2019年5月アーカイブ


2018年3月期からIFRS方式に変更した。

情報電子化学は好調だが、石油化学・農業関連、医薬品がいずれも減益となり、増収・減益となった。

住友化学の場合、シンガポールのTPCやサウジのPetroRabigh などの石油化学関係は持分法損益で、本年度は減益となった。

三菱ケミカルと同様、大日本住友製薬など高収益企業の少数株主帰属利益分が大きい。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 うちコア うち
持分法
税引前
損益
法人
所得税
税引後
損益

うち

配当

少数株主 株主帰属 中間 期末
2017/3 19,390 1,265 1,845 422 1,223 132 1,091 326 765 7.0 7.0
2018/3 21,905 2,509 2,627 553 2,408 627 1,782 444 1,338 10.0 12.0
2019/3 23,186 1,830 2,043 372 1,884 359 1,525 345 1,180 11.0 11.0
前年比 1,281 -680 -584 -181 -524 -267 -257 -99 -158 1.0 -1.0
2020/3 24,400 1,900 2,050 1,000 11.0 11.0


営業損益のうち、コアに含まれない非経常的損益は下記の通り。(億円)

  2017/3 2018/3 2019/3
事業構造改善費用 -182 -142 -91
減損損失 -365 -89 -216
固定資産売却益 10 68 14
公正価値変動 -65 61 90
その他 21 -16 -9
合計 -581 -118 -213

 

営業損益(コア営業損益)

2017/3以降はIFRS方式の「コア営業損益」で、持分法損益を含む。
それ以前の持分法損益(大部分が石油化学)は15/3 239億円、16/3 202億円

 

営業損益対比(億円)           
2017/3 2018/3 2019/3 増減 内訳 2020/3
価格差 コスト差 数量差等
石油化学 589 946 616 -330 -60 10 -280 400
エネルギー・機能材料 60 192 230 38 -25 -35 98 250
情報電子化学 87 123 262 139 -105 100 144 270
健康・農業関連 474 440 197 -243 -95 -40 -107 370
医薬品 699 948 808 -140 -84 35 -91 810
その他 101 111 94 -17 -17 100
全社 -165 -132 -164 -32 -32 -150
1,846 2,627 2,043 -584 -369 70 -285 2,050


石油化学:ラービグ第二期計画の出荷が増加

   千葉工場、シンガポール工場の定修の影響、交易条件の悪化により減益     

エネルギー・機能材料:リチウムイオン電池用セパレータ、高純度アルミナ等の出荷が増加

情報電子化学:偏光フィルムは価格は下落したが出荷増、タッチセンサーパネルも出荷増


健康・農業関連:北米での農薬の出荷減、メチオニンの価格下落で減益
          
医薬品:下記

  
大日本住友製薬の業績は次の通り。  (住友化学出資比率 50.22%)

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 うちコア 税引前
損益
法人
所得税
税引後
損益
配当(円)
中間 期末
2017/3 4,084 403 644 428 115 313 9.0 11.0
2018/3 4,668 882 906 849 314 534 9.0 19.0
2019/3 4,593 579 773 650 486 9.0 19.0
前年比 -76 -303 -133 -198 -48
2020/3 4,600 690 770 490 14.0 14.0


日本では、薬価改定および長期収載品の売上減少の影響により減収減益

北米、中国は増収増益。

米国ではラツーダ後発薬の登場を2023年2月以降に4年遅らせることに成功。ラツーダANDA訴訟


2020年3月期は、日本の減益を北米でカバー。

 

Monsantoの除草剤 Roundup により癌になったとして夫婦が訴えたカリフォルニア州での裁判で、陪審員は5月13日、Bayerに対し損害賠償として55百万ドル、懲罰的賠償として1人当たり10億ドル、総額20億55百万ドルの支払いを命じた。

Bayerにとっては、本件は3件目の敗訴となる。米国では約11,000件の訴訟が行われている。

既報の通り、1件目ではカリフォルニアの陪審員が2018年8月10日に、損害賠償として39百万ドル、懲罰的損害賠償として250百万ドルの合計 289百万ドルの賠償評決を下した。

しかし、San Francisco Superior Court は10月23日、損害賠償は39百万ドルのままとし、懲罰的賠償は39百万ドルに大幅減額し、合計 78百万ドルとした。

2件目は米カリフォルニア州地方裁判所の陪審が2019年3月27日、損害賠償5百万ドル、懲罰的賠償75百万ドルの合計 80百万ドルの賠償を命じた。

2018/8/28 Bayer のMonsanto買収 完了と、Monsantoの除草剤への賠償命令判決 


カリフォルニア州の Pilliod 夫妻(70歳代)がと
もに非ホジキンリンパ腫と診断された。二人はMonsanto が販売を開始した1970年代から自宅でRoundupを使用していた。2人は地裁に訴えた。

陪審員は5週間の審理の後、Monsantoの除草剤が2人の発癌の原因とみなし、原告の弁護士の要求額の2倍の20億ドル以上の賠償を命じた。

原告側弁護士は次のように述べた。

最初の2つの裁判では裁判官は原告側の証拠を厳しく制限した。今回初めて、Roundupが動物や人間に著しい害を与えるのに、Monsantoが金儲けのため科学やメディアや規制当局をごまかしてきた山のような証拠を陪審員に示すことを許された。

Bayer は「陪審員の決定に失望しており、控訴する。世界中の規制当局の間で、この製品が安全に使用することが出来ること、発癌性がないことでコンセンサスがある」と述べた。


損益は前期を大幅に下回った。

                                            単位:億円(配当:円)
売上高 営業損益

うち

税引前 法人税 税引後 うち 配当
コア 持分法 少数株主 株主帰属 中間 期末
2017/3 33,761 2,686 3,075 170 2,583 -444 2,165 603 1,563 8 12
2018/3 37,244 3,557 3,805 266 3,441 -677 2,764 646 2,118 15 17
2019/3 39,234 2,980 3,172 269 2,881 -713 2,167 472 1,695 20 20
前年比 1,990 -578 -633 3 -560 -36 -597 -174 -423 5 3
2020/3予 40,800 3,000 3,000 2,780 1,680 20 20


営業損益は下記の通り。2016/3からはコア営業利益で、これまで営業外損益扱いで除外されていた持分法損益等を含む。

セグメント内訳:

前年度はMMA部門の営業利益の伸びが大きかった。特にモノマーの市況が上昇した。MMAのコア営業利益は1096億円となり、前年を717億円上回り、これは全社の増益額とほぼ同じであった。
石化も増益であった。

本年は機能商品部門が減益となり、ケミカルズ部門のうちのMMAと石化がいずれも減益となった。ケミカルズのうちの炭素と産業ガスは好調だった。
ヘルスケアについては、
既報 の田辺三菱製薬の大減益が影響している。
産業ガスについては、下記の大陽日酸を参照。

  2017/3 2018/3 2019/3 前年比 増減内訳 2020/3
予想
売買
数量差 コスト
削減
機能部材 623 580 401 -179 -95 -100 85 -144 580
機能化学 319 360 285 -75 380
MMA 379 1,096 944 -152 130 -222 45 -121 700
石化 209 259 122 -137 100
炭素 38 124 245 121 280
産業ガス 521 575 633 58 8 90 2 -42 930
ヘルスケア 984 812 569 -243 -156 -58 128 -157 100
その他 2 -1 -27 -26 -26 -70
合計 3,075 3,805 3,172 -633 -113 -290 260 -490 3,000

     その他差には、受払差・持分法投資損益差等の金額が含まれる。

機能部材は、情報電子・ディスプレイ関連製品等での販売数量の減少に加え、原料価格上昇や固定費の増加等により減益。
MMAは、下期における中国を中心とした大幅な需要の減速による販売数量の減少等により減益となった。
石油化学は、定期修理の影響に加え、昨年末以降の原料価格急落に伴う受払差損等により減益。

炭素は、ニードルコークスの市況上昇に伴う原料と製品の価格差拡大等により増益。

黒鉛電極はニードルコークスとピッチを捏合したのちに成形するが、黒鉛価格が急騰している。(昭和電工決算 参照)
更にEVに使用されるリチウムイオン電池の負極材としてニードルコークスが使用され始めたことも、ニードルコークスの需給逼迫に追い打ちをかけた。

2020年3月期予想では、機能商品部門や炭素、産業ガスは増益(特に産業ガスが大きい)となるが、田辺三菱製薬の大減益が響く。

ーーー

大陽日酸の業績は下記の通り。三菱ケミカルHDの出資比率は50.7%。

大陽日酸は2018年7月5日、米国のPraxair, Inc.による欧州事業(一部)の分割譲渡に係る入札に参加し、同日付でPraxairと子会社株式の売買契約を締結したと発表した。
2020年3月期にはこれがフルに貢献し、欧州ガス部門が大増益となる。

2018/7/13 大陽日酸、米国Praxairの欧州事業を買収

単位:億円 (配当:円)

売上高 営業損益 コア
営業利益
税引前
損益
株主帰属損益

配当

中間 期末
2017/3 5,816 537 547 502 347 9 11
2018/3 6,462 599 600 559 489 11 12
2019/3 7,403 669 658 621 413 12 13
前年比 941 70 58 62 -76 1 1
2020/3 8,900 1,020 950 865 570 13 13


2018/3 2019/3 増減 2020/3予想
国内ガス 314 298 -16 306
米国ガス 136 156 20 190
欧州ガス 66 66 265
アジア/オセアニア 92 91 1 115
サーモス 77 92 14 94
全社&非コア -19 -45 -26 -20
合計 601 658 57 950

米国は5月17日、カナダ、メキシコとの間で、安全保障を理由とした鉄鋼・アルミニウム製品への追加関税措置を停止することで合意した。
カナダ、メキシコも、米農産物などにかけてきた報復関税を取りやめることで合意した。

米国とカナダ・メキシコ両国のそれぞれの共同声明の内容は次の通り。

Joint Statement by the United States and Canada on Section 232 Duties on Steel and Aluminum
Joint Statement by the United States and Mexico on Section 232 Duties on Steel and Aluminum

1. 米国と両国は2日以内に、両国からの鉄鉱・アルミ製品への米国のSection 232 に基づく関税と、それに対する両国の報復関税を撤廃する。


2. 米国と両国はSection 232 actionに関するWTOへの相互の提訴を取り下げる。

3. 互いに次の措置をとる。

不当な補助金のついた and/or ダンピング価格での鉄鋼・アルミ製品の輸入の防止
米国と両国以外で生産された鉄鋼・アルミ製品の相手国への輸送の防止

4. 米国と両国は鉄鋼・アルミ製品の貿易を監視する手続きを決める。

5. 鉄鋼・アルミ製品の輸入が過去の数量を著しく超えた場合、協議を要請し、協議の後に輸入国は鉄鋼には25%、アルミ製品には10%の超過関税を課すことができる。その場合、輸出国はその分野(アルミとアルミを含む製品又は鉄鋼)においてのみ報復できる。

6. (メキシコとの共同声明では下記を追加している。)

鉄鋼輸入の超過を考える場合、米国はメキシコから追加のビレット225千トンを認め、メキシコは米国から追加の冷間圧延板200千トンを認める。


トランプ大統領は、「カナダとメキシコとの間で合意した。関税をかけられずに米国から輸出できるようになる」と述べた。

米政権は5月17日に安全保障を理由とした輸入車への追加関税についても180日間延期すると決めた。米中通商紛争が激化するなか、USTRなどが対中交渉に注力できる環境を整える。

日本やEUなどについては追加関税を継続する。

ーーー

トランプ米大統領は2018年3月1日、鉄鋼とアルミニウムの輸入増が安全保障上の脅威になっているとして輸入制限を発動する方針を表明した。

2018/3/9 トランプ大統領、鉄鋼・アルミの輸入制限発動を命令

鉄鋼やアルミニウムの輸入制限は米東部時間2018年3月23日午前0時1分に発動された。同時刻以降に米国に輸入された製品から追加関税を徴収する。

ホワイトハウスはカナダ、ブラジル、メキシコ、EU、オーストラリア、アルゼンチン、韓国への関税を5月1日まで猶予する方針を示した。完全に除外するかどうかは各国と貿易問題などを交渉して決める。

日本は除外対象にならなかった。

2018/3/26 米国、鉄鋼とアルミの輸入制限を発動

トランプ大統領は、猶予期限切れ直前の4月30日、カナダ、メキシコ、EUへの関税の猶予を更に1カ月延長すると発表した。その間に譲歩を迫る。
カナダ・メキシコとはNAFTAの再交渉中。EUは「断固とした対応をとる」としており、難航する見通し。

ホワイトハウスによると、ブラジル、アルゼンチン、オーストラリアについてはほぼ合意に達しており、30日以内に詳細を詰める。
3か国は米国にとって貿易黒字国で、米国への鉄鋼・アルミ流入抑制対策で協力する。

韓国については、3月に米韓FTAの改正・延長交渉で合意した。鉄鋼に関しては25%の追加関税を免除する代わりに、韓国は米国向け輸出数量を減らす。

2018/3/26 韓米FTA改正交渉妥結、鉄鋼の追加関税免除

EUの欧州委員会は2018年6月6日、対抗措置として、米国からの輸入品に報復関税を課す方針を正式決定した。

2018/6/7 EU、米国の鉄鋼・アルミニウム輸入制限への報復関税、7月発動へ

カナダ政府は2018年6月29日、米国が課した鉄鋼とアルミニウムの関税に対し、7月1日に報復関税を発動すると発表した。
鉄鋼やアルミ、食品など166億カナダドル相当の製品を対象に10~25%の追加関税を課す。

2018/6/23 米国の鉄鋼・アルミ関税問題のその後 

本件についてはトランプ大統領の強硬策に米国内でも反対が広がった。

2018/6/29 米輸入鉄鋼協会、鉄鋼関税を「違憲」と提訴、米自動車業界も自動車の追加関税に反対


トランプ米政権は2018年9月30日、北米自由貿易協定(NAFTA)の見直しでカナダと合意したと発表した。メキシコとの間では、8月27日に基本方針に関する暫定合意が成立している

NAFTA(North American Free Trade Agreement)の名称を「USMCA(the United States-Mexico-Canada Agreement=米国・メキシコ・カナダ協定)」に変更する。

米国が求める乳製品の市場開放でカナダが一定の譲歩を示した。米国が撤廃を求めてきたNAFTA 19条の紛争解決メカニズムは、新協定ではそのまま残される。

協定は16年間有効で、発効後、原則6年ごとに再評価し、各国が次の16年間の更新意思を示さないと失効する「サンセット条項」も盛り込んだ。

2018/10/4 NAFTA、3カ国協定を維持、USMCAに改称

米国、メキシコ、カナダの3か国首脳は2018年11月30日、「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」に署名した。

しかし、各国の批准手続きが難航し、年内の成立が困難になりつつあった。米国は2020年に大統領選を控え、カナダも2019年10月に総選挙が予定されており、協定は批准の大幅な遅れで選挙の争点に浮上し、政治に翻弄されることになるのではとみられた。

カナダのフリーランド外相は5月15日、米国が鉄鋼とアルミニウムに対する関税措置を維持している限り、米・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の批准には大きな問題があるとの認識を示した。

今回、米国が鉄鋼・アルミの追加関税措置を停止することで前進した。

今後は3カ国の議会が新協定を批准できるかに焦点が移る。米議会は下院で過半数を握る野党・民主党が労働者や環境の保護を強めるよう修正を働きかけており、与野党が妥協点を探る必要がある。

米国は5月17日、輸入自動車や部品に対する関税の判断を最大6カ月延期すると正式発表した。交渉相手の日本やEUに猶予を与える。

トランプ大統領はライトハイザーUSTR代表に対し、交渉を加速させるとともに180日以内に報告するよう指示し、交渉で合意できない場合、追加措置が必要かなどを判断するとした。

一部の輸入車が「米経済を弱め、国の安全保障を脅かしている」との商務省の見解に同意したことを明らかにし、「輸入を減らして国内の競争環境を改善する必要がある」とし、強い国内自動車産業は米国の軍時的優位性に極めて重要との認識を示した。

ーーー

本件は昨年5月のトランプ大統領の決定に端を発する。

トランプ大統領は2018年5月、自動車、トラック、部品の輸入を巡り、通商拡大法232条に基づく調査開始を検討するよう商務省に指示した。
「自動車や自動車部品など中核的な産業は国力の重要な要素だ」と主張し、これらの輸入が米国の安全保障を脅かすかどうかを判断するとした。

米商務省は5月23日、乗用車やトラックなどの車両や関連部品の輸入が国内の自動車産業を侵害し、安全保障を脅かしたかどうか通商拡大法232条に基づき調査を開始すると発表した。
鉄鋼・アルミニウム輸入制限と同様の手段を自動車にも用いる。

2019年2月17日、米商務省は、通商拡大法232条に基づく自動車関税に関する報告書をトランプ大統領に提出した。

その詳細は公表されていないが、恐らくは「追加関税が妥当」との内容が含まれているとの見方が多い。
全輸入車に対して最高25%の関税を検討するほか、電気自動車に代表される先進技術を使った自動車部品も対象とされる可能性がある。

法律によれば、大統領は報告書提出から「90日以内」に内容を精査した上で、報告書の勧告する措置に関して最終決定する必要がある。その上で大統領による最終決定から「15日以内」にその措置が実施に至ることが法律で求められている。

2月17日の90日後は5月18日になる。大統領の判断が注目されていた。

ーーー

この問題については、EUと日本は米国と交渉を続けている。

1) EU

米政府は2018年5月31日、カナダ、メキシコ、EUに対し鉄鋼・アルミニウムへの輸入関税を適用すると発表した。適用は午前0時からで、税率は鉄鋼が25%、アルミニウムが10%。

2018/6/2 米、EU・カナダ・メキシコに鉄鋼・アルミ関税発動 

これを受け、EUの欧州委員会は6月6日、対抗措置として、米国からの輸入品に報復関税を課す方針を正式決定した。

EUは被害を2017年ベースで64億ユーロ(71億米ドル)とし、直ちに28億ユーロ(32億ドル)相当の製品に課税する。対象は、鉄鋼・アルミ製品のほか、オレンジジュース、バーボン、たばこ、化粧品、シャツ、ズボン、靴、バイク、ボートなど。

これを受け、トランプ大統領は6月22日、「EUが関税や障壁をすぐに取り除かないなら、輸入自動車全てに20%の関税をかける。米国で生産せよ!」と呟いた。

2018/6/7 EU、米国の鉄鋼・アルミニウム輸入制限への報復関税、7月発動へ

米オートバイ製造大手Harley-Davidsonは6月25日、EUの関税引き上げを受け、欧州向けオートバイの生産を米国から海外に移す方針を明らかにした。

2018/6/27 Harley-Davidson、一部生産を米国外に移転

トランプ米大統領は7月25日、訪米中のJean-Claude Juncker 欧州委員長との会談後、関税引き下げに向け EUと協力することで合意したと述べた。

米国とEUは直ちにExecutive Working Group を設置する。加えて、短期的な対策を検討する。

この間は、どちらかが交渉を取り止めない限り、この合意の精神に反する行動を行わない。

EUは、「相互に追加関税の発動を控える」とし、ロス商務長官も「自動車の追加関税は課さない」とするが、大統領は「合意の精神に反することはしない」とだけ述べている。

9月を目処に高官級の作業部会の初会合を開き、交渉内容の具体策の検討に入る。120日以内に結果を報告する方針であった。

2018/7/27 米国とEU、関税撤廃交渉へ 

しかし、現時点で本件は進展していない。EU加盟国は本年4月に、執行機関である欧州委員会に米国との通商交渉をする権限を認めたが、この権限にはトランプ政権が重視する農業分野は含まれていない。

2) 日本

2018年9月26日、日米首脳会談がニューヨークで行われ、安倍首相とトランプ大統領が「日米物品貿易協定(TAG:Trade Agreement on Goods )」の交渉入りで合意した。

TAGは投資・サービス分野などを含む自由貿易協定(FTA)とは異なりモノの関税に絞る。関税撤廃・削減を目指しており、対象は農産品や工業製品などほぼ全ての貿易品目に及ぶ。税関手続きの円滑化などの交渉も含む。
日米はTAG交渉の見通しが立った後、サービスや投資分野でも2国間交渉を始める。

首脳会談に同席した茂木経済再生相は、実際の交渉入りの時期について、米国議会手続きなどがあるため「少し時間がかかる」としたが、「日米が関税について自由で公正な新たな枠組みを構築することは、国際経済全体に良い影響を与える」と述べた。

TAGでは、日本の農産品についてTPP水準を超えた自由化をしないと米国側に念押しした。

また、交渉中は米政権が検討する輸入自動車への高関税措置を発動しないことを、会談で首相が直接、トランプ大統領に確認した。

2018/9/27 日米、物品貿易協定交渉へ、交渉中は自動車追加関税回避

米中貿易交渉が難航したこともあり、本件も進展していない。

トランプ大統領は4月26日の日米首脳会談で訪日時に調印したいと発言したが、首相が参院選挙を理由に延期を説得した。 大統領はライトハイザーUSTR代表らの助言を無視し、本格的な協議を先送りすることに応じた。

ーーー


大統領は今回、中国との交渉が挫折したばかりであることもあって、通商拡大法232条の発動を延期した。

しかし、EUとの交渉も、日本との交渉も進まないため、交渉を加速させることを求めた。


輸入自動車と同部品に対する追加関税については、米国の自動車業界からも当初から反対の声が相次いでいた。


2018/6/29 
米自動車業界も自動車の追加関税に反対 


今回も決定を単に延期しただけのため、懸念や不満の声が相次いでいる。

米自動車工業会(AAM)は「政権が自動車関税の検討を続けることにメーカー各社はなお強く懸念している」と訴えた。

トヨタは、輸入車が「安全保障上の脅威」だとトランプ大統領が判断したことを非難し、「われわれの投資が歓迎されていない」というメッセージを日本メーカーに送ることになると指摘した。

EUのマルムストローム欧州委員(通商担当)は、「我々の自動車の輸出が米国の安全保障上の脅威という考えを断固として拒絶する」と述べた。「自動車を含む貿易交渉の準備がある」とする一方、「WTOのルールに沿わない形ではない」とも指摘した。
米国のWTO違反ともとれる対応には応じられないとの考えを示した。


米国の消費者団体は、アップルのApp Storeの独占的な支配とアプリ価格 の30%もの手数料は独占権の行使であり不当であるとする訴訟を行っているが、アップルは消費者団体には原告となる資格がないとして争っている。

米最高裁判所は5月13日、 消費者団体による訴訟を認める判断を下した。


状況は下記の通り。

iPhone などでは、アプリケーションソフトはApp Storeからしか追加することができない。
ソフト開発者はアプリケーションソフトを独自に配布することができず、App Storeに申請後、同社の審査を経て登録されるのを待つ必要がある。
アップルは30%もの高額なアプリ手数料(いわゆるアップル税)を徴収している。


グーグルやマイクロソフトはAndroidやWindows Mobileでも同様の配信サービスを提供するが、App Storeと異なりアプリケーションソフトの登録を原則自由化し、厳格な審査は行わない。また、開発者がこれらの配信サービスを利用せず独自にソフトウェアを配布することも妨げていない。

消費者団体は、これらのことから、アップルがApp Store以外でのアプリ配信を認めないことが独禁法違反であり、高額なアプリ手数料(いわゆるアップル税)を徴収していることが独占権の行使だと主張し、提訴した。

これに対し、アップルは「直接の製品購入者だけが独禁法に基づいて損害賠償を請求できる」という1977年の最高裁のイリノイ・ブリック判決(Illinois Brick Co. v. Illinois)を盾に、消費者団体には原告の資格がないと主張した。(同判決については後記)

同社の言い分は次の通り。

アプリの販売者は開発者であって、アップルではない。

アプリの価格を決めて売っているのは開発者である。アップルは単に販売の場を提供しているだけで、手数料はその対価である。

アップルを訴えられるのは、アップルに手数料を払っている開発者だけである。需要家には原告の資格はない。

これについては裁判所で争ったあと、最高裁に送られ、昨年11月末から審議が行われた。

今回最高裁は5対4で、「ユーザー側にも訴える権利はある」と認めた。

リベラル派判事4人の意見に賛同した保守派のBrett Kavanaugh判事は、App Storeの顧客はアップルから直接購入していると考え、イリノイ・ブリック判決に反しないと判断した。

今回の判断はアップルが独禁法に違反しているとするのではなく、単に消費者団体が訴えるのは可能としただけである。最高裁は「原告のアップルに対する独占禁止法違反の事実を査定することも、アップルの他にあるかもしれない防御も考慮していない」としてい る。

しかし、当初は訴訟そのものが成立しないとの見方が主流だったため、影響は決して小さくはな い。アップルがApp Storeのビジネスモデルや手数料の見直しを迫られる可能性が生じたことになる。


原告側弁護士はこれまで、過払いの消費者を代表して数億ドルを求める意向を明らかにしている。

ーーー

イリノイ・ブリック判決は連邦法の話である。独禁法違反の損害賠償は直接購入者だけができるとした。


しかし、多くの州が間接的購入者に原告適格を認めるイリノイブリック撤回を制定している。

カリフォルニア州の場合は、①取引が直接であるか間接であるかに関係なく、被告から損害の3倍の賠償を得る、②司法長官は損害賠償を得るために州を代表して提訴できる、と決めている。

他方、原告適格を厳しく問う州もある。

日本の企業が関係する案件で全く異なる判決があった。

1)パナソニックなどの冷蔵庫コンプレッサの独禁法違反事件

2010年9月、パナソニックは司法省との司法取引に応じ、冷蔵庫コンプレッサを巡る同カルテルに関与したことを認め、4910 万ドルの罰金を支払った 。コンプレッサは冷蔵庫内の温度を低下されるために用いられる必須の部品である。

これに関し本件部品の直接的購入者及び間接的購入者を代表するクラスアクションが各地裁判所において提起され 、ミシガン州東部地区地裁に統合された。イリノイブリック撤回を有する25州 はカルテル価格の超過分が冷蔵庫メーカーから流通業者へと次々に転嫁され、最終的には消費者に損害をもたらしたとし、3倍賠償を請求した。

地裁は2013年4月、原告適格 を検討した。
市場における原告の地位:消費者は冷蔵庫コンプレッサー市場での消費者でも競争者でもない。
被告の違反行為と原告の損害との間の因果関係 :超過分が原告らに辿りつくまで幾つかの段階を経ているため、損害は遠く離れ過ぎている。
③ 損害を配
分する複雑さ :損害の配分は多くの複雑性を伴い、また重複的回収の危険性は高い。
直接的な被害者の存在の有無 :直接的購入者らが疑い無く直接的な被害者であ り、も実際に本訴に加わっている。(賠償があれば、ここからもらえばよい)

この結果、間接的購入者たる原告らの多くが原告適格を有さないと判示し、それらの提訴を却下した。

2) ビタミン剤カルテル事件

1999年に武田薬品、エーザイ、第一工業製薬を含む米・スイス・独・日・加の11社に総額9億1050万ドルの罰金が課せられた。Rocheは5億ドルで当時の史上最高で、BASFが225百万ドルであった。

直接購入者からの3倍賠償請求に加え、消費者を代表するカリフォルニア州司法長官からも賠償請求され、総額255百万ドルを支払うことで和解した。

カリフォルニア州への配分は80百万ドルで、うち、38百万ドルが消費者、42百万ドルが流通業者に配分されたが、前者は配分方法が無く、公益のために使われた。

 資料:http://www.i-repository.net/il/user_contents/02/G0000031Repository/repository/keidaironshu_061_003_193-214.pdf

経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI) は5月15日、2019年3月期の決算を発表した。

減収で、最終損益は1,094億円の赤字となり、5年連続赤字となった。昨年に続き、大幅な特別損失を計上した。 この結果、資本勘定は債務超過寸前となった。


同社は4月12日、台湾の電子部品メーカーなど3つのグループで構成する台中連合から800億円の金融支援を受けると発表した。

2019/4/15 ジャパンディスプレイ、台湾・中国のグループから金融支援800億円受け入れ 

当初予定では6月18日のJDIの定時株主総会で最終的に承認を受ける予定だったが、台中連合が金融支援に必要な機関決定を延期すると相次ぎ表明しており、間に会わず、改めて臨時総会を開く見通し 。

JDIの業績悪化や、米国と中国の紛争による今後の見通しが不透明なことから、仮に台中連合からの資本注入が出来なくなれば、資金繰りが苦しくなる。


業績の推移は下記の通り。

単位:億円
売上高 営業利益 経常利益 特別損失 当期純利益
2014/3 6,146 276 191 -23 339
2015/3 7,693 51 19 -236 -123
2016/3 9,791 167 -129 -150 -318
2017/3 8,844 185 -89 -24 -317
2018/3 7,175 -617 -937 -1,437 -2,472
2019/3 6,367 -310 -442 -752 -1,094



2年連続で計上した特別損失の内容は次の通り。

2018年3月期 固定資産減損損失 1,038億円
海外子会社整理損 155億円
棚卸資産評価損 116億円
その他 128億円
合計 1,437億円
2019年3月期 白山工場資産減損 747億円
その他 5億円
合計 752億円


白山工場は
第6世代(1500×1850ミリメートル)液晶新工場で、1,700億円を投じて建設し、3年前に完成したばかり。

投資資金の大半はAppleからの前受け金1700億円で賄っており、この契約の条件を果たさない場合、Appleは即時全額返済又は工場差し押さえの権利を持ち、再建策の足かせとなっている。


この結果、同社の資本勘定は28億円で、債務超過寸前となっている。

2018/3/31 2019/3/31 増減 要因
資本金 969 1,144 175

増資350億円
 海外投資家 300億円
 日亜化学 50億円

資本剰余金 2,136 2,311 175
利益剰余金 -2,333 -3,427 -1,094

当期純損失

合計 772 28 -744


同社は構造改善策を発表した。

・1,000人規模の早期既報退職を上期中に募集

・役員報酬及び管理職等の賞与減額等

構造改革費用は約100億円、効果は年間ベースで約200億円と見ている。

社長は人員削減について「事業を守るために(雇用の)縮小を考えざるをえない。断腸の思いで、重く責任を感じている」と語った。




Trump 大統領は5月15日、米企業が安全保障上リスクがある企業の通信機器の調達を禁じる大統領令に署名した。名指しはしていないが、中国の通信機器最大手、華為技術(Huawei)などが念頭にあると報じられている。


米商務省は同日、安全保障上の懸念があるとして輸出を規制する外国企業のリストに中国の通信機器最大手、
華為技術(Huawei)を追加したと発表した。


1) 大統領令 Executive Order on Securing the Information and Communications Technology and Services Supply Chain

トランプ大統領は5月15日、同国の安全保障にとってリスクのある外国企業の通信機器を米企業が使うことを禁止する大統領令に署名した。

概要:

外国の情報・通信技術 or サービスで、商務長官が関係閣僚と協議して下記に該当すると見做したものについて、米国で取得、輸入、移転、設置、取引することを禁止する。

米国の情報・通信技術 or サービスをサボタージュ又は破壊する不当なリスクがあるもの
米国の重要なインフラ、米国のデジタルエコノミーのセキュリティに壊滅的な不当なリスクを与えるもの
米国の安全保障、米国民の安全に受け入れがたいリスクを与えるもの

非常に抽象的で、米政府が問題だと思う企業をいつでも指定できるように見える。名指しはしていないが、華為技術(Huawei)などが念頭にあると報じられている。

大統領は、アメリカのコンピューターシステムをめぐる非常事態だとの考えを強調した。

ホワイトハウスは声明で、大統領令は「情報・通信技術のインフラとサービスに積極的かつ急速に脆弱性をつくり出し、それを悪用している外国の敵たちからアメリカを守る」のが目的だと説明した。

また、この大統領令により、商務長官は「安全保障上、許容できないレベルの脅威をもたらす取引を禁止」する権限を持つとした。

連邦通信委員会の委員長は、大統領令について、「アメリカの通信網の安全を確保する大きな前進だ」と歓迎する声明を発表した。


Huaweiなど中国の5社の製品を米政府機関が調達することについては下記により既に禁止されている。更に、政府機関に対し、2020年8月からは5社の製品を社内で利用している世界中の企業との取引を禁止している。

米上下両院は2018年8月、華為技術(Huawei)や中興通訊(ZTE)と、監視カメラ大手の杭州海康威視数字技術(HIKVISION )、浙江大華技術(Dahua Technology)、海能達通信(Hytera)の計5社への締め付けを大幅に強化することを盛り込んだ「2019年度米国防権限法(NDAA2019)」を超党派の賛成で可決し、8月13日にトランプ大統領が署名、成立した。

禁止は2段階に分かれる。

第1 段階(発効日の1年後=2019年8月13日以降)

  米政府機関(連邦政府、軍、独立行政組織、政府所有企業)が5社の製品や、5社が製造した部品を組み込む他社製品を調達することを禁止

第2段階(発効日の2年後=2020年8月13日以降)

5社の製品を社内で利用している世界中の企業との取引を禁止
(米政府機関に収めている製品・サービスが通信機器とは一切関係のない企業でも、5社の製品を使っておれば禁止)

2018/12/11 2019年度米国防権限法(NDAA2019) --- Huawei、ZTE等の米政府機関との取引からの排除


今回は指定が行われた場合、政府機関に加え、あらゆる米国人、企業が取引を禁止されることになる。完全な締め出しである。


2)商務省決定

米商務省は5月15日、華為技術(Huawei)に対する米国製ハイテク部品などの事実上の禁輸措置を発表した。

輸出管理法のに基づき安保上懸念がある企業を列挙したEntity List (規則 744.11(b) )にHuawei を追加した。
同社が制裁対象のイランとの金融取引に関わったと指摘している。

米司法省は1月28日、Huawei と孟晩舟 Huawei副会長を起訴した。2つの事案の1つはイランとの取引である。

2019/2/1 米司法省、Huawei を起訴 

今後、日本企業を含む企業が米国のハイテク製品や技術を同社に輸出する場合は商務省の許可が必要になり、原則却下される。

米国の国家安全保障や外交政策上の利益に反する活動を行う、又は行う可能性のあると信じられる企業のリストで、その企業への輸出や再輸出は承認が必要とな るが、申請しても否定される可能性が強い。

「再輸出」の規制は米国の国内法を海外の国にも適用する「域外規制」であり、もし、日本企業がこれに違反し、米国品を再輸出した場合には、罰金、禁固、取引禁止顧客としての指定、米国政府調達からの除外等が課せられ、そのため実質的に米国との取引が以後出来なくなる事態が生じる。

「域外規制」では、イラン、北朝鮮、シリア、スーダン向け輸出については米国品が10%以上、それ以外の国への輸出の場合は米国品が25%以上含まれておれば、再輸出となり、規制対象となる。
日本企業は11社がHuaweiに対し電子部品やカメラなどを供給している。

これまでは、Entity Listは大量破壊兵器(WMD)プログラム、テロリズム又はその他の行為のリスクをもたらす恐れのある企業が対象であった。

「知財戦争」に適用するのは2例目で、2018年10月29日に中国の福建省晋華集成電路(Jinhua Integrated Circuit Company:JHICC)が初めて指定された。

指定理由は、JHICCは米国のMicron Technology の技術を盗用しており、今後、同社が大量に生産を行うと、米国の競合企業が苦境に陥り、最終的に米国の軍事用重要な部品をJHICCに牛耳られることとなり、米国の国家安全保障を損なうという ものであった。

2018/11/1 米、中国半導体 JHICCへの製品輸出を制限

ーーー

Huawei は5月16日、トランプ米大統領の今回の大統領令について、「米国の企業や消費者の利益を損なう」と非難する声明を出した。

「米国での次世代通信規格『5G』の建設が遅れる」、「不合理な制限は当社の権利を侵害し、厳重な法律問題を引き起こす」とも主張した。


付記

Huaweiの任正非(Ren Zhengfei)CEOは5月18日、日本のメディアの取材に応じた。発言のポイント:

米国の制裁でHuaweiの成長速度が鈍化することは予想されるが、影響は部分的なものにとどまるだろう。

米国企業が半導体製品を売ってくれないならそれでいい。準備は以前から進めてある。

中興通訊(ZTE)のように、米国の求めに応じて経営陣を刷新したり、監視を受け入れたりするようなことはしない。中国政府に助けを求めない。

次世代通信規格「5G」技術には自信があり、(世界でも)Huaweiの製品を使わなければならない状況になっている。



本年度は減収で大幅減益となった。

翌2020年3月期は更に大幅減収、大幅減益となり、コア営業利益は本年度比で458億円の減益、2017年3月期比では845億円の減益となる。株主帰属損益はほぼゼロとなる。

減益の主たる原因はロイヤリティ収入の減である。技術ライセンス先が契約の有効性に疑義を持ち、仲裁にかけたもので、最終判断が出るまで、その部分の収益計上を取り止めた。

これまで、コア営業損益のほとんどがロイヤリティ収入で、しかもそのうちの半分以上が当該 1品目のものであった。その他の製品の販売ではトントンであることを意味する。

その収益計上をとりやめるため、一時的であっても、経営に大きな影響を与える。仮に仲裁で負けることとなると、致命的である。

ロイヤルティーに依存する事業戦略の見直しを迫られている。

単位:億円 (配当:円)

  売上高 営業損益 うち
ロイヤリティ
コア
営業損益
税引前 株主帰属
当期損益

配当

中間 期末
2017/3 4,240 941 822 945 961 713 24.0 28.0
2018/3 4,339 773 791 785 788 580 38.0 28.0
2019/3 4,248 503 631 558 504 374 28.0 28.0
前年比 -91 -270 -160 -227 -283 -206 -10.0
2020/3予 3,760 115 192 100 120 50 28.0 28.0
前年比 -488 -388 -439 -458 -384 -324

同社は決算発表で次の通り説明している。

当期の業績:

筋萎性側索化症ALS)治療ラジカヴァきく伸長したもののロイヤリティ入等国内医療用医薬影響によりとなった。

利益面については究開により、減益となった。

次期予想:

国内医薬において、本年10消費増税続薬価改定によるでカバーるものジレニイヤ裁手こと認識わないことさらに、米ラジカヴァの待機患者一巡による新規患者減少もあり、前期から大幅予想

利益面では、上記要因はあるものの高水準究開じる予定であることから大幅減益となる。


下記2製品の影響が大きい。損益的には「ジレニア」の影響が全体の減益額に相当する。

1)  筋萎性側索化症ALS)治療ラジカヴァ」:

同社は20175月、米国でALS治療薬「ラジカヴァ」の承認を取得した。

2018年3月期の売上高は123億円であったが、2019年3月期には270億円となり、147億円の増収となった。翌期は新規患者の減で、50億円減の220億円となる。

2)  多発性硬化症治療剤「ジレニア」:

田辺三菱製薬 の前身の吉富製薬が創製し、海外ではノバルティス(スイス)に導出したこの薬剤のロイヤリティ収入は、収益の柱となっている。

吉富製薬は、1997年9月に、Novartis Pharma AGとの間でライセンス契約を締結し、京都大学の藤多哲朗教授、台糖(現「三井製糖」)と吉富製薬の共同研究から見出された世界初のスフィンゴシン1-リン酸受容体調節薬「FTY720(一般名:フィンゴリモド塩酸塩)」に関する全世界における開発権(日本については共同開発権)および販売権をノバルティスに対し許諾した。

田辺三菱は、吉富製薬の本件契約上の地位を承継し、ロイヤリティの支払いを受けていた 。

2019年2月、ノバルティスから本件契約の規定の一部の有効性について疑義が提起され、2019年2月15日、国際商業会議所より、ノバルティスを申立人とする仲裁の申立てがあった旨の通知を受領した。

ノバルティスは、米国、EU等における製品の売上ベースのロイヤリティ支払い義務を定める本件契約の規定の一部は無効であり、ノバルティスにはロイヤリティの一部の支払義務がないことの確認を求めている。

田辺三菱は、本件契約の有効性を検討した結果、何ら問題はないという結論に至っている。

本仲裁は、ICCの仲裁規則に従い、英国ロンドンを仲裁地として行われる。

IFRSルールでは、収益認識基準の要件の一つ に「契約の当事者が契約を承認しており、それぞれの義務の履行を確約している」 があり、ノバルティスが契約の有効性について疑義を提起している部分がこれを満たさなくなったため 、売上収益から除外する。


各期の損益の内訳は下記の通り。(億円)

来期予想でジレニアのロイヤリティ額は不明だが、全体としてロイヤリティ収入の減額が売上高の減額とほぼ同じで、コア営業利益の減額ともほほ同じである。

2017/3 2018/3 2019/3 前期比 2020/3
予想
前期比
売上高 4,239 4,339 4,248 -91 3,760 -488
国内 3,203 3,208 3,077 -131 3,083 6
海外 1,036 1,129 1,170 41 676 -494
(うちラジカヴァ) (123) (270) (147) (220) (-50)
うちロイヤリティ 822 791 631 -160 192 -439
(うち ジレニア (537) (577) (497) (-80) 非公表
(インヴォカナ ) (188) (139) (105) (-34) 非公表
売上総利益 2,595 2,641 2,441 -200 1,975 -466
研究開発費 647 790 865 75 855 -10
コア営業利益 945 785 558 -227 100 -458


もう一つのロイヤリティの「インヴォカナ」は、ヤンセンファーマシューティカルズに導出した2型糖尿病治療剤




米国が
5月10日から中国製品への関税を引き上げたのを受け、中国は600億ドルの米国製品にかけている関税の引き上げを発表した。
これに対し米国は5月13日、第4弾の制裁関税を発表した。

これで米国の対中輸入、中国の対米輸入のほぼ全額に高額の追加関税がかけられる事態に進展した。

両国の経済に悪影響を与え、それが全世界の経済に波及することが懸念される。

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米政権は5月10日午前0時1分、2千億ドル分の中国製品に課す制裁関税を現在の10%から25%に引き上げた。

米国は制裁関税の第3弾として、2018年9月24日より2千億ドルの中国製品に10%の追加関税をかけた。これについては、2019年1月1日から10%から25%に引き上げるとしていた。

しかし、12月の首脳会談の結果、1月1日からの引き上げを延期し、両国で交渉を続けた。

2018/12/2 米、中国への追加関税を90日猶予

交渉はまとまるかと言われていたが、Trump大統領は突然、5月10日から25%に引き上げると発表した。

これを受け、中国国務院関税税則委員会は13日に公告を発表した。

米国側のこうした措置は中米経済貿易摩擦をエスカレートさせ、中米双方の交渉によって貿易の溝を解決するとの共通認識に背くものであり、双方の利益を損ない、国際社会の普遍的な期待に合致しない。

多国間貿易体制を守り抜き、中国自身の合法的権利を守り抜くため、中国は米国を原産地とする一部の輸入商品に対する調整を行い追加関税措置を執らざるを得ない。

中国共産党中央委員会と国務院の承認を経て、同委員会は、2019年6月1日午前0時より、すでに追加関税が実施されている600億ドル分相当のリストに掲載された米国製品の一部について、関税率を25%、20%、10%のいずれかに引き上げることを決定した。すでに5%の関税が上乗せされている品目については、引き続き5%を上乗せする。

中国が調整を行い追加関税措置を執るのは、米国の一国主義、保護貿易主義への対応だ。中国は、米国が二国間経済貿易交渉の正しい軌道に戻り、中国とともに努力し、中国と向き合って進み、相互尊重を基礎とした互恵ウィンウィンの合意への到達を目指すことを願う。

米国が2018年9月24日に2千億ドルの中国製品に10%の追加関税をかけたのに対応し、中国は同日、600億ドルの米国製品に5%か10%の追加関税をかけた。

Trump大統領が6月18日に新たに2千億ドル相当の輸入品に10%の追加関税を検討するよう米通商代表部(USTR)に指示したのに対応し、中国国務院は8月3日、第3 弾の関税上乗せ策を実施することを発表した。

2018/8/6 中国、対米報復関税を発表

その時点では、税率は25%、20%、10%、5%の4段階であったが、実施に際し、25%と20%の分を10%に、10%と5%の分を5%に引き下げた。
米国が2019年1月1日から25%に税率を引き上げた場合、中国も引き上げるものと思われた。

2018/9/20 米国、対中関税第3弾を9月24日発動 

今回、米国が10%から25%に引き上げるのを受け、当初の4段階の税率に引き上げる。

対象となるのは約5200品目で、関税率が10%になっている品目のうち、液化天然ガス(LNG)やはちみつ、工具、家具など約2500品目を25%に上げる。
肥料、歯磨き粉、紙類、発電機など約1100品目は20%に引き上げる。

関税引き上げによる中国企業への打撃を防ぐため、適用除外の申請も受け付ける。

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トランプ米政権は5月13日、中国への制裁関税の第4弾として、携帯電話など約3000億ドル分の中国製品に最大25%の関税を課す計画を正式表明した。

対象は約3800品目で、金額ベースでは Apple の「iPhone」など携帯電話(432億ドル)が最も多く、次にノートパソコン(375億ドル)などがある。衣類など消費財 も多い。
生活や産業への影響が大きい一部の医薬品やレアアースは除外する。
適用除外の対象には冷蔵庫に使用される部品やレストランで使用されるドリンクミキサー、自動車のカメラ部品なども含まれる。

6月下旬まで産業界の意見を聴取する予定で、発動は6月末以降になる。 意見聴取次第で、除外品目を増やしたり税率も25%から圧縮したりする可能性がある。

トランプ大統領は6月末の日本での20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせて、中国の習近平国家主席と会談する意向も表明した。

昨年12月のトップ会談で関税引き上げを中断したが、今回の会談で問題が解決にむかうことが期待される。
しかし、昨日のブログ記載の通り、問題が単なる貿易問題ではなく、今後の覇権を争うものであり、解決は難しいと思われる。

両国の関税合戦が激化すれば、世界景気への影響も避けられない。

ーーー

これまでの経緯は下図の通り。

米国側は4段階の引き上げで対象は合計5500億ドルとなり、現在の中国からの輸入品全体に追加関税をかけることとなる。

一方、中国は第3弾までで合計1100億ドルに過ぎない。

米国の対中輸入が5400億ドルあるのに対し、中国の対米輸入が1200億ドルしかないためである。

第3弾まででほぼ全輸入量が対象となり、米国の第4弾の制裁に対し、関税での報復は不可能である。

このため、他の方法で報復するとみられる。

中国の劉鶴副首相は5月10日、ワシントンで米中閣僚協議を終えたあとに中国のメディアとの共同インタビューに応じた。

発言内容は次の通り。

中国と米国の関係は非常に重要だ。中国と米国の協力が唯一の正しい選択だが、原則に基づくべきで、中国は原則に係る重要な問題については決して妥協しない。

経済問題、貿易問題は単に両国の関係にとどまらず、世界の平和と繁栄に関係する。

今回、中国代表団は米国側と率直で建設的な意見交換を行った。双方は協議を継続することで合意した。

中国は米国の追加関税に強く反対する。中国と米国に有害であるだけでなく、世界全体にとっても有害だ。中国は必要な対抗策をとる。


合意は平等で相互に有益である必要がある。双方は多くの点で重要な合意に達したが、中国にとって3つの問題点が残っている。

第一は、全ての追加関税を廃止すること。これが現在の貿易紛争の出発点で、双方が合意に達した場合、完全に撤廃する必要がある。(米国は中国の約束実行をみながら順次廃止する意向)

第二は、(中国による米国品の)購入量は現実的であるべきだ。昨年12月1日の両国のトップ会談で量について合意したが、勝手に変えるべきでない。(米国が無茶な増量を要求したか?)

第三は、協定案の文言のバランスで、どの国にも尊厳があり、文言はバランスが取れる必要がある。いくつかの重要な問題で更なる議論が必要だ。(米国案に中国にとって侮辱的な表現がある?)

昨年以降の双方の協議で いろいろ (up and down) があったが、これは当たり前のことで、双方がまだ交渉をしているのに、一方が他方を「撤回した ("backtracking") 」と非難するのは無責任だ。


中国には巨大な国内需要があり、サプライサイドの改革で中国製品、中国企業の競争力が高まる。財政政策、金融政策の余地も十分にある。中国経済は非常に楽観的だ。

発展途上で時に紆余曲折があることは、対応能力のテストになるため、よいことだ。

中国共産党と習主席の強力な指導のもと、中国国民が自信を持ち、ともに努力する限り、中国はいかなる困難も恐れず、持続可能で健全な経済発展を維持できる。

ーーー

これに対し、Trump大統領は中国が約束を撤回したことに怒り、追加関税を決めた。

Trump大統領は5月5日、中国の知的財産権侵害などを理由に2000億ドル分の同国製品に課す関税を、5月10日から現在の10%から25%に引き上げると表明した。

大統領は5月8日、フロリダ州で開かれた支持者集会で、「中国が約束を破った。そんなことは許さない。だから中国は代償を払うことになる」と述べた。

"I just announced that we'll increase tariffs on China and we won't back down until China stops cheating our workers and stealing our jobs, and that's what's going to happen, otherwise we don't have to do business with them."

"They broke the deal. They can't do that. So they'll be paying. If we don't make the deal, nothing wrong with taking in more than US$100 billion a year."

米ブルームバーグ通信によると、北京での閣僚協議で中国側が、外国企業に対する技術移転強要を是正する法整備を拒否した。ライトハイザー氏からその報告を受けた大統領が怒り、追加関税を課す対中制裁の強化を決めたという。

大統領は、中国が約束を破ったのは、中国が次期大統領に民主党のJoe Bidenか誰かがなると思い、再交渉して今後何年も米国から毎年5000億ドルをふんだくろうとしているのではと見ている。

そんなことは起こらないとし、毎年1000億ドルの関税を徴収し、それで農民から農業製品を買い取り、それを世界中の貧しい人々に与えるのだ。Make America Great Again ! と述べた。

The reason for the China pullback & attempted renegotiation of the Trade Deal is the sincere HOPE that they will be able to "negotiate" with Joe Biden or one of the very weak Democrats, and thereby continue to ripoff the United States (($500 Billion a year)) for years to come.

Guess what, that's not going to happen! China has just informed us that they (Vice-Premier) are now coming to the U.S. to make a deal. We'll see, but I am very happy with over $100 Billion a year in Tariffs filling U.S. coffers...great for U.S., not good for China!

We will then spend (match or better) the money that China may no longer be spending with our Great Patriot Farmers (Agriculture), which is a small percentage of total Tariffs received, and distribute the food to starving people in nations around the world! GREAT! #MAGA

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本ブログは2018年9月にこう述べた。

仮に閣僚級協議を開催しても、中国としては、LNGや大豆の輸入拡大で対米黒字を減らすことは出来るが、Trump の要求する「Made In China 2025計画」の取り下げは中国の将来のためにも、メンツからも応じる筈がなく、問題の解決は難しい。

現在の米国の対中要求は協議の貿易問題ではない。LNGや大豆などの輸入拡大 による米国の対中貿易赤字削減は簡単である。

底にあるのは、中国が国の資金を投じて製造大国となり、米国を脅かすことであり、これを止めるよう求めている。 米国と中国の覇権争い問題である。

中国としては、降りられる話ではない。米国がこれにこだわる限り、解決は難しい。

  

Made in China 2025計画

2015年までに製造業規模世界第一位、世界の製造業大国になり、
ステップ1で、2025年までに、格差縮小、十点突破で製造強国の仲間入りを果たし,
ステップ2で、2035年までに工業化の実現により製造強国の中位レベルに到達する。
ステップ3で、建国100周年の2049年までにイノベーション先導で製造強国の先頭グループに入るとの目標を掲げている。

米政権は5月10日午前0時1分、2千億ドル分の中国製品に課す制裁関税を現在の10%から25%に引き上げた。

既報の通り、トランプ大統領はツイッターで 以下の通り述べた。

2500億ドルの中国からの輸入品に25%の関税がかかる。大金が直接、政府に入る。追加で入る1000億ドルの関税で米国の農家から農業製品を購入する。中国がこれまでに買ったよりもはるかに多額だ。これを貧しく、飢えた国々に人道援助の形で供給する」

「関税は通常の貿易関係によるよりもはるかに多くの富を米国にもたらす。」

更に 農業製品購入の残りの資金で現在民主党と交渉中のインフラ整備にも充てられると喜んでいる。

5月5日に引き上げを明らかにした際も、「輸入関税引き上げ分はほとんどを中国が負担するため、製品価格にはあまり影響ない」と述べた。

米財務省が2019年12月13日に11月の関税収入は62億ドルと前年同月比でほぼ2倍に増えた と発表した際にも、「数十億ドルの関税を勝ち取った、"MAKE AMERICA RICH AGAIN"」と誇らしげに述べた。米テレビ番組のインタビューで「中国がモノを米国に送る際に、彼らは25%を支払っている」とも語った。

米メディアは「大統領は中国製品にかけた関税の支払いを、米国民ではなく中国側が負担していると誤解しているのではないか」と疑問視する。 筆者も大統領は誤認しているとしてきた。

今回の引き上げについて、家電メーカーなどで組織する全米民生技術協会のシャピロ会長は5月5日、「大統領は、関税は中国が払うのではなく米国民と企業が負担するということを理解すべきだ」と声明を発表した。


しかし、少なくとも現状は、大統領の方が正しいように見える。関税引き上げ分を中国の輸出業者が値下げの形で負担しているように見える。

グラフは米国の消費者物価指数 (CPI) と中国の生産者物価指数 (PPI) の最近の動きを示すが、追加関税の課税が始まった2018年秋以降も、米国の食品とエネルギーを除く コアCPI は全く動いていない。今年に入り、逆に少し下がっている。

これに対し、中国の生産者物価は昨秋以降、急下落しており、1~2月は0.1% となった。 中国の非食品のCPIが米国とほぼ同じ動きを示しているのと大きな違いがある。

このグラフから、米国が実際に獲得した多額の追加関税の多くが、米国消費者に転嫁されず、中国の輸出業者が負担しているのではないかとの推測が出来る。

米国全体としては、消費者の負担が余りないが、多額の関税が(中国の負担で)国庫に入り、それを使って農民の余剰製品を買い取って人道援助に回し、インフラ整備もできるということになる。
しかし、こんなことがいつまでも続くはずはない。

1929年の大恐慌も各国が自国産業保護のため高関税政策を取ったために起こった。これを踏まえてできたGATT(→WTO)は関税引き下げを基本原則の一つとしている。

実は、このことを的確に予想していたレポートがある。

欧州のシンクタンクの EconPol Europe (Europen Network for Economic and Fiscal Policy Research) の2018年11月のPolicy Reportである。

レポートのタイトルは "Who is Paying for the Trade War with China?" である。

この時点では、2000億ドル分の輸入品について追加関税を2019年1月1日から10%から25%に引き上げることとなっており、それを前提にしている。

筆者らは、価格弾力性に注目した。価格が上がっても需要が余り減らない製品の場合(下図のInelastic demand) の場合、関税引き上げによる損失の大部分は値上げの形で消費者が負担する。

逆に、Elastic demand の場合は、数量が大きく減少し、輸出業者の負担が大きくなる。供給を維持しようとすると、輸出価格を引き下げて追加関税を負担せざるを得ない。

関税無しの場合、価格P1で数量Q1で取引されていた。
関税が25%加わった場合、価格がP1のままなら、購入価格はP1 x 1.25 となり、高すぎて需要家は買わない。
取引成立のためには、関税負担を売り手と買い手が一部ずつを負担する必要がある。

元々、買い手は価格がPd に上がれば数量を減らし、Q2だけ買う。売り手は数量Q2が売れるなら価格Psまで下げる用意がある。
買い手の上限Pdと売り手の下限Psの差が丁度 関税額(Ps x 0.25)に相当する価格 Ps で、数量Q2の輸出が続く。
買い手は新関税(Pd マイナス Ps)のうち、旧価格 P1 とPdの差を負担し、売り手はP1 とPsの差を負担する。

価格弾力性が高いほど、輸出業者の負担が大きくなる。必須品で他に供給が無い場合、関税は買い手に転嫁される。

均衡点Psが見つからなければ、取引は成り立たず、輸出減となる。

Deadweight loss (死重損失):経済的効率性の損失であって、財やサービスについての均衡に達しない場合に生じる。
   関税追加により、売買数量がQ1からQ2に減ることによる買い手の買い損じ、売り手の売り損じを示す。

関税引き上げ対象製品をもとに計算した結果、下記の点が判明した。

25%の追加関税で、米国の消費者に転嫁されるのは 4.5%に過ぎず、中国の輸出価格が20.5%下がることとなる。
(日本経済新聞によると、関税対象の約7割は価格弾力性が1を超え、「値上がりに弱い」。)
下図のとおり消費財の値上がりが大きく、米国の消費者のうち、比較的安い中国品を買う低所得者への影響は大きい。

関税増額分のうち、75%程度を中国の輸出業者が負担する。 今後、米国向け輸出を止める業者も出るだろう。

対象製品の米国の輸入は 、数量減と値下げで、約37%減る。

この結果、米国の対中貿易赤字は17%減少する。

米国政府が戦略的に価格弾力性の高い製品を対象にした結果である。 (課税を全品目に拡大すると状況は変わる。)


注)2019年4月の米国向けの輸出は前年同月比13%減の313億ドルに落ち込んだ。 今後は更に減少するとみられる。


製品の種類により、弾力性が異なり、負担の割合が異なる。 米国のCPI、中国のPPIへの影響は次の通り。




EconPol Report の存在は、日本経済新聞の記事で知りました。)




米政権は5月10日午前0時1分、2千億ドル分の中国製品に課す制裁関税を現在の10%から25%に引き上げた。

この日、Trump大統領はツイッターを連発した。

追加関税は5月10日以降に米国向けに輸出され、通関した製品に順次かかるため、それまでに輸出された製品は同日以降に米国に到着しても10%のまま。
大統領はツイッターの中で、今後の交渉次第で追加関税を取り消す可能性を示唆している。

大統領は追加関税で農家から農業製品を購入し、それを飢えた国の人道援助に輸出すると述べた。
ツイッターにはないが、残りの大金をインフラ投資などに充てると述べた。

ツイッターは発表順に次の通り。

We have lost 500 Billion Dollars a year, for many years, on Crazy Trade with China. NO MORE!

米国は長年にわたり中国との馬鹿げた貿易で毎年5000億ドルを失ってきた。No More!
(実際は中国からの輸入が5000億ドル、貿易赤字は3750億ドル)

Talks with China continue in a very congenial manner - there is absolutely no need to rush - as Tariffs are NOW being paid to the United States by China of 25% on 250 Billion Dollars worth of goods & products.
These massive payments go directly to the Treasury of the U.S.
The process has begun to place additional Tariffs at 25% on the remaining 325 Billion Dollars. The U.S. only sells China approximately 100 Billion Dollars of goods & products, a very big imbalance. With the over 100 Billion Dollars in Tariffs that we take in, we will buy agricultural products from our Great Farmers, in larger amounts than China ever did, and ship it to poor & starving countries in the form of humanitarian assistance. In the meantime we will continue to negotiate with China in the hopes that they do not again try to redo deal!

中国との交渉は友好的に続く。急ぐ必要はない。今や2500億ドルの中国からの輸入品に25%の関税がかかる。大金が直接、政府に入る。
残る3250億ドルの輸入品に追加の25%の関税を課す準備が始まった。米国は中国に約1000億ドルしか輸出していない。不平等だ。
追加で入る1000億ドルの関税で米国の農家から農業製品を購入する。中国がこれまでに買ったよりもはるかに多額だ。これを貧しく、飢えた国々に人道援助の形で供給する。
中国との交渉も続ける。中国が再び決まったことをひっくり返すことがないと望んで。

Tariffs will bring in FAR MORE wealth to our Country than even a phenomenal deal of the traditional kind. Also, much easier & quicker to do. Our Farmers will do better, faster, and starving nations can now be helped. Waivers on some products will be granted, or go to new source!

関税は通常の貿易関係によるよりもはるかに多くの富を米国にもたらす。はるかに簡単に、はるかに速く。米国の農家は良くなり、飢える国は救済される。
特定の製品は関税を除かれる。中国以外の国から輸入しても良いのだ。

Tariffs will make our Country MUCH STRONGER, not weaker. Just sit back and watch! In the meantime, China should not renegotiate deals with the U.S. at the last minute. This is not the Obama Administration, or the Administration of Sleepy Joe, who let China get away with "murder!"

関税は我が国を弱めるのではなく、もっともっと強くする。見ていろ!
中国は最後の最後になって米国と再交渉しようとすべきでない。この政府はObama政権でない。中国の「殺人」さへ無罪放免した Sleepy Joe (Joe Biden)の政権とも違うのだ。

民主党大統領候補のJoe Biden と歌の Sleepy Joe をかけている。)

Build your products in the United States and there are NO TARIFFS!

製品を米国で生産せよ。関税はかからないよ。

Your all time favorite President got tired of waiting for China to help out and start buying from our FARMERS, the greatest anywhere in the World!

あなたの大統領は中国が助けてくれるのを待つのに厭きて、米国の農家から買い始める。世界のどこよりも優れている米国の農家から。

Great Consumer Price Index just out. Really good, very low inflation! We have a great chance to "really rock!" Good numbers all around.

消費者物価指数が発表された。非常に低いインフレ率だ。"really rock" (really good) のチャンスだ。良い数字ばかりだ。

(労働省の5月10日発表で、4月のCPIは2.0%、食品・エネルギー除外で2.1%であった。これまでの追加関税で物価は上がっていない。

Looks to me like it's going to be SleepyCreepy Joe over Crazy Bernie. Everyone else is fading fast!

民主党大統領候補は SleepyCreepy Joe(Joe Biden)がCrazy Bernie(Bernie Sanders)より優勢に見える。その他の候補は消え去った!

"We have been engaged in an unfair relationship with China for a long time. They have reneged on the commitments they made to the WTO, particularly around intellectual property." Carly Fiorina @MariaBartiromo

「米国は長年、中国との不公正な関係を続けてきた。中国はWTOとの約束、特に知財関連、を破ってきた」とHewlett-Packard の元CEOのCarly Fiorinaが述べた。Fox NewsのMariaBartiromoがそう言っている。

Over the course of the past two days, the United States and China have held candid and constructive conversations on the status of the trade relationship between both countries. The relationship between President Xi and myself remains a very strong one, and conversations into the future will continue. In the meantime, the United States has imposed Tariffs on China, which may or may not be removed depending on what happens with respect to future negotiations!

この2日間、米国と中国は両国の貿易関係について率直な建設的な会話を続けてきた。習首席と私の関係も依然として非常に強い。今後も交渉は続く。
米国は中国に追加関税を課したが、今後の交渉の結果次第で取り下げるかも知れないし、取り下げないかも知れない。(取り下げる可能性を示唆)


付記 翌11日のツイッター

Such an easy way to avoid Tariffs? Make or produce your goods and products in the good old USA. It's very simple!

関税を避けたい? アメリカでつくればよい。簡単だ!

I think that China felt they were being beaten so badly in the recent negotiation that they may as well wait around for the next election, 2020, to see if they could get lucky & have a Democrat win - in which case they would continue to rip-off the USA for $500 Billion a year.

The only problem is that they know I am going to win (best economy & employment numbers in U.S. history, & much more), and the deal will become far worse for them if it has to be negotiated in my second term. Would be wise for them to act now, but love collecting BIG TARIFFS!

中国は、来年まで待てば、民主党が勝ち、また米国で稼げると思っているだろう。
唯一の問題は私が勝つことだ。好景気、雇用等々で。2期目になるともっと悪くなる。今行動する方がよい。しかし、多額の関税を稼げるのはよいことだ。



英国の王位継承

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5月6日、英国のヘンリー王子とメーガン妃の間に第一子が誕生した。名前はArchie Harrison Mountbatten-Windsor で、王位継承順位は第7位である。

Archieは "genuine"、"bold" 、"brave" の意味という。


さきに日本の皇室の問題について調べた。

2019/5/6 令和スペシャル 天皇制について

英国の王室の継承について調べてみた。


1701年の王位継承法によるもので、条件は次の通り。

・ステュアート家の血を引いている者(ハノーファー選帝侯妃ゾフィー:Sophie von Hannoverの子孫)に限る。

ジェームズ1世(1566/6-1625/3 )はスコットランド、イングランド、アイルランドの王(スコットランド王としてはジェームズ6世)
チャールズ1世が継いだが、その系列はアン女王の死で断絶。 (共和制→王政復古→名誉革命 →権利の章典発布と波乱の時代)
エリザベスの子はゾフィー以外の兄姉及びその子孫はゾフィよりも早世またはカトリック教徒となったため、ゾフィが唯一の王位継承者となった。
しかし、ゾフィーがアン女王に先立って逝去したため、長男がジョージ1世として即位した。現在に至る。

・長子継承

・女性も継承者

これが王位継承者が非常に多い理由である。 そもそもがゾフィーを祖とする女系である。外国の王家に嫁した王女の子孫も後継者に含まれている。

なお、従来は男児優先であった。下図の通り、Ann王女は弟2人の下になっている。

その後、2011年10月28日の英連邦王国首相会議で、同日以降に生まれた者は、性別に関係なしとなった。

2013年に王位継承法を改正、William王子の第二子のPrincess Charlotte が最初の例となった。

・プロテスタント信仰であること。王位継承後イングランド国教会・スコットランド国教会に帰属すること。
   カトリック信徒、カトリックに転向した者は継承権を喪失する。

1689年2月の「権利の章典」で、名誉革命で追放されたジェームズ2世の数々の違法行為を列挙し、ジェームズ2世のカトリックの血筋を排除するとともに、カトリックの君主もしくはカトリックを配偶者とする君主はイギリス王位につくことはできないと規定された。   

・非嫡出子は継承権が与えられない。


現在の継承順位で20位までは下記の通り。赤字は女性。

この後は、女王の妹のマーガレット王女の子孫、女王の父(King Goerge Ⅵ)の弟2人の子孫、等々と続き、 婚姻関係を通じて欧州各国の王室も含まれる。

例えば、ノルウェー国王ハーラル5世は第68位、スウェーデン国王カール16世グスタフ は 第192位、デンマーク女王マルグレーテ2世は第221位、ギリシャ王妃アンナ=マリア は第235位などとなっている。

2011年時点で継承権の最下位はドイツ在住の女性で4973位であるという記事があった。



欧州委員会は5月7日発表の経済見通しで、イタリアのGDP比の財政赤字が2019年で2.5%、2020年には3.5%になると発表した。

EUの財政規律の基本(財政赤字の対GDP比 3%未満)をも未達となる。

イタリアの場合、財政赤字はGDP比で3%未満で基準を満たしていたが、公的債務は130%超で、債務の持続可能性を確保するため、構造的財政収支の中期目標(MTO)をGDP比率でゼロ%に設定、毎年の構造収支の改善を求めている。

2019年のイタリアのGDPを0.1%とした。

ドイツは0.5%と低く、フランスは1.3%で、ユーロ圏全体で1.2%と低成長である。2020年には全体で 1.5%を見込む。

イタリア政府は4月9日、2019年の成長率見通しを従来の1.0%から0.2%に引き下げるとともに、国内総生産(GDP)比の財政赤字が 計画の2.04%から2.4%に増えるとの見通しを示していた。

昨年末に財政赤字の見通しを実質GDP比で2.4%から2.04%に引き下げ、2020年は1.8%にすることで、EU財政ルール違反に対する制裁手続きの発動を逃れたが、実際には赤字は当初予算2.4%から更に上回る見通しである。

2兆円超の資産売却を2019年末までに終える計画だが、実現は難しい。経済成長の鈍化も重荷になった。

欧州委員会は付加価値税を2020年に予定通りひきあげ、財政規律を維持するよう促すが政権は慎重で、「別の税収確保の方法を考えたい」としている。

イタリアの付加価値税は、標準税率は22%で、主に生活必需品を対象として、10%と4%の軽減税率がある。

 10%:家畜、食肉、ハム、建物、小麦粉、コメ、薬、肥料、観葉植物、果物、鮮魚、映画、卵、酢、砂糖など。

 4%:紅茶、医療補助器具、生鮮野菜、牛乳、マーガリン、チーズ、バター、書籍、新聞、オリーブ油、パン、パスタなど

2018年予算安定化法案で2019年1月からの増税が定められていたが、2019年予算法において増税時期は先送りされ、2020年から実施すると定めている。

当初の税率の変更案

現状 2019/1/1 2020/1/1 2021/1/1
標準税率 22% 24.2% 24.9% 25%
軽減税率 10% 11.5% 13%

財政運営を巡ってコンテ政権と欧州委が再び対立するのは確実で、金融市場の火種になる可能性がある。

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「五つ星運動」と「同盟」のポピュリスト2党の連立政権であるイタリア政府は2018年9月27日、2019-2021年の経済財政計画を発表したが、財政赤字目標はGDP比2.4%とした。

EUの財政規律である安定成長協定では、加盟国の予算を監視する制度の一環で、毎年10月15日までに次年度予算案を欧州委員会並びにユーロ圏の財務相会合に提出することが求められる。

EUの財政規律の基本は、財政赤字の対GDP比 3%未満、公的債務残高の対GDP比率 60%未満である。 (公的債務残高は多くの国が基準を超えている。)


イタリアの場合、財政赤字はGDP比で3%未満で基準を満たすが、公的債務は130%超で、債務の持続可能性を確保するため、構造的財政収支の中期目標(MTO)をGDP比率でゼロ%に設定、毎年の構造収支の改善を求めていた。

政府は10月15日夜の閣議で、2019年度予算案を承認し、欧州委の審査を受けるため、同案を送付した。
2019年の単年度財政赤字目標をGDP比2.4%に引き上げ、2020年が2.1%、2021年は1.8%に設定した。

欧州委は前政権との間で、2019年予算の財政赤字をGDP比で0.8%に抑える計画で合意していた。

欧州委は10月18日の書簡で財政規律ルールの深刻な違反につながると警告したが、イタリアは22日に予算案を修正しないと回答した。このため欧州委は即座に差戻しを決めた。

欧州委が加盟国の予算案を差し戻すのは初めてのケース。

欧州委員会は12月19日、イタリアが再提出した修正予算案(財政赤字の見通しを実質GDP比で2.4%から2.04%に引き下げ)を承認した。制裁を見送り、監視を継続する。

イタリア下院議会は12月29日、2019年予算案を可決した。最低所得保障(ベーシックインカム)や年金受給開始年齢の引き下げなどを盛り込んだバラマキ型の予算で、GDPに対する財政赤字の比率は2.04%とした。

2018/10/29 イタリア、来年度予算案で欧州委と対決

メイ英政権のリディントン国務相は5月7日、5月23日の欧州議会選挙に英国も参加すると明言した。

政府はEU離脱を巡る行き詰まり打開を目指しているが、月内に行われる欧州議会選挙への参加を回避できるだけの早期決着には至らないと述べた。

「離脱問題を決着し、離脱協定を完了させることができると大きく期待していた。そうなっていれば、欧州議会選挙に参加する必要はなかった」。
「しかし英国の離脱が法的に有効にならない限り、法に従って選挙を行う必要がある。このため英国は選挙手続きを進める」。

「現在の目標は、欧州議会の新会期が始まる7月2日までに離脱を完了させること。英議会が夏季休会に入る(通常は7月半ば)までには「確実に」この問題を解決したい」。

付記

労働党のコービン党首は5月17日、メイ首相に宛てた書簡で、離脱を巡る与野党協議の打ち切りを求めた。「重要政策で与野党の溝を埋めることができないことが明らかになった」としている。

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既報の通り、EUと英国は4月11日早朝、英国の離脱期限を10月31日まで再延長することで合意した。

結論

Article 1 離脱日を2019年10月31日まで延長する。

Article 2 この決定は、英国が欧州議会選挙に参加せず、かつ5月22日までに協定書を批准しない場合、5月31日に終了する。

2019/4/11 Brexit 合意書 

欧州議会は新議会(2019~2024年)の開会初日時点の全加盟国から直接選ばれた議員で構成することが法的に義務付けられており、今回は7月2日がその日に当たる。

欧州議会選挙は5月23日~26日に行われる。

新たな欧州議会が開会する7月2日以降も英国がEUにとどまる場合、英国は欧州議会選挙を実施する必要がある

英国が5月22日までに協定書を批准すれば、万事解決する。英国は欧州議会に参加しない。
逆に5月22日までに批准しない場合、欧州議会選挙を実施する必要があるが、もしやらなければ、5月31日に「合意なき離脱」をせざるを得ないこととなる。

メイ首相としては、議会選挙を避けたかったが、5月22日までに批准できる可能性が無くなったとし、選挙を実施するもの。

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欧州議会議員は任期が5年。総議席は751で、英国は、本土が70議席、北アイルランドが3議席の合計73議席である。

前回は2014年5月22日に投票が行われた。選ばれた議員の党派は次の通り。

  当選 前回比
独立党 24 +11
労働党 20 +7
保守党 19 -7
緑の党 3 +1
スコットランド国民党 2 ±0
自由民主党 1 -10
プライドカムリ 1 ±0
国民党 0 -2
 
Sinn Fein 1 ±0
民主統一党 1 ±0
アルスター統一党 1 ±0
合計 73 ±0


EUでは、BREXITを前提に既に議席の再配分をしていた。但し、英国がまだ離脱しないため、発効していない。

英国のEU脱退によって空席となる73議席のうち、46議席は無くし、総議席数は751から705に削減された。

残り 27議席は各国に再配分された。

2019/4/15 Brexit と欧州議会選挙 

選挙方法は各国に任されている。

英国では5月23日に実施され、12選挙区から73人が選ばれる。候補者か、党か、どちらかを投票する。
18歳以上で予め登録した人が投票できる。

欧州議会選は「人気投票」に流れる傾向があり、強硬離脱派の新党 Brexit Party が世論調査で30%の支持を集めている。

Brexit Party は元独立党党首のNigel Farage が2019年4月に早期の離脱を目指し設立した。

千代田化工建設は5月7日、業績予想の大幅修正を発表した。 (5月9日 決算発表した。)

同社は2018年11月9日発表の中間決算で、連結決算の最終損益が1,086億円の赤字と発表した。5月の前期の決算発表時には65億円の黒字を予想していた。

本年2月の第3期決算発表時にも同じ金額の予想を発表していた。

それに対し、今回は最終利益が2,150億円の赤字で、 3か月で赤字が倍増となっている。債務超過になる。

千代田化工の損益の推移は下記の通り。(単位:百万円)

売上高 営業利益 経常利益 株主純利益
2017/3実績 603,745 15,680 -3,080 -41,116
2018/3実績 510,873 -12,330 -10,100 6,445
2019/3 予想
  2018/5 400,000 11,500 12,500 6,500
2018/11 400,000 -86,500 -86,500 -105,000
2019/5/7 340,000 -200,000 -193,000 -215,000
2019/3実績 341,952 -199,795 -192,998 -214,948


2017年3月期では最終利益が411億円の赤字となった。

これは、千代田化工建設が35%出資するシンガポールのEzra HoldingsとのJVのEMAS CHIYODA Subseaが2017年2月に米国でChapter 11の申請をしたためで、同社は、営業外費用で130億円、特別損失で238億円、合計368億円の損失を計上した。

2018年3月期には、米国で工事を進めているCameron LNGプロジェクトで追加コストがかかったとし、123億円の営業損失を計上した。
この時点での2019年3月期予想では、特に問題意識はなく、営業利益で115億円の益、最終利益で65億円の益としていた。

2018年11月9日発表の中間決算で、連結決算の最終損益が1086億円の赤字と発表した。

米国で工事を進めているCameron LNGプロジェクトで、人件費の大幅高騰、現場工事の生産性低下で、工事コストが約850億円の大幅増加となる。

同社は、パートナーのMcDermott(CB&Iを吸収)と共同で、工事遂行プランの見直しをおこなってきたが、下記の点が判明した。

・2018年初頭からの現場作業員、特に技能工の不足が今後も続くこと

・それに伴う人件費の大幅高騰

・現場工事の生産性が5月以降、再び低下(現場が市街地から離れ不便なことなどから作業員の定着性が極めて低い)。

この結果、現場作業員の人件費を含む工事コストが大幅に増加すると見込み、約850億円を追加した。

今後については、「キャメロン対策タスク」を9月1日付で設置、計画どおりの完遂を確実にする対策を実施するとしていた。

2018/11/14 千代田化工建設、米国LNG計画で850億円の追加工事 

付記

三菱商事は5月14日、キャメロンLNGプロジェクトが現地時間5月14日にLNGの生産を開始したと発表した。

数週間の内にLNG船に荷積みされ、初出荷される見込み。



今回の赤字倍増の理由として、同社は次の説明をしている。

キャメロンLNGプロジェクト

第1系列の建設工事最終盤になって想定外のコスト増、現場作業員の離職率が想定以上に高止まりする中、生産性の向上が期待できない状況
第2、第3系列においても工事最終盤に同様のコストがかかるものと想定

2019/2の説明では、下図に記載の通り、追加コストは顧客負担としていた。

インドネシア・タングープロジェクト

様々な複合要因によってプロジェクトの進捗に大きな影響 があり、必要なコストを計上した。訴訟・仲裁等についてのリスクの見直し

同社は中間決算発表の「継続企業の前提に関する注記」で、「継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在しているものと認識」しているとし、筆頭株主の三菱商事(33.39%) などと財務体質の強化で協議するとしていた。

報道では今回、三菱商事は千代田化工建設の経営再建を支援する方針を固めた。LNGプラントの高い技術をもつ千代田化工の再建を後押しする。

三菱商事は千代田化工の優先株による第三者割当増資を引き受け、融資も実施することで1500億円超 の支援をするという。三菱UFJも融資で再建を支援する。


千代田化工が実施する第三者割当増資を三菱商事が引き受け、700億円の優先株を取得すると同時に900億円融資する。

三菱UFJ銀行も200億円融資して、2019年3月末時点で592億円の債務超過となった千代田化工の財務体質の改善を進める。

三菱商事は経営幹部ら30人規模の人材も送る。
三菱商事出身の大河一司・元機械CEOを千代田化工の会長兼CEOにあて、2017年に千代田に派遣された山東理二・社長兼CEOは社長兼COOにする。

三菱商事は1990年代後半に10.27%を出資して支援、2008年に第三者増資を引き受け、33.4%に増やし、現在に至っている。

1990年代後半は、海外プラント採算悪化に対する支援
2008年は、カタールLNGプラントが資材高騰で採算悪化、プラント事業のリスクが高まっているため「信用補完狙いの増資」とされた。

今回は議決権のない優先株の引き受けと融資などを組み合わせ、子会社にはしない。

ーーー

同社のLNGプロジェクトは次の通り。 (2019/2 発表)

なお、同社は本年2月に米国のGolden Pass LNG輸出基地の設計・調達・建設業務を受注したが、これについては、パートナーのZachryMcDermottが労働者の生産性など現地建設関連のリスクの責任を負うスキームとし千代田の負うスコープは基本的に設計と調達に限定した。(リスクが少ない代わりに、当然収益も少ない)

2019/2/9 千代田化工、米国 Golden Pass LNG輸出基地設計、調達、建設業務を受注 




2017年1月17日、米公正取引委員会(FTC)はQualcommをスマホ用の半導体の独占で連邦地裁に訴えた。後述の通り、スマートフォン用モデムチップで圧倒的なシェアを持つQualcommが、その地位を背景に端末メーカーに対して不利な契約条件を無理強いしたり、過剰なライセンス料を要求するなど独占禁止法に違反する行為を行っているとした。

この裁判は、カリフォルニア州北部連邦裁判所でLucy Koh 判事が担当し、2019年1月に審理が始まり、間もなく判決が出る。

米司法省の独禁法部門は5月2日、もしQualcommが有罪とされる場合、過度な罰則(remedy)が今後の5Gでの競争で米国が不利になることを懸念し、裁判所に対し、どんな罰則を与えるかについて注意深く考慮するべきだとし、罰則についてヒアリングを行うことを要請した。

過度に広範な罰則は5G技術とそれに依存する川下の利用技術の市場で競争力とイノベーションを下げる恐れがあるとし 、そうなれば、独禁法の罰則の適切な範囲を超えることとなるだけでなく、競争を助けるのではなく、競争を害する明確な可能性があるとする。

ーーー

2017年1月17日、米公正取引委員会(FTC)はQualcommをスマホ用の半導体の独占で連邦地裁に訴えた。

スマホ用モデムチップで圧倒的なシェアを持つQualcommが、その地位を背景に端末メーカーに対して不利な契約条件を無理強いしたり、過剰なライセンス料を要求するなど独占禁止法に違反する行為を行っているとした。

Qualcommはスマホの接続に必須の3G、4Gなどの無線通信技術CDMA(符号分割多元接続)の特許を持っている。企業の特許が技術標準として採択される場合、他企業がその特許を使用する時、特許権利者は「公平で、合理的、かつ非差別的」 (FRAND:Fair, Reasonable And Non-Discriminatory)に協議しなければならないという義務がある。

FTCはQualcommが次の点で独禁法に違反しているとした。

  • 特許料を支払わないとライセンスしない("no license, no chips")政策

モデム市場において90%を超えるシェアを確保していながら、何年もの間、CDMA/LTE特許に対して不当に高額なロイヤルティーを課していたことや、優位な取引を行うために半導体チップの出荷を中止するなど

  • FRANDに違反し、競合業者にライセンスを拒否
  • Appleに対し、Qualcommの競争相手から購入するのを禁止した。

発表文:https://www.ftc.gov/news-events/press-releases/2017/01/ftc-charges-qualcomm-monopolizing-key-semiconductor-device-used

これに対しQualcommは、自分たちのビジネスモデルは違法ではなく、競争と価格低下を招くので消費者のためになると主張している。また、そもそも自社の立場は独占的でないことも強調し、半導体チップの出荷を停止させたことなど一度もないと反論している。

この裁判は、カリフォルニア州北部連邦裁判所でLucy Koh判事が担当し、2019年1月に審理が始まった。

FTCはAppleやSamsung、Intel、Huawei などから証人を呼び、Qualcommのライセンス戦略がモバイル業界にもたらした悪影響について証言させた。

Qualcommは、顧客が同社のモデムチップを選ぶのは最高品質だからであり、ライセンス料をめぐって争っているときでも顧客にプロセッサを提供するのを 止めたことは一度もないと述べている。

専門家は2つの論点に整理している。

1つは、スマホメーカーがQualcommからチップを購入する際、デバイス本体の方でもロイヤリティが課される。Appleは これを double-dipping(二重取り)と表現している。
もう1つは、ライセンス料がデバイスの価格に比例して高くなるということ。ハイエンドモデルでは、モデムチップが占める役割は相対的に小さくなるが、常に一定比率の課金が徴収される。

Lucy Koh判事はQualcommにとって厳しい判断をするのではないかと推量されている。

判事は予備審査時の2018年11月に、FTCからの要請に従い、Qualcommに対し、ライバル企業にモデムチップに不可欠な技術を提供するよう命じる部分略式判決を出した。

判決には以下の記述がある。「モデムチップに関する標準必須特許のライセンスがセルラー通信の標準を順守および実装するためのものであること、さらにはQualcommがモデムチップメーカーに対して不公平な扱いをしてはならない理由を明確に示している」

判事はQualcommに「公平で、合理的、かつ非差別的 (FRAND)」扱いの義務があることを認めている。

ーーー

QualcommとFTCは共に和解の選択肢を検討するために判決の延期を求めたが、Koh判事はこの要求を却下した。



業界では判決について、つぎのような可能性を考えている。

Qualcommに対して、同社の「no license, no chips」方針を強制的に廃止させる。

Qualcommに、ライバルの半導体メーカーへのライセンス供与を強制する。

取引の一環としてクロスライセンスを要求することを禁じる可能性、など。


Trump政権はそもそも、訴訟そのものに反対であった。

FTCの訴訟は2017年1月20日のTrump大統領就任の直前に行われ、5人のメンバーのうち唯一共和党の委員は反対した。
Trump大統領就任で共和党員が3人となり、訴訟を取り消すと見られたが、委員長(共和党)が過去の職務との利益相反で投票せず、2:2となり、取り消されなかった。

中国のHuawei が5Gで世界各国に進出するのを政治的圧力で抑えているなか、仮にQualcommが敗訴し、厳しい罰則が課された場合、Qualcommの競争力が弱まり、結果として米国の競争力が弱まるのを懸念し、介入に出たとみられる。

2018/12/11 2019年度米国防権限法(NDAA2019) --- Huawei、ZTE等の米政府機関との取引からの排除

トランプ米大統領は2018年3月12日、シンガポールに本社を置く通信用半導体大手BroadcomによるQualcomm の買収を禁じる命令を出している

2018/3/14 米大統領、BroadcomによるQualcomm買収禁止命令


日本の公正取引委員会は3月15日、 米半導体大手クアルコムが第3世代(3G)携帯電話に必要な通信技術の特許の使用契約を巡り、2009年9月28日付けで排除措置命令を受けた審判で、「公正な競争を阻害したと認めるに足る証拠はない」として、 これを取り消す審決を出したと発表した。

2019/3/21 公取委、 クアルコム特許契約の排除命令を取り消し  


AppleとQualcommは
4月16日、Appleの契約メーカー(Contract manufacturers) との間のものも含めて、すべての訴訟を取り下げることで合意した。

これについてQualcommは5月1日、Appleとの特許紛争の和解により、第3四半期にAppleからキャッシュで45億~47億ドルの支払いを受ける見込みだと発表した。

AT&T、Verizon
、Samusung電子等が相次いで5G 対応スマホを発売する中、Qualcommから5Gモデムの供給を受けられないAppleは発売できないでいる。Appleとしては、iPhoneの5G対応を早期に進めるためにも、Qualcommとの和解を急ぐ必要があったとみられ、実質的にQualcommの勝利である。

今回の和解を受け、Qualcommに代わってAppleにモデムを供給しているIntelは同日、5G対応のモデムの開発から撤退すると発表した。

2019/4/18 AppleとQualcomm、知財紛争で全面和解


FTCにとっては、AppleはQualcommの商法の最大の被害者で、訴訟ではAppleの証言を中心にしてきたが、梯子が外された形にな っている。残る「被害者」の大物はHuaweiで、米政権としては応援したくない相手である。

LG Chemは4月30日、SK InnovationがLG技術者を採用することにより、リチウムイオン電池技術を盗用したとし、LGの米国子会社と共同で、米国国際貿易委員会(USITC)Delawareの連邦地裁提訴したと発表した。

USITCに対し、LGの企業秘密を侵害するリチウムイオン電池のサンプルと基盤技術を米国に輸入するのを止めるよう求めている。

USITCは米国産業に対して損害を与えるダンピングや輸入品の商標、特許および著作権等知的財産権の侵害などを調査分析し、不公正な貿易を是正することを目的に設立された連邦政府の独立機関で、委員会が行う決定は、通関を禁止する排除命令と販売を中止する停止命令の2種類。

地裁への提訴は、損害賠償請求のため。

SK Innovation はEV用リチウムイオン電池では後発で、2012年に韓国で大量生産を開始した。韓国のほか、中国の常州に工場を持ち、ハンガリーで建設中。ドイツのDaimler AG やVolkswagen に供給している。本年3月にGeorgia州でEVバッテリー工場の起工式を行った。

2018/12/4 SK Innovation、米に電気自動車バッテリー工場を建設

LGとしては、サンプルや基盤技術の米国への輸入を阻止し、米国での生産活動を妨げようとするもの。

LGの主張は次の通り。

SK Innovationは、LGのリチウムイオン電池部門の77人の高度の技術と経験を持つ従業員を雇用し、LGの企業秘密を取得した。

この技術はLGが世界で初めて商業用に開発した自動車用のパウチ型リチウムイオン電池で、世界中の自動車メーカー、家電メーカーに採用されている。

77人のなかには、最新型の電池を含むリチウムイオン電池のR&D、製造・組み立て、品質保証テストを担当する数十人のエンジニアを含んでいる。

その多くが、SKがパウチ型リチウムイオン電池の開発、製造をするのに役立てるべく、LGの企業秘密を盗んだ。

社内調査の結果、彼らはLGの秘密を盗み、それをSKに提供することで採用してもらっている。SKへの入社のための申請書や履歴書がLGのコンピュータに残っている。例えば、一人は電極製造プロセスに関する秘密情報をSKへの履歴書のなかに挿入していた。何人かはSKへの転職の前にLGのデータサーバーから400~1900件の技術資料をダウンロードしていた。

77人の転職が始まった2016年末から本年初めまでに、SKのEV電池の契約数量は14倍以上に増えている。

LGは以前に、韓国での同様のケースでSKに移動した5人の元従業員を競業禁止条項違反で訴えている。韓国最高裁は、LGの秘密情報が洩れる恐れが実際にあるとして競業禁止条項の発動を認めている。それにもかかわらず、SKは今に至るまでLG従業員を勧誘している。

これに対しSKは、「当社は透明でオープンな採用手続きにより従業員を採用している。裁判の席で説明する」としていた。

しかしLGは攻勢を強め、5月2日には「後発企業が技術開発に投資することなく、先発企業の企業秘密を簡単に利用するなどということが受け入れられるなら、今後、誰も大胆な投資などしない」と述べた。

これを受け、SK Innovation は5月3日に反論を発表した。

もう黙っておれない。競争相手が根拠のないことを述べ続けるなら、法的活動を含め、強く対応する。

SKはLGの技術を必要としない。提供するといっても断る。R&Dに大量の投資を行い、世界でベストの技術を既に確保している。また、LGの技術や生産方法と異なっているためだ。

LGの従業員を採用したのは通常の採用手続きによっており、技術を得るために競合会社から従業員を引き抜く必要はない。

LGの元従業員によると、多くの従業員がLGの待遇がひどいので辞めており、SKに入ったのはそのうちの76人に過ぎない。その多くは一般の労働者で、高位のものはごく少ない。技術が欲しくて採用するなら、一般労働者など雇わないはずだ。

LGは自社の待遇が悪くて従業員が辞めたのをSKのせいにしているのではないか。LGの元従業員の一人は、LGは他社を訴える時間があるなら自社の従業員の待遇を改善せよと言っている。

雇用プロセスに問題なく、企業秘密の盗用などしていないため、訴訟については心配していない。技術に関する訴訟があると需要家はその企業の製品を使うのを躊躇うため、注文に影響するのを懸念する。

LGの動きは、SKへの注文を邪魔するのが目的ではないかと疑う。

LGが攻撃を続けるなら、需要家の信頼の問題からも、強く対応せざるを得ない。LGが理性をとりもどし、誠意のある競争関係に戻ることを望む。

平成から令和に移り、新聞もテレビも皇室関係の記事で一杯である。

そのなかで次のブログが気になった。

小林よしのり(2019/5/1) NHKスペシャル「日本人と天皇」を見るべし

昨日のNHKスペシャル『日本人と天皇』を見たか?
この番組は再放送を必ず見た方がいい。
長い天皇の歴史で、側室で生まれた男子が半分もいたのだ。
男系の嫡出子は、ここ400年では、3人しかいないと言っていた。
昭和天皇から、奇跡が続いていたのだ。
奇跡はそろそろ終わるのではないか?

NHKの番組は見ていなかったが、天皇家の歴史を調べてみた。

今の天皇は第126代で、これまで男系が続いている。

126代のなかには、 8代10人の女性天皇がいる。

しかし、母娘の皇位継承はあるが、外部の男性との子供が皇位を継いだ例はなく、男系が継続している。

女性天皇

前任 後任
①33代 推古天皇 29代 欽明天皇の娘 弟の32代 崇峻天皇 兄の30代敏達天皇の孫の34代 舒明天皇
②35代 皇極天皇
③37代 斉明天皇
舒明天皇の弟の娘 34代 舒明天皇の妻 夫の34代舒明天皇 弟の36代 孝徳天皇
弟の36代 孝徳天皇 舒明天皇との息子の38代天智天皇
④41代 持統天皇 38代 天智天皇の娘
40代 天武天皇の妻 夫の40代 天武天皇 40代 天武天皇の孫の42代 文武天皇
⑤43代 元明天皇 38代 天智天皇の娘
41代 持統天皇の妹
天武・持統天皇の息子の草壁皇子の妻 草壁皇子との息子の42代 文武天皇 娘の44代 元正天皇
⑥44代 元正天皇 草壁皇子・元明天皇の娘
42代 文武天皇の姉
母の43代 元明天皇 弟42代 文武天皇の息子の45代 聖武天皇
⑦46代 孝謙天皇
⑧48代 称徳天皇
45代 聖武天皇の娘 父の45代 聖武天皇 40代 天武天皇の孫の47代 淳仁天皇
47代 淳仁天皇 天智天皇の孫の49代 光仁天皇
⑨109代 明正天皇 108代 後水尾天皇の娘* 父 後水尾天皇 弟の110代 後光明天皇
⑩117代 後桜町天皇 115代 桜町天皇の娘 弟の116代 桃園天皇 桃園天皇の息子の118代 後桃園天皇

*明正女帝の母は後水尾天皇の中宮の徳川和子で、徳川家康の孫(徳川秀忠の五女)

  

これまででも、男系継続は容易では無かった時が多い。

現在の天皇家は102代 後花園天皇を祖とするが、101代の称光天皇からは8親等も空いている。称光天皇の前の3世代に後継者がいなかった。

他にも、25代武烈天皇から26代継体天皇へは約200年前の15代応神天皇に遡り、10親等の隔たりがあり、48代称徳天皇から49代光仁天皇へは130年前の34代舒明天皇に遡り、8親等の隔たりがある。

後記のとおり、歴代天皇の家系で、現在残っているのは、天皇家のほかは19世代前(600年前)の102代 後花園天皇(1428-64)の弟の家系のみで、他は全て断絶している。

明治天皇には皇后との間には子が無く、側室との間に男5人、女10人の子が生まれたが、成人男子は大正天皇のみである。男系が 切れる恐れがあった。

男子 女子
皇后 なし なし
葉室光子 第一皇子 死産
橋本夏子 第一皇女 死産
柳原愛子 第二皇子 1歳で夭折
第三皇子(大正天皇)
第二皇女
千草任子 第三、第四皇女
園祥子 第四皇子 1歳で夭折
第五皇子 1歳で夭折
第五~第十皇女

大正天皇には4人の皇子が生まれたが、その3世代後の男子は悠仁親王1人だけである。


これまで男系が長期にわたり維持できた一つの理由に、側室制度があ った。 (それでも上記のように何度も断絶の危機があった。)

126人の天皇のうち、58人が非嫡出子である。 過去400年間で嫡出の天皇は109代の明正天皇(1629-43)を含め4人だが、明正天皇は女性で、男性では124代の昭和天皇、125代の 上皇、126代の現在の天皇の3人のみである。 明正天皇と昭和天皇の間の400年間はゼロ。

明治天皇の生母は孝明天皇の典侍の中山慶子、大正天皇の生母は明治天皇の典侍の柳原愛子である。 大正天皇以降は側室をもたない。

現在の皇室典範(昭和22年法律第3号)においては、天皇および皇族男子の子であっても、施行日以降に出生した非嫡出子は皇族の身分を与えられない。

第六条 嫡出の皇子及び嫡男系嫡出の皇孫は、男を親王、女を内親王とし、---。

明治典範第4条は 「皇子孫ノ皇位ヲ継承スルハ嫡出ヲ先ニス 皇庶子孫ノ皇位ヲ継承スルハ皇嫡子孫皆在ラサルトキニ限ル」と規定。

なお、養子は認められない。

第九条 天皇及び皇族は、養子をすることができない。

嫡出の皇子が天皇となったのは過去400年で昭和天皇、上皇、現在の天皇の3人のみで 、 しかも連続してであり、側室制度が無くなってからである。これは奇跡的である。

今後も継続する保証はない。

NHKスペシャル「日本人と天皇」 で「女系」に反対する急先鋒だった平沼赳夫元衆議院議員にインタビューしている。

(平沼赳夫元議員)
「やっぱり悠仁親王に男の子がたくさん将来お生まれになることが望ましい。」

(ディレクター)
「一般の我々にしても、女の子がずっと生まれるというのはある。天皇家だけ例外があるのかというとそれも・・・」

(平沼、しばらく無言で考えた後で)
「誰も結論は出ないでしょうけどじっと待つしかないな。それを信じながら」


今後の対策として、女性天皇が言われている。

今後の女性天皇はこれまでの女性天皇とは異なる。他に男系の皇族がいなければ、外部の男性との子供が天皇を継ぐこととなり、男系が切れることとなる。

これに対する反対が強い。

小泉内閣の有識者会議が2005年に女性・女系天皇の容認を提唱した。

婚外子除外などに触れ、「一組の夫婦の出生数が2人を下回れば、男系男子は世代を追うごとに減少し続ける」と警告。女性の社会進出も考慮しつつ、「皇位の男系継承を維持することは極めて困難。女性・女系天皇への道を開くことが不可欠だ」と結論付けた。

これに異論を唱えたのが保守派で、当時官房長官だった安倍晋三首相も、その一人。皇籍離脱した旧皇族の皇籍復帰を主唱した。

しかし、 歴代天皇の家系で、現在残っているのは、天皇家のほかは19世代前の102代 後花園天皇(1428-64)の弟の伏見宮貞常親王の家系のみで、他は全て断絶している。

1802年生まれの 伏見宮邦家親王から11宮家が生まれた。現在は5家が断絶、6家が残っている。なお、昭和天皇の香淳皇后は久邇宮家の出身である。

元JOC会長の竹田恒和氏はその一族で、 現在の天皇からは36親等という非常に遠い関係である。


皇室でなければ、19代前(約600年前)の祖先の兄弟の子孫で36親等というのは、赤の他人である。

生物学的には、父親の遺伝子と母親の遺伝子を引き継ぐため、数世代経つと、祖先の遺伝子を持つ可能性は極めて小さい。

これが母系であれば、人体のミトコンドリアは全て母方からの母性遺伝であるため、間違いなく祖先の遺伝子を引き継いでいる。
ミトコンドリアは太古の時代に、酸素呼吸能力を獲得した原核生物が原始真核生物に飛び込み、細胞内共生を始めたとされ(細胞内共生説)、細胞の核のDNAとは全く別のDNAを持つ。

これまでの 皇室の歴史で最も遠いのは、25代武烈天皇から26代継体天皇の約200年で、10親等の隔たりである。36親等というのは余りにも遠い。

民法725条は、6親等内の血族、配偶者、三親等内の姻族を親族とするとなっており、これ以外は親族ではない

女性だからという理由だけで内親王ではなく、36親等以上も離れた人を後継の天皇とするのを、国民が認めるであろうか。



付記  男系継続はフィクションであるというブログを見付けた。

 池田信夫ブログ 2019/5/3




Trump大統領は5月5日、中国の知的財産権侵害などを理由に2000億ドル分の同国製品に課す関税を、5月10日から現在の10%から25%に引き上げると表明した。

米中は2018年12月から貿易協議を開いて打開策を探ってきたが「交渉が遅すぎる」として制裁強化に転じる。最終協議を前にした威嚇との見方もある。

付記

米通商代表部(USTR)は5月8日、2千億ドル分の中国製品に対する制裁関税を5月10日午前0時1分に現在の10%から25%に引き上げると官報で正式に通知した。

中国商務部は5月8日夜に「もし米国が追加関税の措置を取るならば、中国は必要な反撃措置を取らざるを得ない」との声明を発表した。

付記

トランプ米政権は5月10日午前0時1分、2千億ドル分の中国製品に課す制裁関税を現在の10%から25%に引き上げた。中国も報復措置を取るとの声明を出した。

追加関税は5月10日以降に米国向けに輸出され、通関した製品に順次かかるため、それまでに輸出された製品は同日以降に米国に到着しても10%のまま。


大統領はツイッターで「2000億ドル分の製品は5月10日に10%から25%に上がる。追加の3250億ドル分の中国製品にも速やかに25%の関税を課す」と述べた。「中国との交渉は続いているが、遅すぎる」とした。輸入関税引き上げ分はほとんどを中国が負担するため、製品価格にはあまり影響ないとしている。(全くの誤認)

For 10 months, China has been paying Tariffs to the USA of 25% on 50 Billion Dollars of High Tech, and 10% on 200 Billion Dollars of other goods.
These payments are partially responsible for our great economic results.

The 10% will go up to 25% on Friday.

325 Billions Dollars of additional goods sent to us by China remain untaxed, but will be shortly, at a rate of 25%.

The Tariffs paid to the USA have had little impact on product cost, mostly borne by China. The Trade Deal with China continues, but too slowly, as they attempt to renegotiate. No!

ーーー

米国は2018年7月6日から340億ドルの輸入品に25%、8月23日からは合計500億ドルの輸入品に25%の追加関税を課し、中国は対抗措置をとった。

2018年9月24日からは追加の2000億ドルの輸入品に10%の追加関税を課し、2019年1月1日からは25%に引き上げるとした。中国は600億ドルの米国からの輸入品に5%と10%の追加関税を課した。
大統領は中国からの残りの輸入品にも追加関税を課すると繰り返し言及した。

大統領と習近平主席は2018年12月1日、首脳会談を開き、米国が中国への追加関税を猶予することを決めた。2000億ドル分の中国製品について、2019年1月1日に追加関税を25%に引き上げるのを止め、当面 10%に留める。

両国は直ちに、(1)米企業への技術移転の強要 (2)知的財産権の保護 (3)非関税障壁 (4)サイバー攻撃とサイバー犯罪(窃盗)(5)サービスと農業の市場開放 の5分野での構造変化の協議を開始し、90日以内に結論を得ることで合意した。この間に合意できない場合、追加関税は25%に引き上げるとなっていた。

2018/12/2 米、中国への追加関税を90日猶予

米政権は2019年2月28日、3月1日に交渉期限が迫っていた中国との通商協議を延長し、2日午前0時過ぎに発動予定だった対中制裁強化を見送ると正式発表した。別に発表があるまでは追加関税の税率を10%で維持する。

これを受け中国は、米国で生産された自動車と自動車部品に対して引き続き追加関税の賦課を一時停止することを決定した。この措置の終了時期については別途発表するとしている。

2019/2/28 米国、中国製品への関税引き上げを延期、首脳会談で最終決着へ

今回、2000億ドル分について、延期していた25%への引き上げを実行するというもので、残りの全輸入品への追加関税も示唆している。
(米国の貿易統計では2018年の中国からの輸入は5,395億ドルとなっており、2,500億ドルの残りは2,895億ドルである。)

米中は閣僚級協議を開いて関税引き下げなどの条件を交渉しており、5月8日から中国の劉鶴副首相がワシントン入りして再会談する予定になっている。

中国はLNGや穀物など米国製品の輸入拡大策を示し、外資の技術移転強要を禁じる「外商取引法」も成立させた。
但し、中国が合意に違反したと判断すれば制裁関税を再発動する「罰則条項」などで対立が残っているとされる。

今回の突然の引き上げ表明は、中国に一段の譲歩を求める「脅し」との見方もある。


5月2日に英国のイングランドと北アイルランドで地方議会選挙が行われた。

イングランドのロンドンを除く248地方議会選と6自治体の首長選、北アイルランドの全11地方議会選で、スコットランドとウェールズでは地方選は行われていない。

イングランドの開票結果は次の通り。

今回 2015年 増減 Brexit姿勢
保守党 3,562 4,892 -1,330 離脱
労働党 2,033 2,117 -84 離脱で与党と協議
独立党 31 176 -145 離脱
自由民主党 1,350 646 +704 EU残留
緑の党 265 71 +194 EU残留
その他 1,179 518 +661
合計 8,420 8,420 0


離脱派の保守党と独立党が大敗した。

労働党も議席を失った。党首が保守党と与野党協議を続けているが、これはメイ首相を助けることになるだけとの批判が多く、残留派の票が2回目の国民投票を唱える自由民主党や緑の党に流れたとされる。

労働党はこれまで保守党案には反対しており、3月27日の下院の「示唆的投票」では「EUとの緊密な経済関係の維持案」を提案した。

・全面的な関税同盟
・単一市場との緊密な連携
・新しいEUの権利と保護に対応
・EUの機関、資金拠出計画への参加
・将来のセキュリティ関連の合意

逆にEU残留を主張する自由民主党と緑の党が大幅に議席を増やした。


選挙結果を受けてメイ首相は、有権者は主要政党にブレグジットを「さっさと進める」よう期待している証拠だと述べたが、自由民主党の党首は、 「自分たちに投票した有権者は誰もがブレグジット中止のために投票したのだ」と述べた。

日常生活に直結する地方選は真剣に投票するため、今回の結果は英国の民意が大きく変わったことを意味する。

2016年6月23日に実施されたEU離脱の是非を問う国民投票の結果は次のとおりで、イングランドでは離脱が53.4%をとっていた。

逆に、5月23日に予定される欧州議会選は「人気投票」に流れる傾向があり、強硬離脱派の新党 Brexit Party が世論調査で30%の支持を集めている。

Brexit Party は元独立党党首のNigel Farage が2019年4月に早期の離脱を目指し設立した。



北アイルランドでは、北アイルランドの英国帰属維持を主張する民主統一党 (-8) とUlster Unionist (-13) 、及びアイルランド共和国との統一を主張する社会民主労働党 (-7) がいずれも席を失った。(英国下院で女王への忠誠を示さず欠席を続けるシンフェイン党は現状維持)

一方、ユニオニスト(英国帰属)もナショナリスト(アイルランド帰属)も支持しない層から一定の支持を受けているAlliance Party (+21) が大きく席を伸ばした。

サムスン電子は4月24日、 "Semiconductor Vision 2030" を発表した。

2030年までにシステム半導体分野の研究開発・生産施設の拡充に133兆ウォン(約13兆円)を投資して専門担当者1万5000人を採用すると明らかにした。

非メモリ分野の半導体受託生産(foundry)とsystem-on-chip (SoC)の分野での競争力を強化することにより、世界第1位の統合デバイス製造業者になる。


文在寅大統領は4月30日、ソウル近郊、京畿道華城市のサムスン電子華城事業所を訪問した。

"Semiconductor Vision 2030" を歓迎する姿勢を示し、「政府も積極的に支援する」と述べ 、政府として「システムLSIのビジョンと戦略」を発表した。

総合半導体強国として飛躍するために2030年までにファウンドリー(受託製造)世界1位を達成し、ファブレス(設計)市場でのシェアを現在の1.6%から10%に引き上げる。

今後10年間にこの分野の研究開発に1兆ウォン(約960億円)を投資する一方、大学の半導体関連学科の新設などを通じて17千人の専門人材養成を支援する。



サムスン電子は現在、メモリ(DRAM、NAND型フラッシュメモリ)の圧倒的な市場支配力を土台に、半導体市場全体で1位の座を守っているが、今後、モバイルAPとイメージセンサーなどの非メモリ分野の需要が拡大するとにらみ、これらを成長動力として育成するための戦略を打ち出したもの。同社はメモリ分野では 世界の40%のシェアを持つが、非メモリ分野のシェアは5%以下である。


市場調査機関のIHSによると、世界メモリ市場の規模は今年の1,758.5億ドルから、来年は1,753.3億ドルに小幅で減少すると予想されるが、同一期間における非メモリ市場は3,328.7億ドルから3,435.9億ドルに増加することが予想される。

李在鎔サムスン電子副会長は本年1月、非メモリ市場の規模に注目し、「2030年にはメモリ1位はもちろん、非メモリでも1位を達成する」というビジョンを公開した。
今回、この目標を実現するための具体的な実行方案を発表したもの。

システム半導体事業の競争力強化のために、韓国内のR&D に73兆ウォン、最先端生産インフラに60兆ウォンを投資する。

また京畿華城キャンパスの新しい極紫外線(EUV)生産ラインを活用して生産量を増やし、国内新規ラインへの投資も引き続き行っていく。

同社は2018年2月、60億ドルを投じてソウル郊外の京畿道華城に半導体工場の新棟を建てると発表した。回路線幅が7ナノメートル以下の次世代品を「EUV(極端紫外線)露光」と呼ぶ最先端の技術で量産する。5ナノメートル以下を目標とする。2020年からの本格稼働を目指す。

同社は本年4月16日、回路線幅5ナノメートルのシステムLSIの量産技術を確立したと発表した。ファウンドリーとして台湾積体電路製造(TSMC)に次ぐ2社目となる。量産開始時期は未定。

技術競争力の強化のためにシステム半導体R&D と製造専門担当者1万5000人を採用する。

あわせて、国内システム半導体の生態系に対する支援策も打ち出した。

大規模なR&D投資を通じてシステム半導体の研究人材の養成に貢献すると同時に、国内の中小の半導体設計・設備・素材メーカーへの支援システムと半導体生態系をさらに強化する。まず中小のファブレス(半導体設計会社)の競争力を強化し、製品開発期間を短縮できるようにインターフェース・アナログ知的財産権(IP)など、サムスン電子が保有している設計関連の特許を活用できるように支援する。

文在寅大統領は3月の閣議で、半導体メモリの輸出減少が懸念されるなか、半導体メモリに比べて相対的に競争力が弱い非メモリ分野の競争力を引き上げる策を速やかに講じるよう求めていた。

サムスン電子は「果敢で先制的な投資と国内中小企業との共生協力を通じて韓国システム半導体産業の発展をリードしていきたい」としている。

ーーー

サムスン電子の2019/1~3月期連結決算は、営業利益が6兆2300億ウォン(約6000億円)と前年同期比60%減少した。

主力の半導体部門の利益が64%減の4兆1200億ウォンと苦戦した。過去最高だった2018/7~9月期の3分の1程度の水準に縮小した。

2018年10月以降、メモリーの価格が在庫の増加を理由に下落に転じ、収益環境が厳しくなっている。

日経新聞 2019/4/30 日経新聞 2019/4/16


NAND型フラッシュメモリ専業の東芝メモリは、設備投資に充てる成長資金を確保するため、2019年11月以降に新規株式公開(IPO)を検討しているが、今後の価格動向では非常に苦しくなる。



東大大学院工学系研究科は4月25日、西林仁昭教授らの研究グループが、常温・常圧の温和な反応条件下で窒素ガスと水からアンモニアを合成する世界初の反応の開発に成功したと発表した。

モリブデン触媒を用い、窒素ガスおよびプロトン(H+)源として水、還元剤としてヨウ化サマリウムを用いることで、常温・常圧の反応条件下で世界最高の触媒活性を達成した。

窒素は生体分子、薬、化学工業製品などさまざまな化合物に含まれる重要な元素の一つである が、窒素ガスは極めて反応性が乏しいため、まずアンモニアなど利用が容易な含窒素分子に変換する必要がある。

最近、アンモニアは水素エネルギーキャリアとしても注目されている。(後述)

現在、アンモニアはHaber-Bosch 法により、窒素ガスと水素ガスから工業的に合成されている。

しかし、高温・高圧の過酷な反応条件(
使用されてい る鉄系触媒では約400~500°Cかつ14~30MPaと、高温・高圧下での反応が求めらる)に加え、原料となる水素ガスが化石燃料由来であり、 大量のCO2を発生させ、水素ガスの製造には多大なエネルギーを消費する 。

Haber-Bosch 法の高温・高圧下での反応という問題と、化石燃料由来による大量のCO2発生の問題を解決する方法としては下記の発表がある。

日揮は2018年10月19日 、日揮と産業技術総合研究所が再生可能エネルギーによる水の電気分解で製造した水素を原料とするアンモニアの合成、および合成したアンモニアを燃料としたガスタービンによる発電に世界で初めて成功したと発表した。

今回新たに開発したルテニウム触媒で、約400°Cかつ5MPaの低温・低圧下でのアンモニアの合成が可能となった。 (但し、Haber-Bosch 法より低温といっても約400℃である)

希土類酸化物を担体に用いることが特徴で、すでに工業化されている炭素系担体を用いたルテニウム触媒にくらべて安定性に優れている。

これに対し、今回の研究グループは、水素ガスに代えて水などの豊富に存在し、安価で安全な水素源を利用して、温和な条件下でアンモニアを合成する次世代型のアンモニア合成方法の開発 を進めた。

自然界ではニトロゲナーゼと呼ばれる窒素固定酵素が常温・常圧という温和な反応条件下で、水由来の水素源を利用して窒素ガスをアンモニアへと変換していることが知られている。

マメ科植物の根粒菌などがニトロゲナーゼと呼ばれる窒素固定酵素を持っており、水と空気中の窒素ガスからアンモニアへの変換反応を 行っている。

この酵素の活性中心部位には、モリブデンや鉄といった金属元素が含まれている

このニトロゲナーゼの活性中心を模倣した金属触媒を用い、温和な反応条件下で進行する窒素ガスの変換反応 が研究されている。

本研究グループは
有機合成化学反応で広く用いられているヨウ化サマリウム(
SmI2を還元剤として、
アルコールや水をプロトン源として組み合わせた場合に、
常温・常圧という
温和な反応条件下、
これまで開発してきたモリブデン錯体を分子触媒として利用すると、
極めて速やかに触媒的アンモニア生成反応が進行することを発見した。


◆常温・常圧の温和な反応条件下で窒素ガスと豊富で安価、安全な水からアンモニアを合成する反応の開発に世界で初めて成功した。

◆モリブデン触媒を用いて、非常に高い活性及び速度でアンモニア合成反応が進行することを発見した。

◆本研究成果は、持続可能な社会を構築する上で重要な、省エネルギーで二酸化炭素の排出量が少ない次世代型アンモニア合成反応開発の指針となることが期待される。

本研究成果は、2019424日のNatureで公開された。

Molybdenum-catalysed ammonia production with samarium diiodide and alcohols or water

NatureにはPrinceton Universityの2人の教授による解説論文も掲載され ている。(by Máté J. Bezdek & Paul J. Chirik, ) 

A fresh approach to synthesizing ammonia from air and water

そのコメント:
この方法は実用化にはいろいろ問題(
ヨウ化サマリウム の大量の廃棄物の処理、水溶液からのNH3分離にエネルギーを要する、ケミカル過電圧の問題等)があるが、今後に期待できる。
ヨウ化サマリウムの代替品(サマリウムよりも豊富なメタルベース)の検討をしてはどうか。

ーーー

現在、アンモニアは水素エネルギーキャリアとしても注目されている。

日本は一次エネルギーの90%を化石燃料に依存しており、今後、CO2を排出しないエネルギーに転換する必要がある。

世界には無尽蔵の太陽、風力エネルギー等の再エネがあり、これを使って水を水素という化学エネルギーに変換し、輸送すれば解決する。

水素そのものは大量に輸送、貯蔵するのは難しいが、水素をエネルギーキャリアという別の物質に換えて輸送することが検討されている。

現在、① 液体水素、②有機ハイドライド(メチルシクロヘキサン)と③アンモニア、④蟻酸が検討されている。

https://www.jst.go.jp/pr/jst-news/backnumber/2019/201904/pdf/2019_04.pdf


②は水素とトルエンでメチルシクロヘキサンをつくって輸送し、受入地でトルエンを分離する。

なお、JXTGエネルギー、千代田化工建設などは水の電気分解でできた水素とトルエンを反応させるのではなく、水とトルエンを電気分解し、一気にメチルシクロヘキサンを生産する技術を開発した。
水素タンクや水素とトルエンの反応設備をもつ必要がなくなり、大幅なコストダウンとなる。

2019/3/18 CO2フリー水素を低コストで製造する世界初の技術検証 参照

④は水素とCO2で蟻酸とし、受入地でCO2を分離する。

https://www.jst.go.jp/pr/jst-news/backnumber/2019/201904/pdf/2019_04.pdf


それぞれの特徴:


  ソースhttps://www.jst.go.jp/pr/jst-news/backnumber/2019/201904/pdf/2019_04.pdf


それぞれ問題点があるが、アンモニアの場合は直接燃料として利用でき、脱水素工程のコストが不要というメリットがある。



韓国のSK総合化学は4月29日、同社とSinopec の石化JVの中韓石化が、Sinopec傘下の武漢分公司(武漢リファイナリー)を買収することを明らかにした。

SKは今回の買収で製油工場の経営にも参加することになった。

武漢分公司は1977年稼働で、精製能力は日量 17万バレル。

ーーー

中国国家発展改革委員会は2013年6月5日、SK GroupがSinopecの武漢エチレンに35%出資することを承認した。
Sinopecが27億ドルを投じて単独で建設し、2012年末に完成しているが、Sinopec 65%、SK Group35%出資のJV
中韓石化となった。

エチレン能力は80万トンで、以下の誘導品を含む。7月末に商業生産を開始した。

  LLDPE 300千トン
  HDPE   300千トン
  PP    400千トン
  EO   100千トン

2013/6/7 中国、韓国・SKグループのシノペック武漢エチレンへの参加を承認

ーーー

武漢分公司の買収資金は2兆1830億ウォン(約2100億円)で、うち5,338億ウオンは増資(Sinopec が65%、SKが35%)で賄い、残りは外部からの借入で賄う。

中韓石化は、稼動から5年後に累積営業利益が2兆ウォンを超えたSKの代表的グローバル投資の成功事例で、今回の『煙化一体(石油精製・石油化学の結合)』で、SKグループ会長の「China Insider(インサイダーとして中国市場に進出)」の戦略に拍車がかかる。

SK総合化学は、「今回の買収は、SKの工程運営と安全、保健、環境管理の能力を高く評価したSinopecの提案によって実現した」と説明した。

米石油大手Chevronは4月12日、米石油・ガス開発のAnadarko Petroleum を330億ドル規模で買収すると発表したが、Occidental Petroleumは4月24日、これに対抗し、Anadarko Petroleum に380億ドルでの買収案を公に提示した。

Chevronとの合意を破棄した場合、Anadarko は10億ドルの違約金を支払う契約になっている。

Occidental は4月30日、買収資金の一部として著名投資家Warren Buffett が率いる Berkshire Hathaway から100億ドルを調達すると発表した。

Berkshire Hathaway はOccidentalによるAnadarko買収が成功した場合に財務面で支援する。
Occidentalが発行する配当利回り8%の永久優先株を引き受け、10億ドルを出資する。加えてOccidentalの普通株を1株62.50ドルで購入できる権利も得る。
現在のOccidental 株価は58ドル程度で、買収成功によって株価が上がれば、権利を実行し、利益を得る。

付記

Anadarkoは5月6日、同社の取締役が満場一致でOccidentalの対抗案が"Superior Proposal" と認めたと発表した。

Chevronに対し、その旨を伝え、更なる対抗案があれば、4日以内に提案することを求めた。契約を解約する場合、Chevronに10億ドルの解約金を支払う。

付記

Chevronは5月9日、買収計画取り止めの発表を行った。違約金 10億ドルを受け取る。


ーーー

Chevronの買収額は1株当たり65ドルで、4月11日終値に39%上乗せした水準。75%がChevron株式、25%が現金払いで、Anadarko株主は1株当たり現金16.25ドルとChevron 株 0.3869株を受け取る。

Anadarkoの債務150億ドル込みでの買収で、これと非支配持分の価値を加えると、企業価値は総額で500億ドルとなる。

同時期にOccidental Petroleum もAnadarkoを1株70ドル(現金と株式)で買収する提案をしていたが、Chevronに敗れた。

Occidental Petroleumの提案はChevron案よりも価格が5ドル高く、現金部分が多かったが、Occidentalの提案にはAnadarko側に望ましくない条項が入っていたという。

2019/4/16 Chevron、米石油・ガス開発のAnadarko Petroleum を買収 


今回のOccidental の提案では、現金と株式交換による買収額は1株当たり76ドルで総額380億ドル。負債の引き受け等を含めた企業価値は570億ドルになる。

Anadarko 株主はAnadarko株1株当たり、現金38ドル(50%)とOccidental 株0.6094株を受け取る。

買収完了後のOccidentalの株主構成は、従来のOccidental 株主が71%、Anadarko株主が29%となる。

Occidental は(Berkshire Hathawayからの借り入れを含め)既に現金分(190億ドル)の手当てを済ませている。今後1~2年に100~150億ドルの資産売却を行う。

買収により、年間20億ドルのシナジーに加え、年間15億ドルの投資減が可能としている。

Occidental の今回の買収提案についての株主への説明資料


経緯は下記の通り。

Occidental
当初
Occidental
4/11
Chevron
4/12合意
Occidental
今回
1株当たり
(うち現金)
70ドル 76ドル
(40%)
65ドル
(25%)
76ドル
(50%)
総額 330億ドル 380億ドル
債務等込み企業価値 500億ドル 570億ドル


今回のAnadarkoへの提案で、Occidentalは下記のように述べている。

Occidental は3月後半以降、3回提案した。最後はAnadarkoがChevronと合意した前日の4月11日に行われ、1株当たり76ドルで現金が40%であった。Occidental は、自社の提案がChevron提案より著しく高いのに、Anadarkoが拒否したのに驚き、失望した。

AnadarkoはChevronの1株当たり65ドルの提案を受け入れたため、これが公正な価格と考える。これを上回る1株当たり76ドル、うち現金が38ドルの提案を行う。

Occidentalの当初及び4月11日の提案がChevron提案よりも高いのにもかかわらず、AnadarkoがChevron と契約を結び、しかも10億ドル(1株当たり2ドルに相当)の違約金条項を入れたのはunfortunateだと皮肉っている。

Occidental は既に4月8日付でAnadarkoに対し、due diligence が完了していると伝えており、買収額のうちの現金部分の手当てもできており、準備は完了している。早急な回答を求める。

ーーー

関係筋によると、Anadarkoは4月28日にChevronに提案額引き上げの意向を確認したが、拒否されたという。Chevron は買収合戦突入を避ける意向で、Occidental 株主がこれを支持するかを見極めたい考えだという。


Anadarkoは4月29日、「財務や法律顧問の意見も踏まえ、Occidentalの条件の方が優れていると取締役会で全会一致で決議した」と発表した。

Chevronとの合意を破棄した場合、Anadarkoは10億ドルの違約金を支払う契約になっている。



2019年3月期は増収増益で、連結純利益が前期比16%増の3,091億円と、2期連続の最高益になった。
前期は、米国税制改正による繰延税金資産・負債取崩による税金減 298億円を含んでおり、今回は実質 大増益となる。

2020年3月期については未定とした。

単位:億円 (配当:円)

  売上高 営業損益 経常損益 株主帰属
当期損益

配当

中間 期末
2017/3 12,374 2,386 2,421 1,759 60 60
2018/3 14,414 3,368 3,403 2,662 65 75
2019/3 15,940 4,037 4,153 3,091 100 100
前年比 1,526 669 750 429 35 25
2020/3予

未定

2008年3月期以降の減益については後記。

年間配当は4期連続での増配で、2015年3月期までの100円から倍増の200円とした。


営業損益は下記の通り。

営業損益推移 (単位:億円)

セグメント  17/3 18/3 19/3 増減
塩ビ・化成品 532 932 1,065 133 Shintechの業績伸長、欧州も好調
シリコーン 425 520 585 66 汎用製品、機能製品ともに価格修正を行うとともに、全世界での堅調な需要に対応して、最大限生産し完売した。
機能性化学品 222 257 266 9
半導体シリコン 560 930 1,320 390 堅調な出荷に加え製品価格の修正も寄与
電子・機能材料 552 616 670 54
その他 96 115 133 18
全社 -1 -2 -3 -1  
合計 2,386 3,368 4,037 669  

信越化学は2017年を最後にShintechの業績を発表していない。

しかし、2018/7発表で、「2017年度の経常利益は前年比75%増の6.73億ドルで過去最高となった」としている。

概算で110円換算すると740億円となり、2018/3月期の塩ビ・化成品部門の営業損益の80%に達する。

本年はここから更に増益となった。

今後は、エチレン新設(2019年上半期完成)と電解からPVCまでの一貫生産(2020年末完成)により更なる増益が期待される。

Shintech の能力は次の通りとなる。単位:万トン

立地 PVC VCM カ性ソーダ エチレン
Texas州 Freeport  145   -   -
Louisiana州 Addis   58   -   -
Plaquemine   60   160  106
2013/6 増設 32 30 20
手直し 4
2019 完成 50
(認可取得) (86) (66)
2020年末 完成 29 ? 27
今回増設後合計 324  ?   157 50


PVCの日本の2018歴年の国内需要合計は105万トンであり、増設完了後のShintechの能力はその3倍以上となる。

エチレンは当初、2018年初めの完成予定であったが、地盤の問題で杭工事の手直しが相当量発生し、2019年上半期 完成予定となった。

  2017/5/24 東洋エンジニアリングの決算 米国エチレンプロジェクトで損失


ーーー

信越化学の損益は2008年3月期に1836億円の最高益を記録して以降、減益となり、2010年3月期には839億円と半減した。
その後、再び上昇に転じ、2018年3月期に過去最高となり、本年度はそれを更新した。

当時の営業利益の状況は下記の通りで、半導体シリコンの影響が大きいが、Shintechも大幅減益となっている。

  2008/3 2009/3 2010/3 前年比  
塩ビ系 315 367 174 -193 Shintech大幅減益 -188
シリコーン系 431 336 268 -68  
その他有機・無機 249 248 169 -79  
電子材料 1,621 1,122 395 -727 半導体シリコン価格が低迷
機能材料ほか 260 257 180 -77  
全社 -4 -2 -14 -12  
合計   2,872   2,329   1,172   -1,157  


セグメント区分が変更になり異なるが、信越半導体グループの損益は下記の通り。この後は公表されていない。

上記の通り、2017/3以降の半導体シリコンの「営業損益」はそれぞれ、560億円、930億円、1,320億円と回復している。

Shintechの損益は下記の通り。

Shintechの減益の理由はサブプライム問題による米国の住宅着工の激減である。

米国の住宅着工は以前の水準には戻っていないが、Shintechはその後、アジアや中南米に輸出を拡大し、業績を伸ばしている。


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