2022年3月アーカイブ

新型コロナウイルスの感染経路について、国立感染症研究所は3月28日、ウイルスを含んだ空気中に漂う微粒子(エアロゾル)を吸い込んでも感染するとの見解をホームページで公表した。

感染研はこれまでエアロゾル感染に否定的で、飛沫感染と接触感染だけを挙げた報告書を発表していたため、国内の科学者が「世界の知見とは異なる」と説明を求めて公開質問状を出していた。

本件については、厚労省もエアロゾル感染を認めていなかったが、2021年10月末に認めた。

WHOや米疾病対策センター(CDC)は今春、新型コロナは空気中に漂うウイルスを含んだ微粒子「エアロゾル」を吸い込むことで起きる「空気感染」(エアロゾル感染)が感染経路だと明記した。

しかし、国は「飛沫感染や接触感染 」が原因とし、かたくなに空気感染を認めていなかった。

当初の厚労省のウェブサイト:

新型コロナウイルス感染症は、主に飛沫感染や接触感染によって感染するため、3密(密閉・密集・密接)の環境で感染リスクが高まります。
このほか、飲酒を伴う懇親会等、大人数や長時間におよぶ飲食、マスクなしでの会話、狭い空間での共同生活、居場所の切り替わりといった場面でも感染が起きやすく、注意が必要です。

厚労省は10月末にウェブサイトを下記の通り修正し、エアロゾル感染を主たる感染原因と認めた。

感染者の口や鼻から、咳、くしゃみ、会話等のときに排出される、ウイルスを含む飛沫又はエアロゾルと呼ばれる更に小さな水分を含んだ状態の粒子を吸入するか、感染者の目や鼻、口に直接的に接触することにより感染します。

一般的には1メートル以内の近接した環境において感染しますが、エアロゾルは1メートルを超えて空気中にとどまりうることから、長時間滞在しがちな、換気が不十分であったり、混雑した室内では、感染が拡大するリスクがあることが知られています。

また、ウイルスが付いたものに触った後、手を洗わずに、目や鼻、口を触ることにより感染することもあります。WHOは、新型コロナウイルスは、プラスチックの表面では最大72時間、ボール紙では最大24時間生存するなどとしています。

2021/9/17  コロナ空気感染、不都合な真実?

これに対し、感染研はこれまで認めていなかった。

このため、2月1日付で東北大学本堂毅教授を事務局とする専門家が 脇田隆字所長宛の公開質問状を出している。

感染研の次の見解に疑義を表し、「感染経路が主に飛沫感染と接触感染であるならば,その発生頻度は換気とは関係しないはず」としている。

現段階でエアロゾル感染を疑う事例の頻度の明らかな増加は確認されず,従来通り感染経路は主に飛沫感染と,接触感染と考えられた.また,多くの事例が従来株やデルタ株と同様の機会(例えば,換気が不十分な屋内や飲食の機会等)で起こっていた.基本的な感染対策(マスク着用,手指衛生,換気の徹底等)は有効であることが観察されており,感染対策が守られている場では大規模な感染者発生はみていない。

また、世界的にコンセンサスを得られている科学的知見との不一致について質問している。

新型コロナウイルスの主たる感染の運び手はエアロゾルであって,Fomite infection(接触感染)は稀であることが,世界の科学界のコンセンサスとなっていると考えます.

このことは,WHOやCDCも認めており,だからこそCDCは最近医療従事者だけでなく国民へのN95マスク着用の推奨までしているわけです.

これに対し、感染研は「研究者の間で議論の途上にあるところと認識」していると返事をしている。


感染研は3月28日発表( 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染経路について)でようやくエアロゾル感染を認めた。

人は、咳、くしゃみ、会話、歌、呼吸などの際に、鼻や口からさまざまな大きさや性状をもった粒子を空中に放出する[1-5]。粒子はその大きさや含まれる液体の量によって空中での振る舞いが異なる。液体を含んだ大きな粒子は、放出されてから数秒から数分以内に落下するが、小さな粒子や乾燥した粒子は、空中に数分から数時間にわたって浮遊する。従来、これらの粒子については大きさや性状に応じて飛沫やエアロゾルと呼ばれてきた。

SARS-CoV-2は、感染者の鼻や口から放出される感染性ウイルスを含む粒子に、感受性者が曝露されることで感染する。その経路は主に3つあり、
①空中に浮遊するウイルスを含むエアロゾルを吸い込むこと(エアロゾル感染)、
②ウイルスを含む飛沫が口、鼻、目などの露出した粘膜に付着すること(飛沫感染)、
③ウイルスを含む飛沫を直接触ったか、ウイルスが付着したものの表面を触った手指で露出した粘膜を触ること(接触感染)、である。

但し、最後に次のように述べている。

なお、呼吸器感染症の感染経路については国際的に研究が進められており、これらの知見は今後更新される可能性がある。

米上院で、下院で可決した対ロシア制裁法案審議が遅れている。対中競争法案はようやく可決し、下院との一本化の協議に入る。


G7は3月11日、ウクライナへの侵攻を続けるロシアに新たな経済制裁を科すと表明した。

ロシアの最恵国の地位を取消し、ロシアからの輸入品に大幅に高い関税を課すほか、高級品の対ロ輸出も禁じる。

2022/3/14 G7、ロシアに新たな経済制裁 

米議会下院は3月17日、ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアの製品に高い関税を課す制裁法案 (Suspending Normal Trade Relations with Russia and Belarus Act)を賛成多数で可決した。

ロシアと、侵攻に協力したベラルーシに対し、世界貿易機関(WTO)ルールに基づく「最恵国待遇(MFN)」を取り消す。これまでは平均3%の関税をかけてきたが、法案成立の翌日から北朝鮮とキューバにのみ課してきた30%超の関税を適用する。 他に世銀問題やビザ停止があるが、後述の人権問題も含んでいる。

Summary:

This bill suspends normal trade relations with Russia and Belarus. It also permanently authorizes the President to impose visa- and property-blocking sanctions based on violations of human rights, and it revises the President's authority to impose these sanctions.

Specifically, the bill authorizes the President to proclaim increases in the rates of duty applicable to products of Russia or Belarus. This authority terminates on January 1, 2024.

The President may restore normal trade relations with Russia and Belarus, subject to congressional disapproval.

The bill directs the U.S. Trade Representative to take certain actions, including to consider steps to suspend Russia's participation in the World Trade Organization and seek to halt the accession process of Belarus.

Additionally, the bill statutorily authorizes broader coverage of current visa- and property-blocking sanctions for human rights violations to cover persons involved in serious human rights abuses. (Current law imposes these sanctions on persons responsible for gross violations of human rights, a higher standard.)

The bill authorizes the President to impose sanctions on any foreign person who (1) is responsible for serious human rights abuse, (2) is a current or former government official who is responsible for or complicit in corruption, (3) is or has been a leader or official of an entity that has engaged in any of these activities, (4) has provided support for any of these activities, or (5) is owned or controlled by a person subject to these sanctions.

下院の票は下記の通り。

  共和党 民主党 合計 欠員
賛成 202 222 424
反対 8 8
棄権 1 1
合計 211 222 433 2

1/1に共和党員が辞職(6/7に補選)2/17に共和党議員死亡(8/9補選)
上記投票の翌日、3/18に共和党員死亡(補選未定) 現在は欠員3

法案は上院に送られ、上院では民主党のシューマー院内総務は、ウクライナ政府を支援するため、全会一致での早期可決を呼び掛けた。 大統領の訪欧中の3月25日までの議決を目指した。

但し、この法案にはGlobal Human Rights Act の人権条項が折り込まれているのが問題となった。人権侵害の外国人(any foreign person)への制裁で、ロシアとベラルーシ以外の外国人も全て対象となる。

これは通称 Global Magnitsky Act と呼ばれ、ロシアのMagnitsky弁護士がロシアの国営企業の不正を暴露して投獄され、暴力を受け続けて2009年に獄中死したことから、「弁護士の死とロシアにおける人権侵害に関わった全ての者に制裁を科す」として2012年に成立した。

2016年以降、世界全体を適用範囲とし、米国政府が人権侵害者とみなした者を制裁し、その資産を凍結し、米国への入国を禁止する権限を与えている。

下院では民主党と共和党がことごとく鋭く対立するなかで、 上記の通り、両党が賛成したが、共和党議員8人が反対した。

反対した共和党議員8人も、正常貿易関係の断絶には同意するが、法案に含まれた人権関連制裁条項が、大統領に過度な権限を与えるとして反対票を投じた。

Andy Biggs 議員は、大統領がこの条項を「中絶の権利の反対者」を罰することに利用することを懸念すると述べた。

上院でも、人権を巡る条項について、範囲が広すぎるとの懸念が一部の共和党議員の間で浮上した。

共和党のRand Paul議員は、人権を巡る条項が大統領に過度な権限を付与する可能性があると懸念を表明、3月24日に法案の採決を拒否した。Rand Paul議員は"human rights abuse"の定義を入れることを求めている。 このままでは、大統領は制裁したいと思う人を誰でも制裁できることになるとしている。

結局、この法案の審議は3月28日の週にずれ込んだ。

(なお、日本は今国会に提出する準備を進めている段階である。日本ではこれまで、特恵関税を外す事態を想定していなかった。)


問題は、もう一つの重要法案の審議がこの週にずれ込んでいることである。「対中競争法案」である。このため制裁法案の審議が暫くできない。

米議会下院は2月4日、中国に対抗するため先端技術の競争力向上をめざす包括法案 The America COMPETES Act of 2022 を賛成多数で可決した。

上院は2021年6月8日に同様の法案 United States Innovation and Competition Act を異例の超党派で可決した。しかし、下院が異なるアプローチで審議したため、これは宙ぶらりんになった。

2021/6/11 米上院、対中包括法案を可決

下院法案は、国内の半導体生産支援に約520億ドルを充てる。半導体製造・組み立て・試験・先端パッケージ・研究開発のための施設・装置の建設・拡充などを財政支援する。

加えて、米国のサプライチェーン強化に重点を置き、米国の経済・安全保障にとって重要な製品の供給不足を防ぎ、それら重要製品の国内生産を促すための補助金やローンに450億ドルを拠出する。

また、エネルギーやバイオテクノロジーなど先端技術のR&Dを支援、5年間で133億ドルを投じる。

2022/2/7 米下院、「対中競争法案」可決

下院案が上院に送られたが、上院での審議で民主党系無所属のBernie Sanders 議員がこれに注文をつけ、下記2件の取り消しを求めた。

1) Amazon創設者のJeff Bezosの宇宙開発企業Blue Origin とNASAの100億ドル契約

大金持ちのBezosが月に行きたいなら、自分の金でいけばよい、税金を使う必要はないとしている。

2) 半導体業界への530億ドルの支援 

 この産業は必要だが、見返りの義務なしに支援するのは金持ちの株主を利するだけで、税金から支援する必要はないとする。 


米議会上院は28日にようやく、中国に対抗し産業の競争力強化を目指す「米国競争法案」を賛成多数で可決した。

Sanders議員の反対する半導体の生産体制強化への520億ドルが入っている。

同法案には台湾を支持する内容が複数盛り込まれた。インド太平洋戦略における重要な一部だと位置付け、米国の国内法「台湾関係法」などが保証する台湾への関与の強化や、台湾への定期的な武器の売却、台湾の国際機関への有意義な参加の促進などを支持する内容が含まれた。

半導体への支援等に反対した民主系無所属のSanders議員は反対したが、共和党から19名が賛成、可決した。

  共和党 民主党 民主系
無所属
合計
賛成 19 48 1 68
反対 27 1 28
棄権 4 4
合計 50 48 2 100


今後、法案の一本化に向け、両院が協議する。


なお、ロシア産原油の輸入禁止法案についても下院は3月10日に可決しているが、上院はまだ可決していない。

しかし、バイデン大統領は3月8日に、追加経済制裁としてロシア産の原油やLNG、石炭などの輸入を禁止する大統領令に署名し、即日発効している ため、支障はない。

司法省は3月24日、昨年起訴した4人のロシア人ハッカーによる事件を明らかにした。(発表文

サウジのPetroRabigh、カンサス州のWolf Creek原子力発電所その他世界中の少なくとも135の国の施設にに不当に侵入した罪である。

司法省によると、うち3人はロシアのスパイ組織であるFederal Security Serviceに属し、もう一人はロシアの防衛省のR&D部門に帰属している。

起訴状によると、2012年から2018年の間に、135か国の数百の企業が狙われた。

司法省では、ロシアの政府主導のハッカーは米国や世界中で重要なインフラに攻撃を仕掛けており、現在でも企業が緊急に防衛を高めることが非常に重要であるとしている。

バイデン米大統領は3月21日、ロシアによるサイバー攻撃の可能性について声明を出し、米国内の重要インフラを所有・運営する民間企業などにセキュリティーを強化するよう呼び掛けた。
「ロシアがサイバー攻撃の可能性を探っているという新たな情報がある」と電力や水、病院など重要インフラを所有・運営する民間企業に対し、データの暗号化やソフトウエアの脆弱性の修正などの対策を求めた。

本件はこれまで未公表であったが、大統領のこの発表を受け、公表された。


1) PetroRabigh 事件

PetroRabighはSaudiAramcoと住友化学のJVで、サウジのRabigh に精油所と石油化学工場を持つ。

2017年6月にPetroRabigh の設備の安全装置がトリップして停止した。この時は調べても何も見つからなかった。

8月4日に PetroRabigh が爆発寸前の危機に襲われた。

2つの緊急シャットダウンシステムが作動したが、調べても何の不具合もなかった。しかし、専門家が調査し、破壊工作ソフトTRITONが見つかった。

Schneider Electric製の「Triconex」安全計装システムコントローラを不正に操作するように特別に設計された「TRITON」と呼ばれる新種の破壊工作ソフト(Malware) が仕込まれていた。

同様のStuxnetという米国政府が開発したMalwareは2009年から2010年にかけて、イラン国内の核燃料施設でウラン濃縮用遠心分離機を破壊した。

PetroRabighではTRITONがSchneider Electric の安全装置のプログラムを変えようとしたときに、安全装置が異状を察知し、緊急シャットダウンして爆発を防いだと見られる。

ハッカーはコントロールシステムにも侵入していることが分かった。工場全体を占拠され、ハッカーの思うがままになるところだった。

専門機関が追跡すると、モスクワにあるロシアの国有の科学技術研究機関Central Scientific Research Institute of Chemistry and Mechanics(CNIIHM)がこれらの攻撃に関与していたことを「強く確信」するに至ったという。

当時の詳細については https://www.knak.jp/FYI/malwere-TRITON.htm


今回起訴されたプログラマー Evgeny Gladkikh はPetro Rabighのガスプラントのコンピューターシステムに侵入、ウイルスTriton をダウンロードし、精油所を2回 緊急停止させた。

Gladkikh はロシア防衛省のApplied Development Center 勤務で、ウイルス Triton はフランスのSchneider Electric製の安全装置を機能不全にするよう設計されていた。

米国の同様のガス施設もターゲットとしたが、成功しなかった。

司法省は、施設を破壊しようとした罪と陰謀で各20年の懲役刑を求刑した。


2) 別途、ハッカーのPavel Akulov, Mikhail Gavrilov, Marat Tyukovが起訴された。米国や世界中のエネルギー施設のコンピューターシステムに侵入しようとした。

原子力規制委員会などの米国政府機関に加えて、500を超える米国および国際的な企業や団体の3,300人を超えるユーザーを標的としたスピアフィッシング攻撃が含まれていた。

カンザス州バーリントンにあるウルフクリーク原子力発電所へも侵入した。

特に発電施設の機器をコントロールするソフトウエア、ハードウエアをターゲットとした。ロシア政府が将来、必要になった時点でコンピューターシステムを破壊できるようにすることを狙った。



被害を受けた企業が捜査に協力したとしているが、どうやって犯人を確定したのかは明らかにしていない。

今回起訴された4人はアメリカ当局によって拘留されておらず、法執行機関がその所在を追っている。上記発表の末尾に注として、逮捕につながる情報に各最大で1000万ドル(約12億円)の懸賞金を支払うとしている。

ロイターによると、中国のSinopecがロシアのSiburとの新しい石油化学計画交渉を中断した。

理由は、Siburの少数出資者で取締役会メンバーであるGennady Timchenkoが、プーチン大統領とのつながりで、EUと英国の制裁対象となったことで、中国は西側のロシア制裁に巻き込まれるのを嫌ったとされる。

Siburとの新しい石油化学計画については明らかにされていないが、立地を選択中の段階で、Sinopec とSibur のJVのシベリアの100億ドルのAmur Gas Chemicals Complex 計画と同様の規模のものと想定される。

Simur Gas Chemicals Complex 計画については、2019/6/14  Sinopec、ロシアのSiburのシベリアの石化計画に参加 

今回の Sinopecの投資はガスケミカル工場への5億ドルの投資とされる。

新計画は資金面でも問題を抱える。資金を供給する国営 Sberbankを含む金融機関自身が制裁により資金が限られる。

Sibur はAmur と同様のSinopech との計画が進行中であることを否定しているが、既存のAmurプロジェクトではSinopecとの協力を続けるとしている。

ーーー

中国外交部は最近、Sinopec、CNPC、CNOOC のエネルギー3社とロシアとの関係をレビューした。

ロイターの情報源は、3社はロシアとの関係を注意深く扱うよう、また、ロシアの資産(原油)を買うのを急がないよう、指示されたという。

ウクライナ問題でロシア軍の即時撤退を求める国連安保理事会の決議が当事者のロシアの拒否権で否決された。

国連安全保障理事会では2月25日午後、緊急の会合が開かれ、米国などが提案した決議案の採決が行われたが、ロシアが拒否権を行使した。

決議案は、ロシアの軍事侵攻に強い懸念を示した上で、ウクライナの主権と領土の一体性を改めて確認し、ロシアに対して軍の即時撤退を求めるもの。

理事国15か国のうち11か国が賛成したが、議長国で常任理事国のロシアが拒否権を行使し、決議案は否決された。

ロシアの拒否権に加え、中国、インド、UAEが棄権したのも、対ロシアでの国際的な包囲網を形成する難しさ を示している。

中国の国連大使は棄権理由について「事態を収めることが必要だ」と述べ、「不当な措置や制裁の発動は状況をより混沌とさせ、平和的な解決への道を閉ざすものになる」と語った。

インドは2021年12月、ロシアと10年間の軍事協力を締結している。ロシア産兵器を大量に調達しており、今後もミサイルなどを買い増す計画である。インドの国連大使も「当事国による対話のみが唯一の前進する道だ」と発言した。

UAEはロシアとエネルギー分野などで連携を深めており、アブダビの石油開発・生産事業にロシア企業が参画しているほか、人工知能(AI)など今後の成長が見込める分野でも連携することで合意している。

他方、ロシアはウクライナに関する人道決議案を提出した。ウクライナへの支援や民間人保護の必要性を訴えたが、人道危機を引き起こしたロシアの侵攻には触れていない。

国連安全保障理事会は3月23日にこれの採決を行った。ロシアと中国のみが賛成、残る13カ国は棄権し、否決された。

英国の国連大使は採決後、「ロシアが人道状況に関心があるなら、子どもへの砲撃を停止し、包囲攻撃もやめるはずだ。しかし、そうはなっていない」と強調した。


拒否権を持つロシアの暴走に対して国連が無力であることが改めて浮き彫りになっている。

現在、ロシアの拒否権が問題となっているが、1972年以降の拒否権発動は米国が81回、ソ連が32回で、米国が圧倒的である。(2000年8月までのデータ)

米国の拒否権は多くがイスラエルのパレスチナに対する行動に関する問題で、賛成が圧倒的な決議を拒否権で否決しているケースがほとんどである。

ーーー

国連の安全保障理事会は15カ国で構成される。

メンバーは、常任理事国5カ国(中国、フランス、ロシア連邦、イギリス、アメリカ)と非常任理事国(任期2年)10カ国の15カ国で、各理事国は1票の投票権を持つ。

議題の採択、安全保障理事会の討議への加盟国の参加招請、手続規則の採択といった手続き事項に関する決定は15理事国のうち少なくとも9理事国の賛成投票によって行われる。 「拒否権」はない。

実質事項に関する決定では、同様に9理事国の賛成投票によって行なわれるが、常任理事国は「拒否権」を持ち、発動されれば決議は否決される。

国連広報局は「国連のここが知りたい」で次のように述べている。

国連憲章の起草者たちは、中国、フランス、ソ連、英国および米国の5大国が、国際的な平和と安全の維持にも重要な役割を果たし続けるだろうと考えたのです。

平和を保障する最善の方法は、特に戦争と平和の問題について、5大国を共通な合意を通じて協力させることでした。

このため、「5大国」のいずれかが手続以外の問題で「反対票」を投じた場合、安全保障理事会は決議を採択できないということで合意がなされたのです。

実際には5大国が、自国又は自国と非常に関係の深い国の行為が問題となった時に拒否権を発動する事態が多発した。

このようなケースでは拒否権を認めないとすべきであった。

しかし、「拒否権を認めない」とのルール変更は5国の拒否権で否決されるのは確実で、今になってはどうしようもない。


2020年8月まで拒否権の行使回数は、下表の通り、ロシア・ソ連が116回、アメリカが82回、イギリスが29回、フランスが16回、中華人民共和国・中華民国が16回である。

常任理事国 1946年-
1971年
1972年-
1991年
1992年-
2020/8
合 計 備考
ソビエト連邦 → ロシア連邦 84 6 26 116 1991年12月よりロシア連邦
アメリカ合衆国 1 64 17 82
イギリス 6 23 0 29
フランス 2 14 0 16
中華民国 → 中華人民共和国 1 1 14 16 1971年10月より中華人民共和国

ソース:ウィキペディア 原典は Security Council Report   全件リスト

当初のソ連の拒否権の多くは新加盟国の承認に関するもので、「平和条約が効力を生じていない」ことを理由に、加盟に拒否権を発動した。
日本の加盟勧告決議案も1952年総会ではソ連の拒否権行使により否決された。 (1956年に調印された日ソ共同宣言には「日本の国連加盟申請をソ連が支持する」ことが記され、加盟が実現した。)

米国も1975年に当時の南北ベトナムの加盟にそれぞれ拒否権を発動している。

1972年以降でみると、拒否権発動は米国が81回、ソ連が32回で、米国が圧倒的である。 (2000年8月までのデータ)

米国の拒否権は多くがイスラエルのパレスチナに対する行動に関する問題である。 理事国のほとんどの賛成を拒否権で葬っている。

一例として、2011年2月18日には、パレスチナ地域におけるイスラエル人入植地が違法であることを再確認し、東エルサレムを含む同地域でイスラエルがすべての入植活動を停止するよう要求する安保理決議(120を超える国々が共同提案国となった)に、14の理事国が賛成したが、ライス国連大使は、「続行中のイスラエルの入植活動の合法性については強く否定する」と述べながら、拒否権を行使した。

最近でも2017年12月に、米政府がエルサレムをイスラエルの首都と一方的に宣言したことを批判するエジプト提案の決議案の採決が行われ、14理事国すべてが賛成したが、トランプ政権が拒否権を発動して廃案に追い込んだ。

中東情勢を報告した国連の中東担当特使は米国の決定は過激派組織を拡大させ、イスラエルとパレスチナの紛争が拡大する「悪循環」を助長すると警告した。

バイデン大統領がプーチンを批判する「力による現状変更」は、米国が支援するイスラエルもパレスチナに対して行なってきた。東エルサレムも含め、エルサレム全体の領有権を主張し、実効支配している。

今回のロシアの拒否権発動のみに関しては、イスラエルの武力による不法行為、残虐行為に対する決議を拒否権で葬ってきた米国は非難する権利はないと思われる。

なお、米国自身が1984年4月に反政府武装組織コントラを使い、ニカラグアに対し武力行使と内政干渉を行い、ニカラグアの主権、領土保全、政治的独立を侵害し、国際的に受け入れられた国際法の基本的原則に違反 したというニカラグアの非難決議を、自らの拒否権で葬っている。(国際司法裁は米国の違法性を認定したが、賠償のないまま、終了した。)

米国とロシアの拒否権をみると、国連が無力であることが分かる。

イエメンの親イラン武装組織フーシ派は3月25日、サウジアラビアのエネルギー施設への攻撃を開始したと発表した。

サウジ主導の連合軍はジッダにあるサウジアラムコの石油関連施設が攻撃を受け、貯蔵タンク 2つで火災が発生したが、死傷者は出ていないと発表した。

フーシ派の軍事報道官は、無人機や弾道ミサイルでジッダのアラムコ施設や首都リヤドの施設などに計16回の攻撃を行ったと発表した。

ジッダにあるアラムコの施設にミサイルを、ラアス・タンヌーララービグの製油所にドローンを発射したと述べた。(ラービグはAracmoと住友化学のJVのPetro Rabig )

首都リヤドの「重要施設」も標的にしたという。

サウジ国営メディアは、連合軍がフーシ派のドローンやロケットによる攻撃を相次いで阻止したと報道、サウジアラビアの防空技術により、ジーザーンに向けて発射された弾道ミサイルが破壊され、配電施設で引き起こされた火災は「限定的」なものにとどまったとしている。


ロシアのプーチン大統領は3月23日、非友好的と指定した国がロシアから天然ガスを購入する際には通貨ルーブルでの支払いしか認めない方針を示し た。関係閣僚とのオンラインの会議で西側の各国がロシアの外貨準備を凍結したことを批判し「このような状況でドルやユーロなどの外貨でわれわれの商品の支払いを受ける意味はない」と述べた。

そのうえで「まず非友好国と地域に供給する天然ガスの支払いをルーブルに変更する。一連の措置を速やかに講じることを決定した」と述べ た。

ルーブルは厳しい経済制裁で大幅に値下がりしてい るが(下のグラフ)、需要家が天然ガスの調達に伴ってルーブルを買う必要がある仕組みにすることで相場を支えるねらい がある。

プーチン大統領は、3月5日付大統領令第95号「特定の外国債権者に対する債務返済義務の一時的手続きについて」に署名、即日発効した。

ロシア政府やロシアの個人・法人が特定の外国債権者に対して債務(金融商品を含む)を負っている場合、ルーブル建てで返済することを認める内容で、西側諸国の対ロ経済制裁への対抗策の一環。

本措置は、返済額が暦月において1,000万ルーブル(約900万円)以上もしくは相当額の外貨の場合に適用される。

ーーー

ロシア政府は3月7日、日本や欧米諸国など48の国・地域を「ロシアに対する非友好的な活動をする国・地域」に指定した。ウクライナ侵攻に伴う対ロ制裁を実施している国や地域としている。

ウクライナ、米国、英国、EU加盟国(27カ国)、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、日本、韓国、ノルウェー、シンガポール、台湾、

モンテネグロ、スイス、アルバニア、アンドラ、アイスランド、リヒテンシュタイン、モナコ、サンマリノ、北マケドニア、ミクロネシア (以上合計48カ国)

  2022/3/9 ロシア、日本などを非友好国に指定 

プーチン大統領は閣僚会議で「ロシアは当然、これまでに締結された契約通りの量と価格で天然ガスの供給を継続する」と述べた。

ロシアの天然ガス大手ガスプロムは欧州などへの天然ガス輸出の58%をユーロ 、約39%を米ドル、約3%が英ポンドで行なっていた。


これに対し、エネルギーの供給を受ける欧州各国の首脳らは、「基本的に契約違反になる」などと相次いで反発し 、決済通貨の一方的な変更は契約違反になるとの認識を示した。

ただ、欧州は消費するエネルギーの多くの割合をロシアからの輸入に依存しており、契約違反として購入をとりやめることは出来ない。今後、購入する企業がどう対応するか、注目される。

「サハリン2」に出資する三井物産と三菱商事は「事実関係を確認中」としている。


日本のロシア産LNGの輸入量は657万トンで、うちサハリン2が600万トンとなっている。
日本が輸入するLNGのおよそ1割を占める。日本の電力会社とガス会社が長期契約で購入してい る。

松野官房長官は「まずは日本の関係企業とも連携しながら情報収集と分析に努めていきたい」と述べた。


付記

G7のエネルギー相は3月28日、オンラインで緊急会合を開き、ロシアが要求している同国通貨ルーブル建てでの天然ガス代金の支払いを拒否することで一致した。

会合後に記者会見したドイツのハーベック経済・気候保護相は、プーチン氏の要求は「一方的で、明確な契約違反だ」と強調。ロシアから天然ガスを輸入する企業に、ルーブルでの支払い指示に応じないよう呼び掛けた。


この報道を受け、ロシアルーブルは対ドルで一時1ドル=100ルーブルを超えて値上がりし、3月2日以来の高値を付けた。

また、欧州のガス価格は一時30%余り急騰した。


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ロシアの宇宙開発公社Roscosmosは3月23日、海外との取り引きは通貨ルーブル建てにすると 発表した。

ルーブルでの支払いを求める動きは全国で始まっていると指摘し、「われわれも海外との取り引きはすべてルーブル建てにする」と述べた。

キオクシアは3月23日、3次元フラッシュメモリ「BiCS FLASH™」の生産能力の増強に備えて、北上工場(岩手県北上市)において4月から第2製造棟(K2棟)の建設を開始すると発表した。2023年の竣工を予定している。

同社は2020年12月9日、北上工場の隣接地(工場東側および北側の土地約13.6万㎡)を取得する方針を決定した。製造棟(K2)の建設に備えるもので、2021年春から整備工事に着手し2022年春を目途に整備を完了する予定としていた。

フラッシュメモリ市場は今後もクラウドサービス、5G通信、IoT、AI、自動運転、メタバースなどの普及により、中長期的な拡大が見込まれており、K2棟の建設により、最先端フラッシュメモリ製品の生産拡大を通じて市場の需要拡大という好機を活かし、有機的な成長を目指す。

米国 Western Degital との共同出資となる見通しで、出資割合など詳細は今後詰める。

K2棟は、地震の揺れを吸収する免震構造を採用するとともに、最新の省エネ製造設備の導入や再生可能エネルギーの利用などで環境面も重視した工場とする。また、AIを活用した生産システムの導入などを推進し、北上工場全体の生産性や品質の向上につなげる。

今回の建設投資は営業キャッシュフローの範囲内で行う計画としているが、関係者によると、投資総額は1兆円程度となる見込み。


キオクシアの議決権の40%を保有する東芝は先月、可能な限り早期に上場するよう書面で正式に要請している。


なお、Wall Street Journalは2021年8月、Western Digitalが、キオクシアを買収する交渉が大きく進展していると報じた。 買収額は200億ドル。しかし、その後、報道はない。

2021/9/31 Western Digital、キオクシアを買収か?

 

なお、キオクシアホールディングスは3月3日、四日市工場と北上工場で部材に不純物が見つかり生産を一部停止した影響で、3次元構造の「フラッシュメモリー」の出荷に遅れが見込まれると発表した。

両工場は1月に停止し、2月下旬に通常稼働に戻っている。部材を調達した段階で不純物が既に入っていたことが分かり、問題のない部材を購入する対応を取ったという。

3月24日の東芝の臨時株主総会で、会社を2分割にするという会社提案は反対多数で否決された。
「物言う株主」から出された会社の非上場化も含めてあらゆる選択肢を検討するよう求める案についても議論され、この提案も否決された。(経緯、議題は後記)

付記

会社側提案  賛成 39.53%、反対 59.69%

株主提案   賛成 44.60%、反対 54.84%


2分割案については、「物言う株主」として知られる海外ファンドが相次いで反対を表明していたほか、株主に議決権行使についてアドバイスを行う Institutional Shareholder Services や Glass、Lewis&Co. も反対を推奨していた。

今回の会社側提案は「株主の皆様のご意見確認」であり、議決に法的拘束力はないが、会社側は事業方針の見直しを迫られる形となり、経営が一層混乱することになる。

3月1日に就任した東芝の島田太郎社長は臨時株主総会で2分割計画推進の議案の否決を受け、「企業価値向上のためあらゆる選択肢の検討を行う」と述べた。


「物言う株主」は、所有株を高く売ることが目的である。

東芝はWestinghouseの損失で債務超過となり、2018年3月末までにそれを解消しなければ上場廃止となる。東芝メモリを売却したが、各国の独禁当局の承認が遅れ、売却益計上ができない。

このため、東芝は2017年11月の取締役会で、第三者割当による新株式の発行を決めた。旧村上ファンド出身者が設立したシンガポールのEffissimo Capital Management や米King Street Capital Managementなど、Goldman Sachs が集めた海外約60社の投資家に割り当てた。

このほとんどは、東芝株を長期に保管する考えはなく、早期に高く売る抜けることが狙いである。

東芝が「2分割」や「3分割」を行っても、急速に株価が高騰することは望めない。このため、会社提案の第1号議案を否決した。


可能性のあるのは、東芝の丸ごと売却である。第3号議案にある「非公開化」である。

東芝は2021年4月7日に英投資ファンドのCVC Capital Partnersから買収を提案された。

CVCは前日6日終値に約30%のプレミアムを加え、1株5000円での買い取り価格を提案した。6日時点の東芝の時価総額は1兆7437億円で、TOBが成立した場合の買収額は2兆3,000億円弱となる。

4月14日付で車谷社長兼CEOが辞任した。

社内での車谷社長に対する不信任は半数を超えたという。
CVCによる買収は車谷氏が持ちかけたとみられ、永山治・取締役会議長 兼 指名委員会委員長(中外製薬名誉会長)らは、こうした動きを「私物化」と判断し、取締役会には解任動議を提出する予定だったとされる。

東芝は4月20日、CVCからの新たな書面になんら具体的な詳細情報が記載されていないとして買収交渉の中断を発表した。

その後、CVCとの交渉は中断されているが、同社や他社との売却案が検討課題となる。


社内の体制も問題である。

3月1日に2人しかいない社内取締役である社長、畑澤副社長を退任し(取締役は留任)、新たに社内から3人の代表執行役(いずれも取締役ではない)を選任した。

しかし、3人の選任は暫定とされており、本年6月開催予定の定時株主総会に付議する取締役候補者の選任案については追って決定することとなっている。

この大混乱を終息する体制がつくれるであろうか。

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東芝は2021年11月12日、事業をスピンオフし、3つの独立会社とする方針を決定した。

インフラサービス Co.デバイス Co. をスピンオフし、残る東芝は事業は営まず、キオクシアと東芝テックの株式を保有するというものであった。


東芝は、「モノ言う株主」から3分割案に反対意見が出るなか、2022年2月7日に「会社を3つに分割する」という方針を一転して見直し、半導体などのデバイス事業だけを分離して2分割とすると発表した。

2022/2/8 東芝 「3分割」を「2分割」に見直し


東芝は2月14日、分割案について株主の意向を確認するための株主総会を3月24日に開催すると発表した。

2分割案に対する株主の意向確認に加え、株主の3D Investment Value Master Fundからの株主提案(第3号議案)も付議する。 同じ株主提案の第2号議案は、株主が撤回したため、議題から削除した。

第1号議案(会社提案) 戦略的再編の検討を進めること(2分割案)に関する株主の皆様のご意見確認の件
第2号議案(株主提案) 定款一部変更の件 → 株主が撤回し、議題から
削除
第3号議案(株主提案) 戦略委員会及び取締役会における戦略の再検討の件
             
(i)非公開化又はマイノリティ出資に関して積極的に検討を行い、
             (ii)べての検討内容、受領した提案及び検討結果の詳細を株主に対して定期的に報告する

2022/2/15  東芝、分割案について株主の意向を確認するための株主総会を開催


東芝は3月1日、同日付での代表執行役の異動を発表した。

2人しかいない社内取締役である社長、畑澤副社長を退任し(取締役は留任)、新たに社内から3人の代表執行役(いずれも取締役ではない)を選任した。

総会議長を務めた 島田新社長は、会社全体を2つに分割する改革案について「予定通り進捗する」としつつ、「全てのステークホルダーの意見を受け止め、全てのオプションを検討したい」と述べた。

2022/3/2 東芝、綱川社長が退任 


東芝の社外取締役の
George Zage Ⅲは3月17日、会社側が反対している第3号議案に賛成すると表明した。株主の一人として賛成票を投じるという。
非上場化を検討することで、「株主に追加情報を提供できる可能性がある」としている。会社2分割計画への賛否は示さなかった。

日本は、多くのレアメタルで90%以上を輸入に頼っているが、中でもパラジウムは全輸入量の40%をロシア産が占め、ニッケルも21%、プラチナは10%がロシアからの輸入である。

西側諸国による対ロシア制裁により世界的なレアメタルの供給不足、価格上昇が進むと予想され、特に日本の自動車産業は大打撃を被る可能性がある。

ニッケル・パラジウムの生産で世界最大手、プラチナ・コバルト・銅・ロジウムの生産で世界大手のロシアのNorilsk Nickelは、欧州空域の大半がロシアからのフライトに対し閉鎖されたことから、製品の供給途絶に直面している。但し、中国などの第三国を経由して世界に供給される可能性はある。逆にロシアが制裁への報復として輸出をとめる可能性もある。


パラジウムは、白金族金属(ルテニウム、ロジウムパラジウム、オスミウム、イリジウム、プラチナ)の1つで、ロジウムとともに、自動車産業や燃料電池には不可欠なレアメタルである。

自動車においては、有害な排ガスを浄化・無害化する触媒の基幹材料として使われる。

ロジウムは、酸性雨の原因となるNOx(窒素酸化物)をN2(窒素)に還元し、プラチナとパラジウムは炭化水素を無害な水に、一酸化炭素を二酸化炭素に酸化して、クリーンなガスに変えて排出する。 ディーゼル車の浄化触媒装置には主にプラチナが、ガソリン車のそれにはパラジウムが使われている。

現行の技術では、排ガス浄化触媒として白金族金属を使用しないと、排ガス規制をクリアできない。


パラジウムは、触媒材料としてだけでなく、電極材料や歯科材料としても使われる。金(や銀)とパラジウムの合金は、耐食性、強度、延性が高いため、歯科材料としては重要な材料の1つである。

若干古いデータだが2012年のデータを示す。

1)鉱石生産シェア

ロシア 南ア 北米 その他
プラチナ 13% 69% 5% 13%
パラジウム 44% 36% 14% 7%
ロジウム 13% 80% 3% 4%


ロシアの白金族元素の大半は、ノリリスクのニッケル・銅鉱床から産出する。

2) 用途

自動車排ガス浄化 宝飾品 電子材料 その他
プラチナ 38% 34% 28%
パラジウム 67% 12% 21%
ロジウム 80% 20%

上記2つは、日経XTECH 「ウクライナ問題で「パラジウムショック」再び 露の供給に不安」より

3)企業別生産内訳

プラチナ パラジウム
MMC Norilsk Nickel ロシア 13% 45%
Anglo American Platinum 南ア 47% 44.5%
Impala Platinum 南ア 16% 10%
Lonmin 南ア 13% 5%
その他 11% 4.5%

    ソース:JOGMEC 白金族金属(PGM)のマテリアルフロー --安定供給上の課題--

白金族元素の生産はロシアと南アが大部分を占める。南アはこれまで、しばしば鉱山ストライキを起こしており、供給は不安定である。


パラジウムの価格推移は下記の通りで、最近急騰している。


Volkswagen Group Chinaは3月21日、中国企業2社と車載電池の主要材料を生産する合弁をインドネシアと中国に設立することで基本合意したと発表した。

合弁相手先は、コバルトを使った電池材料などを手掛ける浙江華友鈷業 (Huayou Cobalt)と、ニッケル鉱山の権益を保有し、世界最大のニッケル生産会社で、ステンレス鋼大手の青山控股集団(Tsingshan Group )。

ニッケルの資源が豊富なインドネシアでは、3社で電池材料を製造する合弁会社を設立する。製造した材料を2つ目のJV(中国)で利用するとみられる。

中国の広西チワン族自治区では、VWと浙江華友鈷業の2社で、ニッケルとコバルトの精製、プレカーサ―、正極材を製造する合弁会社を設立する。

電池で主要コストとなる正極材に関するサプライチェーン(供給網)を構築する。

最終段階では、160 gigawatt hours のEV用電池の原料を供給するとしている。

VWは、2つのJVは、電池のコストを30~50%引き下げるという長期目標に貢献することをターゲットにしていると述べた。


VWは2021年3月に電動化ロードマップを発表した。

電気自動車(EV)シフトを一段と加速する。2025年に世界の新車販売の2割をEVにし、2030年に5割、2035年には大半をEVにする。欧州では2030年に6割を目指す。
遅くとも2025年までに世界EV市場のリーダーになることを目指す。

バッテリー:
電池メーカーとの合弁などを通じて40 GWh の工場を2030年までに欧州で6カ所設ける。
規格を統一した電池(
角型の"Unified Cell"、搭載自由度の高い形状)を大量生産しコストを半減、ガソリン車より安いEVを目指す。

欧州全体に高出力な急速充電ステーション網を25年に20年比5倍に拡大

2021/3/23 VWグループ、EV向け次世代電池を大量生産


VWは2021年7月13日、中国の電池大手の国軒高科と共同でドイツで電気自動車(EV)向け電池を生産すると発表した。2025年から生産を始める。

2021/7/16 VW、ドイツで中国大手とEV電池工場


なお、ウクライナ情勢を背景としたニッケル相場の急騰を受け、青山控股集団が先物取引ショートポジションで数十億米ドルに達する損失を出した――とする情報が広がっている。

青山控股は追加証拠金に応じるため、中国建設銀行やJPモルガン・チェースなどから融資提供の約束を取り付けたとされる。

ーーー

VWは3月21日、北米で今後5年間に71億ドルを投資し、2030年までにEV 25モデルを新たに投入する計画を明らかにした。

2030年までに新車販売にEVが占める比率を55%に引き上げる。(欧州では同年までに70%とすることを目指している。)

北米全体でガソリン車モデルを段階的に減らし、2030年代の初めにガソリン車の販売を中止する。

クロスオーバー型(街乗りでの快適性を重視した都市型の多目的スポーツ車)のEVの「ID.4」の生産を年内に始め、2024年にミニバン型EVの「ID.BUZZ」を米国で発売すると発表した。

ID.4はテネシー州の工場で生産し、メキシコの工場でもEV生産を2020年代半ばまでに開始する。北米でID.BUZZを生産するかどうかはまだ決定していない。

米国ではEV用電池の生産も計画している。



付記

VWは3月23日、スペイン東部バレンシアに電気自動車(EV)の電池工場を設けると発表した。電動車生産などを含めた総投資額は70億ユーロ(9300億円)にのぼる。

バレンシアの電池工場の生産能力は年間40ギガワット時で、VWグループで規格化した最新の電池セルを生産する。22年中に工場の建設を始め、2026年から生産を始める。

VWは2021年7月、中国の電池大手の国軒高科と共同でドイツで電気自動車(EV)向け電池を生産すると発表したが、これとは別にスペインでも電池とEVの生産を検討することを明らかにした。

VWと同社の傘下のスペインの自動車会社SEAT S.A. が、スペインの電気自動車やコネクテッドカーのヴァリューチェーン強化を目指すスペイン政府のStrategic Project for the Recovery and Economic Transformation (PERTE) に参加する。

スウェーデン、ドイツに次ぎ、VWとして3番目の電池工場をスペインに建設する。

2021/7/16 VW、ドイツで中国大手とEV電池工場

今回、具体的計画を明らかにした。

VWは欧州で2030年までに合計240ギガワット時の電池生産能力を持つ計画を進めている。スペインの工場は、20%出資するNorthvolt (スウェーデン)のスウェーデンの工場とドイツ・Salzgitterの工場に次ぐ3拠点目になる。チェコでも建設を検討している。

ロシアのウクライナの黒海側への攻撃で、ウクライナの3つの空気分離企業のうちのCryoin Engineering がOdessaの工場、Ingas LLC がMariupolの工場の操業を停止した。

2社のほか、Iceblick がウクライナのOdessa とロシアのMoscowにプラントを持つ。同社も製造の継続は無理と思われる。

Iceblick は世界のネオンの65%、クリプトンとキセノンの15%を占める。1990年にOdessaで設立され、急速に成長した。

ウクライナはレアガス :ネオン(Neon)、クリプトン(Krypton)、キセノン(Xenon)の世界最大の供給者で、ネオンの70%、 クリプトンの40%、キセノンの30%を占める。半導体に回路を描く「露光工程」で使うレーザー光発振に用いるネオン の90%を供給している。

各社はロシアでの鉄鋼製造の副産物として出るガスをウクライナで精製している。 ロシアの侵攻で、ロシアとウクライナ両国にまたがるネオンのサプライチェーンは事実上寸断されている。

半導体の製造にはネオン、クリプトン、キセノンなどの希ガスが欠かせない。

ネオン(Ne) は、シリコンウェハーに回路を刻む露光工程で使われるエキシマレーザーガスの原材料の一つ。クリプトン(Kr) は、半導体のエッチング工程で、キセノン(Xe) もエッチング工程で使用される。

米国のセミコンダクターのサプライチェーンではネオンの90%はウクライナからの輸入品とされる。

韓国の2021年輸出入貿易統計では、ネオンの輸入はロシアからが5.2%、ウクライナからが23%で、クリプトンはロシアからが17.5%、ウクライナからが30.7%、キセノンはロシアからが31.1%、ウクライナからが17.8%である。

ロシアとウクライナからの輸入が長期間途絶えると、半導体の生産に支障が出ることになる。

これらは地上の大気中にPPM(100万分の1)レベルでしか存在せず、空気から希ガスのみを取り出すのは極めて難しい。

このため、工業的には空気分離プラントの副生品としてしか生産できない。しかも、経済性を得るためには、数10万m3/hの空気処理能力を有する空気分離プラントでしか成立しない。(下図:東京ガスケミカルのHPより)


日本ではこのような大規模なプラントが少ないため、
海外からの輸入に頼らざるを得ない。また、副産品のため、レアガスだけの増産はできない。

現在、エア・ウォーターがクリプトンとキセノンを国内生産している。


韓国では、ポスコが半導体用特殊ガス専門企業であるTEMC社と協力し、最近、ネオン(Ne)の国産化に成功し、製品を出荷した。 但し、韓国需要の約16%しか供給できない。



なお、韓国では3月4日に物価問題に関する関係閣僚会議を開催、そのなかで、ネオン、クリプトン、キセノンなど、半導体の製造工程で使用する品目の需給状況の点検を行い、3月中に関税割り当ての適用を検討することを決めた。

そして3月17日に、ロシアとウクライナからの輸入依存度の高いネオンやキセノン、クリプトンに割当関税(0%)を適用することを決めた。これらの現在の関税5.5%である。

米国の内務省海洋エネルギー管理局は2月25日、 ニューヨーク州ロングアイランドとニュージャージー州の間に広がるニューヨーク湾(New York Bight)での洋上風力発電のリース権入札が総額43億7千万ドルで成立したと発表した。

リース権入札にかけられた地域はの6つの地域で、その総面積は約49万エーカー(約2,000平方キロ)。生成予定電力量は5.6ギガワット(GW)で、200万世帯近くの電力を賄う量とされる。

ニューヨーク州やニュージャージー州政府は、2035年までにそれぞれ風力発電を9GW、7.5GWに拡大する目標を掲げている。

バイデン政権では2030年までに洋上風力発電を30GWに拡大する目標を掲げている。

ホワイトハウスは2021年3月29日、内務省やエネルギー省、商務省などと共同で、洋上風力発電能力を拡大する方針を発表した。2030年までに30GWの洋上風力による電力生成を目指す。30GWは1,000万世帯以上への年間電力供給に十分な量となる。


落札企業は下記の通りで、上から5社は欧州系企業、最後は米国系企業である。

Lease Area Acres

百万ドル

Mid-Atlantic Offshore Wind LLC
(Copenhagen Infrastructure Partners Fund)
OCS-A 0544 43,056 285
OW Ocean Winds East, LLC
(50:50 スペイン EDP Renewables & フランスENGIE.)
OCS-A 0537 71,522 765
Attentive Energy LLC
(Total Energies Renewables USA, LLC)
OCS-A 0538 84,332 795
Bight Wind Holdings, LLC
(独
RWE Renewables & 英 National Grid).
OCS-A 0539 125,964 1,100
Atlantic Shores Offshore Wind Bight, LLC
(50:50 Shell New Energies US LLC & EDF Renewables North America)
OCS-A 0541 79,351 780
Invenergy Wind Offshore LLC
(Invenergy & energyRe)
OCS-A 0542 83,976 645

現状の洋上風力発電サイトはロードアイランド州沖にある30メガワット(0.03GW)とバージニア州沖にある試験プロジェクト2カ所だけ。

米国初の洋上風力発電所 Block Island Wind Farmが2016年12月12日、運転を開始した。場所は米国東海岸ロードアイランド州 Block Islandの約6km沖。事業主は同発電所を建設するために組成されたDeepwater Wind。同発電所の設備容量は30MW(6MWタービン5基)と欧州のものに比べ小規模だが、米国初の洋上風力発電所が誕生した。

米Dominion Energyは2019年7月1日、バージニア州の大西洋沿岸27km沖で、米国で2ヶ所目となる洋上風力発電所「Coastal Virginia Offshore Wind」の建設に着工した。設備容量は6MWが2基で合計12MWで、パイロット・プロジェクトの位置づけ。

米国内務省は2021年10月13日、2025年までに国内最大7カ所で洋上風力発電所を開発し、同発電所のリース使用権の販売を進める計画を発表した。

洋上風力発電所の予定地はメイン湾、ニューヨーク湾、中央大西洋沖、カロライナ沖合、メキシコ湾、カリフォルニア沖合、オレゴン沖合の7カ所。

具体的なエリア選定を既に終えているニューヨーク湾(上記)やカロライナ沖合では、それぞれ2022年第1四半期(1~3月)、2022年5月ごろに開発を完了するとしており、カリフォルニア沖合は同年9月ごろ、メキシコ湾も同年末ごろの開発完了を目指すとしている。

そのほか、中央大西洋沖では2023年第2四半期(4~6月)、オレゴン沖合では同年第3四半期(7~9月)、最も遅いメイン湾では2024年半ばごろの開発完了を目指す。これらの開発は30GWの発電容量目標達成に寄与することに加え、約8万人の雇用を創出するとしている。

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日本でも国が洋上風力発電の公募を行なっている。

2022/2/24 国の洋上風力発電公募入札の評価基準が問題に

これについては、金額が優先され、運転開始時期が低く評価されていることが問題となっていた。

経済産業省は3月18日、洋上風力発電の事業者を公募する際の審査基準を見直す方針を発表した。ウクライナ危機を受け、国産エネルギーの導入を加速する必要があると判断し、早期に稼働できることを重視する方向で検討する。

3月22日の経産省などの審議会で具体的な議論を開始する。現在公募中の「秋田県八峰町・能代市沖」は、6月10日までとしていた公募期間を延長して新たな審査基準の適用を目指す。

 

スウェーデンの電池メーカー Northvolt は3月15日、ドイツ北部の Heideに電気自動車(EV)用の電池工場を建設すると発表した。
2025年後半に生産を始める。同社として3拠点目となる電池工場で、能力は60 GWhで、
リチウムなどのレアメタルを再利用するためのリサイクル工場も敷地内に設ける。

完成すれば同社の能力は下記の通り、170GWhとなる。

能力 提携EV会社
スウェーデン北部 Skelleftea 最終 60 GWh VW 40GWh、Volvo 15GWh 2021年後半生産開始予定
スウェーデン Gothenburg 50 GWh Volvo 2025年稼働
ドイツHeide 60 GWh 2025年稼働
合計 170 GWh

付記

Northvoltは2024年11月21日、米国で連邦破産法第11条(チャプター11)を申請した。経営権を保持しながら事業再建を進める。

安価な中国製電池に押されているほか自社工場の量産体制の遅れが響き、資金繰りが悪化していた。


日経まとめ


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Northvoltはリチウムイオンバッテリーを生産する会社で、2016年に元Teslaの幹部のPeter Carlsson氏により設立された。

Northvoltは2019年にVW、BMW、Goldman Sachs、IKEAグループなどから合計10億米ドルの出資を受けた。増資と欧州投資銀行からの4億ドルの融資で、第1号の工場をスウェーデン北部 Skelleftea(シェレフテオ)に建設、16GWhの生産から始め、最低32GWh以上の容量まで増やすとしていた。

Northvoltは3月1日に米国のバッテリー技術の企業 Cuberg を買収し、Silicon Valleyに先端技術センターを得た。 Cubergは液体電解質にリチウムメタルアノードを組み合わせる次世代バッテリーを商業展開するためにスタンフォード大学からスピンアウトした。
Cubergのバッテリーは、電動航空機使用向けにデザインされた同程度のリチウムイオン電池に比べて航続距離と容量を70%増やすとされる。

一方、Volkswagen(VW)は2021年3月、Northvoltとの間で、今後10年にわたるバッテリー製造で140億ドルの契約を結んだ。

Northvoltの株式を追加取得し、Northvoltが欧州のVWグループ向けの主要な電池サプライヤーとなる。

提携の一環として、Northvoltのスウェーデンのプラントは拡張し、40 GWh とする。

VWは最重要部品となるバッテリーについて、電池メーカーとの合弁などを通じて40 GWh の工場を2030年までに欧州で6カ所設ける。規格を統一した電池("Unified Cell")を大量生産しコストを半減、ガソリン車より安いEVを目指す。

2021/3/23 VWグループ、EV向け次世代電池を大量生産

Northvoltは2021年6月9日、増資で27億5000万ドルを調達すると発表した。スウェーデン北部Skellefteaで年内に稼働する工場の生産能力を5割引き上げ、60GWhギガワット時(6000万キロワット時)する。電気自動車(EV)への移行で高まる需要に応える。

今回の資金調達ではVWや米ゴールドマン・サックスなどの既存株主のほか、スウェーデンやカナダの年金ファンドなどが新たに参加した。VWは同日、6億2千万ドルを出資することを発表、約20%の出資比率を維持する。

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NorthvoltとスウェーデンのVolvo Cars Groupは2021年6月21日、電気自動車(EV)用電池を開発、生産する合弁会社を設立すると発表した。出資比率は50:50で、まずスウェーデンに研究開発センターを設立し、2022年に稼働を始める。また、欧州域内に電池生産工場を新設し、2026年から生産を始めるとした。

Volvo Cars はNorthvoltのSkelleftea工場で生産した年間15GWhの電池セルを調達することも検討している。

Volvoは2020年代半ばまでに、販売するクルマの半分をEVにし、2030年までにラインアップのすべてをEVにすることを目指している。

NorthvoltとVolvoは2021年12月、バッテリーの開発と製造への300億クローネ(約3,759億円)の投資の一環として、スウェーデンのイェーテボリ(Göteborg)にR&Dセンターを開設することを決めた。

両社は2022年2月4日、イェーテボリ(Göteborg) の近郊に大規模なEV用電池工場を建設すると発表した。
新工場は2023年から建設を始め、2025年から稼働を開始する予定で、最大3000人を雇用する。年間生産能力は最大50GWhで、年間約50万台の電気自動車(EV)に供給できる。

生産した電池セルは、VolvoおよびPolestarブランドの次世代高級EVに搭載する。

米、ゼロ金利解除

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アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)は2022年3月16日、短期金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0~0.25%から0.25~0.50%に引き上げると決めた。
セントルイス連銀のブラード総裁は反対し、利上げ幅0.5%を主張した。

新型コロナウイルス危機への対応として始めたゼロ金利を2年ぶりに解除、インフレ抑制に向けて大きな一歩を踏み出した。

FRBは声明で「最大限の雇用とインフレ率2%を長期的に達成することを目指している」と述べている。

パウエル議長は記者会見で「政策金利の誘導目標の継続的な引き上げが適切だと考える」と表明した。米景気が後退する可能性は「特に高まっていない」との認識を示した。

2022年中に今回を含め7回、 0.25%ずつ、利上げする想定を示した。(年末には1.75%になる。)

さらに2023年も3~4回の利上げを見込み、金利水準は2.8%程度まで上がると想定される。

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FRBは2021年11月3日、11月にテーパリング(量的緩和の縮小)を開始すると発表した。

11月から毎月の購入額を国債を100億ドル、住宅ローン担保証券を50億ドルの合計150億ドルずつ減らしていく計画を正式に決定した。順調にいくと8カ月で購入はゼロとなり、2022年6月でテーパリングは終了する。

この時点では、Federal Fund金利の目標誘導レンジを 0.00% ─ 0.25%に維持することを決定、2020/3/15 以降の利率を維持した。

労働市場の状況が委員会の最大雇用の評価に一致する水準に達し、インフレ率が2%に上昇して当面の間2%をやや超えるような軌道に乗るまで、この目標誘導レンジを維持することが適切だとした。

2021/11/5 FRB、11月から量的緩和の縮小開始


2022年2月のこれらの状況は下図のとおりで、失業率は低下し、物価はエネルギー価格の急騰もあるが、エネルギーと食品を除くコアも急上昇している。

エーザイは3月15日、米Biogeenと共同開発するアルツハイマー病治療薬ADUHELMについて、2023年1月以降は共同開発・販売から手を引き、販売額に応じた収入を得る契約に切り替えると発表した。


エーザイとBiogenは
2014年3月に提携を開始した。

現状は次の通りで、アリセプトを除き、開発で提携している。

エーザイ アリセプト 〈提携対象外〉
(donepezil)
エーザイの杉本八郎博士らが開発
アルツハイマーでは、神経伝達物質のアセチルコリンが脳内で減少している。

アセチルコリンを分解するアセチルコリンエステラーゼの作用を阻害することで、アセチルコリンの濃度を高める。

新規ヒト化モノクローナル抗体
「BAN2401」
 
2022年度中に申請
2007/12 スウェーデンのBioArctic Neuroscience ABから全世界の研究・開発、製造、販売の独占ライセンスを受ける。 アルツハイマー病の原因と考えられるベータ・アミロイド成分を除去
βサイト切断酵素(BACE)阻害剤
elenbecestat「E2609」 
 
x試験中止
エーザイが創製

 

アミロイド前駆体タンパク質のβサイト切断酵素であるBACEを阻害することでβアミロイドの総量を低下させる。
Biogen 抗アミロイドβ(Aβ)抗体  
aducanumab
ADUHELM
 
→ 申請→FDA優先審査
 
 2021/6/7 迅速承認
Neurimmune社より共同開発およびライセンス契約締結のもとに導入 アミロイド斑(プラーク)は、アミロイドβ蛋白が蓄積したもので、アルツハイマー病患者の脳にみられる。

aducanumab 投与でアミロイドプラークのレベルを下げる


2017年の提携契約拡大で、エーザイは、BiogenのADUHELM に対する共同開発・共同販促オプション権を行使した。 (一時金 なし)

両社は、ADUHELMの販売に向けて各地域において各社が有する強みや販売基盤をレバレッジするとともに、売上に応じて各社が得る地域別利益配分を調整する。

売上計上

利益帰属

エーザイ Biogen
日本とアジア
(中国と韓国を除く)
エーザイ 80% 20%
米国 Biogen 45% 55%
欧州 31.5% 68.5%
その他地域 50% 50%


開発費負担:

Biogen エーザイ
~2018/3 100%
2018/4~2018/12 85% 15%
2019/1~ 55% 45%


今回の変更で、2023年1月1日以降、エーザイは、グローバルな損益分配モデルに代わり、ADUHELMの売上に応じて、2%~8%の段階的なロイヤルティを受領する。

暦年売上高     ロイヤルティ率
250 百万米ドル以下 2%
250 百万米ドル超~500 百万米ドル 3.5%
500 百万米ドル超~10 億米ドル 6%
10 億米ドル超 8%

今回の合意に伴って、BiogenはADUHELMに関し、全世界における単独での意思決定権および商業化権 を持つ。エーザイは、ADUHELMに関して、ロイヤルティの受領以外に、いかなる経済的権利・義務も有しない。

ADUHELMは米国で条件付き承認を取得したが、有効性への疑義などから普及が進んでいない。

米食品医薬品局(FDA)のJanet Woodcock長官代行は7月9日、米製薬企業Biogenと日本のエーザイが共同開発したアルツハイマー病新薬ADUHELM(一般名:アデュカヌマブ)について、FDAの承認手続きに疑義が生じたとして、米保健福祉省の監査部門に調査を要請したと発表した。

2021/7/12 FDA、アルツハイマー新薬承認手続きにつき調査を要請


エーザイは同じく両社で共同開発する次期候補薬BAN2401に経営資源を集中させる。

開発中の抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体レカネマブ(BAN2401)については、両社は、共同で開発および商業化を継続する。

エーザイは引き続きレカネマブの開発、薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで両社が共同商業化・共同販促を行う。

両社は、レカネマブに関する経済的権利及び義務を等しく有し、エーザイは全売上を計上し、損益は両社で折半する。

また、レカネマブの供給契約は5年から10年に延長され、Biogenイは、スイスのソロトゥルンの工場でレカネマブの原薬を製造し、全世界に安定供給する。

米欧の経済制裁に反発し、ロシアの国営宇宙公社 Roscosmos State Corporation for Space Activities は3月3日、英企業 OneWeb LLC のソユーズでの人工衛星の打ち上げを中止した。

OneWebカザフスタンのバイコヌール宇宙基地における同社の衛星打ち上げ全てを一時的に停止することを決定したと発表した。3月5日にも新たに36機が打ち上げられる予定であったが、衛星を搭載した「ソユーズ2.1b」ロケットは発射台から撤去された。

OneWebは自社の通信サービスを提供するために、648機の通信衛星からなる衛星コンステレーションの構築を地球低軌道で進めている。衛星の打ち上げはバイコヌール宇宙基地およびフランス領ギアナのギアナ宇宙センターから「ソユーズ」ロケットを使って実施されており、打ち上げ済みの衛星数は2022年2月の時点で428機に達していた。

Roscosmos は3月4日、ツイッターに「西側の制裁への私たちの報復だ」と投稿、人工衛星の打ち上げをとりやめたのは、英政府のせいだと正当化した。

Roscosmos は打ち上げの条件として、英政府がOneWebから出資を引き揚げることと、衛星が軍事目的でないことを証明することをOneWebに要求した。(英国のものは打ち上げない)

しかし英政府は「政府はOneWebの株を売却しない」として拒否、Roscosmos は英側が条件に応じなかったので中止を決めたとしている。


ソユーズが使えないため、三菱重工には欧米を中心とする衛星運用会社からの問い合わせが引きも切らないという。


影響は米国、ロシア、日本、欧州、カナダの計15カ国で運営される国際宇宙ステーション(ISS)にも及んでいる。

ISSには現在、米国、ロシア、ドイツの宇宙飛行士計7人が滞在している。Roscosmos は3月3日、ドイツの宇宙機関に対し、ISSでの共同科学実験を終了するとの書簡を送った。

地上から約400キロ上空を周回するISSの高度維持や姿勢制御は、ロシアが打ち上げるISSへの補給船とロシアのモジュールが担っている。

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OneWeb LLCは、米国に本社を置く低軌道衛星コンステレーションを用いた衛星通信を計画する衛星通信会社であった。

ソフトバンクグループなどから総額約30億ドルを調達し、2019年2月には、試験機となる衛星6機の打ち上げに成功、2020年2月と3月にもそれぞれ34機の衛星を打ち上げていた。また、地上局の一部も完成し、400Mbpsを超える通信速度と、32msの小さなレイテンシ(遅延時間)をもつブロードバンド・システムの実証実験に成功している。ソフトバンクグループは19億ドル出資し、同社株式の5割近くを保有していた。

しかし、2020年に入ってから、事業の継続に必要な新たな資金調達に失敗、2020年3月27日に連邦破産法第11章に基づく会社更生手続きを申請した。

申請時点で、サービス開始に必要な衛星648機に対して、打ち上げ済みは74機に留まっていた。同社は「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行に関連した財務上の影響や市場の乱高下により、資金調達プロセスが停滞したため」と説明している。

同社は2020年7月3日、インドの移動体通信大手Bharti Global と英国のビジネス・エネルギー・産業戦略省からなるコンソーシアムによって買収された。落札額は10億ドルで、両者がそれぞれ5億ドルを出資したという。運営権はBharti Global がもつ。

これによりOneWeb は衛星コンステレーションの構築を続けるための資金を獲得、英国政府は、EU離脱によってアクセス権を失った衛星航法システム「ガリレオ」の代わりに、"英国版GPS" としても利用することを目指す。

同社は2021年1月、ソフトバンクグループと米ヒューズ・ネットワーク・システムズから投資を受け、総額14億ドルの資金を確保したと発表した。今回調達した資金で、2022年末までの整備を計画している計648基の人工衛星ネットワークの費用を賄う。

バイデン米大統領は3月8日、ロシア産の原油、天然ガス、石炭と関連製品の輸入を全面的に禁止すると発表した。同日に大統領令に署名し、即日発効した。

英国のジョンソン首相は同日、ロシアからの原油と石油製品の輸入を段階的に削減し、2022年末までに完全に停止すると発表した。

2022/3/9 ロシア産原油禁輸、米が追加制裁 即日発効 英は年内停止

G7は3月11日、ウクライナへの侵攻を続けるロシアに新たな経済制裁を科すと表明した。

ロシアの最恵国の地位を取消し、ロシアからの輸入品に大幅に高い関税を課すほか、高級品の対ロ輸出も禁じる。

EU主脳会議は、2027年までにロシア産ガスや石油からの依存を脱する方針を確認した。

   2022/3/14 G7、ロシアに新たな経済制裁

しかし、欧州諸国がロシア産の原油、天然ガス及び石炭の輸入をやめるのは簡単ではない。

河野太郎衆院議員の「ごまめの歯ぎしり」 2022年3月9日号は「ロシア産のエネルギー資源」として経産省のデータを載せている。

バイデン大統領は「ロシア産の原油、天然ガス、石炭と関連製品の輸入を全面的に禁止」としたが、 米国の石油の依存度は2%(石油製品を入れれば8%)に過ぎず、天然ガスと石炭はゼロである。大々的に「輸入の全面禁止」を打ち出したが、実は他国に輸入停止を促すためのものであろう。

欧州はロシア依存が大きく、輸入禁止は大問題である。

英国の場合、石油は11%、天然ガスは5%であるが、石炭は36%を依存している。

フランスは天然ガスが27%、石炭が29%で、ドイツにいたっては、石油が34%、天然ガスが43%、石炭が48%と、消費の半分弱がロシアからの輸入品である。

ロシアからの輸入をやめ、他のソースに切り替えるのは大変である。

石油については、OPECは、サウジ産の輸出量 にほぼ近いロシアの輸出量日量約700万バレルを埋め合わせる余剰能力はないと述べた。サウジアラムコのCEOは「サウジの増産余地は日量200万バレルで世界需要の2%相当しかない」と述べた。

少なくとも中国はロシア原油の輸入を増やすと思われ、700万バレルがそのまま無くなることはないが、大変であることには間違いない。

天然ガスについては、欧州はロシアからパイプラインで供給を受けている。これを切った場合、他国からLNGで輸入するしかな い。
その場合、LNGの受け入れ設備、気化設備の設置が必要である。供給側も追加需要に対し、液化・出荷設備の建設が必要である。また輸送のための船も追加で必要となる。

EU首脳会議は今回、「2027年」までにロシア依存を脱するとしている。それまでは輸入を続けるということだろうか。


なお、日本の依存度は石油が4%、天然ガスが9%、石炭が11%となっている。

ロシア産LNGの輸入量は657万トンで、うちサハリン2が600万トンとなっている。

Shellは2月28日、主要な液化天然ガスプラントを含むロシアの全事業から撤退すると発表、「サハリン2」からも手をひく。

サハリン2には三井物産が12.5%、三菱商事が10%出資し、輸入LNGはJERAや東京ガスなど日本の電力・ガス会社8社が長期契約で調達している。

三井物産は「エネルギー安全保障をどう考えるか政府と協議する」としているが、どうするのだろうか。

撤退すると、代わりに価格が暴騰しているスポット品を購入する必要がある。LNGは中国が喜んで引き受けるだろう。

2022/3/1 Shell、サハリン2から撤退

NNA ASIAによると、ロシアに対する制裁が増えるなか、中国からロシア、ベラルーシを経由して欧州に至る中欧班列 (Trans-Eurasia Logistics) は3月4日時点で運航に影響がないことが分かった。

ウクライナ経由でハンガリー・ルーマニアに向かう支線については、ウクライナ国内の鉄道施設が破壊されたため、迂回措置が取られているが、中国からカザフスタン・ロシア・ベラルーシを経てEU玄関のポーランドに至るメインルートについては、中国側からも欧州側からも運行を停止したという情報はないという。

東洋経済によると、「中欧班列の98%以上はロシア、ベラルーシ、ポーランドを経由して西ヨーロッパに向かうルートを走っており、ロシアのウクライナ侵攻の影響は現時点では限られている。


欧州と中国間の輸送を止めても、ロシアは困らず、困るのは欧州と中国であるからだろう。ロシアとベラルーシ向け貨物は当然、禁止品目がないかチェックすると見られる。
逆に、ロシア側も中国を困らすことはしないだろう。

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2008年1月に北京とドイツのハンブルグを結ぶ路線が生まれた。中国鉄道とTrans-Mongolian鉄道、Trans-Siberian 鉄道を使い、中国から蒙古、ロシア、ベラルーシ、ポーランド経由でドイツまでの10,000kmを15日で走る。2011年3月に正式に営業を開始した。

2011年に重慶とドイツ西部の工業都市 Duisburg を結ぶ貨物鉄道「渝新欧鉄道(Yuxinou Railway)」が生まれた。重慶から北上して西安から Duisburgに到る。

2014年12月9日に中国と欧州を結ぶ国際貨物列車「義新欧鉄道("Yixinou Railway")」の第1号列車が、スペインのマドリードに到着した。浙江省・義烏市を出発し、新疆ウイグル自治区阿拉山口の国境で中国を出国し、カザフスタン、ロシア、ベラルーシ、ポーランド、ドイツ、フランスを通過して、21日後にマドリードに到着した。

2014/12/13 中国と欧州を結ぶ国際貨物列車の第三路線が開通 

2016年6月以降は中国各都市から欧州や「一帯一路」沿線国を結ぶ貨物列車便を「中欧班列」という統一ブランドで総称し、中国各都市と欧州23カ国180都市を結んでいる。


中国国家鉄路集団によると、中国と欧州や「一帯一路」沿線国を結ぶ国際貨物列車「中欧班列」の運行本数が2022年1月29日に累計で5万本を突破した(「人民日報」1月30日)。

G7は3月11日、ウクライナへの侵攻を続けるロシアに新たな経済制裁を科すと表明した。

ロシアの最恵国の地位を取消し、ロシアからの輸入品に大幅に高い関税を課すほか、高級品の対ロ輸出も禁じる。

国際通貨基金(IMF)や世界銀行、欧州復興開発銀行(EBRD)によるロシアへの融資を阻止することでも協力する。

プーチン大統領の側近や関係が近い大富豪への制裁を強化するほか、重要製品や技術、高級品が渡らないよう貿易を規制する。暗号資産(仮想通貨)などを使って制裁を回避しないよう監視を強める。


声明
内容は下記の通り。

1)各国の手続と整合的な形で、重要製品に関するロシアの最恵国の地位を否定する行動をとるよう努める。

これにより、WTO加盟国としての重要な利益が打ち消され、ロシア企業の製品が最恵国 待遇を受けないことが確保される。

2)国際通貨基金(IMF)、世界銀行、欧州復興開発銀行を含む主要な多国間金融機関からロシアが融資を受けることを防ぐよう共同で取り組んでいる。

  国際法に著しく違反しておきながら、国際経済秩序の一部であることの恩恵を受けることを期待することはできない。

3)プーチン大統領やその他の戦争の立案者に近いロシアのエリート層、代理勢力、オリガルヒ及び彼らの家族やその支援者に対して圧力をかける。

制裁を受けた個人及び団体が所有する動産及び不動産を特定し凍結する

4) 制限的措置の有効性を維持し、回避を取り締まり、抜け穴を塞ぐ

国際的な制裁の影響を回避あるいは相殺するための手段としてデジタル資産を活用することができないことを確保

5) ロシアの体制による偽情報拡散の試みと戦うロシア国民の自由かつ偏見のない情報への権利を確認し支持する。

6) ロシア連邦に対する重要物品及び技術の輸出入に対し、更なる制限を課す

7) ロシアが国際的に資金を調達する能力を更に制限する措置を開発及び実施するために、引き続き共に取り組む。


バイデン米大統領は3月11日、プーチン大統領は「侵略者であり、代償を払うことになる」と言明、G7 と協調し、WTOルールに基づくロシアの「最恵国待遇」を撤回すると表明した。
ペロシ下院議長は、14日の週にロシアとの貿易関係を見直し最恵国待遇を取り消すための法案を採決すると表明した。野党・共和党でも賛同の声が上がっている。

バイデン政権はロシアとベラルーシへの自動車や宝石、衣類、たばこ、アンティーク品など高級品の輸出も禁じた。
ロシアからのウォッカやキャビアなどの魚介類、ダイヤモンドの輸入を禁止する措置も示した。
制裁対象とするロシアの新興財閥(オリガルヒ)を拡大する。

米国では、最恵国待遇から外れているのは北朝鮮とキューバだけで、ロシアを両国並みの扱いにする。(2001年末まではアフガニスタンとベトナムも外れていた。)

米国がロシアから輸入する商品や原材料には現在、協定税率で平均で3%程度の関税がかかっているが、これが平均で30%超に跳ね上がるとされる。但し、米国の対ロ輸入は2021年で297億ドル程度で全体の1%にすぎない。

EUの欧州委員会も3月11日、ロシアへの最恵国待遇を取り消すと発表した。有名ブランドなどの高級品をロシアに輸出することを禁じるほか、ロシアの主力輸出品である鉄鋼製品の輸入をやめる。 EU主脳会議は、2027年までにロシア産ガスや石油からの依存を脱する方針を確認した。

EUはロシアの最大の貿易相手で、2920年はロシアのモノ輸出の37%を占めた。

カナダ政府は3月3日、各国の先頭を切り、最恵国関税撤廃令を出し、ロシアとベラルーシが関税法のもとで最恵国待遇を受けている資格を撤廃し、2国を原産地とする輸入品のほぼ全てに一般税率である35%の関税率を適用することを発表した。同税率の適用は、ロシアとベラルーシ以外では、北朝鮮のみとなっている。

岸田首相は「日本も連携という観点からどうあるべきなのかしっかり考える」と述べた。(いつも、この発言)

最恵国待遇の剥奪は「日本は過去に実行したことがない」(政府関係者) 法律の改正が必要である。

2021年の日本のロシアからの輸入額は1兆5488億円で、例えばカニの関税は4%から6%になる。輸入の過半を占める原油やLNGなどは基本税率がゼロのため、変わらない。

付記

貿易上の優遇措置などを保障する「最恵国待遇」の撤回などを盛り込んだ法律の改正案は、4月12日に衆院で審議入りし、14日の衆議院本会議で可決され、参議院に送られた。

このうち、関税暫定措置法の改正案では、ロシアに対する「最恵国待遇」を撤回するために必要な内容が盛り込まれ、外国為替法の改正案では、ロシアが制裁の抜け穴として暗号資産を悪用できないよう、制裁の対象者が第三者に暗号資産を移転するのを規制することなどが盛り込まれている。


なお、下記の通り、最恵国待遇原則はWTO協定の基本原則である。

しかし、GATT21条は「安全保障のための例外」を定めており、以下の場合は例外を認めている。ロシアを除外するのは、この c) に基づく。

(a)締約国に対し、発表すれば自国の安全保障上の重大な利益に反するとその締約国が認める情報の提供を要求すること。
(b)
締約国が自国の安全保障上の重大な利益の保護のために必要であると認める次のいずれかの措置を執ることを妨げること。

 (i)
核分裂性物質又はその生産原料である物質に関する措置

 (ii)
武器、弾薬及び軍需品の取引並びに軍事施設に供給するため直接又は間接に行なわれるその他の貨物及び原料の取引に関する措置

 (iii)
戦時その他の国際関係の緊急時に執る措置

(c)
締約国が国際の平和及び安全の維持のため国際連合憲章に基く義務に従う措置を執ることを妨げること

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最恵国(Most Favored Nation)除外について:

いずれかの国に与える最も有利な待遇を他のすべてのWTO加盟国に対して与えなければならないという最恵国待遇原則(Most-Favoured-NationTreatment MFN 原則)は、WTO 協定の基本原則の 1 つである。

関税については、日本では「関税定率法」と「関税暫定措置法」という2つの法律によって「国定税率」が定められている。

「関税定率法」では、基本税率としては7,254種目の税率が設定されている。
一方、「関税暫定措置法」には、一時的に基本税率によりがたい事情がある場合に、一定期適用される433種目の暫定税率が定められている。

WTO加盟国には、最恵国待遇原則が適用される。WTO協定において、WTO加盟国・地域全てに対して一定率以上の関税を課さないことを約束している。
この税率が「協定税率(WTO譲許税率)」である。

仮にある国にこれ以下の税率を適用すれば、その税率は他の全てのWTO加盟国に適用しなければならないことになる。

その例外が投資・サービス分野などを含む自由貿易協定(FTA)を締結した相手国からの産品のみを対象とした税率で、これは他の加盟国には適用されない。

まとめると、関税率は下記の通りとなる。

   国定税率>協定税率(WTO譲許税率)>FTA税率

今回、G7は「重要製品に関するロシアの最恵国の地位を否定する行動をとるよう努める 」とした。
ロシアはWTO加盟国ではあるが、最恵国待遇から外し、協定税率を適用しない(=国定税率を適用する)ということになる。これには各国の国内手続きが必要である。

コスモエネルギーホールディングスは3月9日、筆頭株主のアラブ首長国連邦(UAE) のアブダビ政府のファンドの Infinity Alliance Limited が持分 15.70%を全て売却すると発表した。

コスモはInfinity Alliance がこの株式全てを海外市場で売却することを承認した。
売り出し価格は時価から16.21%割り引いたもので、売却総額は326億円となる。

Infinity Allianceはアブダビ首長国100%出資会社であるMubadala Investment Company の100%子会社。

コスモは Infinity Alliance から保有株式の売却に関する相談を受け、協議を重ねてきたが、Mubadala との戦略提携によって一定の事業上の成果を得たこと、またMubadala の投資戦略の進展に基づく株式売却に係る意向を尊重し、協力して株式売出実施を承認することとした。

株式売出し実施後にMubadala との資本関係及び提携関係は解消されるが、引き続きMubadalaとの良好な関係を継続していくことを確認している。
アブダビでの石油開発事業や原油の安定調達といった事業活動への影響はない。

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コスモ石油は2007年9月18日、アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ首長国が100%出資するIPIC(International Petroleum Investment Company)と業務提携することを決議したと発表した。

IPICが100%出資する特別目的会社 Infinity Alliance Limitedを割当先に株式総数の約20%に相当する株を発行、約891億円を調達した。

IPICはアブダビ首長国外におけるエネルギー事業への投資を主な事業内容としており、コスモ石油は共同事業案件として、コスモ石油の製油所の高度化・高付加価値化、環太平洋地域における石油製品販売事業の拡大、アブダビ首長国外における新規油田開発などを検討するとした。

IPICは世界各地で石油関連の企業に投資している。下記に出資先を記載(現状は未確認)

2009/2/24 アブダビのIPIC、カナダのNOVA Chemicals を買収

IPICは2016年8月に政府出資のMubadala Development Companyと合併し、Mubadala Investment Company となった。

2021年8月10日、Infinity Alliance はコスモ石油の株式の一部を売却、出資比率は20.76%から15.69%となった。

今回、残りの全株を売却する。

京都大学発スタートアップのトレジェムバイオファーマは3月8日、第三者割当増資で4億5000万円を調達したと発表した。

出資したのは、京都大学イノベーションキャピタル、Astellas Venture Management、新日本科学の創薬支援子会社Gemseki、フューチャーベンチャーキャピタル、京信ソーシャルキャピタル、京都市スタートアップ支援 2 号ファンド

今回の資金調達により、「歯生え薬」の開発に向け、臨床試験(治験)の前段階の安全性試験に乗り出す。

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歯の再生を促す新規医薬品を開発する歯科領域の創薬ベンチャー、トレジェムバイオファーマ(Toregem BioPharma)は2020年5月12日に設立された。
Toregemの社名は Tooth Regeneration Medicine(歯の再生薬)から採った。

京都大学医学研究科口腔外科学分野の高橋克准教授が、永久歯の次に生える歯(第3生歯)を成長させることによって歯の再生の実現が可能なことを発見した。
一般的な歯の治療法である義歯やインプラントの人工歯に対し、自己歯の再生が根治的な治療法と成り得る可能性がある。

ヒトでは大臼歯が1生歯性(永久歯)、それ以外は2生歯性(乳歯+永久歯)で、歯数は厳密に制御されている。

実際には、乳歯と永久歯のあとに第3歯堤という歯の原器があるが、骨形成タンパク質(BMP)等の働きを阻害する拮抗分子USAG-1遺伝子の働きによって第3生歯は消失してしまう。

USAG-1遺伝子の欠損マウスでは、本来は退化消失するはずの痕跡的乳切歯が生き残った結果、過剰歯として萌出することが確認されている。

橋克准教授による長年の研究により、この拮抗分子USAG-1遺伝子を抑制する中和抗体siRNA2本鎖RNAが遺伝子の発現を抑えてしまうRNA干渉に関与するRNA)によって無歯症モデル動物で欠損歯が歯槽骨と共に回復することが分かった。

京都大学医学研究科口腔外科学分野の喜早(きそ)ほのか氏がCEOを務めるトレジェムでは、USAG-1中和抗体のヒト化に向けた開発を進めており(現在は前臨床開発段階)、中和抗体とsiRNAの化合物を新規医薬品として上市することを目指している。

2020/12/2 歯の再生を促す医薬品を開発する トレジェムバイオファーマ

トレジェムは USAG-1 中和抗体の実用化を目指しており、同抗体のヒト化に成功している。

トレジェムは今回の資金調達により、USAG-1 中和抗体の非臨床安全性試験と治験用製剤の製造準備を進める。

根本的な治療手段がない先天性無歯症患者を第一適応症の候補として USAG-1 抗体の開発を行う。

さらに、USAG-1 中和抗体は永久歯の後の第三生歯を発生させることを動物試験にて確認しており、この知見は、高齢者のオーラルフレイル(口腔内の虚弱)の改善に貢献し得ると考えている。


今回、2億円を引き受けた京都
イノベーションキャピタル は、京都大学 100%出資子会社として、京都大学を中心とした国立大学から生まれた研究成果を活用するベンチャー企業を対象に投資やその他の事業支援を行っている。

現在、総額160億円のKYOTOiCAP 1 号ファンドと総 180 億円の KYOTOiCAP 2 号ファンド(2021 1 月設立)を運営している。

東京大学は3月7日、血液に触れると瞬時に固化する合成ハイドロゲルで速やかな止血を実現したと発表した。

外科手術では、太い静脈や動脈からの出血に対しては止血剤を併用した圧迫止血が必要となるが、既存の止血剤には、止血に長い時間を要する、もしくは、ヒト血液成分由来の感染症伝播が否定できないといった課題がある。

東京大学の研究グループは、新たに、体液と接触した際に速やかに自己固化する合成ハイドロゲルを設計した。

このハイドロゲルは、はじめは液体だが、血液と接触すると瞬時に血液を巻き込んだ固化を起こし、止血に至る。
ラットの下大静脈大量出血モデルでは、1分間で安定した止血効果が得られた。

血液凝固反応とは独立した作用機序をもって速やかな止血に至るだけでなく、未知の感染症の伝播も否定でき、将来の医師・患者双方の精神的負担軽減に貢献できると考えられる。

本成果は、33日の『Annals of Vascular Surgery』(オンライン版)に掲載された。


本研究グループは、体液と接触した際に速やかに自己固化する合成ハイドロゲル新たに設計した。

この合成ハイドロゲルは、はじめは液体だが、主成分である 4 分岐型のポリエチレングリコールPEG徐々に反応することで固体となる


弱酸性において反応は制限され液体の状態を維持するが、中性においては反応は極めて速く、即時固化する。

そのため、弱酸性の合成ハイドロゲルと血液のような体液が接触すると、体液にある緩衝作用(外から少量の酸や塩基を加えても pH が一定に保たれる働き)によって、瞬間的に合成ハイドロゲルが中和され、瞬時に体液を巻き込んだ固化を引き起こすことができる。

実際に、抗凝固薬を加えたラットの血液に対し、今回開発した合成ハイドロゲルを接触させたところ、血液ごと瞬時に固化することが確かめられた。


今回開発した新規合成ハイドロゲルは、他の病気や抗凝固薬によって血液が固まりにくい状態にある患者においても、速やかに止血を達成できる局所止血材を開発できる可能性がある。

また、血液に限らず、髄液などの各種体液漏出防止材としての応用も広く期待される。

バイデン米大統領は3月8日、ロシア産の原油、天然ガス、石炭と関連製品の輸入を全面的に禁止すると発表した。同日に大統領令に署名し、即日発効した。

3月8日からロシア産の石油、天然ガス、石炭や関連製品の新規購入ができなくなり、すでに契約した分は同日から45日間以内であれば輸入できる猶予期間を設ける。

米国人がロシアでエネルギー生産にかかわる外国企業に投資することも禁じる。

大統領は「米国はロシア経済の大動脈を標的にしている。ロシアの石油、ガス、エネルギーの輸入を全面的に禁止する」と述べ、「世界中の同盟国、特に欧州と緊密に協議して決めた。欧州の同盟国・有志国の多くが我々(の輸入禁止)に加われない参加しないと理解したうえで禁輸する」と強調した。また、「欧州と協力してロシアへのエネルギー依存を減らす長期的な戦略もつくっている」と述べた。

大統領は3月7日に英国のジョンソン首相、フランスのマクロン大統領、ドイツのショルツ首相とビデオ会議形式で会談した。首脳らは対露制裁の強化で一致したものの、原油の禁輸措置に関しては結論が出なかった。ドイツの慎重姿勢が影響したとされる。

英国のジョンソン首相は同日、ロシアからの原油と石油製品の輸入を段階的に削減し、2022年末までに完全に停止すると発表した。ビジネス・エネルギー・産業戦略省長官は、移行期間を設けることで企業などがロシアに代わる調達先を探すために十分な時間が得られると説明、このほか、ロシア産天然ガスの輸入停止も模索していると明らかにした。

米欧は、燃料価格などの高騰につながりかねないとの懸念からエネルギー産業をロシアへの制裁対象から外していたが、現状を踏まえて追加制裁が必要と判断した。


これに対し、ドイツのショルツ首相は3月7日、ロシアからのエネルギー輸入が当面必要だとする声明を公表した。「欧州は意識的にロシアからのエネルギー調達を制裁の例外にした」と指摘、「ロシアに代替するエネルギー源の速やかな確保に向け、政府はEU内外のパートナー国と長らく取り組んできたが、一夜にして成し遂げられることではない」と述べた。

EUは3月10-11日首脳会議を開き、ロシアからの石油・天然ガス・石炭の輸入を徐々に縮小していくことで合意する見通し。

このための対策として(1)LNGの利用やバイオガス、水素の開発を通じたエネルギー供給と調達の多様化、(2)再生エネルギー普及加速、(3)域内のガス・電力網の共有化による有効活用促進、(4)電力網の統一化とエネルギー安全保障のための緊急計画強化――などを打ち出している。

現在EUは、ロシアからのガス輸入が全体の45%、石油輸入が約3分の1、石炭輸入がほぼ半分を占めており、欧米の制裁に対する報復としてロシア側が輸出制限に動けば、域内のエネルギー供給が大混乱しかねない。

なお、ドイツ経済省は3月5日、エネルギーのロシア依存を抑えるため、国内初となるLNG輸入ターミナルの建設に向けて、ドイツ復興金融公庫KfWが国内の電力大手RWE、オランダのガス大手Gasunieとの間で了解覚書に調印したと発表した。

ブルンスビュッテルに年80億立方メートルの容量のターミナルをできるだけ早期に建設する。持ち分はKfWが50%、RWEが10%、Gasunieが40%で、運用はGasunieが行う。

ーーー

OPECのバルキンド事務局長は3月7日、ロシア産原油への制裁でロシアが輸出する日量約700万バレル(サウジの輸出量と同じ)の石油が市場に供給されなくなる懸念について「世界にロシア産の不足分を埋め合わせる余剰能力はない」とした。「需要に対して供給が不足している。産油国の生産能力には制約がある」と危機感をあらわにした。

付記

サウジアラムコのCEOは3月8日、エネルギー業界の会合でウクライナ危機を巡りエネルギー市場の混乱が悪化していると指摘、「サウジの増産余地は日量200万バレルで世界需要の2%相当しかない」と話した。


ロシアのノワク副首相は3月7日、欧米がロシア産原油の輸入を禁止すれば、「世界市場は壊滅的な打撃を受ける」、「予測もできないほどの原油高に見舞われる」とし、原油価格は1バレル 300ドルを超える水準に上昇するほか、ロシアからドイツに天然ガスを供給するパイプラインも閉鎖されると警告した。

その上で、欧州がロシアから輸入する原油の代替輸入源を探すには1年以上かかるとし、「ロシアからのエネルギー供給を拒否するなら、すればよい。ロシアには代替輸出先がある」と述べた。

また、天然ガスパイプライン「Nordstream 2」の凍結に対し、「ロシアには既存のNordstream 1を通した天然ガス供給の停止を決定する権利がある」と述べた。「現時点ではこうした決定は行っていない」としながらも、「欧州の政治家のロシアに対する発言や非難は、ロシアをその方向に後押しするものだ」と警告した。

ロシア政府は3月7日、日本や欧米諸国など48の国・地域を「ロシアに対する非友好的な活動をする国・地域」に指定した。プーチン大統領が3月5日の大統領令で政府に作成を指示していた。

ウクライナ侵攻に伴う対ロ制裁を実施している国や地域とされ、ウクライナと米国、英国、EU加盟国(27カ国)、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、日本、韓国、ノルウェー、シンガポール、台湾のほか、理由は不明だが下記の諸国が含まれている。

  モンテネグロ、スイス、アルバニア、アンドラ、アイスランド、リヒテンシュタイン、モナコ、サンマリノ、
  北マケドニア、ミクロネシア (以上で合計48カ国)

中国は当然 対象外だが、台湾については、タス通信は、「中国領土と見なされるが、1949年以降自主的行政府によって統治されている」と説明した。

これらの国に対しては、ウクライナ侵攻を受けた対露制裁への対抗措置をとる。

付記

ロシア外務省は3月21日、日本が米欧と歩調を合わせて発動した対ロ経済制裁を巡り「日本との平和条約締結に関する交渉を継続するつもりはない」との声明を発表した。「明らかに非友好的な立場を取り、我が国の利益に損害を与えようとしている」としている。

平和条約締結交渉を拒否
北方領土への「ビザなし交流」の廃止、旧島民の簡素化された北方領土訪問もなくす。
日本との間で進めていた北方領土での共同経済活動の実現に向けた話し合いも放棄
黒海の周辺国でつくる 黒海経済協力機構のパートナー国としての日本の資格延長にも応じない。

声明では、こうした対抗措置を発表したうえ、日ロ関係悪化の責任は「反ロシアの方針を選択した」日本政府にあると一方的に非難した。


ロシア政府は3月7日の政令で、ロシア企業が非友好国の企業・個人と取引をする場合、外国投資に関する政府委員会の承認を必要とした。
政府委員会は取引の申請に基づき、承認か拒否の判断を下し、取引の条件を課すことも可能という。政府は「外部からの制裁圧力の中で国の財政的安定を確保するため」と説明している。

プーチン大統領は3月5日、対外債務を外貨でなく、自国の通貨ルーブルで返済することを一時的に認める大統領令に署名した。
ロシア中央銀行が定めた為替レートに沿ってルーブルで返済すれば、債務履行と見なす。

今後ロシアの政府機関や企業などが特別の口座を作り、非友好国への債務の相当額をルーブルで返済できる。対象となるのは月1000万ルーブル(約830万円)相当以上の債務で、債権を持つ側が拒否できるかどうかは不明。

ーーー
ウクライナ侵攻にともなう西側諸国の経済制裁に対抗し、ロシア産業貿易省は3月6日、「最後の手段で対応する権利がある」とし、電子製品素材 の合成サファイアの輸出を中止する可能性があると言及した。

世界市場でロシア産は40%を占める。スマートフォン画面をはじめ、各種電子製品やマイクロチップ・発光ダイオード(LED)などの製造に使われる。

シャープは3月4日、テレビ用の大型液晶パネルを生産する「堺ディスプレイプロダクト」について、現在80%を保有する海外ファンド World Praise Limitedから全株式を取得することで合意したと発表した。

シャープの経営危機時に手放したものを買い戻すもので、パネル調達を安定させて北米向けなどの販売を拡大する。

シャープは約3845万株の新株を発行、堺ディスプレイ 1株に対してシャープ株11.45株を割り当てる株式交換を実施する。実施日は未定。

同社は2021年2月15日には所有する全株式の売却を決定し、3月15日に実施すると発表していたが、売却を予定していた相手先から中止を申し込まれ、3月12日に売却断念を発表した。

堺ディスプレイプロダクトの20%を保有するが、2022年2月18日に今回の取得の協議を開始したと発表している。

今回、シャープの戴正呉会長兼CEOは昨今の国際情勢や大型パネル市場の動向などを踏まえて完全子会社化を判断したとしている。

同社は次のように説明している。

「テレビ事業及び業務用ディスプレイ事業においてグローバルレベルの事業拡大に取り組む上で、コスト構造上大きな割合を占める高品位パネルの安定的且つ優位性のある調達が極めて重要である」

「現在、大型液晶パネル市場において高いシェアを占める中国が米中貿易摩擦の最中にあることから、中国以外にある唯一の第10世代(マザーガラス2,880mm×3,130mm)以上の大型液晶パネル工場である堺ディスプレイプロダクトPは、米州市場向けのパネル供給において優位性が期待できる」

ーーー

シャープは2007年7月、新たに大阪府堺市に最先端の液晶パネル工場と、薄膜太陽電池を量産する太陽電池工場を併設することを決定したと発表した。

主な生産品目:40型・50型・60型クラスの大型テレビ用液晶パネル
 ・マザーガラスサイズ:2,850mm x 3,050mm(第10世代)
  (60型クラスのパネルが6枚、50型クラスは8枚、40型クラスは15枚取れる)
 ・投入能力:月72,000枚(稼動当初は月36,000枚)

液晶パネル工場は2009年10月に稼働した。太陽電池工場はその後、シャープ本体の「グリーンフロント堺」の愛称で事業を行っている。

凸版印刷と大日本印刷は同地にカラーフィルターの工場を建設した。

2007/12/5  シャープの「21世紀型コンビナート」

2009年4月にシャープとソニーは、この液晶パネル工場を分社化し、大型液晶パネル・モジュールの生産および販売を行う合弁会社シャープディスプレイプロダクトを設立した。

会社名称 シャープディスプレイプロダクト
設立日 2009年4月1日
稼動開始 2009年10月
出資比率 最終 シャープ66%、ソニー34% (当初 ソニー 7.04%)
事業 大型テレビ用液晶パネル・モジュールの生産およびシャープ、ソニーへの販売
生産能力 72,000枚/月(稼動当初は36,000枚/月)(マザーガラス投入ベース)

2009年12月29日、ソニーはシャープディスプレイプロダクトの増資を引き受け、7.04%を100億円で取得した。
ソニーは堺工場で生産されるパネルの7%にあたる55万台分(40型換算)を購入する。

2011年4月末までに最大34%まで引き上げられ、その時点で265万台分がソニーに供給されることとなっていた。

しかし液晶パネルの調達環境をめぐる変化を背景に、両社は2011年4月、ソニーの追加出資を先送りにした。

シャープは2012年3月27日、電子機器の受託製造サービスの世界最大手の鴻海グループ(Hon Hai) と戦略的グローバル・パートナーシップを構築すると発表した。

鴻海グループのシャープの第三者割当増資 9.88% 669億円
これは中止となり、その後2016年3月30日に鴻海は取締役会でシャープ買収を決めた。鴻海グループでシャープの3888億円の第三者割当増資を引き受け、議決権の66%を得た。

シャープディスプレイプロダクトを「ワンカンパニー」として共同で事業運営 シャープ 46.48%、董事長 46.48%、ソニー 7.04%

シャープとソニーは2012年3月28日、ソニーの追加出資を行なわないことで合意し、2012年5月24日にシャープディスプレイプロダクトについて、6月末までにソニーが保有する株式(出資比率:7.04%)すべてを譲渡し、両社の合弁を解消すると発表した。対価として、ソニーの出資時と同額の100億円が全額現金で支払われる。

また、シャープと凸版印刷、大日本印刷は2012年5月24日、凸版、大日本の堺工場における液晶カラーフィルター事業をシャープディスプレイプロダクトに吸収分割の方式により承継させることを決めた。

これらの結果、シャープディスプレイプロダクトの出資比率は以下の通りとなった。(吸収分割で株式発行)

シャープ 37.61%
郭台銘 37.61SIO International Holdings Limited)
凸版印刷 9.54
大日本印刷 9.54
自己株式 5.70 (ソニーから買収分 旧 7.04%相当)

2012年7月17日付で社名を「堺ディスプレイプロダクト」に変更した。

2016年12月28日、シャープが持ち株 436千株を 17,170 百万円で郭台銘氏の投資会社に譲渡した。

シャープディスプレイプロダクトの出資関係は次の通りとなった。

郭台銘 53.05%
シャープ  26.71%
凸版印刷 9.54%
大日本印刷 9.54%

その後、2019年6月に、シャープがテレビ向けの大型液晶パネルを生産する運営会社 堺ディスプレイプロダクトを子会社化する検討を始めたと報じられた。

2019/6/19 シャープ、堺の液晶パネル工場の子会社化検討

しかし、これは進展はなく、株主の異動についても全く報道されていない。今回、代表取締役がWorld Praise Limited邱啓華氏と発表されたが、これも初めてと見られる。

但し、情報として郭台銘氏の保有株が個人の都合により譲渡されたとの記事があった。

2022年2月18日、シャープは「堺ディスプレイプロダクトの子会社化(復帰)に向けた協議開始」の発表を行った。

現時点の出資が、シャープ 20.00%、World Praise Limited 80.00%で、シャープの子会社として復帰させることを目的として、World Praise Limitedから株式を取得することにつき協議することを確認したとした。

郭台銘氏 がWorld Praise Limited売却し、その時に凸版印刷、大日本印刷、およびシャープ(6.71%分)も合わせて売却したと見られる。

そして、3月4日に契約締結を発表した。

ーーー

World Praise Limited については詳細は不明である。判明事項は次の通り。

所在地:サモア島(Tax Havenと見られる。)
組成日:2001/3/8
組成目的:
Investment Holding
大株主:
Yau Leroy(邱啓華)83.08%   現 堺ディスプレイプロダクト代表取締役

Yau Leroy(邱啓華)は台湾人で、コンサルタント事業の Everiii のexecutive directorで、グローバル志向の企業家を養成し最も革新的な台湾スタートアップを世界に展開することを目標とする Taiwan Startup Stadium (台灣新創競技場)の共同設立者でCEOを務める。

Shellは2月28日、主要な液化天然ガスプラントを含むロシアの全事業から撤退すると発表した。サハリン沖の石油・天然ガス開発プロジェクト「サハリン2」からも手を引き、「ノルドストリーム2」への関与も終了する。

2022/3/1 速報 Shell、サハリン2から撤退

しかし、同社がロシア産原油の調達を続けていることが明らかになり、波紋が広がっている。同社は3月4日にロシア産原油の購入を決めた。

これに対し、ウクライナのKuleba外相が、Shellのロシア原油の購入について、「SHELLへの質問は、ロシア原油はウクライナの血の匂いがしないかということだ。世界中の人に、多国籍企業がロシアとの全ての関係を切るよう要求してほしい」とツイートした。

Dmytro Kuleba

I am told that Shell discretely bought some Russian oil yesterday.
One question to @Shell: doesn't Russian oil smell Ukrainian blood for you? I call on all conscious people around the globe to demand multinational companies to cut all business ties with Russia.

これを受け、Shellは次の声明を発表した。

Shell はGazpromとのJVから離脱し、(Nordstream)パイプライン計画との縁を切った。

戦争がエネルギー供給に与える影響を各国政府と協議を続けている。

ロシア原油購入は苦肉の策である。継続的に原油を供給しないと、精油所はガソリンやディーゼルその他の製品を生産できない。ロシア原油以外の原油は入荷までに時間がかかり、間に合わない。

軽く考えての決定ではなく、皆さんの感情は理解している。

代替品入手に努力を続けるが、ロシアの原油シェアは大きく、一夜にできることではない。

ロシア原油からの利益の一部をファンドに寄付する。ウクライナの人に役立つよう、寄贈先を相談して決める。

Shell statement

We are appalled by the war in Ukraine and have already made clear our intention to exit joint ventures with Gazprom - which is majority-owned by the Russian government - and related entities, as well as intending to end our involvement with a significant project to pipe gas from Russia to Europe.

We have been in constant discussion with governments about the consequences of the war on the security of energy supplies. We have acted throughout in accordance with what we have understood was the intent to allow energy flows from Russia for the time being in order to provide security of energy supply.

Yesterday we made the difficult decision to purchase a cargo of Russian crude oil. Our refineries produce petrol and diesel as well as other products that people rely on every day. To be clear, without an uninterrupted supply of crude oil to refineries, the energy industry cannot assure continued provision of essential products to people across Europe over the weeks ahead. Cargoes from alternative sources would not have arrived in time to avoid disruptions to market supply.

We didn't take this decision lightly and we understand the strength of feeling around it.

We will continue to choose alternatives to Russian oil wherever possible, but this cannot happen overnight because of how significant Russia is to global supply. We have been in intense talks with governments and continue to follow their guidance around this issue of security of supply, and are acutely aware we have to navigate this dilemma with the utmost care. We welcome any direction or insights from governments and policymakers as we try to keep Europe moving and in business.

We will commit profits from the limited amount of Russian oil we have to purchase to a dedicated fund. We will work with aid partners and humanitarian agencies over the coming days and weeks to determine where the monies from this fund are best placed to alleviate the terrible consequences that this war is having on the people of Ukraine.

付記

Shellは3月8日、ロシア事業を全面的に終了すると発表した。

ロシアからの原油のスポット購入をやめ、石油製品や天然ガスなどあらゆる資源の調達を段階的に終える。ロシア国内での石油製品の販売も終える。


今後、日本のサハリン1、サハリン2 などへの出資継続も問題にされる可能性がある。

ウクライナのゼレンスキー大統領は2月28日、EUに正式に加盟申請した。通常手続きでなく、「新たな特別手続きによる即時加盟を求める」と訴えた。


ウクライナの南西に隣接する旧ソ連のモルドバのサンドゥ大統領は3月3日、 EU加盟を正式に申請する文書に署名した。
同じく旧ソ連のジョージアのガリバシビリ首相も同日、EUへの加盟を正式に申請した。

ロシアは強く反発している。

ウクライナ、モルドバ、グルジア(現 ジョージア)は2014年に南部クリミア半島をロシアに併合された直後に、EUとの貿易自由化を含む関係強化に向けた 「連合協定」に署名したが、正式にEUに加盟申請するのはこれが初めて。

EUは2014年6月27日、ウクライナ、モルドバ、グルジア(現 ジョージア)の3ヵ国と高度かつ包括的な自由貿易圏(DCFTADeep and Comprehensive Free Trade Areas)の構築を含む連合協定を調印した。

「連合協定」は、EUと非EU諸国との間の政治、貿易、社会、文化、安全保障上の結びつきを強める協定。
DCFTAは連合協定の一部として、関税障壁撤廃というFTA本来の課題に加えて、双方間の貿易経済活動にEUのルールを浸透させてヒト・モノ・カネの動きを活発化させようとするもの。

ゼレンスキー大統領は2月28日、EUのフォンデアライエン委員長と電話で会談したことを明らかにし、以前から希望しているEU加盟を重ねて求めた。

EUのフォンデアライエン委員長は27日、「いずれ、ウクライナはわれわれの一員となる。彼らに加わってほしい」などと述べ、加盟を支持すると受け取ることができる発言をした。

但し、EUの報道官は、「委員長の発言は、ウクライナがヨーロッパの国だという意味だ。委員長はあわせて、加盟には手続きがあるとも述べていて、これが重要なポイントだ」と強調し、実際の加盟までには時間がかかることを示唆した。

EUへの加盟にあたっては、全加盟国の承認が必要な上、法の支配や汚職の撤廃、経済の安定などの条件を満たさなければならず、加盟交渉には数年かかるのが一般的。

スロバキア、スロベニア、チェコの首脳陣は、ウクライナが速やかにEUに加盟できるような「まったく新しい道筋」をEUに作るよう求めているが、EU側は 消極的である。

ーーー

ウクライナのNATO加盟阻止が今回のロシアによる軍事進攻の口実である。

ウクライナ最高会議は1990年7月に「主権宣言」を採択したが、「対外安全保障」の項は次の通り であった。

「将来において恒久的に中立国家となり、軍事ブロックに加わらず、非核三原則――核兵器を受け入れず、使用せず、保持しないという自らの意向を厳に宣言する」。

ドイツの東西統合(1990年)に際し、NATOを統合ドイツより東に拡大しないという口頭の約束があったが、西側は順次東方に拡大、ロシアの隣国で、ロシアにとって特別な国であるウクライナの加盟を否定しなかった。

2021/12/22 ロシアの安全保障条約草案 
2022/1/2   プーチン大統領の怒り

2019年2月、ウクライナの議会に当たる最高会議は、ポロシェンコ大統領(当時)が提出したEUとNATOへのウクライナの加盟路線をウクライナ憲法に明記する憲法改正法案を可決した。

NATOについては、西側は建前として参加を求める国の要請は拒否しないとするが、北大西洋条約の第5条で、締約国に対する武力攻撃を「全締約国に対する攻撃とみなすことに同意する」と定めており、ロシアとの全面戦争になりかねないため、NATOは簡単には ウクライナの参加を認めないと思われる。

このため、ウクライナのゼレンスキー大統領はまず、EUへの加盟を求めたもの。


現在、EUに加盟しているのは27カ国で、東方への拡大に向け一部のバルカン諸国と加盟交渉を進めているが、西欧の慎重姿勢もあって協議は停滞している。最後に加盟したのは2013年のクロアチアが最後で、新規加盟は8年以上ない。

2007/1/5 EU 加盟国、27カ国に  → 28か国 (2013/7/1) → 27か国(2020年英国離脱)

加盟交渉はバルカンのモンテネグロとセルビアと始めており、コソボとボスニア・ヘルツェゴビナを潜在候補国と位置づける。

トルコとの加盟交渉は、キプロス問題やトルコの司法制度が依然として西欧法治国家の水準に達していないことなどから事実上停止している。

2020年3月にアルバニアと北マケドニアとEU加盟に向けた交渉に入ることで合意した。欧州委は2018年に交渉入りを加盟国に勧告したが、フランスやオランダ、デンマークが難色を示していた。

欧州委は交渉国について、「法の支配」「市場経済」などの分野でEU基準を満たすための改革が進んでいるかを年ごとに評価し、各国に報告する。

ウクライナについては、もしウクライナをEUに入れた場合、EUの一部がロシアに侵略されたことになり、ロシアに対し直接対応せざるを得なくなる。

また、ウクライナ(とモルドバ、ジョージア)を加盟審査を経ずに早期の加盟を認めるのは問題である。

欧州委は「法の支配」「市場経済」などの分野でEU基準を満たすかどうかを重視する。

EUは加盟国のうちで法の支配の後退が目立つハンガリーとポーランドに資金提供を禁止した。

2022/2/18 欧州司法裁、「法の支配」違反国へのEU資金停止を合法と判決

加盟国についてさえ、EU基準を守らない国に制裁をしているなかで、例外的にウクライナ等の早期のEU加盟を認めると、長年交渉を続けている他の候補国をどうするかが問題になる。

1987年に加盟申請を行ったが棚上げされているトルコのエルドアン大統領は早速、3月1日に同国のEU加盟手続きについて、ウクライナと同様に扱うよう求めた。トルコがNATO加盟国であることも付言している。

仮にEUの基準を満たしていない参加希望国をすべて加盟させた場合、その後のEUの運営は混乱すると思われる。

ウクライナの原発

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ウクライナのシュミハリ首相は2月24日、北部にあるチェルノブイリ原子力発電所が戦闘の末、ロシア軍に占拠されたと明らかにした。

ウクライナ原子力規制監督庁幹部は、チェルノブイリ立ち入り禁止区域で2月25日に放射線量の上昇が確認されたと説明した。ウクライナ議会も、同区域の自動監視装置のデータが通常以上の放射線量を示したと発表した。
国際原子力機関は、報告された放射線量は低く、危険な水準ではないと発表した。

チェルノブイリ原子力発電所では1986年4月26日、試験運転をしていた4号機で爆発が発生して、大量の放射性物質が放出された。

爆発を起こした4号機は「石棺」と呼ばれるコンクリートなどの建造物で覆われたが、老朽化したため、2019年には「石棺」を巨大なシェルターで外側から覆った。

残り3基は運転を続けたが、順次停止、2000年に全停止した。

ウクライナのクレバ外相は3月4日、ウクライナ南東部、エネルホダルにある国内最大規模の ザポロジエ原子力発電所について「ロシア軍があらゆる方向から攻撃している、すでに火災が起きている」と述べた。火災は敷地外の研修施設と報道された。

その後、ロシア軍が同原発を制圧した。

左から、2基の冷却塔と6基のリアクター。冷却塔右のビルと煙突は3km奥の火力発電所のもの

ーーー

ウクライナは原発依存度が極めて高い。 (残りの火力もロシアからの天然ガスに依存している。)


ベラルーシはついに原発の導入に踏み切り、2020年11月7日、同国初となる「ベラルーシ原発」で、1号機(119万kw)が稼働した。2号機が2022年に稼働の予定。

ソース https://globe.asahi.com/article/14333242


ウクライナの原子力発電所は次の通り。

いずれもロシア型加圧水型原子炉である。

炉型 出力 運転開始
ザポロジェ 1~6号機 VVER-1000/320 100万kw x 6 1984/12~1995/10
ロブノ 1~2号機 VVER-440/213 42万kw、41.5万kw 1980/12、1981/12
3~4号機 VVER-1000/320 100万kw x 2 1986/12、2004/10
南ウクライナ 1号機 VVER-1000/302 100万kw 1982/12
2号機 VVER-1000/338 100万kw 1985/1
3号機 VVER-1000/320 100万kw 1989/9
フメルニツキ 1~2号機 VVER-1000/320 100万kw x 2 1987/12、2004/8
合計 1,383.5万kw

設計寿命は30年で、順次、寿命延長作業を行っている。



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欧州連合(EU)は3月2日、ロシアへの追加の経済制裁として同国2位のVTBバンクなど大手7行を国際的な資金決済網「国際銀行間通信協会(SWIFT)」から排除することで合意した。

2022/2/28 ロシア追加制裁、国際決済網から排除

制裁は10日以内に発動される。

SWIFTから排除される7行の総資産は外銀を含む全体の2~3割とされる。欧州委は、ロシアの行動次第では「制裁リストにロシアの銀行を追加する用意がある」としている。

ロシア最大手のSberbank PJSCと、ガス大手Gazpromが出資するGazprombank は含まれていない。
これらを除外すれば石油、天然ガスなどの取引が出来なくなり、欧州経済への影響が大きいことを判断したとみられる。
当初から、エネルギー関連については対象外にするという考えが出ていると報道されていた。
米国もGazprombankについては新規借り入れを禁止するということに止まっている。 (欧州にSWIFT排除をやらせるための配慮とされる。)

SberbankはSWIFT排除からは外れたが、米国はSberbankに対し金融遮断しており、ドル取引ができない。

なお、Sberbankは3月2日、欧州市場から撤退すると発表した。預金流出で事業継続が困難と判断した、


別途、各国も独自の制裁を行っている。

日本は当初、下位3社のみであったが、3月3日に4銀行を追加した。

順位 SWIFT 米国 EU 英国 日本
Sberbank PJSC  1 対象外 金融遮断 *
対象外 資産凍結 対象外
VTB Bank PJSC
貿易決済を担う国営銀行
2 SWIFT除外 取引停止 資産凍結
(追加)
Gazprombank
(Gazpromが投資)
3 対象外 取引制限 対象外
Bank Otkritie SWIFT除外 取引停止 取引停止 資産凍結
(追加)
Novikombank 対象外
Sovcombank PJSC
Bank Rossiya 取引停止 資産凍結
VEB.RF
国営開発対外経済銀行 
(第一弾)

取引停止
Promsvyazbank PJSC
(軍とのつながり)
ロシア中央銀行 取引制限、外貨準備凍結


米国は2月24日、ロシア最大の銀行であるズベルバンクと第2位のVTBバンクを含む大手金融機関を幅広く制裁対象に加えた。

米国の金融機関にズベルバンクとの取引を拒否するよう求め、ズベルバンクと海外子会社25社の米金融システムへのつながりを断つ。

付記

米国は4月6日、追加制裁を発表した。ズベルバンクのほか、国内4位のアルファバンクも制裁対象とし、「米金融システムと接触する」両行の資産を凍結するとした。ただ、エネルギー取引は今回の制裁措置から除外された。


なお、既報の通り、SWIFTから排除された場合の抜け穴が2つある。

ロシアは2014年にウクライナ南部のクリミア半島を併合した際、SWIFTからのロシア排除案が浮上したのを機に、「SPFS」(FINANCIAL MESSAGING SYSTEM OF THE BANK OF RUSSIA)と呼ばれる独自の銀行間決済ネットワークを開発した。
現在、約400の金融機関などが利用しており、ロシア国内のSWIFT加盟数を上回っているが、ほとんどがロシア国内での利用にとどまっている。


http://www.cbr.ru/Content/Document/File/72210/pres_11102021.pdf


中国人民銀行は2015年、人民元の国際銀行間決済システム(CIPS :Cross-Border Inter-Bank Payments System)を導入した。

主な機能は、クロスボーダー人民元決済(貨物貿易、サービス貿易、直接投資、融資、個人送金など)にかかる顧客送金およびインターバンク決済となっている。

・直接参加行:CIPS内に専用口座を有し、直接CIPSにアクセス、中継銀行を介さず、中国人民銀行と決済することができる。
・間接参加行:直接参加行を通じてCIPSに参加

Standard LithiumとLanxess Corporationは米Arkansas州El DoradoのLanxessの工場に隣接して建設する最初のリチウム商業生産計画をまとめた。2月24日に発表した。


Standard Lithiumはリチウムの直接抽出技術(LiSTR:Direct Lithium Extraction Technology) を開発した。

リチウムリッチのかん水からリチウムを直接抽出するもの。

米国のアーカンソー州を中心にテキサス州南部からフロリダ州西部まで約1,000マイルに及ぶSmackover formationという地層がある。ジュラ紀に多孔質石灰岩帯水層に閉じ込められた有機化石堆積物と濃縮かん水で構成されており、かん水にはリチウムが含まれている。

Standard Lithiumはアーカンソー州El Doradoで臭素を生産する独 Lanxessと提携した。臭素工場群で副生される残渣のかん水から、環境に配慮したLiSTR技術でリチウムを抽出する。

2020年9月に最初の工場で生産を開始した。

今回、商業生産の計画をまとめた。

Lanxessの工場内に Li2CO3 20,900t/yのプラントを建設するが、建設はStandard Lithiumがコントロールする。技術はすべて同社が確保し、同社が最低51%を出資する。当初は同社が100%出資し、Lanxessの出資は今後決定する。

Lanxessは土地をリースし、かん水を供給、インフラやその他サービスを提供する。

Lanxessは製品の一部又は全てを「市場価格マイナスα 」(追って決めるが最大20%)で購入する権利を持つ。

また、第二、第三工場をJVベースで建設すること、Lanxessがこれらからの製品を別途決める価格で購入する権利を持つことも決めた。


Standard Lithumは別途、El Dorado の西のMagnolia近郊でのSouth West Arkansas Lithium Project(30,000t/y)を検討している。

また、カリフォルニア州の Mojave 砂漠で土地をリースすることも検討している。

東芝は3月1日、同日付での代表執行役の異動を発表した。

2人しかいない社内取締役が社長、副社長を退任し、新たに社内から3人の代表執行役(いずれも取締役ではない)を選任した。

但し、3人の選任は暫定とされており、本年6月開催予定の定時株主総会に付議する取締役候補者の選任案については追って決定するとしている。

ーーー

2021年4月14日付で当時の車谷社長兼CEOがで辞任し、前任社長の綱川智会長が社長に復帰した。

2021年6月25日の定時株主総会で、下記の取締役が選任された。

 智 取締役会議長、代表執行役社長 CEO
Paul J. Brought 社外取締役 元 KPMG
Ayako Weissman 社外取締役 元 投資会社
Jerry Black 社外取締役 イオン顧問
George Zage Ⅲ 社外取締役 元 投資銀行
畑澤 守 代表執行役副社長
綿引 万里子 社外取締役 元 裁判官
橋本 勝則 社外取締役 元 デュポン


2021/6/26 東芝、株主総会 

その後、社長は企業価値向上を求める「物言う株主」との対話を重視するとともに、後任社長の選定を進めていた。

しかし、「物言う株主」との交渉に基づき、企業価値を高めようと打ち出した「会社を3つに分割する」という方針は反対が強く、本年2月に半導体などのデバイス事業だけを分離して2分割とすると発表したが、これについても反対が多い。

今後、再編策をさらに見直す可能性もある。

今回の異動は次の通り。

従来 2022/3/1付
 智 取締役会議長、代表執行役社長 CEO 取締役会議長(暫定)及び取締役
畑澤 守 代表執行役副社長 取締役
島田太郎 執行役上席常務 (暫定)代表執行役社長 CEO
柳瀬悟郎 東芝エレベータ社長 (暫定)代表執行役副社長 COO
佐藤 裕之 デバイス&ストレージ所管 (暫定)代表執行役 専務


3人は代表権を持つが、取締役ではない。

島田新社長は、会社全体を2つに分割する改革案について「予定通り進捗する」としつつ、「全てのステークホルダーの意見を受け止め、全てのオプションを検討したい」と述べた。

Shellは2月28日、主要な液化天然ガスプラントを含むロシアの全事業から撤退すると発表した。

サハリン沖の石油・天然ガス開発プロジェクト「サハリン2」からも手を引き、「ノルドストリーム2」への関与も終了する。

サハリン2のLNG年産能力は約1000万トンで、うち5割をJERAや東京ガスなど日本の電力・ガス会社8社が長期契約で調達している。

三井物産と三菱商事の対応が焦点となる。

ロシアからの撤退により減損が発生する見込みで、ロシアの事業に関連する非流動性の保有資産は2021年末で約30億ドルという。

付記

Shellは3月8日、ロシア事業を全面的に終了すると発表した。

ロシアからの原油のスポット購入をやめ、石油製品や天然ガスなどあらゆる資源の調達を段階的に終える。ロシア国内での石油製品の販売も終える。

付記

プーチン大統領は6月30日、「サハリン2」の運営をロシア側が新たに設立する法人に移管し、現在の運営会社の資産を無償譲渡するよう命じる大統領令に署名した。

新たな運営主体としてロシア側が設立する有限法人を指定。三井物産や三菱商事が出資する現在の運用主体であるサハリンエナジーから、すべての資産や従業員、権利関係を引き継がせる。

サハリンエナジーの外国株主は新しい有限法人の株主として参加できるが、ロシア当局から提示された条件に同意することが前提で、条件をのめなければ、日本の商社はサハリン2への関与を失うことになる。

付記

三菱商事は8月25日、ロシア極東の資源開発事業「サハリン2」の新たな運営会社に参画する通知を出す方針を決めた。ロシアは8月にサハリン2の運営を新会社に移管し、三井物産と三菱商事に出資を続けるかどうか判断を迫っていた。

三井物産も参画の意向を通知する方針を決めている。

両社ともロシア側の動向を精査しつつ、月内にも意向を伝える見通し。

付記

シア政府、8月26日の政令で、サハリン2新運営会社が三井物産の子会社に12.5%の株を譲渡することを承認 。三菱商事についても10%の株の譲渡を承認

Shell (27.5%) は9月1日、新運営会社に出資しない方針を通知した。

ロシアのエネルギー相は9月7日、Novatekが参加する見通しを示した。Shell分を引き継ぐ可能性。


サハリン2プロジェクト

事業主体 Shell 55%→27.5%-1株
Gazprom 0%→50%+1株
・三井物産 25%
12.5%
・三菱商事 20%
10%
投 資 額 200億ドル
開発鉱区 ピルトン・アストフスコエ、ルンスコエ
推定可採
埋蔵量
①原油 10億バレル
②天然ガス 4,080億立方メートル

<石油>プリゴロドノエまでパイプラインで運搬後、新設港湾よりタンカーで日本等へ輸出
<ガス>プリゴロドノエまでパイプラインで運搬、液化後、LNGをタンカーで輸出
 



2007/1/9 サハリン2計画 再スタートとその背景

サハリン2計画の概要については、2006/6/6 「新・国家エネルギー戦略」発表 の サハリン計画の項を参照。

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付記 

ExxonMobil は3月1日、Sakhalin-1事業から撤退すると発表した。
現状に鑑み、ロシアでの新規開発は行わないとしている。

サハリン1,2のいずれにも日本が参加しており、どうするかが注目されている。仮に撤退となれば日本のエネルギーへの影響は極めて大きい。

サハリン1プロジェクト

事業主体 ・エクソンネフテガス社
 (米、エクソン・モービル子会社、オペレーター、30%)
・サハリン石油ガス開発(株)(通称:SODECO)
 (日、石油公団・伊藤忠・丸紅等 出資30%)
・ONGCヴィデッシュ社(インド、20%)
・サハリンモルネフテガス・シェルフ社(ロシア、11.5%)
・ロスネフチ・アストラ社(ロシア 8.5%)
投 資 額 約120億ドル以上
開発鉱区 オドプト、チャイヴォ、アルクトン・ダギ
推定可採
埋 蔵 量
①石油    約23億バレル
②天然ガス 約4,850億立方メートル

原油:パイプラインで大陸のDe-Kastri に輸送し、輸出
ガス:

当初、日本までのパイプラインで輸送する計画:漁業補償問題、東京電力の反対で取り止め
サハリン2 に売り、LNGにする交渉をしたが、価格で折り合わず、取り止め
現状は、ほとんどは原油回収率向上のため油層圧入、一部は近くの既存パイプライン
SKV:サハリン~ハバロフスク~ウラジオ天然ガスパイプライン)ハバロスクなどで国内販売

2019年に
大陸のDe-Kastri 港湾620 万トンの自前の LNG 設備を建設することに決めたと報じられた。

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ノルドストリーム2

2015年9月にShareholders' Agreementが調印された。

  Nord Stream -1 Nord Stream -2
Gazprom 51.0% 51.0%
E.ON 15.5% 10.0%
Wintershall(BASF子会社) 15.5% 10.0%
Nederlandse Gasunie 9.0%
GDF SUEZ 9.0%
Shell 10.0%
OMV 10.0%
ENGIE  仏電気・ガス事業者 9.0%

2015/7/1 Nord Stream 倍増計画


付記

その他のShellとGazpromのJVは次の通り。

Salym Petroleum Development N.V.  Shell 50%、Gazprom Neft 50%

西シベリア Khanty Mansiysk Autonomous District

Gydan Shell 50%、Gazprom Neft 50%

北西シベリアのGydan 半島で開発を計画中

英BPは2月27日、ロシアのRosneftの持株19.75%全てを売却すると発表した。BP側が出している2人の取締役、BP のCEOのBernard Looney と元CEOのBob Dudleyは直ちに辞任する。

Rosneftと手掛けてきたロシア国内での合弁事業も全て解消し、ロシアから事実上撤退する。

BPの財務に最大250億ドル(約2兆8900億円)の打撃となる可能性がある。

Helge Lund会長は発表文で「今回の軍事行動は根本的な変化をもたらした」とし、「BP取締役会は徹底的なプロセスを経た末、国有企業であるロスネフチとの関係は断じて継続できないとの結論に達した」と説明した。

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BPは当初、ロシアの投資家グループAlfa-Access-Renova(AAR) との合弁で石油会社TNK-BPを運営していた。

露石油最大手 Rosneftは2012年10月22日、TNK-BPを、BP、AAR 双方から合計550億ドルで買収することを明らかにした。

BPはJVの50%を譲渡し、現金171億ドルとRosneftの株式 12.84% を取得する。
BPは同時に、ロシア政府からRosneft株式 5.66%を48億ドルで買収する。(BPはネットで123億ドルを受け取ることとなる。)

BPは既にRosneft株式 1.25%を保有しており、この取引で合計19.75%を保有することとなり、Rosneftの取締役会に2人の取締役を出す。

Rosneftにはロシア政府が75%出資し、残りは上場している。

BPは2013年3月21日、本取引を完了した。

2012/10/24 ロシアのRosneft、TNK-BPを買収

2014年にクリミヤ・ウクライナ紛争が起こった。

しかし、当時のBPのBill Dudley CEOは、「Rosneftが制裁対象ではない。ロシアの事業には影響はない」と語った。

BPとRosneftは5月24日、ボルガ・ウラル地域のドマニク累層のシェール鉱区などの開発を推進する覚書を締結した。

BPは6月27日にはRosneft から1200万トンの精製石油製品を購入する5年契約を締結した。

Dudley CEO は2014年11月、ロシアでの投資を継続する方針を示すとともに、Rosneftの持株(保有比率 19.75%)を売却する計画がないことを明らかにした。

2014/7/3 BP、ロシア制裁開始後にRosneft との関係を強化

BPとRosneft は2015年6月19日、両社の長期的な戦略提携を強化する数件の契約に調印した。

東シベリアの最大の油田の一つで、現在日量2万バレルを生産するSrednebotuobinskoye 油田・ガスコンデンセート田の開発権を有するTaas-Yuryakh Neftegazodobycha (Taas)の20%をRosneftから取得し、新しいJVを設立した。

これに加え、両社は西シベリアとYenisey-Khatanga 盆地の26万平方kmに及ぶ地域を共同で開発することで合意した。

各国によるロシア制裁で各社とロシアの石油事業での提携が停滞するなか、BPは提携強化を進めた

2015/6/23 BPとロスネフチ、長期戦略関係を強化 


BPの2021年12月期の決算でRosneft 事業は税引き・利払い前利益の2割弱を稼ぎ出した。

今回、ロシアは2月24日にウクライナに対する軍事侵攻に踏み切ったが、BPのBernard Looney CEOは2月14日の時点では、ロシアで手掛けている石油・ガス事業について、同国と西側の緊張の高まりによる影響を受けていないとし、引き続き事業を手掛ける方針を表明した。但し、西側がロシアに制裁を発動すれば、BPとして順守すると付け加えた。 

ロシアの軍事侵攻を受け、英国の民間企業・エネルギー・産業戦略相は2月25日、BPのBernard Looney CEOを呼び、ロシア事業について聴取した。複数の英メディアが報じた。ウクライナに軍事侵攻したロシアに国際社会が経済制裁を強めるなか、同国での事業展開に懸念を伝えたとされる。

バイデン大統領は1月27日、米最高裁のStephen Breyer 判事(83歳)の引退を発表、後任の候補者を2月中に指名するとした。


バイデン大統領は2月25日、連邦最高裁判事に首都ワシントンの連邦高裁判事(Judge on the U.S. Court of Appeals for the D.C. Circuit) のKetanji Brown Jackson(51歳) を指名した。上院で承認されれば、黒人女性として初めての最高裁判事となる。

最高裁判事の保守派、リベラル派の比率は変わらない。

  保守派 Swing リベラル派
以前  保守系中道 のKennedyがswing 4 ← 1 → 4
2016 Scalia 判事死去 3 ← 1 → 4
2017 Gorsuch 就任 4 ← 1 → 4
2018 Kennedy 引退、Kavanaugh指名 5 4
2020 Ginsburg 死去 5 3
  Amy Coney Barrett 6 3

 性別 born 人種背景

指名した大統領

就任日 判断傾向
Clarence Thomas 男性 1948/6 アフリカ系 George H. W. Bush 1991年10月23日 保守
Stephen Breyer 男性 1938/8 ユダヤ系 Bill Clinton 1994年8月3日 リベラル
John Roberts  (Chief) 男性 1955/1 白人系 George W. Bush 2005年9月29日 保守
Samuel Alito 男性 1950/4 イタリア系 2006年1月31日 保守
Sonia Sotomayor 女性 1954/6 ラテン系 Barack Obama 2009年8月8日 リベラル
Elena Kagan 女性 1960/4 ユダヤ系 2010年8月7日 リベラル
Neil Gorsuch 男性 1967/8 白人系 Donald Trump 2017年4月10日 保守
Brett Kavanaugh 男性 1965/2 白人系 2018年10月6日 保守
Amy Coney Barrett 女性 1972/1 白人系 2020年10月26日 保守
.
Ketanji Brown Jackson 女性 1970/9 アフリカ系 Joe Biden リベラル



今後上院での承認が必要だが、大きな問題がある。

上院司法委員会で聴聞会を経て上院への人事案送付を議決し、上院本会議で採決するが、司法委員会が民主、共和両党議席が11対11、上院は50対50で拮抗している。

司法委員会の議決が同数の場合は、上院運営規則で本会議が決定を代行することができるとが、その本会議も民主、共和議席が同数である。

通常、過半数での議決では、可否同数の場合、上院議長を兼ねる副大統領の票で決まるが、上院の「助言と承認」に関しては副大統領に投票の権限がないという説がある。

合衆国憲法の実質的な起草者のアレクサンダー・ハミルトンは、合衆国憲法の理解を深めるために1788年に出版した冊子「ザ・フェデラリスト」の69編で、「副大統領は上院で法案をめぐる採決で決定票を投ずる権限があるが、上院の"助言と承認"に関わる問題にまで合衆国憲法はその権限を与えてはない」と記している。

行政府に対する"助言や承認"に行政府の副大統領が最終的な決定権を持つことはできないというもの。

これまでは50:50の例がなく、実際にどうするかは分からない。民主党側は50:50にならないよう、共和党議員の取り込みを図るとみられる。

ーーー

バイデン大統領は2021年3月30日、連邦裁判事に指名する11人を発表した。アフリカ系女性とアジア系の他、初めてイスラム教徒も指名された。白人は2人(女性)だけである。

アフリカ系女性3人を連邦控訴裁判事に指名した。このうち 今回のKetanji Brown Jackson判事がアフリカ系女性として初めて、重大事件を扱う首都ワシントンのコロンビア特別区巡回区連邦控訴裁判所の判事に指名された。

連邦地裁判事にはアフリカ系2人、アジア系2人、ヒスパニック系1人、白人女性2人、パキスタン系1人を指名した。

パキスタン系のZahid Quraishi判事はイスラム教徒としては初の連邦地裁判事になった。

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