認を2021年春から夏ごろをメドに取得する狙いであった。

しかし医薬品医療機器総合機構(PMDA)が2020年9月に公表した新型コロナワクチンの評価方針では、治験を「適切に評価できる規模」とする条件をつけた。

試験の規模に関する考察
ワクチンの有効性を評価する試験では、感染症の発生率、臨床的エンドポイント、発症予防に相関する免疫反応(存在する場合)等に基づいて、適切に評価できる被験者数を設定すべきである。発症予防効果をエンドポイントとする有効性試験は、通常多数の被験者数が必要となる。

「感染症予防ワクチンの臨床試験ガイドライン」について

この結果、アンジェスが狙った、数百人規模での治験による条件付き早期承認は無理となった。

日本で数万人単位の治験を進めるのは難しく、海外治験が必要となるが、ワクチン評価指標では「1年の観察期間が必要」と定められており、治験終了は2022年以降になる。

ーーー

なお、世界的にワクチンの接種が進むにつれ、大規模治験で「未接種者」の確保が難しくなりつつある。また、感染が広がるなかで偽薬を投与することは倫理的に問題となる。

このため、新しい評価方法が必要となる。

各国の薬事規制当局で作る国際組織のICMRA(International Coalition of Medicines Regulatory Authorities)では、接種後の血液中の抗体の量や免疫反応を比較する試験を行う等の代替案を提示した。

VWは3月15日に"Power Day" を開催、2030年までのEVなどの電動車向けバッテリーとその充電に関する技術ロードマップを発表した。

同社は電気自動車(EV)シフトを一段と加速する。2025年に世界の新車販売の2割をEVにし、2030年に5割、2035年には大半をEVにするロードマップを示した。欧州では2030年に6割を目指す。

本年のEV販売目標を100万台とし、
遅くとも2025年までに世界EV市場のリーダーになることを目指すとした。

最重要部品となるバッテリーについて、電池メーカーとの合弁などを通じて40 GWh の工場を2030年までに欧州で6カ所設ける。規格を統一した電池("Unified Cell")を大量生産しコストを半減、ガソリン車より安いEVを目指す。

これは車載電池メーカーにとって大脅威である。

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今回、VWはスウェーデンのバッテリーメーカー Northvoltとの間で、今後10年にわたるバッテリー製造で140億ドルの契約を結んだ。

Northvoltはリチウムイオンバッテリーを生産する会社で、2016年に元Teslaの幹部のPeter Carlsson氏により設立された。

Northvoltは2019年にVW、BMW、Goldman Sachs、IKEAグループなどから合計10億米ドルの出資を受けた。増資と欧州投資銀行からの4億ドルの融資で、第1号の工場をスウェーデン北部Skellefteaに建設、16GWhの生産から始め、最低32GWh以上の容量まで増やす。

VWは別途、9億ユーロを投資してNorthvoltとのJVで、16GWhのリチウムイオンバッテリー工場を南ドイツのSalzgitterに設立した。VW用のバッテリー供給を2023年終わりから2024年始めにスタートさせ、数年後に24ギガワット時に拡大する。

Northvoltは3月1日に米国のバッテリー技術の企業 Cuberg を買収し、Silicon Valleyに先端技術センターを得た。 Cubergは液体電解質にリチウムメタルアノードを組み合わせる次世代バッテリーを商業展開するためにスタンフォード大学からスピンアウトした。
Cubergのバッテリーは、電動航空機使用向けにデザインされた同程度のリチウムイオン電池に比べて航続距離と容量を70%増やすとされる。

今回の契約で、VWはNorthvoltの株式を追加取得し、Northvoltが欧州のVWグループ向けの主要な電池サプライヤーとなる。

提携の一環として、Northvoltのスウェーデンのプラントは拡張し、40 GWh とする。
NorthvoltはドイツのSalzgitterのJV持ち株をVWに売却することにも同意した。ここも40 GWh に増強する。

今後、2026年には西欧(スペインかフランスかポルトガル)に1工場、2027年には東欧(ポーランドかスロバキアかチェコ)に1工場、2030年までにあと2工場を建設し、合計6工場 240GWh の能力とする。

標準的な電池容量のEV換算で、合計500万台分相当の電池を生産できる。

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2023年以降、自前の工場で統一した規格の角型電池セル"Unified Cell"を生産する。2030年には全体の8割をこの統一セルとし、セルのコストを現在の半分に下げる。

現在のEVやHV、PHEVなどに採用されているバッテリーは、自動車ごとに車両に合わせたデザインの異なる構造、仕組みになっている。
Unified Cellは、1つの仕様で統一してバッテリーの最小単位であるCellを大量生産することでコストダウンを行う。最終的には車種ごとにこれを複数組み合わせて1つのバッテリーを組み立てる。

同社では車種のうち80%はこれでカバーできると考えている。残りの20%(例えばスポーツカーなどの特殊な車両)に関してはより高出力なCellが必要になったりするので、独自のCellを利用する。


独アウディや独ポルシェを含む全ての傘下のブランドで電池やソフトウエアなどの共通化の度合いを深める方針を明らかにした。

同社ではコスト半減をうたっている。1kwhあたり100ユーロより大幅に下げる。

デザインで15%、製造プロセスで10%、カソード/アノード材料で20%、システム概念で5%、合計で50%カットとしている。

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VWは充電インフラへの取り組みも続けている。

今回、BPは、同社がイギリスとドイツに展開するガソリンスタンドチェーンで、VWグループの車両に対して充電ステーション機能を提供するパートナーシップを結んだことを明らかにした。
このほか、スペインのIberdrola、Enelなどとも提携、2025年までに1万8000の公共の充電ステーションを欧州内に設けることを計画している。

中国や米国/カナダでも急速充電ステーションの設置を目指している。

AGC(旧 旭硝子)は3月19日、クロルアルカリ事業のタイの子会社2社とベトナムの子会社の再編統合2022年前半完了目標実施し、統合新社設立すると発表した。

タイにおける大手石油メーカーPTT Global Chemical Public Company Limitedとの連携深化し、インドシナ半島クロル・アルカリ事業基盤強化なる成長目指す。

ロル・アルカリのメーカーのAGCと、エチレンメーカーのPTT Globalが提携し、PVC事業を強化する こととなる。

統合するのは次の3社で、出資比率や製品能力は下図を参照 

タイ AGC Chemicals (Thailand) Co., Ltd 旧称 THASCO Chemical Co., Ltd  (下記)
Vinythai Public Company Limited Solvay Vinyls Holding AGから持分買収
ベトナム AGC Chemicals Vietnam 旧称 Phu My Plastics & Chemicals Co., Ltd.
 現株主3社で買収
  
2013/11/11  旭硝子、ベトナムの塩ビ会社を買収 


旭硝子は1963年に
スリフンフン・パニチュワ・グループとのJVでタイ旭硝子を設立、その後他3社も設立して、東南アジアでの拠点としてきた。
2000年11月、相手持分を取得して経営権を完全に掌握し、経営効率化、コスト削減、高付加価値製品の投入等を通じて競争力を高めるとともに、アジア地域の重要な生産拠点として機能させることとした。

買収による旭硝子出資比率 その後
タイ旭硝子 39.65%→85.2% TOB→100%
バンコクフロートグラス 41.4%→96.3% →100%
タイ安全硝子 45.0%→93.2%
タイ旭エレクトロニックデバイシズ
(旭硝子ファインテクノ子会社)
70.0%→100%


AGCはインドネシアに
P.T. Asahimas Chemicalを持つ。これも含めた統合の噂があったが、今回はこれは含まない。

再編統合は下記による。

PTT GlobalがTOBによりVinythaiの親会社となり、VinythaiとAGC Chemical Thailandを統合してタイに新会社をつくる。
新会社については、AGCが65%、PTT Globalが35-α%の株主となり、他の株主がα%を出資する。

タイの新会社はAGC Chemical Vietnam のAGC持ち株を引取り、78.11%の株主となる。

付記 2022/7/1設立 新会社:AGC Vinythai Public Company Limited
   2022年末に資本構成変更

2022/7/1 2022年末
AGC 70.22% 65.00%
PTT Global Chemical 27.32% 32.72%
その他 2.46% 2.28%



統合する3社(+今回対象外のインドネシア子会社)の製品と能力は下図の通り。

ーーー

PTT Global Chemical Public Companyの歴史は次の通り。

1991年にShellとPTTがRayong Refineryを設立し、145千bpdの製油所を建設した。

2004年にShellは持株をPTTに譲渡し、撤退した。

2007年にRayong Refinery とPTT傘下のAromatics (Thailand)が合併し、PTT Aromatics and Refining とし、2011年にPTT Chemical と合併してPTT Global Chemical となった。


2021年3月時点の製品と能力は次の通り。Refinery以外は単位:1000t/y

Refinery Crude Distillation 145,000bda、Condensate Distillation 135,000bda
Aromatics Benzen:697、Toluen:50、mixed Xylenes:76、PX:1,310、Orthoxylene:86,Cyclohexane:200
Olefins C2:2,376、C3:512、Butadiene:75、Butene-1:25
Plymers HDPE:800、LLDPE:800、LDPE:300、PS:90、Hexene-1:34,PP:336 (41.44%出資のBasell子会社HMC)
EO MEG:423、EA:50
Phenol Phenol:470、Bisphenol-A:150、Aceton:290
Performance
Materials
Hexamethylene Diisocyanate & derivatives:115 (90.82%出資のVencorex )
Acrylonitrile:100、MMA:35 (いずれも50% 出資のPTT Asahi Chemical)
GreenChemicals 子会社Global Green Chemicals Public Company Limited (旧称Thai Oleochemicals)で油脂化学品の製造販売

2月に米国を襲った記録的な寒波とテキサス州の大規模停電の影響が拡大している。

記録的な寒波に伴う米テキサス州全域の停電で、オースティン周辺に集積する半導体工場が操業停止となった。

半導体で世界2位のSamusung電子も2月16日にオースティンの施設で稼働を停止したと発表。半導体の仕掛かり品、ウエハーの損傷は免れたものの、稼働停止が長期化し供給問題が浮上した。

テキサス州にあるオースティン工場は半導体受託生産の拠点で、Qualcommの通信用半導体のほか、自社の有機ELパネルやイメージセンサーの駆動用半導体などを手掛ける。
Samusungは「施設点検と補修など準備を進めているが、正常稼働にはまだ時間がかかる。安全を最優先に早期正常化に努力する」としている。

調査会社によると、「オースティン工場の3月中の正常化は難しい」と し、「5G」対応スマホに限れば、4~6月の世界のスマホ生産落ち込みは30%に達すると推計 する。

車載用半導体でも、オランダのNXP Semiconductorsはオースティン周辺にある2工場の生産を、ドイツのInfineon Technologies AGもオースティン工場の操業を休止した。

世界的な半導体不足に米国生産の停止が加わった。


付記(関連)

半導体大手のルネサスエレクトロニクスの那珂工場(茨城県ひたちなか市)で3月19日午前2時47分に火災が発生し、約5時間半後に鎮火した。
被害を受けたのは先端品の量産を担う直径300ミリメートルの半導体ウエハーに対応した生産ラインで、主に自動車の走行を制御するマイコンを生産している。ルネサスは同マイコンの世界首位で約2割のシェアを握る。

同社では「1カ月以内での生産再開にたどりつけるよう尽力する」としているが、操業停止が長引けば世界的に不足が続く車載半導体の供給に影響が出る可能性がある。

テキサス州は全米の石油生産の4割を占め、石油化学 コンビナートも多数ある。メキシコ湾岸沿いに集中する化学プラントが一時軒並み停止に追い込まれた。三菱ケミカルのアクリルモノマープラントや信越化学のテキサスのPVC工場も停止した。それらを使用する部品工場も停止した。

テキサス州は温暖な州のため、プラントの多くが寒波を想定していない設計だったため、凍結で配管の破断が起きた。そこに停電が加わった。

大規模停電から約1カ月が経過したが、破損した配管の復旧などに手間取り、通常稼働に戻っていない。
このため自動車や住宅向けの樹脂不足が深刻化している。ある自動車部品メーカーの幹部は「樹脂材料が通常時の5割程度しか供給されていない。日に日に影響は広がっている」と困惑する。

ホンダは3月16日、米国とカナダの5工場で3月22日から1週間程度、生産を休止すると明らかにした。世界的な車載用半導体不足に加え、部品の供給が滞った 。

トヨタも米国とメキシコで完成車とエンジン生産の計4工場を一部休止して生産調整することが 分かった。DuPont製の樹脂の供給不足が要因とされる。

樹脂不足は住宅業界や医療分野にも広がっている。

米国の化学品市況で、ポリプロピレンが1年前に比べ約3倍に上昇、低密度ポリエチレンも1年で倍になった。

日本にも影響が出た。
東レは3月上旬に、自動車のエアバッグに使うナイロン66の繊維の国内需要家に
フォースマジュール条項を宣言した。
原料アジポニトリルの調達先である米国の化学メーカーINVISTAとAscend Performance Materialsが、2月の寒波の影響で出荷が不安定になっているためとして東レなど需要家に対しフォースマジュール条項を宣言した。

ーーー

2月10日~20日に全米を冬の嵐が襲った。2月16日にはアメリカ本土の73%の面積が雪に覆われ た。

北極にある極渦(北極を覆う冷気)がジェット気流の乱れによって、テキサス州まで蛇行したことによって発生したとされる。

テキサス州は、冬でも氷点下になることはまれであるが、ヒューストンの気温は2月15日の 朝にはセ氏マイナス8度と、アラスカ州アンカレッジと同水準になった。

大寒波の到来で電力需要は冬季過去最高を記録し、州の送電網運営組織が想定していた「異常」需要のシナリオを超えた。 加えて、多数の天然ガス発電所や風力発電所が突如停止状態になり、テキサス州の送電網は危機的状況に陥った。送電網全体の停止を防ぐため、電力事業者に計画停電を指示し、顧客への電力供給を切断した。

テキサス州は450万軒以上の家屋と事業所が停電し、停電は水の処理施設にも影響を与えた。浄水場が停電し、水道管の凍結によって給水網の水圧が下がった。道路は凍結した。

バイデン大統領は2月20日、連邦政府の支援を拡大するため、非常事態宣言に続き、同州で大規模災害を宣言した。


テキサス州の電力ソースは下図の通り。

大寒波による影響で、停止を余儀なくされた発電所の出力規模は合計45GWに上った。

テキサス州知事(共和党)は氷点下で風力発電が稼動停止したのが主因であり、温暖化対応策として風力発電を導入したことが停電につながったと非難した。

しかし、これは誤りである。

1) 風力発電は凍結防止装置など耐寒性を上げれば極寒の北欧でも稼動させることは可能である。温暖なテキサス州 ではそのような対策が講じられなかった。

2) 風力だけでなく、天然ガスによる発電も天然ガスを運ぶパイプラインが凍結 しため、停止した。

大寒波によって失われた発電能力は、風力発電で15GW、天然ガス/石炭発電で30GWで、天然ガスと石炭火力の 停止の影響が風力の停止の2倍になる。

更に、テキサス州独自の電力系統が被害を大きくした。

米国の電力系統は、東部送電網西部送電網テキサス州送電網周波数同期エリアに分かれている。3つの地域の間には、非常に容量が低い直流線があるに過ぎない 。

送電線の運用制御は、従来は送電線を所有する電力会社が実施する形態が大半であった が、1990年代の卸電力市場の自由化に伴い、連邦規制当局により広域系統運用機関の設立が推奨され、 送電線の所有権を電力会社に残しながら、運用制御機能を広域系統運用機関に移管している。

通常であれば、電力が一時的に不足すれば他州から電力を調達することも可能だったはずだが、連邦政府による管理を嫌うテキサス州の電力運営方針が災いし 、他州から供給を受けられなかった。

茨城県など9都県の住民が日本原子力発電東海第2原発(茨城県東海村)は安全性が確保されていないとして運転差し止めを求めた訴訟で、水戸地裁は3月18日、運転を認めない判決を言い渡した。

地震の規模や津波の高さに関する原電の想定が適切かどうかや、建物の耐震性の有無が争点であったが、裁判長は「地震や津波の想定、建物の耐震性に問題があるとは認められない」とする一方、広域避難計画を策定した市町村が一部にとどまっており「人格権侵害の具体的危険がある」と判断した。

原電は2022年12月をめどに安全性向上対策工事を終え、早い段階での再稼働を模索していた。判決を不服として控訴する方針。


付記

東海第2原発の事故に備えた広域避難計画で、避難住民を受け入れる避難所が現時点で2万人分も不足していた。茨城県が2013、18両年に実施した避難所調査で、収容人数の過大算定が繰り返されたため 。
6市町村では、県の指示にもかかわらず、大半の避難所の総面積から「非居住スペース」を除外しないまま収容人数が算出されたのが原因だった。 (4/3 毎日新聞)

上記判決では「広域避難計画を策定した市町村が一部にとどまっている」としたが、策定した計画で避難所不足が明らかになり、再稼働には反対が強まると思われる。

付記

40年超の工事の完了予定は2022年12月となっている。

ーーー

原子力規制委員会は2018年11月7日、稼働から40年を迎える日本原子力発電・東海第2原発の運転期間の延長を認可した。

再稼働までに2つの問題をクリアする必要がある。

1) 安全対策工事

高さ20メートル、全長約1.7キロの防潮堤を建設して津波の浸入を防ぐ。
また原子炉格納容器の容積が小さく、事故時に事態が悪化しやすい沸騰水型の特徴を踏まえ、炉心を冷やす予備の冷却装置を追加で備える。

安全対策費に1740億円が必要としたが、原発専業の原電は自前で調達できず、規制委は資金確保を合格の前提条件とする異例の対応をとった。
原電は東京電力と東北電力から支援を受ける方針を示した。

2) 地元の同意

東海第2は首都圏唯一の原発で、30キロ圏内に全国の原発で最多の96万人が暮らしている。

既存の安全協定では事前了解権が東海村と県に限られるが、東海村・日立市・ひたちなか市・那珂市・常陸太田市・水戸市の要求を受け、東海村のほか周辺5市にも「実質的な事前了解権」を認める全国初の安全協定を結んでいる。 但し、「事前了解を得る」とはしているが、自治体間で賛否が分かれた場合、再稼働を止められるか、決められていなかった。

6市町村は2018年11月9日の首長懇談会で、1市町村でも了解しなければ、再稼働には進まないとの認識で一致した。那珂市の海野徹市長は10月22日、「完全な避難計画の策定はできない」と述べ、再稼働に反対する意思を表明した。

今回、裁判長はこの点を取り上げた。

原電の和智信隆副社長は運転期間延長が認可された2018年11月7日、報道陣に「拒否権という言葉は新協定の中にはない」と発言、これに対し首長側が強く反発したため撤回した。

2018/11/10 東海第2原発の運転延長を認可 

四国電力伊方原発3号機の運転差し止めを命じた広島高裁の仮処分決定を巡り、四国電が決定の取り消しを求めた異議審で、広島高裁は3月18日、異議を認めて再稼働を容認する決定を出した。
3号機は現在、テロ対策施設の工事を進めており、10月末にも再稼働する見通し。

付記

四国電力は6月16日、伊方原発3号機を10月12日に再稼働させると発表した。営業運転の開始は11月12日。

再稼働の条件となるテロ対策施設が10月5日に完成し、再稼働に向けた環境が整う。

付記

伊方原発3号機で、重大事故に対応する待機要員1人が2017年3月~19年2月に計5回、宿直勤務中に無断外出し、保安規定上の要員数を一時満たしていなかった問題が6月に判明した。この間、保安規定で22人と定めた待機要員が1人欠けた状態で、原子力規制委員会は9月、保安規定違反と認定した。再稼働は延期になった。


付記

四国電力が保安規定違反を受け延期している伊方原発3号機の再稼働について、愛媛県知事は11月19日、安全性向上などの要請事項の順守を条件に了承する考えを四電の長井社長に伝えた。

ただ「無条件ではない」と強調し、協力会社一人一人に至るまでの原子力事業者としての責任の自覚▽安全性向上と県民の信頼回復への取り組み▽「えひめ方式」(異常事象に関する通報連絡体制)の徹底―の3事項を要請した。

えひめ方式:伊方発電所で発生した正常状態以外の全ての事態について、四国電力が県および伊方町に直ちに通報連絡し、県が全ての事案を公表する)

四国電力は11月22日、伊方原発3号機の運転を12月2日に再開すると発表した。2022年1月4日から商業運転を始める。

付記

広島地裁は2021年10月4日、(停止中の)伊方原発3号機について広島県などの住民が再稼働を認めないよう求めていた仮処分の申し立てを退ける決定を出した。

広島県や愛媛県の住民7人が2020年3月に「大地震で重大な事故が起きる危険がある」として、再稼働を認めないよう求める仮処分を広島地方裁判所に申し立てた。

裁判長は「地震の大きさは、観測地点の地盤ごとに増幅などの特性が異なるため、伊方原発以外での原発で基準を超える揺れが観測されたからといって、危険性があるとは言えない」と指摘して、住民の申し立てを退けた。

仮処分を申し立てたのは伊方原発から50km圏内にある山口県東部の島の住民3人で、原発近くの活断層や阿蘇山の噴火のリスクを主張した。

山口地裁岩国支部は2019年3月15日、仮処分申請を却下した。

活断層については、音波探査で、十分な調査が行われていると認定、佐田岬半島沿岸部には「 活断層が存在するとはいえず、基準地震動の評価に不合理な点はないとした。

阿蘇については、運用期間中、巨大噴火の可能性が十分に小さいと判断できる とした。

住民側の即時抗告審で広島高裁は2020年1月17日、「運転差し止め」を命じた。

中央構造線について、四国電力側の調査は不十分で、横ずれ断層である可能性は否定できない。

破局的噴火に至らない程度の最大規模の噴火を想定すべきで、噴出量を20~30立方キロとしても、噴火規模は四国電力想定の3~5倍に達する。四国電力の降下火砕物や大気中濃度の想定は過少で、これを前提とした規制委の判断は不合理とした。

2020/1/20 広島高裁、伊方原発3号機運転差し止め

今回、広島高裁は、「現在の科学的知見からして、原発の安全性に影響を及ぼす大規模自然災害の発生する危険性が具体的に高いとは認められない」とし、運転を認める決定を出した。

海上音波探査を踏まえて原発敷地の2km圏内に活断層はないとした四国電の判断に「不合理な点があると認められない」とした。

阿蘇山の噴火リスクでは「専門家の間でも意見が分かれている。原発の安全性に影響を及ぼす噴火を引き起こす可能性が高いとは認められない」と結論づけた。

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伊方3号機については、広島市と松山市の住民4人による仮処分申請で、広島高裁が一旦、運転差し止めの決定をしたが、後に広島高裁がこれを取り消している。

2017/3/30
広島地裁
申し立てを却下

新規制基準は最新の科学的知見を踏まえている。
四国電力の基準地震動も、不合理な点はなく、住民が重大な被害を受ける具体的危険はない。

2017/12/13
広島高裁
(即時抗告審)

運転を差し止める決定
阿蘇山が過去最大規模の噴火をした場合は安全が確保されない。

2017/12/15 広島高裁 

四電が保全異議を申し立て

2018/9/25
広島高裁
(異議審)
四電の保全異議を認め、決定を取り消し

阿蘇の破局的噴火については、頻度は著しく小さく、国民の大多数も問題にしていない。想定しなくても安全性に欠けないとするのが社会通念。
破局的噴火以外で火砕流が伊方原発に達する可能性は十分小さい。
2018/10/27

再稼働

LG Chemの電池子会社LG Energy Solution は3月12日、2025年までの5年間で米国に45億ドル以上を投資すると発表した。少なくとも2工場を建設、米国での電気自動車の成長に対応し、能力を70GWh増やす。

2020/9/19 LG Chem、電池部門を分社 (2020年12月1日発足)

LGはGMとのJVのUltium Cells LLCで、オハイオ州 Lordstown の近辺に23億ドルを投資して生産能力30GWh+α の次世代グローバルEVバッテリーシステムの生産工場の建設中で、2022年の稼働を目指している。両社は急速なEV普及に対応するために 能力35GWhの第2工場の建設を協議中だが、今回の発表はこれとは別である。

2020/1/3 GMとLG Chem、世界最大級のEV用電池工場建設計画を発表

第2工場についてはLG側は「上半期中に投資規模や建設場所を確定する」と述べた。能力は35GWhとしている。
候補地としてテネシー州Spring HillのGMの組み立て工場が挙がっており、州当局との話し合いを行っている。
GMはこの工場で20億ドルを投資し、電気自動車(Cadillac Lyriq など)工場を建設すると発表している。

付記 GMとLGは4月16日、第二工場のテネシー州Spring Hillでの建設を発表した。記事

LG単独ではミシガン州Hollandに5GWhの工場を持ち、GM、Ford Motor、Chrysler などに供給しているが、2工場が完成すると、米国では単独で75GWh、GMとのJVで65GWhの能力となる。
ミシガン工場はオバマ米大統領が2010年7月の起工式に参列するなど注目されたが、いろいろな問題が発生した。

2013/9/10 LG化学のミシガン州のリチウムイオン電池工場、生産開始2か月で停止 

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LGは「Green New Deal(大規模エコ投資)」政策により急成長が予想される米国の電気自動車バッテリー市場で先手を打つ。

GMは次の5年間で電気自動車と自動運転車に270億ドルを投資すると発表しており、電池需要が増大する。同社は1月に、2035年までにガソリン車、ディーゼル車の販売を全廃すると明らかにしている。

新たに建設する設備では、自動車用のパウチ型とエネルギー貯蔵システム(ESS)向けパウチ型に加え、ピックアップトラック専門のEVメーカ ーのLordstown Motorsや、EVバスメーカーのProterraなど、電気自動車のスタートアップを中心に需要の大きい円筒型バッテリーも生産する。

電池には角型、パウチ型ラミネート型)、円筒型がある。

民生用は円筒型が一般的だが、自動車用では円筒型の場合、セルとセルの隙間が無駄になるため、余り使われない。その中でTeslaは円筒型を採用している。円筒形セルの代表的なサプライヤーはパナソニック、LG化学とBYD等 の中国企業である。

他の企業が角型に集中する中、LGはパウチ型に注力する。「設計、価格、工程と寿命、熱性能の面で競争力を持つ」としている。

ロイターによると、LGはTeslaのニューモデル向けに4680型(直径46㎜、高さ80㎜)円筒型のサンプルを作ったとされる。(現行は直径21㎜、高さ70㎜)

LG は上半期に工場候補地を選定する計画で、新しく建設する工場は、100%再生可能エネルギーのみで運営する。

今回の投資で、LG Energy Solution は、急成長が予想される米国の電気自動車、ESS市場でトップの座を強固にすると予測されている。

LG Chemは韓国と米国のほか、ポーランドと中国にも電池工場を持ち、各地で増産計画を進める。調査会社テクノ・システム・リサーチによると、2020年の世界シェアは23%で中国寧徳時代新能源科技(CATL)の26%に次ぐ2位につける。


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一方で、この時点での発表には裏があるのではとの見方もある。

LG Chemが同業のSK Innovationを車載電池の営業秘密の侵害で訴えていた係争で、米国際貿易委員会(ITC)は2月10日、SK Innovationに米国への輸入禁止命令を下した。

SK Innovationは米ジョージア州で建設中の車載電池工場で部品調達ができず生産停止を迫られる。(実際は両社の和解を求めたものである。)

2021/2/12 米ITC、SK Innovationに輸入禁止命令 

SKの生産が停止となれば、電気自動車促進(Green Transportation Goal)を公約に掲げるバイデン大統領のグリーンエネルギー 政策に悪影響を与えるという見方がある。

Georgia州選出の民主党上院議員は議会で、ITCの決定はジョージア州の労働者とバイデン大統領の電気自動車推進策への "a severe punch in the gut" であると批判した。これを受け、 米運輸省はSKとLGの対立がバイデン大統領の方針に与える影響を分析すると発表した。

今回の発表はこれに対する牽制であるとの見方もある。 自社の投資拡大を通じて米国でのバッテリー需要に十分対応が可能だと主張するものという。

また、SK Innovationの工場があるジョージア州の知事はバイデン大統領に対し、SK Innovationに関する決定を覆してほしいと要請した。
これを受け、LG側は新しく建設する工場を同州に決めたいとの申し入れを行った。また、SK Innovationの工場を買いたいとする向きがあれば、LGもこれに加わって運営を引き受けたいとのレターを同州の議員に送ったとされる。

実際には、ITCの命令はSKに今後の生産を禁止するものではなく、事実上の猶予期間を設定し、LG Chemとの和解を促するものである。

金額の問題だけであり、SKがLGの提案をのめば、大統領のグリーンエネルギー 政策に悪影響を与えることにはならない。

企業間の紛争に政治が関与するのはおかしい。

医療検査機器開発のマイテックと琉球大学は3月15日、「量子結晶」を用いたプラズモン増強効果により新型コロナウイルスを2分で可視化する新規検査法を共同開発した と発表した。

PCR検査はウイルス遺伝子を増幅して検出するため、手技が煩雑で結果を得るまでに数時間(通常、1~4時間)かかる。また、迅速抗原検査はどこでも簡単に検査できるが、PCR検査と比較すると感度が低く一度に大量の検査はできない。

開発された検査法は、光がミラーボールの反射のように増強されるマイテックの技術を活用、蛍光顕微鏡で観察する。

マイテックは、バイオチップ(プロテオ®)表面に1分で金属錯体の結晶(量子結晶)を固相化させる特許技術を有しており、この技術を応用し、1滴の血液でがんを早期診断する新しい検査法を確立している。

今回、上記の技術をCOVID-19の診断に応用する研究開発を、琉球大学大学院医学研究科 感染症・呼吸器・消化器内科学の研究チームと共同で行った。

これまで2回の試験で、感染者と非感染者の計175人の検体を扱い、72~94%の割合でPCR検査の陽性の判定と一致した。

この新しい検査手法をCV(Coronavirus Visualization)検査と命名した。CV検査では検査時間を大幅に短縮できることだけでなく、測定前の工程が2ステップと簡便で、かつ迅速抗原検査では検出できないような低ウイルス量の検体でも定量的にカウントすることができた。


仕組みは下図の通り。

手順1.光の増強効果がある量子結晶の試薬と、新型コロナウイルスに反応する抗体を付着させた プロテオ®バイオチップを準備する。量子結晶でナノレベルのくぼみをつくる。

マイテックは プロテオ®バイオチップ(蛋白質等を特異的に検出するバイオチップ)の表面に1分で量子結晶を固相化させる特許技術を有している。

量子結晶はマイテックが世界で開発に成功した新たな概念の新規プラズモン物質固体中での自由電子の集団励起の量子)で、蛍光物質の光を増強する特徴を持ってい る。
また、量子結晶は通常12時間以上かかる金属錯体の固相化を1分に短縮する事ができる。

手順2.検査を受ける人の唾液や鼻腔から採取した検体に標識抗体(蛍光物質)を混ぜ、チップにたらす。 ここまでを最短2分で済ませることができる。

検出 感染している場合は、ウイルスと抗体がくっつき、光がミラーボールの反射のように増強されるマイテックの技術でウイルスに付着した蛍光物質が増強され、通常の顕微鏡でも確認できる。ウイルスがなければ、抗体とくっつかず、洗浄されるため、光らない。

共同記者会見で、琉球大学大学院医学研究科の金城武士助教は「これまでウイルスを可視化して診断しようというアイデアはなかった。迅速、簡便で一度に大量の検査ができ、多くの患者をいっぺんに診断する状況には非常に有用だ」と強調した。

製品の開発費に数千万円かかり、その確保が課題となる。実用化した場合、1検体で5千円程度の検査費用を見込み、さらなる低減を目指す。

東京五輪・パラリンピックまでに実用化したい考えで、空港の検疫所やイベント会場など、人出が多い場所での検査を見込んでいる。

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バイオベンチャー「マイテック」は長谷川克之氏が1999年に妻の長谷川幸子社長とともにを設立、息子の裕起氏が加わった。広範囲分野の研究を独学で進め、「量子結晶」「過酸化銀メソ結晶」を発見、2011年にそれをもとに超早期のがん診断を簡易かつ安価に行える世界初のがん診断ツールを開発した。

「過酸化銀メソ結晶」のチップに、がん患者の血液から分離させた血清を乗せると、がん細胞から出る「ヌクレオソーム」を吸着し、がんの大きさが直径0.1ミリ以下の超早期のがんでもその有無を約3分で診断できる。蛍光顕微鏡で確認する。

対象となるのは、膵がん、肺がん、乳がん、胃がん、肝がん、大腸がん、舌がん、甲状腺がん、腎臓がん、前立腺がん、子宮がん、卵巣がんなどの固形がんで、がんのリスクをA(リスク低)・B(要観察)・C(リスク高)の三段階に分類・判定する。

現在、リスクスクリーニング検査(リスク判定)として全国の医療機関で実施している。

米国立衛生研究所(NIH)は3月5日付で、新型コロナウイルス感染症の治療指針を更新し、重症患者に、関節リウマチなどの治療薬「トシリズマブ」(中外製薬のアクテムラ)を、既にコロナ治療で広く使われているステロイド系抗炎症薬の「デキサメタゾン」と併用して投与することを推奨した ことが判明した。

既報の通り、中外製薬は3月11日、COVID-19治療薬候補「アクテムラ」(Tocilizumab)の海外での試験で、主要評価項目を達成しなかったと発表した。
他に、主要評価項目を達成しなかった例と、主要評価項目を達成した例がある。

2021/3/12 中外製薬のCOVID-19治療薬候補「アクテムラ」、海外で効果確認できず 

一方、英政府は2021年1月7日、「アクテムラ」(Tocilizumab)と「サリルマブ」が新型コロナウイルス感染症の治療にも有効だと発表した。

1月8日から、英国全土の病院の集中治療室に入院中のコロナ患者を対象に投与する。
コロナの治療薬としては抗炎症薬「デキサメタゾン」などに続くものとなる。

2021/1/9 英政府、「中外製薬のリウマチ治療薬が新型コロナに有効」

今回、米国立衛生研究所(NIH)は英国での臨床試験で、酸素補給が必要な入院中の重症患者に、トシリズマブを抗炎症薬と共に投与すると死亡率の改善がみられたことを考慮し、トシリズマブとデキサメタゾンの併用を認めたと見られる。

 推奨は下記の通り。

「トシリズマブ」と「デキサメタゾン」の併用

対象の患者は、
過去24時間以内にICUに入院し、侵襲的人工呼吸器、非侵襲的人工呼吸器(NIV)、または
高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)を必要とする患者
ICUには入らないが、
NIVまたはHFNCを必要とし、炎症のマーカーが大幅に増加している、酸素の必要量が急速に増加している患者

なお、低酸素血症の患者で、通常の酸素補給が必要な患者にはレムデシビル、デキサメタゾン+レムデシビル、又はデキサメタゾン単剤 を推奨

https://www.covid19treatmentguidelines.nih.gov/statement-on-tocilizumab/


中外製薬は、上記の海外試験での主要評価項目を達成しなかったとの発表に際し、年内に国内でCOVID-19治療薬として承認申請する計画に変更はないとしている。

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「トシリズマブ(Tocilizumab)」(中外製薬の製品名 アクテムラ):

トシリズマブは大阪大学と中外製薬が共同開発した日本発の治療薬で、ヒト化抗ヒトIL-6レセプターモノクローナル抗体。関節リウマチ、若年性特発性関節炎、成人スチル病、高安動脈炎・巨細胞性動脈炎、 キャッスルマン病の治療に使われている。

日本では2020年5月から、新型コロナで肺炎が重症化した入院患者を対象に治験が実施されている。海外ではコロナ治療薬のレムデシビルと併用する治験が行われている。
中外製薬はこれらの治験結果を踏まえ、2021年中に日本で新型コロナ用として承認申請することを目指している。

欧州では中外製薬の親会社であるスイスのRocheが製造・販売している。

「サリルマブ(Sarilumab) 」(Sanofi の製品名 ケブザラ):

ヒト型モノクローナル抗体で、アクテムラに次ぐIL-6阻害薬。炎症を引き起こすIL-6の活性を抑制することで関節の炎症を改善し、全身症状(関節の破壊や変形から生じる機能障害、疲労、骨粗鬆症など)を緩和することが期待される。

Sanofiと米国のRegeneronが共同で開発を行い、米国、カナダ、欧州2017年に承認され た。日本ではサノフ2017927日 に既存治療で効果不十分な関節リウマチ」の効能・効果において製造販売承認を取得した

サノフィは2017年12月に旭化成ファーマと日本でのライセンス契約を締結した。サノフィおよびRegeneron社が製造を担い、旭化成ファーマが流通・販売を 担う。

抗炎症薬「デキサメタゾン」

英オックスフォード大は2020年6月16日、抗炎症作用のある一般的なステロイド剤デキサメタゾンが、新型コロナウイルスの重症患者の死亡率を減らすのに効果的だとする臨床試験の結果を公表した。

これを受けて英国の保健・社会福祉相は同日、新型ウイルス感染症の標準治療に午後からデキサメタゾンを含めると表明した。

日本の厚生労働省は、7月に新型コロナウイルス感染症の診療ガイドラインに「デキサメタゾン」を新たに掲載した。
効果が検証され国内で使用が認められた治療薬は、5月に特例承認された「レムデシビル」に続いて2例目。

既に承認、保険適用されていて、肺の疾患や重症の感染症も投与の対象となっている。低価格で手に入りやすいのが利点。

日本経済新聞(2021/3/14)は、大日本住友製薬がパーキンソン病の患者に再生医療を施す臨床試験を2022年度に米国で始めると報じた。

パーキンソン病は有効な治療法がなく、症状の進行をゆるやかに抑える対症療法しかない。iPS細胞で実際に症状を改善する治療法開発につなげたい考えだ。


京都大学医学部附属病院は2018年7月30日、iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞を用いたパーキンソン病治療に関する医師主導治験を8月1日より開始すると発表した。

パーキンソン病は脳で神経伝達物質のドパミンを分泌する神経細胞が失われる難病で、体が震えたり筋肉がこわばったりする。

再生医療用iPS細胞ストックから提供されたiPS細胞をドパミン神経前駆細胞へ分化させ、分化誘導したドパミン神経前駆細胞(計約500万個)を、定位脳手術により、患者の脳の線条体部分(左右両側)に移植する。 手術は、頭部を固定した上で頭蓋骨に直径12mmの穴を開け、そこから注射針のような器具を用い、細胞を注入する。

本治験は、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)と大日本住友製薬より支援を受けて実施される。治験が成功すれば大日本住友製薬が開発を引き継ぎ、実用化を目指す。

2018/7/30 京大がiPS細胞でパーキンソン病治療臨床試験へ


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大日本住友製薬の再生・細胞医薬分野の事業化計画は下記の通りで、本件は2022年度上市目標としている。

1. 小児先天性無胸腺症(RVT-802)

T細胞の正常な発達に必要である胸腺が存在しないか未発達のため、T細胞の数が少なく、様々な感染症に対する抵抗力が不十分で、生後まもなく感染症にかかり、再発を繰り返す。

RVT-802は、先天性無胸腺症の小児患者に移植されて免疫応答機能を発揮するように作成された培養ヒト胸腺組織で、生涯に1回きりの再生医療である。

本剤は心臓病の小児の心臓手術中に除去されたヒト胸腺組織で患者の大腿四頭筋に移植される。患者自身の骨髄由来幹細胞が本剤に移動して成熟T細胞に分化することによって、感染を防御する。治療後612カ月で感染を防御するのに十分な胸腺機能が発達する。

20194月に米国で申請、201912月審査結果通知を受領、再申請の準備中。


2. 加齢黄斑変性

大日本住友製薬と理研認定ベンチャーのヘリオス(旧称 日本網膜研究所)は2013年12月2日、再生・細胞医薬事業に関する提携を発表した。

加齢黄斑変性等の眼疾患を対象としたiPS細胞由来網膜色素上皮細胞(RPE細胞)を用いるもので、世界初のiPS細胞技術を用いた再生・細胞医薬事業に向けたもの。

2013/12/4 大日本住友製薬と理研認定ベンチャーのヘリオス、iPS細胞由来医薬品を共同開発


3. パーキンソン病  上記


4. 網膜色素変性

神戸市立神戸アイセンター病院は、「網膜色素変性に対するiPS細胞由来網膜シート移植に関する臨床研究」について、2020年611日の厚生科学審議会再生医療等評価部会了承されたと発表した。

「網膜色素変性」は、遺伝子のキズが原因で光を感じる組織である網膜が少しずつ障害を受ける病気で、人口約5000人に1人の割合で患者がいるとされている。

京都大iPS細胞研究所(CiRA)が「iPS細胞ストック事業」で備蓄しているiPS細胞を使い、大日本住友製薬が網膜シートを作成する。 理化学研究所が免疫反応試験を行う。

2020/6/15 iPS網膜シートの移植、臨床研究開始へ 


5. 脊髄損傷

厚生労働省の専門部会は2月18日、iPS細胞を使って脊髄損傷を治療する慶応義塾大学の臨床研究計画を了承した。
慶應義塾特定認定再生医療等委員会が、2018年11月27日に計画を承認し、厚生労働大臣へ申請していた。

iPS細胞から作った神経のもとになる神経前駆細胞を患者に移植し、機能改善につなげる世界初の臨床研究である。

2019/2/20 iPS細胞で脊髄損傷治療

これに関し2020年11月、慶應義塾大学と大日本住友製薬の共同研究で、臨床用ヒトiPS細胞から効率的にグリア細胞(オリゴデンドロサイトなど)へ分化する臨床応用可能な誘導方法を開発し、脊髄損傷モデル動物の脊髄への投与により低下していた運動機能の改善を認めることを確認したことが発表された。

(1)作製された細胞は免疫染色、遺伝子発現解析でグリア細胞分化指向性が高いことを確認

(2)移植した細胞は多くがオリゴデンドロサイトに分化し、再髄鞘化を確認

(3)細胞移植したマウスで、脊髄損傷により低下した運動機能が改善


6. 腎不全

慈恵大学・東京慈恵会医科大学、明治大学、バイオス、ポル・メド・テック、大日本住友製薬は2019年4月5日、iPS細胞を用いた「胎生臓器ニッチ法」による腎臓再生医療の2020年代での実現を目標として、共同研究・開発などの取り組みを開始すると発表した。


ヒト
iPS細胞から分化誘導したネフロン前駆細胞を、ヒト腎臓再生医療用遺伝子改変ブタ」の胎仔から採取した腎原基に注入し、その後、腎原基を患者に移植することによって、臓器ニッチを利用した機能的腎臓の再生を目指すもの

「胎生臓器ニッチ法」用いた腎臓再生医療の事業化は、5者協力のもと大日本住友製薬が担う。

2019/4/9 腎臓の再生医療実現に向けた取り組み開始 

日米豪印4か国の首脳(菅首相、Biden大統領、Morrison首相、Modi首相)は3月12日、テレビ会議を行い、共同声明("The Spirit of the Quad") とFact Sheetを発表した。

首脳は、様々な分野で実践的な協力が進展していることを歓迎するとともに、ワクチン、気候変動、重要・新興技術について、それぞれ作業部会を立ち上げることで一致した。

世界保健機関やCOVAXファシリティを含む既存の関連する多国間組織との緊密な連携の下、インド太平洋へのワクチンの公平なアクセスを強化すべく協働する。

気候変動が世界的な優先課題であるとの認識の下で団結し、パリ協定に沿った気温の制限を実現可能とし続けることを含む全ての国の気候行動を強化すべく行動する。

イノベーションが自由で開かれ、包摂的で、かつ強靭なインド太平洋と一致することを確保するために、将来の重要技術に関する協力を開始する。

東シナ海及び南シナ海におけるルールに基づく海洋秩序に対する挑戦に対応するべく、海洋安全保障を含む協力を促進する。
国連安保理決議に従った北朝鮮の完全な非核化への我々のコミットメントを再確認し、また、日本人拉致問題の即時の解決の必要性を確認する。
ミャンマーにおける民主主義を回復させる喫緊の必要性と、民主的強靭性の強化を優先することを強調する。

ワクチンについては以下の通り。

「Quad」のパートナーは、パンデミックの収束を更に加速させるための画期的なワクチンパートナーシップを立ち上げる。

世界保健機関(WHO)やCOVAXファシリティを含む既存の関連する多国間メカニズムと緊密に連携し、インド太平洋の国々におけるワクチン接種を強化し支援すべく協働する。

安全で有効なワクチンを世界中での利用可能性を確保することから始める。承認されているワクチンの製造能力の増大を優先させ、インド国内の施設における安全で有効な新型コロナ・ワクチンの製造拡大を達成するために連携する。

安全で有効なワクチンの製造、調達及び配送のために、資金面及び物流面での需要に対応する。

米国は、米国国際開発金融公社(DFC)を通じて、インドのBiological E Ltd. と連携し、同社が2022年末までに、Johnson & Johnson製のワクチンを含めたワクチンを少なくとも10億回分製造できるよう製造能力を増やすための資金協力を行う。

日本は、JICAを通じ、輸出向けの新型コロナ・ワクチンの製造を拡大するためにインド政府に対して円借款を供与するための議論を行っている。

Biological E は、米国のBaylor College of Medicine 及びDynavax Technologies Corp.と協力しワクチンを開発している。Baylor CollegeのBCM Ventureの抗原と、Dynavaxのアジュタント(CpG 1018)を使ったワクチンで、最近 Phase Ⅰ/ Ⅱ 治験を完了し、間もなくPhaseⅢに入る.

同社は別途、Johnson & Johnsonとの間でインドでの生産受託の契約を結んだ。年間6億回分のワクチン製造及び充填の受託とされる。

日米豪印のパートナーは、既存の健康安全保障・開発プログラムを活かし、「最後の1マイル」(全ての人への)のワクチン接種のための取組を強化する。ワクチンの受入れ準備と配送、ワクチンの調達、保健医療人材の即応性、ワクチンに関する誤った情報への対応、地域社会の関与、予防接種能力等に関する各国への支援を含む。

米国は、既存のプログラムを活用してワクチン接種能力をさらに高め、予防接種に焦点を当てた地域のプログラムに少なくとも1億ドルを活用する。

日本はCOVAXファシリティとの連携及び支援を確保しつつ、4千百万ドルの無償資金の提供や新たな円借款の供与等を通じ、ワクチンの購入、コールド・チェーン支援といった途上国のワクチン接種プログラムを支援する。

豪州は、大洋州の9か国及び東ティモール向けのワクチンへのアクセスと健康安全保障を確保するための4億7百万米ドルの既存のコミットメントに加えて、東南アジアに焦点を当てたワクチンの提供と「最後の1マイル」の配送支援のため、7千7百万米ドルを貢献し、調達を支援し、ワクチンの配送を準備し、東南アジアの保健システムを強化していく。


インドでは3社がワクチンを開発している。インド政府は1月にBharat Biotechのワクチン Covaxin を承認した。

Developer/manufacturer Platform Type doses Timing
 
days
Route Phase 承認
Bharat Biotech International
with
Indian Council of Medical Research - National Institute of Virology
Inactivated Whole-Virion Inactivated SARS-CoV-2 Vaccine (BBV152) 2 0, 14 IM Covaxin
インド 2021/1/3

2021/1/4 インド、COVID-19 国産ワクチン承認 

Biological E Ltd 
with Baylor College of Medicine / Dynavax Technologies (USA)
Protein Subunit BECOV2 2 0, 28 IM Ⅰ/Ⅱ
Cadila Healthcare
(
Zydus Cadila
DNA DNA plasmid vaccine
 
3 0, 28, 56 ID 付記
 ZyCoV-D
インド 2021/8/20

Zydus Cadila のワクチンは次にインドで承認を受けると見られている。 → 2021/8/20 承認
2~8℃での保管でよく、承認前から世界中から能力以上の注文が来ているという。

なお、AstraZenecaは2010年6月4日、ワクチンを増設し、開発途上国にも供給すると発表したが、インドのワクチン大手Serum Institute of India (SII) とライセンス契約を締結、10億回分を低・中所得国に供給する。

このうち、一定量(発表なし)はインド向けで、残りはGAVI によって他の低所得国に配られる。

2020/6/8 AstraZeneca、新型コロナウイルスワクチン増産、開発途上国に供給 

GEは3月10日、GE Capital の航空機リース事業 GECAS (GE Capital Aviation Services business )をアイルランドの同業大手AerCap Holdings N.V. に売却し、金融子会社のGE Capitalを解散すると発表した。

GE Capitalは住宅ローン事業など過去に手掛けた金融事業の大部分から撤退したが、主力の航空機エンジン事業との関連性が高い航空機リースは継続していた。

同事業を切り出すことで、GE Capital の事業規模は大幅に縮小するが、GECAS売却に合わせファクタリング(売掛債権買取)事業のほとんどをやめ、残るGE Capital の業務は他の事業に分散させる。

金融事業から事実上撤退し、電力、再生エネルギー、航空機エンジン、ヘルスケア事業に専念する。

GEは同部門のエンジンのリースやMilestone helicopter リースを含む340億ドルの簿価の資産を譲渡する。現時点でのGECASの購入契約も移管され、400人以上の従業員も移管される。

GECASは2014年にアイルランドのMilestone Aviation Groupを17億8000万ドルで買収する ことで合意し、レンタル資産にヘリコプターが加わることになった。

売却額は300億ドル以上で、うち240億ドルは現金、約60億ドルはGECAS統合後のAerCapの株式で、10億ドルはAerCapの手形又は現金で支払われる。
GEは株式取得でAerCapの約46%の株主となるが、取引完了の15か月後に全体を売却する権利を持つ。

簿価よりも安い価格での売却となり、2021年度第1四半期に約30億ドルの売却損を計上する。

GEは取引完了後、手元資金も含めて300億ドル程度の借入金を返済する。

取引完了には9~12カ月かかると見られている。

2018年に就任した会長兼CEOのH. Lawrence Culp, Jr. はバイオ医薬関連事業など非中核事業の売却を進めてきた。リース事業の分離により、産業部門を中核とする事業再編が完了する。

CEOは「GEは焦点を絞り、よりシンプルで、より強力な事業会社に変貌する」と述べた。

ーーー

GEは2018年6月26日に今後の事業構造を発表した。

2000年のGEの売上高は金融が50%を占めたが、2016年の売り上げ構成は産業機器がほとんどを占める。

GEは2017年11月に、電力、航空、ヘルスケアの3事業を中核と位置づけ、その他の分野で200億ドルの事業売却を進めるリストラ策を発表していた。だが、その後も過去に手掛けた金融事業で1兆円近い追加損失が発生するなど業績悪化に歯止めがかからず、戦略の抜本的な見直しを迫られた。

Transportation(機関車)、HealthCare、Baker Hughesの処分を決めた。

Healthcareについては下記により分離する。

子会社GE HealthCareの株式の20%を売却、80%をGEの既存株主に割り当てる。
この分社化で誕生する新会社が180億ドルの負債をGE本体から引き継ぐ.
売却や割り当ての条件は今後詰める。一連の手続きが完了するまでには12~18ヵ月かかる見込み。→現時点で進展なし。下記参照。

GE Capital については、引き続き縮小し、コア事業を支える方向に進めるとした。

2018/7/2 GE、今後の事業構造を発表、GE Healthcareを分離 

Jeff Immelt 会長兼CEOは2017年12月31日に会長を退任し、引退した。
GE Healthcareの社長John Flanneryが2017年8月1日付でGEのCEOになり、2018年1月1日付で会長兼CEOになった。

しかし、John Flanneryはその後の業績悪化と株価低迷の責任を取って、就任1年2か月後の2018年10月1日に退き、後任に2000年から2014年まで米産業機器大手Danaher Corporation のCEOを務めたH. Lawrence (Larry)Culp, Jr が就任した。GEのCEOに外部の人材が就くのは初めて。

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GEは2019年2月25日、GE Healthcareのバイオ医薬事業を産業機械大手のDanaher Corporation に214億ドルで売却すると発表した。バイオ医薬事業はバイオ医薬の研究開発や検査のための機器や消耗品の販売を手掛ける。同分野では世界大手で、2018年12月期の売上高は約30億ドルだった。

GEは金融事業の損失に加え、2018年7~9月期に主力の電力事業でも2兆円を超える減損損失が発生した。売却で得た資金を使って財務の立て直しを進める。

Larry Culp CEOは「売却によって事業領域を適正に絞り込み、負債の圧縮と財務強化を進める」とコメントした。

  Larry Culp CEOはDanaher 出身で、古巣に事業を売却する。

この売却により、2018年6月にJohn Flannery前CEOが発表したGE Healthcare 分離案は白紙に戻ったとされる。

2018年の事業構造変更でGEはヘルスケアをメイン事業から外し、 電力と航空機エンジン、及び新設の再生エネルギーの3事業をメイン事業と称してきたが、今回、ヘルスケア事業もメイン事業に 戻した。今後ともGEの主要事業として存続させるよう変更したと見られる。

2019年2月に発表された2018年のAnnual Report でバイオ医薬事業の売却に触れ、「GEはHealthcare事業の残る部分を維持する積りである」としている。

最近の業績(百万ドル)   Healthcare部門の貢献が大きい。

2018 2019 2020
売上高
 Power 22,150 18,625 17,589
 Renewable Energy 14,288 15,337 15,666
 Aviation 30,566 32,875 22,042
 Healthcare 19,784 19,942 18,009
 (小計) (86,788) (86,779) (73,306)
 Capital 9,551 8,741 7,245
 部門間ほか 673 -305 -932
 (合計) (97,012) (95,214) (79,619)
営業損益
 Power -1,105 291 274
 Renewable Energy 140 -791 -715
 Aviation 6,454 6,812 1,229
 Healthcare 3,522 3,737 3,060
 (小計) (9,011) (10,049) (3,848)
 Capital -489 -530 -1,710
 (合計) (8,521) (9,519) (2,138)
減損損失 -22,136 -1,486 -877
非継続事業損益 -1,364 -5,395 -125
株主帰属損益 -22,802 -5,439 5,230

中外製薬は3月11日、COVID-19治療薬候補「アクテムラ」の海外での試験で、主要評価項目を達成しなかったと発表した。

中外製薬の親会社 Rocheは2020年5月28日、Gilead Sciences と共同で多施設共同無作為化二重盲検国際共同第III相臨床試験(REMDACTA試験)を開始すると発表した。

重症COVID-19肺炎による入院患者を対象に、「Actemra®remdesivirとの併用療法 」と「プラセボとremdesivirとの併用 」と比較して安全性および有効性を評価するもの。

重症の入院患者650人を対象としたこの試験で、主要評価項目(標準的な医療措置を受けている重症COVID-19肺炎による入院患者における28日時点の退院までの期間の改善)を達成しなかった。

死亡の可能性、人工呼吸器の使用または死亡まで進行する可能性、臨床状態等の主要な副次評価項目も未達であった 。

アクテムラ(トシリズマブ)は大阪大学と中外製薬が共同開発した日本発の治療薬で、ヒト化抗ヒトIL-6レセプターモノクローナル抗体 。関節リウマチ, 若年性特発性関節炎, 成人スチル病, 高安動脈炎・巨細胞性動脈炎, キャッスルマン病の治療に使われている。

日本では2020年5月から、新型コロナで肺炎が重症化した入院患者を対象に治験が実施されている。
中外製薬はこれらの治験結果を踏まえ、2021年中に日本で新型コロナ用として承認申請することを目指している。

欧州では中外製薬の親会社であるスイスのRocheが製造・販売している。

ーーー
Rocheは2020年7月29日、新型コロナウイルス関連肺炎による重症入院患者を対象に欧米で実施したアクテムラ(トシリズマブ)の第3相臨床試験「COVACTA」の結果について、主要評価項目を達成しなかったと発表している。

試験は、重症の新型コロナ関連肺炎による成人入院患者450例が対象で、標準治療にアクテムラを上乗せすることでの有効性・安全性を検討する目的で実施された。

主要評価項目の「4週目の臨床状態の改善」については、アクテムラ群はプラセボ群に対し、統計学的な有意差は認められなかった。

4週間後の死亡率は、アクテムラ群19.7%、プラセボ群19.4%で、有意差は認められなかった。

退院(退院待機状態を含む)までの期間はアクテムラ群20日間、プラセボ群28日間で、有意に期間を短縮した。ただ、同社は「主要評価項目は未達のため、その差について統計学的な有意性を判断することはできない」としている。

人工呼吸器未使用日数はアクテムラ群22日間、プラセボ群16.5日間で有意差は認められなかった。

4週目時点の感染症の発生率は、アクテムラ群38.3%、プラセボ群40.6%、重篤な感染症の発現率は、アクテムラ投与群で21.0%、プラセボ投与群で25.9%だった。
また、安全性について「新たなシグナルは認められなかった」としている。

国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構の平野俊夫理事長は2020年4月15日、北海道大学遺伝子病制御研究所の村上正晃教授と共同で、新型コロナウイルスに関する論文を発表した。

COVID-19で肺炎を起こしても軽い症状で治る場合もあるが、重篤化する人もいる。特に重症化したCOVID-19に発症する急性呼吸器不全は致死率が高い。この原因は免疫系の過剰な生体防御反応のサイトカインストームが原因であることを見付けた。

有望視されるのが、中外製薬のIL6 阻害薬「アクテムラ」トシリズマブ)で ある。

中外製薬の親会社のRocheは3月19日、米国食品医薬品局(FDA)と連携し、重症COVID-19肺炎による入院患者を対象にActemra/RoActemraの第III相臨床試験を開始すると発表した。

2020/5/6 COVID-19の致死的急性呼吸器不全症候群の原因はサイトカインストーム

英政府は2021年1月7日、関節炎治療薬の「トシリズマブ」と「サリルマブ」が新型コロナウイルス感染症の治療にも有効だと発表した。

8日から、英国全土の病院の集中治療室に入院中のコロナ患者を対象に投与する。

英政府はRocheと連携する。

コロナの治療薬としては抗炎症薬「デキサメタゾン」などに続くものとなる。

2021/1/9 英政府、「中外製薬のリウマチ治療薬が新型コロナに有効」

米下院は3月10日、1.9兆ドル(約200兆円)規模の新型コロナウイルス対策法案(American Rescue Plan ) を賛成多数で可決した。
バイデン大統領は3月12日にホワイトハウスで同法案に署名して成立させる。

付記 大統領は1日早めて3月11日に署名、成立させた。

米下院は2月27日未明、1.9兆ドルの追加の新型コロナウイルス対策法案を可決した。

2021/3/1 米下院、1兆9千億ドルのCOVID-19対策法案可決 

米上院は3月6日、これを一部修正し、可決した。

失業保険の州支給分への上乗せ(3月14日に期限切れ)は、現行は週300ドルの上乗せとなっているが、下院は400ドル上乗せとした。しかし、これに対する反対が強く、最終的に現行通りの300ドル上乗せに修正した。

下院が通した法案には最低賃金を15ドルに引き上げることが含まれているが、「予算決議」の下では「最低賃金引上げ」は対象外であると判断された。
このため、上院ではこれは削除された。

2021/3/7 米上院、1.9兆ドル経済対策法案を可決 


今回、上院で修正した分を下院で再議決した。

民主党 共和党 合計
賛成 220 220
反対 1 210 211
棄権 1 1
合計 221 211 432

2月27日の下院議決では、民主党から2議員(Kurt Schrader of Oregon & Jared Golden of Maine)が反対票を投じた。最低賃金の15ドルへの引き上げに反対とされる。

今回、最低賃金引上げ部分は除かれた。このため、Kurt Schrader議員は賛成に回った。
しかし、Jared Golden議員は反対のままである。民主党はワクチン関係などもっと狭い政策に焦点を当てるべきだと主張、上院の修正案のうち最低賃金引上げを除外したなどは支持するが、まだ彼の懸念を払拭するものではないとしている。

下院の2回の議決及び上院の議決の全てで共和党からの賛成は1名もなかった。

上下両院の議決を得て、大統領は3月12日に署名し、成立させる。

現行の対策法では、失業保険の州支給分への上乗せが3月14日に期限切れとなる。3月12日に新法が成立することで、現行の300ドル上乗せが9月6日まで延長される。

対策の目玉となる1人最大1400ドルの現金給付を月内に実施する。米景気の回復を加速させ、日本を含む世界経済を押し上げるとみられている。


バイデン大統領は「この財源を携えて私たちは前進する」と述べ、新型コロナの封じ込めや経済の正常化を急ぐ意向を強調 、「歴史的な立法」を成し遂げたと議会に謝意を示した。

感染拡大が本格化した2020年3月以降の経済対策は総額6兆ドル規模に達する ため、インフレを懸念する声も上がっている。

日本化学会(小林喜光会長)は3月9日、化学遺産に新たに3件を認定したと発表した。


日本化学会は、化学と化学技術に関する貴重な歴史資料の保存と利用を推進するため、化学遺産委員会を設置し、さまざまな活動を行っているが、歴史資料の中でも特に貴重なものを文化遺産、産業遺産として次世代に伝え、化学に関する学術と教育の向上及び化学工業の発展に資することを目的とし、2010年3月に第一回の「化学遺産認定」を行った。

第1回(2010年)~第8回(2017年)については下記を参照。

2017/3/10 第8回 化学遺産認定

2018年の第9回から本年の第12回までを紹介する。 詳細は表の「回数」をクリック。

2018年
第9回
44号 グリフィス『化学筆記』およびスロイス『舎密学』


アメリカのW. E. Griffisは、1871年3月から翌年1月まで福井藩の藩校明新館で物理と化学を教えた。
オランダのP. J. E. Sluysは、1871年4月に金沢藩の金沢医学館に着任し、医学やその基礎として化学などを教えた。
いずれもアボガドロの分子説に基づいた当時最新の化学を教え、水素や酸素などが2原子分子であることや原子価などについて教え、水の分子式はH2O、硫酸はH2SO4と教えた。

45号 モノビニルアセチレン法による合成ゴム


1920年代末から30年代にSBR、NBRなどの合成ゴムが発明された。工業化においては、その主原料であるブタジエンの合成法が重要であり、当時はアセチレンや発酵エタノールを原料とする様々な製法が研究された。

京都大学工学部の古川淳二はモノビニルアセチレン法を発明し、1942年に京都大学化学研究所で工業化試験に成功した。この設備はその後住友化学工業新居浜工場に移されNBRの工業生産に使われた。

日本での合成ゴムの研究・生産は連合軍によって長らく禁止され、日本での戦前、戦時中の合成ゴム関係資料はほとんど失われたが、古川淳二が保管し、1982年に京都大学、東京農工大学に寄贈した工業化試験資料は貴重である。

46号 化学起業家の先駆け 高峰譲吉関係資料


高峰譲吉は、強力な消化酵素タカヂアスターゼを安定して取り出すことに成功、医薬としての製造・販売は米国のパークデービス社を通じ、1895年に発売し世界に展開、日本では三共商店(第一三共の前身)が1899年に発売した。
1900年に高峰と助手の上中啓三によるアドレナリン高濃度抽出・結晶化の大発見を行い、世界的な医薬とすることに成功した。

2019年
第10回
47号 学習院大学南一号館ドラフトチャンバー


ドラフトチャンバーは、
揮発性の有害物質や有害微生物を扱うときに安全のために用いる局所排気装置
学習院大学南一号館は宮内省内匠寮の設計で、1927年3月に学習院高等科の「理科特別教場」として建設された。出窓式として作られた。

48号 我が国初のNMR分光器用電磁石


核磁気共鳴(NMR)の発見は1946年だが、1949年に創立したばかりの電気通信大学で、安定した磁場の電磁石を組み立て、磁気共鳴の信号を検出したばかりでなく、水素、フッ素、ナトリウム、銅、コバルト、燐、臭素、インジウムの原子核の磁気能率を測定した。中でも銅核において世界初の測定を実現したのは、大きな業績であった。

49号 島津製作所 創業記念資料館および所蔵理化学関係機器・資料等


島津源蔵(1839-1894)は、1870年に開設された京都舎密局に出入りし、教育用理化学器械の製造を始めた。1875年には島津製作所を創業した。

50号 銅アンモニウムレーヨン製造装置「ハンク式紡糸機」および関連資料


旭化成(株)のベンベルグ工場は現在、世界で唯一銅アンモニウムレーヨンとして知られる再生セルロース繊維「キュプラ」を製造する。

1928年にドイツのJ.Pベンベルグ社と旭化成の前身日本窒素肥料との間に技術導入/資本提携契約が結ばれ、日本ベンベルグ絹糸㈱が設立された。
1931年には現在のベンベルグ工場で生産が開始され、1949年に改良を加えた新型「ハンク式紡糸機」(三菱重工製)が導入された。

2020年
第11回
51号 タンパク質(チトクロムC, タカアミラーゼA)の3次構造模型


大阪大学蛋白質研究所の角戸正夫らのグループがカツオの還元型シトクロムCの構造について1973年に高分解能解析に、1980年にタカアミラーゼAの高分解能で成功した。

52号 日本の近代化学教育の礎を築いた舎密局の設計図(大阪開成所全図)


1869年にオランダ人K.W. Gratamaを教頭に大阪に舎密局が開校された。

53号 日本初の純国産「金属マグネシウムインゴット」


1930年に理化学研究所で苦汁を原料に溶融電解法による金属マグネシウムの工業生産が開始された。

日満マグネシウム(理化学研究所の事業会社で、現在名は宇部マテリアルズ)で試作に成功、同社直江津工場で生産された。

54号 日本初の西洋医学処方による化粧品「美顔水」発売当時の容器3


和歌山の桃谷政次郎は1885年に西洋医学処方による薬用化粧水を開発、「美顔水」として販売、桃谷順天堂を創業した。

2021年
第12回
55号 日本の石油化学コンビナート発祥時の資料(所蔵:三井化学)


日本の石油化学第一期計画のトップを切って1958年に三井石油化学岩国のエチレン2万トン設備が稼働した。

56号 苦汁・海水を原料とする臭素製造設備と磁製容器(所蔵:東ソー・マナック)


臭素の製造には苦汁(ニガリ)を原料とする方法と、海水から直接製造する方法がある。

東洋曹達は1941年、海軍から大量生産の要請を受け、海水直接法を採用した。
マナックは1963年まで苦汁から生産していたが、かつての同業から石製臭素蒸留塔を譲り受けた。

57号 再製樟脳蒸留塔 (所蔵:日本テルペン化学)


樟脳は樟の精油主成分で、直下式水蒸気蒸留法で製造されていたが、残る樟脳生油中にも樟脳が溶けていることが分かり、捨てられていた生油から「再製樟脳」を採る技術が開発された。
1912年完成のドイツ製の加熱水式減圧蒸留塔は1917年に焼失したが、日本テルペン化学の前身の再製樟脳㈱により1920年に国産で再建された。

日本の新型コロナワクチンの最大問題はワクチンの入手問題であるが、注射器の問題も大きい。

ファイザーのワクチンは、小瓶に1.8 mlの塩化ナトリウムを加えて希釈し、注射剤2.25 mlが得られる。各患者に与える注射は0.3mlとなっている。

計算上では2.25 ml ÷ 0.3ml =7.5 で、7回の投与は可能である。

日本で一般に使われている注射器は注射器の端に薬が残る構造になっている。残った分は捨てざるを得ず、1回で0.3ml 以上が必要となり、1瓶で5回分となる。

欧米ではその部分にゴムを詰め、薬が残らない Loaded 注射器が流通している。日本ではニプロがLoadedタイプ注射器をタイで製造しているが、 製造能力は月50万本である。同社では4~5カ月かけてタイの工場の設備を増強し、製造能力を 数百万本に引き上げるが、増産分は9~10月ごろに国内に届く見通し。 

2021/2/16 ファイザーワクチン「5回」問題

日本の最初の接種はこのニプロの注射器を使用したが、河野大臣は3月5日、高齢者向けの ワクチン接種をめぐり、1瓶から6回接種できる特殊な注射器の調達が4月12日の接種開始に間に合わない、と発表した。当面は1回分を廃棄することになり、少なくとも3月中は廃棄が出る 。


最近、ワクチン注射器について、下記が話題になっている。

Source:  https://www.mbs.jp/news/kansainews/20210308/GE00037322.shtml


ファイザーのワクチンは、
計算上では2.25 ml ÷ 0.3ml =7.5 で、7回の投与は可能である。

実は、欧州や韓国ではLoaded注射器でも7回接種が可能であることが話題になっている。

但し、一人0.3mlは絶対必要であり、これを確実に実施しようとすれば、どうしても余分に吸い取りこととなり、個人差により7回分が取れないケースが多出した。7回目の分が0.3ml未満になると捨てざるを得ない。
7回をルールにすると、7人目の人が注射できないことになる。

韓国の新型コロナワクチン予防接種推進団は「7回分を取れる場合も取れない場合もあるため、ワクチン計画を7回分として計算することはできない。また、変数があまりにも多い。目で見てワクチン残量が1回分あると思って注射器に入れたものの実際には0.1mlでも不足していれば、注射器を捨てることになる」と説明した。

このため、欧州でも韓国でも7回説は消えた。韓国の専門家は「ワクチンを分ける人たちのストレスも考える必要がある。現場に余裕がなければミスが生じやすく、疲労感がまた別の事故を招く」と指摘した。
韓国の疾病管理庁は「7回分を取って使用すべきという指針」は出さず、「6回分をとっても1回分として使用できるほど十分な量が残る場合、廃棄する必要ない」と伝えた。

宇治徳洲会病院の方法については、実現すればメリットは大きいが、下記の問題があると思われる。

 ・欧州や韓国のLoaded注射器と同様、普通にやって常時7回分がとれるとは思えない。

 ・針の長さはギリギリで、個人差もあれば、注射の角度の違いで筋肉に入らない可能性がある。

田村厚生労働相は「皮下注射用で針が短いため、脂肪が少なく筋肉まで針が届く人でなければ使えない。エコー検査で調べて筋肉まで届くのであれば、医療機関でやってもらうことは否定しない」とした。

河野太郎規制改革相は、「大いにやってほしい。アイデアをどんどん出してもらい、柔軟性を持ってやる非常に良い例だ」と歓迎した。

付記

河野大臣は3月11日、一転して、「政府としては推奨はしない」と述べた。インスリン用注射器の生産や在庫量が限られ、糖尿病患者らから懸念の声が出ていることに触れ、「当初の目的に足りなくなるようなことがあってはいけない」と慎重な対応が必要との認識を示した。

加藤官房長官は「適正な接種を担保する必要があり、国としてこの方法を広く推奨する予定はない」としている。


2. テルモの改良注射器

医薬機器メーカーの「テルモ」は、ひと瓶で7回の接種が可能で日本人の身体に合わせた注射器を開発し、3月5日に厚生労働省が製造・販売を承認した。

2009年に発売した皮下注射を想定した針植え込み式注射器「FNシリンジ」を改良、針を最長の13mmから3mm 長くし、16mmとした。FNシリンジは針が注射器に植え込まれており、注射器を押し切った後も内部に薬液がほとんど残らない構造となっている

筋肉注射には一般的に長さ25mmの針が使われるが、日本人の体形を分析したところ、16mmあれば十分な効果が得られると判断した。

薬液が残る量は0.002ミリリットルで、従来の一般的なローデッド品に比べて約15分の1に減らせる。針が短くなりさらに注射器と一体化したことで内部にとどまる薬液量が減った。

社内実験では、ファイザー製のワクチンひと瓶から7回分を取ることができたという。


これも常時7回分取れるとは思えない。しかし、Loaded注射器と同様、6回なら大丈夫であろう。 針の長さも問題ないと思われる。

同社の甲府工場で今月末にも量産体制が整う見通しで、2021年度に年2千万本を生産する計画。

付記

ニプロは7回接種できる注射器を開発、年内にも大館工場の既存ラインで生産を開始する。3月13日の日本経済新聞が報じた。

針の長さは、筋肉注射で一般的な25mm で、インスリン注射用の約2倍あり、接種対象者の皮下脂肪の厚さをエコー検査で確認する必要がない。
形状を工夫し、接種後に注射器に残る薬液は0.002ミリリットルと、ニプロの6回接種用と比べ30分の1に減らす。


3. 韓国品

既報の通り、韓国では3社がLaoded注射器を大量に生産している。「LDS=Low Dead Space(最小残留型)」と呼ばれる。

Poonglim Pharmatechは、世界20カ国から2億6千万個以上の注射器購入の要請を受けたと伝えられた。日本から約8000万個の購入要請があったとされる。

2021/2/20 コロナワクチンの特殊注射器、日本が韓国に供給要請? 

朝日新聞デジタル(2021/3/6)によると、日本の業者からも2月下旬に、5千万個以上の納品を打診されたという。
日本の輸入には医薬品医療機器等法に基づき、厚労省の認可が必要だが、申請に問題がなければ、認証審査は2週間程度で終わるという。

しかし、厚労省では「注射器の確保に向けて、国内外のメーカーの製品や生産能力を調査している段階」という。

英国は2020年12月31日深夜、EUから離脱したが、その後、いろいろの問題が出ている。


(批准)

2020年1224日、欧州委員会と英国政府の間で通商・協力協定に合意した。

EUのMichel大統領とvon der Leyen欧州委員長は12月30日、英国との間で合意したFTAなど将来関係についての文書にブリュッセルで署名した。

EUは12月28日の加盟国大使級会合で、EU欧州議会の批准を待たず、31日深夜に暫定適用することを全会一致で承認している。

英国下院は12月30日、521対73の大差で離脱関連法案を承認した。これを受け、Johnson英首相は郵送された文書にロンドンで署名した。
同日夜、英国上院がこれを承認、エリザベス女王の裁可も得て法律となった。

これで12月31日深夜の英国のEU正式離脱が確定した。

2020/12/25 英EU、通商協定で合意

欧州議会本会議での批准決議までには、合意文書の精査、EU加盟各国の言語への翻訳、そして貿易・外務関連の委員会審議が必要であり、これには相応の日数がかかる。そこで、今回の英EU間FTAは、これらのプロセスを年明けに先送りし、EU加盟各国政府の合意の下で、2021年初めから暫定的に発効する形をとった。

EUは2021年2月に、批准期限を1カ月遅らせ、4月末とすることを求め、英国は了承した。
北アイルランドとの通商などで早くも対立が見られており、批准の遅れは不確実性をいっそう高めかねない。

ゴーブ英内閣府担当相は欧州委員会に宛てた2月23日付の書簡で、EUが4月末までに「域内の必要条件を満たす」ことを期待していると表明。英国は「離脱協定の暫定適用期間の延長をこれ以上要請されることはないと考える」と、くぎを刺した。


(北アイルランド問題)

北アイルランド問題では、英EU合同委員会が2020年12月17日に「アイルランド・北アイルランド議定書」で合意し、英国とEUは、北アイルランドを実質的に「EU圏内」としてステータスを維持することが決まった。

これにより、EUと北アイルランド間の貿易関係については、英EU貿易協力協定の適用除外とし、英本土と北アイルランドの間の通商関係は、EUとしては「対外貿易関係」として扱うこととなった。英本土から北アイルランドに持ち込む財については、EUの規制が適用される。

英国は一旦、これを骨抜きにする Internal Market Bill をつくったが、EUとの合意に違反する部分を削除することに合意した。

しかし、北アイルランド問題について、トラブルが続出した。

1月以降の規制が不透明なことを背景に、英国の大手小売店などが北アイルランド向けの宅配貨物発送を停止したり、同地域からの注文を取り消したりするなどして、混乱が広がった。


英政府とEUは一時的な対応策をとった。

(宅配貨物)

英歳入関税庁は2020年12月31日、宅配事業者や郵便事業会社ロイヤル・メールなどが本土から北アイルランドに移送する宅配貨物について、1月1日~3月31日の間、北アイルランドの事業者の搬入時の税関申告を最大3カ月間繰り延べ可能とする措置を発表した。

(鶏肉以外の冷蔵ひき肉・ソーセージなど)

英環境・食糧・農村地域省は2020年12月14日、特定の肉製品の英本土からEUおよび北アイルランドへの輸出・移送が制限されたり、許可されていないことに対する救済措置として、6カ月間は北アイルランドへの移送を可能とする特例措置を発表した。

その後の恒久的な措置はまだ決まっていない。

(一部の食品)

英本土から北アイルランドへの移送について、スーパーマーケットやそのサプライヤーなど一部事業者を対象に、一定の条件の下で輸出衛生証明書、植物検疫証明書などの添付を3カ月間免除する措置も公表。

動物由来加工製品に植物性製品が使用されている「混合食品」、植物及び植物製品、非動物性由来の高リスク食品及び飼料

これらは臨時の措置で救済したが、期限終了後に混乱が予想される。

英本土と北アイルランド間の食品流通については、効率的に行われるよう、新たな電子システムを整備することとされている。

食品輸送に関しては、2月2日に英国から欧州委員会向けに、手続きの緩和措置を少なくとも2023年1月まで延長するよう要請したが、合意には至らなかった。

英国の北アイルランド相は3月5日、スーパーマーケットとそのサプライヤーに対して、英本土から北アイルランドへの食品移送において求められる証明書の提出免除など、現在の緩和された措置を2021年10月1日まで延長するなどとした声明を一方的に発表した。

欧州委員会は、「英国政府による Internal Market Bill に次ぐ2度目の国際法違反だ」と強く批判する声明を発表した。

「英国が離脱協定に違反する、もしくは違反をする意図がある場合は、欧州議会はEU英国間の協定を批准することは難しい」と述べ、欧州議会による批准にも影響を与える可能性を示唆した。

付記 

欧州委員会は3月15日、英国がEU離脱協定および議定書に違反しているとして、英国に対する義務不履行手続きに着手したと発表した。
手続きの第1段階として欧州委は英国に「公式通知状」を送付し、1カ月以内に「見解」の表明を求めた。
行政的な手続きで問題が解決しない場合、欧州委は、EU司法裁判所に提訴し、英国に対し制裁金を求めていく可能性も辞さないと警告した。


(新型コロナワクチン)

欧州委員会は1月29日、新型コロナウイルス対策ワクチンのEU域外への輸出に対し、許可制度を導入すると発表した。

2021/3/5 イタリア政府、新型コロナワクチンの輸出を差し止め  

これが発表されると、英国ではこれが北アイルランド議定書に抵触するのではないかと批判の声が巻き起こった。

北アイルランド自治政府首相は、北アイルランドとアイルランドの間に「厳しい国境管理」を要することになる「信じられないほど敵対的な行為」だと批判した。

こうした批判を受けて欧州委員会は、規制は「北アイルランド議定書には影響しない」と声明を発表した。

ドイツ政府は3月5日、脱原発で生じた損害を補償するため、総額約24億ユーロ(約3100億円)を支払うことで電力4社と合意したと発表した。

ドイツでは2002年にシュレーダー政権が脱原発の方針を決めたが、2010年になってメルケル政権が原発の稼働期間の延長を打ち出した。

2011年3月11日の福島第一原発事故で、この決定が覆ることになった。

メルケル首相は3月11日の事故を受け、翌12日に国内すべての原発の点検を表明し、14日には前年(2010年)に決めたばかりの「原発の運転延長政策」の凍結に踏み込んだ。

さらに3月15日には、国内17基の原発のうち1980年までに稼働を開始 (32年の運転年数期限到達)した7基の運転を3カ月間停止すると発表した。(このほか、Kruemmel 原発は故障で停止中で、実質8基が停止となる)

その後、メルケル政権は、福島原発事故後のドイツ国内の反原発運動の圧力に抗いきれずに、すべての原発を2020年までに廃止するという以前の決定を受け入れることになった。

2011年6月末のドイツ連邦議会で、この決定が513対79で可決された。
この決定で、8基の旧型の原発が2011年に廃止され、9基の原発は2022年までにすべて廃止されることが確定した。

VattenfallのKruemmel 原発は2011年3月時点で休止していた。

電力会社RWE は2011年4月1日、3月15日の政府によるBiblis原発の運転停止命令は行政手続き法に違反していたとして、メルケル政権とヘッセン州政府を相手取り、行政訴訟を起こした。政府の安全規則に従っており、停止命令の法的根拠はないと主張した。

他社も相次いで訴えたが、電力会社の敗訴が続いた。

2016/7/12 ドイツの原発停止訴訟、電力大手の敗訴続く 

原発事業者のRWE、E.ON とスウェーデンに本社を置く Vattenfall の3社が所有権、職業及び事業の自由を侵害されたとして、憲法裁判所に訴えた。
3社とも脱原発に異議はないとした上で、適切な損害賠償(190億ユーロ)を求めた。

これに対し、憲法裁判所は2016年12月6日、原発を操業していたエネルギー企業各社が補償を求める権利を認める判断を下した。

原子力発電からの脱出を加速させたことは容認できるとし、さらに段階的廃止の決定自体も合法だとしながら、企業側が政府から「適切」な補償を受け取る権利があると認めた。

憲法裁判所は補償額の決定は行わない。政府に対し、2018年央までに補償額を決めるよう指示した。

2016/12/9 ドイツの憲法裁判所、原発廃止で原発事業者の補償請求権を認める

今回、政府は憲法裁判所に訴えた3社のほか、EnBWも加えて、補償金の支払いで和解した。

内訳は下記の通り。 (百万ユーロ)

電力会社 対象原発 補償額
EnBW Phillipsburg 1
Neckarwestheim 1
80
EOn Isar 1
Unterweser
42.5
RWE Biblis A
Biblis B
880
Vattenfall
(Sweden)
Brunsbüttel
Krümmel
1,425
合計 2,427.5


補償額は、即時停止により得られなかった収入 (at a rate of EUR33.22/MWh)と、停止命令前に稼働期間延長のために行ない、無駄になった投資額の合計とされる。

米議会上院は3月6日、新型コロナウイルスの流行で打撃を受けた家計や企業を支援する1兆9千億ドル規模の追加経済対策法案を一部修正し、可決した。

上院民主党内部でも穏健派の議員が高い失業保険や最低賃金引き上げは経済を過熱化させるとの懸念を持ち、内部調整に時間がかかった。

失業保険の上乗せで、一時は破談になりかけたが、最後に妥協した。

既報の通り、① 予算決議案→財政調整法という特別な手法をとることにより、共和党のフィリバスターを避けた。

2021/3/1 米下院、1兆9千億ドルのCOVID-19対策法案可決 

共和党は「新型コロナと関係のない項目が盛り込まれている」と反発し、バイデン大統領が掲げる「融和」路線は政権発足直後から行き詰まった。

共和党は "vote-a-rama"という手法で対応した。修正案を次々に出すもので、通す意図も、通る可能性もないものを次々に出した。3月5日の深夜に始め、6日の正午頃まで3ダース程度の提案を行った。ほとんどの議員が居眠りをし、なかには議場でストレッチをする議員もあった。
(財政調整法では審議時間が制限されているため、フィリバスターの代わりにはならない。議員による支持者へのPRが主な目的といわれている。)

最終的に、賛成50、反対49で、民主党(及び民主系無所属)だけの賛成で可決した。(棄権1 は義父の葬儀のため欠席)
仮に50対50になっても、副大統領(上院議長を兼ねる)の1票で可決していた。

  共和党 民主党 民主系
無所属
合計
賛成 48 2 50
反対 49 49
棄権 1 1

合計

50 48 2 100


現在の追加経済対策法での
失業保険の上乗せを3月14日までとなっており、民主党はその期限までに延長を決めたい。

このため下院で3月9日に上院での修正法案を再可決し、バイデン大統領が署名して成立させる見通し。

バイデン政権下で初めての巨額財政出動となる。IMFは米国のGDPを今後3年で累計5%程度、押し上げると分析している。
景気回復へ追い風となる一方、感染拡大が本格化した2020年3月以降の経済対策は総額6兆ドル規模に達する ため、インフレを懸念する声も上がっている。


主な内容:

$1,400 checks per adult & kid

ほとんどの人に1400ドルの一時金が支給される。ただし、下院では、年収10万ドル以上は対象外としたが、上院では更に引き下げ、8万ドル以上とした。

Unemployment @ $300 thru Sept. 6

失業保険の州支給分への上乗せ(3月14日に期限切れ)は、現行は週300ドルの上乗せとなっているが、下院は400ドル上乗せとした。
しかし、これに対する反対が強く、最終的に現行通りの300ドル上乗せに修正した。9月6日まで延長される。

$350 billion for cities, states, tribes

コロナ対策に苦しむ州や地方政府に3500億ドルが支援される。

6-17歳の子供への$3,000/yr、 0-6歳のこどもへの$3,600/yr の手当

$170B for schools 学校の対面再開に向けた対策費

$100B 公衆衛生

既報の通り、下院が通した法案には最低賃金を15ドルに引き上げることが含まれているが、「予算決議」の下では「最低賃金引上げ」は対象外であると判断された。
このため、上院ではこれは削除された。

今後、個別議案として審議される。

中国の第13期全国人民代表大会(全人代)の第4回会議が3月5日、北京の人民大会堂で開幕した。今年、共産党創立100周年を迎え、重要な節目の年と位置づけられる中での全人代である。

昨年は、新型コロナウイルスの感染拡大によって延期を余儀なくされ、5月22日に開かれた。

本年の議事は、
(1)政府活動報告の審議(2)国民経済・社会発展の第14次五カ年計画(2021-2025年)と2035年までの長期目標綱要草案の審議(3)計画報告及び草案の審議(4)予算報告及び草案の審議(5)「中華人民共和国全国人民代表大会組織法(修正法案)」の上程に関する全国人民代表大会常務委員会議案の審議(6)「中華人民共和国全国人民代表会議議事規則(修正草案)」の上程に関する全国人民代表大会常務委員会議案の審議
(7)「香港特別行政区選挙制度の整備に関する全国人民代表大会の決定(草案)」議案の審議
(8)全国人民代表大会常務委員会活動報告の審議(9)最高人民法院(裁判所)活動報告の審議(10)最高人民検察院活動報告の審議。

李克強首相は政府活動報告で、2021年の実質経済成長率目標を「6%以上」と設定した。

昨年は「歴史上極めて尋常でない1年だったが、新型コロナウイルスの感染拡大の抑え込みで重要な成果をあげ、世界の主要国で唯一、プラス成長を実現した」と実績(+2.3%) を強調し、経済成長率の数値目標について、ことしは6%以上としたと明らかにした。「経済運営の回復状況を考慮したもので、持続可能で健全な発展の実現に有益だ」と説明した。

昨年は新型コロナウイルスの蔓延で、目標を発表しなかった。

国際機関などの予測は多くが8%前後としており、達成が可能な最低ラインに設定したものとみられている。


雇用については、失業率を5.5%前後にするとした。都市部の新規雇用は、昨年の900万人から引き上げ、1100万人以上とした。

昨年は失業率は6%前後とした。2019年は5.5%と設定していたが、新型コロナで失業が増えたため、雇用対策を打つものの、悪化を見込んだ。都市部の新規雇用は900万人以上とした。

景気改善を踏まえ、2021年の財政赤字はGDP比約3.2%を見込んだ。(2020年の見通しはGDP比3.6%以上)

新型コロナで打撃を受けた経済を支えるため昨年初めて発行した特別国債(1兆元)については、今年に発行する計画はないとした。

2021年の消費者物価指数(CPI)伸び率目標は約3%に設定した。昨年は3.5%前後を目標としていた。

2021年予算案では国防費を前年比6.8%増の1兆3553億元(約22兆6000億円)とした。昨年の6.6%から上回り、軍拡路線を堅持する。

経済政策の基本方針となる本年からの第14次5カ年計画(2021~2025年)と2035年までの長期目標についても説明し、「発展の質や効率の向上に力を入れ、経済の持続的で健全な発展を保つ」と述べ、成長の速度ではなく、安定的で質の高い成長を目指す姿勢を改めて強調した。

第14次5カ年計画では、海外からの投資も利用しつつ、国内の需要と供給両面を強化して国内経済の底上げを図る「双循環」という成長モデルを構築するとした。海外の制裁やサプライチェーンからの中国外しに影響されない体制を築く。

きっかけは、2020年5月14日の政治局常務会議における「市場規模が極めて大きく、今後も拡大余地が大きい我が国の内需の優位性を十分に発揮することによって、国内外の双循環が互いに促進する新発展モデルを構築する」との決定である。習近平国家主席は2020年7月、「国内大循環を主体として、国内外の双循環が互いに促進する経済の新発展モデルを目指す」と表明した。

しかし、「双循環」の具体的な説明はない。

日本総研のレポート(2020/10/28)は、「サプライチェーンの強靭化」、「消費の拡大」、「輸出の促進」の3つの狙いを持つ概念としている。

今後5年間の成長率目標は「年度ごとに打ち出す」として明示しなかった。(2020年までの5カ年計画では、5年間の成長率目標を「6.5%以上」と掲げていた 。)

中国が統制を強める香港をめぐって李首相は、「外部勢力の干渉を断固防ぐ」とし、「憲法と香港基本法の実施にかかわる制度や仕組みをより完全なものにしなければならない」と述べた。
香港の選挙制度を見直して 、出馬資格の審査制度を導入し、民主派を排除する案を決める。

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イタリア政府は3月4日、イタリア国内で製造されたAstraZenecaのワクチンのオーストラリアへの輸出を差し止めたと発表した。

AstraZenecaはイタリアのAnagniにあるCatalent Biologicsの工場にワクチンのvial 充填、包装を委託している。Catalent BiologicsはJohnson & Johnsonのワクチンも扱う予定。

AstraZenecaはイタリア政府に対し、ここから豪州への25万回分のワクチン輸出を申請したが、イタリア政府はこれを差し止め、欧州委員会もこれを支持した。

EUが加盟国に義務づけているワクチン輸出に関する措置に基づいたもので、輸出が差し止められたのは初めて。

イタリア政府は、オーストラリアに輸出するワクチンの量がおよそ25万回分とイタリアやEU加盟国に供給されている量と比べて多いことや、イタリアやEUでワクチン不足や供給の遅れが続いていることなどをあげている。

2月に就任したばかりのMario Draghi首相がEU首脳に対し、ワクチン接種を急ぐ必要があり、約束した分を供給しない医薬会社をやっつけるべきだと述べた数日後に発表された。

EU諸国のワクチン接種は、イスラエルや英国と比べ遅れているが、AstraZenecaは1月に第1四半期のEUへの供給を90百万回分から40百万回分に削減し、その後、第2四半期の供給も50%カットすると伝えている。その後、第2四半期の削減分は欧州外から供給するよう努力しているとした。

Pfizerもワクチン増産に伴う製造工程の変更を理由に、欧州諸国とカナダ向けのワクチン供給を一時的に削減すると明らかにしていた。

欧州委員会は1月29日、新型コロナウイルス対策ワクチンのEU域外への輸出に対し、許可制度を導入すると発表した。

EUが事前購入合意を締結した製薬会社が相次いで供給の遅れを発表し、欧州委は危機感を強めた。
事前購入合意の速やか、かつ完全な履行と透明性の確保を求めている。

概要は次の通り。

対象 欧州委が事前購入合意を締結した製薬会社のワクチンを、
EU加盟国から輸出する場合

ただし、人道支援やワクチン分配の国際的枠組み「COVAX」に基づく輸出は規制の対象外
多くのEU周辺国への輸出は除外された。

輸出社 加盟国に通知を行い、加盟国の許可を得なければならない。
許可 輸出が、事前購入合意に基づくEUへのワクチン供給を妨げないと判断する場合にのみ、欧州委の意見に基づいて出す
目的 「ワクチンのEU市民への速やかなアクセスを確保し、現在の不透明なEU域外への輸出に対処すること」
期間 2021/1/30~3/31

3月4日現在、これを6月末まで延長することを検討中。加盟国の多く(独、仏を含め)が延長に賛成


付記

欧州委員会は3月11日、新型コロナウイルスワクチンの輸出制限措置を6月まで延長すると発表した。

欧州委によるとEUはバルカン諸国やアフリカへの支援用も含め、最大26億回分のワクチンを契約しているが、EUへのワクチン供給が遅れているため延長に踏み切った。

発表文によると、英国やカナダ、日本など31カ国に向け3400万回分(うち日本は270万回分)のワクチンの輸出が許可されたという。一方で承認されなかったのは1件だけ。

英財務相は3月3日、2021年度(4月~3月)の予算案を発表し、新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受けた経済を支援する目的で講じた緊急措置の延長を明らかにした。
一方でコロナ禍における巨額の経済支援費用を賄うため、黒字企業には負担を求めることになると述べ、
2023年4月から大企業向けの法人税率を現行の19%から25%に引き上げると発表した。

財務相は「政府は企業が新型コロナのパンデミックを乗り越えられるよう、1000億ポンドを超える支援を提供している。従って企業側に景気回復への貢献を求めることは公平であり必要だ。税率変動後も英国の法人税は依然としてG7の中で最も低い」と述べた。「政府債務の問題を未来へ放置するのは責任ある財務相のやり方ではない」と理解を求めた。


イングランドが3度目のロックダウンを続ける中で、短期的には雇用を守ることが優先事項であると明示、今年と来年で650億ポンド(約9兆7100億円)のコロナ対策費を追加する。

予算案の主な内容は以下の通り。3月から6月下旬にかけて段階的にロックダウンを解除する方針で、それまでの支援策も盛り込まれた。

  • 一時帰休労働者向けの支援策(80%補填)は9月末まで継続、7~9月は企業に1~2割の負担金を求める。
  • 飲食や宿泊、娯楽業を対象にした付加価値税(VAT)減税(通常の20%を5%に引き下げ)は9月30日まで半年間延長
  • 不動産購入時に課す印紙税の減免を6月30日まで延長
  • 今年の英経済成長率予測は4%
  • 来年の経済成長率予測は7.3%と、昨年11月に見込んだ6.6%から引き上げ

コロナ対応への財政出動の結果、2020~21年の政府の借入金の合計は約5900億ポンド(約88兆円)に達する見通し で、政府債務の残高が当面はGDPを超えた状態が続くと予測する。

ーーー

法人税率の引き上げは1974年以来、約50年ぶり。

英国の法人税率(大企業対象)は1999年から30%であったが、2008年に28%に引き下げ、キャメロン内閣は2011年に将来的に17%まで引き下げることを決めた。

2016年3月に、当時20%であったのを2017年度に19%、2020年度に17%に引き下げると発表した。しかし、2020年度予算案で、2020年度と2021年度は19%に据え置くとしていた。

今回、2023年度に大企業について25%に引き上げる。但し、中小企業を中心に英国の7割の企業の税率は19%のままとする。

年間利益が25万ポンド(約3700万円)以上の企業は税率25%、5万ポンド以下の企業は19%据え置き、その間の利益の企業は19%~25%の税率となる。

source:http://jichisoken.jp/publication/monthly/JILGO/2019/09/tnishimura1909.pdf

 

富山市のジェネリック医薬品大手 日医工㈱は3月3日、富山県より、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」に基づく行政処分を受けたと発表した。

内容は下記の通り。

対象 医薬品製造業(富山第一工場 医薬品製造販売業(日医工)
処分内容 医薬品製造業の業務の停止(32日間) 医薬品製造販売業の業務の停止24日間)
処分理由 品質試験不適合品を製造販売承認書と異なる製造方法で適合品となるよう処理

品質試験等における不適合の結果について、適切な措置を実施せず

医薬品製造管理者が、医薬品の適切な製造管理及び品質管理を行うよう管理監督せず

製品の適正な製造販売を行うために必要な配慮を怠り、かつ、製造販売しようとする製品の品質管理を適正に行わなかった

富山第一工場において製造販売承認書の内容と異なる方法で製造された医薬品を製造販売した

医薬品等総括製造販売責任者は、必要な品質管理業務を実施せず


付記

厚生労働省は3月24日午前、富山県などと合同で、富山第一工場に医薬品医療機器法に基づく立ち入り調査に入った。
都道府県による業務停止命令が続く中で国が立ち入り調査を行うのは極めて異例。今回、国が調査に踏み切った背景には、ジェネリック医薬品への信頼が揺らぐ中で品質管理が適切に行われているか、確認を徹底するねらいがあると見られる。


富山県によると、不正は2020年2月、PMDA(医薬品医療機器総合機構)や富山県などが同社の富山第一工場を無通告で査察したことがきっかけで発覚した。

日医工は2020年4月7日、同社が製造する12成分15品目を自主回収すると医療関係者への周知を開始した。重篤な被害は考えられないもの(クラスⅡ)としている。

回収の内訳は、
①安定性モニタリングにおいて承認規格に適合しないもの「8成分9製品」、
②出荷時の定量試験で実態と手順に齟齬が生じていたもの「2成分3製品」、
③出荷試験の溶出性で社内規格を下回る製品が出荷されていたもの「1成分1製品」、
④安定性モニタリングにおいて定量試験および純度試験(類縁物質)が承認規格に適合しないもの「1成分2製品」であった。

更に5月18日に、富山第一工場で製造する8成分9品目について自主回収を開始した。
4月に12成分15品目の自主回収を実施し、同工場で製造する有効期限内全製品で照査を行った結果、8成分9品目で出荷試験の記録に欠落が判明、一部製品で承認書に記載のない工程の実施や溶出性試験、品質試験での逸脱が確認された。

田村社長は決算説明会で、一連の自主回収の経緯を説明し、謝罪した。4月に発覚した12成分15品目の自主回収の後に、「外部機関を交え、富山第一工場における有効期限内全製品の調査を行った。そのなかで今回の8成分9品目につき出荷試験の記録に欠落のあった製品も存在することが分かった。これらは製品の安全性に疑義を生じさせるものではないが、製品の信頼性に疑義が生じるものであることから所轄官庁である富山県と相談し、自主回収の判断に至った」と説明した。

7月31日には胃炎・胃潰瘍治療剤について、安定性試験結果の確認に於いて、試験検体の保管状況等に逸脱があり、正確な試験結果が得られていないことが判明、3年の使用期限内に承認規格外になる可能性があるとして回収した。

9月16日には、血糖降下剤について、一部のロットから基準を上回る発がん性物質が確認されたため、また健胃消化剤ジアスターゼ及びパンクレアチンについて長期安定性試験において承認規格外となる可能性が否定できないとして、自主回収を行った。

更に11月9日に、ランソプラゾールカプセルなど6成分7品目の自主回収(クラスⅡ)を開始した。富山第一工場で製造しており、承認書に記載のない工程を実施したり、承認規格を下回っていたりしたことが発覚した。

2021年1月13日、同社は新たに38品目の自主回収(いずれもクラスⅡ)を開始した。一部対象製品については、効果発現が遅延する可能性や有効性低下の懸念などがあるものの、いずれも重篤な健康被害が発生する恐れはないと考えられるとしている。

最終的に、2020年4月から2021年1月にかけて、合わせて75品目の製品の自主回収を繰り返した。

工場では、出荷試験などで「不適合」とされた製品について少なくとも2011年ごろから国が承認していない手順で再試験や再加工を行い、「適合品」として出荷していたことなどが、会社の依頼を受けた外部の弁護士による調査などで確認されたという。

調査などによると、ジェネリック医薬品の需要の高まりを受けて特に2014年ごろから生産が急増したが、人員や設備を確保しないまま過剰な生産計画を立て、試験で不適合となった製品を廃棄しなくて済むよう再試験などを行っていた。

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同じジェネリック医薬品大手の小林化工が2月9日に116日間の業務停止命令を受けた直後であり、ジェネリック医薬品メーカーに対する不信感が高まるのが懸念される。

政府は医療費引き下げのため、ジェネリック医薬品使用を勧めているが、こういう状態が続くと、ジェネリック品の使用をためらう動きもでてくる。

2021/2/12 小林化工に116日間の業務停止命令 

積水化学は3月1日、同社の100%子会社の積水マテリアルソリューションズが「抗ウイルス加工剤配合エタノール水溶液スプレー」について、新型コロナウイルスへのウイルス不活化試験を外部研究機関で実施し、次の効果を確認したと発表した。

・一定の条件下でこのスプレーを新型コロナウイルスに1分間接触させると、ウイルス感染価が99%以上減少した。

・一定の条件下でこのスプレーを噴霧したフィルムに、噴霧して1か月後に新型コロナウイルスを5分間接触させると、ウイルス感染価が99%以上減少した。

これらの結果により、抗ウイルス加工剤配合エタノール水溶液スプレーおよびその噴霧フィルムは、新型コロナウイルスを短時間で不活化することが判明した。
また、1カ月静置させた噴霧フィルムで効果があったことから、不活化効果の長期継続が期待できる。


スプレー成分は
抗ウイルス加工剤成分、発酵アルコール、イオン交換水

試験実施機関は、①
奈良県立医科大学 及び ②MBTコンソーシアム(「Medicine-Based Town=医学を基礎とするまちづくり」の理念を達成するために設立され、現在ほぼすべての業種から170社以上が参加)

詳細 https://www.sekisui.co.jp/news/2021/1358941_37322.html


積水マテリアルソリューションズは2017年10月、「ナウケア™(NOWCARE) ウイルス除去(エンベロープ有)エアゾールスプレー」を発売した。

積水化学グループでは、長年培ったプラスチック加工技術を生かした抗ウイルス加工剤を開発し、積水マテリアルソリューションズより2012年に抗ウイルス加工剤を発売した。これを自社でスプレーとして製品化した。

NOWCAREは、ドアノブや手すり、便座、スイッチなど、人が接触する物に対してスプレーすることで、対象物にウイルス除去効果を付与 する。
1回のスプレーで約1週間ウイルス除去効果が持続する。

インフルエンザウイルスなどエンベロープ("脂肪の膜")を有するウイルスで効果を確認している。発売後に蔓延した新型コロナウイルスもエンベロープを有している。


成分:

主成分:陰イオン系ナトリウム塩
添加物:エタノール、精製水、アルコール類

仕組み:

単糖の一種であるノイラミン酸と類似したイオン基を有したポリマーで、 エンベロープを持つウイルスを捕捉する。

ドアノブや手すり、便座、スイッチなど、人が接触する物に対してスプレーする。
室内に浮遊するウイルスが塗布面に付着すると、ウイルスを吸着して離さず、塗布面に手が触れても、ウイルスが手にくっつかない。

効果:


同社では、この発表時点で、「全てのウイルスに効果があるわけではありません」としていたが、今回、新型コロナウイルスについて効果を確認した。

米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のAnthony Fauci 所長は1月22日、今後2週間以内にJohnson & Johnson 子会社のJanssen Pharmaceutical が開発中の新型コロナウイルスワクチンがFDAから緊急使用の承認を受けるとの見通しを示した。

所長は、「J&Jのワクチンは超低温で保管する必要がないうえ、接種は1回で済むという点で、Pfizer製やModerna製とは大きく異なる」と評価した。

2021/1/26 J&Jのワクチン、2週間以内に米国で緊急使用許可

Johnson & Johnson は2月4日、新型コロナウイルスワクチンの緊急使用許可をFDAに申請した。

Fauci 所長の希望より若干遅れたが、FDAは2月27日、緊急使用を承認した。

J&Jは米国向けに3月末までに2000万回分、6月末までに1億回分を供給する見通しで、2021年には10億回分を生産する計画であった。(単独ケース)

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Biden大統領は3月2日、新型コロナウイルスワクチンについて、5月末までに米国の全ての成人の接種分を確保できる見通しだと述べた。
これまでは、7月末までに約3億人の米国民全員分のワクチンを供給するとしていた。併せて学校再開に向け、3月末までに教職員が少なくとも1回目のワクチンを接種することを目指すと表明した。

大統領は、米MerckがJohnson & Johnsonの新型コロナウイルスワクチンを生産すると発表した。J&Jの「1回接種ワクチン」の生産を加速する目的で政府がアレンジした。

Merckは米国の2つの製造設備をJ&Jのワクチン生産に充てる。1つの設備でワクチンそのものを生産し、もう一つの設備で小瓶(vial)に充填する。

保健福祉省によると、Merckが設備をワクチン生産の安全基準を満たすために改造、改善するために国防生産法(Defense Production Act)により105百万ドルをMerckに支給する。

政権発足当初から、J&Jがワクチン生産能力が十分でないことを認識し、追加の生産施設を米国中で探してきたとされる。

1月25日に米Merck (米加以外での社名はMSD : Merck Sharp and Dohme)は、同社のCOVID-19ワクチン(V590 と V591) の開発プログラムを打ち切ると発表した。2種のワクチンは、Phase 1の臨床試験で自然感染や既存のワクチンと比べ、免疫反応が劣るとデータで示されたためで、2つの新型コロナ治療薬の開発に集中する。

2021/1/26 米Merck、ワクチン開発中止 

米政権は直ちにMerckとの交渉に入った。

保健福祉省は発表を受け、これによりJ&Jは当初予定の「6月末までに1億回分供給」を「5月末までに1億回分近くを供給」に繰り上げられ、最終的にJ&Jの供給力を倍増すると述べた。

Merckは具体的な数量は明らかにしていないが、この提携は非常に意味のあるもので、J&Jのワクチン供給能力を劇的に増やすと述べた。また、この設備は自社のワクチン用のものであり、他の医薬品の生産に支障を来さないと述べた。また、他のワクチンメーカーへの協力もやぶさかでないとしている。

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加藤官房長官は3月2日、このワクチンが国内でヤンセンファーマにより治験を実施中であり、薬事申請が行われた場合には、有効性や安全性を確認のうえ、承認される手続きを踏むことになると説明した。

しかし、毎日新聞によると、契約条件のうち接種後に健康被害が出た場合の補償を政府が肩代わりする範囲を広げるよう企業側が求め、折り合いが付いておらず、日本政府内での調達の機運は乏しい という。

政府関係者は先行して米英3社と供給契約を結んでいることから「十分な量は確保できた」としているという。

実際には、このワクチンは超低温での保管の必要がないことや、1回接種という大きなメリットがあるとともに、米英3社の契約はあっても、いつ入荷するか分からない状況であり、政府の消極的な姿勢は大問題である。

米政権との姿勢の違いが極めて大きい。

武田薬品工業は2月26日、糖尿病治療薬4剤(ネシーナ錠、リオベル配合錠、イニシンク配合錠、ザファテック錠)について、帝人ファーマに販売を移管するとともに、日本における製造販売承認及びこれに関連する資産を譲渡することを決定し、帝人及び帝人ファーマとの間で資産譲渡契約を締結した。

武田薬品は以下の戦略で事業体制の変革を実行している。

- グローバル戦略に沿って主要な5つのビジネスエリア(消化器系疾患、希少疾患、血漿分画製剤、オンコロジー、ニューロサイエンス)にさらに注力、ターゲットを絞った革新性の高い医薬品に集中

- 「戦略投資の加速化」、「機動性のある組織の構築」、「変革を支えるための組織力の向上」を3つの柱に改革を進める

- 主要な5つのビジネスエリアに資源とリソースを集中し、患者のアンメット・メディカル・ニーズにさらに貢献

同社は、Shire買収と同時に、債務圧縮のために計100億ドル規模の資産売却方針を掲げ、武田薬品とShireのノンコア事業の売却を進めてきたが、2020年8月には「アリナミン」などの一般用医薬品事業を扱う完全子会社の武田コンシューマーヘルスケアを米投資ファンド大手 The Blackstone Groupに売却することを発表した。新社名は「アリナミン製薬」となる。

2020/8/21 武田薬品、大衆薬事業を米投資ファンドに売却へ

2019年1月以降現在まで、今回の件を含め12案件で合計最大約129億米ドルの売却について公表しており、100億米ドルの売却目標額をすでに上回っている。


今回の糖尿病治療薬は、今後も患者のニーズを満たす重要な役割を担うものの、同社の長期的成長を牽引する主要ビジネスエリアの製品には該当しないため、売却する。

譲渡の概要は下記の通り。

 譲渡品目:糖尿病治療薬4剤(ネシーナ錠、リオベル配合錠、イニシンク配合錠、ザファテック錠)

    国内外で多くの2型糖尿病の患者の治療使用されている。
    
2020年3月期における日本国内における売上高 308億円

 譲渡価額:1,330億円 (製品在庫の譲渡価額を含む)
       当期の株主帰属利益で約900億円の増益となる。

 譲渡相手:帝人ファーマ

 譲渡日:2021年4月1日(予定)

 その他:両社間で製造供給契約を締結し、武田薬品が製品を製造し帝人ファーマに供給、流通は武田薬品が担当。
     当面の間、製品の製造販売承認権は武田薬品が引き続き保有し、承継時期については今後決定する。
     人員の移管は伴わない。

武田薬品は得られる売却代金は負債の減額に充て、2021年度から2023年度に純有利子負債/調整後EBITDA倍率を2倍にする目標に向け、レバレッジ低下を加速させる。

一方、帝人は、企業理念「Quality of Lifeの向上」を原点に、持続可能な社会の実現に向けて、「環境価値」「安心・安全・防災」「少子高齢化・健康志向」のつのソリューションを中心とした価値を社会に提供し、「未来の社会を支える会社」になることを目指しており、ヘルスケア事業では、高齢化最先進国の日本において「少子高齢化・健康志向ソリューション」の提供に取り組んでいる。

「代謝・循環器領域」を注力疾患領域のつとしている帝人ファーマにおいて、ブランド力のある武田の糖尿病治療薬4剤の承継は、将来の事業拡大のための事業基盤の維持・強化を可能とするものとなる。

また、糖尿病治療剤を主要製品としてラインナップに加え、事業基盤を維持・強化することで、疾病治療への取り組みのみならず、生活習慣病予防や重症化予防に貢献するサービスの拡大を加速できるとしている。

米民主党の議会指導部は2月27日未明、1.9兆ドルの追加の新型コロナウイルス対策法案を下院で審議し、同党単独で可決した。


バイデン(次期)大統領は1月14日、1兆9千億ドル(約197兆円)規模の追加経済対策案American Rescue Plan を発表した。

2021/1/18 バイデン次期大統領、1兆9千億ドル規模の追加経済対策案を発表

米連邦議会上院は2月5日、今会計年度予算の修正の大枠となる予算決議案をハリス副大統領の決定票で51対50の賛成多数で可決した。

通常、上院の決議は野党のフィリバスターを避けるため、60票の賛成が必要であるが、予算決議の形をとることで単純過半数で通すことができる。

予算決議案

連邦歳入総額、歳出総額、財政赤字(黒字)額を示した上で、国防、農業、エネルギー等20の政策分野の歳出上限額を規定するほか、当該年度以降の複数年度の財政見通しを示すもの。大統領に送付されず法的拘束力を有するものではない。

予算決議案の審議時間が50時間に限られているためフィリバスターを回避できる。

予算決議案が成立すれば、財政調整法を審議する。

予算決議に各委員会への財政調整指示(歳入、歳出、財政赤字、公的債務上限を変更するために既存の法律を改正する指示)が含まれると、各委員会はこの指示を受けて財政調整法案を策定、策定された法案は予算委員会でまとめられ、一つの包括的な法案として議会で審議され、両院の本会議で可決、大統領の署名を経て成立。

審議時間が20時間に限られているため、上院でのフィリバスター財政調整法には適用されない。

今回の経済対策は年度予算ではないが、例外的に予算決議案を通じて、民主党の賛成多数で通す予定。


上院では与野党は50/50だが、この場合のみ、上院議長を兼ねる副大統領が投票して決着させることができる。

2021/2/9 米議会、予算決議案可決、1.9兆ドル刺激策へ前進

今回の下院の議決は下記の通りで、民主党から2議員(Kurt Schrader of Oregon & Jared Golden of Maine)が反対票を投じた。最低賃金の15ドルへの引き上げに反対とされる。

民主党 共和党 合計
賛成 219 219
反対 2 210 212
棄権 1 1
合計    221 211 432

法案は上院に回され、一部修正される見込み。

民主党は、修正分の下院議決を含め、3月中旬までに法律としたいとしており、1月20日に発足したバイデン政権にとって最初の大型経済対策となる。

トランプ大統領が昨年12月27日の夜サインした9千億ドルの新型コロナウイルス追加景気対策予算案では失業保険の上乗せを3月14日までとなっており、民主党はその期限までに延長を決めたい。

今回の法案には失業保険の積み増しを8月末まで延長する措置が含まれる。

下院が通した法案には、最低賃金を15ドルに引き上げることが含まれているが、上記の通り、今回は「予算決議」の下での法案となり、法案の内容が限定される。

これについては上院の議事運営専門員(Parliamentarian)が判断することになるが、2012年からこの職にあるElizabeth MacDonough 弁護士が「最低賃金引上げ」は対象外であると判断した。
下院が議決した法案のうち、この部分は修正が必要となる。

サキ大統領報道官は、バイデン大統領はこれを法案に盛り込めないとの判断に「失望している」とコメント。大統領は「今後の最善の道筋を探るために議会指導部と取り組む。フルタイムで勤務しているのに貧困生活を送る人がこの国にいるべきではないからだ」とした。但し、大統領は今回の判断を尊重し、経済対策の早期成立が必要だと訴えていると説明した。
 

最低賃金引き上げをめぐっては、議会予算局が15ドルになれば140万人の雇用が失われると試算、民主党内にも反対が強く、今回の2名の反対票を生んだ。

連邦政府が定める最低賃金は2009年以降、時給7.25ドルである。(但し、州法では10ドル以上が10州以上ある。)

今回の法案とは別に、個別に最低賃金引上げ法を通すことは可能で、共和党の上院議員は時給10ドルへの引き上げを提案している。民主党内部では、15ドル以下の最低賃金の企業に罰金を科す案など も検討されている。


バイデン米大統領は2月24日、重要部材のサプライチェーン(供給網)を見直す大統領令に署名した。半導体や電池など重点4品目で安定した調達体制を整える。有力企業を抱える同盟国や地域と連携して、中国依存からの脱却を目指す。

https://www.whitehouse.gov/briefing-room/presidential-actions/2021/02/24/executive-order-on-americas-supply-chains/

新型コロナウイルスの初期の医療用品不足や、最近の半導体チップの供給不足による自動車産業等への打撃、中国によるレアアース輸出規制の懸念などが背景にある。

パンデミックその他の脅威、サイバー攻撃、気候ショックや異常気象、テロ攻撃、地政学的および経済的競争、その他により、重要な製造能力、重要な製品・サービスの利用、整合性が低下する可能性があるため、経済の発展、安全保障のために、強靭で、多様で、安全なサプライチェー ンが必要であり、米国のサプライチェーンの回復力強化が政権のポリシーであるとした。

また、価値観を共有する同盟国やパートナーとの回復力のあるサプライチェーンに関する緊密な協力は、集団的な経済的および国家的安全保障を促進し、国際的な災害や緊急事態に対応する能力を強化するともしている。

先ず重要4品目の供給網を100日以内に見直す。リスクを調べ、それへの対応策の提案を求める。

100-Day Supply Chain Review

担当 品目
商務長官 半導体と先端パッケージング
エネルギー省長官 電気自動車用を含む高容量電池
国防長官
(国家防衛備蓄を担当)
レアアースを含む重要な金属や特定の戦略的物質
保健福祉長官 医薬品及び医薬品有効成分

更に、6分野について1年以内に戦略をまとめる。

評価に際しては、対象となる重要部材や、サプライチェーンに影響を与える環境や経済、人権などに関連するリスクについて見直す。また、重要な製造設備の場所や必要となる国内の製造能力、重要部材の代替品の入手可能性、既存のサプライチェーンを支える輸送システムの役割などを含めた、不測の事態時のサプライチェーンの強靭性についても評価する。報告書には、サプライチェーンの国内回帰など強靭性のあるサプライチェーンを確保するための具体的な政策提言も含まれる。

Sectoral Supply Chain Assessments

担当 分野
国防長官 防衛産業基盤
保健福祉長官 公衆衛生及び生物学的製剤産業基盤
商務長官 情報通信技術(ICT)産業基盤の重要なセクターおよびサブセクターのサプライチェーン
エネルギー省長官 エネルギー部門の産業基盤
運輸長官 物流基盤
農務長官 農産物および食品の生産のためのサプライチェーン


ーーー
バイデン大統領はホワイトハウスでの署名に先立ち、中国を念頭に「我々の国益や価値を共有しない外国に(重要部材の供給を)依存するわけにはいかない」と述べ、供給網見直しの必要性を訴えた。

結論は単純だ。アメリカ人は、車であれ、処方薬であれ、地元の食料品店の食料品であれ、依存する商品やサービスの不足に直面してはならない。

このパンデミックの間、マスクがなかった。最前線の医療従事者を保護するためのガウンや手袋もなかった。医師や看護師がガウンの上にゴミ袋をかぶり、手術室で何度も何度もマスクを再洗浄して再利用していた。

こんなことは起こってはならなかったし、二度と起こさない。国家緊急事態の際に国民を保護し、提供するために、外国、特に私たちの利益や価値観を共有していない国に頼る必要はない。

大統領令で、パンデミックだけでなく、防衛、サイバーセキュリティ、気候変動など、この新しい時代に直面するすべての課題に米国が確実に対応できるようにする。
最良の方法は、米国で投資することによって米国の競争力を保護し、研ぎ澄ますことだ。

強靭で、多様で、安全なサプライチェーンは、国内の製造能力を活性化し、高給の雇用を創出するのに役立つ。

https://www.whitehouse.gov/briefing-room/speeches-remarks/2021/02/24/remarks-by-president-biden-at-signing-of-an-executive-order-on-supply-chains/

なお、バイデン大統領は2月23日、カナダのトルドー首相とバーチャル形式で首脳会談を行ったが、新型コロナウイルス問題、気候変動問題などについて話し合ったほか、サプライチェーンの安全・強靭性の強化に向けて、ゼロエミッション車や再生エネルギー貯蔵用バッテリー開発・生産で、協力することで一致した。

中国外務省の報道官は今回の大統領令について、「サプライチェーンのデカップリング(切り離し)を図るという人工的な取り組みは非現実的だと中国は考えている。米国が市場の法則と自由貿易のルールを真に尊重し、世界のサプライチェーンの安全性と信頼性、安定性を支えるよう望んでいる」と述べた。

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