欧州委員会は6月26日、ユーロを導入していない加盟国の進展状況を評価する2024年のConvergence Reportを発表した。
EC条約においては,EU加盟国は,基本的にEMU(経済通貨同盟)に参加し,単一通貨ユーロを導入することが想定されている。
但し,EC条約第122条に適用除外規定が認められており,デンマーク(とその後に離脱した英国)は適用除外が認められている。
現在、EU加盟27カ国のうち、適用除外が認められているデンマークを除き、6カ国(スウェーデン、ポーランド、チェコ、ハンガリー、ブルガリア、ルーマニア)がユーロ導入義務があるのに導入していない。
時期 EU ユーロ導入 1952 フランス 1999 (西)ドイツ 1999 イタリア 1999 オランダ 1999 ベルギー 1999 ルクセンブルグ 1999 1973 英国 適用除外 アイルランド 1999 デンマーク 適用除外 欧州為替相場メカニズム 1981 ギリシャ 2001 1986 スペイン 1999 ポルトガル 1999 1995 オーストリア 1999 フィンランド 1999 スウェーデン 国民投票で反対 2004 エストニア 2011/1/1 ラトビア 2014/1 リトアニア 2015/1 ポーランド チェコ スロバキア 2009 ハンガリー スロベニア 2007 キプロス 2008 マルタ 2008 2007 ブルガリア ルーマニア 2013 クロアチア 2023/1/1 2020 英国離脱 合計 27カ国 20か国
報告書は、ユーロを導入する法的義務がある6つの非ユーロ圏加盟国(ブルガリア、チェコ、ハンガリー、ポーランド、ルーマニア、スウェーデン)を対象としている。
報告書は、欧州連合の機能に関する条約の第140条1項に定められた収束基準( convergence criteria)、いわゆる「マーストリヒト基準」に基づいている。
- ア 物価安定性:過去1年間,消費者物価上昇率が,消費者物価上昇率の最も低い3か国の平均値を1.5%超上回らないこと。
イ 健全な財政:過剰財政赤字状態でないこと。(財政赤字GDP比3%以下,債務残高GDP比60%以下)
ウ 為替安定:少なくとも2年間,欧州通貨制度(European Stability Mechanism : ESM)の為替相場メカニズム(European Rate Mechanism:ERM II)に深刻な緊張状態を与えることなく参加し,ユーロに対して自国通貨の切り下げを行わないこと。
エ 長期金利の安定性:過去1年間,長期金利が消費者物価上昇率の最も低い3か国の平均値を2%超上回らないこと。 このほか,市場統合性や国際収支の状況等も考慮される。
現在、これらの加盟国のうちどの国もユーロ圏加入のための全ての基準を満たしていない。
欧州メディアによると、ブルガリアは2025年1月のユーロ導入を目指していたが、延期は避けられない。
報告書の内容は次の通り。
物価安定性 | 健全な財政 | 為替安定 | 長期金利の安定性 | |
ブルガリア | ○ | ○ | ○ | |
チェコ | (○) | ○ | ||
ハンガリー | ||||
ポーランド | ||||
ルーマニア | ||||
スウェーデン | ○ | ○ | ○ |
・スウェーデンは物価安定基準を満たしている。
・ブルガリアとスウェーデンは財政基準を満たしており、チェコは6月19日の第126条3項に基づく委員会報告書に基づいて満たすことが予想されている。
・ブルガリア、チェコ、スウェーデンは長期金利基準を満たしている。ブルガリアは為替レート基準を満たしている。
・その他の加盟国は為替相場メカニズム(ERM II)のメンバーでない。ユーロ圏加入前に少なくとも2年間のメカニズムへの参加が必要。
なお、欧州中央銀行によるとブルガリアの物価上昇率は5月までの1年間の平均で5.1%と高止まりし、基準の3%強を上回った。
・ブルガリアの立法が収束報告書に定められた条件と解釈に従ってEU法と適合すると結論付けている。
・他の5つの非ユーロ圏EU加盟国では、通貨分野の国家立法は経済通貨統合の規則と完全には適合していない。
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