2019年3月アーカイブ

英国の混迷の原因

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英国の混迷が続いている。

英下院は離脱予定日の3月29日、離脱協定案について3回目の採決を行い、賛成286、反対344の反対多数で否決した。

離脱日は4月12日まで延期された。英国はこの日までに、5月23〜26日に実施される欧州議会選挙への参加有無も含め、離脱の長期延期か、「合意なき離脱」か、離脱の撤回か、を示すことが求められる。

しかし、案がまとまる見込みはすくなく、合意なき離脱の可能性も大きい。

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原因はいろいろあるが、まず英国の首相に2つの誤算があった。

1)キャメロン首相の誤算

英国内でEU離脱の声が高まった2016年に、Cameron英首相は英国のEU離脱を回避するため、EUの改革を求めた。

欧州連合は2016年2月19日夜、ブリュッセルで開いた首脳会議で、英首相が求めているEU改革案を巡って全会一致で合意した。


合意を受けCameron首相は、6月23日に国民投票を実施することを決め、自らはEU残留を訴えていく考えを明らかにした。

首相は、「イギリスは、改革後のEUの中でより安全で強く、豊かになるだろう」と述べ、離脱派の主張について、「離脱した場合、統一市場との自由な貿易を続けられるか、雇用は確保されるか、明らかにできていない」と述べ、牽制した。

2016/2/22 EU首脳会議、英離脱回避へ改革案合意

2016年6月23日英国で実施されたEU離脱の是非を問う国民投票は、大方の予想を裏切る「離脱」という結果となった。 これについて後述。

2016/6/25 英国、EU離脱


2) 後継のメイ首相の誤算

テリーザ・メイ首相は2017年4月18日、「国益のため」に、6週間後の6月8日に解散総選挙を前倒しする意向を表明した。

この時点で与党保守党は650票のうち331票で過半数を確保していたが、 総選挙に勝利することで、「この先数年間にわたる確実性と安定性を確保」し、EU離脱を含む政策の実施に欠かせない国民からの信任を確固なものにしたいと述べた。

結果は圧倒的多数を確保する狙いに対し惨敗で、保守党は過半数を取れず、北アイルランドの民主統一党を引き込み(閣外協力)、ギリギリで過半数を取った。

国民投票直後に、離脱派が主張してきたことが誤りであったことが判明し、「うそを信じてしまった」と離脱に投票したことを後悔する書き込みが増加し、「BREXIT」(Britain Exit )に絡め、BREGRET (Britain Regret) が使われたが、首相は国民の考え方が変わったことを読んでいなかった。

2016/6/28 BREXIT からBREGRET(Britain Regret) へ 

この結果、与党内の過激派が反対に廻ると、政府案は必ず否決されるという状況に陥った。

2017/6/8 選挙 異動 2019/1/15 異動 現状
保守党(議長含む) 331 -13 318 318 -4 314
民主統一党 8 +2 10 10 10
(与党)

(328) (328) (324)
労働党 232 +30 262 -6 256 -11 245
スコットランド国民党 56 -21 35 35 35
自由民主党 8 +4 12 -1 11 11
独立党 1 -1 0 +8 8 +3 11
独立グループ 0 +11 11
シンフェイン党 4 +3 7 7 7
ブライドカムリ 3 +1 4 4 4
緑の党 1 1 1 1
社会民主労働党 3 -3 0
アルスター統一党 2 -2 0
無所属 1 1 -1
合計 650 0 650 0 650 -1 649

労働党議員 1名 が本年に死亡。議員のうち議長団4名(保守党、労働党各2名)とシンフェイン党は投票せず。

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2016年6月の国民投票で、政府側はBrexitの問題点を国民に指摘しなかったことが、離脱賛成となった。

1) 最大の問題はアイルランドとの国境問題である。

北アイルランドの平和を維持するため、アイルランドとの国境を復活させることは出来ず、完全なBrexitを実施する方法はない。下手をすれば北アイルランドを分離することにも成りかねない。

不思議なことに、こんな重要な問題についてBrexitの検討中に議論された様子が全く見られない。 国民の判断材料にはなっていない。

2019/2/11 Brexitの問題の根源(続き)-「北アイルランド国境問題」

2) 離脱賛成派の嘘

離脱賛成派は、離脱しないと大変だ、離脱するとこんなに良いことがあると主張したが、その多くが全くの嘘であった。

その一つが、EUへの拠出金である。

離脱派は拠出金が週3.5億ポンド(約480億円)に達すると主張、与党・保守党のBoris Johnson 前ロンドン市長らが全国を遊説したバスの側面にも、巨額の拠出金を「国民医療サービスの財源しよう」と書かれていた。

実際には、英国に限り、50億ポンドのリベートがすぐに払われる。さらに、EUの政策に基づき、英国に45億ポンドが支出される。このため、ネットでは英国のEUに対する支出は85億ポンド(週当たりでは1.6億ポンド)に過ぎない。

離脱派は選挙直後に間違いであったと認めた。

移民問題でも嘘があった。

政府は移民を10万人以下と公約していたが、2015年の移民は33万人の純増であった。離脱派はこれを引き合いに出し、今後数年で400万流入の可能性 があるとか、トルコがEUに参加し、100万人 が流入するなどのデマを流した。英国がトルコ参加の拒否権を持たないとのデマも流した。

選挙後に、離脱派は「移民がゼロになるわけではなく、少しだけ管理できるようになる」と、「下方修正」した。

しかも、BBCを含めた報道が、誤りを修正せずにそのまま報道した。
BBCは「公平性の原則」を理由に、発言をそのまま報道した。庶民が読む地方紙は賛成派、反対派に分かれ、虚偽の報道をした。

政府は正しい情報を元に国民に是非を判断させるべきだが、これを怠った。

2019/1/21 Brexitの問題の根源

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野太郎 外相の「ごまめの歯ぎしり」の「おすすめの本」(2018/10/5 ) は
Nicholas Shakespeareの "Six Minutes in May : How Churchill unexpectedly became Prime Minister" を取り上げている。
(右上 本の紹介)

イギリスのノルウェー戦線の失敗とそれに続くイギリス議会での議論、そしてその議論がふとした拍子に転換し、議会で投票が行われ、そのわずか6分間を要した投票の結果が、チェンバレンの退陣に結びついていく様子をしつこいぐらい (かなりしつこい)調べて描いています。

面白いのはチャーチルが海軍大臣として主導したノルウェーの戦いで、ドイツがスウェーデンの鉄鉱石をノルウェーの港から出荷するのを防止するため、英軍が魚雷を設置しようとして発生した。

英海軍はドイツに対する勝利を確信していたが、 時間は十分あったのに、全くの準備不足で、ノルウェーの地図さへ用意しておらず、実施が決まってから旅行会社に地図を買いに行ったという。これに対し、ヒットラーは準備万端であった。

今回のドタバタで思い出した。

英下院は3月29日、離脱協定案について3回目の採決を行い、賛成286、反対344の反対多数で否決した。

今回の採決での賛否の差は58票で、1回目の230票、2回目の149票よりは縮まった。

メイ首相が協定案の可決と引き換えに首相を辞任すると表明したことで、過去2回の採決で反対した与党・保守党の議員の一部が賛成に転じたが、保守党内の強硬派は依然として反対し、閣外協力の北アイルランドの地域政党の民主統一党や野党は引き続き反対した。

離脱協定案の賛否は下記の通り。(2/17に労働党議員1名が死亡で欠員) 

投票権 1回目(1/15) 投票権 2回目(3/12) 今回(3/29)
賛成 反対 棄権 賛成 反対 棄権 賛成 反対 棄権
保守党 316 196 118 2 -4 312 235 75 2 277 34 1
民主統一党 10 10 10 10 10
労働党 254 3 248 3 * -1
-10
243 3 238 2 5 234 4
スコットランド国民党 35 35 35 35 34 1
自由民主党 11 11 11 11 11
独立党 8 3 5 +3 11 4 6 1 4 5 2
独立グループ +11 11 11 11
シン・フェイン党 7 7 7 7 7
プライド・カムリ 4 4 4 4 4
緑の党 1 1 1 1 1
合計 646 202 432 12 * -1 645 242 391 12 286 344 15
賛否差 -230 -149 -58

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EUは3月21日、首脳会議を開き、EU離脱について下記の通り決めた。

1)英国下院が3月29日までに離脱協定案を可決すれば、協定案の批准手続きのため5月22日までの延期を認める。

2)下院が3月29日までに可決できない場合、離脱日を本来の3月29日から4月12日まで延期する。

英国に対し、この日までに、5月23〜26日に実施される欧州議会選挙への参加有無も含め、離脱の長期延期か、「合意なき離脱」か、離脱の撤回か、を示すことを求める。

下院は3月27日に「示唆的投票」("indicative" vote) を実施したが、8つの案 のいずれも過半数を得られなかった。

このうち、「合意なき離脱」は160対400と圧倒的に反対が多い。逆に親EU 派の案に多くの票が集まっている。

2019/3/28 英議会 離脱延期を正式決定 代替案8案いずれも過半数に満たず

なお、下院は3月13日夜、「合意なき離脱を拒否」の採決を行い、321対278で離脱拒否案を可決している。

投票権者 賛成 反対 棄権
保守党 312 17 265 30
民主統一党 10   10  
(与党) (322) (17) (275) (30)
労働党 243 235 2 6
スコットランド国民党 35 35    
自由民主党 11 11    
独立党 11 7 1 3
独立グループ 11 11    
シン・フェイン党 7     7
プライド・カムリ 4 4    
緑の党 1 1    
合計(欠員 1) 645 321 278 46

2019/3/14  英下院、「合意なき離脱」を否決

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議会は4月1日にメイ首相の離脱協定に代わる複数の案について議員の投票を実施する。

「示唆的投票」で8つの案 のいずれも過半数を得られなかった。仮に、代替案が見つかったとしても、実行するには準備期間が必要になるため、EUと交渉して長期の離脱延期を認めてもらわなければならない可能性が高い。

離脱の長期延期か、「合意なき離脱」かであれば、長期延期の公算が強い。但し、土壇場でどうなるか分からない。

今回の否決を受け、EUのトゥスク大統領は、4月10日に臨時の首脳会議を開き、英国の離脱問題について協議する方針を明らかにした。

英紙Timesによると、EUは最長1年の離脱延期を受け入れるか、合意がないままEUを離脱するか二者択一を英国に迫る方針だという。

欧州委員会のスポークスマンは否決を遺憾に思うと表明し、「4月12日の合意なき離脱はいまやあり得るシナリオだ」と発言。「EUは2017年12月から合意なき離脱のシナリオに向けて準備を進めてきた。今の段階で4月12日深夜をもって合意なき離脱となったとしても、準備は万端だ」と続けた。


Saudi Aramcoは3月27日、SABICの株式の70%を政府系ファンドのPublic Investment Fund (PIF) から691億ドルで買い取ることで正式に合意したと発表した。

SABICの残り30%はSaudi Stock Exchange(Tadawul )に上場されているが、これはそのままとなる。

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Saudi Aramco は2018年7月19日、同社がSABICの経営権取得に興味を示しているとの報道に対し声明を発表した。

同社は事業ポートフォリオの最適化を進めるなか、石油化学を含め川下事業への進出を計画している。

これに伴い多くの買収や株式取得などの可能性を国内、海外で検討しおり、その一環としてサウジアラビアの政府系ファンドである Public Investment Fund (PIF)との間で、同ファンドが保有するSABIC株の取得について、きわめて初期段階の交渉を持っていることを認める。
交渉が初期段階にあるため、今後株式取得が具体化しない可能性もある。
またSABICの公開株を取得する考えはない。

サウジ政府がSaudi Aramco に対し、国内及び海外での社債発行と銀行借り入れで資金を調達し、SABICのPIF 所有分のほとんどor 全てを購入することを求めているという。
70%全てを購入すると、PIFは約700億ドルを入手することとなる。

ムハンマド・ビン・サルマン皇太子はサウジ経済の改革も担当しており、PIF のチェアマンを務める。

Saudi Aramcoの所有権も2016年3月に政府から PIFに移管されている。

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取引により、全体の関係は次のようになる。

Aramcoは買収資金を自ら調達し、PIFに691億ドルを支払う。

ーーー

この取引の狙いは2つある。

第一はムハンマド皇太子が進める経済改革のための資金捻出である。

サウジ政府は2016年4月25日、2030年までの経済改革計画「ビジョン2030」を国王主宰の閣議で承認した。

石油依存型経済から脱却し、投資収益に基づく国家を建設していく。

公的投資基金(PIF)の資産を6,000億リヤールから7兆リヤール(約 2兆ドル)に増やす。

目標を達成するための手段として、
・ 国営石油会社Saudi Aramcoの5%未満の新規株式公開(IPO)、
・ 民営化による透明性の向上と汚職抑制、
・ 軍事産業の育成による国内調達の軍装備品支出の割合を50%まで拡大、
・ 外国人による長期的な労働・滞在を可能するグリーンカード制度の5年以内の導入
などがあわせて発表された。

サウジ政府は2018年1月1日付で、年内の部分上場に備えAramcoの企業形態を株式売買が可能な Joint Stock Companyに変更させた。

同社の時価総額は2兆米ドルに達する可能性があり、5%の売却で1000億ドルの資金を調達出来る可能性がある。

2018/1/11 Saudi Aramco、上場に備え企業形態を変更 

当初は国外上場候補をNew York、London、Hong Kong の3か所に絞り込んだと報じられた。

しかし、その後、法的リスクや、海外の取引所が企業に求める情報開示の基準が厳しいことなどを懸念し、先ず自国の証券取引所に限定する方針だと報じられた。

エネルギー産業鉱物資源相はテレビのインタビューで、Aramco のニューヨーク上場の条件や訴訟を巡るリスクに懸念を表明した。
ニューヨーク市が、ExxonMobil やBPなどの国際石油会社に対し「気候変動の原因を招いた」として提訴したことを具体例に挙げた。

また、米国では2016年に米同時テロに関与した疑いがある外国政府に、遺族らが損害賠償を請求する訴えを起こすことができる「テロ支援者制裁法(JASTA)」が成立、2018年3月に米国の判事がサウジ政府の要求を却下してサウジ政府を被告とする裁判が開始されることとなった。

サウジ政府が最大株主になるアラムコは、資産差し押さえなどの潜在的なリスクにさらされる。

2016/10/1 米同時テロ遺族のサウジ提訴法案、大統領拒否権を覆し成立

2018/4/6 サウジ政府を被告とする9.11同時多発テロ訴訟、裁判開始へ

上場会社になると、Aramco の確認埋蔵量などのデータを公表する必要が出るが、これに対する反発も根強い。

2018年10月にサウジ人著名記者が殺される事件が発覚し、IPO実現は一段と難しくなった。

このため政府は、PIFが持つSABIC株式をアラムコに売ることで必要な資金を手当てする。


第二はAramcoの将来の体制で、同社は
事業ポートフォリオの最適化を進めるなか、石油化学を含め川下事業への進出を計画している。

Saudi Aramco は住友化学との石油化学 JVのPetro Rabigh を持つ。

2009/4/10 Petro-Rabigh スタート・アップ 

2018/1/10 PetroRabigh 第2期の完工間近 → 完工

Saudi Aramco はDowとのJVのSadara Chemical を設立し、2016年8月にクラッカーをスタートさせ、2016年11月30日に開業式を行っている。

2011/7/26  DowとSaudi Aramco、石油化学JV設立を最終決定の付記

Saudi Aramco とSABICは共同で、サウジ国内での原油から化学品までの統合コンプレックス(COTC Complex ) 設立の検討を進めている。

2017/11/30 Saudi AramcoとSABIC、Crude Oil-to-chemicals JVのMOU締結

Saudi Aramco は2018年8月15日、取締役会がサウジと米国での石油化学計画を承認したと発表した。

2018/8/20 Saudi Aramco、サウジと米国での石油化学計画を承認 

Saudi Aramco は2019年2月22日、中国のコングロマリットの中国北方工業公司(Norinco)との間で、遼寧省盤錦市での石油精製・石油化学コンプレックス建設のJV設立の契約書を締結した。

2019/2/26 サウジアラムコと中国2社、遼寧省で石油精製・石油化学コンビナート建設へ

今後はSABICと一体となって事業を進める。

英下院は3月29日、メイ首相がEUとまとめたBrexit協定案の三度目の採決を行う。(日本時間 23:30 頃)

可決されれば5月22日までの離脱延期が認められる。

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英国とEUは、アイルランド国境管理の復活を防ぐための「安全策」(Backstop) として、国境管理の回避策が見つかるまで英国全土を関税同盟に残す規定を盛り込んだが、英議会が「永久にEUルールに縛られ続ける」と猛反発し、下院は1月15日、離脱協定案を432対202の大差でこれを否決した。

メイ首相とユンケル欧州委員長は3月11日夜、仏東部ストラスブールで会談し、離脱協議の懸案だったアイルランド国境問題の見直しに向けた2つの共同文書で合意した。英国がEUのルールに縛られ続けないとする条項を1月に英議会が否決した離脱案に追加し、法的拘束力を持たせたのが特徴である。

下院は3月12日夜、英政府がEUとの間で前日にまとめた離脱条件の協定の承認採決を行い、賛成 242、反対 391の大差でこれを否決した。

下院は3月14日、議会が3月20日までに英国とEUがまとめた離脱案を承認した場合、6月30日までの一時的延長をEUに申し出るとの首相の提案を賛成413、反対202で可決した。

メイ首相は3月19日か20日に、これまで2度否決されているEU離脱協定を改めて採決にかけるとしてい た。

しかし、ぎりぎりの時点で John Bercow 下院議長が問題を指摘した。1604年に遡る慣例法で、同一会期中に、否決されたのと同じ議案、または実質的に同じ議案を提案できないというものである。

議長によると、1月15日の議案と3月12日の議案は十分に違いがあり、慣例法の違反にはならない。しかし、3月12日の議案と同じものを今回再提案することは出来ない。
どれだけ違えばよいかについては明らかにしていないが、「根本的に違っている("fundamentally different")」ことが必要としている。

ーーー

前回は離脱協定案と将来関係の枠組みに関する政治宣言概要(単一市場外で最大限に緊密な関係を築く方針など)をペアで付議したが、今回は協定案のみで、政治宣言は含まない。離脱の実現には、再度の議会採決が必要となる。英国の法令に基づくと、離脱協定と政治宣言の双方を議会が承認しない限り、批准手続きは完了しない。

分離して協定案のみを付議することについては、離脱案全体の同時承認を求める「2018年EU(離脱)法」に違反しているとの声が出たが、司法長官は合法としている。

John Bercow 下院議長は直前まで同じ案での再採決は認めないとしてきたが、今回の協定案のみの採決については、前回と十分に異なるとして認めた。

メイ首相は3月27日、与党保守党の会合で、離脱合意案が下院で承認されれば首相を辞任する意向を表明した。
合意案に反対する与党内の離脱強硬派に対し、自らの進退とひきかえに、賛成に回るよう要請。「捨て身の戦術」で合意案承認を狙った。

強硬離脱派の旗頭であるボリス・ジョンソン前外相が首相の辞意表明後、首相案支持にまわったとされるが、離脱強硬派を含む与党議員や、閣外協力で政権を支える北アイルランドの民主統一党議員は依然として反対している。民主統一党のスポークスマンは28日、政府の離脱協定案を29日の採決で党として支持しないと表明した。

今回の採決で承認される可能性は低い。

英紙Timesによると、EUは来月開く臨時首脳会議で、最長1年の離脱延期を受け入れるか、合意がないままEUを離脱するか二者択一を英国に迫る方針だという。

オーストラリアの複合企業Wesfarmers は3月26日、豪レアアース大手のLynas Corporationに買収を提案したと発表した。
前日の終値に45%のプレミアムを乗せた価格での買収提案で、総額15億豪ドル(約1170億円)となる。

Wesfarmersは、2007年~2008年に流通大手の Coles Group、石炭のCurragh炭鉱、Premier炭鉱及びBengalla炭鉱、更にKmart Tyre and Auto を 売却しており、これらで得た資金で買収する。

Wesfarmersでは、「Lynasへの投資は我々のユニークな事業構成を、より強化するものになる」と述べた。

一方、Lynasでは、「我々が要求したものではない」としたうえで今後、内容を検討するとしている。

付記 Wesfarmersは8月16日のLynasの発表を受け、買収のギブアップを発表した。

Lynasは豪州でレアアース鉱物を採掘しているが、希土類鉱石には、トリウム 232 やウラン同位体等の放射性物質が含まれている。

現在、ライセンスの更新(2019/9/2) のために、何年にもわたって工場に蓄積している廃棄物を処分することを求められており、今後、生産に支障が出る恐れもある。

2019/7/8 豪州のLynas、米国でレアアースの生産JV

Wesfarmersはマレーシアのライセンス更新を買収条件の一つとしていたが、8月16日のLynasの発表では、排水浄化残渣の永久保管設備の場所の承認を得られるのが確実になったというだけであった。

Wesfarmersとしては、これだけでは話を続けられないとし、交渉を中止した。

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豪鉱山企業Lynas は1983年にYilgangi Gold NLとして設立され、1985年にLynas Gold NLに改称し、西オーストラリア州Pilbara地域で金探鉱を行っていた。

2001年6月に金プロジェクトを売却し、社名をLynas Corporation に変更、2002年5月にレアアースのMt.Weld 鉱床の権益100%を取得し、同鉱床の探鉱開発に集中していった。

Mt.Weld 鉱の鉱物資源量は、770万t、酸化レアアース品位12%となっている。
(精測鉱物資源量120万t :品位15.7%、概測鉱物資源量500万t :品位11.8%、予測鉱物資源量150万t :品位9.9%)

第1 フェーズは、投資総額5 億4 千万米ドル、生産能力11,000 トン/年で、2011 年第3 四半期より操業を開始。
第2 フェーズは、投資総額2 億5 千万米ドルで鉱山、および製錬所を拡張(追加生産能力11,000 トン/年)するもので、2012 年第4 四半期より操業を開始。

Mt.Weld レアアース鉱床からレアアース鉱物(モナザイト等)を採掘、西オーストラリア州南部のEsperance 港からマレーシアへ海上輸送、分離・精製し、更に最終消費者の要求にあったレアアース製品とした後、米国・欧州・日本などへ販売する。

2010/10/5 レアアース、米・豪・カザフなど生産拡大 

双日と石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は2011年3月、Lynas に総額2億5千万米ドルを出融資することを決定し、10 年に亘って日本の消費量の約3 割にあたる年間約8,500 トン(±500 トン)以上のレアアース製品を長期供給する契約を締結した。(出資は両社のJVの日豪レアアース㈱を通じて行う)

双日は、Lynasとの間で、同社が生産するレアアース製品の日本市場における独占販売契約および総代理店契約を締結した。

ーーー

Wesfarmers は1914年に農村部の協同組合組織として設立された。社名はWestern Australia farmers に由来する。

1940年代までに、小麦・一般商業、石油の小売、羊毛、生畜、皮革および製品の販売、穀物および果物の輸出、保険代理店 等々を扱うようになり、1985年に上場した。

上場以来、買収による多角化を推進し 、現在の事業は多岐に亘る。

Bunnings:home improvement and outdoor living
Kmart Group: department stores
Officeworks :office supplies
Industrial :
Industrials
Chemicals, Energy and Fertilisers、 Industrial and Safety
Others

同社は2017年後半から事業再編を進めており、下記の売却を行った。

流通大手のColes GroupをSpin-off

Kmart Tyre and Auto Service を Continental AGに $350 millionで売却

石炭事業は全て売却

Curragh炭鉱(クイーンズランド州):CoronadoにA$700 millionで売却

Premier炭鉱(西オーストラリア州):兖州炭業股份の子会社Yancoal Australiaに$296.8 millionで売却

Bengalla炭鉱( ニューサウスウェールズ州):New HopeにA$860 million で売却

Bengallaは当初、Coal & Allied (Rio Tinto 80%、三菱商事 20%) が40%、Wesfarmersが40%、台湾電力が10%、三井物産が10% 出資していたが、Coal & Allied は2016年3月に持株をNew Hopeに売却した。

2016/3/14 Rio Tinto、豪州の石炭事業を再編

英議会は3月27日、EUからの離脱時期を当初の3月29日から4月12日に延期するかどうかを採決し、441対105の賛成多数で延期を正式に承認した。

次は4月12日にどの案をとるかが問題になる。下記の通り、「示唆的投票」ではどの案も過半数を取れなかったが、親EU派の案に多くの票が集まっており、これを無視しにくい。

メイ首相は3月27日、与党保守党の会合で、離脱合意案が下院で承認されれば首相を辞任する意向を表明した。
合意案に反対する与党内の離脱強硬派に対し、自らの進退とひきかえに、賛成に回るよう要請。「捨て身の戦術」で合意案承認を狙った。

下院は3月27日、「示唆的投票」 ("indicative" vote) を実施した。

下院は3月25日、メイ首相の案に代わる複数案への議員の支持動向を探る「人気投票」を3月27日に実施する議員動議を329対302の賛成多数で可決した。

EU残留を望む 保守党のSir Oliver Letwinが提案したもので、政府の離脱案と代替案を並べ、各議員に好む案に投票させる「示唆的投票」を実施する もの。投票に法的拘束力はない。

下記の通り、全部で16の代替案が出揃った。このなかで下院議長のJohn Bercowが投票の対象として8つを選んだ。

8つの案について投票が行われたが、いずれも過半数を得られなかった。

国民投票案が最大の268票を得た。関税同盟案が2位、労働党案は3位となり、親EU 派の案に多くの票が集まった。合意なき離脱には反対票が400票もあった。

賛成 反対
Labour plan EUとの緊密な経済関係の維持
・全面的な関税同盟
・単一市場との緊密な連携
・新しいEUの権利と保護に対応
・EUの機関、資金拠出計画への参加
・将来のセキュリティ関連の合意
237 307
Common market 2.0 欧州自由貿易連合(EFTA)、欧州経済領域(EEA) への参加
(EFTA加盟国はEUに加盟することなく、EUの単一市場に参加)
188 283
Confirmatory public vote 議会で通ったBrexit は批准前に国民投票にかける。          268 295
Customs union 英国全体が永久の全面的なEUとの関税同盟を締結 264 272
Malthouse compromise Plan A 協定案のアイルランドとの国境に関するbackstopを他の案に置き換える。
Revoke article 50 協定案否決の場合、合意なき離脱について投票する。
合意なき離脱が否決の場合、首相はBrexit を中止する。
184 293
Revocation instead of no deal 議会が協定案を否決する場合、政府はBrexit 取り止めに必要な法案を緊急に提出する。
New customs union EUとの関税同盟を含む貿易協定を結ぶ。
EEA/EFTA without customs union 欧州経済領域(EEA)にとどまり、欧州自由貿易連合(EFTA)に再加入するが、EUとの関税同盟からは外れる。 65 37
No deal 合意なき離脱 160 400
Unilateral right of exit from backstop 北アイルランドのBackstop から英国が一方的に離脱できるよう、協定案を修正
Consent of devolved institutions 合意なき離脱はしない、離脱に際してはスコットランド議会、ウェールス議会の同意を要する。
Contingent preferential arrangements EUとの離脱協定が出来ない場合、EUとの特恵貿易協定を結ぶ。 139 422
Contingent reciprocal arrangements EUとの協定が出来ない場合、EU及びメンバー国とのアレンジは相互的なものとする。
Respect the referendum results 英国がEUから離脱するという国民投票の結果を尊重することを議会が再確認する。
Constitutional and accountable government EU離脱を支持、政府の協定案を拒否。新しい試みには2/3の多数を必要とするよう下院ルールを修正。

3案の党派別賛否は次の通り。

議員 投票権 国民投票案 関税同盟案 労働党案
賛成 反対 賛成 反対 賛成 反対
保守党 314 312 8 254 33 235 1 276
民主統一党 10 10 10 10 10
労働党 245 243 198 27 226 12 232 4
スコットランド国民党 35 35 32
自由民主党 11 11 11 1 1 2
独立党 11 11 3 4 4 3 4 3
独立グループ 11 11 11 10 11
シン・フェイン党 7 7
プライド・カムリ 4 4 4
緑の党 1 1 1 1 1
合計(欠員 1) 649 645 268 295 264 272 237 307

Johnson & Johnson とBayerは3月25日、患者が経口抗凝固剤「Xarelto®」 を服用して重症になったり死亡したりしたとして米国で訴えられた25千件以上の訴訟で和解した。

両社は原告側に合計 775百万ドルを支払うが、両社は責任を認めないという条件になっている。

和解費用は両社で折半する。Bayerの和解費用の一部は賠償保険でカバーされる。

Xarelto®(一般名 Rivaroxaban)は経口抗凝固薬の一つで、最初に開発された直接第Xa因子阻害薬である。血栓 の予防と治療や、深部静脈血栓症 (DVT)、肺塞栓、脳卒中のリスクを低める目的で処方される。

Bayerにより創製され、Johnson &Johnson子会社のJanssen Research & Developmentと共同開発している。

米国ではJ&JのJanssen Pharmaceuticalsが販売している。

何年もの間、Bayerの儲け頭となっており、J&J は2018年だけで 24.7億ドルの売り上げを計上した。処方箋でのコストは1カ月分で450~540ドルにもなる。

Bayerによると、これまで世界中で45百万人以上に処方されたという。

原告側は、Xarelto を服用して血が止まらなくなり、その結果、重症となったり、死亡した人もいるとする。

ある患者は、脳卒中のリスクを低下させるはずだったが、内出血を引き起こし1週間にわたり入院し集中治療室で過ごすことを余儀なくされ、複数回の輸血と心臓処置が必要になったという。2017年4月にニューオーリンズの連邦地裁陪審に対し、共同開発したJ&JとBayerの重大な副作用の責任を認めるよう訴えた。

2017年5月の最初のNew Orleansでの裁判では、陪審員はメーカー側の勝訴とした。

2017年12月にPhiladelphia County Court の陪審が、内出血のリスクを警告しなかったとして訴えた夫婦に27.8百万ドルの賠償を与えたが、裁判官は2018年1月にこれを覆した。

メーカー2社はこれらの訴えには法的根拠がないとし、Bayerは今回の和解は、訴訟を継続することによる混乱とコストを避けるためのものであるとしている。

イグザレルトの「適正使用情報」には下記の警告が表示されている。

全効能共通

本剤の投与により出血が発現し、重篤な出血の場合には、死亡に至るおそれがある。本剤の使用にあたっては、出血の危険性 を考慮し、本剤投与の適否を慎重に判断すること。
本剤による出血リスクを正確に評価できる指標は確立されておらず、本剤の抗凝固作用を中和する薬剤はないため、本剤投与中は、血液凝固に関する検査値のみならず、出血や貧血等の徴候を十分に 観察すること。
これらの徴候が認められた場合には、直ちに適切な処置を行うこと。

トランプ大統領は3月15日、国家非常事態宣言を巡り議会が可決した同宣言を無効とする決議案に拒否権を発動した。

下院は3月26日、大統領の拒否権を覆すための採決を行ったが、必要な2/3の賛成票を得られなかった。共和党からは14人しか賛成しなかった。

共和党 民主党 合計
賛成 14 234 248
反対 181 181
棄権 2 1 3
合計 197 235 432
欠席 2 2

欠員 1

大統領は早速ツイッターで呟いた。

Thank you to the House Republicans for sticking together and the BIG WIN today on the Border.

Today's vote simply reaffirms Congressional Democrats are the party of Open Borders, Drugs and Crime!



民主党のNancy Pelosi 下院議長らは、今後も議会の審議で壁建設の支出をブロックすることに努めるとともに、6か月後に非常事態宣言の無効化を求めるとしている。

国家非常事態法の規定では、議会はに再び非常事態宣言の無効化を諮ることができる。

今後は戦いは裁判所に移る。大統領の非常事態宣言については、2月18日にカリフォルニア州を筆頭に16の州がカリフォルニア州北部地区の連邦地裁にトランプ政権を提訴したが、3月に入り、更に4州が参加した。

ーーー


米上院は3月14日、トランプ大統領が「国境の壁」建設のために出した非常事態宣言を阻止する決議案を可決した。野党・民主党のほか、与党・共和党からも Romney 議員ら 12人の造反が出た。
共和党 民主党 民主系
無所属
合計
賛成 12 45 2 59
反対 41 41
合計 53 45 2 100

米下院は既に2月26日、国家非常事態宣言を無効にする決議案を245対182の賛成多数で可決している。政権を支える共和党からも13人が賛成した。

  米下院は 1議席が未確定

  共和党 民主党 合計
賛成 13 232 245
反対 182 0 182
棄権 2 3 5
欠席 2   2
合計 199 235 434

トランプ大統領は3月15日、国家非常事態宣言を巡り議会が可決した同宣言を無効とする決議案に拒否権を発動した。

2019/3/15 米議会、非常事態宣言の阻止決議 トランプ氏拒否権へ  


英議会下院は3月25日、メイ首相の案に代わる複数案への議員の支持動向を探る「人気投票」を3月27日に実施する議員動議を329対302の賛成多数で可決した。


EU残留を望む 保守党のSir Oliver Letwinが提案したもので、政府の離脱案と代替案を並べ、各議員に好む案に投票させる「示唆的投票」を実施する。

3人の閣僚が賛成票を投じ、閣僚を辞任した。

この投票前に、首相は協定案への賛成票が不足していることを認めていた。

議員 議長他
不投票
投票権者 賛成 反対 棄権
保守党 314 2 312 30 281 1
民主統一党 10   10 10
(与党) (324)   (322) (30) (291) (1)
労働党 245 2 243 232 8 3
スコットランド国民党 35   35 34 1
自由民主党 11   11 11
独立党 11   11 6 3 2
独立グループ 11   11 11
シン・フェイン党 7   7 7
プライド・カムリ 4   4 4
緑の党 1   1 1
合計(欠員 1) 649 4 645 329 302 14


メイ首相から、議会が主導権を奪うのが狙いで、「よりEUとの関係が近い離脱」や「2回目の国民投票」が有力な選択肢になる可能性がある。一方、EUからの明確な離脱を目指す強硬離脱派の一部は「合意なき離脱」を推す公算が大きい。

政府は投票結果には縛られず、メイ首相は「どんな投票結果でも政府が実現するとは約束できない」とけん制した。

しかし、メイ首相が今週中に離脱案を可決できない場合、4月12日までに英国の方針を示すことを課されており、その段階で示唆的投票の結果が重要な参考材料になる可能性がある。

ーーー

欧州委員会は3月25日、「英国が4月12日に『合意なき離脱』をする可能性は次第に高まっている」と声明で指摘するとともに、英国の合意なき離脱を想定したEU側の準備が「完了した」と発表した。

http://europa.eu/rapid/press-release_IP-19-1813_en.htm

各加盟国当局のほか、市民や企業にも準備を進めるよう促した。

欧州委によると、EU側はこれまでに「合意なき離脱」に必要な対処を定めた19件の法案を提出し、このうち17件がほぼ立法措置を終え、残る2件も近く処理される見通し。

立法措置には航空、鉄道・道路などの運輸部門のほか、EUに暮らす英国市民の居住権について、英国が同様の措置をとることも条件に一定期間、現状維持を認める内容も含まれる。



スプーン曲げの Uri Geller は3月22日、自身のFaceBookでメイ首相への公開書簡を投稿した。

Uri Geller は現在、イスラエルに住んでいるが、英国の市民権を持っており、以前はメイ首相の選挙区であるMaidenheadの住民で、首相が議員になって以降、21年間知り合いであるとしている。

その中で「ほとんどの英国人がEU離脱を望んでいない、と心霊的に非常に強く感じる」と訴え、「あなたが英国をEU離脱に導くのを私は許可しない。私が超能力でそれを止める」と表明した。

書簡ではまず、自分の自慢をしている。

メイ女史が首相になる3年前にそれを予告した。
Donald Trump が大統領になると予告した。
労働党党首のJeremy Corbynは首相にはなれないと予告している。
CIAも英国のMI5もイスラエルのMossadも私の力を立証している。

世界中の高官に影響力を与えてきた。
ある時は、米国の上院外交委員長がソ連の核交渉担当にテレパシーを送り、核兵器削減協定にサインさせることを求めたが、それに成功した。

この後、書簡のポイントに移る。

霊能で、それも非常に強く、ほとんどの英国民がBrexit を望んでいないと感じる。

貴女が大好きだが、貴女が英国をBrexitに導くのを許さない。

貴女を尊敬しているだけに、テレパシーでそれを止めさせる。それが出来る。

しかし、私がこのドラスチックな行動をする前に、まだチャンスがある間に、すぐにやめて欲しい。

韓国の李首相は3月21日、国会での代表質問で、最低賃金引き上げによる副作用について、「痛切な思いで大変申し訳ない」と発言した。

「最低賃金の急激な引き上げで低所得層が雇用を失った」と指摘する議員の質問に対し、李首相は「最低賃金引き上げで給与労働者間の賃金格差が緩和し、低賃金労働者も減少した」とする一方で、「最低賃金も支払うことが難しい小規模事業者には経営負担を強い、働き口まで失った方々がいる点をよく理解している」とも語った。 「マクロ指標の影で苦痛を味わう国民の困難を政府が無視してはならない。深い責任を感じ、とても胸が痛い。申し訳ない」と陳謝した。


韓国統計庁が2月13日に発表した1月の失業率(季節調整済み)は4.4%となり、昨年12月の3.8%から上昇し、 経済が世界的な金融危機の影響を受けていた2010年1月に記録した4.7%以来の高さとなった。

最低賃金が上昇しており、賃金が低い業種はより敬遠されつつある。

製造業の1月の雇用者数は前年同月から17万人減と最も減少幅が大きかった。建設業は1万9000人減、小売業は6万7000人減となった。

アナリストは「貿易摩擦は韓国製造業にまだ波及しておらず、最近の雇用減は国内のリストラ問題や最低賃金の引き上げが自営業者に及ぼす悪影響を反映している面が大きい」と分析 している。



国が定める最低賃金は、
昨年が16.4%の引き上げ、今年も10.9%引き上げと、2年間で合計29%上昇しており、 今年1月の引き上げで時給8350ウォン(7.46ドル)となった。

韓国の最低賃金は全国全産業一律。

8350ウォンで825円相当だが、日本には無い週休手当という法律で決まった制度があり、週に15時間以上働くと1日分の賃金が余分にもらえる。
1日8時間(週に40時間)で計算すると週休手当(8時間分)が加われば990円相当になり、東京の最低賃金985円より高い。

東北や四国、九州などの760円余、日本の全国加重平均874円と比べると、韓国の最低賃金は非常に高い。

米国の連邦レベルの最低賃金は2009年7月以降 $7.25で、韓国はこれより高い。(2019年1月に17州で最低賃金改定があり、全米で29州が連邦レベルを上回る)
一方、1人当たりGDPでみると、韓国は米国のほぼ半分しかない。

文在寅大統領が選挙公約で時間当り最低賃金1万ウォン(約千円相当)を掲げたのが発端で、大統領選の公約実現に突っ走った。

文政府は2020年までに1万ウォンを公約し、2018年を7481ウォン、2019年に8649ウォンの計画を発表している。

韓国の最低賃金法では、雇用労働部長官の要請に基づき最低賃金委員会が最低賃金案を審議・議決し、労使団体による異議申し立て期間を経て、雇用労働部長官が毎年8月5日までに最低賃金を定めることとされている。

2018年1月1日から適用する最低賃金は、2017年の6,470ウォンから16.4%引き上げられて、7,530ウォンとすることが決まった。

最低賃金委員会は2018年7月14日、2019年に適用される最低賃金を820ウォン(10.9%)引き上げ、8,350ウォン(政府計画には未達)とすることを決議した。雇用労働部長官は8月3日、最低賃金委員会の決定どおり2019年の最低賃金を定めることを告示した。

これについて、IMFやOECDから「速すぎる」と諌める声が出た。

経済協力開発機構(OECD)は急激な最低賃金引き上げほどの生産性の向上が伴わなければ韓国の国家競争力が弱まる可能性があると懸念した。

OECDは2018年5月30日に発表した「世界経済見通し報告書」で、「最低賃金引き上げで民間消費振興が期待される」としながらも、「生産性向上が伴わなければ雇用が鈍化し競争力が弱まる可能性がある」と分析した。OECDは生産可能人口が減少し法定労働時間が短縮されるだけに労働生産性向上が重要だと判断した。


IMFアジア太平洋局の課長は2018年7月のセミナーで、2019年の韓国の最低賃金10.9%引き上げ決定を念頭に、「特定ポイントを超えれば韓国経済のファンダメンタルズに損傷を負わせかねない。とても慎重にアプローチする必要がある」と明らかにした。

課長は韓国政府が最低賃金引き上げ政策を展開する際に「フランスの事例を参考にしなければならない」と助言した。フランスは2005年に最低賃金が中位賃金の60%に到達した後、副作用が出たことで引き上げ速度を大幅に遅らせた。

課長はまた、最低賃金引き上げにともなうインフレ発生の可能性に言及し、場合によって通貨政策余力を弱めかねないという点も指摘した。

席上、OECDの韓国経済担当官も、最低賃金引き上げが特にサービス分野で雇用を弱め、インフレを発生させる原因となる恐れがある点を指摘した。 「最低賃金引き上げ幅は地域別で受容できる水準が違う。ソウルの明洞と全羅南道は同じになれない」と話した。

中国江蘇省塩城市の響水縣生態化工園區にある天嘉宜化工で3月21日午後2時50分ごろ、爆発が発生し た。

2019/3/22 中国の化学工場で爆発 


情報筋によると、事故の原因は、プラントから漏れた天然ガスがニトロベンゼン製造装置の爆発を引き起こし、それがメタノールとベンゼンの貯蔵タンクの燃焼爆発を引き起こしたという。

地元紙によると、国家安全監管総局は2018年1月に江蘇省の18の化学工場を検査し、天嘉宜化工 については下記を含め13の問題を指摘している。

主担当者は、安全に関する知識および管理能力についての資格を持たない。
生産設備の操作手順が完全ではなく、ベンゼンタンク区域の操作手順や技術仕様がない。
・ベンゼンタンク区域およびメタノールタンク区域のタンクの根元に緊急遮断弁がない。
・ベンゼンとメタノールの積み降ろし場所には漏洩防止のための緊急処分措置はなく、充填箇所はポンプ場に近い。
・装置内の可燃性ガス警報器の設定や警報後の緊急処分対策について明確でない。

同社がこれまでに改善を行っているかどうかは不明という。


イタリアを訪問中の習近平主席は直ちに重要指示を出した。

江蘇省と関連当局に対して、「災害救助活動を全力で展開し、捜索・救助活動のほか、負傷者の治療を直ちに行うなど、善後処理をしっかりと行い、社会の安定を守る。また、モニタリング・警報を強化し、環境汚染の発生を防ぎ、二次災害を全力で防がなければならない。そして、事故の原因をできるだけ早く解明し、信頼性ある情報を直ちに発表する」と求めた。

さらに、「最近、一部の地域で重大な事故が頻発している。各地、関連当局は教訓をしっかり学び取り、潜在リスクの洗い出しを強化し、安全生産責任制を確実に実施し、特大事故の発生をなんとしても防ぎ、国民の命と財産の安全を守るように」と強調した。



爆発地点は地図の赤丸箇所付近 と見られる。

爆発場所に大穴     窓ガラスが割れて児童がケガをした小学校は右側の畑の向こう側にある。

北側からの撮影

欧州委員会は3月20日、米Alphabet Inc.傘下のGoogleがインターネット広告事業で反競争的行為があったとして、14億9000万ユーロ(17億ドル)の制裁金を科したと発表した。 今回の制裁金は2018年の売上高の1.29%に相当する。

Googleは、利用者が検索したキーワードに関連した広告をサイトに表示する コンテンツ連動型広告配信サービスのGoogle AdSenseと呼ばれる事業を展開している。広告がクリックされるごとに収益の一部をサイト側に提供する。

欧州委によると、Googleは2006年から2016年にかけて同社のGoogle AdSense を利用するウェブサイトに対し、競合サービスが配信する広告を掲載しないように求めたり、競合サービスへの乗り換えを制限したりして公正な競争を阻害した。

2006年以降、契約に独占条項を入れ、他社の広告を入れさせないようにした。

2009年3月に独占条項を変更し、"Premium Placement" 条項にした。Google分を最もよい場所に複数いれることを求めた。

2009年3月に競合者の広告の表示を変更する場合、事前に書面で了承を求めることにした。


欧州委によると、欧州でのGoogle のネット広告分野の2006~2016年の市場シェアは70%以上だった。

Margrethe Vestager 欧州委員(競争政策担当)は記者会見で「Google不適切行為が10年以上続き、競争による他社の技術革新や消費者の利益を損ねた」と批判した。

Google幹部は3月20日、「欧州委の懸念に対応するため、すでに当社製品に広範囲の変更を実施した。今後数カ月以内に、欧州の競合他社により認知されるよう一段と改善を行う」と述べた。

ーーー

欧州委がGoogle に巨額の制裁金を課すのは買い物検索、携帯端末向け基本ソフト(OS)「アンドロイド」に続いて今回で3例目となった。

EUの欧州委員会は2017年6月27日、Googleがインターネット検索で自社のサイトが有利になるようにし、EU競争法に違反したとして、2,424,495 千ユーロの制裁金を命じたと発表した。

Googleはネット検索市場での支配的な地位を乱用し、商品価格を比較する際に同社のサイト Google shopping を競合他社のサイトよりも目立つように表示されるようにすることで、公正な競争を阻害した。

2017/7/4 EU、Google に24億2千万ユーロの制裁金 

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欧州委員会は2018年7月18日、Google に43億4000万ユーロ(約5700億円)の制裁金を払うよう命じた。

携帯端末向けの基本ソフトAndroid を巡って、EU競争法(独占禁止法)に違反したと判断した。

2018/7/27 欧州委員会、Googleに罰金5700億円

これに対応するため、Google は2018年10月16日、欧州域内で売るスマートフォンについて、端末メーカーに無料提供していたメールや地図ソフトを有料化すると発表した。

2018/10/23 Google、欧州でアプリ有料化、EUの競争法違反制裁に対応 

同社は本年3月19日、基本ソフト (OS) 「アンドロイド」のユーザーに対し、自身が好むブラウザーや検索アプリを選択するよう促す方針だと明らかにした。

2017年11月15日、韓国慶尚北道浦項付近でマグニチュード5.4の地震が発生した。震源は浦項市北区の北側9キロで、深さは9キロ。

これは2016年9月の慶州付近で発生したM 5.8 の地震に次ぐもので、1978年の韓国気象庁の観測開始して以降の2番目のもの。

広範囲の建物が損壊し、118人が重軽傷を負い、約85億円の財産被害が出た。政府は一帯を特別災難地域に指定し、現在も復興事業を進めている。

この地震の原因として、浦項市興海邑の浦項地熱発電実証研究施設の活動が指摘され、政府は2018年3月に国内外の専門家で浦項地震調査研究団を構成し、調査分析作業を始めてきた。

政府は3月20日、周辺で進めている地熱発電開発が原因だったと発表し、謝罪した。国策による開発が拙速だったとの指摘も上がり、被災者が政府に賠償を求める騒ぎになっている。

政府調査団の調べでは、地熱発電の開発で地下に高圧の水を注入したため、時間の経過によって地震を引き起こしたとみられる。

地下に注水することで地震が発生しやすくなる現象は、シェールオイルの掘削が進む米オクラホマ州などでも知られている。水によって地下にかかる力が変化することが原因と考えられている。

2012/5/1  シェールガス採掘で地震誘発 

2010年に国家研究開発課題として地熱発電開発を始めるまで、周辺で大きな地震は発生していなかった。

政府は開発の中断を決めた。
 

政府調査研究団が、地熱発電が浦項地震を触発した原因と指定したのは、地熱発電活動で誘発された微小地震が起きた平面と浦項地震を起こした断層面解が一致するという事実が決定的な根拠になった。

調査研究団団長によると、「研究チームが最も尽力したのが震源の位置決定だ。浦項地震が地熱発電の地熱井から数キロメートル以上離れていれば解釈が変わりうるため」と話した。

2009年1月1日以後に浦項地域で発生した520回の地震のうち、地熱発電実証研究敷地から震央までの距離が5キロメートル以内、震源の深さが10キロメートル以内の98回を対象に精密地震位置分析をした。その結果、2本目の地熱井(PX-2)から水を注入して誘発された微小地震がほとんど平面に近い分布様相を見せ、さらにこの平面が浦項地震本震の断層面解の走向と傾斜がほぼ一致していることを明らかにした。

韓国地質資源研究院による浦項地熱発電実証研究は、2010年12月に始まり、二本の地熱井をボーリングして2016年1月から2017年9月28日まで5回にわたり1万2800余立方メートルの水を注入し、7000立方メートルの水を取り出す水理作業をした。この期間に数十回の微小地震が発生した。3回目の水注入が終わった2017年4月15日には、最も大きい規模3.2の地震が起きた。

研究団は、浦項地震を誘発(induced)地震ではなく、触発(triggerd)地震と表現した。

誘発地震は水の注入による圧力と応力の変化で岩石の空間的範囲内で起きる地震
触発地震は人為的影響が最初の原因だが、その影響で刺激を受けた空間的範囲を大きく外れた規模の地震

浦項地震は、誘発地震の範囲を越えているが、自然地震と区別するために触発地震という用語を使った。

浦項地区は火山地帯ではなく、そういう場所でMW級地熱発電所を作るのは国内ではもちろん、アジアでも初めて。

今まで非火山地帯で地熱発電ができなかった理由は、温度が充分ではなかったためだが、関連技術が発展することで火山地帯ではなくても地熱発電が可能になった。

韓国地質資源研究院の調査結果、浦項市興海邑南松里一帯の5キロメートル地下の温度は最大180度ということが分かり、地熱発電の最適地として選ばれた。

この地域は,韓国では厚い第三紀層で覆われており,これがキャップ・ロックの役割を果たす。

2017年2月の計画では、2017年の年末に1.2MW規模の発電を行い、2018年に約80億円を投じて5MW規模の発電所をつくるとしていた。


中国江蘇省塩城市の化学工場で3月21日午後2時50分ごろ、爆発が発生し、中国メディアによると6人が死亡、30人が重傷を負った。

作業員が操作を誤ったのが爆発の原因としている。当局が被害状況の確認を進めるとともに原因を調べている。

爆発は、塩城市響水縣生態化工園區にある天嘉宜化工(Tianjiayi Chemical)。 同社はm-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミンのメーカーで年産能力2万トンとされる。

中国国営テレビは工場近くの住宅や小学校の窓ガラスが吹き飛ぶなどの被害が出て、小学校の児童らがけがをしたと報じている。

地元の消防には「農薬の原料のベンゼンが爆発した」と工場から通報が入っている。

付記

中国国務院は「天嘉宜化工有限公司"3·21"特别重大爆炸事故调查チーム」を編成し、調査を開始した。

中国メディアによると、地元当局は3月23日未明、62人の死亡が確認されたと発表した。さらに28人が行方不明で、34人が重体。60人が重傷を負った。地元当局によると、けが人は640人にのぼる。

付記  現場指揮部は3月25日、事故による死者はこれまでに78人に上ったことを明らかにした。

工場では以前からずさんな管理が指摘され、2016年7月から2年間で、廃棄物管理規制の違反などで7回も行政処分を受けた。また、2018年2月には中央政府の安全当局から、13項目に及ぶ安全上の不備を指摘されていた。

地元当局は関係者を拘束するなどして爆発の原因を調べている。

爆発地点に大穴


EUは3月21日、首脳会議を開き、EU離脱について下記の通り決めた。

1)英国下院が3月29日までに離脱協定案を可決すれば、協定案の批准手続きのため5月22日までの延期を認める。
  英国はこの場合、6月30日までの延期を求めていた。


欧州議会選挙は5月23日~26日に行われる。
英国が選挙日時点でまだEUに所属しながら、議会に議員を送らないのはまずいとの考え。

2)下院が3月29日までに可決できない場合、離脱日を本来の3月29日から4月12日まで延期する。

英国に対し、この日までに、5月23〜26日に実施される欧州議会選挙への参加有無も含め、離脱の長期延期か、「合意なき離脱」か、離脱の撤回か、を示すことを求める。

4月12日は5月23日~26日に行われる欧州議会選挙の立候補締め切り日。離脱の長期延期や撤回の場合、英国は議会選挙に議員を出す必要がある。

とりあえずは3月29日の「合意なき離脱」は回避できたが、4月12日までにはどうするかを決めることを求めた。

決められない英国に対し、最後通牒を出した形で、メイ首相もこれに同意した。来週、下院で三度目の投票を行う。

EU関係者によると、英国が長期延期を選んだ場合は、離脱の是非を問う国民投票の再実施や、解散総選挙の実施など、極めて厳しい条件をEU側があらためて課す可能性が高いという。

付記

メイ首相は3月22日夜に全議員に書簡を送り、十分な賛成が得られそうにない場合は投票を行わないとした。その場合、長期に離脱を延期することを求めるが、欧州議会選挙に参加することになるとしている。

離脱賛成派に協定案への賛成を求めるもの。

中国外務部は、習近平国家主席が3月21~26日の日程でイタリア、モナコ、フランスを公式訪問すると発表した。
主席は21日夜、イタリアに到着した。

自由貿易体制を擁護する欧州首脳と連携し、保護主義的主張を掲げるトランプ米政権をけん制する狙いがある。

イタリアでは中国が進める巨大経済圏構想「一帯一路」の参加について協議し、G7 として初めて、覚書を交わす見通し。

イタリアのコンテ首相は既に、一帯一路の覚書を結ぶ方針や、4月下旬に北京での一帯一路関連の第2回国際会議に出席する意向を表明している。

3月22日に中国国有の中国交通建設集団とTriesteの港湾局が、Triesteの鉄道インフラ整備に関する覚書を締結する。

EU加盟国では、ギリシャやポルトガルなどが中国と覚書を交わしているが、イタリアが署名すればG7では初めてとなる。アメリカは「一帯一路」を通じた中国の影響力拡大に警戒感を示す。

ギリシャと中国は2018年8月に覚書を交わした。

2016年4月に、アテネ近郊にある同国最大の Piraeus 港の売買契約を中国海運大手の中国遠洋運輸集団(
China COSCO Holding)との間で締結している。

2016/4/12 ギリシャ、最大のピレウス港を中国に売却 

ポルトガルと中国は2018年12月5日、中国の「一帯一路」に協力することで覚書を締結した。

習主席は、「『一帯一路』の枠組みの協力を全面的に強化し、相互の接続を促進する必要がある」と強調、ポルトガル大統領は「ポルトガルは『一帯一路』の陸上・海上ルートで欧州の枢軸になりたい」と応じた。

中国は友好国のポルトガルの港を欧州の主要な玄関口の一つと位置付け、物流ルートを構築する考え。

ポルトガル投資貿易振興庁と中国・中糧集団(COFCO)も覚書に署名、COFCOがポルトガル北部のMatosinhos港に世界的な共有サービス拠点を置く。

農業や漁業、海洋学のデータ収集に向けた小型衛星を開発したり、中国の華為技術(Huawei)と欧州の通信会社Altice N.V.が、ポルトガルで第5世代移動通信方式(5G)網を開発したりすることなどでも合意した。

ポルトガルは欧州勢の中でも、中国から多くの投資を呼び込んでいる。

米国やイタリア国内から反発が出ている が、中国の外務次官は欧州各地の港湾に中国国有企業が投資を進めることへの懸念について「経済協力プロジェクトであり、完全な国際商業行為だ」と述べ、安全保障上の国策ではないと強調した。「市場原則に基づく実務的な協力だ。現地の経済・社会発展や就業機会創出に積極的な貢献をしており、従業員や地元住民は高く評価している」と主張した。

付記

EU加盟国では、ギリシャとポルトガルの他に、既に次の各国が一帯一路の覚書に調印している。

マルタ、ブルガリア、クロアチア、スロベニア、ハンガリー、スロバキア、チェコ、ポーランド、リトアニア、ラトビア、エストニア

ーーー

Torieste港は、港湾の指定区域内であれば関税を支払うことなく、積み荷を一時保管し、加工して再輸出もできる「自由港」として栄えてきた。

Torieste港は欧州で11番目の規模(コンテナの扱い量 50万TEU)で、ギリシャのPiraeus港(374万TEU)より小規模である。

TEU(Twentyーfoot Equivalent Units)は20フィートコンテナの1個分

中国側は、ターミナルの拡張、倉庫の拡大と物流アクセスの複線化などのインフラを整備すれば、コンテナ扱い量を飛躍させることができると提案した。

Torieste港は、アドリア海からヨーロッパ大陸を繫ぐ。バルチック回廊、地中海回廊につながり、この港から欧州製品が世界各地へ輸出されている。

自由港であるTorieste港は欧州以外への中継貿易港としても活用できる。

また、原油の輸入が多く、2015年の年間取扱貨物量約57百万トンの内、約8割が原油である。



2017年8月に清水港との姉妹港提携に係る覚書の調印を行った。


付記

中国国有企業の海運最大手「中国遠洋海運集団」(COSCO) は既にジェノバ近郊のVado Ligure港に進出している。

同社は2016年10月、同港のVado Reefer Terminalを運営するVado Holdingsの40%を買収した。町や港湾当局などは、地元経済のテコ入れを図ろうと港の拡張工事を計画、出資者を探していた。

工事は今年中に終了し、港湾労働者数とコンテナの取扱数は以前の5倍となる見通し。


ーーー

第二次世界大戦後、イタリアとユーゴスラビアの間で、トリエステとその周辺地域がどちらに帰属するかの紛争が発生した。

1947年2月、領土問題は棚上げされ、トリエステ自由地域として国連管理下に置くこととされた。

トリエステ市を含む北部のZone Aは連合国側が、南部のZone Bはユーゴスラビアが分割占領することが決められた。

1954年にトリエステ自由地域は解消され、イタリアとユーゴスラビアによって分割された。

Zone Aに含まれていたトリエステ市は、イタリアの領土となり、南部のZone Bは、ユーゴスラビアの領土となった。

1991年にユーゴスラビアからスロベニアとクロアチアが独立、B地区をドラゴニャ川を境として南北に分割し、北部をスロベニア、南部をクロアチアに帰属させた。


メイ英首相は3月20日、トゥスクEU大統領に6月30日までの離脱延期を要請する書簡を送付した。


英下院は3月14日、
議会が3月20日までに英国とEUがまとめた離脱案を承認した場合、6月30日までの一時的延長をEUに申し出る との首相の提案を賛成413、反対202で可決した。

メイ首相は20日までに、3月12日に否決された議案を再度提出する予定であった。

しかし、ぎりぎりの時点で下院議長が同一会期中に、否決されたのと同じ議案、又は実質的に同じ議案を提案できないとしたため、下院の承認なしでの離脱延期要請となった。

2019/3/19 英国のメイ首相の計画に障害、下院議長が離脱案再採決を認めず

政府は当初、「3月20日までに議会承認されなければ、より長い延期を求めることになる」とし、欧州議会選挙を実施することとなるとしていた。

今回、議会承認が得られなかったため、長期延期もできるよう求める方向だったが、「長期の場合は5月のEU議会選挙に参加しなくてはならず、それが国の利益になるとは思わない」と短期延長に絞った。

欧州議会選が5月23日に始まるが、欧州委員会は英国がこれ以降も残留しながら、選挙に参加しなければ法的な問題が生じると懸念を示している。

EUのバルニエ首席交渉官は3月19日の記者会見で、長期延期の場合には、「新たなイベントや新たな政治プロセスと結び付かなければならない」とし、英国の総選挙や離脱の是非を問う2度目の国民投票などが条件になることを示唆した。また、5月23日からの欧州議会選挙への英国の参加が必要だとも主張した。

メイ首相は、「EU離脱決定から3年経った今、欧州議会選挙への投票を国民に求めることは許されない」と強調した。「離脱協定が否決された場合、今後の方針は下院が決める必要がある」とし、長期延期を余儀なくされた場合、辞任も辞さない可能性を示唆した。

書簡を受けトゥスクEU大統領は、3月21~22日の首脳会議で離脱延期の可否を議論はするが、最終決定は来週に持ち越す考えを示した。6月末までの延期については「法的、政治的な問題をもたらす」とし、期間については英国を除く27加盟国の首脳で協議するとした。「短期間の離脱延期は可能」とする一方、英下院が来週、離脱協定案を可決することを条件とする考えを表明した。

しかし、下院の承認を得る目途は立っていない。

長期延期がなくなったため、あとは「合意なき離脱」しかない。
これまで、下院が承認しなければ長期延期となり、最終的に離脱なしの可能性もあるとし、離脱賛成派を説得してきたが、これが効かなくなる。

なお、同一議案の提案については、今回に限りこれを認めるとの議案を承認する案や、下院を一旦閉会して、すぐに再開会する案などが出ている。

「合意なき離脱」の可能性が高まった。


公正取引委員会は3月15日、 米半導体大手クアルコムが第3世代(3G)携帯電話に必要な通信技術の特許の使用契約を巡り、2009年9月28日付けで排除措置命令を受けた審判で、「公正な競争を阻害したと認めるに足る証拠はない」として、 これを取り消す審決を出したと発表した。


審判制度は、公取委の命令に対する不服を公取委職員の審判官が審理する制度 で、中立性に疑問があるとして2013年の独禁法改正で廃止された。
クアルコムは2009年に審判を請求し、2010年1月に審判が開始されており、審理が続く間、命令の執行は停止されていた。


2009年9月28日付けの排除措置命令の内容は下記の通り。

1) 違反行為

クアルコムは、国内端末等製造販売業者 (NEC、シャープなど国内メーカー18社) に対し、CDMA携帯無線通信に係る知的財産権の実施権等を一括して許諾するに当たり、以下を求めた。

CDMA携帯電話端末及びCDMA携帯電話基地局に用いられる半導体集積回路等の製造、販売等に関し、

(1)国内端末等製造販売業者等の知的財産権について、クアルコムに対して、その実施権等を無償で許諾する。

(2)当該知的財産権に基づいて、クアルコム等又はクアルコムの顧客に対し、権利主張を行わないことを約する。

(3)当該知的財産権に基づいて、クアルコムのライセンシーに対し、権利主張を行わないことを約する。

このことから、国内端末等製造販売業者等のCDMA携帯電話端末及びCDMA携帯電話基地局並びにこれらに用いられる半導体集積回路等に関する技術の研究開発意欲が損なわれ、また、クアルコムの当該技術に係る市場における有力な地位が強化されることとなり、当該技術に係る市場における公正な競争が阻害されるおそれがある。

公取委は下記の点を問題とした。

1) 国内業者がクアルコムの特許を使う場合は使用料を払う一方、クアルコムは各社の特許を無料で使える「無償許諾条項」
2) クアルコムの特許を利用する各国の企業間で特許侵害があっても訴訟などで争わない「非係争条項」

2) 排除措置命令の概要

(1)クアルコムは、本件ライセンス契約の上記の規定を破棄しなければならない。
(2)業務執行の決定機関において決議
(3)国内端末等製造販売業者に通知
(4)クアルコムは、今後、同様の行為を行ってはならず、また、子会社をして行わせてはならない。


今回の審判の内容は下記の通り。

本件ライセンス契約は、クアルコムが保有する知的財産権の実施権を許諾するのに対し、国内業者も保有する知的財産権の非独占的な実施権を許諾するというクロスライセンス契約としての性質を有し ている。

クアルコムのライセンシーに対する非係争条項も、国内業者と同様の条項を規定した他の被審人のライセンシーが 、相互に保有する知的財産権の使用を可能とするものとして、クロスライセンス契約に類似した性質を有するものと認めるのが相当である。

クロスライセンス契約を締結すること自体は原則として公正競争阻害性を有するものとは認められないことからすると 、公正な競争秩序に悪影響を及ぼす可能性があると認められるためには、本件ライセンス契約について、国内業者の研究開発意欲を阻害するなどしている点についての証拠等に基づくある程度具体的な立証等が必要になる。

排除措置命令の審査官は、
〔1〕本件無償許諾条項等の適用範囲が広範であること、
〔2〕本件無償許諾条項等が無償ライセンスとしての性質を有すること、
〔3〕本件無償許諾条項等が不均衡であることから、
国内業者の研究開発意欲を阻害するおそれがあると推認できる程度に不合理であると主張するが、

次の点でいずれもその根拠を欠く。

〔1〕特に広範なものであると認めるに足りる証拠はない
〔2〕クアルコムの知的財産権の実施権の許諾を得ており、クロスライセンスの性質を有するため、対価無しの無償ライセンスではない。
〔3〕国内業者が負う義務とクアルコムが得られる権利だけを考慮し、国内業者が得られる権利やクアルコムが負う義務を考慮しないもので適切でない。


研究開発意欲阻害のおそれについて、
a 審査官は、新たな技術のための研究開発活動への再投資を妨げられたとする事由として、ロイヤルティ料率の調整を受けたりすることができなかったこと 、製品の差別化が実際に困難となったこと、権利行使ができなかった事例が存在すること等を主張するが、いずれも認められない。
b 国内業者の研究開発意欲を阻害するおそれがあると推認できる程度に広範、無償、不均衡で不合理なものと認めるに足りる証拠がない。

結論

第三世代携帯無線通信規格に必須である工業所有権のクアルコムの保有状況等からすれば、クアルコムは、CDMA携帯電話端末等に関する技術に係る市場において有力な地位を有していたものと推認されるところ、
このようなクアルコムによる国内業者との間の本件ライセンス契約の締結に至る過程において、本件排除措置命令が摘示する拘束条件付取引に該当するものとして公正競争阻害性を有すると認めるに足りる証拠はなく、上記の点を根拠として、被審人に対して排除措置命令を発することはできない。

窪田製薬ホールディングスは3月18日、下記を発表した。

・ 会長・社長・CEOの窪田良博士がNASAより、有人火星探査を含むDeep Space missionsPrincipal Investigator研究代表に任命されたこと

100%子会社のAcucela Inc.Translational Research Institute for Space HealthTRISH小型OCT開発受託契約を締結したこと

TRISH は、NASAとの共同契約を通じた携により、NASADeep Space missionsにおける宇宙飛行士の精神的、身体的健康保護、維持するための革新的な技術に資金供与を行うコンソーシアム

これにより、同社今後NASAと共同で開発を進める。開発に要する費用はTRISHを通じてNASAより全額助成される。


長期的な
宇宙飛行を経験した宇宙飛行士の約63%視力障害や失明の恐れがある神経眼症候群患っているという研究報告を契機に宇宙飛行中にリアルタイム網膜の状態を計測することへの需要が高まっている。

宇宙飛行に起因する神経眼症候群(Spaceflight Associated Neuro-ocular Syndrome)の主な症状は:
 視神経が部分的に腫れる「
視神経乳頭浮腫
 眼球の後ろが平たくなる
眼球後部平坦化
 眼球後方で網膜の外側にある脈絡膜がしわしわになる「
脈絡膜鄒壁
 
眼底に白いシミができる「綿花状白斑」
 視点の焦点を合わせる屈折に異常
が見られるなど。


現在、これら
の症状の検査で、網膜の断層を撮影する光干渉断層計Optical Coherence TomographyOCTが主に使われており、網膜の厚みや、網膜と視神経乳頭の断層画像を正確に計し、のテストと併用して神経眼症候群の診断や経過観察、治療に活用されている。

現在、国際宇宙ステーション(ISSで使われている市販のOCTには、下記の問題があり、月や火星などへの宇宙飛行時に使用するには適さない
 ポータブルで
ない
 
耐放射線性ではない
 
必要のない機能が搭載されており、システムが複雑で機器自体も大型である

窪田製薬が開発する小型OCTは、耐久性と耐放射線性を備え、型軽量であり、ロケットに搭載して宇宙飛行中の宇宙飛行士網膜の状態を撮影できる新たなOCT機器として、NASAで活用されることが期待されている。

同社では現在、患者が自分で検査をするための在宅遠隔医療モニタリング機器として、超小型OCTを開発している。

OCTの製品イメージ (双眼鏡の大きさ)

窪田製薬ホールディングスは、世界中で眼疾患に悩む患者の視力維持と回復に貢献することを目的に、イノベーションをさまざまな医薬品・医療機器の開発及び実用化に繋げる眼科医療ソリューション・カンパニー。

慶應義塾大学医学部眼科学教室の客員教授であり、会長、社長兼CEOの窪田良博士が、2000年に渡米し、2001年に独自の細胞培養技術を発見、2002年に「世界から失明を撲滅する」ことを目標に、変性眼疾患の治療法および医薬品のスクリーニング・システムの開発を目的として、シアトルの自宅地下室で Acugen Neuropeutics Inc.を設立した。

2003年に社名をAcucela Inc.に変更、2015年に日本に子会社アキュセラ・ジャパン(その後、窪田製薬ホールディングスに改称)を設立した。

2016年12月に三角合併で窪田製薬ホールディングスを本社、米国のAcucela Inc.を完全子会社とした。


米国
子会社のAcucela Inc
.が研究開発の拠点となり、革新的な治療薬・医療技術の探索及び開発に取り組んでいる。

社独自の視覚サイクルモジュレーション技術に基づく「エミクススタト塩酸塩」において糖尿病網膜症およびスターガルト病への適応を目指し研究を進めている。
た、白内障や老視老眼の薬物治療を目的とした低分子化合物の研究開発、網膜色素変性における視機能再生を目指す遺伝子療法の開発を実施している。

同時に、糖尿病黄斑浮腫、ウェット型加齢黄斑変性など血管新生を伴う疾患の治療を目指し、生物模倣技術を用いた低分子化合物の研究開発も進めている。

在宅・遠隔医療分野(モバイルヘルス)では、
PBOS患者が自分で検査をするためのOCTデハイス)などクラウドを使った医療モニタリングデバイスの研究開発も手掛けている。

ーーー

同社の2018年12月期決算では、収益はゼロ、費用は3,274百万円(うち開発費 2,479百万円)となっている。

英下院は3月14日、議会が3月20日(EU首脳会議の前日)までに英国とEUがまとめた離脱案を承認した場合、6月30日までの一時的延長をEUに申し出る との首相の提案を賛成413、反対202で可決した。

メイ首相は3月19日か20日に、これまで2度否決されているEU離脱協定を改めて採決にかけ るとしている。


議会下院(定数650)は1月15日午後8時半すぎ、Brexit について英政府がEUとまとめた離脱条件の協定の承認採決を行い、432対202の大差でこれを否決した。

下院は3月12日夜、英政府がEUとの間で前日にまとめた離脱条件の協定 (英国がEUのルールに縛られ続けないとする条項を1月に英議会が否決した離脱案に追加し、法的拘束力を持たせた) の承認採決を行い、賛成 242、反対 391の大差でこれを否決した。

EUは再交渉を認めないし、時間がないため、3月12日に否決された議案を再度提出する予定である。


しかし、ぎりぎりの時点で下院議長が問題を指摘した。1604年に遡る慣例法で、同一会期中に、否決されたのと同じ議案、又は実質的に同じ議案を提案できないというものである。

議長によると、1月15日の議案と3月12日の議案は十分に違いがあり、慣例法の違反にはならない。しかし、3月12日の議案と同じものを今回再提案することは出来ない。
どれだけ違えばよいかについては明らかにしていないが、「根本的に違っている("fundamentally different")」ことが必要としている。

これにより、離脱協定案の支持獲得を目指していたメイ首相の計画に大きな狂いが生じ、合意なき離脱の可能性が再び高まることになる。

対応策として、女王に議会を閉会してもらい、新しく議会を開いて、決議する案が出ている。




(予定)

トヨタ自動車は3月14日、米国の5工場に749百万ドルを投資し、586人の雇用を創出すると発表した。

また、2017年に示した5年間で100億ドルの対米投資計画について、今回発表分を含め130億ドルにするとの見通しを示した。

投資拡大を求めるトランプ政権にアピールするもので、新しい「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」を見据え、域内調達比率を高める狙いもある。

米・加・メキシコ3国は2018年11月30日「USMCA」に署名した。

自動車については下記のRules of originがある。

域内部品調達比率 62.5%→75%
時給16ドル以上の地域での生産割合 40-45%
エンジンや変速機といった主要部品を3カ国で生産するように義務付け

2018/10/4 NAFTA、3カ国協定を維持、USMCAに改称

ーーー

2017年1月、Trump次期大統領は twitterでトヨタのメキシコを取り上げた。米国に工場をつくるか、それとも多額の国境税を払えとした。

Toyota Motor said will build a new plant in Baja, Mexico, to build Corolla cars for U.S.
NO WAY!
Build plant in U.S. or pay big border tax.

これを受け、トヨタ自動車は2017年1月9日、今後5年間で米国に100億ドルを投資すると発表した。

豊田社長は米国で13万6000人を雇用しており、過去60年間で220億ドルを投資したと説明した。100億ドルの新たな投資の使途に言及しなかった。雇用増についても触れていない。

トヨタは同年4月10日、「今後5年間の米国内での100億ドル投資計画」の一つとして、ケンタッキー工場の刷新に13.3億ドルを投資すると発表した。

2017年8月にマツダと共同で米国に新工場を建設することを発表し、メキシコ新工場で生産するはずだったカローラは米国の新工場に移管する方針を示した。カローラは米国で集中的に生産することで効率を高める。

マツダとのJVは Huntsville, Alabamaに16億ドルを投資し、2021年に生産を開始する。4000人を雇用する。

メキシコ新工場ではカローラを年間20万台生産する予定であったが、ピックアップトラックのタコマを生産する計画に変更した。投資額も10億ドルから7億ドルに3割減した。

今回、これを約130億ドルに引き上げることとした。

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今回の5工場への投資は次の通り。

Huntsville, Alabama工場 288百万ドル (総投資額 12億ドル)

エンジン生産能力を2021年までに67万基から90万基に引き上げる。
新しく
4-cylinder エンジン、V6 エンジンのラインを新設し、450人を追加雇用する。

Kentucky工場 238百万ドル  (総投資額 70億ドル以上)

2019年5月にLexus ES 300h hybrid (年産12千台)の生産を開始、2020年1月にはRAV4 Hybrid(年産10万台)の生産を開始する。

Camry、Camry Hybrid、Avalon、Avalon Hybrid、Lexus ES を合計55万台生産している。

Bodine Aluminum Troy, Missouri 工場 62百万ドル (総投資額 455百万ドル)

現在、全米の工場向けに年産300万基以上のcylinder headsを生産しているが、追加で864千基を生産する。

Bodine Aluminum Jackson, Tennessee 工場 50百万ドル (総投資額 365百万ドル)

現在、全米の工場向けに年産170万基のengine blocks、58万基のtransmission cases and housings を生産している。

今回、hybrid transaxle cases and housingsの生産能力を倍増し、24万基にする。

West Virginia工場 111百万ドル (総投資額 14億ドル)

2020年生産開始のhybrid transaxles の生産能力12万基を2021年に倍増し、24万基とする。


トランプ大統領は早速、ツイッターでこれを歓迎した。

Congratulations Toyota!
BIG NEWS for U.S. Auto Workers!  
The USMCA is already fixing the broken NAFTA deal.

トランプ米大統領は3月16日、オハイオ州の工場での生産休止を発表していた米ゼネラル・モーターズに、工場を再開せよと述べた。

Because the economy is so good, General Motors must get their Lordstown, Ohio, plant open, maybe in a different form or with a new owner, FAST!
Toyota is investing 13.5 $Billion in U.S., others likewise.
G.M. MUST ACT QUICKLY.
Time is of the essence!

付記

GMは3月22日、米ミシガン州のオリオン工場に3億ドルを投資し、400人を追加雇用すると発表した。「シボレー」ブランドの新型の電気自動車(EV)を生産する。


JXTGエネルギー、千代田化工建、 東京大学、 クイーンズランド工科大学は3月15日、オーストラリアにおいて有機ハイドライドを低コストで製造し、日本で水素を取り出す世界初の技術検証に成功したと発表した。

東京大学が水素サプライチェーン構築を目指す社会連携研究主催し有機ハイドライド電解合成技術JXTGエネルギー、高効率の追尾型太陽光発電システムクイーンズランド工科大学、水素取り出し技術の千代田化工建設が参画し、2018年12月5日~2019年3月14日に実施された。

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水素を貯蔵・運搬する際には、 LNGの水蒸気改質や水の電気分解等によって生成した水素をタンクに貯蔵し、一旦有機ハイドライドの一種であるメチルシクロヘキサン(MCH) に変換して運搬し、到着地で脱水素する。

千代田化工建設、三菱商事、三井物産、日本郵船の4社は2017年に、次世代水素エネルギーチェーン技術研究組合を設立し、世界に先駆けて水素の国際間サプライチェーンの実証事業に本格着手した。

ブルネイ・ダルサラーム国に水素化プラント、川崎市臨海部に脱水素プラントを2019年までに建設し、ブルネイで調達した水素を、常温・常圧下で液体の形で日本へ海上輸送し、川崎市臨海部で気体の水素に戻して需要家に供給する。


2017/8/5 千代田化工ほかの国際間水素サプライチェーン実証事業

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今回は、 水の電気分解による水素の輸送だが、水を電気分解してからトルエンを水素化するのではなく、水とトルエンから直接メチルシクロヘキサンを製造する「有機ハイドライド電解合成法」を用いたことで、従来に比べ工程を大幅に簡略化することができた。

従来法:水の電気分解→水素(タンクで保管)→トルエンと反応→メチルシクロヘキサン
今回法:水とトルエンを電気分解→メチルシクロヘキサン

さらにメチルシクロヘキサン製造に必要な電力として、太陽光発電の電気を用いたことで、製造時にCO2排出しない「CO2フリー水素」約 0.2kgの製造に成功した。

将来的には、上図と同様、メチルシクロヘキサンを輸送し、輸送先で脱水素する。

今回の技術検証の概要は下図の通り。費用は各社が負担した。

「有機ハイドライド電解合成法」は、JXTGエネルギー横浜国立大学・光島重徳教授、デノラ・ペルメレック(電極の総合メーカー)、旭化成などが共同開発した。


将来的には
メチルシクロヘキサン製造に関わる設備費を約50%低減することが可能となるとしている。

注:これは水の電気分解で発生させた水素をメチルシクロヘキサンにして輸送する場合との比較である。

上記のブルネイのLNGからの水素との比較では、【LNGコスト+ LNG改質+水素タンク+トルエンの水素化】との比較となる。

米上院は3月13日、イエメン内戦に介入するサウジアラビアへの軍事支援を停止するよう求める決議案を賛成多数で可決した。


A joint resolution to direct the removal of United States Armed Forces from hostilities in the Republic of Yemen that have not been authorized by Congress.

2020年の大統領選出馬を表明した Sanders 議員ら民主党上院議員が主導したもの。

2018年10月の記者殺害事件後もサウジへの協力姿勢を崩していないトランプ大統領をけん制するもので、与党の共和党指導部は決議案に反対するよう求めていたが、同党から7人が造反し賛成に回った。

共和党 民主党 民主系
無所属
合計
賛成 7 45 2 54
反対 46 46
合計 53 45 2 100
1973年の戦争権限法に基づき、サウジ主導連合軍による空爆への支援を含め、米軍が議会の承認を経ずにイエメン内戦に関与することを停止するよう求めている。
米国の戦争権限法は、大統領の戦争宣言などを経ずに米軍が外国での「敵対行為」に携わる場合に、上下両院で決議案を可決すると敵対行為を停止できると規定している。


米軍はイエメン内戦に介入するサウジやアラブ首長国連邦(UAE)の連合軍を支援してきた。連合軍の空爆で多数の民間人が犠牲になっており、米議会の反発を招いている。

決議案の提案者である共和党のMike Lee上院議員は、「われわれは疑問の余地なく戦争といえる状況で外国の勢力が敵対者を爆撃するのを支援している」と述べた。

米空軍はサウジ空軍への空中給油支援をすでに停止し、現在は主に情報提供などの分野に限って協力している。このため、ホワイトハウスは、戦争権限法の対象範囲ではないなどと主張 する。

ーーー

本件では、上院は2018年12月に決議案を可決したが、当時は下院の多数派だった共和党が下院での採決を阻止したため頓挫し た

上院は本年1月末に再度、決議案を提出した。
民主党が多数派となった下院も、上院案を修正したうえで本年2月13日に決議案を248対177の賛成多数で可決した。230人の野党・民主党議員に加え、与党・共和党からも18人が賛成に回った。

今回 可決された上院決議案は下院に送られるが、可決されるとみられる。

ホワイトハウスは2月の下院の議決時に、トランプ大統領は拒否権を行使する方針だと明らかにしている。

トランプ大統領は3月15日、国家非常事態宣言を巡り議会が可決した同宣言を無効とする決議案に拒否権を発動したが、これに次ぐ2件目となる。

農業用ドローンのナイルワークスは3月14日、総額約16億円の第三者割当増資を実施したと発表した。

同社は2017年10月に総額8億円の第三者割当増資を実施しており、創業以来の累計資金調達額は、約24億円となる。

ナイルワークスは、2015年1月に資本金4億8,770万円で設立された。事業内容は下記の通り。

・農薬散布用ドローン(マルチコプター)の企画製造販売
・生育管理用ドローン(マルチコプター)の企画製造販売
・その他、農薬用ドローン(マルチコプター)の企画製造販売

世界初のセンチメートル精度でドローンを完全自動飛行する技術開発に成功しており、本技術を搭載したドローンを作物上空3050cmの至近距離を飛行させることにより、薬剤の飛散量を大幅に抑えるだけでなく、作物の生育状態を1株ごとにリアルタイムで診断し、その診断結果に基づいて最適量の肥料・農薬を散布する技術に取り組んでいる。

同社のホームページから:

特長 1 完全自動飛行。特別なスキルは不要!

事前に圃場の形を測量し、タブレットに登録するだけで、飛行経路が自動で設定されます。
散布時は、操作タブレットの「開始ボタン」を押すだけで、離陸・散布・着陸までを全て自動で行います。
12種類のセンサーによる位置制御で、±2㎝の水平位置精度と±5㎝の高度精度の自動飛行を実現しています。


特長 2 圃場全体を均質散布!

上下2枚のプロペラを逆回転させて作る真っ直ぐな気流と、作物上空30~50㎝の超低空飛行により、薬剤を作物の株元まで付着させます。
薬剤特質にあわせ、飛行の高さや散布幅が自動設定され、均質に散布できます。


特長 3 生育診断サービス!

搭載した生育調査用カメラで、高度30~50㎝の至近距離から、圃場データを取得し稲の生育状態の調査を開始しました。
一株単位でのより確度の高い収量予測や、精度の高い可変施肥、除草剤や殺菌剤のピンポイント散布の実用化に向けて、準備しています。


2018年夏には、全国各地で75回におよぶ実証実験で農作業の省力化を検証し、地域や水稲の品種ごとの生育データをもとに、診断技術の精緻化を行った。

また、VAIO ㈱(Sonyのパソコン事業 を買収した日本産業パートナーズが設立)を委託先とした量産化体制を住友商事と共に構築し、量産化モデル第一弾である新型機「Nile-T19」を、2019年6月より販売開始する。


三者割当の相手は下記の通り。

1回目(2017/10) 8億円 今回 約16億円
産業革新機構
住友化学
住友商事
クミアイ化学工業
全国農業協同組合連合会
農林中央金庫
INCJ(産業革新機構から新設分割)
住友化学
住友商事
クミアイ化学工業


未来創生 2号ファンド
Drone Fund 2号


未来創生2号ファンド はスパークス・グループが設立したもので、トヨタ自動車と三井住友銀行が1号ファンドに続き、当初の出資者として参画した。
1号ファンドの投資対象領域である「知能化技術」、「ロボティクス」、「水素社会実現に資する技術」の3分野に加え、2号ファンドでは新たに「電動化」「新素材」を加えた5分野で世界の未公開ベンチャー企業を投資対象とする。

Drone Fundは、リクルート出身の投資家 千葉功太郎氏がドローン前提社会とエアモビリティ社会の実現を目指し、2017年6月に設立した。

米上院は3月14日、トランプ大統領が「国境の壁」建設のために出した非常事態宣言を阻止する決議案を可決した。野党・民主党のほか、与党・共和党からも Romney 議員ら 12人の造反が出た。

共和党 民主党 民主系
無所属
合計
賛成 12 45 2 59
反対 41 41
合計 53 45 2 100


米下院は既に2月26日、国家非常事態宣言を無効にする決議案を245対182の賛成多数で可決している。政権を支える共和党からも13人が賛成した。

  米下院は 1議席が未確定

  共和党 民主党 合計
賛成 13 232 245
反対 182 0 182
棄権 2 3 5
欠席 2   2
合計 199 235 434


2019/2/27 米債務上限引き上げ、見送りか 下院は国家非常事態宣言の無効化の決議

トランプ大統領は同日のツイッターで、就任後初となる拒否権を発動すると表明した。

VETO!

I look forward to VETOING the just passed Democrat inspired Resolution which would OPEN BORDERS while increasing Crime, Drugs, and Trafficking in our Country.
I thank all of the Strong Republicans who voted to support Border Security and our desperately needed WALL!

大統領の拒否権を議会が覆すためには上下両院それぞれの3分の2の同意が必要で、現状では、拒否権を覆すのは困難との見方が大勢だ。

下院の2/3 は290で、共和党から50名の造反が必要。

上院の2/3は 67で、共和党から20名の造反が必要。

民主党との対立が一段と激しくなるほか、共和党との協力にもきしみが生じる可能性がある。


付記

トランプ大統領は3月15日、国家非常事態宣言を巡り議会が可決した同宣言を無効とする決議案に拒否権を発動した。

「前日議会が危険な決議案を可決し、仮に成立すれば無数の米国人を非常に重大な危険にさらすことになる」と指摘し、「議会が本決議案を可決するのは自由だが、私には拒否権を発動する務めがある」と述べた。

下院のペロシ議長は、トランプ氏の拒否権発動を覆すかを巡り、3月26日に採決を行うと明らかにした。


英下院は3月14日、前々日の「離脱合意案」の否決、前日の「合意なき離脱拒否」の可決(「合意なき離脱」の否決)を受け、最後の「離脱延期」の採決を行った。

英政府の議案は、次の通り。

英議会が3月20日(EU首脳会議の前日)までに英国とEUがまとめた離脱案を承認した場合、6月30日での一時的延長をEUに申し出る。この期間を離脱案を具体化する関連法案成立の作業に充てる。

3月20日までに承認が得られない場合は、「EU側から延期の明確な理由や期間が求められる。また、延期期間が6月30日を越える場合は、5月に行われる欧州議会選挙に英国が参加を求められる。」

ーーー

トゥスクEU大統領(常任議長)の報道官は、英政府から離脱延期の要請があればEUは検討するが、「離脱延期とその期間には信頼できる理由」が必要だと語った。

欧州議会選挙は5月23日~26日に行われる。新たな欧州議会が開会する7月2日以降も英国がEUにとどまる場合、英国は欧州議会選挙を実施する必要がある。

メイ首相は3月13日の採決後に、「数日以内に議会で打開策を見いだせなければ、延期期間は長期になるだろう」と述べた。

下院は、英議会が3月20日(EU首脳会議の前日)までに英国とEUがまとめた離脱案を承認した場合、6月30日での一時的延長をEUに申し出る との首相の提案を賛成413、反対202で可決した。

政府は「3月20日までにEU離脱協定が議会承認されれば、6月30日までの延期を求める」とした上で、「20日までに議会承認されなければ、より長い延期を求めることになる」としている。この場合、欧州議会選挙を実施することとなる。

メイ首相は来週、これまで2度否決されているEU離脱協定を改めて採決にかけ、引き続き協定の議会承認を模索する。

ただ合意案承認は見通せず、歴史的なEU離脱を巡る英国内の混乱や不透明な情勢は続く。

投票結果は下記の通り。(速報分を修正)

担当閣僚であるバークレイ離脱担当相やフォックス国際貿易相、ウィリアムソン国防相ら閣僚の多くも反対票を入れたほか、保守党内の最高幹部レッドソム下院院内総務(閣僚級)も反対した。

議員 議長他
不投票
投票権者 賛成 反対 棄権
保守党 314 2 312 112 188 12
民主統一党 10   10 10
(与党) (324)   (322) (112) (198) (12)
労働党 245 2 243 236 3 4
スコットランド国民党 35   35 35
自由民主党 11   11 11
独立党 11   11 5 1 5
独立グループ 11 11 9 2
シン・フェイン党 7 7 7
プライド・カムリ 4   4 4
緑の党 1   1 1
合計(欠員 1) 649 4 645 413 202 30



付記  今後の可能性は次の通り。


課徴金減免制度(リーニエンシー)を見直す独占禁止法改正案が3月12日、閣議決定された。

付記

改正独占禁止法が6月19日、参院本会議で全会一致で可決、成立した。公布後1年半以内に施行する。

公取委は、「改正案は現行制度の弱点をカバーし、カルテルなどの調査に役立つ武器となる」としている。

現状の課徴金制度は一律かつ画一的に算定・賦課するものである。このため、事業者の協力度合いにかかわらず、減産率は一律であり、また、違反行為の実態に応じて適せな課徴金を課すことができないという問題がある。
「先着順で減免率が決まった後、企業側が積極的に調査に協力する動機が弱まる。都合が悪い事実関係を否認するケースは少なくない」との声がある。

改正では、調査の協力するインセンティブを高める仕組みを導入する。また、複雑化する経済環境に応じて適切な課徴金を課せるようにする。(「裁量型課徴金」)

現行の課徴金制度は下記の通り。

改正点は下記の通り。

1) 算定基礎

最長3年→10年 (調査開始の10年前まで遡れる)
除斥期間 5年→7年 (カルテルを止めてから7年間は課徴金を課せられる)
その他

2) 算定率

3) 減免制度

現行 改正
調査開始 申請順 減免率 減免率 協力度合い減免率
1位 全額免除 全額免除
2位 50% 20% + 最大40% 協力内容や減免率は業者と公取委が協議決定
3~5位 30% 10%
6位以下
(上限なし)
5%
最大3社* 30% 10% + 最大20%
上記以下 5%

*調査開始前と合わせ5位以内の場合に適用(調査開始前が5社なら、開始後はゼロ)

申請1位の全額免除は変わらないが、その他については(調査開始前であれば)協力度合いによっては申請順が遅くても大きな減免を受ける可能性がある。

申請後、事業者は協力内容を提示し、公取委はその場合の協力度合い減免率を提示する。合意すれば決定。

但し、減額を認定する具体的な基準が示されておらず、運用面での課題は残る。


一方、規制強化の「アメ」として、外部弁護士と相談した内容を保秘できる「秘匿特権制度」が導入される。

これまで独禁法に基づく立ち入り調査を受けた企業は、公取委に押収される懸念から弁護士との相談内容を書面化しにくかったが、書面でやりとりしやすくなり、弁護士と意思疎通を図れるメリットがある。

秘匿特権は欧米では広く導入されており、海外の弁護士から日本は遅れていると指摘されてきた。 なお、今回の秘匿特権は、適用の対象をカルテルなど「不当な取引制限」に限定している。

英国の下院は3月12日夜、英政府がEUとの間で前日にまとめた離脱条件の協定の承認採決を行い、大差でこれを否決した。

次は、「合意なき離脱」 をするかどうかである。

「合意なき離脱」の場合、ロイターによると下記の事態が起こる。

① 英国経済

イングランド銀行総裁は、英国経済に対し、1970年代の石油危機に匹敵する「大きなマイナスのショック」を与えると警鐘を鳴らした。

国際通貨基金(IMF)では、合意なきブレグジットによって英国経済はマイナス成長に陥ると予測している。

英国に進出してる外国企業の撤退、EUへの移転が進むと予想される。

② 貿易

英国の輸出企業はEUの輸入関税に直面する。関税率は平均5%だが、自動車に10%が課せられる。

製造企業は、通関手続の遅れによって自らの「ジャストインタイム」製造方式に支障が出ることを危惧している。

ーーー

英国はどの国ともFTAを締結していないため、関税が世界貿易機関(WTO)ルールに準拠して発生する。通関手続きも復活する。

英政府は3月13日、合意なき離脱となった場合、輸入関税を引き下げると発表した。

金額ベースで英国への輸入品の87%に相当する商品が無関税となる。現在は80%が無関税。

EUからの輸入品は現在は100%が無関税だが、82%が無関税となる。
EU以外からの輸入品は現在は56%が無関税だが、92%が無関税となる。

これは、英国の輸入関税の話であり、輸出先はこれと無関係に、(従来のEUメンバーとしての関税ではなく)WTOルールで関税をかける。
輸出産業は被害を受けることとなる。

英国の生産者を保護するための措置も継続する。自動車メーカー、牛肉、ラム肉、豚肉、鶏肉、酪農製品の生産者などが対象となる。

③ 港湾、企業倒産、備蓄

最初に影響が出る可能性が高いのは、港湾と空港で、英政府は、イングランド南部の自動車専用道路2本と空港1カ所を、必要に応じて大型トラック駐車場に転用する計画を立てている。

部品・原材料等の通関手続が10─30分遅延することによって倒産する懸念を抱いている英国企業は、全体の10分の1に及ぶとの試算がある。

英国政府は製薬企業に対し、薬剤の備蓄を通常より6週間分積み増しするよう要請している。

英ポンド

恐らくポンドは下落する。


合意なき離脱となった場合、アイルランドとの国境の管理をどうするかが大きな問題である。厳格な国境管理が復活すれば、北アイルランド紛争の再発の懸念がある。

英政府は3月13日、合意なき離脱となった場合、アイルランドと北アイルランドの厳格な国境管理を回避すると表明した。

合意なき離脱となった場合、アイルランドから北アイルランドへの商品の輸入について新たな検査や管理を導入しない。企業の自己申告に頼り、国境を越えた取引を記録するためアプリベースのシステムを活用するという。新たな輸入関税制度は適用しない。

この計画は一時的かつ一方向のもので、長期的な対策については、EU・アイルランド政府と早急に協議を開始するとしている。

EUがこの案を受け入れるかどうかは不明。
Backstopでは、EUはEU制限物資が他から入るのを防ぐため、北アイルランドのみにEU規制を残すことを求めている。

ーーー

下院は3月13日夜、「合意なき離脱」の採決を行った。

首相の当初の採決案は、3月29日の合意なき離脱を拒否するというものであったが、議員の修正案は「3月29日の」を除外し、「合意なき離脱を拒否」というものである。

下院はこれを321対278で可決した。今回の議決は、政府の決定に対して法的拘束力は持たない。

議員 議長他
不投票
投票権者 賛成 反対 棄権
保守党 315 2 313 17 265 31
民主統一党 10   10 10
(与党) (325)   (323) (17) (275) (31)
労働党 245 2 243 235 2 6
スコットランド国民党 35   35 35
自由民主党 11   11 11
独立党 10   10 7 1 2
独立グループ 11 11 11
シン・フェイン党 7 7 7
プライド・カムリ 4   4 4
緑の党 1   1 1
合計(欠員 1) 649 4 645 321 278 46

次にもう一つの議員提案を採決した。Brexitを5月22日まで延期し、それまでに合意がなければ離脱するというもの。

下院はこれを否決した。

議員 議長他
不投票
投票権者 賛成 反対 棄権
保守党 315 2 313 149 66 98
民主統一党 10   10 10
(与党) (325)   (323) (159) (66) (98)
労働党 245 2 243 4 238 1
スコットランド国民党 35   35 35
自由民主党 11   11 11
独立党 10   10 1 8 1
独立グループ 11 11 11
シン・フェイン党 7 7 7
プライド・カムリ 4   4 4
緑の党 1   1 1
合計(欠員 1) 649 4 645 164 374 107



次は、「離脱延期」の採決となる。

EU残留派は今回の「合意なき離脱を拒否 」の可決を受け、2度目の国民投票の要求を強めており、23日には再投票を求める大規模なデモも予定する。


ノルウェー財務省は3月8日、世界最大の政府系ファンドであるノルウェー政府年金基金(Government Pension Fund Global ) が、石油・ガス関連株の一部を投資先から外すと発表した。

原油価格の下落による政府資金の長期の運用リスクを抑える。

FTSE Russell (ロンドンに拠点を置き、株価指数の算出・管理や関連する金融データの提供サービスを行う)が "Exploration and Production" と分類する企業を投資対象から除外する。
BPやShellのように"Integrated oil company "と分類される企業は除外されない。

エネルギー関連株は341銘柄 370億ドルを持つが、売却対象は134銘柄 80億ドルで、基金の合計の0.8%だけ。

基金が所有する株式で投資対象外となる企業は別紙の通り。

日本企業では下記6社が含まれている。
富士石油、出光興産、Inpex(国際石油開発帝石)、三愛石油、東亜石油、K&Oエネルギーグループ(
関東天然瓦斯開発と大多喜ガス が2014年に統合)

圧倒的に米国企業が多い。

売却は時間をかけて行い、中央銀行と協議して計画をたてる。

同基金はノルウェー政府が北海油田から得る収入を元に、世界の株式や債券、不動産などに分散投資しており、2018年末時点の運用残高は8兆2560億クローネ(約9000億米ドル)。  

運用を担う Norges Bank (中央銀行)は2017年11月、資源相場の変動によるリスクが比較的高いとして、石油・ガス株の投資除外を提言した。

財務省は、今回の決定は石油価格や、石油産業の将来の採算性や持続可能性についての特定の見方を反映するものでなく、政府の現在の石油政策は変えていないとしている。
「石油産業は今後も長年にわたりノルウェーの重要で主要な産業である」としている。

今回の決定は気候変動リスクに対処するねらいもある。再生可能エネルギーの成長性に注目し、川下や再生エネまで幅広く手掛ける総合企業は残す。

英国の下院は3月12日夜、英政府がEUとの間で前日にまとめた離脱条件(後記)の協定の承認採決を行い、賛成 242、反対 391の大差でこれを否決した。与党保守党から75名が反対にまわり、閣外与党のアイルランド民主統一党も反対に廻った。

採決に先立ち首相は、「国民投票のように、賛否双方の合法的な視点はどちらも強固で平等なもの。そのため、下院では党議拘束を行わないことを確認する」と述べていた。

  議員 議長他
不投票
投票権者 賛成 反対 棄権
当初   現在
保守党 318

離脱 -4

314 2 312 235 75 2
民主統一党 10   10   10 10 -
(与党) (328)   (325)   (322) (235) (85) (2)
労働党 256

死亡 -1
離脱 -7-1-2

245 2 243 3 238 2
スコットランド国民党 35   35   35 35 -
自由民主党 11   11   11 11 -
独立党 8 離脱者 3 11   11 4 6 1
独立グループ 離脱者 11 11 11 11
シン・フェイン党 7   7 7 7
プライド・カムリ 4   4   4 4 -
緑の党 1   1   1 1 -
合計 650  -1 649 4 645 242 391 12


1月15日に賛成 202、反対 432(うち保守党 118、民主統一党 10) の大差で否決されたのに続く2度目の否決。

2019/1/16 英下院、ブレグジット協定を歴史的大差で否決

英議会下院は2月27日夜、3月12日までに英と欧州連合(EU)の合意内容が議会で承認されなかった場合、「合意なき離脱」や「短期間の離脱延期」の賛否を議会に問う方針を賛成多数で可決した。

今回の離脱合意案否決を受け、13日に「合意なき離脱」の採決を行い、これが否決された場合は「6月末までの離脱延期」の採決を行う。


ーーー

英国のメイ首相と欧州連合(EU)のユンケル欧州委員長は3月11日夜、仏東部ストラスブールで会談し、離脱協議の懸案だったアイルランド国境問題の見直しに向けた2つの共同文書で合意した。

英国とEUが2018年11月にまとめた離脱案では厳格なアイルランド国境管理の復活を防ぐための「安全策」 (Backstop) として、国境管理の回避策が見つかるまで英国全土を関税同盟に残す規定を盛り込んだ。

2018/11/19 英内閣、Brexit合意案を承認

だが英議会が「永久にEUルールに縛られ続ける」と猛反発し、離脱案は1月に大差で否決されていた。

今回、英国がEUのルールに縛られ続けないとする条項を1月に英議会が否決した離脱案に追加し、法的拘束力を持たせたのが特徴である。

第一の文書は Joint legally binding instrument で、EUが英国を永続的に安全策に拘束し続けるのではないとの方針を確認するとともに、双方で安全策を巡り争いが生じた場合、独立した第三者の仲裁機関で処理するとした。

第二はJoint Statementで、北アイルランとアイルランドの国境管理を回避する策を見つけるよう、英国とEUが努力するとした。

ただし、これは実質的に従来案とほとんど変わらない。

北アイルランとアイルランドの国境管理を回避する案は時間をかけても出てくるとは思えない。

EUのバルニエ首席交渉官は3月8日、英側に追加提案したことを明らかにしたが、英側の要求には程遠いものであった。

アイルランド問題の「安全策」をめぐり、EU関税同盟から「一方的に出て行く選択肢を英国に提供することを約束する」と明言したが、その一方で、アイルランドの国境管理の復活を避けるための「安全策」の他の要素は維持されなければならないとも強調し、英国が関税同盟を出て行く場合も、英領北アイルランドだけはEU関税同盟に残していくことを求めた。

北アイルランド紛争の再発を避けため、双方の行き来を自由にしたうえで英国がEUを離脱しようとすれば、北アイルランドを英本土から切り離すしか方法は考え難い。

なお、ユンケル委員長は、EU離脱を延期する場合も、延期は5月23日(欧州議会選挙日)までだと決めつけた。

欧州議会は新議会(2019~2024年)の開会初日時点の全加盟国から直接選ばれた議員で構成することが法的に義務付けられており、今回は7月2日がその日に当たる。
欧州議会選挙は5月23日~26日に行われる。

新たな欧州議会が開会する7月2日以降も英国がEUにとどまる場合、英国は欧州議会選挙を実施する必要がある。


離脱延期の可能性が強いが、離脱を延期しても結局は問題を数カ月先延ばしにしただけに終わる可能性が強い。

トゥスクEU大統領(常任議長)の報道官は、英議会採決の結果、合意なき離脱のリスクが増大したと発言、英政府から離脱延期の要請があればEUは検討するが、「離脱延期とその期間には信頼できる理由」が必要だと語った。

 

経団連の中西宏明会長(日立製作所会長)が昨年末の報道各社とのインタビューで、今後の原発政策について次のように述べたとされる。(2019/1/5 東京新聞)

東日本大震災から8年がたとうとしているが、東日本の原発は再稼働していない。

国民が反対するものはつくれない。全員が反対するものをエネルギー業者や日立といったベンダーが無理につくることは民主国家ではない。

真剣に一般公開の討論をするべきだと思う。

不思議なことに、中西会長のこの発言を一部メディアは取り上げたが、東京新聞以外は大手新聞、テレビは全く取り上げていない。

中西会長は1月15日の記者会見で一転して次のように述べた。

原発の再稼働が進まないことも直近の課題であり、積極的に推進するべきである。

安全性の議論が尽くされていても、地元の理解が得られない状況に立ち至っている。
その説得は電力会社だけでできるものではなく、広く議論することが必要になっている。それにもかかわらず、原子力について真正面からの議論が足りていない。

再生可能エネルギーだけで賄うことは到底不可能である。原子力技術を人類のために有効に使うべきである。

日刊ゲンダイは、安倍官邸から怒られたのではないか、という見方が流れていると報じ た。

2019/1/23 原発問題についての中西経団連会長発言 

ーーー

中西会長はその後、「原子力に関する議論が不足している」などと繰り返し発言してきた。

これを受け、小泉純一郎元首相が顧問を務める民間団体「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」が2月14日、経団連に対し、原発問題に関する公開討論会の共催を呼びかけた。

小泉元首相は2017年4月14日、細川元首相とともに「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」(原自連)を発足させた。

2018/2/16 小泉元首相の原発反対運動 

推進連盟の吉原毅会長(城南信用金庫顧問)によると、小泉氏は討論会について「素晴らしい。実現すれば私も出る」と前向きという。

しかし、経団連は2月18日、これを拒否した。「反原発を通す団体で議論にならない。水と油だ」とした上で、今春、エネルギー政策に関する提言をまとめることを優先する考えを強調した。

これについて中西会長は3月11日、「エモーショナルな反対をする人たちと議論をしても意味がない。絶対いやだという方を説得する力はない」と語り、改めて議論を拒む姿勢を示した。

原発について、「再生エネルギーだけで日本の産業競争力を高めることができればいいが、技術開発が失敗したらどうするのか。いろんな手を打つのがリーダーの役目だ」と指摘。「多様なエネルギー源を確保しなければ日本は立ちゆかなくなる。福島の事故から何年たとうが変わらない」と話し、電力業界への積極的な投資を呼びかけた。


中西会長は2月14日、中部電力浜岡原発を視察した。中西会長は「万全な対策という印象を受けた。早く再稼働したいと正直そう思う」と述べた。

さらに「原子力エネルギー抜きに、今の気候変動に対応できない。長期的に考えても、着実なエネルギー源はない」と指摘。「核エネルギーを利用しないで、人類は繁栄できないというのが私の信念だ」と述べた。

「原発の再稼働への理解が深まっていないようだが」との記者団からの問いかけに、「原発と原子力爆弾が頭の中で結び付いている人に(両者は)違うのだと分離するのは難しい」と述べた。

これについて、御前崎市の柳沢市長は2月18日、「地元住民は原発と原爆の違いを十分、分かっている。適切ではない」と述べた。原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟の木村事務局次長は「原発も原爆も危険なことには変わりはない。住民は勘違いしていない」と批判している。

中西会長は2月25日、「表現として不適切だった」とで訂正した。「ちょっと失礼だった」と反省の弁も口にした。


中西会長は、「
地元の理解が得られない状況に立ち至っている。その説得は電力会社だけでできるものではなく、広く議論することが必要になっている。それにもかかわらず、原子力について真正面からの議論が足りていない 」と述べた。反原発を主張する団体との議論を拒否していては、いつまでも地元の理解は得られないだろう。


EUがGoogleなどIT分野の巨大企業を主な対象とする digital taxの合意を見送る見通しとなった。

3月末までに加盟国でつくる閣僚理事会での合意を目指していたが、足並みがそろわなかった。

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欧州委員会は昨年3月21日、デジタル分野における課税に関する指令案を発表した。

近年のデジタル経済の拡大は、EUの経済成長に大きく貢献したものの、関連企業の実効税率は、従来分野の企業の約半分程度だと指摘し、これらの企業の多くが多国籍企業であることや、EU域内に実体的な拠点を必要としないことによって、現行の税制で捕捉できないことが原因だとして、公平な税負担を実現する必要があると強調した。

アイルランドのApple子会社は欧州 (及び中東、アフリカ、インド)での販売利益を全てアイルランドに集めている。


EUは2016年8月30日、アイルランドが米国のAppleに対して税を優遇していたのは、EUの法律が禁止している不当な補助にあたるとして、最大で130億ユーロ(プラス金利)の追徴課税を行うよう命じた。

アイルランド政府は2018年9月18日、Appleが追徴課税131億ユーロに利息12億ユーロを加えた総額143億ユーロを払ったと発表した。但し、アイルランド政府はEU司法裁判所への不服申し立てを継続する考えを示しており、「仮払い」として受け取り、第三者が開いた「エスクロー勘定」で管理する。

2016/9/1  EU、アイルランド政府にApple への130億ユーロの追徴を命令

さらに、一部の加盟国が現段階で捕捉されていないデジタル分野での課税を検討し始めたことに対し、域内における制度の乱立を避け、デジタル経済の成長を妨げない公正かつ持続可能な課税に向けて、域内で統一的なアプローチを取る必要があるとの認識を示した。

域内に実体的な拠点がなく、インターネットを通じてサービスを提供する場合も企業の収益に対する課税を可能にする法案と、一部企業のデジタル分野での収益に対する暫定的な課税措置から成る。

1つ目は、実体的な拠点が存在しない場合も、次の条件のいずれかを満たす場合は、企業が域内に「有意なデジタルの存在」を有していると見なし、加盟国が国内で発生した利益を課税できるようにする。

  • ある加盟国でデジタルサービスから得られる年間の収益が700万ユーロを超えた場合
  • ある加盟国でデジタルサービスの利用者が年間10万人を超えた場合
  • 企業が他の事業者と年間3,000件を超えるデジタルサービスの契約を締結した場合

2つ目の提案は、現在捕捉されていないデジタル分野の収益に加盟国がすぐに課税できるように、暫定的な税(interim tax)を導入するもの。課税額は売上高をベースに算出される。

全世界での売上高が7億5千万ユーロ以上、かつEU域内の売上高が5千万ユーロ以上の企業のみをこの課税の対象とする。

課税対象の例:

  • ウェブ上の宣伝スペースの販売から得られる収益
  • ユーザー間の相互作用を可能とし、商品の販売やサービス提供を促進する、ウェブ上の仲介業務から得られる収益
  • ユーザーが提供した情報から生成されたデータの販売による収益

徴税はユーザーが所在する加盟国が行う。

現段階の税率は3%を想定しており、年間50億ユーロの税収増が見込まれるとしている。

この発表に合わせ、フランスとドイツ、イタリア、スペイン、英国の加盟5カ国は共同声明を発表した。

G20やOECDで合意が存在しない中では、EUレベルでの取り組みが必要だ。欧州委の提案を歓迎。これを契機にG20やOECDでの議論が活発化することに期待。

ムニューシン米財務長官は2018年3月16日、IT企業を対象にした課税強化策について「デジタル企業のみを対象にする提案は、どこの国からの提案であっても断固反対する」との声明を発表した。

「デジタル企業は米国の雇用創出や経済成長に大きく貢献している。新たに余分な税負担を課すことは成長を妨げ、最終的に労働者や消費者の損害となる」と強調した。

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その後、EUでは暫定的な税の適用について、議論を進めてきたが、税制の変更には全会一致の承認が必要となる。

EUのデジタル課税案には、低税率で米IT大手などを誘致してきたアイルランドなどが導入に猛反発し、また米国からの「報復」を警戒するドイツなども、国際的な課税ルール見直しの議論を見極めるべきだと早期導入に慎重な姿勢を崩さず、調整が難航した。

このため、2018年12月には推進派の仏がドイツと連携し、課税対象を絞る妥協案を提示した。

新提案では税率は3%を維持する一方で、課税の対象を広告の売り上げに絞り、データの売り上げなどは除外する。
2021年までに国際的な解決策が得られなかった場合にのみ発効する。

合意の時期も2018年末から2019年3月末まで先延ばしして決着を呼び掛けた。

しかし、アイルランド、スウェーデン、デンマーク、フィンランドが反対した。

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合意が困難となったことでフランスは単独での課税にカジを切り、3月6日に関連法案を閣議決定した。

世界で7億5千万ユーロ、仏国内で2500万ユーロ以上の売上高を持つIT企業を対象にネット上のビジネスの売上高に3%を課税する。

ネット上の広告、個人情報の売買、仲介の3つに対して2019年1月に遡及して課税する。

Google 等の検索大手のほか、Amazon などプラットフォーム提供企業も含む見通しで、仏経財省によると、30社あまりが対象となり、4億ユーロ程度の税収を見込む。

ルメール経済・財務相は同日、「欧州には21世紀の税制を定義する勇気がなかった。残念だ」と述べた。

反政権運動「黄色いベスト」のデモを収めるために打ち出した生活支援策で約100億ユーロの政府負担が発生するなか、税収を少しでも増やす狙いもある。

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英国のハモンド財務相は2018年10月29日、大手IT企業を対象とする新たなデジタル税制を2020年4月から導入すると公表した。

IT企業が英国のユーザーから稼いだ収入に2%の税率を課す。

世界の売上高が年間5億ポンド(約720億円)以上の事業部門が新税の対象になる。新税導入により年4億ポンド(約570億円)の税収を確保する。

ハモンド財務相は「オンラインでの買い物への新税ではなく、もうけのある企業に税を払ってもらう」と強調 した。英財務省関係者は「ベンチャーや起業家への投資を妨げる目的ではない。そのために対象企業の売上高に下限を設けた」と説明した。

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スペイン政府は2019年1月18日、大手IT企業のデジタル事業売上高に3%課税する法案を承認した。年間12億ユーロの税収を見込む。

年間売上高が世界で7億ユーロ超、スペインで300万ユーロ以上の企業が対象。

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経済協力開発機構(OECD)は2019年2月13日、IT大手へのデジタル課税などについて、論点を整理した文書を公表した。

2019年6月に福岡で開く20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で議論を報告する。議長国である日本には、合意に向けた調整役としての役割が求められる。

概要:

課題1.恒久的施設(PE)を持つことを前提にした現在の税制では、拠点を持たずに活動できるIT大手に課税しにくくなっていること

対策案 新たに基準を設け、物理的拠点がなくても課税できるようにする。

1. 検索エンジンなど電子ビジネスへの「ユーザーの参加」に応じ、そこで得られた利益に対する課税権を配分する。
  利用者(量)が多い国ほど多くの税金を課すことができる仕組みで、英国が提案している。

2. 顧客基盤などの無形資産(「マーケティング無形資産」)に応じて課税権を配分する米国案

3. 一定の売上高や従業員がいる国を「重要な経済拠点」と認定し、PEの概念を広げて課税を強化。インドなど新興国が支持

課題2. 税率の低い国に拠点を集めることで、税金逃れをすることへの対策

対策案 法人税率の最低水準を設ける。

高税率の国にある親会社が、水準を下回る低税率の国の子会社に利益を移した場合、高税率の国が子会社の所得を親会社に合算して課税できる仕組みなど


欧州中央銀行(ECB)は3月7日の理事会で年内の利上げ断念を決めた。

これまで金融政策の先行き指針として、現在0%の主要政策金利などの水準を「少なくとも2019年夏まで」維持するとしていた が、今回、「少なくとも年末まで」と表現を変え、利上げは早くても2020年以降と明確にした。

ドラギ総裁は、「景気減速が物価の回復を遅らせている」とし、金融緩和を続けて景気を下支えする。
記者会見で「われわれは、脆弱性が継続し、不確実性がまん延する時期にいる」と指摘し、保護主義、Brexitの先行き不透明性のほか、新興国市場の脆弱性などの外部要因について言及した。

同日公表したユーロ圏の新しい経済見通しでは2019年の成長率を前回(2018年12月)の1.7%から1.1%、消費者物価上昇率を1.6%から1.2%にそれぞれ下方修正した。

ユーロ圏のCPIは量的緩和終了を判断した直前の2018年10月は前年比+2.3%であったが、その後低下している。

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欧州中央銀行(ECB)は2018年12月13日、量的緩和策を12月末で終了することを決めた。ユーロ圏の景気が回復を続け、物価上昇も進んでいるためで、既に利上げ局面に入っている米国に続き金融政策の正常化へかじを切った。

量的緩和で購入した資産は計2兆6000億ユーロ。2019年から新規購入はやめるが、満期を迎える保有債券の償還金は再投資に振り向ける。再投資は「長期間続ける」としている。

2018/9/22 欧州中銀、債券買い入れを年末で終了の付記

ECBは昨年末に量的緩和政策を終了したが、早くも緩和縮小路線の修正を迫られた。

米連邦準備理事会(FRB)も1月30日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で金融政策の現状維持を決め、追加利上げを見送った。声明文には「政策金利の調整を様子見する」と盛り込み、2019年中に2回を見込んでいた追加利上げを棚上げする考えを示した。

2019/2/2 米連邦準備理事会(FRB)、追加利上げを見送り

世界の主要中銀が景気減速への警戒で足並みをそろえつつある。

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ECBは同日、貸し渋りの抑制に向け銀行への新たな資金供給策の導入も決めた。

2019年9月に新たな資金供給制度(TLTRO3)を開始する。

TLTRO (Targeted Long Term Refinance Operation)とは、ECBが貸出実績に応じて銀行に直接資金を供給するもの。低水準の固定金利で資金を貸し出す。

ECBは、インターバンク市場の機能不全とイタリアスペインへの債務危機の飛び火が懸念された2011年末に3年物LTRO (Term Refinance Operation) を実施したが、2回総額で1兆ユーロ超巨額の資金を供給した。

2013年に前倒し償還が始まったこともあり、2014年9月に新たに1回目のTLTROTLTRO1)、2016年に2回目のTLTRO(TLTRO2)を実施しており、今回がTLTROとしては 3回目(TLTRO3)となる。2016年のTLTRO2では7200億ユーロを銀行に貸し出した。2020年6月以降に4年の満期を迎えるため、イタリアなどの銀行の資金繰りに不安が生じないようにする狙いもある。

今回は2021年3月までの期間限定で償還期限2年の低利資金を銀行に供給する。金利は満期までリファイナンスオペの最低応札金利に連動する。

米商務省は3月4日、レアメタルのチタンの中間製品スポンジチタンについて、通商拡大法232条に基づく調査を始めると発表した。米国メーカーのTitanium Metals Corpが2018年9月に要請したもの。

米国の唯一のメーカーのTitanium Metals Corporation(通称は商標でもあるTIMET )は1950年設立のチタンメーカーで、ネバダ州Hendersonでスポンジチタンを生産している。
2012年11月にWarren BuffettのBerkshire Hathaway Incが保有する Precision Castparts Corp. に買収された。

輸入増が安全保障上の脅威になっていないか判断し、必要であれば追加関税の発動などを検討する。

Ross長官は、「スポンジチタンは、ヘリコプターのローター、戦車の装甲、戦闘機の機体やエンジンなど防衛で広く使われている。完全でフェアで透明性のある調査を行い、(追加関税などの是非を)大統領に報告する」と述べた。

スポンジチタンの米国の消費の60%以上が輸入品で、米国では1カ所のみで生産している。スポンジチタンは変質するため長期の保管が困難で、最も重要な軍事・航空宇宙の用途には適していないとしている。


Titanium Metals Corpは2017年にも、日本とカザフスタンからのスポンジチタンの反ダンピングの調査を申請している。カザフスタンのメーカーには42%、日本のメーカーには67~95%のダンピング課税を要請した。

商務省のデータでは、2016年の輸入額は日本からが144.8百万ドルであった。 (2017年の日本からの輸入は約180百万ドル)。

これに基づき商務省が2017年9月に反ダンピングに加え、反補助金の調査を開始したが、米国ITCは10月8日、予備調査に基づき被害が無いとして調査を打ち切った。こんなに早い段階でITCが調査を打ち切るのは珍しいとされた。米国では、商務省ダンピングの有無、ITCが被害の有無を審査する。

ITCの決定は、商務省にとってショックであったが、今回改めて通商拡大法232条に基づく調査を行う。トランプ政権は、通商拡大法232条に基づいて、これまでに各国から輸入されている鉄鋼やアルミニウムに高い関税を上乗せしている。

2018/3/3 トランプ大統領、鉄鋼とアルミに追加関税、日本も対象

スポンジチタンの主要生産国は、日本、アメリカ、ロシア、カザフスタン、ウクライナ、中国の6カ国。日本では東邦チタニウムと大阪チタニウムテクノロジーズが生産している。

スポンジチタンは多孔質の中間原料で、管や板の形に加工してプラントの熱交換器などの素材になる。

東邦チタニウムの製造工程は以下の通り。

(1)塩素化:チタン鉱石(ルチル)の中の酸化チタンを塩素ガスと反応させて四塩化チタン(TiCl4)を製造。

(2)蒸留:四塩化チタンを蒸留により精製

    ガス状の四塩化チタンを冷却して液状にした後、高温で酸素と反応させ、塩素ガスを分離すると酸化チタンとなる。

(3)還元・分離:精製された四塩化チタンに溶融金属マグネシウムを反応させ,多孔質で塊状のスポンジチタンを製造。

酸化チタンの製法には上記の塩素法のほかに、硫酸法がある。欧米では塩素法、日本では硫酸法が主流である。


なお、東邦チタニウムは、サウジに Cristal(The National Titanium Dioxide)とその親会社のTasnee(The National Industrialization Company)とのJVでスポンジチタンを製造している。

この工場で、これまで日本のスポンジチタン製造において使用されていなかったチタンスラグ由来の四塩化チタンを原料とする。

2014/1/27 東邦チタニウム、サウジでスポンジチタンの製造販売JV 

iPS細胞からつくった目の角膜の細胞を患者に移植する大阪大の西田幸二教授(眼科)らのチームの「角膜上皮幹細胞疲弊症に対する他家 iPS 細胞由来角膜上皮細胞シー トの first-in-human 臨床研究」計画が3月5日、厚生労働省の 厚生科学審議会 再生医療等評価部会で、患者への同意の説明文書の内容などに修正を求める条件付きで了承された。
  

阪大のチームが対象にするのは「角膜上皮幹細胞疲弊症」の20歳以上の患者4人で、この病気は、黒目の表面を覆う「角膜」を新たにつくる「幹細胞」が 怪我などで失われ、角膜の一部が濁って視力低下や失明につながる。

京都大から第三者のiPS細胞の提供を受け、角膜の細胞に変化させ、厚さ約0.05ミリのシート状にし、患者の目に移植する。300万~400万個(健康な人の目に存在する量と同程度)の細胞が移植される 。

移植した細胞が患者の目に定着し、長期的に角膜の細胞がつくり続けられるようになり、角膜の透明性が保たれ、視力が回復することが期待されている。今回の臨床研究では 治療効果や腫瘍ができないかなどの安全性を評価する。

角膜の移植にあたっては患者へのインフォームドコンセントの期間を経て、早ければ6月にも1人目の患者に移植する。2人目も年内の実施を目指す。

西田教授は臨床研究の先にある実用化の時期について、「最短で5年から6年くらい」と指摘。その際の治療費は「目算では400万円くらいと考えている。技術革新があったらもっとコストダウンできる」との見通しを示した。

付記

大阪大学大学院医学系研究科の西田幸二教授(眼科学)らのグループは、2019年7月にヒトの人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作製した角膜上皮細胞シートを角膜上皮幹細胞疲弊症の患者1名に移植した。


世界で初めてのiPS細胞を用いた角膜再生の臨床研究で、京都大学iPS細胞研究所より提供された他人のiPS細胞を用いて、独自に開発した方法で角膜上皮細胞を誘導し、さらに培養してシート状にした角膜上皮組織の安全性(主要)と効果を検討するもの。引き続き、移植後の経過観察を実施するが、2019年8月23日に患者は退院した。経過に問題はなく、視力もかなり改善してきているという。

年内に2例目の患者にiPS細胞由来角膜上皮シート移植を予定している。

付記

2020年4月、大阪大学大学院医学系研究科の林竜平寄附講座教授(幹細胞応用医学寄附講座)、西田幸二教授(眼科学、先導的学際研究機構生命医科学融合フロンティア研究部門)、柴田峻共同研究員(ロート製薬株式会社、幹細胞応用医学寄附講座)らの研究グループは大阪大学蛋白質研究所の関口清俊寄附研究部門教授らと共同で、iPS細胞から作製した様々な眼の細胞を含む細胞群から、角膜上皮細胞のみを純化する新たな方法を確立した。

研究グループは、それぞれの眼の細胞の種類ごとに、基底膜タンパク質ラミニンに対して、接着性や増殖性が異なることを見出し、角膜上皮細胞の純化に応用した。本成果により、外傷や病気により、角膜上皮の幹細胞が失われた難治性角膜疾患に対する新たな再生医療として期待されるiPS角膜上皮細胞シート移植治療の普及や産業応用に向けたiPS角膜上皮細胞の単離法・細胞シート製造の簡便化・効率化・コスト削減等が期待される。本研究成果は、米国科学雑誌『Stem Cell Reports』に4月14日(3月19日オンライン先行掲載)に掲載された。

 


目に関しては、2013年に理化学研究所の高橋政代プロジェクトリーダーが網膜の外側のRPE細胞の異常の
加齢黄斑変性の治療に網膜の再生を行っている。

理化学研究所のと先端医療振興財団は2013年7月30日、iPS細胞を使い、滲出型加齢黄斑変性の患者6人を対象に、目の網膜を再生する世界初の臨床研究を8月1日に開始すると発表した。

RPE細胞は、網膜の外側にある一層の細胞で、主な機能は、血液網膜バリア、貪食能、栄養因子の分泌など。これの異常が加齢黄斑変性(age-related macular degeneration:AMD)である。

網膜下の脈絡膜新生血管や傷害を受けたRPEを取り除いた後、iPS細胞から作製したRPEシートを移植用器具を用いて網膜下へ移植する。

2013/12/4 大日本住友製薬と理研認定ベンチャーのヘリオス、iPS細胞由来医薬品を共同開発

難治性の角膜上皮疾患や角膜内皮疾患に対しては、ドナー角膜を用いた角膜移植法が行われてきたが、全世界的なドナー不足の問題や拒絶反応の問題を抱えている。

これらの問題を解決するために、西田教授らは iPS 細胞を用いた新しい角膜再生治療法の開発に取り組んできた。

「角膜上皮幹細胞疲弊症」を治療することを目的として、iPS 細胞から移植可能な「培養角膜上皮細胞シート」作製技術(SEAM 法)の確立に成功した。




米司法省は1月28日、Huawei と孟晩舟 Huawei副会長を起訴した。

米国は孟副会長の引き渡しを正式に要請し、カナダ司法省は受理した。

2019/2/1 米司法省、Huawei を起訴 

カナダ政府は3月1日、米国への身柄引き渡しに関する審理を認めると明らかにした。 カナダと米国の犯罪人引き渡し条約に基づき検討した結果、「手続きを進めるための要件は満たされており、十分な証拠があると確信した」としている。

孟晩舟・副会長は3月6日、バンクーバーの裁判所に出廷した。孟氏側の弁護人は逮捕の背後には「政治的な特徴や動機」があると主張し、逮捕は不当だと訴えた。

引き渡し審理のための同氏の次回の出廷は5月8日となる。審理は長期化するとの見方が強い。

なお、カナダのトルドー首相は2019年1月26日、同国のジョン・マッカラム駐中国大使が同日付で辞任したと発表した。首相が辞任を要請した。

マッカラム氏は1月22日に中国語メディアとの会合で孟氏の逮捕にはトランプ米大統領の政治的な意向が反映されていると指摘。逮捕容疑であるイラン制裁違反に関して「カナダは(米国が求める)イラン制裁措置に署名していない」とし、引き渡しが行われない可能性を示唆していた。

別途、孟氏の弁護団は3月1日、カナダ政府と警察(Royal Canadian Mounted Police)及びカナダ入国管理局を相手取り、逮捕前に不当な尋問を受けたなどとして損害賠償を求める訴えをブリティッシュ・コロンビア上級裁判所に起こした。逮捕前に一般的な入国審査を装って3時間にわたり拘束され、尋問を受けた。持っていたスマートフォンやパソコンを取り上げられ、パスワードの提示を求められたという。

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中国政府は、副会長の逮捕を要請した米国政府ではなく、逮捕したカナダ政府に対し、猛烈な圧力をかけている。


シンクタンク The International Crisis Groupは2018年12月11日、同団体の上級顧問を務めるカナダの元外交官、Michael Kovrig氏が中国で拘束されたとの情報が入ったことを明らかにした。

カナダ外務省は12月13日、カナダ人実業家 Michael Spavor氏が中国の国家安全保障に脅威を与えた疑いで中国当局に拘束されたことを認めた。


共産党
中央政法委員会のサイト「中国長安網は3月4日、この2人が「国家機密情報の窃取・探索」に関わった疑いで取り調べを受けていると報じた。

専門家らは、これが孟副会長逮捕に対する中国側の報復だとみている。

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中国の税関当局がカナダからのキャノーラ(菜種)輸入を認めない決定を下したことが明らかになった。

カナダのChrystia Freeland外相は3月5日、中国政府が3月1日付でカナダの農業大手Richardson International に対する同国産キャノーラの対中輸出許可を取り消したことを批判した。

キャノーラ農家の娘でもある外相は「Richardsonの状況を大いに懸念している」と述べ、「われわれは今回の措置には科学的根拠がないと考えている」とした。

カナダの昨年のキャノーラ輸出額は50億カナダ・ドル(約4200億円)を超え、ほぼ半分の約500万トン(25億カナダ・ドル)が中国向けだった。

日本をはじめ東アジアでは、古くから菜種油を食用に用いてきたが、油を多用する食生活が中心のアメリカでは、食用が禁止されていた。アブラナにはグルコシノレートと呼ばれる物質が含まれ、甲状腺機能の低下を引き起こすとされる。また、アブラナの種子(菜種)から搾った「菜種油」には、過剰摂取によって心臓に害を及ぼすエルシン酸が多く含まれる。

そこで、西洋アブラナの主要産国であるカナダの農業研究者によって、エルシン酸とグルコシノレートをほとんど含まない「キャノーラ品種」が開発された。

この名前は、"Canadian Oil Low Acid" から取られたとされる。

日本の食用向けの国産油は主に有害なエルシンカ酸を含まない品種から搾油されているため、菜種油の呼称が一般的である。

中国外務省報道官は3月6日、カナダから輸入したキャノーラ(菜種)について、「最近、中国の税関でカナダ産のキャノーラから頻繁に害虫が見つかっている。ある企業からの輸入品は特に問題が深刻だった」と述べた。

中国政府は以前、カビに対する懸念でキャノーラの輸入を制限する可能性があると警告していた。

今回の輸出停止は「国民の健康と安全を守ることが狙いであり、完全に合理的・合法的な措置だ」と説明している。

カナダの農務相は、中国側の措置を受けて、カナダの食品検査庁が追加の調査を実施したが、問題となるような害虫やバクテリアは見つからなかったと表明した。

中国通信機器最大手の華為技術(Huawei)は3月7日、同社の製品を米政府機関が調達することを禁じる「2019年National Defense Authorization Act」が米国の憲法違反だとして、同社の米国子会社の本社があるテキサス州の裁判所で米政府を提訴したと発表した。

付記

中国の王毅国務委員兼外相は3月8日、華為技術(Huawei)の米政府に対する訴訟を支援すると表明した。

Huawei に対する米国の制裁や、同社幹部がカナダで逮捕された事件について「単純な司法案件ではなく、特定の人々と企業に打撃を与えることを意図した政治的圧迫のたくらみだ」と非難し、「われわれは一企業の利益だけでなく、国や民族が発展する正当な権利も守る」と主張した。

Huawei が米政府を提訴したことについて「法律を武器に自らを守り、『沈黙の子羊』にならないことを支持する」と評価した。

一方で、米中関係について「協力すれば双方が利益を得て、対立すれば双方が傷つくのは明らかだ」と、貿易交渉などで妥結を呼びかけた。

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米上下両院は2018年8月、華為技術(Huawei)や中興通訊(ZTE)と、監視カメラ大手の杭州海康威視数字技術(HIKVISION )、浙江大華技術(Dahua Technology)、海能達通信(Hytera)の計5社への締め付けを大幅に強化することを盛り込んだ「2019年度米国防権限法」を超党派の賛成で可決し、8月13日にトランプ大統領が署名、成立した。

2017年には国防総省によるHuawei と ZTEの製品調達を禁止する法律 (National Defense Authorization Bill ) が成立し、2018年5月に国防総省は世界中の米軍基地の携帯電話販売店で HuaweiとZTE製のスマホの販売を禁止したが、2019年度米国防権限法は、禁止を国防総省以外にも拡大するもの。

禁止対象製品は次の通り。

(A) Huawei と ZTE (関係会社を含む)製の通信機器

(B) Hytera Communications、Hangzhou Hikvision Digital Technology、Dahua Technology Company (関係会社を含む)製のセキュリティ用のビデオ監視・通信機器

(C) 国防長官が国家情報長官、FBI局長との協議で、中国政府の影響下またはつながりがあるとみなす企業の通信機器及びビデオ監視システムも同様の扱いとなる。

禁止は2段階に分かれる。

第1 段階(発効日の1年後=2019年8月13日以降)

米政府機関(連邦政府、軍、独立行政組織、政府所有企業)が5社の製品や、5社が製造した部品を組み込む他社製品を調達することを禁止

第2段階(発効日の2年後=2020年8月13日以降) こちらが特に問題である。

5社の製品を社内で利用している世界中の企業との取引を禁止
(米政府機関に収めている製品・サービスが通信機器とは一切関係のない企業でも、5社の製品を使っておれば禁止)

2018/12/11 2019年度米国防権限法(NDAA2019) --- Huawei、ZTE等の米政府機関との取引からの排除

なお、国防権限法には、外国企業の対米投資を審査する米国の独立機関、対米外国投資委員会(CFIUS)の権限を強化する条項もある。

これまでのCFIUSの審査対象は、安全保障に係るものと大統領が判断した買収に限られた が、改正により、米国企業の買収を狙いとする取引に限らず、合弁会社設立や、米国の重要な技術やインフラ、個人情報に関わる少額の出資なども審査の対象とする。米政府施設に近い土地取得など不動産取引も含める。

2018/8/17 米、対米投資の審査対象拡大

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Huawei は、この法律が裁判なしで個人やグループを罰しており、憲法に違反するとしている。

同社は同社の製品のどれにもセキュリティリスクはないと主張している。

Huaweiの郭平副会長が7日、深圳市の同社本社で記者会見し、以下の通り述べた。

この禁止は憲法違反であるだけでなく、Huaweiを公正な競争から排除し、最終的に米国消費者を害している。

米議会はHuaweiの製品の販売を制限するための証拠を示せていない。

最後の手段として、法廷で争うしかない。

また、Edward Snowdenが暴露した情報に触れ、「米政府は長年、Huaweiを脅威であるとしているが、米国の情報機関は我々のサーバーをハックし、我々のソースコードをハックしてきた」と述べた。

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別途、米司法省は1月28日、Huawei と孟晩舟 Huawei副会長を起訴した。

1) イランとの取引関係

被告 銀行詐欺 通信詐欺 IEEPA違反 資金洗浄 司法妨害
Huawei Technology
Huawei Devices USA        
Skycom Tech  
孟晩舟 Huawei副会長      

2) 米企業 T-Mobile からの技術窃取

被告 企業秘密窃盗 通信詐欺 司法妨害
Huawei Device
Huawei Devices USA

T-Mobile からの技術窃取については、Huaweiは2月28日、Seattleの連邦地裁で無罪を主張した。


米国は孟副会長の引き渡しを正式に要請し、カナダ司法省は受理した。

2019/2/1 米司法省、Huawei を起訴 

エイズが完治 ?

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HIV(エイズウイルス)に感染したロンドン在住の男性が幹細胞移植を受け、完治した可能性があるとの症例研究が発表された。 3月5日発行のNatureで、Cambridge University のRavindra Gupta教授(治療時はUniversity College London)らが報告した。

患者はロンドンに住む匿名の男性(後記の理由で"the London patient"と呼ばれる)で、2003年にHIV感染が判明、2012年以降、HIVを制御する抗レトロウイルス薬で治療を受けていた。その後、進行した悪性リンパ腫
ホジキンリンパ腫)が見つかったため化学療法を受けた後、2016年に幹細胞移植を受けた。

移植は比較的スムースに行われたが、 移植片対宿主病(ドナーの臓器が、免疫応答によってレシピエントの臓器を攻撃)を含む副作用があった。

ドナーはHIVに耐性のある変異遺伝子(CCR5 delta 32)を持っていた。

CCR5(C-C chemokine receptor type 5)という遺伝子にCCR5-Δ32として知られている変異を持つ集団がいる。

多くのHIV株が、宿主細胞に入り感染するための最初の段階でCCR5を利用しているが、この突然変異がある遺伝子を持つ人々は「CCR5」の受容器(レセプター)に欠損があるため、「CCR5」を利用して感染するエイズウイルスに感染しない。ヨーロッパに住む白人の1~3%が保持している。

但し、この遺伝子は、HIVに対する耐性が高い一方で、西ナイルウイルスに感染しやすい。

患者は移植後も1年4カ月の間、抗レトロウイルス薬による治療を続けたが、1年半前に投与を中止した後もHIVは検出されていない。

チームは完治したと判断するにはまだ早すぎるとして、今後も引き続き患者の状態を観察する。


HIV感染者が幹細胞移植で完治したとされる例は、10年以上前にベルリンで報告されている。

Berlin patient と呼ばれるアメリカ人Timothy Brownで、HIV感染で抗レトロウイルス薬の治療を受けている間に急性骨髄性白血病と診断され、2007年にHIV耐性を持つドナーから2回の幹細胞移植を受けた。抗レトロウイルス薬の投与を中止してから数年後にHIVの痕跡が見つかったものの、ウイルス量は検出限界以下の状態が続き、唯一の完治例とみなされている。現在、米国に居住しており、HIV-freeである。

研究者らはこれまで、Berlin patient の治療を再現しようと試みてきたが、成功例は報告されていなかった。

Gupta教授は「同様の治療で2人目の患者が寛解したことにより、ベルリン患者が例外だったのではなく、この治療がHIVを消滅させたということが立証された」と話す。

ただし専門家らによると、HIV耐性を持つドナーからの幹細胞移植によって一部のエイズ患者だけが治る仕組みはまだ分かっていない。
また、HIVに感染しても通常は抗レトロウイルス薬により健康状態を維持できる一方、幹細胞移植には大きなリスクも伴う。そのため現時点での対象者は、エイズ以外の理由で移植が必要な人に限られる。

チームは、リスク面などから、現時点では造血幹細胞移植をHIV感染の標準治療とすることは適切でないとしている。日本でも造血幹細胞移植は、HIV感染の治療法として認められていない。


米上院は2月14日の本会議で、新たな政府機関閉鎖を回避する超党派予算案を可決した。米下院本会議も14日夜、可決した。

しかし、大統領は2月15日、国境の壁の追加予算獲得のために、「非常事態」を宣言した。ホワイトハウスで「我々が直面する問題を解決する。南の国境の危機を管理できていない。これは選挙公約のためではない。多くの薬物が流れ込んでいる。壁は100%効果がある」と演説した。

2019/2/18 米国予算案 成立、大統領は同時に非常事態宣言で他予算を壁建設に流用へ 

これに対し、米下院は2月26日、国家非常事態宣言を無効にする決議案を245対182の賛成多数で可決した。政権を支える共和党からも13人が賛成した。

米下院 ( 1議席 未確定)

共和党 民主党 合計
賛成 13 232 245
反対 182 0 182
棄権 2 3 5
欠席 2 2
合計 199 235 434


2019/2/27 米債務上限引き上げ、見送りか 下院は国家非常事態宣言の無効化の決議 


上院は与党共和党が過半数を占めるが、100議席のうち53議席に過ぎず、4人が無効化に賛成すれば可決する。

2月28日、上院議員4名が下院と同様の決議案(両院のJOINT RESOLUTION)を提出した。

JOINT RESOLUTION

Relating to a national emergency declared by the President on February 15, 2019.

Resolved by the Senate and House of Representatives of the United States of America in Congress assembled, That, pursuant to section 202 of the National Emergencies Act (50 U.S.C. 1622), the national emergency declared by the finding of the President on February 15, 2019, in Proclamation 9844 (84 Fed. Reg. 4949) is hereby terminated.

提案者は野党民主党の2名に 共和党のSusan Collins 議員(Maine)とLisa Murkowski 議員(Alaska)が加わっている。直ちに共和党のThom Tillis議員 (North Carolina) が賛成すると述べた。

3月3日に共和党の Rand Paul 議員(Kentucky)が賛成を表明、これで上院の決議が可決される可能性が生じた。Paul 議員は共和党から10人は賛成すると述べている。

上院は3月18日~3月22日が休みのため、3月15日までに投票が行われると見られている。

しかし、両院が決議案を可決したとしても、トランプ大統領は、 その場合、「100%拒否権を行使する」と明言している。
拒否権行使の場合、議会が覆すためには上下両院それぞれの3分の2の同意が必要で、現状では、拒否権を覆すのは困難との見方が大勢だ。

下院の2/3 は290で、共和党から50名の造反が必要となる。

上院の2/3は 67で、共和党から20名の造反が必要。

争いは裁判所に移る。

大統領の非常事態宣言については、2月18日 にカリフォルニア州を筆頭に16の州がカリフォルニア州北部地区の連邦地裁にトランプ政権を提訴した。

California、Colorado、Connecticut、Delaware、Hawaii、Illinois、Maine、Maryland、Michigan、Minnesota、Nevada、New Jersey、New Mexico、New York、Oregon、Virginiaの各州で、Maryland 以外は全て民主党知事。

トランプ大統領が非常事態を宣言した2月15日には、テキサス州の地主3人と環境団体が憲法違反と所有権侵害を訴えて、裁判を起こしている。

大統領が拒否権を発動したとしても、与党の共和党が多数の上院が大統領の決断に反対の意思を示せば、州政府や市民団体から提起されている違憲訴訟に影響が出るのは必至 である。

また、議会共和党との関係がぎくしゃくすればトランプ氏の再選戦略にも影を落とすことになる。

日本人研究者が創業した米国メリーランド州の創薬ベンチャー VLP Therapeuticsは2月4日、独自技術 i-αVLP (inserted alpha VLP) Technology で開発したマラリアワクチン候補 VLPM01の新薬臨床試験開始届(IND)が米食品医薬品局(FDA)により認可され、フェーズ I/IIa の患者登録を開始したことを明らかにした。Walter Reed Army Institute of Research で臨床試験が実施される。
同社初の臨床入り品目となる。

5月から30人に候補薬を3回ずつ投与し、感染時に速やかに治療できる体制を整えた上で、蚊を使って実際に感染を防げるか調べる。年内には結果が得られる見通し。

2017年にはアフリカを中心に推定2億1900万人がマラリアに感染し、43万5000人が死亡、その6割が5歳未満の子供とみられる。開発中のワクチンはあるが、これまで実用化には至っていない。

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2013年設立のVLP Therapeuticsは、ウイルス様粒子 VLP (Virus Like Particle) を作る技術を活用し、感染症(マラリア、デング熱など)やがんに対するワクチン開発、および遺伝子治療への応用を目指している。

同社のワクチンは、人工的に作った微粒子に病原体の特定の部位だけをくっつけたものを抗原とする。

ウイルス様粒子 VLP は、正常のウイルスと同様の粒子構造を持つが、ウイルスゲノムを含まないため感染性をもたない。

同社はアルファウイルスのVLPの表面に外来抗原を提示させることにより、抗原特異的抗体を誘導し、様々なワクチンに応用できる新しい技術を開発した。

この i-αVLPは、1つのVLP上に480個の外来抗原を高度な対称性と密度を保ちつつ提示することができる。そのため、免疫個体において、B細胞による抗原認識が効率よく行われ、抗原特異的抗体の産生量を非常に高める特徴を持つ。

一般的なワクチンでは、病原体を弱毒化させたものを抗原とするため、ごくまれに病気を発症させる可能性がある。ゲノムを持たず、体内で増殖しないVLPワクチンにはそうした心配がないため、安全性が高く、ワクチンの効果が期待できるという点が非常に高く評価される。

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創業者でCEOの赤畑渉博士は、東京大学を卒業後、京都大学で博士号を取得。その後渡米し、NIH (National Institutes of Health)のVaccine Research Center の上席研究員として、この微粒子を使ったワクチンを開発した。

VLPを使ったチクングニヤウイルス(ネッタイシマカ、 ヒトスジシマカなどにより媒介されるウイルス性の伝染病)のワクチン及び 3つの馬脳炎(ベネズエラ、東部、西部)のワクチンを開発。

日米で2社の製薬会社(アールテック・ウエノ、Sucampo Pharmaceuticals)を創業し上場させてきた上野隆司 博士、久能祐子博士夫妻と出会い、自身が開発したワクチンの実用化を進めるために起業を決意した。
夫妻をCo-Founderに加えた。

2人については 2015/8/29 Sucampo Pharmaceuticals、アールテック・ウエノを買収

VLP Therapeuticsは、伝統的なワクチン、標的抗体療法を変革して世界的な満たされていない医療の必要に対応する革新的な治療法を開発すること を使命とする。

VLP Therapeuticsは現在、予防用、治療用のワクチンとがん、感染症、自己免疫疾患、神経疾患を治療する次世代の標的抗体薬を開発中である。

現在のPipeline:

同社のPlatform:





米通商代表部(USTR)は3月1日、通商政策に関する年次報告書を議会に提出した。

2019 Trade Policy Agenda and 2018 Annual Report of the President of the United States on the Trade Agreements Program

2019年に注力する課題として日本やEUとの新たな貿易交渉を挙げ、米国の輸出拡大や雇用創出を目指すと明記した。貿易協議を進めている中国に対しても、不公正な貿易慣行をやめさせるよう圧力をかけ続ける姿勢を示した。

2019年の貿易政策課題として以下を挙げている。

A. トランプ政権は多くの問題のある貿易システムを引き継いだ。
1. 時代遅れで不公平な貿易協定  NAFTAと米韓FTA
2. 欠陥のある多角的貿易協定
3. 米国の労働者と企業を害する不公平貿易
a. 中国その他の非市場政策による過剰能力の発生
b. 中国の不公正なやり方での米国の知財への攻撃
c. 貿易相手の労働・環境義務の無視(メキシコ、ペルー)
d. 科学的根拠なしでの米国農産品への貿易障壁
B. トランプ政権は米国の労働者のため貿易政策を機能させるという約束を果たしてきた。
1. TPP撤退
2. 協定の改定
a.  米韓FTAの改定
b.  NAFTAの米-メキシコ-カナダ協定 (USMCA)への変更  注 未発効
i. USMCA はNAFTAよりも米の労働者に有利
ii. USMCA はNAFTAの義務を引き上げ
   米の知財の保護、著作権の保護、デジタル貿易での強み、環境保護
iii. 非市場慣行
iv. 今後の協定の前例に
v. TPPに比し著しい改善
c. 今後の交渉で米国の利益を促進
3. 米国の貿易法の積極的活用
a. 中国の知財慣行の調査
i. Section 301
ii. USTRによる中国の米国知財の扱いの調査
iii. 中国との交渉、関税付加
iv. 共通の懸念についての同盟国との協調
v. 最近の交渉の進展
b. 輸入洗濯機、太陽光パネルに対するセーフガード
c. 輸入に対するNational security 調査
d. 米国の貿易の権利の断固とした実施
4. 貿易優遇プログラムの適用 一般特恵関税制度など
5. WTOでの米国の利益の防衛
C. 米国の貿易関係の再調整を続ける。
1. national security
2. 戦略的パートナーとの新しい貿易協定を追及  日本、EU、英国との貿易協定の交渉
3. 米国の法律、貿易の権利の継続適用
4. グローバル経済のバランスを取り戻す。
主な問題は特定国が経常収支赤字(輸入> 輸出)を続け、他が経常収支黒字(輸入< 輸出)を続けること。


結論:トランプ政権は2008年に、米国の企業と労働者が貿易関係で利益をシェアするため、米国の貿易のリバランスの方向に大きな一歩を取った。戦略的貿易パートナーとの間で協定を再交渉し、新協定の交渉を始めた。2019年もこれを継続する。

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日本については、2018年9月に大統領と安倍首相との会談でUS-Japan Trade Agreement の交渉入りを決めた。交渉は、物品と、早期に結果を生じうるサービスを含む他の重要な分野を含む。その後に他の貿易・投資の事項について交渉を行うことでも合意したとしている

日本側発表の「日米物品貿易協定」(TAG:Trade Agreement on Goods )とはしていない。

首相は記者会見で、「まさに物品貿易に関する交渉だ。これまで日本が結んできた包括的なFTAとは全く異なる」と説明した。
菅義偉官房長官も、「自由貿易協定(FTA)とは異なり、物品貿易に限定されるものであり、包括的なものではない」とした。

2018/10/6 日米物品貿易協定について 

具体的な交渉は、米国が中国との交渉を続けたため、延期されてきた。

USTRのLighthizer 代表は2月27日、下院歳入委員会の公聴会で、日本との貿易協定交渉について、3月にも訪日して正式に開始したいとの意向を表明した。TPPの発効で米国の輸出環境が悪化する懸念に言及し、対日交渉入りは「緊急性が高い」と強調した。

「米自動車業界が訴えている通り、日本を含むアジア各国には為替の問題がある」と述べ、為替も議題にする可能性を示唆した。

ーーー

米政権は2月28日、3月1日に交渉期限が迫っていた中国との通商協議を延長し、2日午前0時過ぎに発動予定だった対中制裁強化を見送ると正式発表した。


トランプ米大統領は3月1日、中国に対して農産品の関税全廃を求めているとツイッターで明らかにした。

I have asked China to immediately remove all Tariffs on our agricultural products (including beef, pork, etc.)
based on the fact that we are moving along nicely with Trade discussions and I did not increase their second traunch of Tariffs to 25% on March 1st.

This is very important for our great farmers - and me!

中国の税関当局が遼寧省大連など5つの港で、オーストラリアからの石炭輸入を無期限の禁止にしたことが明らかになった。

ロイター通信によると、大連のほか、丹東や盤錦など遼寧省内にある計5つの港で豪州産石炭の通関ができなくなった。ロシアやインドネシアといった豪州以外の国からの石炭は影響を受けていないという。

中国外務省の耿爽副報道局長は2月21日の記者会見で「安全や品質リスクの検査や分析をしている」と述べ、輸入禁止を暗に認めた。目的については「中国企業の合法的権益や環境、安全を守る」と主張した。

豪州にとって中国は石炭の主要な輸出先で、今回の措置は豪経済への一定の影響が避けられそうにない。

豪州と中国の間では最近、緊張が高まっており、今回の措置は中国政府による豪州政府への圧力ともみられる。

① Huawei 問題

Huawei 副会長の逮捕について、駐カナダ中国大使昨年12月13日付でThe Globe and Mail 紙に投稿した。

Huaweiは、グローバルな事業は現地の法や規制に厳格に従っていることを公的に何度も表明している。しかし、Five Eyes countriesの諸国は、何の証拠もなく、Huaweiが彼らの国家の安全を脅かす存在であると非難している。そのような推測をもとに、恐怖の種を撒き、国民をミスリードしている。

Five Eyes は5カ国の諜報機関(アメリカ国家安全保障局、英政府通信本部、カナダ通信保安局、豪 参謀本部国防信号局、NZ 政府通信保安局) で、UKUSA協定を結び、世界中に張り巡らせたSIGINTの設備や盗聴情報を相互利用・共同利用する為に協定を結んでいる。

豪州政府は8月に、次世代通信規格「5G」の通信網について、「安全保障上の懸念」から、Huawei とZTEの参加を認めない方針を出した。

ニュージーランドでも、同国政府が、華為製品の使用は「国家安全保障上の重大な危機」があると警告したため、同国大手通信事業者が11月下旬、5Gの整備で華為製品を使用しないと発表した。

②中国人富豪の永住権取り消し

オーストラリア政府はこのほど、同国政治家や政治団体に多額の献金をした中国人の富豪・黄向墨(Huang Xiangmo) の永住権を取り消し、再入国を禁止した。

同氏は中国共産党がバックアップする在豪中国人団体のトップを務め、近年豪州に対する中国の浸透工作において中心的な人物とされ、 スパイ疑惑もある。

黄氏は2001年に深圳で不動産企業を創業し、2011年に豪州に移住した。豪州でも不動産売買で成功を収め、豪州の2大政党に合わせて270万豪ドル(約2億1千万円)の政治献金をしてきた。

さらに、2013年にシドニー工科大学に180万豪ドルを寄付し、豪中関係研究所を設立した。 その後、研究所の出版物が「共産党の宣伝品のようだ」と批判され、大学は研究所を解散した。

豪州の情報当局は2015年、黄氏など複数の中国人が共産党とつながっていることを指摘し 、国会議員がこれらの人物から資金提供を受けることは「危険」だと警告していた。

黄氏は昨年11月に豪州を出国し、現在香港に滞在している。

連邦議会は昨年、外国からの政治献金を禁止する改正選挙法を可決させ、外国人のスパイ活動などを阻止する法律も通過させた。

オーストラリア議会は2018年6月28日、外国のスパイ活動や内政干渉の阻止を目的とした複数の法案を可決した。

可決された法案はスパイ行為に対する罰則を強化した他、オーストラリアの内政に影響や害悪を与えようとする外国当局による秘密工作、欺瞞工作、脅迫行為などを対象とする新たな罰則が定められた。また外国による政治干渉を透明化するため、外国の政府や企業の代理人となる個人や団体には登録を義務付けた。

オーストラリアの情報機関は、中国政府が政治献金制度を使ってオーストラリアに影響力を行使しているとの懸念を表明していた。

オーストラリア政府は法案通過後の声明で「スパイ活動および外国の干渉はオーストラリアの安全保障と国防に著しいリスクとなっている」「敵対的な外国当局が、機密情報の入手やオーストラリアの民主的手続きへの影響力行使といったさまざまな手法でオーストラリアの国益に反する活動を積極的に行っている」と指摘した。

これに対し、中国政府は、オーストラリアの内政に中国が介入したという報道は「ヒステリー」「妄想」だとして激しく否定し、両国関係は冷え込んだ。

今回の件については、ペイン外相によると、現在中国当局からの抗議はない という。

Saudi Aramcoは1月30日、Axens 及びTechnipFMC との間で、原油から直接化学品を生産する Catalytic Crude to Chemicals (CC2C™) 技術の開発及び商業化の促進のための共同開発・協力契約を締結した。2021年までの商業化を目指す。

Axensはフランス石油・新エネルギー研究所のグループ企業で、石油精製、石油化学、ガス、代替燃料業界において先端技術触媒吸着剤サービス等を提供する。

TechnipFMCは、2016年にフランスのTechnip S.A. と米国のFMC Technologies Inc.が合併してできた。世界50か国以上で油田開発などの技術提供や建設事業などを行う。

CC2C™は、国際石油交流センター主導のもと、JXTGエネルギーとサウジのKing Fahd University of Petroleum & Mineralsの協力で開発されたHS-FCC™(高過酷度流動接触分解)をベースにするもの。

Saudi Aramco、Axens、TechnipFMCは HS-FCC™ technology Allianceのメンバーで、両社は HS-FCC™ 技術の独占ライセンサーである。

JX と Aramco、King Fahd University などは2010年6月に、従来型の流動接触分解(FCC)プロセスのライセンサーであるAxens 及び Stone & Webster と、HS-FCC™ 技術の普及促進のための協力体制を構築した。Technipは2012年にStone & Webster の化学工業部門を買収した。

Aramcoは既に2018年1月に、この技術の開発のため、CB&I (現在のMcDermott) 及び Chevron Lummus Global との間で Joint Development Agreement を締結している。

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CC2C™のベースのHS-FCC(高過酷度流動接触分解)は、既存の流動接触分解(FCC)がガソリンを生産するのに対し、重質油を分解してプロピレン、ブチレンなどのライトオレフィン類を効率良く生産するプロセス。


原料の重質油は粉末状の触媒と共にダウンフロー型の反応器に投入され、反応器中を落下する一瞬の間に反応が起こる。高温(600℃)かつ短時間(0.5秒)であることがこの反応の特徴。
反応後の生成物は分離器により触媒から分離され、反応器から取り出される。

一方、反応後の触媒は触媒洗浄塔を経由して触媒再生塔に送られ、反応中に付着した炭素分を除去することにより再生される。 再生後は再び反応器に送られ反応に用いられる。
また、再生中に炭素分の燃焼により得られた熱は反応熱として利用される。

2000年~2004年に国際石油交流センター(JCCP)の技術協力事業として、King Fahd University of Petroleum & Minerals、Saudi Aramcoと、サウジアラビアにて、30バレル/日の小規模装置の建設運転を実施した。

2007年~2008年に石油産業活性化センター(PEC)の技術開発事業として、3,000バレル/日の実証化装置の設計を実施

2011年4月から、JXTGエネルギーの水島製油所にて重質油処理量3,000B/D(プロピレン生産量140,000トン/年)のセミ商業化装置運転を行っている。

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HS-FCCでは原油の60%以上を化学品に改変する。

AramcoではCC2C™で原油の70~80%を化学品に改変することを狙っている。


Saudi AramcoとSABICは2017年11月26日、サウジ国内での原油から化学品までの統合コンプレックス(COTC Complex : Crude Oil To Chemicals complex ) 設立のMOUを締結したと発表した。

日量40万バレルの原油を処理し、年産約 900万トンの化学品やベースオイルを生産するもので、2025年の生産開始を見込んでいる。

SABICは2018年4月26日、この計画の管理及び基本設計(FEED)の契約を米国のKBRと結んだと発表した。

両社は2018年11月1日、立地をYanbuに決めたと発表した。

2017/11/30 Saudi AramcoとSABIC、Crude Oil-to-chemicals JVのMOU締結

 

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