ロシアのガス大手Novatekは4月25日、北極圏で計画するArctic LNG事業で中国企業2社から2割の出資を受けることで合意したと発表した。
同日北京で開幕した「一帯一路」に関するフォーラムの席で合意文書に調印した。
中国石油天然気集団(CNPC)の100%子会社の中国石油天然気勘探開発有限公司(China National Oil and Gas Exploration and Development:CNODC)が10%、中国海洋石油集団(China National Offshore Oil Corporation:CNOOC)が10%を出資する。
ロシアは北極海航路を活用した北極圏LNGの輸送でアジア市場の開拓を急ぎ、米国と貿易などを巡って対立する中国もエネルギー調達元の多角化を進めており、思惑が一致した。中国は北極圏を一帯一路の一環と位置づけている。
Novatekにとって、Arctic LNGはYamal LNGに次ぐ第二のLNG計画であるが、Yamal LNGにも中国は29.9%を出資している。
Novatekは2015年9月3日、プーチン大統領と習近平主席の見守るなか、中国のシルクロード基金(絲路基金)にYamal LNG 計画の持分 9.9% を譲渡する基本契約書を締結した。
これにより、Yamal LNG計画の出資比率は下記のようになった。
従来 今後 Novatek 60% 50.1% Total 20% 20.0% 2011/3/2 調印 ロシアの天然ガス開発ーBP撤退、Total進出 CNPC 20% 20.0% 2013/9 参加合意、2014/1/14 株式買収完了 絲路基金 - 9.9%
2015/9/14 中国のシルクロード基金がヤマルLNG計画に出資
Arctic LNGは、Yamal LNG計画のあるヤマル半島の東隣のギダン半島のSalmanov(Utrennye) ガス田等を供給源とするもの。
Novatekにとって、Yamal LNGに次ぐ第二のLNG計画で、投資額を200~210億ドルとみている。
能力は660万トン×3 系列の1,980万トン/年で、第1系列が2022-2023年、第2系列が2024年、第3系列が2025年の稼働を目指している。
現在は、Novatek が90%、フランスのTotal が10%を出資するが、Novatekはこのうち60%分を維持し、30%を他社に譲渡する考え。場合によっては、30%以上を譲渡することもあり得るが、事業のコントロールのため50%以下はあり得ないとしている。(Yamal LNG は51%)
日本経済新聞が昨年12月22日に、三井物産が出資を協議していることが分かったと報じた。ロイターも同日、三井物産、ロシア政府出資のファンドのRussian Direct Investment Fund (RDIF)及びサウジのSaudi Aramcoが出資交渉をしていると報じた。三菱商事も交渉しているとみられる。
2018/12/24 Novatek のArctic LNG 計画に三井物産が参加か
Total が10%を出資しており、今回中国2社の計20%の出資が決まり、残るのは10%だけとなった。
付記
三井物産は、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と共同出資するオランダのJapan Arctic LNG B.V.を通じて、Novatekが推進するアークティックLNG2プロジェクトに参画すべく、プロジェクト会社アークティックLNG2社の持分を10%取得することでNovatekと合意し、2019年6月29日に持分売買契約を締結 した。
出資比率はJOGMECが75%、三井物産が25%。
三菱商事は参画を断念した。
Aramcoが出資交渉中との報道もあったが、これは消えたこととなる。
Novatek | 60% |
Total | 10% |
CNODC | 10% |
CNOOC | 10% |
三井/JOGMEC | 10% |
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