2019年4月アーカイブ

ロシアのガス大手Novatekは4月25日、北極圏で計画するArctic LNG事業で中国企業2社から2割の出資を受けることで合意したと発表した。
同日北京で開幕した「一帯一路」に関するフォーラムの席で合意文書に調印した。

中国石油天然気集団(CNPC)の100%子会社の中国石油天然気勘探開発有限公司(China National Oil and Gas Exploration and Development:CNODC)が10%、中国海洋石油集団(China National Offshore Oil Corporation:CNOOC)が10%を出資する。

ロシアは北極海航路を活用した北極圏LNGの輸送でアジア市場の開拓を急ぎ、米国と貿易などを巡って対立する中国もエネルギー調達元の多角化を進めており、思惑が一致した。中国は北極圏を一帯一路の一環と位置づけている。

Novatekにとって、Arctic LNGはYamal LNGに次ぐ第二のLNG計画であるが、Yamal LNGにも中国は29.9%を出資している。

Novatekは2015年9月3日、プーチン大統領と習近平主席の見守るなか、中国のシルクロード基金(絲路基金にYamal LNG 計画の持分 9.9% を譲渡する基本契約書を締結した。

これにより、Yamal LNG計画の出資比率は下記のようになった。

  従来 今後  
Novatek 60% 50.1%  
Total 20% 20.0% 2011/3/2 調印 ロシアの天然ガス開発ーBP撤退、Total進出
CNPC 20% 20.0% 2013/9 参加合意、2014/1/14 株式買収完了
絲路基金 - 9.9%  


2015/9/14 中国のシルクロード基金がヤマルLNG計画に出資   


Arctic LNGは、Yamal LNG計画のあるヤマル半島の東隣のギダン半島のSalmanov(Utrennye) ガス田等を供給源とするもの。

Novatekにとって、Yamal LNGに次ぐ第二のLNG計画で、投資額を200~210億ドルとみている。
能力は660万トン×3 系列の1,980万トン/年で、第1系列が2022-2023年、第2系列が2024年、第3系列が2025年の稼働を目指している。

現在は、Novatek が90%、フランスのTotal が10%を出資するが、Novatekはこのうち60%分を維持し、30%を他社に譲渡する考え。場合によっては、30%以上を譲渡することもあり得るが、事業のコントロールのため50%以下はあり得ないとしている。(Yamal LNG は51%) 

日本経済新聞が昨年12月22日に、三井物産が出資を協議していることが分かったと報じた。ロイターも同日、三井物産、ロシア政府出資のファンドのRussian Direct Investment Fund (RDIF)及びサウジのSaudi Aramcoが出資交渉をしていると報じた。三菱商事も交渉しているとみられる。

2018/12/24 Novatek のArctic LNG 計画に三井物産が参加か

Total が10%を出資しており、今回中国2社の計20%の出資が決まり、残るのは10%だけとなった。

付記

三井物産は、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と共同出資するオランダのJapan Arctic LNG B.V.を通じて、Novatekが推進するアークティックLNG2プロジェクトに参画すべく、プロジェクト会社アークティックLNG2社の持分を10%取得することでNovatekと合意し、2019年6月29日に持分売買契約を締結 した。

出資比率はJOGMECが75%、三井物産が25%。

三菱商事は参画を断念した。

Aramcoが出資交渉中との報道もあったが、これは消えたこととなる。

Novatek 60%
Total 10%
CNODC 10%
CNOOC 10%
三井/JOGMEC 10%

Bayer株主の反乱

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カリフォルニアの陪審員が8月10日に、Monsantoの除草剤 Roundup による発癌被害で289百万ドルの賠償評決を下した。このニュースが伝わり、Bayer の株価が下落した。

10月23日、損害賠償は39百万ドルのままとし、懲罰的賠償は39百万ドルに大幅減額した。 しかし、Bayer主張の無罪にならなかったため、Bayerの株価は下落した。

米カリフォルニア州地方裁判所の陪審は2019年3月19日、別の男性が訴えていた裁判で、Roundupががんを発生させた「事実上の要因」だったとの評決を下した。陪審は3月27日、80百万ドルの賠償を命じた。

2018/8/28 Bayer のMonsanto買収 完了と、Monsantoの除草剤への賠償命令判決 

2018年6月7日のMonsanto買収完了時の株価は@98.94Euroであったが、Monsantoの除草剤Roundup の発癌訴訟の発表の都度、失望売りで値下がりし、現在では@61.54Euroまで下がっている。
これによる株価の値下がり損は350億ユーロに達する。(932,552百万株 x 37.4Euro)


米司法省は4月23日、General Electric のガス・スチームタービン技術を中国に持ち出した産業スパイの罪で、GEの元技術者ら2人を起訴したと発表した。金銭的な支援など、背後に中国政府の関与があったと指摘した。


起訴したのはNew York州在住の中国系米国人の元技術者 鄭小清(Xiaoqing Zheng)と、遼寧省に住む中国人事業家の張兆禧(Zhaoxi Zhang)の2人。

鄭小清はGE Power & Waterに勤務中にGEのタービンの設計情報などの電子ファイルを盗み出し、中国に住む張兆禧に情報をメールで送るなどした疑いがある。産業スパイや企業秘密の窃取など14件の罪で起訴した。

鄭小清は4月23日、ニューヨーク州の裁判所に出廷し、無罪を主張した。

起訴資料によると、2人は盗んだ資料を自ら設立した中国のタービン部品メーカーの遼寧天一航空技術と南京天一航空技術で利用した。

また、盗んだ資料が中国の役に立つと考えて産業スパイを行い、中国政府から資金その他の支援を受けた。政府の斡旋で瀋陽航空航天大学、瀋陽発動機設計研究所、中国淮海工学院などと の間でタービン技術の開発のための契約書を締結したとしている。

FBIによると、39枚のGEのデザインとフローチャート用紙を暗号化し、そのファイルを一見無害な夕焼けのイメージコードに埋め込み、個人用メールボックスに送信したという。

鄭小清は、GE Power & Waterで10年近く働いて いる。中国の海外ハイレベル人材招致の「Thousand Talents Program:千人計画」に選ばれている。

千人計画の対象は以下の諸条件のいずれに該当する者:

  • 海外の著名な高等教育機関、研究機関において教授またはそれに相当するポストに就いた者
  • 国際知名企業と金融機関において上級管理職を経験した経営管理人材及び専門技術人材
  • 自主知的財産権をもつ、またはコア技術を把握している;海外での起業経験を持ち、関連産業分野と国際標準を熟知する創業人材
  • 中国が至急に必要とするその他のハイレベルイノベーション創業人材

2018年6月、米国防省は米下院軍事委員会の公聴会で、同プログラムの目的は米国の知的財産を獲得することにあると警告した。

米中貿易摩擦勃発後、「技術窃盗のためのプログラム」との見かた強くなった。数人の在米中国人技術者がFBIに逮捕され、同計画は「入獄計画」と揶揄されている。

中国教育部は昨年、一部の大学に対して、同計画の情報を削除するよう指示したとの情報がある。





世界貿易機関(WTO)は4月11日、韓国による水産物の輸入禁止は不当として日本が提訴している問題で、韓国の措置を妥当とする最終判決を下した。

韓国は2011年3月の福島第一原発の事故後、放射性物質の漏出を理由に福島や岩手など8県産の水産物の輸入を禁止、さらに水産物以外の日本産食品の検査を強化するなど段階的に規制を広げた。

日本は科学的根拠がないとして撤回を求めたが、韓国が拒否したため、2015年にWTOに提訴した。

第一審にあたるパネルは2018年2月、輸入禁止は不当な差別として韓国に是正を勧告した。
韓国はこの判決を不服として上訴した。

日本政府は勝訴を確信しており、逆に韓国は敗訴を覚悟し、対応を検討していた。

しかし、今回の最終判決はパネルの判決を覆した。

WTOの紛争処理は二審制のため「最終審」の判断となる。上級委の判断は30日以内にWTOで正式に採択され、確定する。
韓国が禁輸を是正する必要はなく、日本が韓国に対し関税引き上げなどの対抗措置を取ることもできない。

原発事故後、多くの国が日本産食品の輸入を規制した。一時は最大54カ国・地域にのぼり、2019年3月時点でもアジアを中心に23カ国・地域が規制を続けている。
特に中国は東京や千葉、福島などのすべての食品の輸入を停止するなど、厳しい措置を取っている。

ーーー

韓国の日本産品に対する輸入制限は次の通り。

対象県 対象産品
2011 追加テスト要件 全都道府県 全農水産物、加工食品、食品添加物、健康食品 出荷毎に、日本輸出前、韓国輸入時、韓国販売時にそれぞれセシウム含有量を計測し、一定量以上なら追加的に他の放射線核種の試験を課すか、あるいは輸入を禁止する。
2013年に対象産品を追加し、一部基準値を厳格化した。
2013 全水産物および畜産物
2012 産品別
禁輸
福島 スケトウダラ 後に2013年分に吸収
青森、岩手、宮城、福島、茨城 マダラ
2013 青森、岩手、宮城、福島、栃木、群馬、茨城、千葉 水産物28種類(スケトウダラ、マダラ、キンメダイ、イワシ、クロマグロ、ホタテ等)


WTO協定附属書IAの衛生植物検疫(SPS)協定では次の通りとしている。

十分な科学的根拠を有し、適正な危険評価に基づく措置の導入を求める(2条2項、5条1項)。
その措置も国際貿易に対する不当な差別や偽装した制限となってはならず、不必要に貿易制限的であってもならない(2条3項、5条5項・6項)。

科学的証拠が不十分な場合でも、(2条3項の科学的証拠の要求の例外として)暫定的なSPS措置を取ることを許す(5条7項)。

我が国は事故直後の2011年4月の日中韓貿易相会合で解除を要請し、WTOでも2013年10月以来累次のSPS委員会で撤回要求を行なったが、解決を見なかった。

2015 年5月に本件をWTO紛争解決手続へ付託し、一連の措置のSPS協定違反を主張した。

第一審と第二審の判断の概要は以下の通り。

1) 暫定的なSPS措置かどうか(5条7項)

 第一審

海洋へのセシウムやヨウ素の流出が確認でき、対象産品の放射線含有の危険性を評価するのに十分な科学的証拠が揃っていた。
韓国は全ての措置についてその後追加的な情報に基づく見直しを行わなかった。
従って、韓国の措置は暫定措置ではない。

 第二審:無効

日韓双方とも、5条7項を取り上げていない。一審判断は付託された問題を検討するパネルの責務を踰越しており、無効。

2) 貿易制限的かどうか(5条6項)

5条6項は、「適切な保護の水準(ALOP」を達成するために必要な以上に貿易制限的であってはならないと定める。

韓国はこれを、食品摂取の1人あたり線量1mSv/年を上限としつつ、合理的に達成可能な出来るかぎり最低限の水準、と主張した。

日本は、代替措置としてセシウム含有100bq/㌕超の産品を排除すれば、セシウムおよびその他放射性核種による汚染につき韓国のALOP (1mSv/年)を達成できるので、韓国の措置は必要以上に貿易制限的であると主張した。

 第一審:貿易制限的である。

韓国の「合理的に達成可能な出来るかぎり最低限の水準」はALOPとしては不明確であるとし、措置の内容や各種証拠から1mSv/年を韓国のALOPと認定した。

2013年以降日本産品のセシウム含有が100bq/㌕を超えることは皆無であり、また以後著しく減少していることを認め、更にセシウムがその水準であれば韓国が懸念するストロンチウムおよびプルトニウム含有もコーデック基準値以下の安全なレベルと推定する日本の手法も統計上合理的であると認定した。

実際に福島で食べられている食事あるいは全て日本産海産物を使用した食事を食べ続けると仮定する慎重な評価手法に従っても、韓国のALOP(線量1mSv/年)は達成可能であるとも認定した。

この代替措置は経済的・技術的に実行可能である。

このような代替措置がある以上、少なくとも2013年以降韓国の一連の措置はSPS協定5条6項に反して必要以上に貿易制限的である。

 第二審:第一審判断破棄

韓国のALOPが「①通常の環境における食品の放射能レベルに維持すること、よって②1mSv/年を上限として、③合理的に達成可能なできるかぎり最低限に食品の放射能汚染を維持すること」と認める。

第一審は②のみに焦点を当てている。

日本が提案する代替措置(セシウム100Bq/㎏以上の食品のみ輸入制限、これで1人当たり年間被ばく量を1mSv/年以下にできる水準)が韓国の複合的なALOPを達成できるか否かを検討する責務があるが、代替措置が1mSv/年を著しく下回る被ばく量を達成できる、としか判断しなかった。

5条6項においてALOPの設定はSPS措置を取る加盟国の専権でもあり義務でもある。
ALOPは必ずしも定量的な基準でなくともよいが、SPS協定の適用を妨げないように、十分に詳細に定められなければならない。

加盟国による提示と実際の措置に反映されるALOPが異なる場合、証拠に基づき理由を示してALOPを決定する必要があるが、その点を判断していない。

以上のことからパネルの判断を破棄する。

3) 韓国の措置は日本産水産物に対して差別的か (2条3項)

 第一審:差別的である

過去の大規模放射線事故(たとえば1986年のチェルノブイリ原発事故)によって放出され、半減期が長いセシウムやストロンチウムが世界に広く残留しており、依然として全世界で食品汚染の可能性があった。
その汚染レベルは2013年以降の日本産食品と変わらない。

しかるに韓国は日本産品にのみ禁輸や追加的な検査を要求している。
日本産品の非常に低い放射線量に鑑みて、この差別には食品中の基準値以上の放射性核種から韓国民を守る規制目的と合理的に関係が見出せない。

 第二審:第一審判断破棄

「同一又は同様の条件の下にある加盟国の間」の差別を証明する2条3項の下では、関連する「条件」を特定しなければならない。

第一審は、発生源に近いところでのより大きな汚染の可能性や、特定の放射性放出事故が地域的・漸進的な潜在的食品汚染に帰結することなどを認定した。
にもかかわらず、こうした潜在的に食品汚染に影響する他の領域的条件に関する認定と一致させることなく、食品中の実際の汚染水準だけに依拠した。


以上の通り、第二審は、第一審の判断の論理構成を問題とし、その判断を否定した。上級委員会は法律審である。

ーーー

菅義偉官房長官は4月12日の記者会見で「敗訴の指摘は当たらない」と強調した。

理由として、上級委が日本産食品の安全性に触れていないため「日本産食品は科学的に安全であり、韓国の安全基準を十分クリアするとの一審の事実認定は維持されている」ことを挙げた。

しかし、実際には第一審の報告書には「日本産食品は科学的に安全」との記載はなかった。

第一審で日本は「韓国が日本産食品を差別的に扱っていること」を問題とし、安全性自体の認定は求めなかった。


「韓国の安全基準を十分クリア」についても、第一審は「日本は、代替措置としてセシウム含有100bq/㌕超の産品を排除すれば、セシウムおよびその他放射性核種による汚染につき韓国のALOPを達成できる」とし、貿易制限的としたが、第二審はこの判断を破棄している。


経産省所管の「経済産業研究所」の川瀬剛志ファカルティフェローは本件をまとめた論文「韓国・放射性核種輸入制限事件再訪ーWTO上級委員会報告を受けてー」を発表した。

スコットランドの自治政府のNicola Sturgeon 首相は4月24日、2021年までに独立の是非を問う2回目の住民投票を行う準備を開始する意向を示した。

首相はスコットランド議会で「EU離脱をめぐる混乱を受け、独立を求める声はこれまでになく強まっている。Brexit か、独立した欧州国家になるかという選択の機会を、この議会の任期中に提供すべきだ」と述べ、英国がEU を離脱した場合、英国からの独立の是非を問う2度目の住民投票を2021年5月の次期自治議会選前に実施したい考えを表明した。

住民投票実施の法案を年内に作成する。住民投票実施にはいずれ英政府の承認が必要になるとしている。

今年10月末まで期限が延期されたEU離脱計画に影響を及ぼす可能性もある。

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スコットランド王国は1707年合同法により、イングランド王国に統合され、Kingdom of Great Britainとなった。
(1801年にアイルランド王国と合同し、United Kingdom of Great Britain and Ireland となった。1922年にアイルランド自由国が分離、連合王国は1927年にUnited Kingdom of Great Britain and Northern Irelandに改称した。なお、ウェールズ公国は13世紀にイングランドの支配下に置かれ、ウェールズはイングランド王国の一部となった。

現在、スコットランドとウェールズ、北アイルランドには議会が設置され、 権限の委譲による自治権を有している。

Nicola Sturgeon女史は1970年生まれで、2014年よりスコットランド国民党首で自治政府首相。

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スコットランドの独立を問う最初の住民投票は2014年9月18日に実施された 。

スコットランドでは独立志向が高まり、ブレア政権時代の1997年に独自の議会設置の是非を問う住民投票が可決された。

ブレア内閣はスコットランド住民の独立志向を抑えるため、1999年にスコットランド議会を設置して、中央政権の権限を大幅にスコットランド自治政府に移譲した。

スコットランドの独立志向は一時的に抑えられたかに見えたが、2011年5月のスコットランド議会選挙でスコットランド独立を公約に掲げるスコットランド国民党が議会の過半数を占める大勝利を収め、党首が自治政府の首相に就任した。

2012年10月にイギリスのキャメロン首相と自治政府首相の会談で住民投票の実施が決まった。

住民投票では55%が独立に反対し、否決された。但し、有権者の84.59%が参加するなどスコットランド人の独立問題への関心の高さが示された。


2016年のBrexit 国民投票ではスコットランドは62%が離脱に反対した。

Brexit の決定を受け、EU残留を主張する独立支持派の間で独立の住民投票の再実施を求める声が高まっている。

もし、スコットランドが独立し、EUに帰属すると問題は大きい。

国境管理(モノ、ヒト)、通貨、北海原油の帰属、安全保障(原子力潜水艦基地はスコットランドにある)、・・・


ーーー

北アイルランドも今後、英国からの離脱=アイルランドとの統合の問題が出てくる。北アイルランドもBrexit国民投票で反対に回っている。

1998年4月10日、イギリスとアイルランドの間でベルファスト合意(聖金曜日協定)が締結された が、下記の項目が含まれている。

・北アイルランド地方議会の新設=英国政府の直轄統治から地方自治へ

・イギリスとアイルランド共に北アイルランドの領有権を主張しない。アイルランドは北アイルランド領有をうたう憲法を修正

・北アイルランド住民の過半数の合意なしに北アイルランドの現状を変更しない

・北アイルランドの将来の帰属は北アイルランド住民の意思によって決定される。

・帰属が確定するまではプロテスタント、カトリック系政治勢力が共同参加する自治政府によって統治される。

両国は北アイルランドの住民が国籍を、自身の選択で、アイルランド、英国、又は両方とすることを認める。将来の北アイルランドの帰属がどうなるかに関係なく、英国とアイルランド両方の国籍を持つことを認める。


北アイルランドの人口構成は、プロテスタント系が50%強、カトリック系が40%半ばと拮抗しているが、
カトリック系の方が出生率は高いため、北アイルランドは将来的にアイルランドへ帰属を変更する可能性が高い。

2019/2/11  Brexitの問題の根源(続き)-「北アイルランド国境問題


原子力規制委員会は4月24日の定例会合で、原発に設置が義務付けられているテロ対策施設が期限内に完成しない場合、 期限の延長を認めないことを決めた。原則として原発の運転停止を命じる。

テロ対策施設は「特定重大事故等対処施設」と呼ばれ、2011年の福島第一原発事故後にできた新規制基準で設置が義務付けられた。
原子炉から離れた場所に建て、遠隔制御で原子炉を冷やす設備を備える。原子炉が航空機の衝突などによる攻撃を受けても、電源や冷却機能などを失わないようにする。

ーーー

原子力規制委員会は2013年6月19日、福島第 一原発事故の教訓を踏まえた新しい規制基準を決定した。7月8日に施行する。

テロ対策などを盛り込んだ「過酷事故対策編」、既存設備の安全対策を強化する「設計基準編」、活断層調査の強化や津波防護策を定めた「地震・津波編」の三つに大別される。

基準には、最新の安全対策を義務付ける「パックフィット制度」が導入され、既設原発も対象になる。

過酷事故対策編 「特定安全施設」(事故の際、中央制御室の代替として機能) 5年間猶予
「緊急時対策所」(前線本部となる免震重要棟) 仮設も当面可能(機能を満たせば)
フィルター付きベント装置 加圧水型原発は現状でも当面容認
電源車やポンプの配備
航空機墜落などのテロ対策 法施行から5年猶予→審査終了後5年
非常用バッテリー(3つ目) 5年猶予
設計基準編 ケーブル難燃化(火災対策)
活火山、竜巻対策の強化
冷却装置、電源設備の多重化、多様化
地震津波対策編 最高の耐震性
防潮堤、水密扉
活断層の調査対象を必要に応じて「40万年前以降」までさかのぼって拡大
最高津波の高さ(「基準津波」)に応じた安全対策を実施
活断層直上に重要施設の設置を認めない 日本原子力敦賀2号を認定

2013/6/21  原子力規制委員会、原発新基準を決定 

テロ対策施設の設置期限は、当初は新基準の施行から5年の2018年7月だった。
規制委は2015年、原発本体の審査が長引いていたことをふまえ、「工事計画の審査終了後 5年」に先延ばしを決めた。

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テロ対策施設をめぐっては、大がかりな工事が必要で、これまでに設置できた原発はない。

関西、四国、九州の電力3社が4月17日に、6原発12基で設置期限を超える見通しを示した上で、規制委に期限の延期などを求めた。
九電川内や玄海、関電高浜、大飯、美浜、四電伊方が期限を1年~2年半ほど超える見通しという。

規制委は期限の延長を認めないことを決めた。設置期限に間に合わなければ、2020年以降に順次、運転停止することになる。

更田豊志委員長は「規制の根幹にかかわる。利用停止は明確にしたい」と述べた。

再稼働済みの全9基が停止を迫られる可能性が出てきた。

認可 期限 遅れ ◎稼働中
九電 川内 1号 2015/3/18 2020/3/17 約1年
2号 2015/5/22 2020/5/21
関電 高浜 3号 2015/8/4 2020/8/3 約1年
4号 2015/10/9 2020/10/8
四電 伊方 3号 2016/3/23 2021/3/22 約1年
関電 高浜 1号 2016/6/10 2021/6/9 約2年半 40年超 工事要
2号
関電 美浜 3号 2016/10/26 2021/10/25 約1年半 40年超 工事要
関電 大飯 3号 2017/8/25 2022/8/24 約1年
4号
九電 玄海 3号 2017/8/25 2022/8/24 未定
4号 2017/9/14 2022/9/13 未定

石油連盟の月岡隆会長(出光興産会長)は1月24日の記者会見で次の通り述べた。

日本などを禁輸の適用除外としたが、期間は最長180日としており、5月上旬にも期限が来るとみられ、現状では一定期間の輸入となる見通し。

運用上はイランでの3月積みぐらいがピークになってくる。3月積みで日本での荷揚げが4月となり、支払いが終わる形であればそこまでの輸入は可能だ。

昭和シェル石油と富士石油が既に輸入を再開した。今後も各社が契約に基づいて引き取りを行うと認識している。

出光も決まった契約の数量は履行したい。残っている部分はできる限り、この間に引き取りたい。

日本政府に対して米国との協議で禁輸の適用除外の継続を求めるよう要望している。引き続き適用除外が認められれば4月積みも行っていくだろう。


ナイジェリアの油田の開発権を巡る贈収賄事件で、欧米企業に対する捜査が拡大している。同政府から開発権を得た石油大手の Shell とイタリアのEni、送金に関わった米金融大手JP Morgan Chaseに対する訴訟が英国やイタリアなどで進む。


問題の取引は、Shell とEniが2011年にナイジェリア政府から買い取った油田開発権で、2社は政府に約11億ドルを支払ったが、資金洗浄で有罪判決を受けているDan Etete 元石油相側に送金され、政府関係者に賄賂として支払われた疑いがある。送金にはJP Morganのロンドン支店の口座が使われた。

イタリアの検察は賄賂に使われると知りながら11億ドルを支払ったとして2社とShellの元幹部、Eni のCEOなどを刑事訴追した。
(日経 2019/4/20)

問題となったのは、アフリカ最大の油田の一つとされるOPL245 (Oil Prospecting License 245) である。

source: https://www.petroleum-economist.com/articles/politics-economics/africa/2019/eni-and-shell-face-new-nigeria-action


2011年にShell と Eni が権益を取得し、政府に13億ドルを支払ったが、それ以前に下記のような複雑な経緯があった。

1998 当時のDan Etete 石油相が OPL 245 の権益を20百万ドルで自分が所有する企業 Malabu Oil and Gas に与える。
(Malabuは実際には20百万ドルのうち、2百万ドルしか払っていない)
1999 政権交代
2001 Malabu Oil and Gasは権益の40%をShellに売却。
政府はMalabu Oil and Gasへの権益売却自体を取消し、Malabuは提訴
2002 政府は権益100%を210百万ドルで Shellに売却、生産分与契約を締結。(実際の支払いは1百万ドルだけ)
2006 政府がMalabu Oil and Gasと合意、権益を210百万ドルで渡す、Shellが提訴
2007 Etete元石油相、フランスでMoney-launderingで有罪
2009 Etete の有罪確定
Etete、Shellと会合
2011 ShellとEni、政府と新契約締結、13億ドルを支払い。 (両社から1,092百万ドル、Shellから当初分の207百万ドル)
政府は1,092百万ドル分をMalabu Oil and Gasに対し、契約取消の代償として支払い。


問題は、Malabuへの支払いである。賄賂であると見られた。

2012年にナイジェリア政府のEconomic and Financial Crimes Commission がMalabuの調査を開始した。
2014年にナイジェリア議会が法律違反としてOPL245の取引のキャンセルを議決した。

2013年に英国の Proceeds of Corruption Unit が調査を開始した。

2014年にイタリアのミラノの司法当局がEni のCEOと前CEOを贈賄容疑で調査を開始し、仲介者(ナイジェリア人の Emeka Obi とイタリア人 Gianluca Di Nardo)に渡った195百万ドルを凍結した。

2018年9月、イタリアの裁判所は仲介者2人を懲役4年とし、195百万ドルを没収する判決を下した。

2019年4月、ナイジェリアの裁判所はDan Etete元石油相、Mohammed Adoke 元司法相とEniの部長の逮捕状を出した。 801百万ドルの送金はMohammed Adokeの指示で行われたという。

下記の支払い関係が明らかになった。

Source: https://trwstockbrokers.wordpress.com/2017/12/17/exclusive-malabu-scandal-nigeria-sues-jp-morgan-demands-875-million/

ShellとEniはOPL 245 の権益を50/50で持つが、Shell の支払いが少ないのは、前の契約の207百万ドルと支払済みの開発費535百万ドルがあるため。


Shell とEniは13億ドルのうち、1,092百万ドルをロンドンのJP Morganのナイジェリア政府の口座に振り込んだ。

この1,092百万ドルのうち、801百万ドルはDan Etete 元石油相の Malabu Oil and Gas の口座に振り込まれた。

そのうち、532百万ドルは当時のGoodluck Jonathan大統領の親友で "super-dealer" とされる Abubakar Alyu の会社に 再振り込みされ、大統領や政府首脳に渡った。プライベートジェットや装甲車などの支払いにも充てられた。 元検事総長(2006年に権益をShellからMalabuに移すのを承認)にも10百万ドルが払われた。

EniとShellの幹部にも50百万ドルが渡ったとされる。Eniの役員の自宅に現金で運ばれた。

Dan Etete 元石油相らには269百万ドルが支払われた。

仲介者は頻繁にEniの幹部とコンタクトしていた。

裁判長は、「EniとShellの経営陣は11億ドルの一部がナイジェリア政府要人への賄賂として使われることを十分認識していた」と結論づけた。

イタリアの検察は賄賂に使われると知りながら11億ドルを支払ったとしてShell とEni 及び両社の関係者を刑事訴追した。
訴追されたのは、Eniの現CEO、前CEO及びChief Operations and Technology Officer、Shellの4人の責任者、Shellに雇われた2人のMI 6 元部員。

Shell も Eniも ナイジェリア政府と交渉し決めたものとし、贈賄を否定している。但し、Shellは2009年にEteteと会ったことは認めている。5月にも幹部らが証言する。

Signature bonusとしてはShellから前回分の未払い分相当の207百万ドルを支払いながら、別途1,092百万ドルを両社から支払ったのを、どう説明するのだろうか。契約書等はどうなっているのだろうか?

オランダ検察もShellに対する刑事訴追を準備している。


責任追及は送金取引を扱ったJP Morganにも波及した。同行は2011~13年にかけて801億ドルをDan Etete 元石油相の Malabu Oil and Gas の口座に送金した。
Etete 元石油相は2007年にフランスで資金洗浄の有罪判決を受けており、ナイジェリア政府関係者の指示でJP Morganが2011年にスイスとレバノンの銀行あてに送金した際、2行はコンプライアンス上の懸念などを理由に受け取りを拒否した。
ナイジェリア政府はJP Morganが送金をすべきでなかったと主張、政府資金の不正流出につながったとして同行に875百万ドルの損害賠償を求めた。

JP Moraganは法的及び規制上の義務を順守しているとして賠償請求の棄却を求めたが、英高等法院は2月、同行の要求を退けた。

BPは4月19日、同社主導のAIOC (the Azerbaijan International Operating Company) がカスピ海のAzeri-Chirag-Gunashli (ACG) 油田コンプレックスのAzeri Central East 油田の開発を決めたと発表した。

日量10万バレルで、2023年に生産を開始し、操業期間中に合計3億バレルをの生産する。

投資額は60億ドルで、既存のCentral Azeri platformと East Azeri platformの間の水深140mの地区にplatformと採掘設備をつくる。既存のACGパイプラインに接続し、陸上のSangachal Terminalに繋ぐ。


BPは2016年12月23日、AIOC (the Azerbaijan International Operating Company) がアゼルバイジャンで操業中のカスピ海で最大の海底油田 Azeri-Chirag-Gunashli (ACG) の開発を2050年まで(その後、2049年12月31日までに変更続けることで、同国国営石油会社 SOCAR (the State Oil Company of the Republic of Azerbaijan) と基本合意したと発表した。2017年に契約締結した。

既存の契約は1994年9月に30年間の期限で締結された。

ACG地区の開発は1994年の契約締結以降、順次行われ、これまでに合計で360億ドル以上が投資されている。

・ 1997年にChirag油田が生産開始(Early Oil Project )
・ 2005年にCentral Azeri 油田の生産開始(Azeri Project Phase 1)
・ 2006/10にWest Azeri、2006/10にEast Azeri が生産開始(Azeri Project Phase 2)
・ 2008/4にDeepwater Gunashli が生産開始(Azeri Project Phase 3)
・ 2014/1 にWest Chiragが生産開始(Chirag Oil Project)

今回のAzeri Central East (ACE) project は契約延長後の最初の計画である。

ACGは super-giant 油田で、これまでに35億バレル(474百万トン)以上の生産を行った。Bakuの近くのSangachal Terminalから、主にBTC(Baku-Tbilisi-Ceyhan)パイプラインを通して欧州に輸出される。
2018年の生産量は平均して日量584千バレルであった。

権益保有者は下記の通り。

  当初 延長後 参考
BTC Pipe Line
BP 35.78% 30.37% 30.10%
Chevron 11.27% 9.57% 8.90%
SOCAR(アゼルバイジャン国営石油会社) 11.65% 25.00%
国際石油開発帝石(INPEX) 10.96% 9.31% 2.50%
Equinor(旧称 Statoil ) 8.56% 7.27% 8.71%
ExxonMobil 8.00% 6.79%
TPAO (トルコ) 6.75% 5.73% 6.53%
伊藤忠商事 4.30% 3.65% 3.40%
ONGC Videsh(インド) 2.72% 2.31% 2.36%
Azerbaijan (BTC) 25.00%
Eni 5.00%
TOTAL 5.00%
CIECO 2.50%



2017/9/19 国際石油開発帝石、カスピ海ACG鉱区の権益期限延長 

欧州委員会の Secretary-General の Martin Selmayr はこのたび、TVで述べた。

はっきりさせよう。合意なき離脱の場合、アイルランドとの国境沿いに hard border (物理的壁)が設けられる。

これは最悪のシナリオだ。

アイルランドにとって非常に厳しい状況だ。だから、これを避けるため、全てのことをする必要がある。

EUは、合意なき離脱は国境の壁につながり、国境の壁は北アイルランド紛争の再発につながるため、絶対に避ける必要があるとし、離脱協定の締結を迫っている。


米国民主党の
Nancy Pelosi下院議長は今週、議員団を率い、英国とアイルランドを訪問した。何を議論したのかとの質問への答えは、"Brexit, Brexit, Brexit"。

議長はアイルランド共和国と北アイルランドの国境を訪問し、厳しい発言をした。

英国が合意なき離脱を行い、Good Friday Agreement (北アイルランド紛争を終結させた1998年4月10日のイギリスとアイルランドの間の協定)になんらかの害があれば、米英貿易協定を締結しない。
("That's just not on the cards if there's any harm done to the Good Friday accords.")

議長は、メイ首相、保守党の離脱強硬派、労働党のCorbyn党首らに対し、「英国の離脱でGood Friday Agreementとして知られる北アイルランドの平和協定が弱まるなら、英国が米国と締結することを求めている貿易協定を米議会はブロックする」と警告した。

Good Friday Agreementについては、Brexitの問題の根源(続き)-「北アイルランド国境問題」

ーーー

北アイルランドのLondonderry で4月18日夜に暴動が起き、取材していた女性記者が流れ弾に当たり死亡した。

暴動はキリスト教の祝日Easter を週末に控える中で起きた(4/19 がGood Friday休日、4/21がEaster:復活祭)。

北アイルランドのEasterは、アイルランド独立につながった1916年の「イースター蜂起(Easter Rising)」をカトリック系住民が祝うとともに、英国の統治に抗議する日となっている。警察は、カトリック系過激派アイルランド共和軍(IRA)から分離した新IRAによる犯行とみて捜査している。

合意なき離脱は国境の壁につながり、国境の壁は北アイルランド紛争の再発につながる という懸念は現実的である。

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英政府は本年3月13日、合意なき離脱となった場合、アイルランドと北アイルランドの厳格な国境管理を回避すると表明した。

合意なき離脱となった場合、アイルランドから北アイルランドへの商品の輸入について新たな検査や管理を導入しない。企業の自己申告に頼り、国境を越えた取引を記録するためアプリベースのシステムを活用するという。新たな輸入関税制度は適用しない。

この計画は一時的かつ一方向のもので、長期的な対策については、EU・アイルランド政府と早急に協議を開始するとしている。

アイルランド首相も、合意なき離脱の場合でも、国境を越えた貿易の検査は避けられると期待していたが、EUは、監視が少しでも欠けたら欧州の単一市場に大きな穴が開くことを懸念し、この方針を退けた。

欧州側は、合意なき離脱に備え、アイルランドには国境を越えた貿易の検査体制を準備すべきだと圧力をかけている。アイルランド・英国間の貿易に対して大規模な検査体制を敷く必要があるとする。

2019/4/6 合意なき離脱の場合のアイルランドの扱い 

EUは合意なき離脱の場合は、英国の北アイルランドとEUのアイルランド共和国との間に国境管理が必要だと主張する。

EUとしては非EU国との間で、関税チェック、品質チェック等の幅広いチェックが必要である。

国境でのチェックは、単一市場、関税同盟の統合性("integrity")を守るために必要である。

安全でない製品やアンフェアな競争をする製品がEUに入ることを望まない。

食品チェックは厳密で、チェックは「輸入場所のごく近くの検査場("in the immediate vicinity of the point of entry")ですることとなっている。

食品チェックと動物のチェックが特に問題となる。

EU側は離脱交渉で、単一市場を守ることがEUにとってキイとなる目的であると繰り返し強調してきた。


米連邦通信委員会(FCC)は4月17日、中国国有通信最大手、中国移動(China Mobile)の米国参入(2011年申請)を認めない方針を明らかにした。

FCCのPai委員長は声明で、China Mobileが米国で通信事業に参入すれば「重大で深刻な安全保障上のリスク(substantial and serious national security and law enforcement risks)となることは明らかだ」と述べ、通信事業免許の申請を却下する方針を明らかにした。
5月9日の会合で正式決定する。(付記 正式決定)

中国政府のスパイ活動などを念頭に安全保障上のリスクが大きいと判断した。

ーーー

China Mobile は2011年9月1日、米国と海外をつなぐ通信サービス事業の免許を申請した。米国と外国との国際電話サービス提供を望んでおり、米国内でモバイルサービスを展開するつもりはないとしていた。

これに対し米国当局は中国政府によるサイバースパイを懸念した。FBI、国土安全保障省、司法省、国防総省がTeam Telecom を編成し、延々と検討を続けた。
China Mobileが米国の通信網とつながれば、中国政府がスパイ活動に取り組んだり、大規模障害を仕掛けたりするリスクを考慮したという。

米商務省の電気通信情報局は2018年7月2日、連邦通信委員会(FCC)に対し、国家安全保障上の理由からChina Mobile による参入申請を却下すべきだと勧告した。

China Mobile の申請は「容認できない国家安全保障と法執行上のリスクを突き付ける」と米情報機関などの当局者が結論付けたとし、China Mobile は「完全国有会社」であり、「中国政府に利用・操作されやすく、影響を受けやすい」と指摘した。

「世界の通信市場の統合深化に伴い、さまざまな悪質な行為が頻繁に行われているセクターにリスクと脆弱性が生じている」と説明。中国政府は China Mobileが築くつながりを利用して、経済スパイや情報収集を行う可能性があると指摘した。

中国のスパイ活動を懸念する米国側は、中国が米国内にいる中国市民を監視することも警戒している。

FCC はこれを検討するとしていた。


AppleとQualcommは4月16日、Appleの契約メーカー(Contract manufacturers) との間のものも含めて、すべての訴訟を取り下げることで合意した。

合意内容にはAppleからQualcommへの一時金及ぶロイヤリティの支払いも含まれるが、金額は公表されていない。
また両社は、4月1日から6年間のライセンス契約(+2年延長オプション)に加えて、複数年のチップセット供給でも合意した。

付記

米Qualcommは5月1日、1~3月期決算発表の中で、米Appleとの特許紛争の和解により、第3四半期にAppleからキャッシュで45億~47億ドルの支払いを受ける見込みだと発表した。
この金額は、和解金とライセンス契約のライセンス料の一部を含むという。

Qualcomm の発表:

Direct license between Apple and Qualcomm : six years with two-year option to extend
・ Effective as of April 1, 2019
・ Apple will pay royalties to Qualcomm
Settlement includes a one-time payment from Apple to Qualcomm
Multi-year chipset supply agreement
All worldwide litigation will be dismissed and withdrawn. including claims involving Apple's contract manufacturers
Contributes to increased stability for licensing business
Reflects value and strength of Qualcomm's intellectural property

Apple側の発表は、事実関係のみ。

to dismiss all litigation between the two companies worldwide
a payment from Apple to Qualcomm.
a six-year license agreement, effective as of April 1, 2019, including a two-year option to extend
a multiyear chipset supply agreement.

iPhoneの5G対応に遅れが生じる中、Qualcommからの半導体調達を再開するために、Appleが特許使用料の支払い条件をめぐって歩みよった可能性がある。

Qualcommは2018年2月発表の5Gモデム「X50」の第二世代の「Snapdragon X55」を本年2月に発表した。今回の和解により、Appleは5G対応のiPhoneを発売できることとなる。

今回の和解を受け、Qualcommに代わってAppleにモデムを供給しているIntelは同日、5G対応のモデムの開発から撤退すると発表した。

ーーー

これまで、QualcommがAppleにiPhoneの通信機能をつかさどる半導体モデムチップを供給するという協力関係にあった。

世界シェア首位のQualcommは長年、Appleに対し独占的にこの半導体を供給してきた。
QualcommはAppleに対して半導体の代金だけでなく、それに付随する特許使用料の支払いも求めていた。

QualcommはAppleのContract manufacturer にライセンス料の支払を求め、Appleはそれを彼らに支払っていた。

2017年1月、Appleは米国でQualcommを提訴した。連邦取引委員会(FTC)は、2017年1月に、モデムチップセットの不正なライセンス供与に対する裁判所命令を求め、Qualcommを提訴したが、Appleはこれを受け、過去の取引条件の見直しを迫ったもの。 Contract manufacturer に特許料を支払わないよう指示した。

「自社のチップに対して、他社の5倍以上の不当に高いライセンス料を請求している」
「Qualcommが不正なライセンスモデルを構築し、特許技術ごとではなく、販売する製品の単価に応じたライセンス料を求めてくる」
「契約に基づく約10億ドルの払い戻しが滞っている」と主張した。

QualcommはAppleのContract manufacturer に端末卸売供給価格の約5%を特許使用料として要求している。
AppleはQualcommがチップ価格と特許使用料を二重に請求していると主張、「2013年から支払った特許使用料90億ドルを返してほしい」とした。

韓国公正取引委員会は2016年12月に、「不公平なビジネスモデル」で独占的地位を築いたとして、Qualcommに対して約10億ドルの課徴金を支払うよう命じた。
この調査にAppleが協力したことに対する報復として、QualcommはAppleへの払い戻しを留保した。

QualcommはAppleの主張を否定するとともに、特許侵害があったとして逆提訴した。

Appleは同年4月、Qualcommに対し、Qualcommとの紛争が解決するまでは、自社のContract manufacturersに対し、Qualcomm製品へのライセンス分の支払いを行わないと通知した。

Qualcommは同年7月、 米国際貿易委員会(ITC)に苦情を申し立て、一部の「iPhone」を含む複数の製品について、米国への輸入を禁止するよう求めた。

AppleとQualcommは世界で80件の訴訟合戦を繰り広げている。Qualcommは中国やドイツで iPhoneの一部販売の差し止め命令を勝ち取っている。

2018年12月3日、Apple はQualcommとの和解を拒否した。2019年4月15日からカリフォルニア州サンディエゴで特許料をめぐる裁判がスタートする予定であった。

2019年3月には、ITCが2件の審理に対する裁定を下した。

ITCは、バッテリー節約技術に関するQualcommの特許を無効とした。Appleはこの件に関して iPhoneの輸入禁止を免れた。

この数時間前にはITCの別の判事が、Appleによるコンピューティングデバイスの電源管理に関する特許1件の侵害を認定し、問題の部品を含むiPhoneの一部旧モデルを米国で販売禁止にするべきだとの判断を示した。この最終決定は7月の予定であった。

ーーー

2社の関係は大幅に悪化、Appleは2016年以降、Qualcomm製モデムの搭載比率を引き下げ、代わりにIntel 製モデムを採用している。2018年秋の新モデルからはQualcomm製の製品を排除した。Appleがモデムを自社開発しているといううわさもあった。
これにより、Qualcommの売上高は減少した。

他方、AT&T、Verizon、Samusung電子等が相次いで5G 対応スマホを発売する中、Qualcommから5Gモデムの供給を受けられないAppleは発売できないでいる。

Intelはまだ5Gモデムを発表していない。HuweiのCEOはこのたび、「我々はAppleに対しオープンだ」と述べたが、Huawei製の採用は見込めない。

Appleは最近Samusung電子に5Gチップ購入の意向を打診したがSamusung電子は供給量不足を理由に断った。(中央日報)

コンサルタントは「Appleが来年も次世代 iPhoneを発売できないならば米国をはじめとする世界のスマートフォン市場で競争力を失うだろう」と話している。

現在の5Gスマホはほぼ全て、Qualcommの半導体とGoogleのOSのAndroid を使っている。
このQualcommとGoogleが「反Apple」で距離を縮めている。

本年2月のQualcommの5G向けの半導体についての記者会見に、ゲストとしてGoogleが参加し、「Qualcommと活力ある5Gの経済圏をつくっていくことに喜びを感じる」と述べたと報じられている。

Appleとしては、iPhoneの5G対応を早期に進めるためにも、Qualcommとの和解を急ぐ必要があった。

独Merckは4月12日、米半導体材料メーカーのVersum Material を買収する契約を締結したと発表した。

1株53ドルの現金払いで、負債込みの買収額は約58億ユーロ(65億米ドル)。

Versum は半導体の製造過程で使う高純度材料の大手で、Merckも半導体や液晶向けの高純度材料を手がけており、買収でカバーできる工程を広げる。

買収完了の3年後から年間7500万ユーロの統合効果を見込む。

Versum は1月に米Entegrisと経営統合することで合意していたが、Merckはこれを上回る条件を示し、Versum を翻意させることに成功した。

ーーー

米国の特殊化学品のEntegris は2019年1月28日、Versum Material を買収することで合意したと発表した。

Entegrisは半導体およびその他ハイテク産業の最先端の製造プロセスに対し、歩留まりを向上させる材料やソリューションを提供している世界有数のサプライヤーで、米国、マレーシア、シンガポール、台湾、中国、韓国、日本、イスラエル、ドイツ、フランスの世界各国に製造工場、サービスセンター、研究施設などの基幹施設を持つ。

Versum 株主は1株当たり、Entegrisの株式を1.120株受領する。計算では総額 38.3億ドルとなる。合併後のEntegrisは旧株主が52.5%、Versum株主が47.5%を所有する対等合併となる。

これに対し、Merckは2月27日、Versumに買収提案を行った。1株当たり48ドルで、債務を除く総額は52億ドルと、Entegrisとの合意額を大きく上回る。

Merckはその後、買収額を更に引き上げ、1株53ドルとした。

VersumはEntegrisに対し、対抗案の提示を求めたが、Entegrisは見直す計画は無いとし、Merckによる買収が決まった。

VersumはEntegrisに違約金を支払う。

ーーー

Versum Materials 米国の半導体材料メーカーで、2016年10月1日に分離するまでは、Air Products & Chemicals の一部門として30年以上にわたり営業していた。

材料と送達系システムの2部門から構成され、エレクトロニクスや半導体、フラットパネル・ディスプレイの市場向けに特殊材料を供給し、材料やガスの送達と流通システムを提供する。

「半導体業界に革命をもたらす次世代のCMPスラリー、超薄誘電/金属フィルム前駆体、調製洗浄剤およびエッチング用製品、デリバリー装置を供給する世界一流企業の一角を占めている」としている。

2018年の売上高は1,372百万ドルで、内訳は下記の通り。

Merck の事業は3部門に分かれ、2018年の売上高及び扱い製品は次の通り。

売上高
百万ユーロ

Healthcare 6,246

がん、腫瘍免疫および不妊治療領域を重点領域に、世界の先進的な医薬品や医療機器

Life Science 6,185

バイオサイエンス基礎研究から創薬、医薬品製造まで
研究室の純水・超純水装置システムや、薬剤を製造するための遺伝子編集ツール、抗体、細胞株、エンドツーエンドのシステムなど

Performance Materials 2,406

液晶やOLEDなどの「ディスプレイ用材料」、
さまざまな製品に彩りを与える「パール顔料」や化粧品用原料、
エレクトロニクス業界に貢献する半導体製造用の特殊化学品、
次世代エネルギー分野を支える「新規材料」のグローバルサプライヤー

Total 14,836

Performance Materials 部門は最も小さい。半導体関連製品も多く、Versum買収で強化を図る。

ーーー

Merck KGaA の起源は1668年にフランクフルトの南のDarmstadtFriedrich Jacob Merckがエンゼル薬局を創業したことに始まる。

1891年、Merck 一族のGeorge Merckが米国に子会社 Merck & Co.を設立した。
この会社は第一次世界大戦で敵国企業の子会社として米国政府に接収され、1917年に独立した。接収後は両社は別会社である。

2006/3/23 2つのMerck社


米石油大手 Chevronは4月12日、米石油・ガス開発の
Anadarko Petroleum を330億ドル規模で買収すると発表した。

買収提示額は1株当たり65ドルで、4月11日終値に39%上乗せした水準。75%がChevron株式、25%が現金払いで、Anadarko株主は1株当たり現金16.25ドルとChevron 株 0.3869株を受け取る。

Anadarkoの債務150億ドル込みでの買収で、これと非支配持分の価値を加えると、企業価値は総額で500億ドルとなる。

同時期にOccidental Petroleum もAnadarkoを1株70ドル(現金と株式)で買収する提案をしていたが、Chevronに敗れた。

Occidental Petroleumの提案はChevron案よりも価格が5ドル高く、現金部分が多かった。

但し、Occidentalの提案にはAnadarko側に望ましくない条項が入っていたという。

買収により、Chevronは石油業界で3位になる。

Anadarko買収によってChevronはテキサス州とニューメキシコ州にまたがるパーミアン盆地のシェール油田の権益と生産が拡大するほか、メキシコ湾でも事業を強化できる。

Chevronは国内最大のシェール油田地帯、パーミアン盆地への投資を拡大してきたが、ブームの初期段階で機会を逃す一方、Anadarkoなどの独立系生産企業が掘削技術を開発、土地を安く借り受けたとされる。

Anadarkoは、モザンビークのLNG事業にも取り組んでいる。

Chevronは今回の取引の効果を次の通りとしている。

• 事業戦略の強化
 o Shale & Tight ガス -
最も魅力あるパーミアンのデラウェア盆地に計幅75マイルの回廊地帯を持つことになる。
 o Deepwater - Chevronの地位を強化
 o LNG - Mozambique LNG事業を入手

• Synergies: 税引前で年間10億ドルのシナジーあり。投資を10億ドル削減できる。

• Accretive to Free Cash Flow and EPS

• 2020~2022年に150~200億ドルの資産売却を行い、負債の減少、株主への配当に充てる。

• free cash flowの増加で、自社株買いを 年間40億ドルから年間50億ドルに増やす。

ーーー

Anadarko の活動分野は次の通り。



Anadarkoはまた、Western Midstream Partners, LP の55.5%の持分を持つ。Rocky Mountains, North-central Pennsylvania、Texas にまたがって、天然ガス及びLNG・原油等の採集、処理、輸送を行っている。

Anadarkoは、モザンビークのLNG事業にも取り組んでいる。

モザンビークとタンザニアの国境を流れるRovuma川の河口と沖合に世界最大規模のガス田が発見され、開発が始まっている。

モザンビークの海底ガス田の開発は6区に分けて行われており、AnadarkoはArea 1の権益を持ち、三井物産が参加している。

当初 現在
Anadarko (オペレーター) 76.5% 36.5%
Mitsui E&P 20%
モザンビーク国営石油会社 15% 15%
Bharat Petroleum(インド) 10%
Videocon (インド) 10%
Artumas Group(現 Wentworth Resources) 8.5%
PTT Exploration & Production (タイ) 8.5%

2013/1/10 モザンビークの天然ガス開発

Anadarkoは既に多くのLNG供給契約を締結している。
2018/2 フランス電力会社EDF 年間120万トン/15年間
2018/10 東北電力 年間28万トン/15年間
2019/2 中国海洋石油集団(CNOOC) 年間150万トン/13年間
東京ガス/と英国ガス大手Centrica 年間260万トン(2040年初頭まで)
Shell International Trading Middle East 年間200万トン/13年間

Anadarkoでは、「モザンビークは今後数十年間、世界の重要なLNGサプライヤーとなるだろう。LNG長期契約は年間750万トンに積み上がり、残りのLNG売買契約(年間450万トン)も近い将来に見込まれている」としている。

LNG能力は、Eni 主導のArea 4との共同で年産2,000万トンで、Area 1分はこのうち 1,200万トン。

赤字が続き経営再建中のJDIは4月1日、筆頭株主であるINCJ(旧産業革新機構)とも連携しながら外部との提携交渉を行っていると発表した。総額1,100億円超の資本増強としていた。

2019/4/4 ジャパンディスプレイの動き   


JDIは4月12日、台湾の電子部品メーカーなど3つのグループで構成する台中連合から800億円の金融支援を受けると発表した。
メンバー企業1社とは液晶ディスプレイに関する業務提携を、他の1社とは蒸着方式 有機ELディスプレイの量産計画に関する業務提携を行う。

現在の筆頭株主のINCJ(旧 産業革新機構 )は、750億円の優先株の引き受けで Debt-to-equity を行うとともに、770億円の長期貸付で既存の債務(INCJが債務保証)を返済する。

合計で資本増強は1,170億円となる。(他に新株予約権付社債が180億円+200億円あり、全て転換すると1,550億円になる。)

当面の資金繰り不安は解消する。同社では「国内拠点の統廃合を視野に入れている」としており、リストラも示唆した。

日本の官民ファンド、INCJ(旧産業革新機構)に代わり、台中連合が議決権の49.82%(転換社債の転換後は65.41%)を握る筆頭株主になり、日本の電機大手の事業を統合して誕生した「日の丸液晶連合」は外資の傘下で再建を急ぐことになる。

台中連合のSuwa Investment Holdings, LLCと 、800億円の出資契約を締結する。 

 

1) Suwa Investment Holdings, LLC  (出資比率は台湾紙の情報 6/18 新聞報道)

出資比率
台湾 TPK Holding 宸鴻集団 41.8% 251億円 31.375% タッチパネル大手
Cosgrove Global 23.6% 142億円 17.75% 一族富邦金控が運用・管理する投資会社
中国 Harvest Tech Investment Management
嘉実基金管理)
34.5% 407億円 50.875% 中国最大の資産運用会社 Harvestグループ のプライベートエクイティ投資を行う運用会社

これまでは、下記4社とされていた。

台湾 TPK Holding 宸鴻集団 〔今回出資〕
中国 Harvest Tech Investment Management
嘉実基金管理)
〔今回出資〕
China Silkroad Investmet
(中投絲路資本
敏実集団(Minth Group)

自動車部品メーカー

後の2社はApple問題(文末)の懸念で離脱したとされる。代わりに蔡一族 が加わった。

なお、Harvest Tech が中国政府の意向を受け、支援額引き下げを提案し、TPKが一部を肩代わりし、Appleが原資の一部を支援したと報道されている。
中国政府は過剰投資のリスクを嫌ったとみられている。

付記 4/23日経によると、台湾の部品メーカーの淳安電子(SOE)もメンバーであったが、Apple問題で撤退した。
  JDIはAppleとの「密約」を隠していたが、2018/11にAppleが注文を半分に減らすと通達、
  JDIは隠しきれずに交渉終盤に明らかにし、SOEは離脱した。

 2) 出資

普通株式:420億円
新株予約権付社債:180億円+200億円 合計 380億円(うち最後の200億円は資金需要により判断)
総計:800億円

用途は次の通り。
 運転資金:380億円
 R&D:92億円
 設備投資:320億円(蒸着OLED量産 100億円、車載量産化 120億円、新事業投資 100億円)


② 台中連合の2社と事業提携契約を締結する。

TPK :液晶ディスプレイに関する業務提携  (LCD Business Alliance Basic Agreement)

Harvest Tech Investment Management:蒸着方式 有機ELディスプレイの量産計画に関する業務提携

これまで、中台連合は、JDIの技術を活用して浙江省に有機ELパネル工場を建設することを計画しているとされていた。

計画は、第6世代の基盤を3万枚/月、6型パネル 400万台/月の工場の建設で、投資額が約5000億円で、資金は中国政府の補助金を活用する。
早ければ2019年中に建設を開始し、2021年の量産開始を見込む。

③ INCJ (旧 産業革新機構)による750億円のDebt-to-equityと長期貸付金770億円による負債借り換え

優先株 引受 750億円  Debt-to-equity
長期貸付金  770億円
合計    1,520億円

 これにより、下記を返済

INCJの短期貸付金 200億円
劣後CB未償還残高 250億円
INCJの連帯保証債務 1,070億円

なお、劣後特約付貸付 300億円は継続する。

以上により、同社の資本・負債は次のようになる。(単位:億円)

現状         今後       
劣後特約付貸付金 300 劣後特約付貸付金 300
INCJ 短期貸付金 200 1,520 INCJ 長期貸付金 770 1,520
劣後CB 250
NCJ連帯保証債務 1,070 ④INCJ優先株 750 資本増強
 当面 ①+④ 1,170
     +② 1,350
     +③  1,550
③Suwa CB-2 200
②Suwa CB-1 180
①Suwa出資 420
既存資本金 既存資本金


付記

Suwaからの出資は早くても6月になる見込みのため、JDIは4月18日、当面の運転資金として、INCJから200億円のつなぎ融資を受けると発表した。


同社の株主の変遷は次の通り。

当初 その後 2018/3 2019/3/1

今回

増資 全社債転換
Suwa Investment 49.82% 65.41%
産業革新機構→ INCJ 70% 35.58% 26.81% 25.29% 12.69% 8.75%
ソニー 10% 1.78% 1.34% 1.26% 0.63% 0.44%
東芝 10%
日立 10%
日亜化学 3.52% 4.13% 2.07% 1.43%
海外機関投資家計 21.12% 69.32% 34.79% 23.97%
その他現行株主 62.64% 47.21%
合計 100% 100% 100% 100% 100% 100%


今回の決定には、次の問題がある。

1) 「日の丸液晶連合」は台中連合の傘下で再建を急ぐことになるが、米中の貿易摩擦が長引くなか、対米外国投資委員会(CFIUS)などが待ったをかける可能性がある 。

   また、JDIが有機ELパネルの量産技術でApplied Materialsと協業しており、Harvest Tech との蒸着方式 有機ELディスプレイの量産計画に関する業務提携 を提案を米国が問題とする可能性がある。

2) Appleとの契約

JDIはAppleからの増産依頼により、白山工場を建設したが、資金の大半はAppleからの前受け金1700億円で賄った。

問題は、JDIと Apple の契約である。この前受金の契約には下記の条項がある。

・JDIは年間2億ドルまたは売上高の4%のいずれか高い金額を四半期ごとに返済する。

・JDIの現預金残高は300億円以上を維持する。

・上記2つの条項を守れなければ、Appleは、前受け金の即時全額返済、または白山工場の差し押さえを要求できる権利を持つ。

返済原資は貸し手であるAppleからの注文次第であることが問題で、Apple側の理由で注文が減ると、 たちまち返済原資に行き詰まる。

今回の中台連合の出資800億円も、Appleが注文を減らせば、返済不能となり、Appleに流れることとなる。

中台連合の要求に基づいて、2019年以降の返済減額を訴えるため、INCJの志賀会長と経済産業省幹部の2人がApple本社へ乗り込んだが、3月23日に事実上のゼロ回答があった とされる。

今回、出資が決まったのは、Appleとの間で返済繰り延べの合意があったとされるが、報道では、債務残高約 1,000億円について2019年度返済分の一部を2020年度に繰り延べるというだけで、「トリガー条項」はそのまま残るという。JDIの今後はApple からの注文次第で、Appleが「生殺与奪」の権利を握ったままである。


EUと英国は4月11日早朝、英国の離脱期限を10月31日まで再延長することで合意した。

但し、英国が5/23~26の欧州議会選挙中にメンバーである場合、英国は欧州議会選挙の義務を持つ。

英国が5月22日までに協定書を批准しない場合で、それにも関わらず欧州議会選挙をしない場合、延期は5月31日に終了する。

2019/4/11 Brexit 合意書

メイ首相は、それまでに協定書を批准し、離脱しようと図っているが、現状では非常に難しい。

独立党元党首で反EUのNigel Farageは2回目の離脱期限であった4月12日、「Brexit Party」を設立し、欧州議会選挙に向け活動を開始した。
既成の政治勢力を無能だと批判し、「過去数週間の間に目にしたのは、この国の歴史上最大の民主主義実践を故意に裏切る行為だ」などと述べた。

欧州議会議員は任期が5年。総議席は751で、英国は、本土が70議席、北アイルランドが3議席の合計73議席である。

前回は2014年5月22日に投票が行われた。選ばれた議員の党派は次の通り。

当選 前回比
独立党 24 +11
労働党 20 +7
保守党 19 -7
緑の党 3 +1
スコットランド国民党 2 ±0
自由民主党 1 -10
プライドカムリ 1 ±0
国民党 0 -2
Sinn Fein 1 ±0
民主統一党 1 ±0
アルスター統一党 1 ±0
合計 73 ±0


英国の下院では、独立党は2017/6/8 選挙 で全員落選し、議席数ゼロとなったが、その後、労働党等を離党した議員が入り、現在は11名となっている。

ーーー

EUでは、BREXITを前提に既に議席の再配分をしていた。

英国のEU脱退によって空席となる73議席のうち、46議席は無くし、総議席数は751から705に削減された。

残り 27議席は下記の通り再配分された。

フランス(+5議席)、スペイン(+5議席)、イタリア(+3議席)、オランダ(+3議席)、アイルランド(+2議席)、スウェーデン(+1議席)、オーストリア(+1議席)、デンマーク(+1議席)、フィンランド(+1議席)、スロヴァキア(+1議席)、クロアチア(+1議席)、エストニア(+1議席)、ポーランド(+1議席)およびルーマニア(+1議席)。

今回、英国が選挙に加わる場合の扱いは決まっていないが、(離脱取り止めの場合を除き)10月31日までであるため、おそらく追加議席分で選ばれた議員は補欠とし、英国離脱後に就任するのではないかと思われる。


東芝は4月11日、中国の奥生控股股份ENN Ecological Holdings )との間で2018年11月に締結したLNG購入契約の譲渡の契約につき、先方から譲渡契約解除の意向の連絡を受けたと発表した。

東芝では、状況把握に努め、LNG事業の今後の取扱いについて検討する。この契約に基づき2019年3月期決算で計上する予定であった特別損失(約930億円)は見直す。

付記 

東芝は4月17日、この契約を解除した。迅速に同事業の第三者への却プロセスを再開し、早期事業撤退を目指すとしている。

ーーー

東芝は、米国のFreeport LNGから、日本をはじめとする各国の需要家へのLNG販売を目的として、2013年に年間220万トンの20年間(2019年から)の契約を締結した。

Freeport LNG


株主:
Michael Smith
Zachry
Dow(輸出には不参加)
大阪ガス

Freeport LNG Terminal
(Quintana Island, TX)
承認:2013/5(FTA締結国向けは 2011/2)
期間:20年間
液化開始:2018年(追加分2019年)
輸出契約:
 

大阪ガス

  220万トン
  中部電力   220万トン
  BP Energy   440万トン
  東芝   220万トン
SK E&S LNG

220万トン

Trafigura

50万トン

  再計  

1370万トン

東芝が契約した2013年当時は、東日本大震災後で日本では原子力発電所が停止し火力発電所に依存してLNGの需要が高まっていた。

東芝は、これを武器に日本の電力会社などに火力発電設備を売り込もうとしたとされる。

しかし、販売先は全く決まっていない。これらは全て Take or Pay の契約であり、市況が下がっても契約価格での引取りが必要である。このため、同社では(過去に)最大1兆円の損失の恐れがあるとしていた。

同社では、LNGについて、市況の悪化、より低コストのプロジェクトが今後開発されること等により当初想定していた取引条件を下回る条件、あるいはコストを下回る価格での販売を余儀なくされ、それにより将来的に損失が発生する可能性があるとした。

このため、2018年8月に入り、東芝はこれを売却する方針を固めた。10社程度が同事業の買収に関心を示していたとされた。


東芝は2018年11月8日、米国産液化天然ガス(LNG)に係る事業から撤退すると発表した。

LNG事業に係る全ての契約も移管または 解除することで、2019年3月31日までに本件譲渡を完了させて、LNG事業から撤退することを目指した。

相手先は中国の民間ガス大手新奥生态控股股份(ENN Ecological Holdings である 。

売却先の奥生控股股份有限公司は、香港証券取引所に上場する中国の民間ガス大手。

譲渡の条件は次の通り。

・事業会社(東芝アメリカLNG)の売却 売却額15百万ドル

・LNG全量引取基本合意書でのLNG引取義務の引き継ぎ  821百万ドルを支払う。(約930億円の損失計上予定)

2018/11/9 東芝、米国LNG購入契約を譲渡 

ーーー

契約では、2019年3月31日までに本件譲渡を完了させるとしているが、東芝は本年4月1日、譲渡完了が4月以降となると発表していた。

その時点では、①対米外国投資委員会(CFIUS)の承認、②中国の国家外貨管理局(SAFE)の認可 等が未了であることが理由で、引き続き早期完了を目指し対応することで双方が確認していたという。

しかし、今回先方より、譲渡契約の期限が経過しており、短期間で条件充足が難しいため、契約を解除する意向の連絡があった。


現在、中国と米国との間で制裁関税の撤廃をめぐり貿易協議が進行中である。

中国はLNGなど米国製品の輸入拡大策を米国側に示しているとされるが、米国側は、「中国の譲歩策の度合いに応じ、関税を段階的に撤廃する」案や、中国が合意に違反したと判断すれば米国が制裁関税を再発動する「罰則条項」などを主張し、難航している。

これが決着しない段階では、米国も中国も個別のLNGの取引を事務的に承認することはあり得ない。

期限までに承認が得られないことから契約を解除したいという奥生控股股份の意向は批判できない。東芝は米中の紛争に巻き込まれたことになる。

しかし、中国と米国の合意がなされ、中国が大量のLNGを米国から購入することが決まれば、買い手は現れると思われる。

付記

東芝は米国産LNGに係る事業Total S.A.のシンガポール子会社Total Gas & Power Asia Private Limited へ売却することを決定し、5月31日にLNGを扱う東芝アメリカLNGの発行済株式の全てを譲渡する契約を締結した。

東芝アメリカLNGの全株式をTotal社に対価15百万米ドル(約17億円)で譲渡する。20203月末までの完了を目指す。

LNG事業を所管す東芝エネルギーシステムズは、本件株式譲渡の完了と同時に東芝アメリカLNGと締結しているLNG全量引取基本合意書をTotalに譲渡し、LNG引取義務一切から免責される。
引取義務の引き受けに対する一時金費用として、Totalに 815百万米ドル(約912億円) を支払う。

東芝エネルギーシステムズ顧客と締結している既存のLNG販売契約についても当該顧客の同意を条件としてTotal社に移管する。


Bayerはこのたび、サイバー攻撃を抑え込んだことを明らかにした。データを盗む目的と見られる。

ハッカーはWINNTIと呼ばれる破壊工作ソフト(Malware) を使用した。WINNTIは遠方からシステムに侵入し、侵入すると、どんなことでも出来るという。

専門家は、犯人は中国の「悪いパンダ(Wicked Panda)」と呼ばれるグループだと見ている。

かつてゲームサーバを攻撃し、現金化が可能なゲーム内仮想通貨を不正に取得し、オンラインゲームのソースコードを窃取した。

その後、製薬会社や電気通信会社などの企業も標的に加え攻撃対象を拡大した。

標的型サイバー攻撃を実施する悪名高い集団として知られるようになった。

グループはBayerのネットワークにWINNTIを忍び込ませた。

2018年初めにBayer側は侵入を察知し、1年にわたり、密かに監視を続け、Malwareの分析を行った。Bayerは2015年にBASFやVolkswagen、保険会社のAllianzと一緒にDCSOと呼ばれるサイバーセキュリティグループをつくっている。

本年3月末にMalwareをシステムから削除した。

データが盗まれた証拠はないとしている。しかし、何か被害が無いか、調査を続けており、政府機関も調査を開始した。

ーーー

Malwareが石油化学コンプレックスに侵入する事件もあった。

中東の某石油化学コンプレックスが2017年8月に緊急シャットダウンした。

Schneider Electric製の「Triconex」安全計装システムコントローラを不正に操作するように特別に設計された「TRITON」と名付けられた新種の破壊工作ソフト(Malware) が仕込まれ ていた。

幸い、「TRITON」が「Triconex」安全計装システムのプログラムを変えようとしたときに、安全装置が異状を察知し、緊急シャットダウンをしたとみられている。

サイバー・セキュリティ製品を提供するFireEyeが調査し、TRITONが侵入していることが判明した。

「Triconex」に仕込まれたMalwareであることから「TRITON」と名付けられた。

ハッカーは他のソフトでコントロールシステムにも侵入していることが分かった。

工場全体がハッカーに占拠され、ハッカーの思うがままになるところだった。

具体的に何をしようとしたかは不明だが、専門家は設備に物理的な被害を与え、工場のシャットダウンを狙ったのではとみている。ガスを放出させれば、大爆発の恐れもある。

どういうルートでMalwareが入ったかは分かっていない。


工場のコントロールシステムを対象とするMalwareは珍しい。

過去に「Stuxnet」(後述)がある。安全装置が稼働するのを妨害し、危害を与えたが、「TRITON」はこれに似ている。

本件を調査したFireEyeは2017/12/14付でTRITONの概要を発表した。

https://www.fireeye.com/blog/jp-threat-research/2017/12/attackers-deploy-new-ics-attack-framework-triton.html

その後、FireEyeは検証を続け、2018/10/23付で、犯行グループ(「TEMP.Veles」)をモスクワにあるロシアの国有の科学技術研究機関Central Scientific Research Institute of Chemistry and Mechanics(CNIIHM)が支援し、この攻撃に関与していたことを「強く確信」するに至ったと発表した。

単独または複数のCNIIHM従業員が、雇用主の承認なしにTEMP.VelesをCNIIHMに結びつける活動を遂行した可能性も残されているが、このシナリオは非現実的だとしている。

https://www.fireeye.com/blog/jp-threat-research/2018/10/triton-attribution-russian-government-owned-lab-most-likely-built-tools.html

仮にロシア政府が関与しているとすれば、一体どういう目的なのか、全く分からない。



2019年1月29日付で米上院諜報活動特別委員会は報告書
Worldwide Threat Assessment of the US Intelligence Community を発表した。その中に米国へのインフラへのサイバー攻撃の懸念を示している。

中国は、米国で天然ガスパイプラインのような重要なインフラを一時的に停止させるサイバー攻撃の能力を持つ。

ロシアは、2016年にウクライナでやったように、米国で送電ネットワークを止めるサイバー攻撃の能力を持つ。

IT系ネットワークからウクライナ国営電力会社の電力網の制御系システムに入り込み、「CrashOverRide」(Industroyer)と呼ばれる malwareを埋め込み、制御系システムを外部から操作して停電を引き起こした。

ーーー

「Stuxnet」は米国とイスラエルの両政府が開発した。

イランの国家政策である核開発を妨害し遅延させる目的で使用され、実際に、2009年から2010年にかけて、イランのナタンズ核燃料施設でウラン濃縮用遠心分離機を破壊する、という物理的実害を引き起こした。

遠心分離機の回転速度に関わる制御システムに特定のコマンドを出し 、約8,400台の遠心分離機の全てを稼働不能にした。システム管理者にはすべてが正常に稼動しているように見せかけた。

ナタンズ核施設でのウラン濃縮が停止し、イランの核開発は「2年前に後戻りした」。

「Olympic Games」というコード名で呼ばれたこの計画は、もともとはジョージ・W・ブッシュ前大統領が許可し、オバマ大統領が計画を継続した。(NY Times 情報)

インターネットに接続していない産業用制御システムにもUSBメモリーを介して感染・発症することから、産業用システムのセキュリティ管理のあり方を根本から考え直させた。

Brexit 合意書

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速報の通り、EUと英国は4月11日早朝、英国の離脱期限を10月31日まで再延長することで合意した。

4月10日にEUの臨時首脳会議がEU案を決め、翌早朝、英国のメイ首相と合意した。

最長で10月31日までの延長で、英国は、双方が離脱協定案を批准した場合は、その翌月1日に離脱し、そうでない場合は11月1日に離脱する。
但し、英国が欧州議会選挙に参加しない場合は、延期は5月31日までとする。(5月22日までに離脱協定案を批准する予定の場合はこの限りでない)

合意書の内容は次の通り。

まず、これまでの経緯と、延期の前提を記している。

(1) 2017/3/29 英国の離脱通知

(2) EUはTreaty on European UnionのArticle 50 に基づき、英国と交渉した。

(3) 2018/11/25  英国と離脱協定案と政治宣言案で合意した。

(4) Article50(3) では、通告の2年後に離脱する。EUの満場一致の決定で延長可能。

(5) 2019/3/20 英国は2019/6/30までの延期を要請した。

(6) これに対し、EUは英国下院が3/29までに協定案を承認した場合は5/22までの延期を、そうでない場合は4/12までの延期を認めることとした。

(7) 英国下院は3/29までに協定案を承認しなかった。

(8) 英国は4/5のレターで、協定案の承認を得るため、6/30までの延期を求めた。

(9) EUは4/10に、協定の双方による批准を求め、延期に合意した。
 延期は必要な限りとし、最長 10/31 までとする。

 双方がそれ以前に協定を批准した場合、10/31以前に離脱協定は発効する。

 この結果、批准の翌月1日か11月1日に離脱する。

(10)(延期の悪影響の回避)
 延期により、EUの機能が損なわれない。
 英国は離脱日までは、本来の権利と義務をもって残留する。
 英国はいつでも離脱を撤回する権利を持つ。

 英国が5/23~26の欧州議会選挙中にメンバーである場合、英国は欧州議会選挙の義務を持つ。

 それにも関わらず欧州議会選挙をしない場合、延期は5月31日に終了する。

 英国は、EUの意思決定に参加する場合、EUの目的達成を邪魔する行動を行わない。

(11) 離脱時点でEUの取り決めの英国への適用を中止する。

(12) 延期により、離脱協定の再交渉はしない。

(13) EUは2019年6月に進行状況をレビューする。


結論

Article 1   離脱日を2019年10月31日まで延長する。

The period provided for in Article 50(3) TEU (Treaty on European Union), as extended by the European Council Decision (EU) 2019/476, is hereby further extended until 31 October 2019.

Article 2  この決定は、英国が欧州議会選挙に参加せず、かつ5月22日までに協定書を批准しない場合、5月31日に終了する。

This decision shall enter into force on the day of its adoption.
This decision shall cease to apply on 31 May 2019 in the event that the United Kingdom has not held elections to the European Parliament in accordance with applicable Union law and has not ratified the Withdrawal Agreement by22 May 2019.

ーーー

なお、EUのTusk大統領は4月10日のEUの臨時首脳会議の終了後、次の通り述べた。

その間、フルメンバー国として協力する。

最後に英国の友人へ: Please do not waste this time.

EUと英国は4月11日、英国の離脱期限を10月31日まで再延長("flexible extension")することで合意した。


当初の離脱日は3月29日であった。

EUは3月21日、首脳会議を開き、EU離脱について下記の通り決めた。

1)英国下院が3月29日までに離脱協定案を可決すれば、協定案の批准手続きのため5月22日までの延期を認める。

2)下院が3月29日までに可決できない場合、離脱日を本来の3月29日から4月12日まで延期する。

メイ首相は、協定案による離脱か、合意なき離脱のどちらかしかないとして、協定案への賛成を得るため労働党との協議を行ったが、合意に至っていない。

メイ首相は6月30日までの再延期をEUに要請した。

離脱日の前日の4月11日にEU首脳会議は10月31日までの再延長で合意し、英国も受け入れた。

EUのDonald Tusk大統領は1年間の延長を提案した。
多くの首脳は本年末、又は2020年3月までの延長を主張した。
しかし、フランスのMacron 大統領が長期延期に強く反対した。

10月31日はユンケル欧州委員長など、EUの現執行部の任期が切れるタイミングでもある。

早期離脱条項も入った。メイ首相は、議会が離脱協定案を承認すれば、英国は6月30日以前に離脱できると述べた。

Tusk大統領は、延期期間中に英国には離脱協定案の承認や離脱戦略の変更、離脱そのものの取り止めといった選択肢が引き続きあると説明した。

EU首脳らは6月の定例首脳会合で進捗状況を確認する。

EU側は以前から、長期延期の場合英国は5月の欧州議会選挙に加わる必要があるとしてきたが、英国は議員を送ることとなる。離脱時点で辞職する。

EUのDonald Tusk大統領は英国に対し、6カ月の延長期間を無駄にするなと要請した。

"Let me finish with the message to our British friends: Please do not waste this time."

愛媛大学大日本住友製は4月9日、アフリカやアジアなどで猛威を振るうマラリアのワクチン開発につながる抗原を発見したと発表した。

今後、研究を継続し、2020年代にワクチンの実用化を目指す。

このたび、世界初の革新的な官民パートナーシップのグローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)から93,057千円の研究助成金を受け取った。

GHIT Fundは、政府・企業・財団が出資するもので2013年4月に設立された。開発途上国に蔓延する感染症の新薬やワクチン等の新しい医薬品の研究開発および製品化を促進することにより、グローバルヘルスへ貢献することを目的にしている。

GHIT Fundは3月28日、上記を含め、マラリア、結核、デング熱、リーシュマニア症、住血吸虫症に対する新薬開発10件に対して、総額約28.6億円の投資を行うことを決定した。

マラリア関連では他に、下記がある。

エーザイ&ブロード研究所:

 ①新規作用機序を有し、多段階の生活環において効果を示す抗マラリア薬の開発 536,822千円
 
②マラリア治療のための新規マラリア原虫 DHODH阻害剤の前臨床開発 421,418千円

田辺三菱製薬&Medicines for Malaria Venture:抗マラリア剤リード化合物最適化研究 192,247千円

武田薬品&Medicines for Malaria Venture:抗マラリア薬としてのリード化合物探索プログラム 52,800千円

ーーー

マラリアワクチン開発は他に次がある。

塩野義は2月28日、長崎大学とマラリア研究について包括連携協定を結んだと発表した。
長崎大の熱帯医学研究所に研究部門を新設し、塩野義の研究者を派遣。基礎研究と並行して治療薬やワクチンの研究開発に取り組む。
長崎大は「細胞性免疫誘導ワクチン」の研究を進めており、塩野義はワクチンの効果を高められる「アジュバント」(マラリアタンパク質に抗体をつくらせる)などで連携する。

ーーー

日本人研究者が創業した米国メリーランド州の創薬ベンチャー VLP Therapeuticsは2月4日、独自技術 i-αVLP (inserted alpha VLP) Technology で開発したマラリアワクチン候補 VLPM01の新薬臨床試験開始届がFDAにより認可され、フェーズ I/IIa の患者登録を開始したことを明らかにした。

2019/3/5 マラリアワクチンの臨床試験 開始


愛媛大学大日本住友製薬の計画は次の通り。

マラリアワクチンは、マラリア原虫のタンパク質とアジュバンド(免疫増強剤:マラリアタンパク質に対する抗体をつくらせる)でつくるものだが、マラリア原虫を形作るタンパク質は約5400種類 もあり、どれを選んでワクチンにすればいいのか分からない 状況であった。

愛媛大学の遠藤弥重太特別栄誉教授 はコムギ無細胞タンパク質合成法を世界に先駆けて実用化に成功している。

小麦の種子は、主に外皮、胚乳、胚芽の3つから構成され、胚芽にはタンパク合成に必要な翻訳因子が豊富に含まれてい る。

コムギ胚芽無細胞タンパク質合成系を使えば、真核生物、原核生物、ウィルスなど多様な生物種由来のタンパク質をつくることが可能 。

コムギ抽出液に対象のDNAを入れると、転写、翻訳され、タンパク質がつくられる。


愛媛大学のプロテオサイエンスセンターでは、この技術を利用して、マラリア原虫タンパク質を作成した。



精製したマラリアタンパク質をウサギに注射すると、148種の抗体が出来た。

マラリア原虫と148種の抗体を1日培養し、原虫増殖阻害効果が高く、遺伝子変異による耐性化の可能性が非常に低い抗体 PfRipr を見つけた。

しかし、PfRiprは複雑すぎ、多量に合成できない という問題があった.

このたんぱく質を小さく断片化し、強い薬効を 有し、大量合成が可能なPfRipr5 を見出した。

作用機序は、抗PfRipr5抗体がマラリア原虫の赤血球侵入を阻害することも判明した。


今後の開発体制は次の通り。


1) GMP準拠の PfRipr5 を大量合成する。担当:ポルトガルiBET( Institute of Experimental Biology and Technology)

2) 適切なアジュバントと混合してワクチンをつくる。担当:ドイツEVI(European Vaccine Initiative)

3) ワクチン効果の確認  担当:愛媛大学のプロテオサイエンスセンター(PROS)

大日本住友製薬は全体のアドバイザーとなる。

EVIは Stockholm University と Heidelberg Universityにより設立され、下記の組織が加入している。

Biomedical Primate Research Centre (BPRC) in The Netherlands
Jenner Vaccine Foundation, University of Oxford
National Institute for Public Health and the Environment (Intravacc)
Royal College of Surgeons in Ireland (RCSI)
Institut Pasteur (IP)

iBETはバイオとライフサイエンス分野での民営の非営利研究組織で1989年に設立された。Health & Pharma Food & Health の分野で大学と企業の開発をつなぐ。
分析サービス、質量分析部門を持ち、パイロットプラントを持っている。

Saudi Aramco の起債 

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Saudi Aramcoの社債発行の概要が主幹事銀行の資料で明らかになった。

発行額は 当初、100億ドルとされていたが、120億ドルになった。

これに対し、応募が殺到し、4月9日には購入希望額が1000億ドルに達した。

JPMorgan Chase とMorgan Stanleyの米投資銀行2社が主幹事を務める。

内訳は、次の通り。

今回のSaudi Aramco 債 参考 サウジ国債(2019/1発行)
金額 利回り 金額 利回り
3年債 10億ドル 米国債+0.55%
5年債 20億ドル 米国債+0.75%
10年債 30億ドル 米国債+1.05% 40億ドル 米国債+1.75%
20年債 30億ドル 米国債+1.40%
30年債 30億ドル 米国債+1.55% 35億ドル 米国債+2.30%
合計

120億ドル

75億ドル


利回りはサウジのソブリン債を下回る。

国有企業の社債利回りが、その国のソブリン債利回りを下回るのはまれで、旺盛な需要は、質の高い債券に投資する意欲を映している。

サウジアラビアは2019年1月9日、国際市場で75億ドル相当の債券を発行した。
カショギ氏殺害事件後初の起債で、投資家の購入意欲が注目されたが、応募は275億ドルと3倍余りに上った。

ーーー

Saudi Aramcoは3月27日、SABICの株式の70%を政府系ファンドのPublic Investment Fund (PIF) から691億ドルで買い取ることで正式に合意したと発表した。

Aramcoは買収資金を自ら調達し、PIFに691億ドルを支払う。

2019/3/30 Saudi Aramco、SABIC株式の70%を取得

Aramcoは30年の長期を含む初のドル建て債を100億ドル規模で発行することとし、初の債券発行を控え、投資家向けに業績を公表した

2019/4/3  Saudi Aramco の財務分析    

    

有機ELディスプレイを開発・製造・販売し、世界初の印刷方式有機ELディスプレイ量産ラインの構築を進めている JOLEDは4月8日、このたび開設した「千葉事業所」において、「後工程」製造ラインの構築を開始したと発表した。

千葉事業所は本年4月1日の開設で、茂原市のJDI茂原工場(旧 日立ディスプレイズ)内に設置した。

印刷方式の有機ELディスプレイパネルの後工程製造ラインを設ける。能力は有機ELディスプレイ 約220,000台/月。

2818年7月開設の能美事業所でアレイ工程から印刷OLED工程までの「前工程」を行ったあと、千葉事業所にて「後工程」であるモジュール工程を行い、最終検査を経て製品として顧客に出荷する。

両事業所は2020年に同時に稼働する予定。

JOLEDは、RGB印刷方式による21.6型4K高精細の有機ELパネルを世界で初めて製品化し、2017年12月5日より出荷を開始した。
大画面に均一に一括塗布する設備技術・プロセス技術の実用化とともに、光取り出し効率が高い独自の「トップエミッション構造」により、優れた色再現性や広視野角を実現した。

住友化学が開発した高分子発光材料を使用する。印刷方式は蒸着よりコストが安い半面、パネルが大型になるほど均一に材料を塗布するのが難しかったが、これを使えば塗布のムラができにくくなる。 

2018/3/24 デンソー、JOLEDに300億円出資

今回の設備投資には、INCJ、ソニー、NISSHAを引受先とする第三者割当増資により調達した総額255億円の資金の一部を活用する。
3社のうち、INCJは200億円の出資を発表している。残り55億円の内訳は不明。

ーーー

JOLEDは2015年1月、有機ELディスプレイの量産開発加速および早期事業化を目的として、ソニーとパナソニックの有機ELディスプレイの開発部門を統合して設立された。

産業革新機構が75%、ソニーとパナソニックが各5%出資し、有機EL事業の進出を図るジャパンディスプレイ(JDI) も15%出資した。

JDIは2016年12月にJOLEDに51%の出資とすることを決めたが、中期経営戦略の見直しに伴い、2018年3月30日にこの出資方針を取り消した。
但し、今後の追加出資で、議決権比率を15%から20%台に引き上げる予定とした。

JOLEDは石川、京都、神奈川の技術開発センターを拠点に開発を進め、2016年にパイロットラインを立ち上げ、印刷方式による有機ELディスプレイ量産技術を確立した。2017年に石川技術開発センターから製品出荷を開始している。

経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)は2018年3月30日、能美工場を産業革新機構に200億円で売却すると発表した。産業革新機構はこれをJOLEDに現物出資するとされた。(現物出資をしたのかどうか は発表がなく、JOLEDが増資で取得した資金で買収した可能性もある。)

JOLEDは2018年8月23日、第3者割当増資により、総額470億円を調達したと発表した。

引受先の内訳はデンソーが300億円、豊田通商が100億円、住友化学が50億円、SCREENファインテックソリューションズが20億円。
デンソーとは車載向けディスプレイの開発で協力するほか、豊田通商には販売面の協力を仰ぐ。住友化学とは材料開発での協力体制を強化する。

JOLEDは2019年中に世界初となる低コスト方式での有機ELパネルの量産を始めるが、デンソーとパネルを共同開発して車載分野を強化し、先行する韓国勢に対抗する。

2018/3/24 デンソー、JOLEDに300億円出資

今回、既存株主のINCJ(旧 産業革新機構)とソニーに加え、NISSHAが出資する。NISSHAはフィルムベースのタッチセンサーを主力製品のひとつとしており、タッチセンサーでJOLEDと協業する。


同社の出資関係はよく分からない。

最新の同社の資本金は 625億3,758万円となっている。出資額 は資本金と剰余金に分けられるが、その情報がなく、各社の出資額と出資比率の関係が不明。

今回の報道では、出資比率はINCJが36.1%、JDIが27.2%、デンソーが18.3%となっているが、JDIによる追加出資の発表はなく、比率アップの理由不明。

これまで発表されているのは下記(単位:億円)のとおり。

増資前 2018年出資 現物出資 今回出資
産業革新機構→INCJ 75% 200? 200
JDI 15%
Sony 5% 55
NISSHA
Panasonic 5%
デンソー 300
豊田通商 100
住友化学 50
SCREEN 20
合計 470 200? 255

英国のEU 離脱に伴う混乱を避けるため、英政府に対してさらなる離脱延期をEUに申し入れるよう義務付けた法案が、4月3日にわずか1日で下院を通過した。

労働党のYvette Cooper 議員が提出したもので、賛成313票、反対312票の1票差で可決された。

上院貴族院では4月4日にこの法案の審議が始まったが、保守党の7時間に及びフィリバスターで、投票には至らず、議長の調整の結果、4月8日に投票することとなった。

2019/4/5 英国の混乱続く  

貴族院は4月8日、この法案に若干の修正を加え、可決した。修正後の法案は下院に戻され、再度可決された。

この後、女王の承認 (Her Royal Assent )を得て法律となった。


メイ首相は既に4月5日に、EUのトゥスク大統領に書簡を送り、12日に迫ったEU離脱期限を6月30日に再延期するよう要請し ている。首相は4月9日にBrussels にわたり、10日のEU首脳会議に出席する。

しかし、今回の法案は、4月12日の合意なき離脱を絶対に避けることを目的に、メイ首相がBrusselsに移動する前に議会と協議することを義務付けた。
首相の提案する延期期日(現在のところ6月30日)を変更する機会を議員に与える。

今回の法案の提案者Yvette Cooper議員は、「本日両院は、合意なき離脱が英国の雇用、製造、安全保障をひどく傷つけるという見解を極めて明確にした」と述べた。

英政府は政府は9日の議会審議をへて、翌10日に開催されるEU首脳会議で離脱再延期を求める見込み。


EUのトゥスク首脳会議常任議長は、最長1年間の延期を英国に打診する意向で、協定案が承認され次第、離脱できるという条件もつけるとされる。

なお、労働党との協議は8日も行われたが、まとまっていない。9日も継続する。

8日には「技術的な」話し合いが行われたが、メイ首相は労働党が求めていEUとの関税同盟締結には応じていない。

EUとの将来の関係を示した法的拘束力のない「政治宣言」については、変更を加える方向で協議が進んでいるという。

労働党のジェレミー・コービン党首は、政府はまだ「最後の一線」を越えていないと話した。




慈恵大学・東京慈恵会医科大学、明治大学、バイオス、ポル・メド・テック、大日本住友製薬は4月5日、iPS細胞を用いた「胎生臓器ニッチ法」による腎臓再生医療の2020年代での実現を目標として、共同研究・開発などの取り組みを開始すると発表した。

「胎生臓器ニッチ法」とは、東京慈恵会医科大学腎臓・高血圧内科学 横尾教授らの研究成果で、動物の発生段階である胎仔の中で臓器が発生する場所に、別の動物から目的とする臓器の前駆細胞を注入し、臓器に分化誘導する方法。

このたびの腎臓再生には、ヒトiPS細胞から分化誘導したネフロン前駆細胞を、明治大学長嶋比呂志所長・教授らの研究成果である「ヒト腎臓再生医療用遺伝子改変ブタ」の胎仔から採取した腎原基に注入し、その後、腎原基を患者に移植することによって、臓器ニッチを利用した機能的腎臓の再生を目指すもの

「胎生臓器ニッチ法」はバイオスが、「ヒト腎臓再生医療用遺伝子改変ブタ」はポル・メド・テックが、それぞれの技術に関わる再生医療ベンチャーとして設立されており 、「胎生臓器ニッチ法」用いた腎臓再生医療の事業化は、5者協力のもと大日本住友製薬が担う。

バイオスの経営陣は、東京大学発再生医療ベンチャーのTESホールディングスの経営陣が中心となって組成された。腎臓再生医療の技術確立において、最先端の研究を行う教授陣との強固なアライアンスを構築している。横尾隆教授の腎臓再生医療に関する「移植用臓器及び臓器構造体」およびその海外出願特許を、バイオスが取得し保有している。

ポル・メド・テックは、明治大学の長嶋比呂志教授が作製した疾患モデルブタなどの研究成果をベースとして、2017年2月に設立されたベンチャー企業。

ーーー

腎機能が正常の10-15%以下になると、透析や移植などの腎代替療法が必要で、腎移植や透析療法が必要な末期腎不全患者は世界中で増加傾向にあり、530万人~1050万人と推計される。

しかし、腎臓移植は国内のドナー不足の問題がある。透析関連医療費は一人当たり年間500万円であり、その年間総額は1兆円以上にのぼり、国の医療費増加の一因となってる。
日本では、2017年の腎臓移植希望登録数の約12,500件に対して、腎臓移植例は約1,750件にとどまる。

この様な現状から、慈恵医大腎臓再生グループでは、腎臓を臓器としてまるまる『再生』する腎臓再生に取り組んできた。

ところが腎臓の場合は複雑な構造で、ネフロンという100万個もあるような構造体を作らなければ尿は出ない。こんな複雑な構造体を作るのは難しい。


このため、「胎生臓器ニッチ法」の研究を始めた。

生まれたての子供はみんな腎臓を持っているが、ヒトの場合は子宮の中でわずか2日間くらい でつくられる。

腎臓の元の細胞が腎臓になるタイミングが来たら、精巧なプログラムがその2日間に働いて、そこにある細胞が勝手分化し、どんどんどんどん腎臓になっていく。

豚の胎児が腎臓を作っている最中にその環境を借り、患者から取った幹細胞に腎臓に分化するプログラム を入れ、ヒトの腎臓にして患者に戻す手法である。

具体的手法は以下の通り。

ヒトiPS細胞からネフロン前駆細胞(腎臓になることが分かっている幹細胞)へ分化誘導する 。

遺伝子改変ブタ 胎仔の膀胱付き腎原基に ネフロン前駆細胞を注入する。

腎原器とは胎児期の腎臓のことで、哺乳類では後腎にあたる。

豚の胎児が腎臓を作っている最中にその環境を借りると、患者から取った幹細胞に腎臓に分化するプログラムが入る。

豚の胎児にもともと備わっているプログラムと場所(ニッチ)を「借りる」ことで、患者由来の細胞から再生腎臓の芽(原基)を作る。

ネフロン前駆細胞 から成長した膀胱付き腎原基を患者に移植し 、臓器初期発生プログラムを遂行させる。

胎児期の膀胱~尿管~後腎組織を一塊として『クロアカ』移植片と呼ぶ。

幹細胞はもうプログラムされているので、取り出しても後は勝手に腎臓になっていく。管が侵入して発育が継続し、正常な腎臓の持つ機能である尿やエリスロポエチンなどのホルモンを産生する。

腎臓に分化するプログラムは元の動物のプログラムのため、所定の大きさになると「そこで止まる」という命令がでる。マウスの場合は小さな腎臓となる。
豚のプログラムを借りると、豚の腎臓の大きさ(ヒトと同じくらいの大きさ)となる。

腎原基を移植した患者に尿路形成術を行い、機能的腎臓を実現 する。

発育した膀胱と 患者の尿管をマイクロサージャリー技術を導入して吻合することで、再生腎臓が産生する尿が 尿管を通じてヒトの膀胱内に持続的に排泄する。


参考資料 慈恵医大横尾教授に聞く「再生腎臓の今、そして未来」

    再生腎臓からの尿排泄に成功 ~臨床応用に向けた大きな一歩~

米民主党が主導する下院は4月5日、トランプ大統領の国家非常事態宣言に基づいて政権がメキシコ国境の壁建設を進めるのは合衆国憲法に違反するとして、宣言に基づく建設費捻出の違憲確認と支出差し止めなどを求めて首都ワシントンの連邦地裁に提訴した。

下院のBipartisan Legal Advisory Group(民主党のトップ3人と共和党のトップ2人で構成)が3対2 で承認した。

訴状は、米議会が議決した国防総省などの予算を非常事態宣言に基づいて目的外の壁建設費に使うのは「憲法が定めた議会の予算編成権を侵害している」と主張した。

合衆国憲法Article I, Section 8 は議会に予算編成権を認めている。

The Congress shall have Power To lay and collect Taxes, Duties, Imposts and Excises, to pay the Debts and provide for the common Defence and general Welfare of the United States; but all Duties, Imposts and Excises shall be uniform throughout the United States;

ペロシ下院議長は「大統領のごまかしの非常事態宣言と資金の違法な流用は民主主義を弱め、議会の投票結果、国民の意思、合衆国憲法に背くものである。議会は、憲法で議会のみに認められた責任を取り戻し、チェック アンド バランスのシステムを守らねばならない」と述べた。

米議会では上下両院が非常事態宣言を無効とする決議を可決したが、大統領が3月15日に拒否権を発動、下院は3分の2以上の賛成で決議を再可決することができず、拒否権は覆らなかった。

米上院は3月14日、トランプ大統領が「国境の壁」建設のために出した非常事態宣言を阻止する決議案を可決した。野党・民主党のほか、与党・共和党からも Romney 議員ら 12人の造反が出た。

米下院は既に2月26日、国家非常事態宣言を無効にする決議案を245対182の賛成多数で可決している。政権を支える共和党からも13人が賛成した。

トランプ大統領は3月15日、国家非常事態宣言を巡り議会が可決した同宣言を無効とする決議案に拒否権を発動した。

下院は3月26日、大統領の拒否権を覆すための採決を行ったが、必要な2/3の賛成票を得られなかった。共和党からは14人しか賛成しなかった。

2019/3/27 米下院、非常事態宣言無効化に対する大統領の拒否権発動の阻止に失敗 

政権は3月下旬、国防総省の予算の一部を壁建設費に転用する手続きを始めた。

ーーー

今回の議会による政府の訴訟が裁判所に認められるかどうかが問題であるが、過去に共和党が格好の前例をつくっている。

民主党は、大統領が憲法で議会に認められた権力を無視したと主張するが、2014年に共和党がObama政権を同じ理由で訴えている。

メイ英首相は4月6日深夜、Brexitについて、野党・労働党の支持を取り付ける以外に事態打開の道はないとする声明を出した。

離脱協定案は英議会で3回否決されていると指摘し、与党・保守党内部と、閣外協力する北アイルランドの地域政党の民主統一党から過半数の支持が得られないなら、新しいアプローチ:労働党と妥協するしかないと明言した。市民は国の危機に際して政治家が一緒に解決することを期待していると述べた。

"The choice that lies ahead of us, is either leaving the European Union with a deal or not leaving at all.

"I think the government thinks we must absolutely leave the European Union.

"We must deliver Brexit. That means we need to get a deal over the line."

"And that's why we've been looking for new ways to find an agreement in Parliament, and that means cross-party talks.

"There's lots of things which I disagree with the Labour Party on policy issues.

"But on Brexit, there are some things we agree on.

"Ending free movement, ensuring we leave with a good deal, protecting jobs, protecting security.

"It'll mean compromise on both sides, but I believe delivering Brexit is the most important thing for us."

協定案で議員のマジョリティを得ることが、英国がEUから離脱する唯一の方法である。時間がかかればかかるほど、英国がEUを離脱しないリスクが高まるとする。

単一市場への残留や再国民投票の可能性を否定せず、与野党が合意している分野もあると強調。「双方とも域内での人の自由な移動は認めず、良い条件で離脱し、雇用を守ることを望んでいる」と語り、「これが議会で過半数を獲得できる妥協案の基になる」との見方を示した。

保守党の離脱派はメイ首相が労働党の要求、特にEUとの関税同盟、を受け入れるのではないかと、メイ首相の発言に怒りを示す。
関税同盟の場合、EUとは関税無しとなるが、英国が他国とFTAを締結することができなくなる。


実際には、単一市場に残りながら移民を制限する「いいとこ取り」の "soft Brexit " は、EUが認めないことが確実で、これが"hard Brexit" に踏み切った理由である。

May首相は2017年1月17日、EUからの離脱を巡り、移民制限や司法権独立など英国の権限回復を優先し、EU単一市場から完全に離脱すると表明した。

2017/1/19 BREXIT の12のポイント 


しかし、労働党との協議が成功する保証はない。

労働党との3日間の協議は金曜に合意なしで終わった。労働党のCorbyn党首は、政府側のポジションに大きな変化は見られないとしている。

Brexitの最大の問題はアイルランド問題である。

英国のEU離脱で、アイルランド島の内部で、英国の北アイルランドとEUに残るアイルランド共和国との間に再度国境管理が行われると、1998年4月10日のベルファスト合意(聖金曜日協定)で収拾した北アイルランド紛争の再発が懸念される。

共通旅行区域(CTA)制度は両国のEU加盟以前からある取り決めであると指摘し、税関や検疫も含め、物理的な国境設備の設置を避けることを目指すと明言し、日常的に住民や農業従事者、小規模な商業従事者が往来し物資の移動が行われている現状に配慮する必要性を訴え、通関申告を免除するなど「可能な限り摩擦のない陸上国境の実現」を目指すべきとしている。

また、ベルファスト合意を全面的に支持する姿勢を強調、同合意で定められた通り、北アイルランドの住民には両国間の往来の自由を認めると共に、両国の二重国籍を取得する権利やアイルランド国籍に由来するEU市民権も認めるよう求めている。

2019/2/11 Brexitの問題の根源(続き)-「北アイルランド国境問題」

英政府は本年3月13日、合意なき離脱となった場合、アイルランドと北アイルランドの厳格な国境管理を回避すると表明した。

合意なき離脱となった場合、アイルランドから北アイルランドへの商品の輸入について新たな検査や管理を導入しない。企業の自己申告に頼り、国境を越えた取引を記録するためアプリベースのシステムを活用するという。新たな輸入関税制度は適用しない。

この計画は一時的かつ一方向のもので、長期的な対策については、EU・アイルランド政府と早急に協議を開始するとしている。

英政府は同日、合意なき離脱となった場合、輸入関税を引き下げると発表した。

金額ベースで英国への輸入品の87%に相当する商品が無関税となる。現在は80%が無関税。

EUからの輸入品は現在は100%が無関税だが、82%が無関税となる。
EU以外からの輸入品は現在は56%が無関税だが、92%が無関税となる。

これは、英国の輸入関税の話であり、輸出先はこれと無関係に、(従来のEUメンバーとしての関税ではなく)WTOルールで関税をかける。
輸出産業は被害を受けることとなる。

英国の生産者を保護するための措置も継続する。自動車メーカー、牛肉、ラム肉、豚肉、鶏肉、酪農製品の生産者などが対象となる。

2019/3/14  英下院、「合意なき離脱」を否決 

しかし欧州側は、合意なき離脱に備え、アイルランドには国境を越えた貿易の検査体制を準備すべきだと圧力をかけている。アイルランド・英国間の貿易に対して大規模な検査体制を敷く必要があるとする。

アイルランド首相は、合意なき離脱の場合でも、国境を越えた貿易の検査は避けられると期待していたが、EUは、監視が少しでも欠けたら欧州の単一市場に大きな穴が開くことを懸念し、この方針を退けた。

欧州のある有力外交官は、「アイルランドの友人たちは、まだ現実を見ていない。我々は壁の建設について話しているわけではないが、単一市場の一体性を守る必要がある。加盟国の間では、アイルランドの準備不足を心配する人が増えている」と述べている。

アイルランド政府内では、国境を越える貿易に関税をかけ、通関手続きや食品・動物の検疫を実施するために対策が必要なことは暗に受け入れた。

工場や輸送中の製品など、国境から離れた場所での検査について議論している。

首相は4月3日、アイルランド議会に対し、関税や通関料はオンラインないし税務署で徴収できると述べ、合意なき離脱の場合も多くの検査は遠隔で実施できると語った。

しかし、問題は動物の検疫で、獣医によって物理的に行うしか方法がない。「そうした検疫は港で実施されるべきで、衛生基準と植物検疫基準についてはアイルランド島が島全体として扱われるべきだというのが我々の見解だ。それには英国の協力が必要になる」と語った。

米下院は4月4日、イエメン内戦に介入するサウジアラビアへの軍事支援を停止するよう求める決議案を賛成多数で可決した。共和党から16名が賛成にまわった。

共和党 民主党 合計
賛成 16 231 247
反対 175 175
棄権 5 4 9
合計 196 235 431
欠席 3 3

欠員 1

1973年の戦争権限法に基づき、サウジ主導連合軍による空爆への支援を含め、米軍が議会の承認を経ずにイエメン内戦に関与することを停止するよう求めている。

本件では、上院は2018年12月に決議案を可決したが、当時は下院の多数派だった共和党が下院での採決を阻止したため頓挫した

上院は本年1月末に再度、決議案を提出した。
民主党が多数派となった下院も、上院案を修正したうえで本年2月13日に決議案を248対177の賛成多数で可決した。230人の野党・民主党議員に加え、与党・共和党からも18人が賛成に回った。

米上院は3月13日、イエメン内戦に介入するサウジアラビアへの軍事支援を停止するよう求める決議案 (1月末に提案)を賛成多数で可決した。
  共和党 民主党 民主系
無所属
合計
賛成 7 45 2 54
反対 46     46
合計 53 45 2 100


2019/3/16 米上院、イエメンでのサウジ支援停止案を可決  

この上院の決議案は、下院が2月13日に可決した案と異なっているため、今回下院で再度決議したもの。

米国の戦争権限法は、大統領の戦争宣言などを経ずに米軍が外国での「敵対行為」に携わる場合に、上下両院で決議案を可決すると敵対行為を停止できると規定している。

しかし、ホワイトハウスは2月の下院の議決時に、トランプ大統領は拒否権を行使する方針だと明らかにしている。

トランプ大統領は3月15日、国家非常事態宣言を巡り議会が可決した同宣言を無効とする決議案に拒否権を発動したが、これに次ぐ2件目となる。

付記 大統領は4月16日、拒否権を発動した。

議会が拒否権を覆すには両院で 2/3 以上の票が必要だが、現状では難しい。

英国の混乱続く

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メイ首相は4月5日、EUのトゥスク大統領に書簡を送り、12日に迫ったEU離脱期限を6月30日に再延期するよう要請した。

もし、議会が離脱協定案を承認すれば、5月23日の欧州議会選挙の前に離脱ができるとし、承認を得られない場合は議員候補を出すとしている。

しかし、4月12日が立候補締め切り日であり、英国の離脱を前提に議席の再割り当てをしているため、離脱が未定のままでは選挙を進められない。

既にEUのユンケル欧州委員長は4月3日に「離脱協定案を英議会が承認しなければ、短期延期は不可能」と明言している。

ーーー

英国のEU 離脱に伴う混乱を避けるため、英政府に対してさらなる離脱延期をEUに申し入れるよう義務付けた法案が、4月3日に わずか1日で下院を通過した。

労働党のYvette Cooper 議員が提出したもので、賛成313票、反対312票の僅差で可決された。 保守党から14人の造反者が出た。

投票権者 賛成 反対 棄権
保守党 312 14 290 8
民主統一党 10 10
(与党 (322) (14) (300) (8)
労働党 243 229 9 5
スコットランド国民党 35 35
自由民主党 11 11
独立党 11 8 3
独立グループ 11 11
シン・フェイン党 7 7
プライド・カムリ 4 4
緑の党 1 1
合計(欠員 1) 645 313 312 20

政府は声明で、「首相はすでにEUから協定にもとづいて離脱するための明確なプロセスを提示しており、政府もすでにさらなる延長に向けて尽力している」と述べ、「もしこの法案が可決されれば、政府の延長交渉に深刻な制限がかかることになり、4月12日までに新たな離脱日を英国法に示すことが難しくなる」 としている。

メイ首相は4月2日、約7時間に及ぶ閣議で対応策を協議したあと、首相官邸で声明を読み上げた。

1) 4月12日の合意なき離脱を回避するため、離脱の短期間の延期をEUに要請する。

2) そのうえで、秩序立った離脱を実現するため、最大野党・労働党のコービン党首と直接話し合い、合意形成を目指す。

2019/4/3 メイ首相、離脱の短期延期を要請へ 

これまでの「示唆的投票」は可決されても政府を拘束するものではないが、今回の法案は上院貴族院に廻り、上院で可決すれば法律となり、政府を拘束する。

但し、EUに離脱を申し入れても、EUが受け入れるとは思えない。

メイ首相の発言を受け、EUのユンケル欧州委員長は4月3日、「離脱協定案を英議会が承認しなければ、短期延期は不可能」と明言した。合意なき離脱の可能性が高まっているとし、「どんな結果になるかは英国側にかかっている」と述べた。

7月2日に開かれる新たな欧州議会の議員を選ぶ選挙は5月23日~26日に行われるが4月12日は立候補締め切り日である。
英国の離脱を前提に議席の再割り当てをしており、離脱が未定のままでは選挙を進められない。


EUのトゥスク大統領は、離脱期限について、12カ月の「柔軟な」延期を英国側に提示することを提案している。 BBCがEU高官の話として4月5日に報じた。

この場合は欧州議会に議員を出す必要がある。現時点ではメイ首相は、欧州議会選に参加しなくて済むよう、5月22日までに離脱関連法を成立させたいとしている。

ーーー

上院では4月4日にこの法案の審議が始まったが、保守党の 7時間に及びフィリバスターで、まだ投票には至っていない。(通常は下院で通った法律は上院でも通る。)

議長の調整の結果、4月8日に投票することとなった。

上院の構成:

一代貴族世襲貴族聖職貴族合計
聖職貴族 26 26
Conservative 199 48 247
中立派 152 32 184
Labour 181 4 185
Liberal Democrat 91 4 95
議長 1 1
無所属 26 3 29
その他 15 15
合計 665 91 26 782


聖職貴族:国教会の高位聖職者であるカンタベリー大主教、ヨーク大主教、ロンドン主教、ダラム主教、ウィンチェスター主教の5人と、そのほかの21名の教区主教をあわせた計26名。


ーーー

メイ首相は4月3日、膠着状態の打開策を探るため、労働党のコービン党首と会談した。

首相府はコービン党首との会談について、「建設的な対話だった」と位置付けているが、コービン党首は、「有意義だったが結論は出なかった」と し、メイ首相の姿勢は期待したほどには変わらなかったとも言い添えた。4日に再度協議を行うと述べた。

首相の労働党との協議の戦略は与党内から強い反発を招き、閣僚2人が辞任、議会でも与党議員からメイ首相を批判する発言が相次いだ。

4日の与野党協議には、労働党からは影のEU離脱相、影のビジネス相も参加した。

「協議を続けたし、これからも政府と協議を続ける」と述べた。

東芝メモリが1.3兆円を調達することが分かった。

三菱UFJ銀行と三井住友銀行みずほ銀行の大手3行が合計9千億円を融資し、別に1千億円の融資枠を設ける。

日本政策投資銀行も3千億円の議決権のない社債型優先株を引き受ける。出資の意向を表明していたINCJ(旧産業革新機構)は資金を出さない方針に転じた。
(現在東芝が所有する40.2%相当の議決権のうち、33.4%分は、将来的に資本参加を表明している産業革新機構と日本政策投資銀行に対し指図権を付与している。)

付記

東芝メモリは5月31日、日本政策投資銀行による出資とメガバンク3行からの借り入れで、6月末までに総額1兆2000億円を調達すると発表した。 3行は1000億円の追加融資枠も設定する。

なお、同社は5月17日、北上工場第1製造棟でWestern Digital と共同で設備投資を行う正式契約を締結した。3次元フラッシュメモリを生産する。2019年秋の竣工予定。


背景は次の通り。

東芝は2017年9月28日、東芝メモリの株式譲渡契約を締結したと発表した。

売却先はBain Capitalがこの目的のために設立し、参加各社が出資する㈱ Pangeaで、譲渡価額は2兆円。

2018年6月1日に譲渡が完了した。

東芝メモリ株式譲渡とともに、東芝は譲受会社のPangeaに合計3,505億円を再出資し、Pangeaの議決権のある普通株式を約1,096億円分(約40.2%)、転換権付き優先株式を約2,409億
円分(総数の約40.8%)取得し、その結果、約40.2%の議決権を取得した。

Apple、Seagate、Kingston Technology、Dell Technologies Capitalの需要家4社が(議決権無しで)4,155億円を出資している。

2017/9/30 東芝メモリの株式譲渡契約締結


東芝メモリは設備投資に充てる成長資金を確保するため、2019年11月以降に新規株式公開(IPO)を検討しているが、「取引先が株式を持つ現状では上場審査に不利」とされ る。

このため、Appleなど4社が持つ優先株を買い戻しておく必要がある。

今回の調達資金 1.2兆円(他に融資枠1千億円)で Apple等4社の持つ優先株(取得価額4,155億円)を約5,300億円で買戻し、消却する。
残りの資金で金融機関からの借入金 6千億円を返済する。現金700億円が手元に残ることとなる。


単位:億円) 出資 合計 転換
社債
借入金 再計 今回 処理後
議決権株 優先株
東芝 40.2% 1,096 2,409 3,505 3,505 3,505
HOYA 9.9% 270 270 270 270
(日本側) (50.1%) (1,366) (2,409) (3,775) (3,775) (3,775)
Bain 49.9% 1,361 759 2,120 2,120 2,120
SK Hynix 2,660 2,660 1,290 3,950 3,950
(Bain / SK) (49.9%) (1,361) (3,419) (4,780) (1,290) (6,070) (6,070)
Apple ほか4社
(買戻し額)
4,155 4,155 4,155

-4,155
(-5,300)

0

金融機関 6,000 6,000

-6,000
9,000

9,000
日本政策投資銀行 3,000 3,000
INCJ
(産業革新機構)
0
合計 2,727 9,983 12,710 1,290 6,000 20,000 1,845 21,845
(今回のCash 増) 700

ジャパンディスプレイ(JDI)は4月1日、下記の発表を行った。

当社は、既に発表のとおり、筆頭株主である株式会社INCJ(旧産業革新機構)とも連携しながら外部との提携交渉を行っております。

現在、当社は 当該提携に伴う600800億円規模の株式及び債券の発行による資金調達及び株式会社INCJによる既存債権に対する優先株式の引受けを含めたリファイナンスにより総額1,100億円超の資本増強について関係者との今週中の合意を目指しており、合意いたしましたら速やかにお知らせします。

日本経済新聞は4月3日、同社が中台連合3社から、出資などを含む600億~800億円の金融支援を受け入れることで合意する見通しと報じた。中台連合が議決権の5割弱を握る筆頭株主となり、JDIは連合の傘下に入るとしている。

ロイターは4月3日、JDIが今年後半から米 Appleの腕時計型端末「アップルウオッチ」向けに有機ELパネルを供給することが分かったと報じた。

JDIにとっては、この供給が有機EL市場への初参入となる。

JDIは現在、茂原工場で蒸着式有機ELパネルのパイロット生産を始めており、供給体制を整えつつある。本格生産のためには、中台連合の中国計画(下記)が必要になる。

ーーー

経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)は、中国と台湾の企業連合(下記のメンバー)から600億円規模の出資を受ける方向で交渉を進めてきた。

中国シルクロード・インベストメントキャピタル(中投絲路資本 CSIC
中国最大の資産運用会社の嘉実基金管理(Harvest Fund Management)
台湾のタッチパネルメーカーの宸鴻集団(TPK Holding)
中国の自動車部品メーカーの敏実集団(Minth Group)

4月3日の日経は、宸鴻光電科技(TPK)や台湾金融大手の富邦グループ、中国大手ファンドの嘉実基金管理グループとしている。

中台連合は、JDIの技術を活用して浙江省に有機ELパネル工場を建設することを計画している。

計画は、第6世代の基盤を3万枚/月、6型パネル 400万台/月の工場の建設で、投資額が約5000億円で、資金は中国政府の補助金を活用する。
早ければ2019年中に建設を開始し、2021年の量産開始を見込む。

しかし、この交渉は下記の理由で難航していた。

その問題がどうなったのか不明だが、今回は下記の線でまとまりつつあるとされる。

中台連合: 600~800億円 うち普通株が400億円、残りは新株予約権付社債
INCJ :残りを既存債権を優先株に切り替え
合計:1100億円超


問題点:

JDIは2015年3月6日、石川県白山市に第6世代(1500×1850ミリメートル)液晶新工場を建設すると発表した。月産2万5000枚の能力で、投資額は1700億円。

新工場の建設はAppleからの増産依頼によるもので、投資資金の大半はAppleからの前受け金1700億円で賄った。但し、Apple専用とせず、中国スマホメーカーなど他社へも供給する予定。

問題は、JDIと Apple の契約である。この前受金の契約には下記の条項がある。

・JDIは年間2億ドルまたは売上高の4%のいずれか高い金額を四半期ごとに返済する。

・JDIの現預金残高は300億円以上を維持する。

・上記2つの条項を守れなければ、Appleは、前受け金の即時全額返済、または白山工場の差し押さえを要求できる権利を持つ。

返済原資は貸し手であるAppleからの注文次第であることが問題で、Apple側の理由で注文が減ると、 たちまち返済原資に行き詰まる。
工場がApple専用であれば、それなりの条項が入れられたと思われるが、他社への供給もできるようにしたのが逆目に出る形とな った。(Appleが減った分は他社に売ればよいとの言い訳ができる)

中台連合としては、JDIに600億円を注入しても、Appleが注文を減らせば、返済不能となり、600億円はAppleに流れることとなる。

実際に、Appleの「iPhoneXR」の販売が低迷している。

今期のXR向け液晶の出荷量は、計画比で半減する見込みで、2月に入って主力の白山工場の稼働率は50%前後まで落ちている。これにより、昨年9月末に600億円あった現預金が1月に入って急激に減り始めたとされる。

前記のトリガー条項により、Appleから前受け金の即時全額返済を求められる可能性が強まっている。

中台連合の要求に基づいて、2019年以降の返済減額を訴えるため、INCJの志賀会長と経済産業省幹部の2人がApple本社へ乗り込んだが、3月23日に事実上のゼロ回答があった とされる。

今回、出資交渉が進んだのは、なんらかの解決策が得られたとみられる。

ーーー

JDIの概要は下記の通り。

日本の液晶パネルメーカーは「2012年問題」に直面した。大型では日本勢は韓国、台湾勢に押され、シェアは落ちた。
中小型液晶については日本勢はまだ頑張っていたが、各社が単独で事業を進めた場合、十分な能力増強投資ができず、競争力を失ったテレビ用パネルの二の舞いになる可能性が高い。

2011/10/31 液晶パネル事業の現状と課題  

東芝、ソニー、日立製作所と官民ファンドの産業革新機構は2011年8月31日、2012年春に中小型液晶パネル事業の統合会社JDIを設立すると発表した。

3社は当初10%ずつ出資したが、その後売却した。

2011/6/9 東芝・ソニーが携帯向け液晶統合、産業革新機構が出資

経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)は2018年3月30日、第三者割当増資などで約350億円 、資産売却で200億円、合計550億円を調達すると発表した。

第三者割当増資(海外機関投資家)  300億円
第三者割当増資(日亜化学工業)  50億円
能美工場の資産の産業革新機構への売却  200億円 産業革新機構はこれをJOLEDに現物出資
合計 550億円

資本関係は次の通りとなった。 (億円)

2018/3/31 2018/12/31 増減
資本金 969 1,144 175
資本剰余金 2,136 2,311 175
合計 3,105 3,455 350
利益剰余金 -2,333 -2,441 -108
資本合計 772 1,014 242

当初 現状 増資後
産業革新機構  70% 35.58% 26.81%
ソニー 10% 1.78% 1.34%
東芝 10%
日立 10%
日亜化学 3.52%
海外機関投資家計 21.12%
その他現行株主 62.64% 47.21%
合計 100% 100% 100%

合わせて、2017年12月に稼働を停止した能美工場の資産を産業革新機構に約200億円で譲渡する。

2018/4/3  ジャパンディスプレイ、550億円を調達 

同社の工場は下記の通り。

国内:

石川工場 東芝モバイル(松下電器)
能美工場 東芝モバイル(東芝) 停止→ 産業革新機構に譲渡 → JOLEDに現物出資
白山工場 JDIとして新設   2016/12 稼働 Appleからの前受け金で建設
鳥取工場 ソニーモバイル(鳥取三洋)
東浦工場 ソニーモバイル
茂原工場 日立ディスプレイズ
深谷工場 東芝モバイル(東芝) 2016/4 閉鎖


海外:

Suzhou JDI Devices 江蘇省蘇州市 旧 日立顕示器件(蘇州)
Suzhou JDI Electronics 素尼移動顕示器(蘇州)を買収
Shenzhen JDI 広東省深圳市 旧 深圳日立賽格顕示器 2018 中国企業に売却
Nanox Philippines Philippines ナノックスより、81%取得
Kaohsiung Opto-Electronics Taiwan 旧 高雄日立電子


メイ首相は4月2日、約7時間に及ぶ閣議で対応策を協議したあと、首相官邸で声明を読み上げた。

1) 4月12日の合意なき離脱を回避するため、離脱の短期間の延期をEUに要請する。

欧州議会選に参加しなくて済むよう、5月22日までに離脱関連法を成立させたいとしている。

2) そのうえで、秩序立った離脱を実現するため、最大野党・労働党のコービン党首と直接話し合い、合意形成を目指す。

EU側は離脱案のうち、離脱条件を定めた協定の再交渉には応じない構えであるため、英・EUの将来関係の大枠をうたう「政治宣言」に絞って超党派で妥協を引き出し、離脱案全体を可決に持ち込む。

 ①ここで合意に達した場合、共同案の議会承認を求める。

 ②合意に達しない場合、「将来の関係について複数の選択肢」を下院で採決に付す。
   議会の決定がどのようなものであれ政府は実行を約束する。

 いずれのケースも、結果を4月10日のEU首脳会議に諮る。


上のいずれも、実現は難しい。

1) EU側は下記の理由で離脱の延期を認めないと思われる。

延期しても英国側がまとまるとは思えない。(前回が最後通告)

新たな欧州議会が開会する7月2日以降も英国がEUにとどまる場合、英国は欧州議会選挙を実施する必要がある。
欧州議会選挙は5月23日~26日に行われる。4月12日は5月23日~26日に行われる欧州議会選挙の立候補締め切り日。

現在、英国の離脱を前提に議席の再割り当てをしており、離脱が未定のままでは選挙を進められない。

2) メイ首相は、自分の離脱協定案は譲れないとしており、EU関税同盟への残留を主張する労働党や、現行案ではEUからの離脱がいつまでも出来ないと懸念する与党強硬派が歩み寄るとは思えない。

長期延期がないのなら、合意なき離脱の可能性が強まる。

Saudi Aramcoは3月27日、SABICの株式の70%を政府系ファンドのPublic Investment Fund (PIF) から691億ドルで買い取ることで正式に合意したと発表した。

Aramcoは買収資金を自ら調達し、PIFに691億ドルを支払う。

2019/3/30 Saudi Aramco、SABIC株式の70%を取得 

ーーー

Aramcoは30年の長期を含む初のドル建て債を100億ドル規模で発行する。JPMorgan Chase とMorgan Stanleyの米投資銀行2社が主幹事を務める。

Aramco は初の債券発行を控え、投資家向けに業績を公表した

Bloomberg などによると、概要は次の通り。

1) 財務数値 単位:億ドル (億単位 四捨五入)

2016 2017 2018
売上高 1,350 2,630 3,560
EBITDA 940 1,650 2,240
法人税 380 790 1,020
純利益 130 760 1,110
営業Cash flow 290 890 1,210
Free Cash flow 20 560 860
配当 - 500 520



2) 2018年の純利益は、Apple とGoogle とExxonMobil の合計に等しい。


3) しかし、採掘費は安いが、税金が非常に高く、バレル当たりのCash flowは中位である。

サウジは国の運営資金をSaudi Aramco に頼っており、所得税は50%で、ロイヤリティは収入の20%から始まり、最高 50% にまでなる。


4) サウジの実力者であるムハンマド皇太子はSaudi Aramcoの企業価値について2兆ドルを上回ると指摘している。市場ではサウジ側のSaudi Aramco評価が過大だとの見方も出ている。

Bloombergは、2018年に同社が520億ドルもの配当をさせられていることから、1兆2千億ドル程度ではないかとしている。


5) 借入に問題なし

米格付け会社Moody's は4月1日、Saudi Aramcoの格付けを「A1」とし、「トリプルA」のExxonMobilと差を付けた。「Saudi Aramcoは生産規模の大きさや豊富な化石燃料資源などトリプルAに値する性質を多く持つ」と指摘する一方、「政府との密接なつながり」が評価を下げたと説明した。

しかし、Saudi Aramco の負債は少ない。


6) 問題は Saudi Aramco には多くのリスクがあること。

同社は以下のリスクがあることを明らかにしている。

・ 同社の設備へのミサイル攻撃
・ 米国がOPECを独禁法違反とする恐れ
・ 気候変動問題 (
ニューヨーク市が、ExxonMobil やBPなどの国際石油会社に対し「気候変動の原因を招いた」として提訴)
・ サウジリアルと米ドルとの連動(固定相場制)がなくなる可能性
・ サイバー攻撃 (2012年に被害を受け、一部の作業をマニュアルに変えざるを得なかった事実がある。)
・ 石油価格下落 2016年にBrent原油が45ドルまで下がり、OPECが減産した際、同社は損益トントンとなった。
  (年間の純利益は130億ドルまで下がり、free cash flowはたった20億ドルであった。)

このほか、米同時テロに関与した疑いがある外国政府に、遺族らが損害賠償を請求する訴えを起こすことができる「テロ支援者制裁法(JASTA)」が成立している。



期限の4月12日まで2週間しかない4月1日、英下院はEU離脱に関し過半数の支持が得られる代替案を模索するための投票を再び実施した。


3月27日に16の案のなかから8案を選び、
「示唆的投票」 ("indicative" vote) を行ったが、いずれも過半数を得られなかった。

国民投票案が最大の268票を得た。関税同盟案が2位、労働党案は3位となり、親EU 派の案に多くの票が集まった。合意なき離脱には反対票が400票もあった。

2019/3/28 英議会 離脱延期を正式決定 代替案8案いずれも過半数に満たず

今回、当日に過半数を得られなかったものを含め、合計8つの案に投票する。過半数の支持が得られる代替案を模索するためという。

なお、メイ首相はその後、早ければ4月2日に自身の離脱案を再び採決にかける可能性がある。


ガーク司法相はBBCテレビに対し「現在は理想的な選択肢がなく、想定されるいかなる結果についても説得力ある反対論がある。それでもわれわれは何かをしなくてはならない」と強調した。

「首相は残された選択肢を検討しており、何が起こり得るか考えているが、何らかの決定が下されたとは私は思わない」と述べた。

保守党の議員314人のうち170人はメイ氏に書簡を送り、合意の有無にかかわらず数カ月内に Brexitを実施するよう求めたという。


示唆的投票の候補は次の通り。当初の16案のうち、3月27日に8案が採決に掛けられたが、今回はこのうちの4案と、前回採用されなかった1案及び新たな3案の合計8案が 候補となった。前回3位だった労働党案は入っていない。

しかし、最終段階では前回の4案(Revoke article 50を追加)が採決にかかった。結果は、前回に続き全て否決された。「EUとの関税同盟に恒久的に残留する案」が支持を集めたが、過半数までは届かなかった。

3/27    4/1
賛成 反対 議案 ポイント 賛成 反対
Labour plan EUとの緊密な経済関係の維持
・全面的な関税同盟
・単一市場との緊密な連携
・新しいEUの権利と保護に対応
・EUの機関、資金拠出計画への参加
・将来のセキュリティ関連の合意
237 307
Common market 2.0 欧州自由貿易連合(EFTA)、欧州経済領域(EEA) への参加
(EFTA加盟国はEUに加盟することなく、EUの単一市場に参加)
188 283

英はEUの単一市場に参加
居住、労働可能(互いに)
261 282
Confirmatory public vote 議会で通ったBrexit は批准前に国民投票にかける。          268 295 議会で通ったBrexit は、どんな案でも、批准前に国民投票にかける。 280 292
Public vote to prevent no deal

X

議会で「合意なき離脱」となった場合は国民投票にかける。
Customs union 英国全体が永久の全面的なEUとの関税同盟を締結 264 272 アイルランド国境管理不要
他国と別に貿易協定を結べない。
273 276
Malthouse compromise Plan A 協定案のアイルランドとの国境に関するbackstopを他の案に置き換える。
Revoke article 50 協定案否決の場合、合意なき離脱について投票する。
合意なき離脱が否決の場合、首相はBrexit を中止する。
184 293 〇+ 191 292
Revocation instead of no deal 議会が協定案を否決する場合、政府はBrexit 取り止めに必要な法案を緊急に提出する。
New customs union EUとの関税同盟を含む貿易協定を結ぶ。
EEA/EFTA without customs union 欧州経済領域(EEA)にとどまり、欧州自由貿易連合(EFTA)に再加入するが、EUとの関税同盟からは外れる。 65 37
EFTA and EEA

X

EFTA and EEAに参加、EUの単一市場に参加
アイルランド国境問題と農産品貿易問題の解決のため追加の協定を交渉
No deal 合意なき離脱 160 400

X

協定案反対なら4/12に離脱
Unilateral right of exit from backstop 北アイルランドのBackstop から英国が一方的に離脱できるよう、協定案を修正 (whenever it wants, without the EU's permission).

X

BackstopではEUから抜けられない、北アイルランドが別扱いになるという反対に対応。但し、EUは再交渉しないとしている。
Consent of devolved institutions 合意なき離脱はしない、離脱に際してはスコットランド議会、ウェールス議会の同意を要する。
Contingent preferential arrangements EUとの離脱協定が出来ない場合、EUとの特恵貿易協定を結ぶ。 139 422
Contingent reciprocal arrangements EUとの協定が出来ない場合、EU及びメンバー国とのアレンジは相互的なものとする。
Respect the referendum results 英国がEUから離脱するという国民投票の結果を尊重することを議会が再確認する。
Constitutional and accountable government EU離脱を支持、政府の協定案を拒否。新しい試みには2/3の多数を必要とするよう下院ルールを修正。
Parliamentary supremacy

X

合意なき離脱回避のステップ
①政府は4/12の2日前に離脱の延期を求める。
②EUが認めない場合、議員に合意なき離脱か離脱中止の選択を求める。
③離脱中止が選ばれた場合、将来のEUとの関係について、何が英国で最も支持され、かつEUが了承するかの調査を行う。

第一三共は3月29日、抗がん剤でAstraZenecaと戦略的提携すると発表した。

同社が保有する抗体薬物複合体(antibody drug conjugate: ADC) のトラスツズマブ デルクステカン([fam-] trastuzumab deruxtecan)について、乳がん、胃がん、非小細胞肺がん及び大腸がんを含むHER2発現がんを対象としたグローバルな開発及び商業化契約を締結した。

抗体薬物複合体(ADC)は、抗体と薬物(低分子化合物)を適切なリンカーを介して結合させた薬剤で、がん細胞に発現している標的因子に結合する抗体を介して薬物をがん細胞へ直接届けることで、薬物の全身曝露を抑えつつがん細胞への攻撃力を高め る。

本剤は、独自のリンカーを介して新規のトポイソメラーゼI 阻害剤(薬物)を抗HER2抗体に結合させた薬剤。抗HER2抗体とリンカー、ペイロード(トポイソメラーゼI 阻害剤)のすべてを自社技術で構築した。

トポイソメラーゼI 阻害剤は、癌細胞のDNAの2重らせん構造のうち1本を切断し、異常な細胞増殖を抑えることでがん細胞を殺す。

乳がんなどには、細胞の表面に、がん細胞に「増殖しろ」という指令を出す「HER2タンパク」をもっているものがあるが、トラスツズマブは、HER2タンパクの働きをブロックし,がん細胞の増殖を抑える 。


本剤は、まだ承認されていない治験薬で、安全性及び有効性は確定していない。

北米、欧州及び日本を含むアジアにおいて、本剤を用いた広範かつ包括的な臨床試験が進行中。

米国食品医薬品局(FDA)より、HER2陽性の再発・転移性乳がん治療を対象として画期的治療薬(Breakthrough Therapy)指定及びファストトラック指定を受けている。

付記

第一三共とアストラゼネカは12月23日、ENHERTU®(トラスツズマブ デルクステカン)について、米国食品医薬品局より「転移性の乳がんに対する治療として2つ以上の抗HER2療法を受けたHER2陽性の手術不能又は転移性乳がん」を適応として販売承認を取得したと発表した。

また、HER2過剰発現の進行・再発胃がん治療を対象として厚生労働省より先駆け審査指定を受けている。

第一三共では、HER2陽性の再発・転移性乳がんを対象としたFDAへの承認申請目標時期を2020年として いたが、今回、2019年度前半に前倒しすることを決めた。

ーーー

両社は日本を除く全世界において、本剤の単剤療法及び併用療法を共同で開発し、商業化する。第一三共は本剤の製造及び供給に責任を持つ。

サイエンス・テクノロジーに強みを持つ第一三共と、がん領域のグローバル事業に豊富な経験とリソースを持つAstraZenecaとの戦略的提携により、様々なHER2発現がんにおける単剤療法及び併用療法でのトラスツズマブ デルクステカン (DS-8201)の価値を最大化する。

AstraZenecaのCEOは、「DS-8201は、HER2陽性乳がん及び胃がん治療に変革をもたらす新薬になり得ると考えています。また、HER2低発現乳がんにおけるファーストインクラスとして乳がん治療を再定義する可能性があります。さらに、本剤は、肺がんと大腸がんを含む他のHER2変異・HER2過剰発現がんにおいて、抗HER2療法の恩恵を受ける患者さんの対象を広げる可能性があります。他の疾患領域においても長期的に協業している第一三共と今回提携することを誇りに思います」と述べてい る。

日本を除く全世界での開発・販売等の費用と利益は両社で折半する。

売上計上は、日本、米国、及び第一三共が拠点を有する欧州及びその他地域の複数国では第一三共が、中国、豪州、カナダ、ロシア及びその他地域ではAstraZenecaが行う。

AstraZenekaは第一三共に下記の対価を支払う。

契約一時金 13.5億米ドル
開発マイルストン達成等で  最大 38億米ドル
販売マイルストン達成で  最大 17.5億米ドル
支払総額 最大 69億米ドル

  

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